法制審議会第196回会議配布資料 民3-1
民事執行・民事保全・倒産及び家事
事件等に関する手続(IT化関係)
の見直しに関する中間試案
民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続
(IT化関係)の見直しに関する中間試案
目次
第1 民事執行........................................................... 1
第2 民事保全........................................................... 9
第3 破産手続.......................................................... 14
第4 民事再生、会社更生、特別清算及び外国倒産処理手続の承認援助の手続.. 20
第5 非訟事件.......................................................... 20
第6 民事調停.......................................................... 26
第7 労働審判.......................................................... 29
第8 人事訴訟.......................................................... 32
第9 家事事件.......................................................... 38
第10 子の返還申立事件の手続(ハーグ条約実施法)...................... 45
第11 その他.......................................................... 461(前注) 本試案では、特段の断りがない限り、民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年
法律第48号)による改正後の民事訴訟法を指して、
「民訴法」の用語を用いている。
第1 民事執行
1 裁判所に対する申立て等
(1) インターネットを用いてする申立て等の可否
民事執行の手続において裁判所(執行官を除く。以下1及び2において同
じ。)に対して行う申立てその他の申述(以下「申立て等」という。)につ
いては、民訴法第132条の10の規定を準用し、全ての裁判所に対し、一
般的に、インターネット(電子情報処理組織)を用いてすることができるも
のとする。
(注) 申立て等をインターネットを用いてする際の方法としては、システム上のフォーマ
ット入力の方式を検討すべきとの考え方がある。
(2) インターネットを用いてする申立て等の義務付け
ア 委任を受けた代理人等
民事執行の手続において、民訴法第132条の11の規定を準用し、民
事訴訟手続においてインターネットを用いて申立て等をしなければならな
い委任を受けた代理人等は、裁判所に対して行う申立て等をインターネッ
トを用いてしなければならないものとする。
イ 管理人等
【甲案】
強制管理の手続における管理人等の民事執行の手続において裁判所か
ら選任された者は、当該選任を受けた民事執行の手続において裁判所に
対して行う申立て等をインターネットを用いてしなければならないもの
とする。
【乙案】
強制管理の手続における管理人等の民事執行の手続において裁判所か
ら選任された者について、特段の規律を設けないものとする。
(後注) 本文の考え方のほか、民事執行の手続における申立て等については、インター
ネットを用いて申立て等をすることが困難であると認められる者を除き、
全ての者
が、
インターネットを用いてこれをしなければならないものとするとの考え方があ
る。22 提出された書面等及び記録媒体の電子化
(1) 提出された書面等及び記録媒体の電子化の対象事件等
(注)のいずれかの考え方を採用した上で、裁判所に提出された書面等(民
訴法第132条の10第1項に規定する書面等をいう。以下同じ。)及び記
録媒体(電磁的記録を記録した記録媒体をいう。以下同じ。)につき、下記
(2)の電子化のルールを適用し、裁判所書記官において提出された書面等及
び記録媒体を裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイル(以下単
に「ファイル」という。)に記録しなければならないものとする。
(注) 裁判所に提出された書面等及び記録媒体について、法律上、全ての事件につき下記
(2)の電子化のルールを適用するとの考え方
(A案)
と、
電子化を目指しつつも、
民事
執行の手続の特性を考慮し、
裁判所の判断で電子化することが可能であることを前提
とした上で、法律の定めとしては、一定の範囲で、下記(2)の電子化のルールを適用
するとの考え方(B案)がある。
A案の中には、全ての事件につき、下記(2)の電子化のルールをそのまま適用する
との考え方(A-1案)のほかに、申立て等以外の書面等及び記録媒体のルールであ
る下記(2)2の電子化をしない場合の要件につき「ファイルに記録することにつき困
難な事情があるとき」に代えて、民事執行の手続の特性を考慮し、より柔軟な運用を
可能とする要件を置いた上で、下記(2)の電子化のルールを適用するとの考え方があ
る(A-2案)。
B案の中には、1法律上、下記(2)の電子化のルールを適用する事件を一定の範囲
のものとする考え方(B-1案)、2一定の基準を定めて下記(2)の電子化のルール
を適用する
(電子化の意義を踏まえて一定の基準を定めて法律上電子化しなければな
らないものとする)考え方(B-2案)、3当事者を含む利害関係を有する者の申出
があった場合に下記(2)の電子化のルールを適用する(当事者を含む利害関係を有す
る者の申出があった場合に電子化しなければならないものとする)
考え方
(B-3案)
がある。
(2) 提出された書面等及び記録媒体の電子化のルール
民訴法第132条の12及び第132条の13と同様に、裁判所に提出さ
れた書面等及び記録媒体の電子化のルールとして、次のような規律を設ける
ものとする。
1 申立て等が書面等により行われたときは、裁判所書記官は、当該書面等
に記載された事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事
項をファイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限りで3ない。
2 裁判所書記官は、1の申立て等に係る書面等のほか、民事執行の手続に
おいて裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録され
ている事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事項をフ
ァイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限りでない。
3 裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録されてい
る事項のうち、次のものについては、1及び2の規律にかかわらず、ファ
イルに記録することを要しない。
i 第三者の閲覧等の制限の申立てがあった営業秘密(不正競争防止法第
2条第6項に規定する営業秘密をいう。以下同じ。)のうち特に必要が
あるもの
ii 秘匿決定の申立てがあった場合における秘匿事項の届出(民訴法第1
33条第2項の規定による届出をいう。以下同じ。)に係る事項
iii 当事者の閲覧等の制限の申立て又は当事者の閲覧等の制限の決定があ
った閲覧等の制限がされるべき事項のうち必要があるもの
(注) 民訴法第92条第9項及び第10項、第133条の2第5項及び第6項並びに第1
33条の3第2項と同様に、
インターネットを用いた提出によりファイルに記録され
た電子化された事件記録のうち、
1第三者の閲覧等の制限の申立てがあった営業秘密
のうち特に必要がある部分又は2当事者の閲覧等の制限の申立て若しくは当事者の
閲覧等の制限の決定があった閲覧等の制限がされるべき事項が記録された部分は、その内容を書面に出力し、又はこれを他の記録媒体に記録するとともに、当該部分を電
子化された事件記録から消去する措置その他の当該部分の安全管理のために必要か
つ適切なものとして最高裁判所規則で定める措置を講ずることができるものとする。
3 裁判書及び調書等の電子化
裁判官が作成する裁判書並びに裁判所書記官が作成する調書及び配当表等に
ついて、書面による作成に代えて、最高裁判所規則で定めるところにより、電
磁的記録により作成するものとする。
4 期日におけるウェブ会議及び電話会議の利用
(1) 口頭弁論の期日
口頭弁論の期日について、民訴法第87条の2第1項及び第3項の規定を
準用し、裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判
所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互
に認識しながら通話をすることができる方法(以下「ウェブ会議」という。)4を当事者に利用させることができるものとする。
(2) 審尋の期日
1 審尋の期日について、民訴法第87条の2第2項及び第3項の規定を準
用し、裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判
所規則で定めるところにより、ウェブ会議及び音声の送受信により同時に
通話をすることができる方法(以下「電話会議」という。)を当事者に利
用させることができるものとする。
2 参考人等の審尋について、民訴法第187条第3項及び第4項の規定を
準用し、裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところ
により、ウェブ会議により参考人又は当事者を審尋することができるもの
とするとともに、当事者双方に異議がないときは、電話会議により参考人
又は当事者を審尋することができるものとする。
(3) 売却決定期日及び配当期日
(前注) ここでは、売却決定期日及び配当期日があることを前提としているが、後記5の
とおり、売却決定期日及び配当期日を廃止するとの考え方もある。
【甲案】
1 裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところによ
り、ウェブ会議及び電話会議によって、売却決定期日及び配当期日にお
ける手続を行うことができるものとする。
2 1の期日に出頭しないでその手続に関与した者は、その期日に出頭し
たものとみなすものとする。
【乙案】
1 裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところによ
り、ウェブ会議によって、売却決定期日及び配当期日における手続を行
うことができるものとし、電話会議の利用は認めないものとする。
2 甲案2と同じ。
(注) ウェブ会議(又は電話会議)により手続を行うことを決定するに当たり、関係人の
意見を聴くことを要件とすべきであるとする考え方がある。
(4) 財産開示期日
ア 申立人のウェブ会議・電話会議による参加
【甲案】
1 裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところに5より、財産開示期日においては、ウェブ会議及び電話会議によって、
申立人を財産開示期日の手続に関与させることができるものとする。
2 1の期日に出頭しないでその手続に関与した申立人は、その期日に
出頭したものとみなすものとする。
【乙案】
1 裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところに
より、財産開示期日においては、ウェブ会議によって、申立人を財産
開示期日の手続に関与させることができるものとし、電話会議の利用
は認めないものとする。
2 甲案2と同じ。
(注) 申立人のウェブ会議(又は電話会議)による手続参加を認めるに当たり、関係人
(申立人及び債務者(開示義務者)の双方又は申立人のみ)の意見を聴くことを要
件とすべきであるとする考え方がある。
イ 債務者(開示義務者)のウェブ会議による陳述
財産開示期日においては、ウェブ会議を利用して、債務者(開示義務者)
が財産について陳述をすることができるものとすることとし、その具体的
な規律の内容を以下のとおりとする。
1 裁判所は、財産開示期日において、次に掲げる場合であって、相当と
