1第1章
人権一般の普遍的な
視点からの取組22
第1章 人権一般の普遍的な視点からの取組
1 人権教育
人権教育とは、
「人権尊重の精神の涵
かん
養を目的とする教育活動」(「人権教育及び人権啓
発の推進に関する法律」
(平成12年法律第147号。以下「人権教育・啓発推進法」という。)第2条)であり、生涯学習の視点に立って、幼児期からの発達段階を踏まえ、地域の実情
等に応じて、学校教育と社会教育とが相互に連携を図りつつ実施している。
(1) 学校教育
ア 人権教育の推進
文部科学省では、人権教育・啓発推進法及び「人権教育・啓発に関する基本計画」
(平成14年閣議決定、平成23年一部変更)を踏まえ、学校教育における人権教育に関
する指導方法等について検討を行い、平成16年6月に「人権教育の指導方法等の在り
方について[第1次とりまとめ]」、平成18年1月に同[第2次とりまとめ]
、平成20
年3月に同[第3次とりまとめ]を公表した。令和3年3月には、同[第3次とりま
とめ]策定後の社会情勢の変化を踏まえ、同[第3次とりまとめ]を補足する参考資
料を作成し、令和5年3月には、令和4年度1年間の動向等を踏まえ、改訂版生徒指
導提要に係る内容、
「こども基本法」
(令和4年法律第77号)などこどもの人権に係る
動向、ハンセン病問題に係る動向等を追記した。文部科学省では、この同[第3次と
りまとめ]などを全国の教育委員会や学校等に配布するなど、人権教育の指導方法等
の在り方についての調査研究の成果普及に努めている。
また、平成23年度から、各都道府県教育委員会を通じ、学校における人権教育の特
色ある実践事例を収集、公表しており、人権教育の理解促進を図るための動画や、各
都道府県教育委員会等における人権教育指導資料の作成状況を一覧化した資料ととも
に、文部科学省ホームページに掲載している。
さらに、平成22年度から毎年、各都道府県教育委員会等の人権教育担当者を対象と
した「人権教育担当指導主事連絡協議会」を開催し、人権教育の推進に関する情報交
換や協議を行うとともに、独立行政法人教職員支援機構が実施する人権教育推進研修
等において、人権教育に関し、各地域において研修の講師等としての活動や各学校の
指導・助言等を行うことのできる指導者の養成を図る研修を実施している。
このほか、学校、家庭、地域社会が一体となった総合的な取組や、学校における人
権教育の指導方法の改善充実について実践的な研究を委嘱する「人権教育研究推進事
業」
、学校における人権教育の在り方等について調査研究を行う「学校における人権
教育の在り方等に関する調査研究」等を実施し、人権教育の推進に努めている。
イ 道徳教育の推進
文部科学省では、
「特別の教科 道徳」を要とする道徳教育の充実を図っており、例
えば、誰に対しても差別や偏見を持たず、公正、公平にすることや、法やきまりを守33第1章人権一般の普遍的な視点からの取組り、自他の権利を大切にすること等、人権教育にも資する指導を行うこととしている。
また、学校・地域の実情等に応じた多様な道徳教育を支援するため、全国的な事例
収集と情報提供、特色ある道徳教育や教材活用等、地方公共団体への支援を行ってい
る。
さらに、幼児期における教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要な役割を
果たすことから、各幼稚園において、道徳性の芽生えを培う指導の充実が図られるよ
うに努めている。
ウ 地域や学校における奉仕活動・体験活動の推進
こどもの社会性や豊かな人間性を育む観点から、机上の知育だけではなく、具体的
な体験や事物との関わりを通じた様々な体験活動を積極的に推進することは極めて重
要なことである。文部科学省では、豊かな人間性や社会性を育むために、児童生徒の
健全育成を目的とした様々な創意工夫のある長期宿泊体験の取組として「健全育成の
ための体験活動推進事業」を実施している。
エ 教師の資質向上等
教師の資質能力については、養成・採用・研修の各段階を通じてその向上を図って
おり、各都道府県教育委員会等が実施している教諭等に対する初任者研修や中堅教諭
等資質向上研修等では、人権教育に関する内容が扱われるなど、人権尊重意識を高め
るための取組を行っている。
トピックス
生徒指導提要の改訂について
平成22年に、生徒指導に関する学校・教職員向けの基本書として、
「生徒指導提要」
が作成されました。しかし、提要が作成されて以降も、いじめの重大事態や児童生徒
