(令和5年12月 改訂)
保護観察・少年院送致となった生徒の
復学・進学等に向けた支援について
令和元年6月
法務省矯正局・保護局
目 次
はじめに
1 再非行防止に向けた取組について································ 1
2 保護観察・少年院送致に至る手続の流れ·························· 2
I 少年鑑別所について·············································· 3
1 少年鑑別所とは················································ 3
2 少年鑑別所での生活············································ 3
3 学校との連携·················································· 4
(1)少年鑑別所在所中の生徒との関わり···························· 4
ア 学校生活への円滑な復帰に向けて···························· 4
イ 健全な育成のための支援···································· 4
ウ 面会や手紙のやりとり······································ 5
(2)非行・犯罪の防止に向けた支援等······························ 5
ア 個別ケースに関する連携例·································· 6
イ 研修・法教育等に関する連携例······························ 6
II 保護観察について················································ 8
1 保護観察とは·················································· 8
2 保護観察の流れ················································ 8
3 中学校や高等学校に在籍している保護観察対象者に対する処遇······ 9
4 学校との連携·················································· 9
(1)保護観察対象者の処遇について································ 9
(2)犯罪予防活動について········································ 10
III 少年院について·················································· 13
1 少年院とは···················································· 13
2 少年院における処遇············································ 13
(1)基本的な制度················································ 13
ア 矯正教育課程·············································· 13
イ 個人別矯正教育計画········································ 15
ウ 入院から出院までの流れ···································· 15
(2)矯正教育···················································· 16
(3)社会復帰支援(学校への復学支援等を含む。
)··················· 17
3 少年院での生活················································ 17
(1)一日の流れ·················································· 17
(2)寮生活······················································ 18
(3)少年院における学校の教育課程に準ずる教育···················· 18
4 学校との関わり·················································· 20
(1)義務教育段階の生徒について···································· 20
ア 入院通知···················································· 20
イ 学習状況の連絡·············································· 20
ウ 面会等······················································ 20
エ 復学調整···················································· 21
オ 卒業証書の授与·············································· 21
カ 高等学校等の受験············································ 21
キ 出院後のサポート体制の構築に向けて·························· 21
(2)高等学校の生徒等について······································ 22
5 保護者に対する協力の求め········································ 22
【事例】
事例1【保護観察処分】生徒の発達上の課題に配慮した指導を連携して行うこと
で高等学校に合格した例
事例2【保護観察処分】高等学校と保護観察所が連携して関わることで生活が安
定した例
事例3【犯罪予防活動】薬物乱用防止教室
事例4【犯罪予防活動】学校教諭との定期連絡会
事例5【犯罪予防活動】中学校での「3年生面接」への協力
事例6【犯罪予防活動】地域の防犯パトロール
事例7【犯罪予防活動】保護者を対象とした教育相談座談会
事例8【少 年 院 送 致】学校と少年院が課題を共有して指導に当たることで円滑
に復学できた例
事例9【少 年 院 送 致】在院中に卒業式を迎え、中学校から卒業証書を授与され
た例
事例 10【少 年 院 送 致】
中学校及び高等学校の協力を得て少年院在院中に高校受
験を行った例
事例 11【少 年 院 送 致】
地域の支援体制を整えながら特別支援学校に編入した例
事例 12【少 年 院 送 致】在院中に通信制高校に入学し、学校と少年院が連携して
支援を行った例
【資料】
少年院Q&A 1はじめに
1 再非行防止に向けた取組について
非行により保護観察や少年院送致となった少年が、
再び非行をしないようにするため
には、少年自身が自分の行為の責任を自覚し、被害者の方々の心情等を理解した上で、
自ら社会復帰のために努力していくことが重要です。
そのため、
保護観察所や少年院に
おいては、
一人一人の特性や必要性に応じた指導を行っていますが、
厳しい生育環境や
不十分な学力、
障害等、
様々な生きづらさを抱える少年たちが地域社会の中で孤立する
ことなく、再非行しないで生きていくためには、保護観察所、少年院といった刑事司法
関係機関のみならず、政府・地方公共団体・学校・民間協力者が一丸となった取組が必
要です。
平成28年12月、
「再犯の防止等の推進に関する法律」(平成28年法律第104
号)が成立・施行されました。これは、再犯の防止等に関する国及び地方公共団体の責
務を明らかにするとともに、
再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進して
いく基本事項を示した法律であり、翌年には、その推進を図るため、再犯防止推進計画
(第一次)が閣議決定されました。政府においては、地方公共団体や民間協力者等と連
携しながら、
取組を推進してきたところ、
令和5年3月、
第一次計画の内容を発展させ、
再犯防止施策の更なる推進を図るため、
第二次再犯防止推進計画が閣議決定されました。
第二次計画には、7つの重点課題が掲げられ、その一つに「学校等と連携した修学支援
の実施」があり、その具体的施策として、1児童生徒の非行の未然防止等、2非行等に
よる学校教育の中断の防止等、
3学校や地域社会において再び学ぶための支援が盛り込
まれています。
少年にとって、学びの継続は、進路の選択肢を増やし、生活の安定を図るためにも極
めて重要です。図1は、保護観察終了時の再処分率(保護観察期間中に再非行・再犯に
より新たな保護処分又は刑事処分を受けた者の人員の占める比率)を、終了時の就労・
修学状況別に見たものですが、保護観察終了時に職に就いていた者及び学生・生徒で
あった者の再処分率は、無職の者に比べて明らかに低いことが分かります。
図1 保護観察終了時の再処分率(終了時の就学・就労状況別)
(注記)令和5年版犯罪白書 279 頁から引用(令和4年)
1 保護観察処分少年 2 少年院仮退院者 2非行をした少年が、再び学校に戻って居場所を得ること、また、進学等の形で学びを
継続していくことについて、
学校関係者の皆様のお力添えをいただければ、
少年の改善
更生にとって大変大きな力となりますので、御配慮のほどよろしくお願いいたします。
2 保護観察・少年院送致に至る手続の流れ
保護観察及び少年院送致に至る一般的な手続の流れについては、図2のとおりです。
少年事件は、
検察官などから家庭裁判所に事件の係属が移されます。
家庭裁判所が事
件を受理した後、家庭裁判所調査官によって少年本人や保護者、参考人について、非行
の原因や少年の抱える問題を明らかにし、
どうすれば立ち直ることができるかを見極め
るための調査(社会調査)が行われます。この調査は、多くは、少年が在宅のまま行わ
れますが、少年の身柄を保全して鑑別をする必要がある場合は、観護の措置が執られ、
少年鑑別所へ収容されます。
少年鑑別所による鑑別の結果は、
家庭裁判所に通知され、
家庭裁判所が行う決定の資
料となります(鑑別及び観護の措置については「I 少年鑑別所について」を参照)。
家庭裁判所が行う保護処分
(非行のある少年に対して、
性格の矯正及び環境の調整を
目的として行われる処分)の決定には、保護観察、児童自立支援施設・児童養護施設送
致、
少年院送致の3種類があります。
通常の社会生活を営ませながら行うのが保護観察
であり、
施設への収容を伴うのが児童自立支援施設・児童養護施設送致及び少年院送致
です。
法務省がその執行を所管しているのは、保護観察処分及び少年院送致であり、以降、
この2つの処分と、
両処分において必要となる学校との連携について説明します。
また、
両処分の説明に先立って、少年鑑別所についても説明します。
図2 手続の流れ警察等検察庁
家庭裁判所
I少年鑑別所II保護観察所III少年院
(逆送)
少年院送致
保護観察処分
在宅
少年審判
(観護の措置)
(仮退院)保護観察終了児童自立支援施設等送致児童自立支援施設等 31 少年鑑別所とは
少年鑑別所は、1家庭裁判所等の求めに応じ、鑑別を行うこと、2観護の措置が執
られて収容している者等に対して、
健全な育成のための支援を含む観護処遇を行うこと、
3地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助
(地域援助)
を行うことを目的と
する、法務省所管の施設です。
(注記) 少年鑑別所の詳細については、法務省ホームページを御覧ください。
