第2号
2018年11月6日発行
前回,刑事施設や少年施設など,我々の組織について御紹介させていただきました。
第2号では,そこで勤務する職員について御紹介いたします。
刑務官は,原則として,刑務所,少年刑務所又は拘置所に勤務します。刑務所及び少年刑
務所では,受刑者への指導を通じて,その社会復帰(改善更生)を実現するよう,様々な処
遇を行っており,現在全国に68庁が設置されています。
拘置所では,主として勾留中の被疑者,被告人を収容し,逃走や証拠のいん滅を防止する
とともに,公平な裁判を受けられるように配慮しており,現在全国に8庁が設置されていま
す。現在,全国の刑務所,少年刑務所及び拘置所においては,約17,500人の刑務官が
勤務しています。
刑務官
集合研修
矯正研修所又は全国に7箇所ある
矯正研修所支所に入所し,刑務官とし
ての基礎を学びます。職務の基礎となる
法律(国家公務員法,刑事収容施設法等)
や上級の資格を持った職員の指導の下,自
らの身を守り,かつ,相手に怪我を負わせ
ずに制圧するための護身術を学
改善指導
夜間勤務
刑務官は,原則として交替
制勤務で夜間も被収容者が就
寝する居室を巡回し,被収容
者の動静把握に努めます。
心身を鍛えるため,各施設においては
武道(剣道・柔道)訓練が活発に行われ
ています。刑事施設内において各種武道
大会も開催しているほか,日本一を決め
るための大会である全日本選手権大会に
出場する職員もいます。
刑事施設には,仕事と武道を両立させ
ることができる環境があります。
武道訓練
一人の人間として,受刑者と正面から向き合い,更生へと導く。
責任と誇りある仕事。
刑務所においては,刑の執行として懲役受刑者に作業を科すだけで
なく,なぜ罪を犯したか,どうすれば罪を繰り返さず社会で生きてい
けるかについて,同じ課題を持つ者同士で話し合ったり,考えさせた
りするために,薬物依存や性犯罪,窃盗などに関する各種改善指導を
行っています。改善指導は,受刑者に対し,犯罪の責任を自覚させ,
健康な心身を培わせ,社会生活に適応するのに必要な知識や生活態度
を習得させるために行うもので,一般改善指導と特別改善指導があり
ます。一般改善指導は,講話,体育,行事,面接,相談助言その他の
方法により,被害者やその遺族等の感情を理解させ,罪の意識を培わ
せることなどを目的として行います。特別改善指導には,1「薬物依
存離脱指導」 ,2「暴力団離脱指導」,3「性犯罪再犯防止指導」,
4「被害者の視点を取り入れた教育」,5「交通安全指導」,6「就
労支援指導」があります。
工場勤務
懲役受刑者が日中働く工場にお
いて,刑務作業の監督・生活指導
等を行います。勤務中は,常に受
刑者の動静を把握するよう心掛け
ます。常に緊張感を持ち,受刑者
の人数,動静を把握しながら勤務
しています。
少年鑑別所や刑事施設,少年院などで,心理学の専門性を発揮する専門職員です。
少年鑑別所では,少年に対して面接や各種心理検査を行い,知能や性格等の資質上の特
徴,非行に至った原因,今後の処遇上の指針を明らかにします。
刑事施設では,受刑者の改善更生を図るため,面接や各種心理検査を行い,犯罪に至っ
た原因,今後の処遇上の指針を明らかにします。また,改善指導プログラムを実施したり,
受刑者に対するカウンセリングを行ったりもします。
少年院では,個々の少年に関する矯正教育の計画の策定や各種プログラムの実施,処遇
効果の検証等に携わります。
法務技官(心理)
鑑別面接
少年の話にじっくり耳を傾け,少年
の気持ちや考え方の特徴を理解し,今後
の立ち直りを一緒に考えます。
処遇調査(面接)
刑務所で勤務する場合,面接を通じて,
犯罪に至った原因を受刑者と共に考えてい
きます。
法務教官とのカンファレンス
行動観察を担当する法務教
官と,少年の所内生活や課題
への取組みなどについて情報
交換を行います。
集団方式の心理検査に加えて,少年を
より詳しく理解するために,必要に応じ
て,個別方式の心理テストを実施します。
個別心理検査