認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、ウェブ会議によ
って、債務者から陳述を聴取することができる。
a 債務者の住所、年齢又は心身の状態その他の事情により、債務者が
執行裁判所に出頭することが困難であると認める場合
b 事案の性質、債務者の年齢又は心身の状態、債務者と申立人本人又
はその法定代理人との関係その他の事情により、債務者が執行裁判所
及び申立人が在席する場所において陳述するときは圧迫を受け精神の
平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合
c 申立人に異議がない場合
2 1の規律により債務者が陳述をした場合には、
財産開示期日に出頭し、
当該期日において陳述をしたものとみなす。
(注) 本文とは別に、本文イ1bの事由がある場合に、ウェブ会議の利用を認めること
を否定する考え方がある。
(後注) 入札期日や開札期日、競り売り期日といった民執規則上の期日についても、ウ
ェブ会議や電話会議による手続を認めるとの考え方がある。65 売却及び配当
(1) 売却決定期日を経ない売却
売却決定期日において売却の許可又は不許可の決定を行う仕組みとは別
に、売却の許可又は不許可に関する意見を陳述するための一定の期間を設定
することにより、売却決定期日を経ることなく売却をする仕組みを設けるこ
ととし、その具体的な内容を以下のとおりとする。
1 裁判所書記官は、売却を実施させる旨の処分と同時に、売却決定期日を
指定し、又は、売却の許可若しくは不許可に関する意見を陳述すべき期間
(以下「意見陳述期間」という。)及び売却の許可若しくは不許可の決定
をする日(以下「売却決定の日」という。)を指定する。
2 1において売却決定期日を指定した場合には、当該期日において売却の
許可又は不許可の決定をする。
3 1において意見陳述期間及び売却決定の日を指定した場合には、当該売
却決定の日に売却の許可又は不許可の決定をするが、当該決定に対する執
行抗告期間は、民執法第10条第2項の規定にかかわらず、当該売却決定
の日から起算する。
(注) 1で指定した意見陳述期間や売却決定の日については、現行の民執規則において公
告及び差押債権者等への通知をすべきものとされている売却決定期日の日時・場所等
(同規則第36条、第37条)と同様に、公告及び通知をすべきものとする。
(2) 配当期日を経ない配当
配当期日を経て配当を実施する仕組みとは別に、配当異議の申出をするた
めの一定の期間を設定することにより、配当期日を経ることなく配当を実施
する仕組みを設けることとし、その具体的な内容を以下のとおりとする。
1 裁判所は、配当期日の指定に代えて、配当異議の申出をすべき期間(以
下「異議申出期間」という。)を指定することができる。
2 民執法第85条第1項の規定による配当の順位・額等の決定及び配当表
の作成は、配当期日を指定した場合には、当該配当期日において行うが、
異議申出期間を指定した場合には、当該期間に先立ち、期日外において行
う。
3 1において異議申出期間を指定した場合には、当該指定に係る裁判書及
び2において作成した配当表を民執法第85条第1項に規定する債権者
及び債務者に送達又は送付しなければならない。
4 配当異議の申出は、配当期日を指定した場合には、当該配当期日におい7て、1において異議申出期間を指定した場合には、当該期間内に、これを
行わなければならない。
(後注) 本文(1)及び(2)に掲げた考え方とは別に、売却決定期日及び配当期日を指定する
仕組みを廃止し、
期日を経ることなく売却又は配当を行う仕組みのみとする考え方が
ある。
6 電子化された事件記録の閲覧等
電子化された事件記録についても請求の主体に係る民執法第17条の規律を
基本的に維持し、利害関係を有する者は、電子化された事件記録について、最
高裁判所規則で定めるところにより、閲覧、複写(ダウンロード)、事件記録
に記録されている事項の内容を証明した文書若しくは電磁的記録の交付若しく
は提供又は事件に関する事項を証明した文書若しくは電磁的記録の交付若しく
は提供(以下この6において「閲覧等」という。)の請求をすることができる
ものとする。
(注1) 電子化された事件記録の閲覧等の具体的な方法について、次のような規律を設ける
ものとする。
1 利害関係を有する者は、裁判所設置端末及び裁判所外端末を用いた閲覧等を請求す
ることができる。
2 当事者(申立債権者及び債務者)は、いつでも事件の係属中に裁判所外端末を用い
た閲覧又は複写をすることができる。
(注2) 一定の債権者(例えば、配当要求をした債権者)も、
(注1)2の当事者と同様に、
いつでも事件の係属中に裁判所外端末を用いた閲覧又は複写をすることができるもの
とするとの考え方がある。
7 送達等
(1) 電磁的記録の送達
民事執行の手続における電磁的記録の送達について、民訴法第109条か
ら第109条の4までの規定を準用するものとする。
(注) 本文の考え方を基礎とした上で、申立債権者や送達を受ける第三債務者の利益等に
配慮しつつ、
電子情報処理組織による送達の活用の在り方について検討すべきとの考
え方がある。
(2) 公示送達
民事執行の手続における公示送達について、民訴法第111条の規定を準8用するものとする。
(後注) 民事執行の手続における公告の方法を見直し、裁判所の掲示場に掲示し、又は裁
判所設置端末を使用して閲覧することができるようにすることに加えて、
公告事項又
はその要旨を裁判所のウェブサイトで公示する方法を導入するとの考え方がある。
8 債務名義の正本の提出・執行文の付与
(1) 債務名義の正本提出に関する規律の見直し
債務名義が裁判所において電磁的記録により作成されたものである場合
には、強制執行は、当該債務名義に係る電磁的記録自体に基づいて実施する
こととし、債務名義を証明する文書の提出は不要とするものとする。
(注) 本文に掲げるもののほか、民事執行の手続において裁判の正本を提出することとさ
れている場合において、当該裁判に係る裁判書が電磁的記録により作成されたとき
(強制執行を停止させる裁判が電磁的記録により作成された場合等)についても、本
文の規律と同様に、当該裁判を証明する文書の提出を不要とするものとする。
(2) 執行文に関する規律の見直し
ア 単純執行文
【甲案】
現行法上、強制執行の実施に当たり単純執行文の付与が必要となるケ
ースでも、債務名義が裁判所において電磁的記録により作成されたもの
である場合には、単純執行文の付与を不要とするものとする。
【乙案】
債務名義が裁判所において電磁的記録により作成されたものである場
合においても、現行法と同様に、単純執行文の付与を必要とするものと
する。
(注) 甲案をとる場合には、
債務名義が裁判所において書面により作成されたものであ
る場合にも、単純執行文の付与を不要とする考え方もある。
イ 特殊執行文
現行法上、強制執行の実施に当たり特殊執行文が必要となるケースにつ
いては、債務名義が裁判所において電磁的記録により作成されたものであ
る場合においても、現行法と同様に、特殊執行文の付与を必要とするもの
とする。99 執行官と民事執行の手続のIT化
執行官が執行機関となる場合における民事執行の手続について、執行裁判所
が執行機関となる場合におけるのと同様にIT化するものとする。
(注) いずれの民事執行の手続においても、執行官に対する申立て等については、執行裁判
所に対する申立て等に関する規律(前記1及び2)と同様とするものとする。
10 その他
(注1) システムを使った電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べの申出や、書
面の提出に代えて電磁的記録をファイルに記録する方法による陳述、ウェブ会議による
裁判所外の尋問など、ITを活用した証拠調べ手続について、民事訴訟手続と同様の規
律を設けるものとする。
(注2) 費用額確定処分の申立ての期限について、民事訴訟手続と同様の規律を設けるもの
とする。
(注3) 民執法第91条第1項に基づき配当留保供託がされた場合において、長期間にわた
り供託事由を解消するための手続がとられないままとなっている事案を解消するため
の方策(例えば、供託から一定期間が経過した際には裁判所から債権者に対して状況を
届け出るよう催告することとし、届出がないときは供託を終了して他の債権者に配当等
を実施する制度の導入等)について検討すべきとの考え方がある。
(注4) 民訴法の改正を踏まえて裁判官の権限のうち定型的な判断事項等を裁判所書記官の
権限とする見直しなど実務上必要な見直しがないのか検討すべきとの考え方がある。
第2 民事保全
1 裁判所に対する申立て等
(1) インターネットを用いてする申立て等の可否
民事保全の手続において裁判所に対して行う申立て等については、民訴法
第132条の10の規定を準用し、全ての裁判所に対し、一般的に、インタ
ーネット(電子情報処理組織)を用いてすることができるものとする。
(2) インターネットを用いてする申立て等の義務付け
民事保全の手続において、民訴法第132条の11の規定を準用し、民事
訴訟手続においてインターネットを用いて申立て等をしなければならない
委任を受けた代理人等は、裁判所に対して行う申立て等をインターネットを
用いてしなければならないものとする。
2 提出された書面等及び記録媒体の電子化10(1) 提出された書面等及び記録媒体の電子化の対象事件等
(注)のいずれかの考え方を採用した上で、裁判所に提出された書面等及び
記録媒体につき、
下記(2)の電子化のルールを適用し、
裁判所書記官において
提出された書面等及び記録媒体をファイルに記録しなければならないもの
とする。
(注) 裁判所に提出された書面等及び記録媒体について、法律上、全ての事件につき下記
(2)の電子化のルールを適用するとの考え方
(A案)
と、
電子化を目指しつつも、
民事
保全の手続の特性を考慮し、
裁判所の判断で電子化することが可能であることを前提
とした上で、法律の定めとしては、一定の範囲で、下記(2)の電子化のルールを適用
するとの考え方(B案)がある。
A案の中には、全ての事件につき、下記(2)の電子化のルールをそのまま適用する
との考え方(A-1案)のほかに、申立て等以外の書面等及び記録媒体のルールであ
る下記(2)2の電子化をしない場合の要件につき「ファイルに記録することにつき困
難な事情があるとき」に代えて、民事保全の手続の特性を考慮し、より柔軟な運用を
可能とする要件を置いた上で、下記(2)の電子化のルールを適用するとの考え方があ
る(A-2案)。
B案の中には、1法律上、下記(2)の電子化のルールを適用する事件を一定の範囲
のものとする考え方(B-1案)、2一定の基準を定めて下記(2)の電子化のルール
を適用する
(電子化の意義を踏まえて一定の基準を定めて法律上電子化しなければな
らないものとする)考え方(B-2案)、3当事者を含む利害関係を有する者の申出
があった場合に下記(2)の電子化のルールを適用する(当事者を含む利害関係を有す
る者の申出があった場合に電子化しなければならないものとする)
考え方
(B-3案)
がある。
(2) 提出された書面等及び記録媒体の電子化のルール
民訴法第132条の12及び第132条の13と同様に、裁判所に提出さ
れた書面等及び記録媒体の電子化のルールとして、次のような規律を設ける
ものとする。
1 申立て等が書面等により行われたときは、裁判所書記官は、当該書面等
に記載された事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事
項をファイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限りで
ない。
2 裁判所書記官は、1の申立て等に係る書面等のほか、民事保全の手続に
おいて裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録され
ている事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事項をフ11ァイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限りでない。
3 裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録されてい
る事項のうち、次のものについては、1及び2の規律にかかわらず、ファ
イルに記録することを要しない。
i 第三者の閲覧等の制限の申立てがあった営業秘密のうち特に必要があ
るもの
ii 秘匿決定の申立てがあった場合における秘匿事項の届出に係る事項
iii 当事者の閲覧等の制限の申立て又は当事者の閲覧等の制限の決定があ
った閲覧等の制限がされるべき事項のうち必要があるもの
