2020.3
北海道の少年院と少年鑑別所のニュースレター
Rapport
ら ぽ ー と
令和元年9月に行われた月形学園閉庁式
月形学園 46年間のあゆみ
Vol. 96
[特集]
・協力者へのインタビュー
・閉庁に向けた現在の取組
・北海少年院における短期義務教育課程及び
短期社会適応課程の運用方針について月形学園が所在する月形町は、明治14年に樺戸集治監(現在の刑務所)の設置とともに開村しました。集治監初代典獄(現在の刑務所長)月形潔の姓を村名として、月形村と名付けられました。このような歴史的経緯を背景に、刑務所や少年院に理解ある月形町の風土があるといわれています。月形学園は、昭和48年に「月形少年院」として開庁されました。当時、職業指導のために、整備班、農耕班、畜産班などからなる農業科が置かれ、広大な農場を使用して農園芸中心の教育が行われていました。また、地域に溶け込んだ指導が積極的に取り入れられ、町内で行われる各種行事への参加が篤志家の協力を得るなどして盛んに展開されていました。昭和51年に一般短期処遇を実施する施設に指定されて以降、細かな指定の変更はあったものの、閉庁となるまで短期処遇の少年院として運営されました。月形学園 46年間のあゆみ
月形町の皆様へ感謝を込めて
庁舎前の植樹作業の風景
職業指導(農園芸科)平成3年からは、町内の民間企業等に協力をいただき、民間企業等の方々から直接指導を受ける院外での指導を積極的に実施するようになりました。その後も、町内の民間福祉施設等に協力をいただくなど、現在まで院外での指導を継続してまいりました。近隣の保育園、福祉施設などで職場体験を実施するに当たっては、施設職員の方々はもちろんのこと、利用者やその保護者の理解が不可欠であり、これらの取組を実現できたことは、全国的にも珍しい取組であったと思います。月形学園は、本年度をもって閉庁となります。昨今の収容状況や施設設備の老朽化を考えるとやむを得ないこととはいえ、月形町をはじめとする地域社会の皆様から「寂しくなるね。」という声を聞くにつれ、残念な気持ちになります。既に在院者は全員出院しており、現在は閉庁に向けて職員一丸となって残された業務に取り組んでいます。残された日々、しっかりと有終の美を飾ってまいりたいと思います。
職業指導(花壇整備の様子)
院外指導(自動車整備工場にて)
社会貢献活動(知来乙駅の清掃)
実はよく知らない !! 少年院のこと
Q 少年院って何をするところ?
少年院は、家庭裁判所の決定で保護処分として送致された非行少年に対し、その健全な育成を図ること
を目的として矯正教育,社会復帰支援などを行う施設です。少年一人一人の特性や教育上の必要性に応じ,
家庭裁判所,少年鑑別所の情報や意見を参考にして個人別矯正教育計画を作成し,きめ細かい教育を実施
しています。
Q 少年院では誰が働いているの?
非行少年に対する矯正教育を担う法務教官を中心に,健康管理を担う医師,心理面の分析を担う心理技
官,社会復帰支援を担う社会福祉士などが働いています。
Q 地域に対して何ができるの?