の自殺者数の増加傾向は続いており、また、
「いじめ防止対策推進法」等の関連法規
が成立するなど、生徒指導をめぐる状況は大きく変化しています。こうした状況を踏
まえ、文部科学省においては、生徒指導の基本的な考え方や取組の方向性等を再整理
するとともに、今日的な課題にも対応していくため、提要を12年ぶりに改訂し、令和
4年12月に文部科学省のホームページに公開しました。
提要は第I部(総論)と第II部(各論)で構成されています。第I部は、
「生徒指
導の基本的な進め方」として、生徒指導の意義や生徒指導の構造、教育課程との関係、
生徒指導を支える組織体制を整理しています。第II部では、
「個別の課題に対する生
徒指導」として、いじめや暴力行為といった各個別課題に関して、関連法規や対応の
基本方針に照らしつつ、指導に当たっての基本的な考え方や留意すべき事項等をまと
めています。
今般の改訂では、課題予防・早期対応といった課題対応の側面のみならず、課題が44
第1章 人権一般の普遍的な視点からの取組
発生する前から児童生徒の発達を支えるような生徒指導の側面に着目しています。す
なわち、児童生徒が自発的・主体的に自らを発達させていくことが尊重され、その発
達の過程を学校や教職員が支えていくという視点に立ち、特定の課題を意識せず、全
ての児童生徒を対象に、生徒指導上の働きかけを行うことが重要です。提要では、こ
のような働きかけを「発達支持的生徒指導」と呼び、例えば、人権教育の推進などを
行うことが重要であると示しています。
また、生徒指導上の課題が深刻になる中、こどもたちの命を守ることが重要です。
提要では、生徒指導を実践する上で留意すべき点として、他者の人格や人権をおとし
める言動、いじめ、暴力行為などは決して許されず、児童生徒がお互いの個性や多様
性を認め合い、安心して授業や学校生活が送れるような風土を、教職員の支援の下で、
児童生徒自らがつくり上げるようにすることが大切であることを示しています。
さらに、提要では、我が国が平成6年に批准した「児童の権利に関する条約」(平成6年条約第2号。以下「児童の権利条約」という。
)にも言及しています。児童の
権利条約は、1児童生徒に対するいかなる差別もしないこと、2児童生徒にとって最
もよいことを第一に考えること、3児童生徒の命や生存、発達が保障されること、4
児童生徒は自由に自分の意見を表明する権利を持っていること、という四つの原則が
定められています。安全・安心な学校づくりは、生徒指導の基本であり、教職員、児
童生徒、保護者、地域の人々にとっては、この四つの原則を含め、児童の権利条約の
理解が必須であると示されました。
加えて、提要では、新たに、性犯罪・性暴力に関する対応についても整理し、課題
未然防止教育として、各教科や道徳科、学級・ホームルーム活動等において、全ての
児童生徒が性犯罪・性暴力に対して適切な行動をとれる力を身に付けることができる
ように「生命(いのち)の安全教育」を実施することを示しています。
また、提要では、
「性的マイノリティ」に関する課題と対応について新たに追記し、
教職員への適切な理解の促進、教職員の人権感覚の醸成及び相談体制の整備が重要
であること、
「性的マイノリティ」とされる児童生徒への配慮と他の児童生徒への配
慮との均衡を取りながら支援を進めること等について記載し、適切な対応を求めて
います。
さらに、学校における懲戒と体罰の区別についても記載し、不適切な指導と考えら
れる具体例を挙げながら、体罰や不適切な言動等がいかなる児童生徒に対しても決し
て許されないことを示しています。
加えて、提要では、
「チーム学校」として生徒指導に当たる
ため、教職員や教育委員会等だけでなく、医療や福祉、警察、
司法等の多様な学校関係者相互の共通理解を図ることが重要で
あると示しています。学校に関わる各関係者におかれては、是
非提要を御覧いただけますと幸いです。
生徒指導提要・改訂版
(文部科学省ホームページ)55第1章人権一般の普遍的な視点からの取組トピックス
学校における人権教育の取組
〈事例1〉普遍的な視点を大切にしながら、学校の教育活動全体を通じて個別の人権
課題に関する取組の充実を図った高等学校の事例
人権を尊重しようとする意欲や態度を育むために、様々な人権課題について考えて
いく上で必要となる普遍的な視点や資質を大切にして、個別の人権課題に関する取組
を様々な教育活動で展開し、学校の教育活動全体を通じて人権教育を推進しました。
