司法試験予備試験の実施方針について
令和3年6月2日 司法試験委員会決定
改正 令和4年11月16日
第1 司法試験予備試験の実施に当たって一般的に配慮すべき事項
司法試験予備試験(以下「予備試験」という。
)は、司法試験法第5条
第1項において、法科大学院課程の修了者と同等の学識及びその応用能力
並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを
目的とし、短答式及び論文式による筆記並びに口述の方法により行うもの
とされている。
予備試験においては、この判定を適切に行うことにより、法科大学院を
中核とする法曹養成制度の理念を損ねることのないようにする必要があ
る。
また、予備試験が、法科大学院を経由しない人にも法曹資格を取得する
途を確保するために設けられた趣旨から、それらの人にも公平に司法試験
の受験資格が与えられるよう配慮する必要がある。
そして、予備試験が、司法試験を受験する資格を与える試験であること
から、司法試験との関係にも留意して実施する必要がある。
これらの配慮を試験の実施に反映させるため、当委員会においては、予
備試験考査委員を法科大学院教員からも選任するとともに、一部委員につ
いて司法試験考査委員と併任する、司法試験の実施日程を考慮しつつ、短
答式試験問題の一部共通化を行うなど、適正な実施のための具体的方策に
ついて検討し、必要な措置を講じてきたところであるが、予備試験の目的
に鑑み、その実施方針は、今後も法科大学院教育の状況に応じて、適宜、
必要な見直しをすべきである。
第2 短答式試験について
1 試験科目
司法試験法第5条第2項において、短答式試験は、憲法、行政法、民法、
商法、民事訴訟法、刑法及び刑事訴訟法(以下「法律基本科目」という。)並びに一般教養科目について行うものとされている。
2 実施日程等
短答式試験は、毎年7月中旬から下旬までの間の時期に1日で実施し、
8月頃までに合格発表を行う。
3 法律基本科目
(1) 出題方針
幅広い分野から、基本的な事項に関する内容を多数出題するものとす
る。
司法試験の短答式試験において、過度に複雑な形式による出題は行わ
ないものとしていることにも留意する必要がある。
(2) 問題数
各科目いずれも10問ないし15問程度とする。
(3) 配点
各科目いずれも30点満点とする。
各問題ごとの配点については差を設けることも可とする。
(4) 試験時間
憲法と行政法で併せて1時間、民法、商法と民事訴訟法で併せて1時
間30分、刑法と刑事訴訟法で併せて1時間とし、それぞれ一括した試
験時間で実施する。
(5) 出題形式
マークシートによる解答が可能なものとする。
4 一般教養科目
(1) 出題方針
人文科学、社会科学、自然科学及び英語の分野から、特定の分野に偏
ることのないようバランスに配慮しつつ、多数の問題を出題し、その中
から、受験者が一定数の問題を選択して解答するものとする。
学校教育法に定める大学卒業程度の一般教養を基本とし、法科大学院
において得られる法曹として必要な教養を有するかどうかを試すものと
し、その出題に当たっては、幅広い分野から出題し、知識の有無を問う
出題に偏することなく、思考力、分析力、理解力等を適切に試すことが
できるよう工夫するものとする。また、法律科目の知識のみで容易に解
答できるような出題とはならないよう工夫する必要がある。
(2) 問題数
40問程度を出題し、そのうち20問を受験者に選択させて解答させ
ることとする。
(3) 配点
1問につき3点とし、60点満点とする。
(4) 試験時間
1時間30分程度とする。
(5) 出題形式
マークシートによる解答が可能なものとする。
第3 論文式試験について
1 試験科目
司法試験法第5条第3項及び同法施行規則第1条第2項において、論文
式試験は、法律基本科目のほか、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、
労働法、環境法、国際関係法(公法系)及び国際関係法(私法系)のうち
受験者のあらかじめ選択する一科目(以下「選択科目」という。
)並びに
法律実務基礎科目について行うものとされている。
2 実施日程等
論文式試験は、毎年9月頃までに2日間で実施し、12月頃までに合格
発表を行う。
3 法律基本科目
(1) 出題方針
各法分野における基本的な知識、理解及び基本的な法解釈・運用能力
並びにそれらを適切に表現する能力を問うものとする。
