北海道の少年院と少年鑑別所のニュースレター らぽーと
2023.2
No.102
特 集
総合型少年院の機能について
〜北海道唯一の少年院として〜
改 正 少 年 法
〜矯正教育の充実化〜 北海少年院は令和元年九月に月形学園の機能が、また令和三年九月には帯広少年院の機能が移転され、道内の全ての少年院の機能が北海少年院に集約されたことから、男子少年院として全国最多の十三の教育課程(左図参照)を有し、小学生、日本人と異なる処遇上の配慮を要するもの、医療措置が必要なもの及び受刑在院者以外のものを対象として矯正教育及び社会復帰支援を実施することとなりました。そのため、それぞれの矯正教育課程の正しい理解に努め、それぞれの矯正教育課程の特徴を生かした矯正教育を実施しています。例えば、支援教育課程では、コオーディネーショントレーニング(運動発達に沿った単純な動きのトレーニング)やセカンドステップ(レッスンカードを用いたコミュニケーショントレーニング)を行うことによって、支援教育課程の在院者が苦手とする身体のバランス感覚を身に付けさせ、感情統制能力を養っています。社会適応課程では、将来の就職に直結する有益な資格として、大型特殊自動車運転免許証や介護職員初任者研修課程修了証の取得などを行っています。また、在院者一人ひとりの特性や多様なニーズに対応するため、法務教官のほか、法務技官(心理)、医師、福祉専門官及び社会福祉士など多様なノウハウを有する職員を配置し、相互に連携することにより処遇の充実化を図るとともに、きめ細やかな働き掛けを行うことにより、入院後に明らかになった在院者の課題等にも柔軟に対応しています。さらに、男子少年を処遇してきた北海少年院と女子少年を処遇してきた分院である紫明女子学院がそれぞれの得意分野を生かして、協働して在院者の処遇を実施することにより、効果的な矯正教育を展開しています。今後も総合型少年院として、様々な特性を持った在院者に適切な矯正教育及び社会復帰支援を実施していきますので、御支援よろしくお願いいたします。総合型少年院の機能について
〜北海道唯一の少年院として〜
特集1 、、
保護観察所との連携
地域社会との連携
これまで私たち少年院の法務教官は、出院後の仮退院者を
支援するには、退院者等からの相談の枠組みにより支援を
行ってきました。本年度からはこれに加え、在院中から特に支
援が必要な少年については、在院中に築いた寮の職員との信
頼関係を生かして、積極的に支援を行うことで、円滑に施設内
処遇から社会内処遇に移行させ、再犯防止を行うことを目的
としたバトンゾーン・モデルという取組を実施しています。在院
時の担任職員等が保護観察所で面接を行いますが、面接を
実施した仮退院者は皆一様に当時の担任職員に良い報告が
できるのをうれしく思っているようであり、出院後に担任職員
が会いに来ること自体が、仮退院者の生活に張りを持たせて
いるように感じています。今後も、保護観察所と連携して、切れ
目のない積極的な支援を充実させていきたいと考えています。
再犯防止のためには、少年院の矯正教育だけではなく、地
域社会における健全な生活設計が重要となります。出院後の
就労先や就学先が決まっている者と決まっていない者では、
再犯率に大きな差が出るという結果が出ています。そこで近
年、力を入れているのは就労支援や修学支援等の社会復帰
支援の取組です。出院後の進路を在院中に決めることができ
るように、在院中にハローワークを通じて採用面接を実施して
いただいたり、学校関係者に説明会を実施していただいたり
しています。また就労先への見学や、職場体験など千歳市内
の企業に御協力をいただき、少年の社会復帰が円滑に進む
よう、御支援をいただいています。
在院者の社会復帰のためには、少年院での矯正教育だけ
ではなく、地域社会と連携して、少年たちが社会の一員であ
ると感じることや出院後に自分が必要とされていると思うこと
が、出院後の居場所づくりや健全な社会生活にとても重要で
あると感じています。
〜バトンゾーン・モデル〜
〜居場所づくり〜
改正少年法
〜矯正教育の充実化〜
特集2
令和4年4月に民法が一部改正され、成年年齢が18歳に引き下げられ
ました。また、少年法も一部改正され、18歳及び19歳の者は「特定少
年」として位置づけがなされましたが、これを受けて、少年院の矯正教育