(http://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei_kyouse06.html)
2 少年鑑別所での生活
観護の措置が執られると、
少年は、
落ち着いた気持ちで家庭裁判所の審判を受けるこ
とができるよう、少年鑑別所で規則正しい生活を送ります。観護の措置の期間は、おお
むね4週間ですが、
特に必要のある場合は、
家庭裁判所の決定で延長されることがあり
ます(最長8週間)。
少年鑑別所には、
法務技官
(心理学等に関する専門的な知識を有する国家公務員であ
り、公認心理師や臨床心理士等の資格を有している者もいます。)や、法務教官(教育
学や心理学に関する専門的な知識を有する国家公務員であり、
教員免許を有している者
もいます。)が勤務しています。少年一人一人に、担任の法務技官と法務教官がつき、
これらの職員が個別に少年に対応しています。
在所中は、審判に向けて、家庭裁判所調査官による社会調査に加え、少年鑑別所の法
務技官による面接や心理検査、
法務教官による行動観察等により、
心身の状況等の鑑別
が行われます。
少年鑑別所における鑑別は、
少年の資質面に特に焦点を当てた調査に重
I 少年鑑別所について 4点を置いています。他方、家庭裁判所調査官による社会調査は、少年本人に加え、少年
を取り巻く家庭環境、学校、職場等に関する調査や調整なども含む、幅広なものとなっ
ています。このように、重点を置く役割を分担しつつ、少年鑑別所と家庭裁判所調査官
は協働しています。
少年鑑別所は、少年院と異なり、教育を行う機関ではありませんが、少年の健全な育
成への配慮として、
その自主性を尊重しつつ、
法務教官等が基本的な生活習慣等に関す
る助言・指導を行ったり、学習を支援したり、読書、講話、季節の行事等の機会を設け
たりしています。
3 学校との連携
(1)少年鑑別所在所中の生徒との関わり
ア 学校生活への円滑な復帰に向けて
家庭裁判所における審判決定等を見ると、少年院送致が約34%、保護観察に
付される場合が約42%、家庭裁判所調査官による試験観察が行われる場合が約
17%であり、審判の結果、約6割程度が社会生活に戻ることとなります。学校
生活へ円滑に復帰するため、学校の先生方には、少年鑑別所において是非生徒と
の面会をしていただきたいと考えており、保護者の方と今後の支援について話し
合いをしていただくことも有効と考えています。
学校の先生方から、少年鑑別所の職員に対して、生徒のことや今後の学校生活
についてお話されたいこと等がございましたら、お気軽にお申し出ください。
イ 健全な育成のための支援
少年鑑別所では、健全な育成のための支援として、職員や外部の協力者の方々
により、個別又は少人数での学習等の機会を設けています。学習を希望する生徒
には、学習図書や教材を、少年鑑別所から貸し出しています。
また、在籍する学校から教科書や資料集、学習用のプリント等の教材の差入れ
もできますので、必要に応じて保護者の方等と御相談をいただきつつ、学習の継 5続あるいは学習意欲を持つことができるよう、生徒に対する働き掛けを行ってい
ただければと思います。
なお、少年鑑別所において、相談・指導を受ける場合であって、一定の要件を
満たす場合には、指導要録上出席扱いとすることができます。
ウ 面会や手紙のやりとり
少年鑑別所へ入所したことについて、在籍する学校に少年鑑別所からお知らせ
をすることはありませんが、保護者に対して、必要に応じて学校に連絡するよう
に説明しています。
学校の先生方が生徒との面会を希望される場合は、面会の日時や面会時に話す
内容等について、事前に保護者の方等と御相談いただくなどした上で、面会可能
な時間に少年鑑別所にお越しください。その際に、身分を確認できるものをお持
ちいただくと手続がスムーズです。
面会時に学校の先生方から、生徒の学習進度の確認、学習上の個別指導等を行
う場合には、面会の時間等について柔軟に対応することもできます。
また、手紙のやりとりもできますので、職員に御相談ください。
(注記) 各少年鑑別所の住所及び連絡先は、法務省ホームページを御覧ください。
(http://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei_kyouse16-05.html)
(2)非行・犯罪の防止に向けた支援等
少年鑑別所は、少年の健全育成を担う法務省所管の国の機関として、少年法施行
以来、長きにわたり、非行等のある少年たちと向き合ってきました。
これまで私たちが培ってきた専門的な知識や技術を活用して、地域社会の非行・
犯罪の防止に貢献するため、少年鑑別所では、「法務少年支援センター」として、
地域の方々からの相談をお受けしています。同センターは、非行や犯罪行為のみな
らず、保護者との関係、職場や学校などでのトラブル、交友関係などの問題や悩み 6◇ 学校の先生への研修
小学校、中学校、高校において、それぞれの時期に見られる特徴や問題行動、児童・生徒た
ちに関わる際のポイント等について研修を行っています。
連携の例3 万引きで停学処分を受けた生徒
高校の先生から相談を受けました。
生徒と職員が面接を行い、心理検査などを実施しました。万引きの背景に、どのような
問題があるのか、今後、さらに問題行動が深刻なものとなっていくおそれはないかなどを
検討し、その結果を、生徒と保護者、学校の先生と話し合いました。
その後も、学校でのケース会議に定期的に参加し、生徒への関わり方などについて提案
をしました。
連携の例1 周りとうまくなじめずに同級生とトラブルになった生徒
中学校の先生から相談を受けました。
保護者の方に、子供の性格や発達上の特性を理解したいという
希望があり、生徒も自分の性格を理解したいということでしたので、
職員が生徒と保護者の方と面接を行い、心理検査を行いました。
保護者の方とは、お子さんとの関わり方について話し合い、助言
を行いました。また、生徒とは、暴力防止を目的としたワークブッ
クを用いたり、気持ちを言葉で伝える練習などをしたりして、継続
的に助言・支援をしました。
連携の例 2 性的な問題行動が心配な生徒
中学校の先生から相談を受けました。
異性との関わり方に不適切な面があり、性的な問題行動の広がりが心配される生徒と、
その保護者の方に対して、職員が面接を行いました。
生徒とは、性的な問題行動の防止を目的としたワークブックを用いて、他者との関わり
方や、相手の気持ちに配慮することの大切さについて話し合うなどして、関わりを継続し
ました。
について、御本人や御家族はもちろんのこと、学校の先生方などから、数多くの御
相談をいただいていますので、お気軽に御利用ください。また、法教育、学校等が
主催する研修会、講演会などに、少年鑑別所の職員を派遣し、非行や犯罪の防止、
子育て、思春期の子供の理解と望ましい接し方などについて説明したり、教育・指
導方法の提案などを行ったりしています。
御希望がありましたら、最寄りの少年鑑別所に御連絡ください。
ア 個別ケースに関する連携例
イ 研修・法教育等に関する連携例
少年鑑別所による研修・法教育では、次のように、非行・犯罪の問題や思春期の
子供たちの行動理解等に関する専門的な知識やノウハウを活用しながら実施してい
ます。
最近の
非行少年の特徴
発達上の課題のある
子供の理解と支援
少年非行の防止と
地域の力
思春期の子供への
接し方 7◇ 児童・生徒への法教育
少年鑑別所の職員が学校へ出向いて、児童生徒に対して授業を行っています。テーマとし
て、例えば、次のようなものがあります。
◇ ケース検討会議への参加
学校での生徒のケース検討会議に参加し、問題行動の理解や指導、働き掛けのポイントに
ついて助言を行ったり、面接や心理検査の結果について情報提供を行ったりしています。
例えば、暴力、性的問題行動、万引き、交友関係、物質乱用等、様々な依頼に対応してい
ます。
また、法務少年支援センターは、要保護児童対策地域協議会などの地域の関係機関等と
のネットワークに参画していますので、学校内でのいじめや問題行動など生徒指導上の課題
への対応に当たり、多機関連携の下で助言を得たり、役割分担をして支援を行ったりするこ
とができます。
(注記) 法務少年支援センターの詳細は、法務省ホームページを御覧ください。
(http://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei_k06-1.html)
インターネットや SNS
の危険性について
少年保護手続の
仕組みについて
法律やルールを
守ることについて
薬物など特定の非行・
犯罪の防止について 81 保護観察とは
保護観察は、
犯罪をした人又は非行のある少年が、
実社会の中でその健全な一員とし
て更生するように、
通常の社会生活を営ませながら、
保護観察官
(注1)
及び保護司(注2)が「指導監督」及び「補導援護」を行うものです。このような関わりは、「処遇」
という言葉が用いられることもあります。
指導監督は指示や命令を含むものですが、それらに一度従わなかっただけで身柄拘束などの厳しい措置があるわけではありません。
補導援護は援助的なもので、各種助言や就労等の支援が含まれます。
保護観察を受ける少年には、主に家庭裁判所の決定により保護観察に付された少年
(保護観察処分少年)、少年院からの仮退院を許されて保護観察に付されている少年(少年院仮退院者)の2つのパターンがあります。
保護観察中の少年には、「遵守事項」を守る義務が課されます。遵守事項は、健全な
生活態度を保持すること、保護観察官や保護司の呼出し・訪問に応じること、保護観察
を誠実に受けることなど保護観察対象者全てに共通する「一般遵守事項」と、その人の
問題性に応じて定められる「特別遵守事項」があります。少年がこれらに違反すると少
年院に送致するなどの措置を執られることがあります。
ただし、
施設に収容するという
ことは、人権の重大な制約になりますから、非行をする危険性が明らかであり、保護観
察では指導の限界に達しているといった危機場面に至らなければ、
措置を執られること
はありません。
(注1)保護観察官は常勤の国家公務員で、医学、心理学、教育学、社会学その他の
専門的知識を有し、全国50か所(各都道府県1か所・北海道は4か所)にあ
る保護観察所に配属されている専門職です。保護観察官は、主として、保護観
察の実施計画の立案、保護観察対象者の危機場面における介入、改善更生した
場合の保護観察の打ち切りに関する措置等を行います。
(注2)保護司は、民間のボランティアですが、非常勤の国家公務員の身分を有し、
毎月、担当する保護観察対象者と面接し、必要な助言等を行います。
(注記) 保護観察の詳細については、法務省ホームページを御覧ください。
(http://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo_hogo01.html#01)
2 保護観察の流れ
保護観察の期間は、
基本的に、
保護観察処分少年については20歳まで又は2年間の
長い方、少年院仮退院者については原則として20歳に達するまでです。ただし、保護
観察を継続しなくても、
確実に改善更生をすることができると認められるときは、
保護
観察処分少年は、保護観察所の長の判断による「解除」、少年院仮退院者は、地方更生
II 保護観察について 9保護委員会の決定による
「退院」
という早期の終了措置が執られて保護観察が終了しま
す。
(注記) 保護観察所の住所及び連絡先は、法務省ホームページを御覧ください。
(http://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo_hogo01-01.html)
3 中学校や高等学校に在籍している保護観察対象者に対する処遇
中学校や高等学校に在籍している保護観察対象者についても、他の保護観察対象者