(注) 民訴法第92条第9項及び第10項、第133条の2第5項及び第6項並びに第1
33条の3第2項と同様に、
インターネットを用いた提出によりファイルに記録され
た電子化された事件記録のうち、
1第三者の閲覧等の制限の申立てがあった営業秘密
のうち特に必要がある部分又は2当事者の閲覧等の制限の申立て若しくは当事者の
閲覧等の制限の決定があった閲覧等の制限がされるべき事項が記録された部分は、その内容を書面に出力し、又はこれを他の記録媒体に記録するとともに、当該部分を電
子化された事件記録から消去する措置その他の当該部分の安全管理のために必要か
つ適切なものとして最高裁判所規則で定める措置を講ずることができるものとする。
3 裁判書及び調書等の電子化
裁判官が作成する裁判書及び裁判所書記官が作成する調書等について、書面
による作成に代えて、最高裁判所規則で定めるところにより、電磁的記録によ
り作成するものとする。
4 期日におけるウェブ会議及び電話会議の利用
(1) 口頭弁論の期日
口頭弁論の期日について、民訴法第87条の2第1項及び第3項の規定を
準用し、裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判
所規則で定めるところにより、ウェブ会議を当事者に利用させることができ
るものとする。
(2) 審尋の期日
1 審尋の期日について、民訴法第87条の2第2項及び第3項の規定を準
用し、裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判
所規則で定めるところにより、ウェブ会議及び電話会議を当事者に利用さ
せることができるものとする。122 参考人等の審尋について、民訴法第187条第3項及び第4項の規定を
準用し、裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところ
により、ウェブ会議により参考人又は当事者を審尋することができるもの
とするとともに、当事者双方に異議がないときは、電話会議により参考人
又は当事者を審尋することができるものとする。
(3) 仮の地位を定める仮処分命令における債務者が立ち会うことができる審尋
の期日
【甲案】
裁判所は、相当と認めるときは、債務者の意見を聴いて、最高裁判所規
則で定めるところにより、ウェブ会議によって、民保法第23条第4項所
定の仮の地位を定める仮処分命令における債務者が立ち会うことができる
審尋の期日における手続を行うことができるものとし、電話会議の利用は
認めないものとする。
【乙案】
甲案に記載している特段の規律は設けないものとする。
(4) 保全異議、保全取消し及び保全抗告の審尋期日
【甲案】
裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規
則で定めるところにより、ウェブ会議によって、保全異議、保全取消し及
び保全抗告の審尋期日における手続を行うことができるものとし、電話会
議の利用は認めないものとする。
【乙案】
甲案に記載している特段の規律は設けないものとする。
5 電子化された事件記録の閲覧等
電子化された事件記録についても請求の主体及び債権者以外の者の請求の時
期に係る民保法第5条の規律を基本的に維持し、次のような規律を設けるもの
とする。
利害関係を有する者は、電子化された事件記録について、最高裁判所規則で
定めるところにより、閲覧、複写(ダウンロード)、事件記録に記録されてい
る事項の内容を証明した文書若しくは電磁的記録の交付若しくは提供又は事件
に関する事項を証明した文書若しくは電磁的記録の交付若しくは提供(以下こ
の5において「閲覧等」という。)の請求をすることができる。ただし、債権13者以外の者にあっては、保全命令の申立てに関し口頭弁論若しくは債務者を呼
び出す審尋の期日の指定があり、又は債務者に対する保全命令の送達があるま
での間は、この限りでない。
(注) 電子化された事件記録の閲覧等の具体的な方法について、次のような規律を設けるも
のとする。
1 利害関係を有する者は、裁判所設置端末及び裁判所外端末を用いた閲覧等を請求す
ることができる。
2 当事者(申立債権者及び債務者)は、いつでも事件の係属中に裁判所外端末を用い
た閲覧又は複写をすることができる。
6 送達
(1) 電磁的記録の送達
民事保全の手続における電磁的記録の送達について、民訴法第109条か
ら第109条の4までの規定を準用するものとする。
(2) 公示送達
民事保全の手続における公示送達について、民訴法第111条の規定を準
用するものとする。
7 その他
(注1) システムを使った電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べの申出や、書
面の提出に代えて電磁的記録をファイルに記録する方法による陳述、ウェブ会議による
裁判所外の尋問など、ITを活用した証拠調べ手続について、民事訴訟手続と同様の規
律を設けるものとする。
(注2) 費用額確定処分の申立ての期限について、民事訴訟手続と同様の規律を設けるもの
とする。
(注3) 保全執行に関する手続については民事執行の手続と同様にIT化するものとする。
(注4) 本案の訴えの提起又はその係属を証する書面(民保法第37条第1項)については、
保全命令を発した裁判所において本案の訴えの提起又はその係属を裁判所のシステム
を通じて確認することとして、起訴命令を発せられた債権者による提出を不要とするも
のとする。
(注5) 和解を記載した調書は、当事者に送達しなければならないものとする(現行におい
て実費精算する取扱いがなされている郵便費用を、申立ての手数料に組み込み一本化す
ることと併せて実現するものとする。)。
(注6) 民訴法の改正を踏まえて裁判官の権限のうち定型的な判断事項等を裁判所書記官の14権限とする見直しなど実務上必要な見直しがないのか検討すべきとの考え方がある。
第3 破産手続
1 裁判所に対する申立て等
(1) インターネットを用いてする申立て等の可否
破産手続等(破産法第2条第1項に規定する破産手続及び破産法第12章
に規定する免責・復権に係る手続をいう。以下同じ。)において裁判所に対
して行う申立て等については、民訴法第132条の10の規定を準用し、全
ての裁判所に対し、一般的に、インターネット(電子情報処理組織)を用い
てすることができるものとする。
(注) 申立て等をインターネットを用いてする際の方法としては、システム上のフォーマ
ット入力の方式を検討すべきとの考え方がある。
(2) インターネットを用いてする申立て等の義務付け
ア 委任を受けた代理人等
破産手続等において、民訴法第132条の11の規定を準用し、民事訴
訟手続においてインターネットを用いて申立て等をしなければならない委
任を受けた代理人等は、裁判所に対して行う申立て等をインターネットを
用いてしなければならないものとする。
イ 破産管財人等
破産管財人等(破産管財人及び保全管理人をいう。以下同じ。)は、当
該選任を受けた破産手続等において裁判所に対して行う申立て等をインタ
ーネットを用いてしなければならないものとする。
(後注) 本文の考え方のほか、債権届出については、破産手続において自認債権制度(民
事再生法第101条第3項参照)
を設けるなど破産債権者による債権届出がなくとも
破産手続において破産債権があるものとして扱うことができる制度、
債権届出を容易
にする制度及び債権届出をサポートする制度を創設した上で、
インターネットを用い
て申立て等をすることが困難であると認められる者を除き、全ての者が、インターネ
ットを用いてこれをしなければならないものとするとの考え方がある。
(3) 破産管財人と債権届出
【甲案】
破産債権者が多数に上るケースにおいて、破産管財人が、裁判所の決定15を得て、次のような債権届出に関する事務を行うことができる規律を設け
るものとする。
1 破産債権者は、破産管財人に対して、債権届出をすることができる。
2 破産管財人は、裁判所に対して、1の規律により受けた債権届出を届
け出る。
【乙案】
破産管財人が破産債権者から債権届出書を受け取り、これを裁判所に提
出することについては、今後の実務上の解釈及び運用に委ねることとし、
特段の規律を設けないものとする。
2 提出された書面等及び記録媒体の電子化
(1) 提出された書面等及び記録媒体の電子化の対象事件等
(注)のいずれかの考え方を採用した上で、裁判所に提出された書面等及び
記録媒体につき、
下記(2)の電子化のルールを適用し、
裁判所書記官において
提出された書面等及び記録媒体をファイルに記録しなければならないもの
とする。
(注) 裁判所に提出された書面等及び記録媒体について、法律上、全ての事件につき下記
(2)の電子化のルールを適用するとの考え方
(A案)
と、
電子化を目指しつつも、
破産
手続等の特性を考慮し、
裁判所の判断で電子化することが可能であることを前提とし
た上で、法律の定めとしては、一定の範囲で、下記(2)の電子化のルールを適用する
との考え方(B案)がある。
A案の中には、全ての事件につき、下記(2)の電子化のルールをそのまま適用する
との考え方(A-1案)のほかに、申立て等以外の書面等及び記録媒体のルールであ
る下記(2)ア2の電子化をしない場合の要件につき「ファイルに記録することにつき
困難な事情があるとき」に代えて、破産手続等の特性を考慮し、より柔軟な運用を可
能とする要件を置いた上で、下記(2)の電子化のルールを適用するとの考え方がある
(A-2案)。
B案の中には、1法律上、下記(2)の電子化のルールを適用する事件を一定の範囲
のものとする考え方(B-1案)、2一定の基準を定めて下記(2)の電子化のルール
を適用する
(電子化の意義を踏まえて一定の基準を定めて法律上電子化しなければな
らないものとする)考え方(B-2案)、3当事者を含む利害関係人の申出があった
場合に下記(2)の電子化のルールを適用する(当事者を含む利害関係人の申出があっ
た場合に電子化しなければならないものとする)考え方(B-3案)がある。
(2) 提出された書面等及び記録媒体の電子化のルール16ア 民事訴訟と同様のルール
民訴法第132条の12及び第132条の13と同様に、裁判所に提出
された書面等及び記録媒体の電子化のルールとして、次のような規律を設
けるものとする。
1 申立て等が書面等により行われたときは、裁判所書記官は、当該書面
等に記載された事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当
該事項をファイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この
限りでない。
2 裁判所書記官は、1の申立て等に係る書面等のほか、破産手続等にお
いて裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録され
ている事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事項を
ファイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限りでな
い。
3 裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録されて
いる事項のうち、次のものについては、1及び2の規律にかかわらず、
ファイルに記録することを要しない。
i 第三者の閲覧等の制限の申立てがあった営業秘密のうち特に必要が
あるもの
ii 秘匿決定の申立てがあった場合における秘匿事項の届出に係る事項
iii 当事者の閲覧等の制限の申立て又は当事者の閲覧等の制限の決定が
あった閲覧等の制限がされるべき事項のうち必要があるもの
(注) 民訴法第92条第9項及び第10項、
第133条の2第5項及び第6項並びに第
133条の3第2項と同様に、
インターネットを用いた提出によりファイルに記録
された電子化された事件記録のうち、
1第三者の閲覧等の制限の申立てがあった営
業秘密のうち特に必要がある部分又は2当事者の閲覧等の制限の申立て若しくは
当事者の閲覧等の制限の決定があった閲覧等の制限がされるべき事項が記録され
た部分は、
その内容を書面に出力し、
又はこれを他の記録媒体に記録するとともに、
当該部分を電子化された事件記録から消去する措置その他の当該部分の安全管理
のために必要かつ適切なものとして最高裁判所規則で定める措置を講ずることが
できるものとする。
イ 破産法特有のルール
【甲案】
書面等又は記録媒体の提出とともに、破産法第12条第1項が規定す
る支障部分の閲覧等の制限の申立てがされた場合において、当該支障部17分が記載され、又は記録された部分のうち特に必要があるものについて