も様々な対応がなされましたので、特に主な4点を紹介します。第5種少年院の設置保護観察中の者に対する収容決定(少年法第六十六条第一項)がなされた場合に対応するため、少年院に第五種少年院が新設されることになりました。第五種少年院における教育目標は円滑に保護観察に復帰させることであり、保護観察中に少年院に送致され、出院後は、保護観察が再開されることを見据えた効果的な処遇を展開するため、これまで以上に保護観察所との連携を強化する必要があります。第五種少年院では比較的短い期間で社会復帰させていくことになりますので、社会に近い状態で教育できるよう配慮しています。保護観察復帰プログラム第五種少年院の在院者に対して、保護観察に復帰させるために、保護観察所と協働して実施するのが保護観察復帰プログラムです。同プログラムは、動機づけ面接における行動変容の理論を活用したワークブック教材RISE(左図参照)を用いた授業と特定少年、保護観察官、保護司、法務教官等で構成される二回のミーティングを組み合わせて実施されます。第五種少年院の運営については、保護観察官との合同の研修も実施し、保護関係機関との連携に努めています。 、成年社会参画指導は、「成年に達した者について、自らの責任に基づき自律的に社会生活を営むために必要な自覚が欠如し、又は必要な知識及び行動様式が身に付いていない者」を対象者として実施するもので、まさに「特定少年」のための特定生活指導となります。指導目標は「成年であることの自覚及び責任の喚起並びに社会参加に必要な知識の付与等」となっており、内容は大きく分けて法教育と社会人教育の二部構成となっています。道内大学の法律専門家を講師として招いたり、また、周辺プログラムとして金融教育等も組み合わせて実施しています。成年社会参画指導
I 法教育 II 社会人教育 III まとめ
1 大人になる1 7 家族について 11 非行・犯罪について2
2 非行・犯罪について1 8 結婚について 12 大人になる2
3 ルールについて 9 仕事について
4 契約について 10 友人について
5 契約トラブルについて
6 訴訟について
製品企画科特定少年を含む全ての在院者を対象に職業指導の類型や種目等が発展的に再編されました。その中で、従前から行っていた農園芸、木工、手工芸等の実習をベースに、新たに実社会における商品の流通やビジネス等の視点を踏まえ、製品の企画から展示・販売までの一連の流れを学ぶ製品企画科が立ち上げられました。当院ではアグリコース(旧農園芸科)、クラフトコース(旧木工科)が稼働し、昨年十一月には道の駅において当院で育てた野菜や陶芸作品の販売が行われました。少年たち自らがどのような広告にすれば人の目につくのかなど、考えながらチラシやポップを制作しました。 少年法は、どのような法律ですか。少年法は、少年の健全な育成を図るため、非行少年に対する処分やその手続などについて定める法律です。少年法による手続・処分の特色として、1少年事件については、検察官が処分を決めるのではなく、全ての事件が家庭裁判所に送られ、家庭裁判所が処分を決定すること。2家庭裁判所は、少年に対し、原則として、刑罰(懲役、罰金など)ではなく、保護処分(少年院送致など)を課すこと。などが挙げられます。選挙権年齢や民法の成年年齢は十八歳に引き下げられたのに、なぜ十八・十九歳の者に少年法を適用するのですか。十八・十九歳の者は、成長途上にあり、罪を犯した場合にも適切な教育や処遇による更生が期待できます。そのため、今回の改正では、十八・十九歳の者も「特定少年」として引き続き少年法の適用対象とし、全ての事件を家庭裁判所に送って、原則として、更生のための保護処分を行うという少年法の基本的な枠組みを維持しています。特定少年は、実名報道が解禁されるのですか。今回の改正により、一八歳以上の少年(特定少年)のとき犯した罪については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼうなどによって犯人が誰であるかが分かるような記事・写真等の報道(推知報道)は原則として禁止されるものの、逆送されて起訴された場合(非公開の書面審理で罰金等を科す略式手続の場合は除く。)には、その段階から、推知報道の禁止が解除されることとなりました。特定少年の「原則逆送対象事件」について教えてください。これまでの1十六歳以上の少年のとき犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件に加えて、2十八歳以上の少年のとき犯した死刑、無期又は短期(法定刑の下限)一年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件が追加されました。「保護処分」は「刑罰」とは違うのですか。保護処分である少年院送致や保護観察は、少年の更生を目的として家庭裁判所が課す特別な処分であり、刑事裁判所が科す懲役、罰金などの刑罰とは異なるものです。
改正少年法Q&A
「法務省人間科学系インターンシップ」は、
「法務省インターンシップ」とは異なりますので
応募の際はご注意願います。
法務省
矯正局
法務省公式
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札幌矯正管区
フロントページ
大学関係職員に対する施設見学会
法務省人間科学系インターンシップ
昨年11月28日(月)に、法務省専門職員(人間科学)採用試験の法務教官区分の受験者増
加に向けて、少年院の役割や法務教官・法務技官の仕事内容を大学関係職員に広く周知するこ
とを目的として、大学関係職員に対する施設見学会を行いました。4大学の参加があり、施設見学
以外にも、今年度から実施している成年社会参画指導の模擬授業や若手法務教官からのメッ