と同様に遵守事項を守って生活することが義務づけられており、例えば、「正当な理
由のない欠席、遅刻又は早退をすることなく学校に通うこと」「学校をやめようとす
るときは、緊急の場合を除き、あらかじめ、保護観察官又は保護司に申告すること」
などの特別遵守事項が設定されていることがあります。保護観察においては、生徒が
これらの遵守事項を守って学校に通い続けられるように生徒本人に対し指導・助言を
していくとともに、生徒の保護者に対し、監護に関する責任を自覚させ、保護観察対
象者の改善更生に資する関わりをするよう指導や助言を行うほか、学校やその他の関
係機関と連携して、生徒が学校へ通い続けられるような環境を整えています。また、
保護観察対象者の修学に係る意向及びニーズ把握を行い、
それを踏まえて、
学習支援、
学校等の関係機関とのケース会議、必要な情報の提供等の必要な支援を組み合わせる
就学支援パッケージを実施しています。
その他、地域社会の役に立つ活動を行うことを通じて、善良な社会の一員としての
自覚を高め、二度と犯罪や非行をせずに生活していくことができるよう、保護観察所
では、必要な保護観察対象者に対して、特別遵守事項として、社会貢献活動を行うこ
とを義務付けています。社会貢献活動の内容としては、主に、公園や海岸といった公
共の場所での環境美化、福祉施設での清掃、介護・レクリエーションの補助等があり
ます。
4 学校との連携
(1)保護観察対象者の処遇について
保護観察は、
施設に収容せずに通常の社会生活を営ませながら指導等を行うもので
すので、保護観察となった生徒は、他の生徒と同様に学校へ通うこととなります。保
護司との面接は通学に支障のない日時が設定されますので、
学校生活に直接的な影響
はありません。
ただし、
社会貢献活動の実施は平日の日中に行われることがあります。
この場合、基本的には、個別の事案に応じてあらかじめ学校側と協議を行い、社会貢
献活動について理解と協力を得るよう努めた上で、
活動実施日には学校を休ませて参
加させることとなります。なお、保護観察所が実施する社会貢献活動に参加するため
に中学校を欠席するような場合には、本人にとって不利にならないように、学校長の
判断により、その日を出席を要しない日(「選抜のための学力検査の受検その他教育
上特に必要な場合で、校長が出席しなくてもよいと認めた日数」)として取り扱うこ
ともできることとなっていますので、
社会貢献活動に対する理解と協力をお願いした
いと思います。保護観察の目的は、保護観察対象者の再非行の防止と改善更生を図る 10ことにあります。対象者が改善していけば、学校にも適応していくことになるでしょ
うから、その点で学校と保護観察所の目標は重なり合います。保護観察となった生徒
は、これまで学校生活や交友関係等で、様々な問題を抱えていることも多く、他の生
徒と一緒に再び学校生活に馴染むまでには、困難が伴うことが少なくありません。そ
のため、当該生徒の再犯・再非行を防ぎ、その改善更生を助けるためには、家族を始
め、学校、福祉、医療、司法等、その生徒に関わる機関が連携し、それぞれが有する
情報を共有して、各機関の専門性を生かしていくことが重要です。
保護観察所が学校にお願いしたいこととしては、
問題行動を起こした生徒が学校外
で不良交友に流れることを防ぐために、学校に居場所を作っていただくことです。ま
た、高校卒業の資格が得られないと、進路の選択肢が限定される場合もありますし、
18歳未満であれば就労が困難な状況が生じ、
行動や心情が不安定になる場合もある
ため、高校へ進学した者については、できるだけ高校への通学を継続させてほしいと
も考えています。
また、学校と保護観察所がそれぞれその立場を活用することにより、生徒のために
多角的なアプローチを行うことが重要です。学校は、日々生徒に接し、教育活動を行
う中で指導・支援を行う一方、保護観察所は、権力的な立場からの指導が可能です。
遵守事項の違反は施設収容の可能性があるため、
遵守事項を守るよう強い心理規制を
掛けることができ、先述のように、「学校に通うこと」という遵守事項を定めること
もあります。さらに、保護観察所の社会資源を活用して、ボランティアによる学習支
援やハローワークと連携した就労支援を実施することもできます。
立場の異なる関係
者が連携し、多角的に生徒の状況を理解し、アプローチしていくためには、生徒に関
する情報、各専門分野の視点及び各関係者のできることを持ち寄ることが重要です。
そのために、
お近くの保護観察所と顔の見える関係を作っていただきたいと思います。
しろまる 事例1【保護観察処分】生徒の発達上の課題に配慮した指導を連携して行うことで高等
学校に合格した例
しろまる 事例2【保護観察処分】高等学校と保護観察所が連携して関わることで生活が安定した例(2)犯罪予防活動について
多くの保護司は、犯罪予防活動の一環として、特に"社会を明るくする運動"(注
1)の強調月間である7月を中心に、小・中学生を対象とした非行防止教室や生徒指
導担当教員との座談会などを開催しています。また、保護司会(注2)によっては、
学校との連携を進めるための窓口となる保護司を指名するなどして学校と定期的な
協議会や意見交換会を開催しているものもあります。このような関わりも、学校と保
護観察所の連携の強化に有益なものとなりますので、活用してください。
1 非行防止教室・薬物乱用防止教室
小中学生及び高校生を対象に、学校や教育委員会等の学校関係者や警察、保健
所等の関係機関と連携し、保護司が学校等に出向き、薬物乱用防止教室や更生保
護に関する講座・研修等を行っています。 11しろまる 事例3【犯罪予防活動】薬物乱用防止教室
2 学校教諭との座談会
学校との連携を図るとともに、少年の非行防止のため、生徒指導担当教諭等と
の座談会や更生保護に関する勉強会等を開催し、在学中の保護観察対象者につい
ての意見交換や、学校教諭からの相談に対して助言等をしています。
しろまる 事例4【犯罪予防活動】学校教諭との定期連絡会
3 その他の活動
* 学校と連携して行う地域ぐるみの健全育成活動
学校と保護司が企画し、PTAや町内会、地元の商店街等とともに、子供の
健全育成を目的とした地域ぐるみの行事を実施しています。
* 子供たちの居場所づくり、学習支援
小中学生を対象に、学校、警察、BBS会(注3)等の関係機関・団体や保
護者と連携し、更生保護サポートセンター(注4)を子供たちの居場所として
開放するなど、子供たちを地域で見守る活動を実施しています。
* 保護者に対する相談会等
地域の非行防止を目的に、保護司会では、小中学校と連携して、子育てやし
つけに悩む児童・生徒の保護者を対象とした教育相談会等を開催し、保護者か
ら寄せられる不安に対して保護司が助言を行っています。
しろまる 事例5【犯罪予防活動】中学校での「3年生面接」への協力
しろまる 事例6【犯罪予防活動】地域の防犯パトロール
しろまる 事例7【犯罪予防活動】保護者を対象とした教育相談座談会
(注記) 保護司と学校との連携事例等を紹介したパンフレットを法務省ホームページ
で公開しています。
(https://www.moj.go.jp/content/001345374.pdf) 12(注1)「社会を明るくする運動」とは、国民が犯罪や非行の防止と犯罪をした人や非行のある少
年の改善更生について理解を深めることを主眼に法務省が主唱する全国的な運動です。毎年
7月の強調月間を中心に、全国で様々な行事が実施されており、"社会を明るくする運動"
作文コンテストの実施に当たっては、地域の保護司が地元の小中学校を訪問するなどして、
協力を求めています。
(注2)「保護司会」とは、主に市区町村を単位とする地域ごとに、保護司によって構成される組
織であり、全国に約900の保護司会があります。保護司会は、保護司法に定められた組織
であり、地域におけるネットワークづくりや保護司研修の実施、"社会を明るくする運動"
等の犯罪予防活動等を行っています。
(注3)「BBS(Big Brothers and Sisters Movement の略)会」とは、様々な問題を抱える少
年と、兄や姉のような身近な存在として接しながら、少年が自分自身で問題を解決したり、
健全に成長したりしていくのを支援するとともに、犯罪や非行のない地域社会の実現を目指
す青年ボランティア団体で、全国で約4,400人の会員が参加しています。
(注4)更生保護サポートセンターとは、全ての保護区に設置された保護司や保護司会が行う地域
の更生保護活動の拠点であり、保護司が常駐して、保護司の処遇活動に対する支援や関係機
関との連携による地域ネットワークの構築等を行っています。
「保護司と学校との連携パンフレット」 13III 少年院について
1 少年院とは
少年院は、
家庭裁判所の決定により、
保護処分として少年院に送致された少年等を収
容し、矯正教育(後記2(2)参照)と社会復帰支援(後記2(3)参照)を行う法務
省所管の施設です。
少年院は、
おおむね12歳から20歳までの少年を収容していますが、
家庭裁判所の
決定等により、20歳を超えても収容することができます。
少年院には、次のとおり種類があり、入院時の年齢、犯罪的傾向の程度、心身の状況
等に応じて、収容しています。保護処分として少年院送致となる少年が、第1種から第
3種のどの種類の少年院に送致されるかは、家庭裁判所の決定によります。
しろまる 第1種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がないおおむ
ね12歳以上23歳未満のもの
しろまる 第2種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない犯罪傾
向が進んだおおむね16歳以上23歳未満のもの
しろまる 第3種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむ
ね12歳以上26歳未満のもの
しろまる 第4種 少年院において刑の執行を受ける者((注記))
(注記) 懲役又は禁錮の刑事処分を受けた少年受刑者については、16歳に至るまで少
年院において矯正教育を実施することができるとされています。ただし、令和5
年11月末現在まで、第4種少年院への収容実績はありません。
しろまる 第5種 2年の保護観察に付されている特定少年であって、かつ、当該保護観
察中に遵守すべき事項を遵守しなかったと認められる事由があり、その
程度が重く、かつ、少年院において処遇を行わなければ本人の改善及び
更生を図ることができないと認められ、少年院に収容する旨の決定を受
けた者
(注記) 少年院の詳細については、法務省ホームページを御覧ください。
(http://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei_kyouse04.html)
2 少年院における処遇
(1)基本的な制度
ア 矯正教育課程
少年院では、
少年の特性に応じて計画的
・体系的
・組織的に矯正教育を行うため、
「矯正教育課程」という教育のコースを設けています。矯正教育課程は、少年の年
齢、心身の障害の状況、犯罪的傾向の程度、少年が社会生活に適応するために必要
な能力その他の事情に照らして、一定の共通する特性を有する少年の類型ごとに、
矯正教育の重点的な内容及び標準的な期間を定めたものです。 14少年院の
種類
矯正教育課程 符号 在院者の類型 矯正教育の重点的な内容
短期義務教育課程 SE
原則として14歳以上で義務教育を終了しない者
のうち、その者の持つ問題性が単純又は比較的軽
く、早期改善の可能性が大きいもの
中学校の学習指導要領に準拠した、短期
間の集中した教科指導
義務教育課程I E1
義務教育を終了しない者のうち、12歳に達する
日以後の最初の3月31日までの間にあるもの