は、ア1及び2の規律にかかわらず、ファイルに記録することを要しな
いものとする。
【乙案】
甲案に記載している特段の規律は設けないものとする。
(注) 甲案を採用する場合には、
インターネットを用いた提出によりファイルに記録さ
れた電子化された事件記録のうち、
本文の甲案に掲げる支障部分についても、
裁判
所が特に必要があると認めるときは、
その内容を書面に出力し、
又はこれを他の記
録媒体に記録するとともに、
当該部分を電子化された事件記録から消去する措置そ
の他の当該部分の安全管理のために必要かつ適切なものとして最高裁判所規則で
定める措置を講ずることができるものとする。
3 裁判書及び調書等の電子化
裁判官が作成する裁判書並びに裁判所書記官が作成する調書及び破産債権者
表等について、書面による作成に代えて、最高裁判所規則で定めるところによ
り、電磁的記録により作成するものとする。
4 期日におけるウェブ会議及び電話会議の利用
(1) 口頭弁論の期日
口頭弁論の期日について、民訴法第87条の2第1項及び第3項の規定を
準用し、裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判
所規則で定めるところにより、ウェブ会議を当事者に利用させることができ
るものとする。
(2) 審尋の期日
1 審尋の期日について、民訴法第87条の2第2項及び第3項の規定を準
用し、裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判
所規則で定めるところにより、ウェブ会議及び電話会議を当事者に利用さ
せることができるものとする。
2 参考人等の審尋について、民訴法第187条第3項及び第4項の規定を
準用し、裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところ
により、ウェブ会議により参考人又は当事者を審尋することができるもの
とするとともに、当事者双方に異議がないときは、電話会議により参考人
又は当事者を審尋することができるものとする。18(3) 債権調査期日
1 裁判所は、
相当と認めるときは、
最高裁判所規則で定めるところにより、
ウェブ会議によって、破産管財人、破産者又は届出をした破産債権者を債
権調査期日の手続に関与させることができるものとする。
2 1の期日に出頭しないでウェブ会議により手続に関与した者は、その期
日に出頭したものとみなすものとする。
(注) ウェブ会議を利用することを決定する際に、一定の者(例えば、破産者及び破産管
財人)の意見を聴かなければならないものとするとの規律は設けないものとする。
(4) 債権者集会の期日
1 裁判所は、
相当と認めるときは、
最高裁判所規則で定めるところにより、
ウェブ会議によって、破産管財人、破産者又は届出をした破産債権者を債
権者集会の期日の手続に関与させることができるものとする。
2 1の期日に出頭しないでウェブ会議により手続に関与した者は、その期
日に出頭したものとみなすものとする。
(注) ウェブ会議を利用することを決定する際に、一定の者(例えば、破産者、破産管財
人及び破産債権者)
の意見を聴かなければならないものとするとの規律は設けないも
のとする。
5 電子化された事件記録の閲覧等
電子化された事件記録についても請求の主体に係る破産法第11条の規律を
基本的に維持し、次のような規律を設けるものとする。
1 利害関係人は、電子化された事件記録について、最高裁判所規則で定める
ところにより、閲覧、複写(ダウンロード)、事件記録に記録されている事
項の内容を証明した文書若しくは電磁的記録の交付若しくは提供又は事件
に関する事項を証明した文書若しくは電磁的記録の交付若しくは提供(以下
この5において「閲覧等」という。)の請求をすることができる。
2 破産法第11条第4項各号に掲げる者は、当該各号に定める命令、保全処
分又は裁判のいずれかがあるまでの間は、閲覧等の請求をすることができな
い。
ただし、
当該者が破産手続開始の申立人である場合は、
この限りでない。
(注1) 電子化された事件記録の閲覧等の具体的な方法について、次のような規律を設ける
ものとする。
1 利害関係人は、裁判所設置端末及び裁判所外端末を用いた閲覧等を請求することが
できる。
2 申立人、破産者(債務者)及び破産管財人等は、いつでも事件の係属中に裁判所外19端末を用いた閲覧又は複写をすることができる。
(注2) 一定の債権者(例えば、債権届出をした破産債権者)も、(注1)2の申立人等と
同様に、いつでも事件の係属中に裁判所外端末を用いた閲覧又は複写をすることができ
るものとするとの考え方がある。
(注3) (注1)の1及び(注2)の考え方とは別に、裁判所外端末を用いて閲覧等をする
ことができるのは申立人、破産者(債務者)及び破産管財人等に限るものとすべきとの
考え方がある。
6 送達
(前注) 破産手続等では通知がされることがあるが、ここでは、送達は、通知の方法の一つ
であり、送達がされれば、通知がされたものと評価されることを前提としている。
(1) 電磁的記録の送達
破産手続等における電磁的記録の送達について、民訴法第109条から第
109条の4までの規定を準用するものとする。
(2) 公示送達
破産手続等における公示送達について、民訴法第111条の規定を準用す
るものとする。
7 公告
【甲案】
破産手続等における公告において、官報への掲載に加えて、裁判所のウェ
ブサイトに掲載する方法をとらなければならないものとする。
【乙案】
破産手続等における公告において、(官報への掲載に加えて、)裁判所の
ウェブサイトに掲載する方法をとらなければならないものとはしない(甲案
のような特段の規律は設けない)ものとする。
(注1) 破産手続等における公告は、裁判所のウェブサイトに掲載する方法によりするもの
とし、官報への掲載を廃止すべきとの考え方がある。
(注2) 個人破産者については、公告の在り方を見直し、官報への掲載を廃止するなど裁判
所外において破産の事実を公示しないこと(例えば、裁判所の掲示場への掲示や裁判所
設置端末での閲覧のみとすること)などを検討すべきとの考え方があるが、他方で、破
産手続等における公告の効果や意義を踏まえて、裁判所外において公示しないこととす
るなどの見直しに慎重な考え方もある。208 その他
(注1) システムを使った電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べの申出や、書
面の提出に代えて電磁的記録をファイルに記録する方法による陳述、ウェブ会議による
裁判所外の尋問など、ITを活用した証拠調べ手続について、民事訴訟手続と同様の規
律を設けるものとする。
(注2) 費用額確定処分の申立ての期限について、民事訴訟手続と同様の規律を設けるもの
とする。
(注3) 民訴法の改正を踏まえて裁判官の権限のうち定型的な判断事項等を裁判所書記官の
権限とする見直しなど実務上必要な見直しがないのか検討すべきとの考え方がある。
第4 民事再生、会社更生、特別清算及び外国倒産処理手続の承認援助の手続
再生手続(民事再生法)、更生手続(会社更生法)、特別清算の手続(会社法)
及び承認援助手続(外国倒産処理手続の承認援助に関する法律)について、第3
の破産手続等の各項目と同様の項目につき、これと同様にIT化するものとす
る。
第5 非訟事件
1 裁判所に対する申立て等
(1) インターネットを用いてする申立て等の可否
非訟事件の手続において裁判所に対して行う申立て等については、民訴法
第132条の10の規定を準用し、全ての裁判所に対し、一般的に、インタ
ーネット(電子情報処理組織)を用いてすることができるものとする。
(2) インターネットを用いてする申立て等の義務付け
ア 委任を受けた手続代理人等
非訟事件の手続において、民訴法第132条の11の規定を準用し、民
事訴訟手続においてインターネットを用いて申立て等をしなければならな
い委任を受けた手続代理人等は、裁判所に対して行う申立て等をインター
ネットを用いてしなければならないものとする。
イ 非訟事件の手続において裁判所から選任された者
【甲案】
非訟事件の手続において裁判所から選任された者は、その選任された
者として関与する非訟事件の手続においては、裁判所に対して行う申立21て等をインターネットを用いてしなければならないものとする。
【乙案】
非訟事件の手続において裁判所から選任された者について、特段の規
律を設けないものとする。
2 提出された書面等及び記録媒体の電子化
(1) 提出された書面等及び記録媒体の電子化の対象事件等
(注)のいずれかの考え方を採用した上で、裁判所に提出された書面等及び
記録媒体につき、
下記(2)の電子化のルールを適用し、
裁判所書記官において
提出された書面等及び記録媒体をファイルに記録しなければならないもの
とする。
(注) 裁判所に提出された書面等及び記録媒体について、法律上、全ての事件につき下記
(2)の電子化のルールを適用するとの考え方
(A案)
と、
電子化を目指しつつも、
非訟
事件の特性を考慮し、
裁判所の判断で電子化することが可能であることを前提とした
上で、法律の定めとしては、一定の範囲で、下記(2)の電子化のルールを適用すると
の考え方(B案)がある。
A案の中には、全ての事件につき、下記(2)の電子化のルールをそのまま適用する
との考え方(A-1案)のほかに、申立て等以外の書面等及び記録媒体のルールであ
る下記(2)ア2の電子化をしない場合の要件につき「ファイルに記録することにつき
困難な事情があるとき」に代えて、非訟事件の特性を考慮し、より柔軟な運用を可能
とする要件を置いた上で、
下記(2)の電子化のルールを適用するとの考え方がある(A-2案)。
B案の中には、1法律上、下記(2)の電子化のルールを適用する事件を一定の範囲
のものとする考え方(B-1案)、2一定の基準を定めて下記(2)の電子化のルール
を適用する
(電子化の意義を踏まえて一定の基準を定めて法律上電子化しなければな
らないものとする)考え方(B-2案)、3当事者又は利害関係を疎明した第三者の
申出があった場合に下記(2)の電子化のルールを適用する(当事者又は利害関係を疎
明した第三者の申出があった場合に電子化しなければならないものとする)考え方
(B-3案)がある。
(2) 提出された書面等及び記録媒体の電子化のルール
ア 民事訴訟と同様のルール
民訴法第132条の12及び第132条の13と同様に、裁判所に提出
された書面等及び記録媒体の電子化のルールとして、次のような規律を設
けるものとする。221 申立て等が書面等により行われたときは、裁判所書記官は、当該書面
等に記載された事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当
該事項をファイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この
限りでない。
2 裁判所書記官は、1の申立て等に係る書面等のほか、非訟事件の手続
において裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録
されている事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事
項をファイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限り
でない。
3 裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録されて
いる事項のうち、秘匿決定の申立てがあった場合における秘匿事項の届
出に係る事項については、1及び2の規律にかかわらず、ファイルに記
録することを要しない。
イ 非訟法特有のルール
【甲案】
非訟事件の手続において裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記
載され、又は記録されている事項のうち、他の者が知ることにより当事
者又は第三者に著しい損害を与えるおそれがあり、かつ、裁判所が特に
必要があると認めるものについては、ファイルに記録することを要しな
いものとする。
【乙案】
甲案に記載している特段の規律は設けないものとする。
(注) 甲案を採用する場合には、
インターネットを用いた提出によりファイルに記録さ
れた電子化された事件記録のうち、
他の者が知ることにより当事者又は第三者に著
しい損害を与えるおそれがあり、
かつ、
裁判所が特に必要があると認めるものにつ
いては、その内容を書面に出力し、又はこれを他の記録媒体に記録するとともに、
当該部分を電子化された事件記録から消去する措置その他の当該部分の安全管理