地域の教育施設の一つとして,青少年の健全育成に関する講演,非行防止に関する出前授業,面接技法
などをテーマとした勉強会,社会貢献活動としての作業などを準備しています。❘月形学園との関わりについてお聞かせください。月形学園が「月形少年院」として開庁して以来の関わりがあります。当時は衣類のほころびや布団の補修作業、花見、運動会、夏祭り、クリスマス会など様々な活動を行っていました。初期に活動していた会員からは、大量に作ったはずの食事をきれいに完食してくれたことや、食事に添える漬物を少年たちと協力して作った話など、いろいろな思い出話を聞いています。❘最近の活動についてお聞かせください。閉庁前までの活動は、年に2回の茶話会と8月上旬の夏祭りです。茶話会は誕生日の対象者がいれば誕生会になるのですが、「初めて誕生祝いをしてもらえて、とても嬉しかった」という声をもらうことが何度かあり、嬉しい反面、家族団らんを知らない子がいるという現実を知らされたようでした。夏祭りには地域の方や篤志面接委員、岩見沢と浦臼の更生保護女性会の方々も参加し、浴衣を着た少年と一緒に盆踊をしたり、少年が考えたクイズやゲームをして盛り上がりました。❘最後に一言お願いします。出院していった少年たちには、月形学園での人との関わり合いから楽しかったことや嬉しかったことを胸に刻み前を向いて進んで欲しいと思います。お世話になった皆様からお話をうかがいました協力者への
インタビュー❘月形学園との関わりについてお聞かせください。当園が開園した平成11年から、月形学園の職業体験実習の受け入れを行ってきました。月形学園の少年たちは、当園の子どもたちから「がくえんのおにいちゃん」という呼び名で親しまれていました。「今日は学園のお兄ちゃんが来ます。」と発表すると、「どこのクラスに入るの?」とわくわくしてお兄ちゃんを迎えていました。❘月形学園の少年とのエピソードを教えてください。ある日、一人の青年が、植木鉢と花の球根を持って「園長先生はいますか」と訪ねて来ました。話を聞くと、その青年は以前、月形学園に入っていたことがあり、当園に職業体験実習をしに来たことがあるようで、その際に、誤って壊してしまった植木鉢を弁償しに来たとのことでした。その実習が行われた当時の園長は、「弁償はしなくていいから、学園を出たらいつかまた顔を見せに来て欲しい」と話していたようなのですが、その青年はきちんと就職し、自分で稼いだお金で弁償をしに来てくれたのです。私たち職員はこの出来事が大変嬉しく、長年続いていたこの実習に大きな価値があったのだなと感じました。❘最後に一言お願いします。お兄ちゃんたちにとって、ここでの出会いは、この後の人生においてきっと役立つことと思います。これからも様々な出会いを通して、希望を持って社会に戻って行くことを心から願っています。月形更生保護女性会会長
西野 智佳子さん
月形町認定こども園花の里こども園
豊田 揺子 園長月形学園が閉庁になると知らされたのは、平成30年11月でした。1年後には在院者をゼロにするとの方針でしたので、早速、今後どのように教育を進めていくか検討しました。その中で、在院者が少なくなっても、効率化のために従来の活動を中止することはせず、最少催行人員に達しないことなどにより外部機関等に依頼できない場合等を除き、最後まで従前と変わらない教育を続けることにしました。収容業務が停止になる約3カ月前からは在院者が1名となり、行事や検定試験、朝礼等も1名で実施を続け、1名だけではできないスポーツ大会等は、多数の職員も加わって開催しました。在院者が出院した後は、施設内の片付けです。驚かされるくらいのたくさんの物品がありました。在院者の教育を実施するためには、数多くの物品が必要であると感じる一方、職員全員で協力することにより、片付けにはそれほど期間はかかりませんでした。在院者の教育を行っている間は、片付けや整理にほとんど手を付けられませんでしたので、改めて、多くの時間と労力を在院者の教育に費やしていたことに気が付かされました。整理を進める中で、教育活動を記録した写真を貼ったアルバムを数多く見ました。このような機会がなければ、見ることはなかったかもしれません。少年院の立ち上げ、短期処遇の開始等、先達が多くの知恵と工夫を重ねてきたことがうかがえ、これを新たな時代に継承していく大切さを胸に刻みました。閉庁に向けた現在の取組月形学園首席専門官