判定会議
鑑別面接や心理検査,居室内生活や運動
等の観察場面における行動観察,健康診断
や診察等の結果から得られた情報を判定会
議において統合し,少年の資質の特質や非
行に走らせた要因等を明確にし,改善更生
のための最適の処遇方針等を検討
法務教官や医師などと共に,
少年の処遇の方針を検討する
重要な会議です。
鑑別結果通知書作成
審判や少年院・保護観察所での指導・援
助に活用されるレポートです。分かりやす
くエッセンスを盛り込んだレポートを作成
します。
心理相談
地域の一般の方や,保護者,
学校の先生などからの相談に
も応じています。
専門性を活かしながら,相手にとって最善の道を探す。
非行・犯罪臨床の最前線
改善指導プログラム
刑務所で勤務する場合,認
知行動療法などの手法を取り
入れたプログラムを,グルー
プワーク形式で受刑者に実施
します。
(箱庭療法※(注記)の様子)
※(注記)箱庭療法:セラピストが見守る中,クライエントが自発的に,砂の入った箱の中にミニチュア玩具を置き,また砂自体を使って,自由に何かを表現したり,遊ぶことを通して行う心理療法です。
法務教官は,少年院や少年鑑別所などに勤務する専門職員です。少年たちと真剣に向き
合い,社会復帰を助ける仕事です。
少年院では,健全なものの見方や考え方などを指導する生活指導,基礎学力を付与する
教科指導,職業生活に必要な知識・技能を習得させる職業指導などの矯正教育を行うとと
もに,関係機関との連携の下,出院後の生活環境の調整,修学に向けた支援や就労支援等
の円滑な社会復帰につなげるための支援を行います。
少年鑑別所では,少年の心情の安定を図りつつ,面接や行動観察を実施し,法務技官
(心理)と協力して,少年の問題性やその改善の可能性を科学的に探り,家庭裁判所の審
判や少年院・保護観察所等における指導に活用される資料を提供します。
刑務所に勤務し,受刑者の改善指導等に携わる場合もあり,性犯罪や薬物依存などに関
わる問題性に働き掛ける指導のほか,就労支援指導や教科指導等を行っています。
法務教官
少年院では,少年,保護者と面接を行い,
出院後の生活について話し合います。
教官同士で情報を共有。
少年のために,お互いに知恵
を出し合い,支えます。
生活指導(日記指導)
少年の日記に目を通し,丁寧
にコメントします
義務教育,高等学校教育に準じた教育
のほか,補習指導を通じて,社会復帰に
資する基礎学力を身に付けさせることを
目指します。
職業指導(資格取得)
体育指導
体育の時間は,少年たちも元気
っぱい。健全な心と体を育てま
。体力向上はもとより,忍耐力,
己肯定感を養います。
自立への道と社会復帰への道を指し示す。
矯正施設には,その他,様々な専門的な知識や経験
を有する職員が活躍しています。
障害者や高齢者の社会復帰を社会福祉機関などと連
携して支援する「社会福祉士」や「精神保健福祉士」,
臨床心理士などの資格をいかして改善指導を行う「処
遇カウンセラー」,キャリアコンサルタントなどの資
格をいかして出所後の就職に役立つ支援をする「就労
支援スタッフ」などです。 (姫路少年刑務所)
様々なスタッフ 更生を支えるために
☆御質問にお答えします☆
(少年刑務所)
少年刑務所は,16歳以上20歳未満
の少年受刑者や,26歳未満の成人受刑
者を収容しています。
更生のための矯正処遇に力を入れてい
るのが特色であり,実際は,改善指導や
職業訓練を受講する26歳以上の受刑者
を収容することがあります。
生活指導(個別面接)
少年の問題性の改善と健全なものの見方,
考え方,行動の仕方などを育成することを
目指します。少年と1対1で真剣に向き合
います。とても貴重な時間です。
働く意欲,態度,習慣などを身に付け,
資格取得を目指します。少年の努力の結果,
資格を取得したときの喜びはひとしおです。
電気工事士や大型特殊自動車の運転免許を
取得できる施設もあります。
チームワーク(同僚と共に)
保護者に対する協力の求め
(親子交流会)
チームワーク(同僚と共に