のために必要かつ適切なものとして最高裁判所規則で定める措置を講ずることが
できるものとする。
3 裁判書及び調書等の電子化
裁判官が作成する裁判書及び裁判所書記官が作成する調書等について、書面
による作成に代えて、最高裁判所規則で定めるところにより、電磁的記録によ
り作成するものとする。234 期日におけるウェブ会議又は電話会議の利用
(1) 当事者の期日参加
(いわゆる遠隔地要件を削除し、)裁判所は、相当と認めるときは、当事
者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、ウェブ会議又は
電話会議によって、
非訟事件の手続の期日における手続(証拠調べを除く。)を行うことができるものとする。
(2) 専門委員の期日における意見聴取
(いわゆる遠隔地要件を削除し、)裁判所は、相当と認めるときは、当事
者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、ウェブ会議又は
電話会議によって、専門委員に非訟法第33条第1項の意見を述べさせるこ
とができるものとする。
(注) 期日において意見等を述べることができる専門家等につき、専門委員と同様に、ウ
ェブ会議又は電話会議によって意見を述べることができるものとする。
5 和解調書の送達又は送付
【甲案】
和解を記載した調書は、当事者に送達しなければならないものとする。
【乙案】
和解を記載した調書は、当事者に送達又は送付しなければならないものと
する。
(注) 甲案、乙案のいずれについても、現行において実費精算する取扱いがなされている郵
便費用を、申立ての手数料に組み込み一本化することと併せて実現することを提案する
ものである。
6 電子化された事件記録の閲覧等
(1) 原則
電子化された事件記録についても請求の主体及び裁判所の許可に係る非訟
法第32条第1項の規律を基本的に維持し、当事者又は利害関係を疎明した
第三者は、裁判所の許可を得て、電子化された事件記録について、最高裁判
所規則で定めるところにより、閲覧、複写(ダウンロード)、事件記録に記
録されている事項の内容を証明した文書若しくは電磁的記録の交付若しくは
提供又は事件に関する事項を証明した文書若しくは電磁的記録の交付若しく
は提供(以下この6において「閲覧等」という。)の請求をすることができ24るものとする。
(注1) 電子化された事件記録の閲覧等の具体的な方法について、次のような規律を設け
るものとする。
1 当事者又は利害関係を疎明した第三者は、
裁判所設置端末及び裁判所外端末を用
いた閲覧等の請求をすることができる。
2 当事者は、
いつでも事件の係属中に裁判所外端末を用いた閲覧又は複写をするこ
とができる。
(注2) 当事者がいつでも事件の係属中に裁判所外端末を用いた閲覧又は複写をすること
ができる
((注1)2)
ようにするための閲覧又は複写の許可の在り方として、
例えば、
同一の当事者が一度閲覧又は複写の許可を得た部分を再度閲覧又は複写する場合に
は別途の許可を不要とするとの考え方や、
閲覧又は複写を許可する部分の特定に関し
一定の場合には今後提出されるものも含めた範囲の指定を可能とする
(事前の許可を
可能とする)との考え方がある。
(注3) 裁判所の許可を得ることなく記録の閲覧等を認めている事件類型(借地非訟事件
など)や資料については、これが電子化された場合には、民事訴訟と同様の方法によ
る閲覧等を認めるものとする。
(2) 自己の提出した書面等及び裁判書等
1 当事者は、電子化された事件記録中当該当事者が提出したものに係る事
項については、裁判所の許可を得ないで、裁判所書記官に対し、閲覧等の
請求をすることができるものとする。
2 当事者は、電子裁判書については、裁判所の許可を得ないで、裁判所書
記官に対し、閲覧等の請求をすることができるものとする。裁判を受ける
者が当該裁判があった後に請求する場合も、同様とするものとする。
3 当事者は、事件に関する事項を証明した文書又は電磁的記録について
は、裁判所の許可を得ないで、裁判所書記官に対し、その交付又は提供の
請求をすることができるものとする。裁判を受ける者が当該裁判があった
後に請求する場合も、同様とするものとする。
(注) 当事者は、電子化されていない事件記録中当該当事者が提出したものに係る事項に
ついては、裁判所の許可を得ないで、裁判所書記官に対し、閲覧等の請求をすること
ができるものとする。
7 送達等
(1) 電磁的記録の送達
非訟事件の手続における電磁的記録の送達について、民訴法第109条か25ら第109条の4までの規定を準用するものとする。
(2) 公示送達
非訟事件の手続における公示送達について、民訴法第111条の規定を準
用するものとする。
8 公示催告事件における公告
(1) 裁判所設置端末の利用
公示催告事件についての公告において、現行法で認められている裁判所の
掲示場への掲示に代えて、裁判所に設置された端末で閲覧することができる
ようにする措置をとることができるものとする。
(2) 裁判所のウェブサイト掲載
【甲案】
公示催告事件についての公告において、裁判所の掲示場又は裁判所設置
端末等への掲示、及び官報への掲載に加えて、裁判所のウェブサイトに掲
載する方法をとらなければならないものとする。
【乙案】
公示催告事件についての公告については、裁判所の掲示場又は裁判所設
置端末等への掲示、及び官報への掲載によるものとし、裁判所のウェブサ
イトに掲載する方法をとならなければならないとの規律は設けないものと
する。
9 その他
(注1) システムを使った電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べの申出や、書
面の提出に代えて電磁的記録をファイルに記録する方法による陳述、ウェブ会議による
裁判所外の尋問など、ITを活用した証拠調べ手続について、民事訴訟手続と同様の規
律を設けるものとする。
(注2) 費用額確定の申立ての期限や、申立て手数料の納付がない場合の納付命令の裁判所
書記官の権限について民事訴訟手続と同様の規律を設けるものとするほか、申立て手数
料を納付しないことを理由とする申立書却下に対して申立て手数料を納付しないまま
した即時抗告は原裁判所において却下しなければならないとの規律を設けるものとす
る。
(注3) 民訴法の改正を踏まえて裁判官の権限のうち定型的な判断事項を裁判所書記官の権
限とする見直しなど実務上必要な見直しがないのか検討すべきとの考え方がある。26第6 民事調停
1 裁判所に対する申立て等
(1) インターネットを用いてする申立て等の可否
民事調停の手続において裁判所に対して行う申立て等については、(非訟
法を準用することにより)民訴法第132条の10の規定を準用し、全ての
裁判所に対し、一般的に、インターネット(電子情報処理組織)を用いてす
ることができるものとする。
(2) インターネットを用いてする申立て等の義務付け
民事調停の手続において、(非訟法を準用することにより)民訴法第13
2条の11の規定を準用し、民事訴訟手続においてインターネットを用いて
申立て等をしなければならない委任を受けた代理人等は、裁判所に対して行
う申立て等をインターネットを用いてしなければならないものとする。
2 提出された書面等及び記録媒体の電子化
(1) 提出された書面等及び記録媒体の電子化の対象事件等
裁判所に提出された書面等及び記録媒体につき、下記(2)の電子化のルー
ルを適用し、裁判所書記官において提出された書面等及び記録媒体をファイ
ルに記録しなければならないものとする。
(2) 提出された書面等及び記録媒体の電子化のルール
民訴法第132条の12及び第132条の13と同様に、裁判所に提出さ
れた書面等及び記録媒体の電子化のルールとして、次のような規律を設ける
ものとする。
1 申立て等が書面等により行われたときは、裁判所書記官は、当該書面等
に記載された事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事
項をファイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限りで
ない。
2 裁判所書記官は、1の申立て等に係る書面等のほか、民事調停の手続に
おいて裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録され
ている事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事項をフ
ァイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限りでない。
3 裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録されてい
る事項のうち、次のものについては、1及び2の規律にかかわらず、ファ27イルに記録することを要しない。
i 第三者の閲覧等の制限の申立てがあった営業秘密のうち特に必要があ
るもの
ii 秘匿決定の申立てがあった場合における秘匿事項の届出に係る事項
iii 当事者の閲覧等の制限の申立て又は当事者の閲覧等の制限の決定があ
った閲覧等の制限がされるべき事項のうち必要があるもの
(注) 民訴法第92条第9項及び第10項、第133条の2第5項及び第6項並びに第1
33条の3第2項と同様に、
インターネットを用いた提出によりファイルに記録され
た電子化された事件記録のうち、
1第三者の閲覧等の制限の申立てがあった営業秘密
のうち特に必要がある部分又は2当事者の閲覧等の制限の申立て若しくは当事者の
閲覧等の制限の決定があった閲覧等の制限がされるべき事項が記録された部分は、その内容を書面に出力し、又はこれを他の記録媒体に記録するとともに、当該部分を電
子化された事件記録から消去する措置その他の当該部分の安全管理のために必要か
つ適切なものとして最高裁判所規則で定める措置を講ずることができるものとする。
3 裁判書及び調書等の電子化
裁判官が作成する裁判書及び裁判所書記官が作成する調書等について、書面
による作成に代えて、最高裁判所規則で定めるところにより、電磁的記録によ
り作成するものとする。
4 期日におけるウェブ会議又は電話会議の利用
(いわゆる遠隔地要件を削除し、)裁判所は、相当と認めるときは、当事者
の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、ウェブ会議又は電話
会議によって、民事調停の手続の期日における手続(証拠調べを除く。)を行
うことができるものとする。
5 調停調書の送達又は送付
【甲案】
調停における合意を記載した調書は、当事者に送達しなければならないも
のとする。
【乙案】
調停における合意を記載した調書は、当事者に送達又は送付しなければな
らないものとする。
(注) 甲案、乙案のいずれについても、現行において実費精算する取扱いがなされている郵
便費用を、申立ての手数料に組み込み一本化することと併せて実現することを提案する28ものである。
6 事件記録の閲覧等
(1) 電子化された事件記録の閲覧等
電子化された事件記録についても請求の主体に係る民調法第12条の6第
1項の規律を基本的に維持し、当事者又は利害関係を疎明した第三者は、電
子化された事件記録について、
最高裁判所規則で定めるところにより、
閲覧、
複写(ダウンロード)、事件記録に記録されている事項の内容を証明した文
書若しくは電磁的記録の交付若しくは提供又は事件に関する事項を証明した
文書若しくは電磁的記録の交付若しくは提供
(以下この(1)において
「閲覧等」
という。)の請求をすることができるものとする。
(注) 電子化された事件記録の閲覧等の具体的な方法について、次のような規律を設ける
ものとする。
1 当事者及び利害関係を疎明した第三者は、
裁判所設置端末及び裁判所外端末を用
いた閲覧等を請求することができる。
2 当事者は、
いつでも事件の係属中に裁判所外端末を用いた閲覧又は複写をするこ
とができる。
(2) 秘密保護のための閲覧等の制限
民事調停の手続における電子化された事件記録及び電子化されていない
事件記録について、民訴法第92条第1項から第8項までの規定を準用する
ものとする。
7 送達等
(1) 電磁的記録の送達
民事調停の手続における電磁的記録の送達について、(非訟法を準用する
ことにより)民訴法第109条から第109条の4までの規定を準用するも
のとする。
(2) 公示送達
民事調停の手続における公示送達について、(非訟法を準用することによ
り)民訴法第111条の規定を準用するものとする。
8 その他
(注1) システムを使った電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べの申出や、書29面の提出に代えて電磁的記録をファイルに記録する方法による陳述、ウェブ会議による