「アイヌの人々」・「インターネットによる人権侵害」・「性的指向・性自認」につい
ては、当事者を講師として招いて講演会を開催しました。また、
「こども」・「高齢者」
については、
生徒同士が自分の気持ちやメッセージを絵手紙で伝え合う活動や、
スマー
トフォンの使い方に困っている地域の高齢者を生徒が支援する活動などを行いました。
これらの活動に取り組むことを通して、生徒は、多様性に対する開かれた心や複数
の情報を収集・吟味し、公平で均衡のとれた結論を導く力、適切に自己を表現する技
能や他者の感情を共感的に受容するための想像力など、人権を大切にするために必要
となる普遍的な資質を育むことができました。
最も重点的に取り扱う課題としたハンセン病患者等については、教職員研修、学習
指導要領に基づく学習指導案の作成、研究授業の実施などに取り組みました。
まず、教職員がハンセン病問題について正しい知識を身に付けるために、国立ハン
セン病資料館から講師派遣を受けて研修会を開催し、過去に行われた国による隔離政
策を中心としたハンセン病問題の歴史や、患者・元患者やその家族が置かれ続けてき
た境遇と現在の国の施策について学びました。
次に、学んだことを踏まえて、学習指導要領に基づき公民科の政治・経済の学習指
導案を作成しました。教科書では、ハンセン病問題は憲法の基本的原則の一つである
基本的人権の尊重に関する単元に掲載されており、この基本的人権の尊重の考え方に
ついて法の下の平等や個人の尊重、法の支配などの普遍的な視点から生徒の理解を深
めることを大切にして、次のように授業の展開を工夫しました。
・ハンセン病に関する資料を読み、ハンセン病問題が現在も解消していないことを
知る。・「ハンセン病の向こう側」
(厚生労働省)
を読み、
ハンセン病について正しく理解し、
その歴史を知る。
・平成8年に廃止されたらい予防法の一部を読み、国が過去に進めた政策が患者の
「隔離」であったことを理解し、その下で患者・元患者やその家族が置かれた境
遇と基本的人権との関わりについて、法の下の平等や個人の尊重の視点から考察
する。
・国の隔離政策が国民間の差別意識を助長したことで、患者らは基本的人権の侵害66
第1章 人権一般の普遍的な視点からの取組
と国民からの偏見・差別という二重の苦しみを強いられたことに気付かせる。
・熊本地裁判決を受けて公表した内閣総理大臣談話を読み、政府が深い反省と謝罪
をした理由について、憲法との関わりから考察し、現在の国の施策の意義を理解
する。
・憲法の役割について、法の支配の視点から考察し、まとめる。
このように授業を展開することで、学習指導要領で示されている憲法の基本的原則
や役割について生徒は理解を深め、
憲法や人権関連の法令に関する知識や人権の発展・人権侵害等に関する歴史や現状について学ぶことができました。
〈事例2〉学校、家庭、地域社会が連携した人権教育の総合的な取組
「一人一人が大切にされ、人権が尊重される地域づくり」を研究テーマに、小中学
校4校と地域公民館3館がそれぞれ人権教育の拠点としての役割を果たしつつ、互い
に連携しながら児童生徒を含む地域住民の人権意識の向上を目指し取り組みました。
目指す児童生徒像を「自分が大切にされているという感覚を自己有用感や自己肯定
感、他者尊重につなげることができる児童生徒」とし、学校・家庭・地域が連携し、
地域全体で人権尊重の精神を高め、一人一人を大切にした教育の充実に努めました。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために「不要不急」の外出を控えるよ
う求められる中でしたが、人権教育・啓発は決して「不要」ではないとの強い思いを
学校・公民館・教育委員会で共有し、
「どうすればできるか」
「何ならできるか」を真
摯に考え、知恵を絞り、スモールステップを大切にしつつ実践を積み重ねました。
学校における人権教育の推進に当たっては、
「人権が尊重された雰囲気や環境をつ
くる取組」
「豊かな人間性を育む取組」
「人権意識を高める取組」の三本柱を縦軸とし、
具体的な中身(横軸)については、各校の創意工夫を生かしつつ、担当者部会等での
情報交換を通じ、互いに高め合いながら取り組めるようにしました。
具体的には、
「人権が尊重された雰囲気や環境をつくる取組」として、人権コーナー
の設置・人権図書の配置のほか、お互いのよさを伝え合うコーナーや言葉の掲示、学