秋森 幸仁
最後のスポーツ大会の様子です。卓球は大い
に盛り上がりました。
事務什器や電子機器を他施設へ送
るための仕分け作業です。
トラックをレンタルし,搬出作業は
月形学園の職員で行いました。
廃庁宿舎の取り壊し作業も進んで
います。月形学園の伝統を受け継ぐ令和元年9月1日から、月形学園の短期教育課程を引き継ぐ形で、北海少年院に短期教育課程(短期義務教育課程(SE)、短期社会適応課程(SA))が設置されました。月形学園においてこれまで培ってきた歴史と伝統ある短期集中的な矯正教育の実践を、その質を落とすことなく、かつ北海少年院における矯正教育と効果的に連動させながら運用していくことは、大変難しく、一方で非常に意義深い取組であると考えています。これまで月形学園では、地域社会との強い信頼関係に基づき、開放的で実践的な教育活動を積み重ねてきました。その代表的な例が院外委嘱指導・職場体験といった院外指導ですが、北海少年院においてもこうした取組を引き継ぐべく、近隣地域における協力企業を募集したところ、現在までに観光業、建設業、土木業及び印刷業といった多様な業種から、5社の御協力をいただけることとなりました。このような院外指導については、職場定着を目指した就労支援としての側面も併せ持つことから、社会復帰支援の一環として、長期教育課程の少年に対しても効果的な処遇であると考えています。大規模施設ならではの集団指導を実践一方、月形学園においては、近年、入院者数の減少が著しく、集団指導の実施が困難な状況となっていました。その分、職員による手厚い個別的な指導が行われてきたところではありますが、例えば運動会やスポーツ大会のような全体行事、生活場面における配膳・洗濯等の役割活動、グループワークや集団討議等の集団的な教育活動については、万全とは言えない状況にありました。この点については、北海少年院に短期教育課程を併設し、長期教育課程の少年と合同での活動場面を作ることによって、必要な集団指導を実践することができるようになりました。このように、北海少年院では、月形学園における短期教育課程の実践を受け継ぎつつ、従来の長期教育課程と連動させることにより、より効果的な短期教育課程とするため、日々実践と検討を続けています。
北海少年院における短期義務教育課程及び
短期社会適応課程の運用方針について
月形学園における実践の継承 北海少年院における教育活動の応用
関係機関の方々や帰住先の
関係者等との綿密なケース討
議の実施
院外委嘱指導・
職場体験
地域企業の協力に
よる就労体験
個々の非行や家庭環境
に応じた指導
非行態様別指導や保護者参
加型プログラムなど,それぞれ
の非行の実情に即し,オーダー
メイド型の指導を展開
被害者心情理解指導
外部専門家による被害者
の心情を理解するための
計画的な指導
各種資格取得講座
溶接科,土木・建築科,危険物取扱者(乙4種,丙種),英語検
定,簿記検定,リテールマーケティング検定,高等学校卒業程
度認定試験等の多様な資格の受験指導
性非行防止指導プログラム
重点指導施設としての経験を生かした指導を個別的に展開
支援教育課程IIIにおける教育活動の応用
セカンドステップ,コーディネーショントレーニング,点訳絵
本指導等の個々の特性に応じた教育活動
総合型少年院としてのスケールメリット
運動会や成人式等の全体行事による感動体験,クラブ活動を通じた情操教育,
分院(紫明女子学院)の女性職員と協働した家庭的環境での指導等
法務省人間科学系インターンシップ
道内の全ての少年院と少年鑑別所では,学生を対象としたインターン
シップを行っています。どの施設も3日間程度の日程で,面接の実習や
教育場面の見学、職員との意見交換など,いろいろな経験をすることが
できます。少年院と少年鑑別所の仕事を実際に見て,聞いて,知ること
ができる機会ですので,学生の皆さんはぜひ応募してください。
応募方法など詳しいことは,法務省ホームページを御覧ください。
札幌少年鑑別所での講義風景
法務省 人間科学 インターン
※(注記) 「法務省人間科学系インターンシップ」は,
「法務省インターンシップ」とは異なりますので
応募の際はご注意願います。法務省専門職員(人間科学)試験「法務教官」
少年たちと真剣に向き合い,