小学校の学習指導要領に準拠した教科指導義務教育課程II E2
義務教育を終了しない者のうち、12歳に達する
日以後の最初の3月31日が終了したもの
中学校の学習指導要領に準拠した教科指導短期社会適応課程 SA
義務教育を終了した者のうち、その者の持つ問題
性が単純又は比較的軽く、早期改善の可能性が大
きいもの
出院後の生活設計を明確化するための、
短期間の集中した各種の指導
社会適応課程I A1
義務教育を終了した者のうち、就労上、修学上、
生活環境の調整上等、社会適応上の問題がある者
であって、他の課程の類型には該当しないもの
社会適応を円滑に進めるための各種の指導社会適応課程II A2
義務教育を終了した者のうち、反社会的な価値
観・行動傾向、自己統制力の低さ、認知の偏り
等、資質上特に問題となる事情を改善する必要が
あるもの
自己統制力を高め、健全な価値観を養
い、堅実に生活する習慣を身に付けるた
めの各種の指導
社会適応課程III A3
外国人等で、日本人と異なる処遇上の配慮を要す
る者
日本の文化、生活習慣等の理解を深める
とともに、健全な社会人として必要な意
識、態度を養うための各種の指導
支援教育課程I N1
知的障害又はその疑いのある者及びこれに準じた
者で処遇上の配慮を要するもの
社会生活に必要となる基本的な生活習
慣・生活技術を身に付けるための各種の
指導
支援教育課程II N2
情緒障害若しくは発達障害又はこれらの疑いのあ
る者及びこれに準じた者で処遇上の配慮を要する
もの
障害等その特性に応じた、社会生活に適
応する生活態度・対人関係を身に付ける
ための各種の指導
支援教育課程III N3
義務教育を終了した者のうち、知的能力の制約、
対人関係の持ち方の稚拙さ、非社会的行動傾向等
に応じた配慮を要するもの
対人関係技能を養い、適応的に生活する
習慣を身に付けるための各種の指導
社会適応課程IV A4
特に再非行防止に焦点を当てた指導及び心身の訓
練を必要とする者
健全な価値観を養い、堅実に生活する習
慣を身に付けるための各種の指導
社会適応課程V A5
外国人等で、日本人と異なる処遇上の配慮を要す
る者
日本の文化、生活習慣等の理解を深める
とともに、健全な社会人として必要な意
識、態度を養うための各種の指導
支援教育課程IV N4
知的障害又はその疑いのある者及びこれに準じた
者で処遇上の配慮を要するもの
社会生活に必要となる基本的な生活習
慣・生活技術を身に付けるための各種の
指導
支援教育課程V N5
情緒障害若しくは発達障害又はこれらの疑いのあ
る者及びこれに準じた者で処遇上の配慮を要する
もの
障害等その特性に応じた、社会生活に適
応する生活態度・対人関係を身に付ける
ための各種の指導
第3種 医療措置課程 D
身体疾患、身体障害、精神疾患又は精神障害を有
する者
心身の疾患、障害の状況に応じた各種の
指導
第4種 受刑在院者課程 J 受刑在院者 個別的事情を特に考慮した各種の指導
保護観察復帰指導課程I P1
保護観察再開に向けた社会適応上の指導を要する
者のうち、その者の持つ問題性が比較的軽く、早
期改善の可能性が大きいもの
保護観察を再開するための、短期間の集
中した各種の指導
保護観察復帰指導課程II P2
保護観察再開に向けた社会適応上の指導を要する
者(保護観察復帰指導課程Iに該当する者を除
く。)
保護観察を再開するための、集中した各
種の指導
第1種
第2種
第5種
少年院の種類と矯正教育課程の対応関係は次表のとおりです。
少年院の種類と矯正教育課程 15矯正教育課程は、各少年院に一つ又は複数指定されています。少年院送致の決定
を受けた少年を具体的にどの少年院に送るかを決めるのは少年鑑別所であり、少年
鑑別所は、
各少年院に指定されている矯正教育課程等を考慮した上で送致先を決定
します。そのため、例えば、A県在住の中学生が少年院送致となった場合であって
も、A県に送致すべき少年院がなければ、送致先として適当なB県の少年院に送致
されることとなります。
少年院に入院すると、少年が履修すべき矯正教育課程が指定されます。少年院で
は、矯正教育課程ごとに「少年院矯正教育課程」というカリキュラム(矯正教育課
程ごとの教育方針、目標、教育内容・方法、週間標準日課表等を定めたもの)を作
成しており、それに従って教育を受けることになります。
イ 個人別矯正教育計画
少年院に入院した少年については、速やかに、個人別矯正教育計画が策定され
ます。個人別矯正教育計画は、少年院矯正教育課程に即して、在院者の特性に応
じて行うべき矯正教育の目標、内容、実施方法及び期間その他の矯正教育の実施
に関し必要な事項を定めたものです。少年に対する教育は、この計画を基に実施
され、在院期間中、必要に応じて変更されます。
少年院での矯正教育の期間は、おおむね1年程度です。ただし、少年院送致の決
定に当たり、家庭裁判所から、少年院で行う矯正教育の期間に関して「短期間」又
は「特別短期間」という処遇勧告((注記))が付された場合は、少年院において、その
少年に上記の矯正教育課程のうち短期義務教育課程又は短期社会適応課程を指定
し、「短期間」については20週間、「特別短期間」については11週間で矯正教
育を行う計画を立てます。一方、「相当長期間」の処遇勧告が付された場合は、矯
正教育の期間が2年を超えることもあります。
(注記) 処遇勧告...保護処分の決定をした家庭裁判所は、少年の処遇に関して、勧告がで
きるとされています。法的拘束力はありませんが、少年院は尊重する義
務があります。
ウ 入院から出院までの流れ
少年院においては、処遇に段階(1級、2級、3級)を設けており、少年院に入
院するとまず3級に指定され、その後、成績の評価に応じて2級、1級へと順次進
級していきます。処遇の段階が進むにつれて、矯正教育の目標や内容・方法、社会
復帰支援の内容が出院後の社会生活を意識したものになり、
例えば、
1級になると、
少年院の外で行う社会貢献活動や職場見学なども行われるようになります。
成績は、在院者一人一人について定められた矯正教育の目標の達成度や、矯正教
育への取組状況、
規範意識や対人関係といった少年院での生活の状況が評価されま
す。予定されていた期間で、進級に必要な基準に達しなかった場合は、矯正教育の
期間が延長されることとなります。 16在院者が1級の段階に到達し、出院後の引受け体制等が整っていれば、少年院の
長は、少年院の所在地を管轄する地方更生保護委員会に仮退院の申出をします。同
委員会の審理によって仮退院が許されれば、在院者は、仮退院を許された日に少年
院を出院して引受人(保護者等)のもとに帰住します。
(2)矯正教育
少年院において、少年たちの犯罪的傾向を矯正し、健全な心身を培わせ、社会生活
に適応するのに必要な知識や能力を習得させることを目的として行う教育を
「矯正教
育」といいます。矯正教育は、個々の少年の特性に応じ、生活指導、職業指導、教科
指導、体育指導、特別活動指導を組み合わせて実施しています。
指導を担当するのは、主に少年院の法務教官(教育学や心理学に関する専門的な知
識を有する国家公務員であり、教員免許を有している者もいます。)ですが、義務教
育指導については教員免許を有する外部の方々の協力を得ているほか、体育指導(ダ
ンス等)や特別活動指導(音楽、美術、書道等)などにおいても民間協力者の協力を
得ながら指導しています。
(少年院における学校の教育課程に準ずる教育については
P18を参照ください。)
体育指導
教科指導
特別活動指導
職業指導
生活指導入院出院
しろまる 自己の問題点に目を向けさせ、
改善意欲を高めるための指導等
しろまる各少年の問題性に応じた指導
しろまる社会適応力を高めるための指導
しろまる社会性や協調性を向上させるための指導等
進級
進級3級2級
社会復帰支援
しろまる出院後の生活設計を具体化
させるための指導等1級しろまる就労・修学支援
しろまる関係機関との連携
しろまる帰住調整支援・保護者に対する協力の求め等 17生活指導:自立した生活のための基礎となる知識や生活態度を身に付けるための指
導を実施しています。生活指導以外の指導とも関連を持ち、それを補
足・統合する役割を果たしています。
【基本的生活訓練、問題行動指導、治療的指導、被害者心情理解指導、
保護関係調整指導、進路指導/特定生活指導】
職業指導:勤労意欲を高め、職業上有用な知識や技能を身に付けるための指導を実
施しています。
【職業生活設計指導、職業能力開発指導】
教科指導:義務教育や高等学校への進学を希望する者に対する指導のほか、社会生
活の基礎となる学力を身に付けさせるための指導を実施しています。ま
た、希望する者は、少年院内で、高等学校卒業程度認定試験を受験する
ことができ、受験指導を重点的に実施するコースを設けている施設もあ
ります。【義務教育指導、補習教育指導、高等学校教育指導】
体育指導:自立した社会生活を営むための健全な心身を育てることを目的とした指
導を実施しています。
特別活動指導:情操を豊かにし、自主性、自立性、協調性を育てるための指導を実
施しています。
【自主的活動、クラブ活動、情操的活動、行事、社会貢献活動】
(3)社会復帰支援(学校への復学支援等を含む。)
在院者の改善更生と円滑な社会復帰のためには、
本人に対して矯正教育を行うだけ
ではなく、出院後を見据えて、帰住先の確保や就労・修学に係る支援を行うことが重
要です。本人が変わろうとしても、周囲の環境が変わっていなければ、改善更生に向
かう道は険しくなるためです。
そこで、少年院では、出院後に自立した生活を営む上での困難を有する者に対し、
その意向を尊重しながら、様々な支援を行っています。例えば、文部科学省の協力を
得て在院中に高等学校卒業程度認定試験の受験機会を与えたり、
ハローワーク等の関
係機関の協力を得て、在院中に就職先が決まるよう就労支援を行ったり、出院後に帰
ることとなる施設や働くこととなる職場の見学を実施するなどしています。また、特
に必要なケースについては、家庭裁判所、地方検察庁、地方更生保護委員会、保護観
察所、少年鑑別所その他の関係機関の担当者が少年院において一堂に会し、その在院
者の処遇経過、今後の処遇方針及び保護関係調整等について検討し、在院中及び出院
後の処遇の一層の充実を図ることを目的とした処遇ケース検討会を開催しています。
3 少年院での生活
(1)一日の流れ
少年院では、一日のスケジュールが決まっています。少年たちは、規則正しい生
活により、社会生活に適応する力を身に付けていきます。 18<例> 平日の義務教育課程の日課の例
時間 日課
7:00 起床、役割活動
7:40 朝食、身辺整理、自主学習等
8:50 朝礼(合唱、ラジオ体操等)
9:00 教科指導(国語、数学等)
12:00 昼食、余暇時間等
13:00 生活指導、体育指導、特別活動指導(クラブ活動)等
17:00 夕食、役割活動
18:00 ホームルーム、自主学習、日記記入等
20:00 余暇時間(テレビ視聴等)
21:00 就寝
少年院は、生活する場所(寮)と矯正教育を受ける場所(教育棟、実習棟等)が分
かれていますので、朝食後、午前中の日課の準備をして出寮し、終了後は帰寮して昼
食をとり、また午後の日課のために出寮していきます。平日の日課の例は、以下のと
おりです。
土曜日や日曜日、休日は、平日よりも余暇時間の多い生活となりますが、体育指
導や教科指導といった矯正教育の時間も設けられています。
(2)寮生活
少年院の多くには、単独寮(個室のみの寮)と集団寮(集団室と個室の両方があ
る寮)があり、少年院での生活の大半は集団寮で過ごすこととなります。
各寮には、寮を担当する職員が複数おり、寮内での生活指導等を行っています。こ
の寮の職員は、日中に生活指導や職業指導を行う職員と同じであり、日中に学んだこ
とが普段の生活で生かせているかについても目を配っています。
少年には、所属寮の職員の中から、一人一人の少年について担当する職員(個別