裁判所外の尋問など、ITを活用した証拠調べ手続について、民事訴訟手続と同様の規
律を設けるものとする。
(注2) 費用額確定の申立ての期限や、申立て手数料の納付がない場合の納付命令の裁判所
書記官の権限について民事訴訟手続と同様の規律を設けるものとするほか、申立て手数
料を納付しないことを理由とする申立書却下に対して申立て手数料を納付しないまま
した即時抗告は原裁判所において却下しなければならないとの規律を設けるものとす
る。
(注3) 特定調停における手続については、民事調停の手続のIT化及び破産手続のIT化
を踏まえて、IT化をするものとする。
(注4) 民訴法の改正を踏まえて裁判官の権限のうち定型的な判断事項を裁判所書記官の権
限とする見直しなど実務上必要な見直しがないのか検討すべきとの考え方がある。
第7 労働審判
1 裁判所に対する申立て等
(1) インターネットを用いてする申立て等の可否
労働審判手続において裁判所に対して行う申立て等については、(非訟法
を準用することにより)民訴法第132条の10の規定を準用し、全ての裁
判所に対し、一般的に、インターネット(電子情報処理組織)を用いてする
ことができるものとする。
(2) インターネットを用いてする申立て等の義務付け
労働審判手続において、(非訟法を準用することにより)民訴法第132
条の11の規定を準用し、民事訴訟手続においてインターネットを用いて申
立て等をしなければならない委任を受けた代理人等は、裁判所に対して行う
申立て等をインターネットを用いてしなければならないものとする。
2 提出された書面等及び記録媒体の電子化
(1) 提出された書面等及び記録媒体の電子化の対象事件等
裁判所に提出された書面等及び記録媒体につき、下記(2)の電子化のルー
ルを適用し、裁判所書記官において提出された書面等及び記録媒体をファイ
ルに記録しなければならないものとする。
(2) 提出された書面等及び記録媒体の電子化のルール
民訴法第132条の12及び第132条の13と同様に、裁判所に提出さ30れた書面等及び記録媒体の電子化のルールとして、次のような規律を設ける
ものとする。
1 申立て等が書面等により行われたときは、裁判所書記官は、当該書面等
に記載された事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事
項をファイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限りで
ない。
2 裁判所書記官は、1の申立て等に係る書面等のほか、労働審判手続にお
いて裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録されて
いる事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事項をファ
イルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限りでない。
3 裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録されてい
る事項のうち、次のものについては、1及び2の規律にかかわらず、ファ
イルに記録することを要しない。
i 第三者の閲覧等の制限の申立てがあった営業秘密のうち特に必要があ
るもの
ii 秘匿決定の申立てがあった場合における秘匿事項の届出に係る事項
iii 当事者の閲覧等の制限の申立て又は当事者の閲覧等の制限の決定があ
った閲覧等の制限がされるべき事項のうち必要があるもの
(注) 民訴法第92条第9項及び第10項、第133条の2第5項及び第6項並びに第1
33条の3第2項と同様に、
インターネットを用いた提出によりファイルに記録され
た電子化された事件記録のうち、
1第三者の閲覧等の制限の申立てがあった営業秘密
のうち特に必要がある部分又は2当事者の閲覧等の制限の申立て若しくは当事者の
閲覧等の制限の決定があった閲覧等の制限がされるべき事項が記録された部分は、その内容を書面に出力し、又はこれを他の記録媒体に記録するとともに、当該部分を電
子化された事件記録から消去する措置その他の当該部分の安全管理のために必要か
つ適切なものとして最高裁判所規則で定める措置を講ずることができるものとする。
3 裁判書及び調書等の電子化
労働審判委員会が作成する審判書、裁判官が作成する裁判書及び裁判所書記
官が作成する調書等について、書面による作成に代えて、最高裁判所規則で定
めるところにより、電磁的記録により作成するものとする。
4 期日におけるウェブ会議又は電話会議の利用
(いわゆる遠隔地要件を削除し、)裁判所は、相当と認めるときは、当事者
の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、ウェブ会議又は電話31会議によって、労働審判手続の期日における手続(証拠調べを除く。)を行う
ことができるものとする。
(注) 労働審判手続の証拠調べにおけるウェブ会議又は電話会議の利用については、後記8
で取り上げている証拠調べの規律が優先的に適用されることを前提としている(民事訴
訟手続と同様の規律とする場合には、証人尋問はウェブ会議を利用することができるが
電話会議を利用することはできず、証拠調べとしての参考人等の審尋(民訴法第187
条第3項及び第4項参照)は原則としてウェブ会議を利用することができるが、当事者
に異議がないときは電話会議を利用することができることとなる。)。
5 調停調書等の送達又は送付
(1) 調停における合意を記載した調書
【甲案】
調停における合意を記載した調書は、当事者に送達しなければならない
ものとする。
【乙案】
調停における合意を記載した調書は、当事者に送達又は送付しなければ
ならないものとする。
(注) 甲案、乙案のいずれについても、現行において実費精算する取扱いがなされている
郵便費用を、
申立ての手数料に組み込み一本化することと併せて実現することを提案
するものである。
(2) 審判書に代わる調書
【甲案】
審判書に代わる調書は、当事者に送達しなければならないものとする。
【乙案】
審判書に代わる調書は、当事者に送達又は送付しなければならないもの
とする。
(注) 甲案、乙案のいずれについても、現行において実費精算する取扱いがなされている
郵便費用を、
申立ての手数料に組み込み一本化することと併せて実現することを提案
するものである。
6 電子化された事件記録の閲覧等
電子化された事件記録についても請求の主体に係る労審法第26条第1項の
規律を基本的に維持し、当事者及び利害関係を疎明した第三者は、電子化され
た事件記録について、最高裁判所規則で定めるところにより、閲覧、複写(ダ32ウンロード)、事件記録に記録されている事項の内容を証明した文書若しくは
電磁的記録の交付若しくは提供又は事件に関する事項を証明した文書若しくは
電磁的記録の交付若しくは提供(以下この6において「閲覧等」という。)の
請求をすることができるものとする。
(注) 電子化された事件記録の閲覧等の具体的な方法について、次のような規律を設けるも
のとする。
1 当事者及び利害関係を疎明した第三者は、裁判所設置端末及び裁判所外端末を用い
た閲覧等を請求することができる。
2 当事者は、いつでも事件の係属中に裁判所外端末を用いた閲覧又は複写をすること
ができる。
7 送達等
労働審判手続における電磁的記録の送達について、(非訟法を準用すること
により)民訴法第109条から第109条の4までの規定を準用するものとす
る。
(注) 労働審判手続における公示送達について、
(非訟法を準用することにより)
民訴法第1
11条の規定を準用するものとする。
8 その他
(注1) ウェブ会議・電話会議を利用する参考人等の審尋、システムを使った電磁的記録に
記録された情報の内容に係る証拠調べの申出や書面の提出に代えて電磁的記録をファ
イルに記録する方法による陳述など、ITを活用した証拠調べ手続について、民事訴訟
手続と同様の規律を設けるものとする。
(注2) 費用額確定の申立ての期限や、申立て手数料の納付がない場合の納付命令の裁判所
書記官の権限について民事訴訟手続と同様の規律を設けるものとするほか、申立て手数
料を納付しないことを理由とする申立書却下に対して申立て手数料を納付しないまま
した即時抗告は原裁判所において却下しなければならないとの規律を設けるものとす
る。
(注3) 民訴法の改正を踏まえて裁判官の権限のうち定型的な判断事項を裁判所書記官の権
限とする見直しなど実務上必要な見直しがないのか検討すべきとの考え方がある。
第8 人事訴訟
1 裁判所に対する申立て等
(1) インターネットを用いてする申立て等の可否
人事訴訟に関する手続において裁判所に対して行う申立て等については、33民訴法第132条の10の規定を適用し、全ての裁判所に対し、一般的に、
インターネット
(電子情報処理組織)
を用いてすることができるものとする。
(2) インターネットを用いてする申立て等の義務付け
人事訴訟に関する手続において、
民訴法第132条の11の規定を適用し、
民事訴訟手続においてインターネットを用いて申立て等をしなければならな
い委任を受けた訴訟代理人等は、裁判所に対して行う申立て等をインターネ
ットを用いてしなければならないものとする。
2 提出された書面等及び記録媒体の電子化
(1) 民事訴訟のルールの適用
裁判所に提出された書面等及び記録媒体について、民訴法第132条の1
2及び第132条の13の規定を適用し、次のような規律を設けるものとす
る(書面等及び記録媒体については、事実の調査に係るものを含むものとす
る。)。
1 申立て等が書面等により行われたときは、裁判所書記官は、当該書面等
に記載された事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事
項をファイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限りで
ない。
2 裁判所書記官は、1の申立て等に係る書面等のほか、人事訴訟に関する
手続において裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記
録されている事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事
項をファイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限りで
ない。
3 裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録されてい
る事項のうち、次のものについては、1及び2の規律にかかわらず、ファ
イルに記録することを要しない。
i 第三者の閲覧等の制限の申立てがあった営業秘密のうち特に必要があ
るもの
ii 秘匿決定の申立てがあった場合における秘匿事項の届出に係る事項
iii 当事者の閲覧等の制限の申立て又は当事者の閲覧等の制限の決定があ
った閲覧等の制限がされるべき事項のうち必要があるもの
(注) 民訴法第92条第9項及び第10項、第133条の2第5項及び第6項並びに第1
33条の3第2項の規定を適用し、
インターネットを用いた提出によりファイルに記
録された電子化された訴訟記録のうち、
1第三者の閲覧等の制限の申立てがあった営34業秘密のうち特に必要がある部分又は2当事者の閲覧等の制限の申立て若しくは当
事者の閲覧等の制限の決定があった閲覧等の制限がされるべき事項が記録された部
分は、その内容を書面に出力し、又はこれを他の記録媒体に記録するとともに、当該
部分を電子化された訴訟記録から消去する措置その他の当該部分の安全管理のため
に必要かつ適切なものとして最高裁判所規則で定める措置を講ずることができるも
のとする。
(2) 人訴法特有のルール(事実の調査に係る提出書面等の電子化の例外)
【甲案】
事実の調査において裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載さ
れ、又は記録されている事項のうち、次のいずれかのものであり、かつ、
裁判所が特に必要があると認めるものについては、当該事項をファイルに
記録することを要しないものとする。
1 他の者が知ることにより子(当事者間に成年に達しない子がある場合
におけるその子をいう。)の利益を害するおそれがある事項
2 他の者が知ることにより当事者又は第三者の私生活又は業務の平穏を
害するおそれがある事項
3 明らかにされることにより、その者が社会生活を営むのに著しい支障
を生じ、又はその名誉を著しく害するおそれがある当事者又は第三者の