校行事カードを用い、お互いに認め合うことで自己有用感を高める工夫等を行いまし
た。また、
「豊かな人間性を育む取組」として、小中合同あいさつ運動や地域住民の
協力の下で行われた田んぼの学校の実践等、様々な交流・体験活動を通じ豊かな人間
性の育成に取り組みました。そして「人権意識を高める取組」として、日常の各教科
等における人権教育の充実はもちろん、児童生徒の主体性を取り入れた「即興劇で考
えるいじめ問題」
、地元出身の車椅子バスケット銀メダリストによる講演会等、様々
な企画を通じ人権意識の高揚に努めました。また、そうした企画に保護者にも参加を
促すことで、こどもたちと一緒に人権について考える貴重な機会となりました。さら
に、PTAからの発案・協力で、人権尊重の願いを込めた児童の手形看板やペットボ
トルキャップアートに取り組む学校もありました。77第1章人権一般の普遍的な視点からの取組公民館との連携では、児童生徒のいじめゼロスローガンをのぼり旗にして公民館に
掲げたり、書道講座の題材として作品を館内に掲示したりするなどして、地域全体で
人権意識の高揚を図りました。また、感染拡大防止の観点から、地域住民対象の人権
落語を近隣の小学校体育館で開催することで児童も一緒に学べる機会となりました。
こうした取組等を通じ、児童生徒対象の質問紙では「自分にはよいところがある」
「自分のことを大切にしている」
「人には考えや感じ方など違いがあってよい」等で事
業実施前と比較し大きく向上するなど、
目指す児童生徒像に近づくことができました。
研究成果の普及のため、県教育研究発表大会で発表したり、市教育委員会のホーム
ページに掲載したりするなど、情報発信に努めています。
(2) 社会教育
社会教育においては、生涯にわたる学習活動を通じて、人権尊重の精神を基本に置い
た事業を展開している。
文部科学省では、社会教育において中核的な役割を担う社会教育主事の養成講習や、
現職の社会教育主事等を対象にした研修等において、人権問題等の現代的課題を取り上
げ、指導者の育成及び資質の向上を図っており、公民館等の社会教育施設を中心に学級・講座が開設され、世代の異なる人たちや障害のある人、外国人等との交流活動等、人権
に関する多様な学習機会が提供されている。
また、地方公共団体の社会教育担当者等を集めた各種会議等の機会を通じ、
「本邦外
出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」
(平成28年
法律第68号。以下「ヘイトスピーチ解消法」という。)、
「部落差別の解消の推進に関す
る法律」
(平成28年法律第109号。以下「部落差別解消推進法」という。
)等に関する法
の趣旨や性的マイノリティ、ハンセン病に対する偏見や差別の解消のための適切な教育
の実施に関する周知等を図り、各地域の実情に即した人権教育が推進されるよう促して
いる。88
第1章 人権一般の普遍的な視点からの取組
2 人権啓発
人権啓発とは、
「国民の間に人権尊重の理念を普及させ、及びそれに対する国民の理解を
深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く。)」を意味し、
「国民が、
その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得することができる
よう」にすることを旨としている(人権教育・啓発推進法第2条、第3条)。人権啓発は、
広く国民の間に、
人権尊重思想の普及高揚を図ることを目的に行われる研修、
情報提供、広報活動等のうち人権教育を除くものであるが、その目的とするところは、国
民の一人一人が人権を尊重することの重要性を正しく認識し、これを前提として他人の人
権にも十分に配慮した行動をとることができるようにすることにある。すなわち、
「人権と
は何か」、「人権の尊重とはどういうことか」、「人権を侵害された場合に、これを排除し、
救済するための制度がどのようになっているか」等について国民が正しい認識を持ち、そ
れらの認識が日常生活の中で、
その態度面、
行動面等において確実に根付くことによって、
人権侵害の生じない社会の実現を図ることが人権啓発の目的である。
(1) 人権啓発の実施主体
法務省には、人権啓発を担当する国の機関として人権擁護局が、その下部機関として
法務局に人権擁護部、地方法務局に人権擁護課がそれぞれ設けられており、また、法務