担任)が決まります。個別担任は、担当する少年が、それぞれの矯正教育の目標を
達成し、円滑に社会復帰できるよう、個別面接などで助言・指導したり、少年の悩
みを聞いたり、家族との関係調整を図るなどして、きめ細かく関わります。
集団寮での生活では、学校のホームルームに当たるような集会や、各種の役割活
動(週番、図書係、配膳係、動植物の世話係等)があり、自主性や自律性、責任感
を育む機会となっています。
(3)少年院における学校の教育課程に準ずる教育
少年院に収容されている義務教育段階の少年については、前記2(2)のとおり、
個々の学力を踏まえながら、
教科書を用いて学習指導要領に準拠した教科指導を行っ
ています。 19また、矯正教育の分類としては教科指導以外の、生活指導や体育指導、特別活動指
導においても、学校教育における体育、道徳、総合的な学習の時間、特別活動等に相
当する指導を実施しています。
例えば、生活指導では、自分の問題行動や家族関係、交友関係等について振り返ら
せるなどしており、規範意識を醸成したり、様々な立場から考えることの大切さにつ
いて学ばせたりするといった道徳教育の内容を含んでいます。また、特別活動指導の
うち、近隣の公園や福祉施設での清掃等の社会貢献活動や、運動会や意見発表会等の
各種行事、寮内での役割活動等は、例えば、学習指導要領における特別活動の目標に
ある集団や社会の一員としてよりよい生活や人間関係を築こうとする自主的、
実践的
な態度を育てることや、総合的な学習の時間の目標にある、学び方やものの考え方を
身に付け、問題の解決に主体的、創造的、協力的に取り組む態度を育てることにつな
がっています。
少年院は、少年の健全育成を図る施設であり、学校や地域の方々の御協力を得なが
ら、幅広い学びを提供しています。
社会貢献活動(福祉施設清掃) 役割活動(配膳係)
外部講師による教科指導 体育指導 204 学校との関わり
(1)義務教育段階の生徒について
ア 入院通知
義務教育段階の生徒が少年院に入院した場合には、まず、少年院から通学してい
た学校の管理職の方へ電話等で連絡しています。
その際、
生徒の出席状況等の確認、
今後の連絡先・連絡方法等についてうかがうとともに、今後の復学、卒業に向けた
協力等についても依頼しています。
その後、書面により、少年院における処遇の流れ、在院中の面会・手紙のやり取
り、差入れの方法について連絡しますので、内容を御確認ください。また、少年院
での教科指導等の参考とするため、
指導要録の写し等の送付を依頼することがあり
ますので、御協力をお願いします。
イ 学習状況の連絡
少年院では、少年院法第26条第1項に基づき、学校教育法による学校教育に
準ずる内容の指導を行っています。生徒が出院後に円滑に学校に復学できるよう
にする観点から、入院前に生徒が通学していた学校が、少年院との連携の下、少
年院におけるこうした学習の状況等を適切に把握していると判断する場合は、保
護者が就学義務の猶予・免除の願い出をする必要はなく、引き続き通学していた
学校に在籍できます。この場合、学校は少年院において学校教育に準ずる内容の
教科指導を受けた日数について、指導要録上出席扱いとすることができます。ま
た、学校は、少年院において矯正教育を受けた日数について指導要録上出席扱い
とすることができ、
また、
当該矯正教育において行った学習の評価を適切に行い、
指導要録に記入することができます。
学校が出席扱いや学習の評価を行えるよう、少年院から学校に対し、各教科の指
導状況、少年院の矯正教育への出欠の状況等について連絡しますので、書式の御指
定(例:指導要録の様式)等があればお知らせください。また、学校の定期テスト
や教材プリントを送っていただければ、生徒に取り組ませた後に返送することもで
きますので、必要があれば御相談ください。
ウ 面会等
少年院に入院した生徒は、学校の先生方と面会や手紙のやり取りができます。在
院中も復学・進学の相談等で学校の先生方とつながりが持てることは、生徒にとっ
て改善更生に向かう大きな支えになりますので、
御配慮のほどよろしくお願いしま
す。
また、必要に応じ、面会の前後に、生徒の生活状況、復学・進学の問題等につい
て、学校の先生方と少年院の職員とで面談を行うことが可能ですので、御希望があ
れば少年院の担当者に御相談ください。面談については、少年院からお願いする場
合もありますので、よろしくお願いします。 21エ 復学調整
少年院では、処遇の段階を設けており、入院時に3級に指定し、以降、成績に応
じて2級、1級へと順次進級させることになっています。社会復帰に向けた諸調整
は、一般的には、ある程度残りの在院期間の目処が立つ1級への進級の前後から本
格化します。
しかし、例えば、矯正教育の期間が短く設定されている場合や、復学に当たって
の課題が多い場合などは、入院後早期から調整を開始することが必要です。少年院
としても、課題の解決に向けて取り組んでいきたいと考えておりますので、お早め
に少年院に御相談ください。
しろまる 事例8【少年院送致】学校と少年院が課題を共有して指導に当たることで円滑に復学で
きた例
オ 卒業証書の授与
入院前に通学していた学校における在籍が継続し、入院中に学校の卒業を迎える
場合、学校は少年院との連携の下、在院中の学習の状況等を把握して平素の成績を
評価し、学校の卒業を認めることができます。卒業証書発行の御検討に当たり、少
年院から提出すべき書類等があれば、御連絡ください。
また、少年院では、毎年、卒業証書授与式を実施しています。その際には、学校
の校長先生又はその代理の先生方の御出席をお願いしています。少年院から案内を
いたしますので、是非御出席ください。
なお、学校の卒業アルバムや文集等の作成に当たっては、本人の写真撮影や
メッセージの作成など、必要があれば、御相談に応じますので、御連絡ください。
しろまる 事例9【少年院送致】在院中に卒業式を迎え、中学校から卒業証書を授与された例
カ 高等学校等の受験
少年院在院中の生徒が、高等学校等への進学を希望している場合、生徒から、学
校の先生方に面会や手紙などで進路について相談したり、
少年院の職員から中学校
に相談し、進路について、保護者を交えた面談の実施をお願いしたりする場合があ
ります。また、在院中に高等学校等を受験する場合には、保護者や、中学校等と綿
密に連絡を取り合い、具体的な対応を検討し、必要に応じて、高等学校等との連絡
調整をお願いすることもありますので、御協力をお願いします。
しろまる 事例 10【少年院送致】中学校及び高等学校の協力を得て在院中に高校受験を行った例
キ 出院後のサポート体制の構築に向けて 22少年院を出院した後の生活の安定のためには、少年院や保護観察所、少年鑑別所
といった刑事司法関係機関だけでなく、学校、福祉関係機関等、地域の支援を得る
ことが必要な者もいます。
そこで、
少年院では、
必要に応じて処遇ケース検討会(前記2(3)参照)を開催し、関係機関とこれまでの処遇の経過等を共有して、今後
の支援の在り方を検討し、円滑に社会生活へ移行できるよう努めています。こうし
た検討会に、学校関係者の皆様に御出席をお願いすることもありますので、その際
には御理解と御協力をお願いします。
また、出院後も、少年院は、出院者本人や保護者、学校関係者などの方々からの
相談を受けたり、
御依頼があれば生徒の指導に関する会議に出席させていただくな
ど継続的に関与しますので、遠慮なく御相談・御連絡いただきたいと思います。
しろまる 事例 11【少年院送致】地域の支援体制を整えながら特別支援学校に編入した例
(2)高等学校の生徒等について
高等学校、大学等に在学中の生徒や学生が少年院に入院した場合は、義務教育段階
の生徒の場合とは異なり、原則として、入院直後に少年院から高等学校等に対して連
絡を差し上げることはありませんが、少年院では、少年が高等学校教育についての学
びを継続するため、希望する者について、少年院在院中に高等学校の通信制課程に入
学し、
出院後も学びを継続できるよう入学のための調整や学習の支援等を行っていま
す。実際に、高等学校と連携し、少年院の職員が同行の上、面接指導(スクーリング)
を受けさせていただいたり、高等学校の御理解を得て、面接指導(スクーリング)は
出院後に行うこととし、在院中にレポートの提出を続けたりすることで、休学等をす
ることなく学習を継続できた事例もあります。また、令和3年3月の学校教育法施行
規則の改正により、少年院における矯正教育の一部について、高等学校において単位
認定することができることとなり、連携が進んでいます。
上記の例のように学習を継続させていただいたり、
休学を認めていただけたりする
ことは、退学となって入学試験からやり直すよりも、はるかに社会復帰が円滑になる
と考えますので、自校の生徒や学生が少年院送致となった場合には、学習の継続の可
能性を御検討いただければ幸いです。御検討に当たって、御不明な点や確認されたい
点がありましたら、少年院に御連絡ください。
しろまる 事例 12
【少年院送致】
在院中に通信制高校に入学し、
学校と少年院が連携して支援を行っ
た例
⇒ 少年院Q&A
5 保護者に対する協力の求め
保護者は、
少年の立ち直りのために大きな役割を果たす存在であり、
その理解と協力
を得ることは極めて重要です。そこで、少年院では、保護者会を開催して新しく入院し 23てきた少年の保護者に少年院の生活について説明をしたり、
個人別矯正教育計画を通知
したりして少年院の処遇についての理解を得ているほか、随時、保護者と面談を行い、
少年の非行に関わる問題等への適切な対処について助言するなどしています。
復学や進学を目指す少年の保護者については、
少年の進路選択・決定に係る諸手続を
担っていただく必要がありますので、
必要に応じて、
面会とは別に三者面談を実施する
などして、保護者と少年で十分に話し合う機会を設けています。また、なかなか面会に
来られない保護者に対しても、電話で協力をお願いしています。
1.事案の概要
(1)少年
中学生男子A
(2)事案の概要
Aは、学校でじっと座っていることが難しく、授業妨害や校則違反を繰り返して
きました。中学2年生の頃から不良交遊が始まり、家出や不登校の末、家出中の窃
盗により保護観察処分となりました。
なお、Aには、幼少時から、こだわりの強さや、衝動的な行動が見られ、事件の
後、発達障害の疑いとの診断を受けました。
2.学校と保護観察所との連携
保護観察開始当初に、保護観察所と中学校との間で協議がなされ、お互いの制度や
体制について説明した上で、Aの現状についての情報交換がなされました。参加者は、
保護観察官、学校長、生徒指導教諭、担任教諭等でした。Aについては、発達障害の
疑いがあることから、不安定な環境に過敏に反応してしまうのではないかと考え、A
への対応に当たっては、外部からの刺激をできるだけ排除するとともに、Aにとって
理解しやすく、先のことが予測可能になるようにルールを作り、それを実行できるよ
うに働き掛けをすることとしました。
学校では別室登校をしつつ、スクールソーシャルワーカーがAに対して定期的な面
談を実施しました。加えて、保護司のもとで、事前に決められた定期的な面接を受け、
Aの気持ちを受け止めることとしました。そのうち、Aが社会的活動への意欲を見せ
るようになったため、中学校と保護観察所それぞれで、Aの心理的特性を踏まえたサ
ポートをしながら、Aの行動範囲を広げるよう支援をすることにしました。まず、夏
休み期間中に、担任の教諭が中心となって行っている課外学習会にAも参加させたほ
か、夏休み明けには、学校の体験学習に他の生徒と一緒に参加しました。さらに、警
察署による橋脚の落書除去作業のボランティア活動に、保護司と共に参加しました。
これらの活動によって、Aは成功体験を積み重ね、心理状態も安定するようになって
いきました。
一方で、Aは進路について悩んでいたため、中学校が丁寧な進路指導を行い、その
