様式第十三(第4条関係)
新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表
1.確認の求めを行った年月日
令和4年12月19日
2.回答を行った年月日
令和5年1月13日
3.新事業活動に係る事業の概要
照会者は、国及び民間事業者(以下、まとめて「契約当事者」という。)との間で、照会者
が「オンライン契約システム 電子契約」という名称の電子契約サービス(以下「本サービス」
という。)を提供することにより、国との契約書の作成から契約内容確認、契約締結、契約書
の保管までを行う新規事業を検討している。
本サービスの電子署名には、サービス提供事業者である照会者の秘密鍵により、照会者の意
思を介在することなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化を行う事業者署名(立会
人型)を採用している。
なお、契約当事者の間で本サービスを利用して電子契約を締結する場合は、以下手順により
契約締結を行う。
【電子契約のフロー】
1 送信者は契約案件名、連絡先、検索項目を登録し、電子契約の案件作成を行う。
2 送信者は、1で作成した案件について、送信先の情報(氏名、送信方法(E-mail/
SMS)、送信先(メールアドレス/電話番号)、承認者(送信者の上長等)の設定、同
意方法の設定等)の登録を行う。
3 送信者は、契約書のファイルをアップロード(PDF形式)し、署名欄を設定の上、送信
を行う。送信者が、「署名完了」ボタン、続いて「契約を承認」ボタンをクリックするこ
とで、照会者の署名鍵により自動的に電子署名及びタイムスタンプが付与され、照会者の
意思が介在することなく送信者の指示に基づき暗号化され、受信者宛てにメール又はSM
Sが送信される。
4 受信者のメールアドレス又は電話番号宛てに、電子署名依頼のメール又はSMSが送信者
から配信される。受信者は配信内容に記載の専用URLをクリックすることで、オンライ
ンサービスの専用画面へ接続し、契約書の確認、電子署名の付与を行うことができる。受
信者は契約内容を確認の上、所定の位置に契約者氏名を登録し、「署名完了」ボタン、続
いて「契約を承認」ボタンをクリックすることで、照会者の署名鍵により自動的に電子署
名及びタイムスタンプが付与され、照会者の意思が介在することなく受信者の指示に基づ
き暗号化され、契約締結が完了する。
5 全ての署名者が契約書に電子署名、「契約を承認」ボタンをクリックした時点から24時
間以内に自動で10年間の長期署名が施され、送信先として登録されている相手先に、2
で設定された送信方法(E-mail/ SMS)により自動で契約締結のお知らせが通
知される。なお、送信者にも同じタイミングで、あらかじめ設定した送信方法(E-ma
il/ SMS)によりお知らせが通知される。
4.確認の求めの内容
(1)契約当事者双方が本サービスを用いて、クラウドサーバーにアップロードされたPDF形
式の契約書ファイルを確認、契約締結を行うことが可能である等の仕組みが、契約事務取扱
規則(昭和37年大蔵省令第52号)第28条第2項に規定する方法による「電磁的記録の
作成」に該当し、契約書、請書その他これに準ずる書面、検査調書、見積書等の作成に代わ
る電磁的記録の作成として、利用可能であることを確認したい(以下「本照会1」とい
う。)。
(2)照会者が提供する本サービスを用いた電子署名が、電子署名及び認証業務に関する法律
(平成12年法律第102号。以下「電子署名法」という。)第2条第1項に定める電子署
名に該当し、これを引用する契約事務取扱規則(昭和37年大蔵省令第52号)第28条第
3項に基づき、国の契約書にも利用が可能であることを確認したい(以下「本照会2」とい
う。)。
5.確認の求めに対する回答の内容
(1)本照会1についての回答
ア 結論
契約当事者のうち本サービスを操作する者(以下「利用者」という。)が本サービスを
用いて、クラウドサーバーにアップロードされたPDF形式の契約書ファイルを確認、契
約締結を行うことが可能である等の仕組みは、契約事務取扱規則第28条第2項に規定す
る方法による「電磁的記録の作成」に該当し、契約書等の作成に代わる電磁的記録の作成
として、利用可能であると考える。
イ 理由
契約事務取扱規則第28条第2項は、同条第1項各号に掲げる書類等の作成に代わる電
磁的記録の作成について、「各省各庁の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下
同じ。)と契約の相手方の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処