局・地方法務局の下部機関である支局でも人権啓発活動を行っている。加えて、
「人権
擁護委員法」
(昭和24年法律第139号)に基づき、法務大臣が委嘱する人権擁護委員及び
その組織体があり、これら全体を「法務省の人権擁護機関」という。
人権擁護委員は、法務大臣が委嘱した民間のボランティアの方々であり、現在、約
1万4,000人が全国の各市町村に配置され、法務局・地方法務局等と連携しながら、人
権啓発を含む人権擁護活動を行っている。人権擁護委員制度は、
様々な分野の人たちが、
地域の中で人権尊重思想を広め、住民の人権が侵害されないよう配慮し、人権を擁護し
ていくことが望ましいという考えから創設されたものであり、諸外国にも例を見ないも
のである。
また、法務省以外の関係各府省庁においても、その所掌事務との関連で、人権に関わ
る各種の啓発活動を行っているほか、地方公共団体や公益法人、民間団体、企業等にお
いても、人権に関わる様々な活動を展開している。99第1章人権一般の普遍的な視点からの取組法務省の人権擁護機関の構成図(令和4年6月1日)
※(注記)括弧書きは令和4年度の定員
(267人)
(28人)
(2) 法務省の人権擁護機関が行う啓発活動
ア 令和4年度啓発活動重点目標
ポスター
「令和4年度啓発活動重点目標」
法務省の人権擁護機関においては、その時々の社会情勢や人権侵犯事件の動向を勘
案して、年度を通じて特に重点的に啓発するテーマを定め、共通の目標の下に組織を
挙げて人権啓発活動を展開している。
令和4年度は、「『誰か』のこと じゃない。
」を啓発活動重点目標とし、多様な主
体が互いに連携し、
支え合う共生社会の実現を目指して各種人権啓発活動を展開した。
また、次の17の項目を啓発活動の強調事項として掲げ、全国各地において、講演会、
シンポジウム等を開催したほか、
テレビ・ラジオ等のマスメディアやSNSなどインター
ネットを活用した人権啓発活動を行った。
1 女性の人権を守ろう
2 子どもの人権を守ろう
3 高齢者の人権を守ろう
4 障害を理由とする偏見や差別をなくそう
5 部落差別(同和問題)を解消しよう
6 アイヌの人々に対する偏見や差別をなくそう
7 外国人の人権を尊重しよう
8 感染症に関連する偏見や差別をなくそう9 ハンセン病患者・元患者やその家族に対する偏見や
差別をなくそう10 刑を終えて出所した人やその家族に対する偏見や差
別をなくそう1010
第1章 人権一般の普遍的な視点からの取組
11 犯罪被害者やその家族の人権に配慮しよう
12 インターネット上の人権侵害をなくそう
13 北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めよう
14 ホームレスに対する偏見や差別をなくそう
15 性的指向及び性自認(性同一性)を理由とする偏見や差別をなくそう
16 人身取引をなくそう
17 震災等の災害に起因する偏見や差別をなくそう
イ 第74回人権週間
「誰か」
のことじゃない。
みんなの人権110番 子どもの
人権110番
インターネット
人権相談受付窓口 https://www.jinken.go.jp/(
パソコン・
スマート
フォン・) 携帯電話共通
0570-003-110
ゼロ ゼロ みんな の ひゃく とお ばん
0120-007-110
ぜろ ぜろ なな の ひゃく とお ばん
女性の人権
ホットライン 0570-070-810
ゼロ ナナ ゼロ の ハ ー ト ラ イ ン
外国語人権
相談ダイヤル 0570-090-911
法 務局では、人権 侵 害による被害を受けた方を救 済するための活 動を行っています。74第74回
12月10日は人権デーです。
12月10日は人権デーです。
12月4日〜10日
12月4日〜10日
人権週間
ポスター「第74回人権週間」
令和4年12月4日から10日(世界人権宣言が採択され
た人権デー)までの1週間を「第74回人権週間」と定め、
関係諸機関及び諸団体の協力の下に、世界人権宣言の意
義を訴えるとともに、人権尊重思想の普及高揚を呼び掛
ける集中的な人権啓発活動を展開した。
令和4年度は、SNS・掲示板等のインターネット上で
発生している誹謗中傷などの問題について、その根絶を
呼び掛ける啓発動画を作成し、YouTube法務省チャンネ
ル等のウェブサイトや街頭ビジョン、テレビCM等で配信
した。
ウ 人権擁護委員の日
257 ×ばつ 364mm
ひとりで悩まずご相談ください!