結果、Aは私立高校の受験を決意しました。しかし、学習の遅れが目立ったため、中
学校では個別の補習を行ったほか、保護司が地域のコミュニティセンターで行われて
いる無料学習会への参加を促し、マン・ツー・マンによる学習のサポートを受けさせ
たところ、無事高校合格に至りました。
事例1【保護観察処分】
生徒の発達上の課題に配慮した指導を連携して行うことで高等学校に合格した例
1.事案の概要
(1)少年
高校生男子B
(2)事案の概要
Bは、中学校2年生から不良交友が始まりました。中学校に登校しなくなり、登校
しても教員とのトラブルを繰り返していました。中学3年生のとき、Bは、原付バイ
クの窃盗と教員への暴力により、保護観察処分となりました。
このように問題行動を繰り返すBでしたが、高校に進学したいという意思があり
ました。そこで、中学校の進路指導担当教諭、保護司、家族から、県外の全日制高
校への進学を勧めたところ、当該高校の受験に合格し、親元を離れて高校の寮へ転
居して、中学校時とは別の県で保護観察が継続されることになりました。
2.学校と保護観察所との連携
Bは、高校進学後、しばらくは通学を継続していましたが、同級生となじめず、ク
ラス内で孤立するようになりました。徐々に遅刻、欠席が増え、週末に無断で地元に
帰り、以前の不良仲間と関わるようになりました。
高校から保護観察所に本人の行動について連絡があり、保護観察中であることを同
級生に隠していて自分から積極的に同級生に話しかけられないことや、不良仲間と付
き合ってきて同級生と話題が合わないことなどのため、孤立しているようだというこ
とが分かりました。そこで保護観察所では、保護司、更生保護女性会員(地域の犯罪
予防活動と犯罪をした人や非行のある少年の更生支援活動を行うボランティア団体)、BBS会員(「兄」や「姉」のような身近な存在として、少年たちと共に悩み、学び、
楽しむ活動を行う青年ボランティア)、地元住民等が参加している社会参加活動(料
理教室)に誘いました。Bは、この活動に2回参加し、BBS会員と意気投合したの
で、保護観察所が仲介して、Bに対してBBS会員のともだち活動を実施することに
しました。ともだち活動は、BBS会員が相談相手となったり、勉強を教えたりする
活動ですが、Bは、なかなか友人ができないことや学習の遅れなどの悩みをBBS会
員に相談するようになりました。そこで、保護観察所では、更生保護サポートセンタ
ー(保護司や保護司会が行う地域の更生保護活動の拠点。保護司が常駐して、保護司
の処遇活動に対する支援や関係機関との連携による地域ネットワークの構築等を行
う。)において実施されていた他のBBS会員による学習支援を受けることをBに勧
めました。
事例2【保護観察処分】
高等学校と保護観察所が連携して関わることで生活が安定した例
一方、高校でも、Bに夏休み期間中の社会活動を勧め、寮父がアルバイト先を紹介
したり、寮父とともに町内の祭りに参加したりしました。その中で、Bは、学校以外
でも居場所を見つけていきました。
その後、Bは、校内でささいな喧嘩から同級生に暴力を振るい、謹慎処分となりま
した。連絡を受けた保護観察官及び保護司がBに厳しく指導を行う一方で、担任教諭
はBを励ます役割を担い、登校を再開するよう繰り返し働き掛け、動機付けを高めて
いきました。その結果、謹慎処分終了後、Bは登校を再開し、その後の高校生活及び
寮生活は落ち着いて過ごすことができ、高校2年生になる前に、保護観察が解除され
ました。
1.連携先の学校
地元小中学校
2.連携の概要
保護司が県の「覚醒剤乱用防止推進員」に委嘱されたことをきっかけとして、小中
学校での薬物乱用防止教室の実施に取り組むことになりました。小中学校からの要請
に応じて、薬物乱用防止教室を実施するという形にし、要請があればすぐに対応でき
るよう体制を整えていきました。
当日の授業では、生徒が頑張っていることを褒めることから始め、保護司について
の説明の後、パワーポイントを使った覚醒剤に関する記事の紹介、覚醒剤等薬物依存
についてのビデオの視聴、最後に保護司として体験した具体的な事例等について話を
し、「薬物には絶対ノーの気持ちを持ち続けることが大切」と訴えています。
事例3【犯罪予防活動】
薬物乱用防止教室
1.連携先の学校
地元中学校
2.連携の概要
年3回、各学期の終わりに、校長先生、生徒指導担当教諭、保護観察官、保護司が
集まり、定期連絡会を開催しています。学校側から、中学校の現状や学校生活で気付
いたこと等をお話ししていただき、その後、保護観察官や保護司から、学校に在籍し
ている保護観察対象者の状況等について報告します。学校と保護司が保護者を含めた
生徒の状況を共有し、一貫した指導ができることが利点となっています。
事例4【犯罪予防活動】
学校教諭との定期連絡会
1.連携先の学校
地元中学校
2.連携の概要
中学校が「頑張っている生徒の姿を地元の人たちに知ってほしい」と考え、保護司
会に入学試験のための面接練習への協力を打診しました。
11月末から12月にかけて、生徒3〜5名と面接側(保護司)3名でグループ面
接を行っています。質問内容はあらかじめ学校が決め、面接側はその場で何か注意す
ることはせず、身だしなみや立ち居振る舞い等をチェックし校長先生へ報告。その後、
「校長面接」を行い、校長先生から生徒に気をつけるべき点についてアドバイスをし
ています。
事例5【犯罪予防活動】
中学校での「3年生面接」への協力
1.連携先の学校
地元中学校
2.連携の概要
一部の生徒に問題行動がみられたことをきっかけとし、保護司会が所属する生徒指
導連絡協議会、PTA、本校の卒業生等が話合い、夏休み期間中に、保護司会や地域
の方々、警察官も交えた10名程度で約1kmの道のりをパトロールしています。夜
に出歩いている生徒はもちろんのこと、時には一般の方にも声を掛けて、犯罪予防に
努めています。また、夏休みの終わりには、反省会を実施し、情報共有を図っていま
す。
事例6【犯罪予防活動】
地域の防犯パトロール
1.連携先の学校
地元小中学校
2.連携の概要
小中学校に在籍している児童・生徒の保護者を対象として、「子供の育ちと大人の
かかわり」をテーマに、講師による講演、保護司を交えた座談会を定期的に開催して
います。座談会では、保護司として経験した事例を踏まえ、非行の背景や、少年との
かかわり方、立ち直りへのヒントなどについて、保護者と話し合います。さらに、子
供との関わりの中で日頃抱えている悩みなど、保護者が相談したい事柄について、講
師や保護司が回答するだけでなく、参加者全員で考えていきます。
事例7【犯罪予防活動】
保護者を対象とした教育相談座談会
1.事案の概要
(1)少年
中学生男子C(中学2年の夏に少年院送致。少年院在院期間は約11か月であり、
中学3年の夏頃に出院。)
(2)事案の経緯
Cは、中学1年の年度末に他の中学校から転校してきましたが、その後少年院に入
院するまでの約6か月間、
新しい中学校にはほとんど登校していませんでした。
Cは、
たまに登校すると、同校の生徒を脅したり、校庭に呼び出して追い掛け回したりする
などの問題行動があったことから、同校の生徒からは怖い存在として、また、他の生
徒の保護者からは関わりたくない問題児として受け止められていました。再三にわた
る中学校教諭の指導にも従わず、中学2年の夏、道路交通法違反等により少年院送致
となりました。
2.学校と少年院との連携
(1)少年院から中学校への連絡
少年院から中学校に対し、Cの少年院入院の連絡を行い、入院通知を送付しまし
た。その後、中学校側から、生徒や保護者がCの復学に不安を抱いている旨報告を
受けるとともに、学校でのCの受入態勢を整えるために少年院職員と面談がしたい
という申出があったことから、少年院職員と教頭及び生徒指導担当教諭で面談を実
施しました。
面談の際、中学校側から、Cの復学に当たっての懸念が改めて伝えられたため、
出院前に少年院において同中学校の校則等を指導することについて提案しました。
(2)面談後の少年院での指導
少年院では、同中学校から提供された校則等について、Cの理解度を確認しなが
ら暗記させ、復学に当たって留意すべきこと等について指導を重ねました。
また、Cは、学校にほとんど登校していなかったこともあって、学力は小学校中
学年レベルであり、漫画も満足に読めない状況であったことから、少年院では、教
科指導にも力を入れました。
(3)少年と学校関係者との復学に向けた面談
少年院側から、中学校に対し、中学校として懸念していることについては直接本
人に伝えた方がよい旨を説明し、Cとの面会を行うよう中学校側に促したところ、
事例8【少年院送致】
学校と少年院が課題を共有して指導に当たることで円滑に復学できた例
Cの入院から約半年が経過した頃、中学校の学級担任及び生徒指導担当教諭の2名
が来庁し、初めてCと面会を行いました。
面会では、中学校が、Cの復学に当たり、授業への参加態度が不良であること、
また、不良仲間との交際について懸念がある旨を本人に伝えました。これに対し、
Cからは態度を改める旨が述べられました。
また、出院前に中学校長及び学級担任の2名が来庁し、再度Cとの面会を行いま
した。中学校側から、Cがこれまでの態度を改める旨を述べてはいるものの、復学
後、実際にそれを行動に移せるかが心配であること、復学後は、登下校の時間をず
らし、まずは個別学習をしてもらうことを伝えました。Cは了承し、少年院を仮退
院後、復学を果たしました。
3.学校と保護観察所との連携
保護観察所では、Cの在院中、保護司が保護者と連絡をとり、出院後の受入れの意
思や居住環境などについて確認・調整しました。一方、在院中に行われた処遇の状況
を踏まえて、出院後の処遇方針について、保護観察官が中学校教諭と協議しました。
保護者は、当初、Cの問題行動に振り回されて疲弊してきたことや中学校に対して
も不信感があったことから、Cの立ち直りについて半ば諦めている様子でしたが、中
学校教諭が面会に赴いたことやその際のCの反応等について保護司から聞き、出院後
のCの監督について前向きに考えるようになりました。
仮退院の日、保護観察所に出頭したCは、遵守事項を守って生活すること、特に、
クラス担任との面会で約束した毎日登校することについて誓約しました。そして、翌
日から登校し、個別学習を始めましたが、ほどなく、不良仲間からの誘いに乗って夜
遊びし、翌日登校しなかったり、他の生徒の授業を妨害するといった問題行動をする
ようになりました。
保護観察所では、中学校からCの出席状況を把握した上で、保護観察官や保護司が
本人と面接し、遵守事項に基づく指導や通学意思の確認を行い、家庭訪問を行って保
護者に対する助言も行いました。中学校では個別学習の期間を延長し、Cが問題行動
に及びにくい態勢をとりつつ、学習ボランティアを依頼して本人の学習の遅れをカバ
ーするといった工夫をしました。
その後も、Cは、時々遅刻や欠席がありましたが、クラス担任及び保護司との関係
が良かったため、徐々にその指導に従って行動できるようになって問題行動は目立た
なくなり、将来、保護者のように自営開業することに意欲を見せるようになりました。
そして、再非行することなく、他の生徒とともに卒業式に出席し、卒業後は保護者の
紹介でアルバイト就労を始めました。
1.事案の概要
(1)少年
中学生男子D(中学3年の秋に少年院送致。少年院在院期間は約11か月であり、
少年院在院中に卒業式を迎えた。)
(2)事案の経緯
Dは、中学校で教諭に対する暴力や窓を割るなどの粗暴行為を繰り返しており、中
学3年の秋に傷害、暴行の非行で少年院送致となりました。
2.学校と少年院との連携
(1)少年院から中学校への連絡
少年院から中学校に対し、Dの少年院入院について電話で連絡しました。その後、
少年院内で実施する義務教育指導の参考とするため、学校に対し、文書で指導要録