理組織を使用して当該書類等に記載すべき事項を記録する方法」によることを規定してい
る。
本サービスは、「各自のデバイス(PC、スマートフォンおよびタブレットのいずれ
か)からインターネットを介して、クラウドサーバー上のシステムにアクセスし契約締結
を行う仕組み」(照会書7ページ)となっており、また、PDF形式でアップロードされ
た契約書ファイルを確認し、契約締結を行うものである(照会書8ページ)ことから、同
項各号に掲げる書類等に記載すべき事項を記録する方法により電磁的記録を作成するもの
であれば、これに該当するものと認められる。
(2)本照会2についての回答
ア 結論
本サービスを用いた電子署名は、電子署名法第2条第1項に規定する電子署名に該当す
ると認められる。したがって、契約事務取扱規則第28条第3項に基づき、国の契約書が
電磁的記録で作成されている場合の記名押印に代わるものとして、利用が可能であると考
える。
イ 理由
電子署名法における「電子署名」とは、電子署名法第2条第1項に規定されているとお
り、
(ア)電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、
(イ)
当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること
(同項第1号)及び(ウ)当該情報について改変が行われていないかどうかを確認するこ
とができるものであること(同項第2号)のいずれにも該当するものである。
(ア)電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置の該当性
本サービスについては、クラウド上に「アップロードされたPDFファイルの内容に
契約当事者が同意することで、その都度弊社の意思が介在することなく、各当事者の意
思のみに基づき電子署名が付与され」る(照会書8ページ)との記載を前提とすれば、
「電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置」の要件を満たすこと
になるものと考える。
(イ)当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものである
ことの該当性
本サービスは、本サービスの利用者が、クラウド上のPDF形式の契約書ファイルの
内容を確認し、「署名完了」ボタン及び「契約を承認」ボタンをクリックすることをも
って、照会者の署名鍵により電子署名を行うものである。
この場合、利用者の当該操作をもって、本サービスは、利用者の指示に基づき、照会
者の署名鍵により暗号化等を行うサービスとのことであるため、電子署名法第2条第1
項第1号の「当該措置を行った者」が利用者であると評価し得るかどうかが問題となる。
この点、いわゆる事業者署名型による措置につき、令和2年7月17日に総務省、法
務省及び経済産業省において公表している「利用者の指示に基づきサービス提供事業者
自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」(以下「Q&A」
という。)では、下記の解釈が示されているところである。
電子署名法第2条第1項第1号の「当該措置を行った者」に該当するためには、必ずし
も物理的に当該措置を自ら行うことが必要となるわけではなく、例えば、物理的にはA
が当該措置を行った場合であっても、Bの意思のみに基づき、Aの意思が介在すること
なく当該措置が行われたものと認められる場合であれば、
「当該措置を行った者」はB
であると評価することができるものと考えられる。
このため、利用者が作成した電子文書について、サービス提供事業者自身の署名鍵によ
り暗号化を行うこと等によって当該文書の成立の真正性及びその後の非改変性を担保し
ようとするサービスであっても、技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が
介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであるこ
とが担保されていると認められる場合であれば、
「当該措置を行った者」はサービス提
供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。
そして、上記サービスにおいて、例えば、サービス提供事業者に対して電子文書の送信
を行った利用者やその日時等の情報を付随情報として確認することができるものになっ
ているなど、当該電子文書に付された当該情報を含めての全体を1つの措置と捉え直す
ことによって、電子文書について行われた当該措置が利用者の意思に基づいていること