秘密は守ります。
相談は無料です。
法務省人権擁護局・全国人権擁護委員連合会
人権研修を無料で行います。
申し込みは最寄りの法務局まで。
●くろまる差別を受けた
●くろまる暴行・虐待を受けた
●くろまるセクハラ・パワハラを受けた
●くろまるいじめ・体罰を受けた
●くろまるインターネッ
ト上の
誹謗中傷など6月1日は人権擁護委員の日です。
あなたの街の相談パートナー
0570-003-110
ゼロ ゼロ みんなの ひゃくとおばん
みんなの人権110番
0570-070-810
ゼロ ナナ ゼロ の ハートライン
女性の人権ホットライン
0120-007-110
ひゃくとおばん
子どもの人権110番(通話料無料)
ぜろ なな
ぜろ の
全国人権擁護委員連合会 ホームページ
https://zenrenjinken.org/
法務省人権擁護局 ホームページ
https://www.moj.go.jp/JINKEN/
index_yougoiin-a.html
インターネッ
ト人権相談受付窓口
https://www.jinken.go.jp/
インターネット人権相談 検 索 公式
ツイッター
公式
フェイスブック
公式LINE@MOJ_JINKEN
HumanRightsBureau.MOJ
@JINKEN01
法務省人権擁護局
「人権を侵害された」
という
被害者からの申告などを受
け、
法務局職員と協力して調査を行います。
法務局などでは、
地域の皆さん
から、
いじめ・差別などの人権
に関する相談に応じ、
問題解決のお手伝いをします。
人権相談
調査救済
人権啓発
地域の皆さん一人一人の人
権意識を高め、
人権への理解
を深めてもらうために、
様々な活動を行っています。
人権擁護委員
人権擁護委員
人権イメージキャラクター人KE
Nまもる君・人KENあゆみちゃん
ポスター「人権擁護委員制度」
人権擁護委員法が施行された6月1日を「人権擁護委
員の日」と定め、国民に人権擁護委員制度の周知を図る
とともに、人権尊重思想の普及高揚に努めている。
令和4年度においても、テレビ番組やラジオ番組にお
いて人権擁護委員の活動について紹介するなど、マスメ
ディアを活用して人権擁護委員制度等の広報に積極的に
努めたほか、6月1日を中心に、全国2,446か所において、
全国一斉に人権擁護委員の日特設人権相談所を開設した。
エ 全国中学生人権作文コンテスト
次代を担う中学生を対象に、人権問題についての作文
を書くことによって、人権尊重の重要性、必要性につい
ての理解を深めるとともに豊かな人権感覚を身に付けること、及び入賞作文を国民に
周知広報することによって、広く一般に人権尊重意識を根付かせることなどを目的と
して、例年、
「全国中学生人権作文コンテスト」を実施している。
多くの中学生が、日常の中で見聞きした出来事や体験などを踏まえながら人権につ
いて考察を深めることのできる良い機会となっており、
41回目を迎えた令和4年度は、1111第1章人権一般の普遍的な視点からの取組6,582校から、76万8,623編の応募があった。優秀作品については、法務省において令
和5年2月22日に中央大会表彰式を行ったほか、法務局・地方法務局においても、人
権週間を中心として地方大会表彰式を開催し、作文を周知した。中央大会における主
な入賞作文は次のとおりである。
内閣総理大臣賞 広島県・学校法人盈進学園盈進中学校3年 松葉 悠乃さん
「大きく息を吸い込む世界へ」
法務大臣賞 岐阜県・岐阜市立三輪中学校1年 深尾 和弘さん
「偏見は差別」
文部科学大臣賞 長崎県・平戸市立中部中学校3年 川上 琴心さん
「煌太、お姉ちゃんと手をつなごう」