セージ発表、法務技官(心理)からのメッセージ発表などを行いました。
施設見学 模擬授業 若手職員のメッセージ
本日は貴重な体験をさせていただいて、ありがとうございました。毎年学内の説明会でい
ろいろな話を聞いていますが、実際に先生方の話を聞き「誰かの役に立つ」ことをキーワード
に挙げていた方が多く、学生の中でもそういう思いを持つ子もいるので、法務教官の仕事に
ついて話してみたいと思います。
アンケート結果
是非、本学科の在学生にも説明会で伺った内容を伝えたいです。実際に法務教官の皆様
のお話を聞いたり、教育と支援の実際を知ったりすることが重要だと思いますので、今後、見
学会や大学での講話などお願いできれば、大変ありがたいです。
札幌少年鑑別所
011-784-7441
函館少年鑑別支所
0138-51-5652
旭川少年鑑別所
0166-31-5468
紫明女子学院
0123-22-5141
北海少年院
0123-23-3147
令和4年9月末日、秋晴れの
中、当院ではガーデンパーティー
を実施しました。職員と在院者が
協力して会場設営や火起こし等を
行い、在院者が心を込めて育てた
ジャガイモなどを調理して食事会
が開かれました。ジャガイモは在
院者が作付け、収穫等を行ったも
のです。自ら育て、収穫し、調理し
た農作物をとても美味しそうに頬
張り、笑顔があふれました。この行
事を通して、食べ物への感謝の気
持ちを持ったり、他者と協力しなが
ら作業をやり遂げる達成感を味
わったりと在院者にとって良い経
験をする機会となりました。
本年10月、赤レンガ造りの外観
で観光名所ともなっている金森倉
庫にて開催された函館矯正展に
出展しました。メインは函館少年刑
務所の刑務作業製品の販売とな
りますが、当支所では性格検査体
験コーナーとして、PISE検査の無
料体験や、パネル展示などの広報
を行いました。コロナ禍にあって、こ
こ数年は開催を断念していたこと
や、初めての会場であったため、
不慣れな点もありましたが、遠く関
西から来た修学旅行生など、函館
市内外のたくさんの方に検査を体
験していただくことができました。
昨年10月に初めて駅伝大会を
実施しました。閉庁となった帯広
少年院で実施していた行事を取り
入れ、6チームに分け、5区間全1
3kmを自分が担当した区間を責
任もって走り、次の走者へタスキを
つなぎました。持久走を苦手とす
る在院者も、チームのために最後
まで全力で走り抜け、タスキを渡
すと倒れ込む者もいるほどでした。
チームのために全力を尽くすという
経験は今後の社会復帰に向け
て、大きな力になると感じていま
す。ふだん運動不足の職員も参
加し、在院者も職員も皆で走者を
応援しながらスポーツの秋を満喫
しました。
これまで、地域の方々から御相談
を受ける際は、当所にお越しいただ
く必要がありましたが、オンラインで
も実施できるようになりました。ス
マートフォンやタブレット、パソコン等
を用いて、WEBカメラで互いに顔を
見ながら話ができます。資料や教材
を画面上で共有しながら、指導的な
関わりをすることもできます。最近で
は、遠方の学校に通う生徒を対象
に、当所で作成した教材を用いて指
導を行いました。利用者の方から
は、気軽に相談できるとして好評を
いただいています。
オンラインでの面談や指導を御希
望の方は、お気軽に当所職員へお
伝えください。
当所では、毎年、近隣の消防署
に講師を依頼して消火訓練及び救
命・救急訓練を行っています。もち
ろん、万が一が無いように日々の業
務を行っていますが、天災はいつ起
こるかわかりませんので、いざという
時、適切、適正に使用できるよう、
機器の操作に習熟しておかなけれ
ばなりません。
本訓練を通じて、当所における使
用だけではなく、日常の生活場面に
おいてどのような場面に遭遇した時
にも間違いなくスムーズに動けるよ
う、消防署員の助言を受け、一つひ
とつの動きについて確認し疑問点を
解消させながら技術を磨き続けてい
ます。
釧路少年鑑別支所
0154-41-5808
在所者の健全育成のための支
援の一環として、市内の科学館の
学芸員である多胡孝一先生に宇
宙に関する講話を行っていただい
ています。この講話は14年前から
継続的に実施していただいている
ものであり、今般、この功績が評価
され、多胡先生に法務大臣感謝
状が贈られました。これは、私たち
職員にとっても非常にうれしい出
来事でした。
多胡先生、おめでとうございま
す。そして、ありがとうございます。
今後ともどうぞよろしくお願いしま
す。
法務省:http://www/moj.go.jp/
編集・発行
札幌矯正管区
第三部
発行責任者
第三部長 小松 洋輔
発行日
2023年2月
札幌市東区東苗穂
1-2-5-5
電話 011(783)5063
FAX 011(780)2207
北海道の少年院と少年鑑別所のニュースレター
RAPPORT(らぽーと) 102号
施 設 だ よ り

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