の写しの提供を依頼しました。また、Dについては通学していた中学校における在
籍が継続し少年院在院中に卒業式を迎えることから、3月に少年院内で実施する卒
業式に出席してほしい旨依頼しました。
また、期末試験等を少年院内で実施することも可能であること、学校で使用して
いるプリント類についてはDに差し入れることが可能であることを伝えたほか、少
年院内で実施したDの学習の状況について学校に連絡するため、規定の様式等があ
れば示してほしい旨を伝達したところ、中学校側からは、成績については指導要録
に準じた書式で連絡してほしいと回答がありました。
(2)学級担任と少年院職員との面談
入院してから半年ほど経過した頃、Dの学級担任から、Dと面会する前に少年院
職員と面談したいという希望があったため、面会日、Dと面会する前に少年院職員
とDの学級担任と面談を行いました。同担任からはDが壊した中学校の窓ガラスの
写真を提示され、中学校が多大な迷惑を被っていることを本人にしっかりと考えさ
せてほしいという話がありました。その後、Dは学級担任との面会を行いましたが、
決まり悪そうに下を向いているだけで、謝罪の言葉等を口にすることはありません
でした。
(3)面談後の少年院での指導
少年院では、Dに対して暴行・傷害という事件に至った問題点等を考えさせる中
で、中学校での教諭に対する暴行や器物損壊について取り上げることとしました。
事例9【少年院送致】
在院中に卒業式を迎え、中学校から卒業証書を授与された例
個別面接でDの今の思いを尋ねたところ、Dは、学校には迷惑を掛けたと思って
いること、また、迷惑を掛けたにもかかわらず学級担任が面会に来てくれたこと
が嬉しかったことなどを述べました。少年院の職員がその気持ちを学級担任に伝
えるよう促したところ、Dは学級担任に手紙を出しました。その後、学級担任か
ら返事が届き、Dは次第に学校への感謝の気持ちを持つようになりました。
(4)卒業証書授与から高校進学へ向けて
1月上旬に中学校に対して少年院での卒業証書授与式に係る案内を送付したとこ
ろ、同中学校から、少年院での学習状況も考慮して同中学校の卒業証書を発行する
こと、卒業証書授与式には校長及び学級担任が出席するとの連絡がありました。式
典当日は、各学校からの卒業証書授与、卒業生による決意のことば、他の在院者か
らのお祝いのことば等が厳粛に執り行われ、式典終了後には、D、保護者、校長、
学級担任による茶話会が実施され、Dから校長等に対し、式典参加へのお礼とこれ
まで迷惑を掛けてきたことへの謝罪が述べられました。
Dの出院予定時期は9月であったことから、高校受験は、同学年の生徒からは1
年遅れて行うこととなりましたが、学級担任から、本人の学力や進路希望に合った
高校探しについて引き続き協力する旨の申出があり、少年院においてもDの学力の
向上に重点を置いた指導を行うこととしました。
Dは、学級担任から差し入れられた高校の資料等を見ながら、進学先について少
しずつ気持ちを固めていきましたが、学力については若干不安が残る状態で出院し
ました。
3.出院後の保護観察
Dは、出院が9月であったことから、保護観察開始後はアルバイトをしながら、高
校受験の準備をすることになりました。保護観察所ではDにBBSの学習支援を受け
ないかと勧めたところ、Dが希望したので、近隣の大学生であるBBS会員に定期的
に学習支援をしてもらうこととなりました。次第にアルバイトが忙しくなり、勉強が
おろそかになりがちでしたが、中学校の元学級担任から高校の出願方法等の助言もあ
り、受験することができました。
1.事案の概要
(1)少年
中学生男子E(中学3年の5月に少年院送致。矯正教育の予定期間は11か月。
保護者の強い希望もあり、全日制の普通科高校への進学を希望。)
(2)事案の経緯
Eは、中学1年の2学期から生活が乱れ始め、教諭や生徒に対する暴力を頻発して
おり、中学3年の5月に、道路交通法違反等の非行で少年院送致となりました。
2.学校と少年院との連携
(1)少年院から中学校への連絡
少年院から中学校に対し、Eの少年院入院について電話で連絡したところ、入院
後8日目に、中学校から校長、生徒指導担当教諭及び学級担任が少年院を訪れ、今
後のことについて打合せを行いました。少年院からは、社会復帰支援業務を担当す
る管理職である統括専門官、Eの個別担任、少年院で実施する卒業証書授与式の企
画を担当する職員、社会福祉士の4名が対応し、少年院における処遇の概要の説明
と中学校からの卒業証書発行の依頼を行ったところ、中学校側から、卒業証書の発
行については少年院での学習状況を見ながら前向きに検討する旨の回答がありまし
た。また、学校側からは、少年院からの高校受験が可能かどうかについて質問があ
り、少年院側は、現時点では来年4月には出院する予定であるが、本人の改善更生
の状況によっては進級が遅れて在院期間が延長される可能性があること、また、少
年院からの仮退院の可否は少年院が決定するものではないため、出院日について確
定的なことは述べられないこと、そのような状況でも受け入れてくれる高校がある
かどうかが課題であることを伝えました。
(2)中学校から生徒への働き掛け
中学校から、テストや夏休みの課題等が多数送付されてきたことから、Eに取り
組ませ、中学校に返送しました。中学校からは定期的に学級担任や生徒指導担当教
諭が面会に訪れ、学習状況の確認や、進学可能な高校の情報等の提供が積極的にな
されました。また、手紙も送られ、提出した課題への評価や、少年院生活への激励
がなされました。
(3)高校受験の実施に向けた調整
事例 10【少年院送致】
中学校及び高等学校の協力を得て少年院在院中に高校受験を行った例
12月の初旬から、少年院においてEに対する受験の機会の付与について検討し、
受験については今後特段の問題行動等がなければ許可する方針となりました。中学
校にもその旨を伝え、願書等の準備を進めてもらうこととしました。
中学校の教諭及び保護者が面会に訪れ、Eに対し、受験についての意思確認が行
われました。中学校側からは、出院の時期によっては、登校開始の時期が他の生徒
と異なる可能性があるので、高校側にもその事情を伝えることとなるが、それでも
よいかとの質問がなされ、Eも保護者も了承したことから、今後、中学校から進学
希望先の高校側に打診することとなりました。
1月に入り、中学校から生徒と保護者に対し、少年院に在院していることを承知
で受け入れてもよいという高校名が提示され、Eも受験を希望したため、受験の準
備を進めることとなりました。受験予定の高校については、Eと不良交友をしてい
た他の生徒も受験するとの情報を得ていたことから、当日の受験を円滑に行うため、
少年院から次のような要望を中学校を通じて高校側に伝えてもらうこととしまし
た。1受験会場への出入りの際は受験生がいない時間に行えるよう配意願いたい、
2受験は別室を用意願いたい、3受験中は職員も立ち会わせていただきたい、4事
情により受験が中止になる可能性があることを了承していただきたい、というもの
でした。後日、中学校を通じて、受験について直接少年院と打ち合わせたいとの高
校側の希望が伝えられたことから、少年院担当者が当該高校に赴き、綿密な打合せ
を行いました。
当日、受験は滞りなく行われ、Eも手応えを感じたようでした。
(4)入学までの調整
受験に合格した場合の登校開始の日について、高校側からは「入学式に間に合わ
なくても構わない。」と言っていただいていましたが、少年院からは、通常よりも
早い出院にはなるけれども、入学式よりも前に仮退院を許してほしい旨、地方更生
保護委員会に申出を行いました。同委員会の審理においては、高校受験に合格した
ことも配慮され、入学式よりも前の日を仮退院日とする決定がなされました。
受験結果は、合格でした。高校の担任、学年主任及び生徒指導の3名の教諭が面
会に訪れ、入学後の心構えや校則の説明が行われたほか、高校の担任からは、将来
の夢についてEに質問がなされるなど、和やかな会話が続きました。
4月の上旬、Eは予定どおり仮退院し、高校進学を果たしました。
1.事案の概要
(1)少年
高校中退男子F(第3種少年院送致。矯正教育の予定期間は12か月。知的障害
及び自閉スペクトラム症。)
(2)事案の経緯
Fは、小・中学校ともに普通学級に在籍していましたが、悪ふざけやからかいの対
象となり、周囲からは孤立していました。中学校卒業後、高等学校については、不登
校等の生徒を受け入れるコースに進学しましたが、5月頃から休みがちとなり、10
月に銃砲刀剣類所持等取締法違反により少年院送致となりました。高校については、
少年院送致となったことで、中退しました。
2.学校と少年院の連携
(1)入学説明会への参加
Fの実母から、少年院に対し、Fを入学させたい特別支援学校高等部がある旨の
相談があったことから、11月に、少年院職員と実母で同校の入学説明会へ参加し、
同校の教頭等から説明を受けました。事前に実母が少年院在院中であることを学校
側に伝えていたため、少年院職員も実際に受検(入学試験ではなく入学検査のため
「受検」と記す。)する場合に打合せが必要となる事項などを学校側に伝えること
ができ、具体的な内容での面談が実施できました。
(2)特別支援学校高等部見学
Fは、当初、特別支援学校への編入について意欲的ではありませんでしたが、同
校から見学の許可をいただき、12月に、少年院職員が同行の上、同校の見学を実
施しました。すると、同校へ進学したいとの希望を持つようになったため、受検手
続を進めることになりました。
(3)受験
出身中学校との連絡は、実母が行い、受検のための願書提出等を実施しました。
当日は、少年院職員が同行しての受検を認めていただき、無事受検することがで
きました。
事例 11【少年院送致】
地域の支援体制を整えながら特別支援学校に編入した例
3.出院後の支援体制の構築
(1)在院中の連携
少年院と保護観察所は、Fの再非行のリスクについて検討を重ね、福祉の枠組み
での支援も本人にとって必要であるとの共通認識を持つに至り、地域生活定着支援
センター((注記))による支援が行えるよう調整を行うこととしました。また、出院直
前の3月には、少年院において、特別支援学校高等部の参加も得て、地域生活定着
支援センター、保護観察所、担当保護司、少年鑑別所、地方更生保護委員会、市役
所障がい福祉課、児童相談所、警察本部少年対策課、警察署をメンバーとする処遇
ケース検討会を実施し、少年院での処遇状況や残された課題、出院後の支援方法等
について情報共有を行いました。
(注記) 地域生活定着支援センターは、高齢又は障害により福祉的な支援を必要とする刑務所出所
者等に対し、矯正施設(刑務所、少年院等)、保護観察所、地域の関係機関等と連携・協働
しつつ、矯正施設入所中から出所・出院後まで一貫した相談支援をしています。
地域生活定着支援センターは、地域生活定着支援事業(平成23年度までの名称は地域生
活支援事業)により、各都道府県に設置され、1保護観察所からの依頼に基づき、矯正施設
の被収容者を対象として、受入先となる社会福祉施設等のあっせんや福祉サービスの申請支
援等を行うコーディネート業務、2そのあっせんにより特別調整対象者を受け入れた社会福
祉施設等に対して、対象者の支援、福祉サービスの利用等について助言等を行うフォローア
ップ業務、3刑務所出所者等の福祉サービスの利用等に関して、本人やその家族、更生保護
施設、地方公共団体、福祉事務所その他の関係者からの相談に応じて、助言や必要な支援を
行う相談支援業務等を実施しています。
(2)出院後の連携
出院後の特別支援学校高等部での生活はおおむね順調でしたが、夏休みに入る前
に、Fから地域生活定着支援センターに対し、家族関係の悩みについての相談が寄
せられたことから、このような状態で夏休みに突入することを懸念した担当者の呼
び掛けにより、特別支援学校高等部、地域生活定着支援センター、保護観察所、担