社会復帰を助ける仕事です。
法務教官は,少年院や少年鑑別
所などに勤務する専門職員です。
少年たちの立ち直りを見守り,手助
けをし,更生に導きます。
「矯正心理専門職」
非行・犯罪臨床の最前線で,心理
学の専門性を発揮する仕事です。
矯正心理専門職は,少年鑑別所や少
年院,刑事施設などに勤務する専門職
員(法務技官(心理))です。少年の健全育成、非行・犯罪の防止につながる大切な仕事です。熱意のある皆さんの受験をお待ちしています。
受付期間
インターネット
令和2年3月27日〜4月8日
郵送または持参
令和2年3月27日〜3月30日
第1次試験
令和2年6月7日(日)
編集・発行
札幌矯正管区第三部
発行責任者
第三部長 齊田 浩
発行日
2020/3
札幌市東区東苗穂 1-2-5-5
電話 011(783)5063
FAX 011(780)2207
北海道の少年院と少年鑑別所のニュースレター らぽーと 96号
法務省ホームページもご覧ください
http://www/moj.go.jp/
紫明女子学院
0123-22-5141
北海少年院
0123-23-3147
月形学園
0126-53-2736
札幌少年鑑別所
011-784-7441
函館少年鑑別支所
0138-51-5652
旭川少年鑑別所
0166-31-5468
釧路少年鑑別所
0154-41-5808
在院者に対する食育指導の取
組の一つとして,平成29年から年
1回「食育講話」を行っています。
全国学校給食甲子園で優勝経験
のある置戸町食のアドバイザー
佐々木十美さんと足寄町学校給
食センター廣田裕美さんのお二人
を 講 師 に お 迎 え し , 食 事 の マ
ナー,毎日の食事と健康に関する
講話に加え,当日の夕食を調理・
提供いただいており,在院者にとっ
て,食事の大切さを改めて考える
有用な機会になっています。
帯広少年院
0155-24-5787
令和元年11月,月形更生保護
女性会が来園され,当園最後とな
る施設参観を実施しました。いつも
は在院者の日課の都合等から,あ
わただしい参観になるのですが,
ゆっくりと見学いただくことができ,毎
年来園されている会員も,このよう
にじっくりと施設を見たのは初めてと
おっしゃっていました。見学の後は,
当園職員と昼食会を開催しました。
令和2年1月,当院体育館で
成人式が行われました。3名の
新成人が,約100名の来賓及
び在院生の前で,それぞれ成人
になるにあたっての決意を述べ,
その責任の重さを自覚していまし
た。式では,保護者や関係者の
方々から送られたメッセージが
読み上げられ,新成人の中に
は,多くの人に支えられて今があ
ることを再確認し,涙する者もい
ました。たくさんの御支援,御来
場ありがとうございました。
今年度からビジョントレーニン
グを試行的に取り入れていま
す。目と脳の連携が良くないと,
勉強や運動に支障を来すことが
あるため,感覚認知・思考力・
表現力等の向上を目指して視
覚機能を鍛えます。目の運動の
ほか,けん玉・バランスボールを
使う運動など,様々なトレーニン
グを行っています。
令和2年1月6日に書
初めを行いました。最初
は筆の持ち方もおぼつか
ない状態でしたが,当所
職員からの指導を受け,
ずいぶん上達しました。
こうした季節の行事を通
じて,少年たちの心が豊
かになってくれたらと願っ
ています。
令和元年11月,市民
の皆様を対象として施設
見学を実施しました。16
名の市民の方々に参加
いただき,概要説明,性
格検査の体験,所内の
見学等を行いました。子
育て中のお母さまからも
とても大切な経験だった
との感想をいただきまし
た。
令和2年1月,札幌市立幌
東中学校生徒指導研修会
で,教職員の皆様を対象に
「問題行動を抱える(発達に
課題を抱える少年を含む)少
年への対応について」と題す
る講演を実施させていただき
ました。当所では,各種研修
会における講演活動も受け
付けておりますので,お気軽
にお声掛け願います。
恒例のアイスキャン
ドルの観賞会を実施し
ました。アイスキャンド
ルは,ここ2・3年の中
では一番の出来栄え
で,観賞会には2名の
在所者が参加し,自
分で作成したものがど
のような色合いになる
のかを確認しながら観
賞していました。