これらの作品を含む主な入賞作文については、
「第41回全国中学生人権作文コンテ
スト入賞作文集」として冊子に編集し、中学校、市区町村、図書館等に配布するとと
もに、法務省ホームページに掲載して、人権啓発の資料として幅広く活用している。
また、上記の3作品については、世界にも発信することを目的として、英語に翻訳
の上、法務省ホームページ(英語版)に掲載した。
第41回全国中学生人権作文コンテスト
中央大会表彰式
第41回全国中学生人権作文コンテスト
入賞作文集
オ 人権教室
「人権教室」は、いじめ等について考える機会を作ることによって、相手への思い
やりの心や生命の尊さをこどもたちに体得してもらうこと等を目的とし、全国の人権
擁護委員が中心となって実施している人権啓発活動である。
小・中学生等を対象に、
「人権の花運動」
(13頁参照)における学校訪問や道徳科の
授業等を利用して、啓発アニメーション動画や紙芝居・絵本等といった、こどもたち
が興味を持ちやすいように工夫した教材を活用することにより、人権尊重思想につい
て分かりやすく説明し、こどもたちに理解してもらう内容とするように努めている。
また、近年は、園児や児童生徒に加え、大学生を対象とした人権教室のほか、企業研
修等において「大人の人権教室」を実施している。1212
第1章 人権一般の普遍的な視点からの取組
令和4年度は、83万1,383人を対象に行われた。
カ 人権擁護功労賞
人権擁護委員の活動等を通じて、関わりのある企業・法人等の団体及び個人の中か
ら、人権擁護上顕著な功績があったと認められた者に対し、法務大臣又は全国人権擁
護委員連合会会長が表彰を行うもので、平成19年度に開始され、令和4年度は16回目
の開催となった。
令和4年度の受賞者は、次のとおりである。
法務大臣感謝状 株式会社福井新聞社(福井県)
株式会社新日本海新聞社(鳥取県)
一般社団法人徳島新聞社(徳島県)
全国人権擁護委員連合会会長感謝状
信濃毎日新聞株式会社(長野県)
株式会社丹波新聞社(兵庫県)
特定非営利活動法人伊賀FCくノ一(三重県)
株式会社富山サンダーバーズベースボールクラブ(富山県)
有限会社大分合同新聞社(大分県)
株式会社北海道新聞社(北海道)
人権擁護功労賞表彰状伝達式の様子(左:福井県、右:長野県)
(3) 法務省が公益法人、地方公共団体へ委託して行う啓発活動
ア 公益財団法人人権教育啓発推進センターが行う啓発活動
(人権啓発活動中央委託事業)
ア 公益財団法人人権教育啓発推進センター
公益財団法人人権教育啓発推進センター(以下「人権教育啓発推進センター」と
いう。
)は、人権教育・啓発活動の中核となるナショナルセンターとしての役割を
果たすべく、人権に関する総合的な教育・啓発及び広報を行うとともに、人権教育・啓発についての調査、研究等を行っている。
イ 令和4年度に人権教育啓発推進センターへ委託した啓発活動
1 人権啓発教材の作成1313第1章人権一般の普遍的な視点からの取組・啓発冊子「よくわかる!こどもの権利条約」
・啓発冊子「障害のある人と人権〈改訂版〉」・啓発冊子「あなたは、大丈夫?考えよう!インターネットと人権〈四訂版〉」・啓発動画「インターネットはヒトを傷つけるモノじゃない。」(全4編)
・啓発動画「アコロ青春 a=kor アコロ〔アイヌ語で「私たちの」〕」
・啓発動画「
『災害と人権に関するシンポジウム』ダイジェスト」
・研修用動画「今企業に求められる『ビジネスと人権』への対応」
2 人権シンポジウム等の開催
・ハンセン病問題に関する「親と子のシンポジウム」
(74頁参照)
