12 ライフラインに関する事例1【上水道関係】2(上水道に関する法律関係)3(1) 水道事業4水道事業は,原則として市町村が行うこととされている(水道法〔昭和 32 年法5律第177 号〕第3条第2項,第6条第2項)。6
(2) 水道に関する導管の種類7水道事業において,水は,水道事業者(市町村等)が設置する配水施設である配8水管(同法第3条第8項)を通り,配水管から分岐して設けられる給水管(同条第99項)を通って,各戸に引き込まれている(下図参照)。10
配水管・水道メータは水道事業者が所有・管理し,給水管は水の需要者が所有・11管理している。1213
【出典:東京都水道局】14(3) 水道施設設置工事及び給水装置工事15配水施設を新設する工事は,水道事業者が行い(同法第3条第10 項)
,給水装置16工事は,水の需要者から申込みを受けた水道事業者又は水道事業者の指定を受けた17工事業者が行う(同法第16 条の2第1項)。18
(4) 給水義務等19水道事業者は,給水契約の申込みを受けたときは,正当な理由がなければ,これ20を拒んではならない(同法第15 条第1項)。212また,配水施設(配水管)を含む水道施設の構造及び材質は,水圧,土圧,地震1力その他の荷重に対して充分な耐力を有し,かつ,水が汚染され,又は漏れるおそ2れがないものでなければならない(同法第5条第3項)ため,水道事業者は,所有3する配水管が上記の基準を下回ることのないように管理する責務を負う。4(5) 配水管及び給水管の所有者と土地の所有者との関係5配水管は,通常,公道の地下に設置されているが,私道の地下に設置されている6給水管を整理するなどのため,私道の地下に配水管が設置されることもある。7私道の地下に水道事業者が所有・管理する配水管を設置する際,水道事業者は,8私道の所有者との間で,配水管を設置するために地下を利用する権利を設定してい9る。設定される権利の法的性質は,貸借権,区分地上権等,一様ではないようであ10るが,その期間は,一般に,配水管の使用の必要があるときまでとされており,数11十年にわたる長期間の利用も可能とされている。12また,
水道事業者は,
私道の地下に配水管を設置する際,
配水管の漏水修理工事,13取替工事,撤去工事といった配水管の維持管理の際に必要となる私道の利用につい14ても併せて承諾を得ることが多い。1516171819202122232425262728293031323コラム:上水道に関する通知・条例【P】
1 給水装置の設置に当たり他人の土地を使用することとなる場合の工事申込みの
取扱いに関する通知要旨
水の需要者が自己の宅地内に水を引き込むに当たり,
他人の土地の地下に給水装
置を設置し,
公道に設置された配水管に直結させる必要が生じることがある。
この
ような場合に,
水道事業者が,
申込人に対し,
当該他人の土地の所有者からの承諾
書の提出を求める例があるが,
これに関し,
次のような通知が発出されているのが
参考になる。
○しろまる 生食水発 1128 第1号(平成 28 年 11 月 28 日付け厚生労働省医薬・生活衛生局
生活衛生・食品安全部水道課長)
承諾書の提出を求める手続は,給水装置工事の円滑な施行に資するものである
が,一方で,申込人が承諾書を得るために金銭を要求される,土地の所有者と連
絡を取ることができず承諾書を得ることができない等の事情も生じている。
水道事業者には水道法
(昭和32 年法律第177 号)
第15 条第1項により,
「事業
計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは,正当の
理由がなければ,これを拒んではならない」という給水義務が課せられており,
上記のような事情において,承諾書の提出が無いことが,当該給水義務を解除す
る正当の理由には当たらない。
なお,工事施行に関する土地の所有者との調整等について申込人が一義的に対
応することを確認した上で工事の申込みを受理すること,当該土地を使用しない
よう別の工事の方法を提案すること等の対応について否定するものではない。
2 京都市における水道事業条例の紹介
水道法においては,
下水道法の排水に関する受忍義務
(下水道法第11 条第1項)
とは異なり,給水装置の設置につき,他人の土地の所有者に対して受忍義務を課
す旨の規定は置かれていない。
その中で,地方公共団体が,条例を制定し,給水装置工事を実施しようとする
者が他人の土地を使用しなければ給水装置を設置することができない場合に,当
該他人に一定の義務を負わせることとする先進的な取組をしている例が参考にな
る。4京都市水道事業条例においては,例えば,住民であるAが給水のための給水装
置工事を京都市に申し込むに当たり,Bが所有する甲土地を使用する必要が生じ
た場合において,Aが工事のために合理的に必要と認められる限度でBに甲土地
の使用を申し込んだときは,Bは,正当な理由がない限り,Aからの申込みを拒
んではならない旨の規定が置かれている。
また,京都市においては,他人の土地を使用しなければ給水管を埋設すること
ができない場合において,
給水装置工事実施者からの給水申請を受けたときに,従前は,
承諾するための手続的な要件として,
申請者に給水管の埋設に使用する土地
の所有者の承諾書の写しを上下水道局に対して提出することを求めていた。しか
し,このような取扱いを廃止し,申請者から,
「給水管の埋設に関して,土地所有
者等から異議があった場合には,
給水申請者の責任で解決する」
旨を明記した申請
書類を提出すれば足りることとした。125【下水道関係】1下水道法(昭和33 年法律第79 号)においては,他のライフライン関係の法制と異な2り,
公共下水道の排水区域内の土地所有者に排水設備
(排水管)
の設置義務が課され(下3
水道法第10 条第1項)