法律基本科目のほかに法律実務基礎科目があること、司法試験におい
て、更に同様の法分野に関する能力判定がなされることを前提に、予備
試験の法律基本科目においては、基本的な知識、理解等を問うものとす
る。
(2) 問題数
各科目いずれも1問とする。
(3) 配点
各科目いずれも50点満点とする。
(4) 試験時間
憲法と行政法で併せて2時間20分程度、民法、商法と民事訴訟法で
併せて3時間30分程度、刑法と刑事訴訟法で併せて2時間20分程度
とし、それぞれ一括した試験時間で実施する。
4 選択科目
(1) 出題方針
各法分野における基本的な知識、理解及び基本的な法解釈・運用能力
並びにそれらを適切に表現する能力を問うものとする。
司法試験において、更に同様の法分野に関する能力判定がなされるこ
とを前提に、予備試験の選択科目においては、基本的な知識、理解等を
問うものとする。
(2) 問題数
1問とする。
(3) 配点
50点満点とする。
(4) 試験時間
1時間10分程度とする。
5 法律実務基礎科目
(1) 出題範囲
民事訴訟実務、刑事訴訟実務及び法曹倫理とする。
(2) 出題方針
法科大学院における法律実務基礎科目の教育目的や内容を踏まえつ
つ、民事訴訟実務、刑事訴訟実務及び法曹倫理に関する基礎的素養が身
に付いているかどうかを試す出題とする。
法律実務基礎科目の出題範囲と法律基本科目の出題範囲との間に重な
りがあるが、法律実務基礎科目の出題に当たっては、試験科目となって
いる実定法の出題範囲と重複する知識や理解を問うことも十分考えられ
ることから、相互の出題範囲を区別するものとはしない。
法律実務基礎科目においては、実定法の理解が前提となるが、法律基
本科目とは別に法律実務基礎科目があることを踏まえて、それにふさわ
しい出題となるよう工夫するものとする。
(3) 問題数
民事及び刑事につきそれぞれ1問とし、計2問とする。
法曹倫理は、民事及び刑事の各分野における出題に含まれるものとす
る。
(4) 配点
民事及び刑事につきそれぞれ50点とし合計100点満点とする。
(5) 試験時間
民事及び刑事につきそれぞれ1時間30分程度、あるいは、併せて3
時間程度とする。
第4 口述試験について
1 試験科目
司法試験法第5条第4項において、口述試験は、法的な推論、分析及び
構成に基づいて弁論をする能力を有するかどうかの判定に意を用い、法律
実務基礎科目について行うものとされている。
2 実施日程等
口述試験は、毎年、短答式試験及び論文式試験を実施した年の翌年の1
月頃までに実施し、2月頃までに合格発表を行う。
論文式試験の合格者数、口述試験に要する試験時間、1日で試験可能な
受験者数等により実施期間に差が出るが、受験する日程としては、実施期
間にかかわらず、1日あるいは2日間となるものと考えられる。
予備試験に合格した者は、合格した年以降の司法試験の受験資格を得る
ことから、口述試験の合格発表は、合格した年に実施する司法試験の出願
期間よりも前に行うものとする。
3 出題方針等
出題範囲は、論文式試験の法律実務基礎科目と同様とする。
民事及び刑事について実施し、法曹倫理は、民事及び刑事の各分野にお
ける出題に含まれるものとする。
配点は、民事及び刑事について同一とする。
第5 合否判定の在り方
短答式試験、論文式試験、口述試験のいずれの段階においても、合計得
点で合否判定を行う。
法律基本科目、選択科目、法律実務基礎科目、一般教養科目のそれぞれ
について、最低ライン点を定めるかどうかは、予備試験の実施状況を踏ま
えつつ、検討することとする。
第6 その他
法律基本科目については、法務省令をもって試験範囲を示すことはしな
いが、明確に試験範囲から除かれる部分がある場合には、法務省令におい
て明示する。
論文式試験及び口述試験において使用を認める試験用法文の登載法令に
ついては、あらかじめ公表するものとする。
試験の実施に当たり、特別な措置が必要な受験者に対し、適正な措置が
とられるよう配意する。
附則
第1 この決定は、令和3年11月1日から施行する。
第2 次に掲げる決定は、廃止する。
1 「予備試験の実施方針について」
(平成21年11月11日司法試験委
員会決定)
2 「司法試験予備試験における出題範囲及び問題数等について」
(平成2
2年3月29日司法試験委員会決定)
3 「司法試験予備試験に関する配点について」
(平成22年11月10日
司法試験委員会決定)