・共生社会と人権に関するシンポジウム〜今、企業に求められること〜(45頁参照)3 「人権に関する国家公務員等研修会」の開催(104頁参照)4 地方公共団体等の人権啓発行政に携わる職員を対象とした「人権啓発指導者養成研
修会」の実施(104 〜 105頁参照)5 人権週間を中心に、年間を通じて人権尊重思想の普及高揚を図るため、全国規模で
の広報を実施6 「人権ライブラリー」
(ホームページhttps://www.jinken-library.jp/)の運営等
イ 地方公共団体が行う啓発活動(人権啓発活動地方委託事業)
ア 人権啓発活動地方委託事業
人権啓発活動地方委託事業(以下「地方委託事業」という。
)は、都道府県及び
政令指定都市等を委託先とし、あらゆる人権課題を対象とした幅広い人権啓発活動
を委託する事業であり、講演会、研修会、資料作成、スポットCM、新聞広告、地
域総合情報誌広告等を実施している。
イ 地域人権啓発活動活性化事業
法務省の人権擁護機関、都道府県、市区町村等の人権啓発活動を実施する主体間
の横断的なネットワークである「人権啓発活動ネットワーク協議会」
(109頁参照)
との連携の下に実施される地方委託事業を、
「地域人権啓発活動活性化事業」と称
している。令和4年度は、
同事業として、
人権の花運動(注)、スポーツ組織と連携・協力した啓発活動(109頁参照)
、地域の民間団体と連携した人権ユニバーサル事業
等、地域に密着した多種多様な人権啓発活動を実施した。
(注) 人権の花運動は、児童が協力して花の種子、球根等を育てることによって、生命の尊さ
を実感し、その中で、豊かな心を育み、優しさと思いやりの心を体得することを目的に、
全国の人権擁護委員が中心となって実施している、主に小学生を対象とした人権啓発活動
である。この活動では、児童が育てた花をその父母や社会福祉施設に届けるなどすること
で、一層の人権尊重思想の普及高揚を図っている。
令和4年度は、3,764校の学校等において、42万1,376人を対象に行われた。1414
第1章 人権一般の普遍的な視点からの取組
(4) 中小企業・小規模事業者等に対する啓発活動 経済産業省中小企業庁委託
令 和 3 年 度CSR(企業の社会的責任)
と人権セミナー
公益財団法人人権教育啓発推進センター
http://www.jinken.or.jp
従 業 員・地 域・取引 先を 大 切 にする企 業
概要
パンフレット
「令和3年度CSR(企業の社会
的責任)と人権セミナー概要」
経済産業省では、
令和4年度は、
CSR(企業の社会的責任)
の観点から、企業活動における様々な人権問題等に関する
セミナーやシンポジウムを全国で開催し、中小企業・小規
模事業者等に対して人権意識の涵
かん
養を図った(開催回数:
87回、参加・視聴数:17,769人)。また、併せて、企業の社会的責任に係る啓発活動の参考
となるべきパンフレットを企業等に配布した。
(5) 国際的な取組に関する啓発活動
例年、外務省では、国際場裡においてフォーラム等への
登壇や国際機関への拠出等を通じて、国際的な人権課題の
啓発を行っている。
令和4年度においては、
タイ、
ベトナムにおいて現地に進出する日本企業に対する「ガ
イドライン」を含む「ビジネスと人権」に関する我が国の取組の紹介・啓発を行ったほか、
フィリピン、マレーシア、インドネシア、インドにおいて人権デュー・ディリジェンス
導入・実施促進のための研修を実施した。また、国際機関への拠出を通じた人権デュー・
ディリジェンス導入促進支援事業や国連主催フォーラムへの登壇等を通じ、国際機関と
も連携して「ビジネスと人権」に係る取組の啓発に努めている。