が明らかになる場合には、これらを全体として1つの措置と捉え直すことにより、
「当
該措置を行った者(=当該利用者)の作成に係るものであることを示すためのものであ
ること」という要件(電子署名法第2条第1項第1号)を満たすことになるものと考え
られる。
本サービスは、上記のとおり、いわゆる事業者署名型であるから、上記Q&Aの適用
を前提に「当該措置を行った者」(同号)の該当性を判断するべきであると考えられる。
以上を踏まえて本件について以下のとおり検討する。
本サービスでは、本サービスの利用者が契約書ファイル(PDF形式)をアップロー
ドした上で、契約当事者の相手方となる利用者のメールアドレス等宛てに専用URLを
送信することとなっている一方で、その専用URLを受信した利用者においては、契約
内容等を確認する仕組みとなっているところ、この専用URLは、照会書によれば、
「受
信者のメールアドレス又はSMSにのみ送信され」る(照会書10ページ)とのことで
ある。
これを前提に、本サービスは、利用者が専用URL先で確認できる契約書ファイルの
「契約内容を確認のうえ、所定の位置に契約者氏名を入力し、
「署名完了」ボタン、続い
て「契約を承認」ボタンをクリックすることで、弊社の署名鍵により自動的に電子署名
およびタイムスタンプが付与され、弊社の意思が介在することなく受信者のみの指示に
基づき暗号化され、契約締結が完了する仕組み」
(照会書10ページ)とのことである。
また、照会書によれば、
「利用者のブラウザと「電子契約システム」間の通信はTLS
通信で、
「電子契約システム」と認証局(SEIKOソリューションズ)間の通信はSS
L通信で暗号化されているため、経路途中での署名指示の改ざんやなりすましはできず、
利用者の指図にもとづき、弊社や第三者の意思が介在する余地なく、機械的にサービス
提供事業者である弊社の秘密鍵により暗号化処理を実行される」
(照会書10ページ)と
のことである。そして、照会書によれば、照会者では悪意の従業員による利用者の意図
しない電子署名が行われないよう、
「電子契約システム」の本番環境にアクセスできる権
限を制限している(照会書10ページ)等の取組を行っているとのことである。
さらに、
「Adobe Acrobat等のPDFリーダーの「署名パネル」上で、電
子契約ファイル(PDF形式)に付与された電子署名データを確認することができ、サ
ービス提供事業者である弊社の電子証明書の内容と、作成者である利用者の氏名・メー
ルアドレス・署名日時が記録される仕組みとなってい」る(照会書10ページ)とのこ
とである。
以上を踏まえると、本サービスは、
「技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意
思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであ
ることが担保されている」ことが認められ、これを前提にすれば「当該措置を行った者」
は照会者ではなく、利用者であると評価し得るものと考えられる。したがって、
「当該措
置を行った者」は利用者であると評価することができ、電子署名法第2条第1項第1号
の「当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであ
ること」の要件を満たすことになるものと考えられる。
(ウ)当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものである
ことの該当性
照会書によれば、本サービスを用いた電子署名の手順(照会書12ページ)を前提に、「「電子署名の作成時点で算出したハッシュ値と受取り手が確認した時点で算出したハッ
シュ値が同じであることからデータの改変がなかったこと(逆も然り)
」が証明でき」る
(照会書12ページ)とのことであるから、「当該情報について改変が行われていない
かどうかを確認することができるものであること」(電子署名法第2条第1項第2号)
の要件を満たすことになるものと考えられる。
以上から、照会者の提供する本サービスを用いた電子署名は、電子署名法第2条第1
項における「電子署名」に該当すると考えられる。
よって、契約事務取扱規則第28条第3項に基づき、国の契約書が電磁的記録で作成
されている場合の記名押印に代わるものとして、利用が可能であると考える。
(注)
本回答は、確認を求める対象となる法令(条項)を所管する立場から、照会者から提
示された照会書の記載内容のみを前提として、現時点における見解を示したものであり、
もとより、捜査機関の判断や罰則の適用を含めた司法判断を拘束するものではない。