私生活についての重大な秘密
【乙案】
甲案に記載している特段の規律は設けないものとする。
(注) 甲案を採用する場合には、事実の調査に係るインターネットを用いた提出によりフ
ァイルに記録された電子化された訴訟記録のうち、
本文の甲案に掲げる1から3まで
の事項についても、裁判所が特に必要があると認めるときは、その内容を書面に出力
し、又はこれを他の記録媒体に記録するとともに、当該部分を電子化された訴訟記録
から消去する措置その他の当該部分の安全管理のために必要かつ適切なものとして
最高裁判所規則で定める措置を講ずることができるものとする。
3 裁判書等及び報告書の電子化
(1) 裁判書及び調書等の電子化
裁判官が作成する裁判書及び裁判所書記官が作成する調書等について、民
訴法の規定を適用し、書面による作成に代えて、最高裁判所規則で定めると
ころにより、電磁的記録により作成するものとする。35(2) 家庭裁判所調査官の報告書の電子化
家庭裁判所調査官は、事実の調査の結果の書面による報告(人訴法第34
条第3項参照)に代えて、最高裁判所規則で定めることにより、当該書面に
記載すべき事項をファイルに記録する方法又は当該事項を記録した記録媒
体を提出する方法により報告を行うことができるものとする。
4 期日におけるウェブ会議及び電話会議の利用
(1) 当事者の陳述を聴く審問期日
【甲案】
裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規
則で定めるところにより、ウェブ会議及び電話会議によって、当事者の陳
述を聴く審問期日における手続を行うことができるものとする。
【乙案】
裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規
則で定めるところにより、ウェブ会議によって、当事者の陳述を聴く審問
期日における手続を行うことができるものとし、電話会議の利用は認めな
いものとする。
(注) 乙案を原則としつつ、当事者双方に異議がない場合には、電話会議によって、当事
者の陳述を聴く審問期日における手続を行うこともできるものとするとの考え方が
ある。
(2) 参与員の立会い
家庭裁判所は、人訴法第9条第1項の規定により参与員を審理又は和解の
試みに立ち会わせる場合において、相当と認めるときは、当事者の意見を聴
いて、最高裁判所規則で定めるところにより、ウェブ会議又は電話会議によ
って、参与員に審理又は和解の試みに立ち会わせ、当該期日における行為を
行わせることができるものとする。
(注) 本文と異なり、ウェブ会議によって、参与員に審理又は和解の試みに立ち会わせる
ことができるものとし、電話会議の利用は認めないものとするとの考え方がある。
5 和解調書等の送達
人事訴訟に関する手続について、民訴法第267条第2項を適用し、和解又
は請求の放棄若しくは認諾を記載した調書は、当事者に送達しなければならな
いものとする。
(注) 本文は、現行において実費精算する取扱いがなされている郵便費用を、申立ての手数36料に組み込み一本化することと併せて実現することを提案するものである。
6 電子化された訴訟記録の閲覧等
(1) 電子化された訴訟記録(事実調査部分を除く。)の閲覧等
電子化された訴訟記録(事実調査部分を除く。)の閲覧等に関し、民訴法
第91条の2及び第91条の3の規定を適用し、次のような規律を設けるも
のとする。
1 何人も、裁判所書記官に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、
電子化された訴訟記録の閲覧を請求することができる。
2 当事者及び利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、電子化
された訴訟記録について、
最高裁判所規則で定めるところにより、
複写(ダウンロード)、訴訟記録に記録されている事項の内容を証明した文書若し
くは電磁的記録の交付若しくは提供又は訴訟に関する事項を証明する文
書若しくは電磁的記録の交付若しくは提供の請求をすることができる。
(注) 電子化された訴訟記録の閲覧等の具体的な方法について、次のような規律を設ける
ものとする。
1 何人も、裁判所設置端末を用いた閲覧を請求することができる。
2 当事者及び利害関係を疎明した第三者は、
裁判所設置端末及び裁判所外端末を用
いた閲覧等を請求することができる。
3 当事者は、
いつでも事件の係属中に裁判所外端末を用いた閲覧又は複写をするこ
とができる。
(2) 事実の調査に係る部分の閲覧等
ア 原則
電子化された訴訟記録中事実の調査に係る部分の閲覧等の請求について
は、請求の主体及び裁判所の許可に係る人訴法第35条の規律を基本的に
維持し、次のような規律を設けるものとする。
1 当事者は、裁判所が人訴法第35条第2項の規定により許可したとき
に限り、電子化された訴訟記録中事実の調査に係る部分について、最高
裁判所規則で定めるところにより、閲覧、複写(ダウンロード)又はそ
の部分に記録されている事項の内容を証明した文書若しくは電磁的記録
の交付若しくは提供(以下この(2)において「閲覧等」という。)の請求
をすることができる。
2 利害関係を疎明した第三者は、裁判所が人訴法第35条第3項の規定
により許可したときに限り、電子化された訴訟記録中事実の調査に係る37部分について、最高裁判所規則で定めるところにより、閲覧等の請求を
することができる。
(注1)電子化された訴訟記録中事実の調査に係る部分の閲覧等の具体的な方法につい
て、次のような規律を設けるものとする。
1 当事者及び利害関係を疎明した第三者は、
裁判所設置端末及び裁判所外端末を
用いた閲覧等を請求することができる。
2 当事者は、
いつでも事件の係属中に裁判所外端末を用いた閲覧又は複写をする
ことができる。
(注2) 本文のとおり、法律上、裁判所の閲覧等に許可を要するとの規律を維持した上
で、
当事者がいつでも事件の係属中に裁判所外端末を用いた閲覧又は複写をするこ
とができる((注1)2)ようにするための閲覧又は複写の許可の在り方として、
例えば、
同一の当事者が一度閲覧又は複写の許可を得た部分を再度閲覧又は複写す
る場合には別途の許可を不要とするとの考え方や、
閲覧又は複写を許可する部分の
特定
(人訴規則第25条参照)
に関し一定の場合には今後提出されるものも含めた
範囲の指定を可能とする
(将来的な閲覧等を見越して、
一定範囲のものについては、
あらかじめ許可を得られるようにして、
都度許可を得なくてもよいこととする)との考え方がある。ここでいう「一定の場合」としては、例えば、訴訟代理人が相手
方等に閲覧等させても問題ないと判断した上で提出する資料を相手方等が閲覧等
する場合に、このような取扱いを可能とする考え方がある。
イ 自己の提出したものの閲覧等の請求
当事者は、電子化された訴訟記録中事実の調査に係る部分のうち当該当
事者が提出したものに係る事項については、裁判所の許可を得ないで、裁
判所書記官に対し、閲覧等の請求をすることができるものとする。
(注1) 当事者は、
電子化されていない訴訟記録中当該当事者が提出したものに係る事
項については、裁判所の許可を得ないで、裁判所書記官に対し、閲覧等の請求をす
ることができるものとする。
(注2) 本文のほか、
訴訟代理人が相手方等に閲覧等させても問題ないと判断した上で
提出する資料を相手方等が閲覧等する場合についても、裁判所の許可を得ないで、
裁判所書記官に対し、
閲覧等の請求をすることができるものとするとの考え方があ
る。
7 送達
(1) 電磁的記録の送達
人事訴訟に関する手続における電磁的記録の送達について、民訴法第10389条から第109条の4までの規定を適用するものとする。
(2) 公示送達
人事訴訟に関する手続における公示送達について、民訴法第111条の規
定を適用するものとする。
8 その他
(注1) システムを使った電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べの申出や、書
面の提出に代えて電磁的記録をファイルに記録する方法による陳述、ウェブ会議による
裁判所外の尋問など、ITを活用した証拠調べ手続について、民訴法の規定を適用する
ものとする。
(注2) 費用額確定の申立ての期限について民訴法第71条第2項を適用するものとする。
(注3) 民訴法の改正を踏まえて裁判官の権限のうち定型的な判断事項を裁判所書記官の権
限とする見直しなど実務上必要な見直しがないのか検討すべきとの考え方がある。
第9 家事事件
1 裁判所に対する申立て等
(1) インターネットを用いてする申立て等の可否
家事事件の手続において裁判所に対して行う申立て等については、民訴法
第132条の10の規定を準用し、全ての裁判所に対し、一般的に、インタ
ーネット(電子情報処理組織)を用いてすることができるものとする。
(注)申立て等をインターネットを用いてする際の方法としては、システム上のフォーマ
ット入力の方式を検討すべきとの考え方がある。
(2) インターネットを用いてする申立て等の義務付け
ア 委任を受けた手続代理人等
家事事件の手続において、民訴法第132条の11の規定を準用し、民
事訴訟手続においてインターネットを用いて申立て等をしなければならな
い委任を受けた手続代理人等は、裁判所に対して行う申立て等をインター
ネットを用いてしなければならないものとする。
イ 家事事件の手続において裁判所から選任された者
【甲案】
家事事件の手続において裁判所から選任された者は、その選任された
者として関与する家事事件の手続においては、裁判所に対して行う申立39て等をインターネットを用いてしなければならないものとする。
【乙案】
家事事件の手続において裁判所から選任された者について、特段の規
律を設けないものとする。
2 提出された書面等及び記録媒体の電子化
(1) 提出された書面等及び記録媒体の電子化の対象事件等
【甲案】
家事調停事件及び別表第2に掲げる事項の家事審判事件については、下
記(2)の電子化のルールを適用し、
裁判所書記官において提出された書面等
及び記録媒体をファイルに記録しなければならないものとするが、その余
の家事事件については、ファイルに記録するかどうかは、裁判所の適切な
運用に委ねるものとする。
【乙案】
全ての家事事件において、当事者又は利害関係を疎明した第三者の申出
があったときは、
下記(2)の電子化のルールを適用し、
裁判所書記官におい
て提出された書面等及び記録媒体をファイルに記録しなければならないも
のとする。
【丙案】
全ての家事事件について、
下記(2)の電子化のルールを適用し、
裁判所書
記官において提出された書面等及び記録媒体をファイルに記録しなければ
ならないものとする。
(注1) 甲案を採用する場合に、別表第1に掲げる事項についての家事審判事件について
は、本文のとおり、電子化をするかどうかは個々の裁判所の適切な運用に委ねるとす
る考え方(甲-1案)のほか、一定のものについては、法律上の定めとして、同様に
電子化しなければならないとするとの考え方がある。
具体的には、
次のとおりである。
1 別表第1に掲げる事項についての家事審判事件のうちの電子化のメリット等が
高いと考えられる一定の事件類型にも下記(2)の電子化のルールを適用するとの案
(甲-2案)
2 別表第1に掲げる事項についての家事審判事件は、
電子化のメリット等が特に高
くないと認めるものを除いて、下記(2)の電子化のルールを適用するとの案(甲-
3案)
(注2) 丙案を採用する場合について、本文のとおり下記(2)の電子化のルールをそのま
ま適用するとの考え方(丙-1案)のほかに、申立て等以外の書面等及び記録媒体の
ルールである下記(2)ア2の電子化をしない場合の要件につき「ファイルに記録する40ことにつき困難な事情があるとき」に代えて、家事事件の手続の特性を考慮し、より
柔軟な運用を可能とする要件を置いた上で、下記(2)の電子化のルールを適用すると
の考え方(丙-2案)がある。
(2) 提出された書面等及び記録媒体の電子化のルール
ア 民事訴訟と同様のルール
民訴法第132条の12及び第132条の13と同様に、裁判所に提出
された書面等及び記録媒体の電子化のルールとして、次のような規律を設
けるものとする。
1 申立て等が書面等により行われたときは、裁判所書記官は、当該書面
等に記載された事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当
該事項をファイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この
限りでない。
2 裁判所書記官は、1の申立て等に係る書面等のほか、家事事件の手続
において裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録
されている事項をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事
項をファイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限り
でない。
3 裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記載され、又は記録されて
いる事項のうち、秘匿決定の申立てがあった場合における秘匿事項の届
出に係る事項については、1及び2の規律にかかわらず、ファイルに記
録することを要しない。
イ 家事法特有のルール
【甲案】
家事事件の手続において裁判所に提出された書面等又は記録媒体に記
載され、又は記録されている事項のうち、次のいずれかのものであり、
かつ、裁判所が特に必要があると認めるものについては、ファイルに記
録することを要しないものとする。
1 他の者が知ることにより事件の関係人である未成年者の利益を害す
るおそれ又は当事者若しくは第三者の私生活若しくは業務の平穏を害
するおそれがある事項
2 明らかにされることにより、その者が社会生活を営むのに著しい支
障を生じ、又はその者の名誉を著しく害するおそれがある当事者又は
第三者の私生活についての重大な秘密413 事件の性質、審理の状況、記録の内容等に照らして、他の者が知る
ことを不適当とする特別の事情がある事項
【乙案】
甲案に記載している特段の規律は設けないものとする。
(注) 甲案を採用する場合には、
インターネットを用いた提出によりファイルに記録さ
れた電子化された事件記録のうち、
本文の甲案に掲げる1から3までの事項につい
ても、裁判所が特に必要があると認めるときは、その内容を書面に出力し、又はこ
れを他の記録媒体に記録するとともに、
当該部分を電子化された事件記録から消去
する措置その他の当該部分の安全管理のために必要かつ適切なものとして最高裁
判所規則で定める措置を講ずることができるものとする。
3 裁判書等及び報告書の電子化
(1) 裁判書及び調書等の電子化
裁判官が作成する審判書その他の裁判書及び裁判所書記官が作成する調書
等について、書面による作成に代えて、最高裁判所規則で定めるところによ
り、電磁的記録により作成するものとする。
(2) 家庭裁判所調査官の報告書の電子化
家庭裁判所調査官は、事実の調査の結果の書面による報告(家事法第58
条第3項参照)に代えて、最高裁判所規則で定めることにより、当該書面に
記載すべき事項をファイルに記録する方法又は当該事項を記録した記録媒
体を提出する方法により報告を行うことができるものとする。
4 期日におけるウェブ会議及び電話会議の利用
(1) 当事者の期日参加等
ア 遠隔地要件の削除
(いわゆる遠隔地要件を削除し、)裁判所は、相当と認めるときは、当
事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、ウェブ会議
又は電話会議によって、家事事件の手続の期日における手続(証拠調べを
除く。)を行うことができるものとする。
イ 当事者が立会権を有する審問期日
【甲案】
裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所
規則で定めるところにより、当事者が立会権を有する審問期日における
手続についても、ウェブ会議及び電話会議によって、その審問期日にお42ける手続を行うことができるものとする。
【乙案】
裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所
規則で定めるところにより、当事者が立会権を有する審問期日における
手続については、ウェブ会議によって、その審問期日における手続を行
うことができるものとし、電話会議の利用は認めないものとする。
(注) 乙案を原則としつつ、当事者双方に異議がない場合には、電話会議によって、当
事者が立会権を有する審問期日における手続を行うこともできるものとするとの
考え方がある。
(2) 参与員の立会い
裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則
で定めるところにより、ウェブ会議又は電話会議によって、参与員に家事審
判の手続の期日に立ち会わせ、当該期日における行為を行わせることができ
るものとする。
(注) 本文と異なり、ウェブ会議によって、参与員に家事審判の手続の期日に立ち会わせ
ることができるものとし、電話会議の利用は認めないものとするとの考え方がある。
(3) 家庭裁判所調査官及び裁判所技官の期日参加等
1 裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規
則で定めるところにより、裁判所及び当事者が家庭裁判所調査官との間で
ウェブ会議又は電話会議によって、家庭裁判所調査官に家事事件の手続の
期日に立ち会わせることができるものとするとともに、当該期日において
家事法第59条第2項(同法第258条第1項において準用する場合を含
む。)の意見を述べさせることができるものとする。
2 前記1の規律は、裁判所技官の期日への立会い及び意見の陳述について
準用するものとする。
(注1) 本文と異なり、裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁
判所規則で定めるところにより、ウェブ会議によって、家庭裁判所調査官及び裁判所
技官に期日参加等をさせることができるものとし、
電話会議の利用は認めないものと
するとの考え方がある。
(注2) ウェブ会議又は電話会議を利用して、当該調停委員会を組織していない家事調停
委員から意見を聴取することができるものとする。
5 当事者双方が受諾書を提出する方法による調停43当事者双方が出頭することが困難であると認められる場合において、当事者
双方があらかじめ調停委員会(裁判官又は家事調停官のみで家事調停の手続を
行う場合にあっては、その裁判官又は家事調停官)から調停が成立すべき日時
を定めて提示された調停条項案を受諾する旨の書面を提出し、その日時が経過
したときは、
その日時に、
当事者間に合意が成立したものとみなすものとする。
6 調停調書の送達又は送付
【甲案】
調停における合意を記載した調書は、当事者に送達しなければならないも
のとする。
【乙案】
調停における合意を記載した調書は、当事者に送達又は送付しなければな
らないものとする。
(注) 甲案、乙案のいずれについても、現行において実費精算する取扱いがなされている郵
便費用を、申立ての手数料に組み込み一本化することと併せて実現することを提案する
ものである。
7 電子化された事件記録の閲覧等
(1) 原則
電子化された事件記録についても請求の主体及び裁判所の許可に係る家事
法第47条第1項及び第254条第1項の規律を基本的に維持し、当事者又
は利害関係を疎明した第三者は、電子化された事件記録について、裁判所の
許可を得て、最高裁判所規則で定めるところにより、閲覧、複写(ダウンロ
ード)、事件記録に記録されている事項の内容を証明した文書若しくは電磁
的記録の交付若しくは提供又は事件に関する事項を証明した文書若しくは電
磁的記録の交付若しくは提供(以下この7において「閲覧等」という。)の
請求をすることができるものとする。
(注1) 電子化された事件記録の閲覧等の具体的な方法について、次のような規律を設け
るものとする。
1 当事者及び利害関係を疎明した第三者は、
裁判所設置端末及び裁判所外端末を用
いた閲覧等を請求することができる。
2 当事者は、
いつでも事件の係属中に裁判所外端末を用いた閲覧又は複写をするこ
とができる。
(注2) 本文のとおり、
法律上、
裁判所の閲覧等に許可を要するとの規律を維持した上で、
当事者がいつでも事件の係属中に裁判所外端末を用いた閲覧又は複写をすることが44できる((注1)2)ようにするための閲覧又は複写の許可の在り方として、例えば、
同一の当事者が一度閲覧又は複写の許可を得た部分を再度閲覧又は複写する場合に
は別途の許可を不要とするとの考え方や、閲覧又は複写を許可する部分の特定(家事
規則第35条参照)
に関し一定の場合には今後提出されるものも含めた範囲の指定を
可能とする(将来的な閲覧等を見越して、一定範囲のものについては、あらかじめ許
可を得られるようにして、
都度許可を得なくてもよいこととする)
との考え方がある。
ここでいう「一定の場合」としては、例えば、手続代理人が相手方等に閲覧等させて
も問題ないと判断した上で提出する資料を相手方等が閲覧等する場合に、
このような
取扱いを可能とする考え方がある。
(注3) (注1)の1につき裁判所外端末を用いて閲覧等をすることができるのは当事者
及び審判を受ける者となるべき者のみに限るとすべきとの考え方がある。
(2) 自己の提出した書面等及び裁判書等
1 当事者は、電子化された事件記録中当該当事者が提出したものに係る事
項については、裁判所の許可を得ないで、裁判所書記官に対し、閲覧等の
請求をすることができるものとする。
2 当事者は、電子審判書その他の電子裁判書については、裁判所の許可を
得ないで、裁判所書記官に対し、閲覧等の請求をすることができるものと
する。審判を受ける者が当該審判があった後に請求する場合も、同様とす
るものとする。
3 当事者は、事件に関する事項を証明した文書又は電磁的記録について
は、裁判所の許可を得ないで、裁判所書記官に対し、その交付又は提供の
請求をすることができるものとする。審判を受ける者が当該審判があった
後に請求する場合も、同様とするものとする。
4 当事者は、調停における合意を記載した調書及び調停が終了した際の調
書については、裁判所の許可を得ないで、裁判所書記官に対し、閲覧等の
請求をすることができるものとする。
(注1) 当事者は、電子化されていない事件記録中当該当事者が提出したものに係る事項
については、裁判所の許可を得ないで、裁判所書記官に対し、閲覧等の請求をするこ
とができるものとする。
(注2) 本文のほか、手続代理人が相手方等に閲覧等をさせても問題ないと判断した上で
提出する資料を相手方等が閲覧等する場合についても、裁判所の許可を得ないで、裁
判所書記官に対し、閲覧等の請求をすることができるものとするとの考え方がある。
8 送達等45(前注) 家事事件の手続では、
送付、
相当な方法による告知又は通知がされることがあるが、
送達はここでいう送付、相当な方法による告知及び通知の方法の一つであり、送達がさ
れれば、送付、相当な方法による告知及び通知がされたものと評価されることを前提と
している。
(1) 電磁的記録の送達
家事事件の手続における電磁的記録の送達について、民訴法第109条か
ら第109条の4までの規定を準用するものとする。
(2) 公示送達
家事事件の手続における公示送達について、民訴法第111条の規定を準
用するものとする。
(後注1) 家事事件の手続において裁判所が行う公告について、最高裁判所規則で認められ
ている裁判所の掲示場への掲示に代えて、裁判所設置端末で閲覧することができるよう
にする措置をとることができるものとする。
(後注2) (後注1)を前提とした上で、裁判所の掲示場又は裁判所設置端末等への掲示、
及び官報への掲載に加えて、裁判所のウェブサイトに掲載する方法をとらなければなら
ないものとするとの考え方がある。
9 その他
(注1) システムを使った電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べの申出や、書
面の提出に代えて電磁的記録をファイルに記録する方法による陳述、ウェブ会議による
裁判所外の尋問など、ITを活用した証拠調べ手続について、民事訴訟手続と同様の規
律を設けるものとする。
(注2) 費用額確定の申立ての期限や、申立て手数料の納付がない場合の納付命令の裁判所
書記官の権限について民事訴訟手続と同様の規律を設けるものとするほか、申立て手数
料を納付しないことを理由とする申立書却下に対して申立て手数料を納付しないまま
した即時抗告は原裁判所において却下しなければならないとの規律を設けるものとす
る。
(注3) 民訴法の改正を踏まえて裁判官の権限のうち定型的な判断事項を裁判所書記官の権
限とする見直しなど実務上必要な見直しがないのか検討すべきとの考え方がある。
第10 子の返還申立事件の手続(ハーグ条約実施法)
子の返還申立事件の手続(ハーグ条約実施法)について、第9の家事事件に関46する検討を踏まえ、基本的に、これと同様にIT化するものとする。
第11 その他
(注) 仲裁法所定の裁判手続等他の民事・家事関係の裁判手続についても、第1から第10ま
での規律を踏まえて、IT化を検討する。