当保護司、市役所障がい福祉課、少年院が集まって合同支援会議が実施されました。
同会議では、夏休み中にも通学する機会を増やして対応することや、支援者が家庭
を訪問する等の対応策が執られることとなりました。
1.事案の概要
(1)少年
中学生男子G(中学卒業後の春に少年院送致。少年院在院期間は約11か月であ
り、在院中に通信制高校に入学し、翌年4月に仮退院。)
(2)事案の経緯
Gは、中学2年の春頃から学校生活に適応できなくなると、不良仲間との交友を
始め、規範意識を軽視する傾向が強まっていく中で、恐喝事件を起こし、少年院送
致となりました。
2.学校と少年院との連携
(1)入学までの調整
Gは、少年鑑別所在所時から福祉職に関心を示していましたが、同分野の資格を
取得するためには専門学校を卒業する必要があるとして、まずは高校に入学したい
との希望を持つようになりました。
夏頃には、高等学校卒業程度認定試験重点指導コースに編入するとともに、修学
支援の対象者となり、職員との面接等を通じて通信制高校への入学を希望したこと
から、通信制高校への入学に向けた支援を開始しました。そして、同校の入学試験
(筆記及び面接)を少年院内で受験して合格し、10月に入学を果たしました。
入学までには、同校と少年院で、受験の内容・方法のほか、単位修得のための報
告課題や面接指導(スクーリング)の実施等について、丁寧に協議を重ねました。
また、保護者に対しては、同校において、同校職員及び少年院職員による説明会を
実施し、就学支援金制度も含めた具体的な入学手続等を説明するとともに、入学の
最終的な意思確認を行うなど、納得して支援いただける体制を整えました。
(2)在院中の学校との連携
入学後も、同校職員と少年院職員で打合せを重ね、特に、同校の単位として認定
できる矯正教育の内容を精査するとともに、報告課題や面接指導、試験等の詳細に
ついて、認識にそごが生じないよう緊密な連携に努めました。また、少年院での学
習内容を同校職員との面接時に提出させるといった今後の具体的な進め方について
も話し合いました。同校には、少年院からGの矯正教育の状況や改善すべき課題等
を伝え、同校からも率直に懸念事項をお話しいただいたことで、形式に流れること
なく信頼関係を構築できました。
2月には、同校職員に対し、出院時期とともに、G及び保護者が分校への転籍を
事例 12【少年院送致】
在院中に通信制高校に入学し、学校と少年院が連携して支援を行った例
希望していることを伝えました。3月には、同校及び転籍先分校の職員、保護観察
所職員、保護者及び少年院職員による処遇ケース検討会を開催し、転籍後の通学方
法や学習支援体制、関係機関との役割分担等について協議しました。転籍先分校の
職員からは、在学生のうち、Xだけが後期入学となるものの、学習の遅れが最小限
となるようカリキュラムを検討するとの方針が示されました。
(3)在院中の少年への指導・支援
Xは、反則行為や進級の遅れはなく、総じて順調に経過しました。入院当初は、
家族関係や不良交友の問題に真剣に向き合うことができませんでしたが、職員との
個別面接や特定生活指導等を通じ、徐々に自己の問題性に目を向けるようになりま
した。そして、特に入学試験をきっかけに、非行の捉え方に大きな変化が見られ、
不良交友の断絶について主体的に考えるようになりました。
高校の転籍について、当初は地元に近い分校への通学を検討していましたが、不
良交友の再開を避けるため、Xの希望により、別の地域の分校に通学する方向で調
整を進めました。X自身が、周囲からの助言を受け入れながら、現実的かつ堅実な
進路を選択し、目標を明確に定めることができるようになった点は大きな成長とい
えます。
同校と少年院で学習支援の方法について申合せを行い、少年院で実施した教育内
容については、Xが報告書にまとめ、少年院職員がコメントを付してフォローアッ
プを行った後、同校職員の面接指導時に提出するという方法で進めました。
また、上記(2)の処遇ケース検討会では、X自身から、学習に不安を感じてい
ることや、再非行しない決意は固まっているが、不自然な言動があれば厳しく指導
してほしいこと等を同校職員に伝えていました。これに対して同校職員から、きめ
細かな支援体制を整えている旨説明いただくとともに、激励していただきました。
3.出院後の状況等
Xは、仮退院後、週に数回の面接指導を受けながら、家族に対する感情を整理し、
周囲と無理のない穏やかな関係を築き、生活を安定させていきました。少年院と同
校との間では、Xの非行の内容について教職員間では共有するが、在学生には伝え
ないことを事前に調整しており、Xもそうした事情を理解していたことで、不良仲
間と接触することなく生活し、目標に向かって努力できたようです。 (()Q1 生徒が少年院に入院しました。少年院に連絡したいのですが、何か気を付けるこ
とはありますか。
A1 少年院では、義務教育段階の生徒が少年院に入院した場合、少年院から学校の管
理職に電話で連絡していますが、学校からお電話で生徒の在院の有無をお尋ねいた
だいても、個人情報の保護の観点から、その場で答えない取扱いをしております。
そのため、例えば学級担任から生徒のことで少年院に御連絡いただいた場合も、御
本人であることを確認させていただいたり、その電話では回答せずに少年院から学
校宛てに折り返し連絡させていただいたりすることがありますので、御理解と御協
力をお願いいたします。
また、生徒へお伝えになりたいことがある場合、内容や意図等がきちんと本人に
伝わるように、お手紙か面会で本人に直接お伝えいただきますようお願いします。
Q2 少年院にいる生徒と面会や手紙のやりとりはできますか。
A2 生徒にとって、在院中に通学していた学校とつながりが持てることは、改善更生
に向かう大きな支えになりますので、是非、面会にお越しいただいたり、手紙を送
るなどしていただければと思います。面会当日は、お手数ですが、身分を証明でき
るものをお持ちくださるよう御協力をお願いします。
また、面会の前後に、生徒の生活状況や復学・進学等について少年院の職員と打
合せをすることも可能ですので、御希望があれば少年院の担当者に御相談ください
(同日に実施することが難しい場合は、別の日に調整させていただきます。)。打
合せについては、少年院側からお願いする場合もあります。
なお、少年院では、各種の行事を実施したり、少年院外で教育活動を行ったりす
ることもあるほか、面会室の数の関係等から一度に複数の面会を受けられない施設
もありますので、お待たせすることなく、円滑に面会ができるよう、お越しの際に
は、おおむね1週間前までに少年院へ御希望の日時を御連絡いただきますよう御協
力をお願いします。また、生徒本人や少年院の担当職員に対して、復学に当たって
被害を受けた方(教員や他の生徒など)との調整が必要であるといった込み入った
話があるなどの特別な事情がある場合には、可能な限り対応いたしますので、面会
の御連絡時に併せて御相談ください。
少年院 Q&A
Q3 少年院にいる生徒に差入れはできますか。
A3 面会でお越しの際に窓口で、
又は郵送で差入れをしていただくことができますが、
差し入れることのできる品目(教科書や参考書、切手など)や数量には限りがあり
ますので、生徒の入院している少年院にお尋ねください。
Q4 少年院の入院期間の出欠の取扱いや学習評価の在り方等について教えてくださ
い。
A4 少年院の在院期間はおおむね1年程度であり、その間、学校に通うことができな
くなります。通学していた学校に引き続き在籍する場合の在院中の出欠の扱いや学
習評価については、各学校の御判断によりますが、その御判断に資するため、少年
院からは、少年院の教育活動への出欠状況や教科指導への取組状況等について連絡
することとしています。その際、学校から指定された様式(指導要録等)があれば、
その様式に沿って連絡することも可能です。また、定期テストや教材プリントを、
生徒との面会時や郵送等により差し入れていただければ、生徒に取り組ませること
ができますし、生徒の励みにもなりますので、お気軽に御相談ください。
Q5 少年院に入院した生徒は、学校で様々な問題行動があったため、復学に当たって
不安があるのですが、少年院でも指導してもらえるのでしょうか。
A5 復学に当たっての不安など、具体的に少年院にお伝えいただければ、少年院内で
の指導に反映させることが可能です。矯正教育の期間が短い者もいますので、なる
べく早期に御相談ください。また、学校側の御懸念等を面会の際に生徒本人に直接
お伝えいただけると、生徒本人が学校からお伝えいただいた内容を受け止め、過去
に自分のしたことときちんと向き合い、その重大性を認識することにつながる場合
が多いと考えます。この点、伝え方やタイミングについて少年院に御相談いただけ
れば、事前に学校での自分について振り返らせるといったことも可能ですので、遠
慮なくお知らせください。 ((注記)事例8参照)
Q6 生徒のことで、少年院の個別担任や教科指導担当者に相談したいことがあるので
すが、どうすればよいでしょうか。
A6 御相談には積極的に対応させていただきます。お待たせせずに担当職員が対応で
きるよう日程調整をいたしますので、前もって御連絡をいただきますようお願いし
ます。
Q7 生徒が、少年院にいる間に卒業式を迎えるのですが、どうすればよいですか。
A7 入院前に通学していた学校における在籍が継続し、入院中に中学校の卒業を迎え
る場合、学校は少年院との連携の下、在院中の学習の状況等を把握して平素の成績
を評価し、中学校の卒業を認めることができます。卒業証書発行の検討に当たり、
少年院から提出すべき書類等があれば、御連絡ください。
また、少年院では、毎年、卒業証書授与式を実施しています。その際には、中学校
の校長又はその代理の方の御出席をお願いしていますので、
少年院から案内がありま
したら、是非御出席ください。((注記)事例9参照)
Q8 生徒が少年院を出院する日は、どのように決まるのでしょうか。
A8 少年院から出院する場合、ほとんどの者(99%)は仮退院という、保護観察の
付される状態で出院しますが、その時期を決めるのは少年院ではなく、「地方更生
保護委員会」です。生徒が処遇の最高段階(1級)に達し、出院後の生活環境調整
が整っていれば、少年院の長は、地方更生保護委員会に対して、その生徒の仮退院
を許すべき旨の申出を行います。同委員会によって仮退院の審理が行われ、仮退院
が許可されることとなれば、仮退院日も決まります。ただし、仮退院許可の決定が
少年院に通知された後でも、その予定日までの間に当該生徒が重大な反則行為を行
ったり、帰住予定先の生活環境が大きく変わるなどの事情が発生したときは、許可
が取り消されたり、予定日が大幅に変わったりすることもあります。
したがって、
少年院から関係者の皆様に出院時期としてお伝えしているのは、
少年
院が立てている個人別矯正教育計画に基づいたおおまかな時期であることを御理解
いただければと思います。
Q9 少年院を出院した生徒について相談したい場合には、どうすればよいですか。
A9 少年院を出院した生徒については、ほぼ保護観察に付されますので、保護観察中
であれば、担当の保護司や保護観察所に御連絡いただいた方がよい場合もあります
が、少年院においても相談を受けることができますので、相談されたいことがあり
ましたら、遠慮なく少年院にお問い合わせください。少年院を出院した生徒の学校
生活が不調な場合などは、例えば、保護観察所において、少年院で個別担任をして
いた教官と面接する機会を設けるといったことも検討可能です。ただし、相談内容
の趣旨や専門性等の観点から、少年院よりも他の適当な機関に相談をしていただい
た方がよい場合は、そちらを御案内させていただくこともありますので御了承くだ
さい。

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