,他人の土地又は排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に4流入させることが困難であるときは,他人の土地に排水設備を設置することが認められ5ている(同法第11 条第1項)。6
そのため,特に相互持合型私道の場合には,下水道法の規律により処理される点に特7色がある(
【事例20】参照)
。なお,前記コラム:新民法3のとおり,新民法第213 条の82においてライフラインの設備設置権・設備使用権の規律が創設され,下水道の排水も9同条第1項にいう継続的給付に該当するが,下水道法の規律は民法の特別法に当たるた10め,その適用関係は新民法の施行後も基本的に変更がないものと解される。1112
(下水道に関する法律関係)13(1) 下水道事業14下水道事業は,
原則として,
市町村が行うこととされており,
公共下水道の設置1,15
改築,修繕,維持その他の管理は,原則として市町村が行う(下水道法第3条)。16
(2) 公共下水道に関する導管の種類等17公共下水道は,市街地の公道等の下に管渠を埋設し,自然流下やポンプ圧力等に18よって下水を排除し,汚水については,管渠の流末に終末処理場を設けるか,流域19下水道に接続させて,最終的に処理して河川,湖沼,海域等の公共用水域に放流す20るものである。221家庭から排出される汚水は,各戸の所有者等が所有・管理する各戸の排水管(一22般に「排水管」と呼ばれる。
)を通り,排水管に接続して設置される市町村が所有・23管理する排水管(一般に「公共下水管」と呼ばれる。
)を通って,処理場で処理され24て公共用水域に放流されることになる(次頁の図参照)。25
私道において埋設される下水管は,各戸の所有者等が所有・管理する排水管であ261 「設置」には,公共下水道又はその施設を新たに築造することに加え,市町村又は都
道府県以外の者が築造した下水道を市町村又は都道府県が譲り受け,これを公共下水道
とする場合も含まれる。
2 下水道の管渠の構造としては,1雨水と汚水を同一の管渠により排除し,終末処理場
で処理する合流式,2雨水と汚水を別々の管渠の系統により排除し,雨水は終末処理場
へ入ることなく,公共用水域へ排出し,汚水は終末処理場で処理した上で公共用水域に
排出する分流式があるとされている。6ることが多いが,公共下水管が,私道下に埋設されている場合もある。1234
【出典:さいたま市建設局】5(3) 公共下水管の管理等6公共下水道管理者(市町村等)は,公共下水道を良好な状態に保つように維持7し,修繕し,もって公衆衛生上重大な危害が生じ,及び公共用水域の水質に重大8な影響が及ぶことのないように努めなければならないとされており,公共下水道9の維持又は修繕に関する技術上の基準その他必要な事項は,政令で定めることと10されている(下水道法第7条の2)。11
これを受けて,下水道法施行令(昭和34 年政令第147 号)においては,公共下12水道等の構造等を勘案して,適切な時期に,公共下水道等の巡視を行い,及び清13掃,しゅんせつその他の公共下水道等の機能を維持するために必要な措置を講ず14ること,公共下水道等の構造等を勘案して,適切な時期に,目視その他適切な方15法により公共下水道等の点検を行うこと,点検その他の方法により,公共下水道16等の損傷・腐食その他劣化その他の異状があることを把握したときは,公共下水17道等の効率的な維持及び修繕が図られるよう,必要な措置を講じること等が定め18られている(下水道法施行令第5条の12)。19
(4) 排水設備の設置,管理等20ア 排水設備の設置義務21(公共下水管)
排水管7公共下水道の供用が開始された場合には,原則として,当該公共下水道の排水1区域内の土地の所有者等
(1建築物の敷地である土地については当該建築物の所2有者,2建築物の敷地でない土地については,3の場合を除き,当該土地の所有3者,
3道路その他の公共施設の敷地である土地については,
当該公共施設を管理4すべき者)は,遅滞なく,その土地の下水を公共下水道に流入させるために必要5な排水管,
排水渠その他の排水設備を設置しなければならないとされている(下6
水道法第10 条第1項)。7
イ 排水設備(排水管)の管理8排水設備の改築,修繕は,これを設置すべき者が行うものとされ,その清掃9その他の維持は当該土地の占有者が行うものとされている(下水道法第 10 条第102項)。11
したがって,私道下に埋設されている排水管については,一般に,私道の所有12者等が改築・修繕する義務を負うものと考えられる。13ウ 排水に関する受忍義務等14下水道法第 10 条1項により排水設備を設置しなければならない者は,他人の15土地又は排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難16であるときは,
他人の土地に排水設備を設置し,
又は他人の設置した排水設備を17使用することができるとされている。
この場合,
他人の土地又は排水設備にとっ18て最も損害の少ない場所又は箇所及び方法を選ばなければならない(同法第 1119条第1項)。20
同項の規定により他人の排水設備を使用する者は,
その利益を受ける割合に応21じて,その設置,改築,修繕及び維持に要する費用を負担しなければならないと22されている(同条第2項)。23
また,下水道法第 11 条第1項の規定により他人の土地に排水設備を設置する24ことができる者又は同法第 10 条第2項の規定により当該排水設備の維持をしな25ければならない者は,
当該排水設備の設置,
改築若しくは修繕又は維持をするた26めやむを得ない必要があるときは,
他人の土地を使用することができる。
この場27合においては,あらかじめその旨を当該土地の占有者に告げなければならない28(同法第11 条第3項)。29
同項の規定により他人の土地を使用した者は,
当該使用により他人に損失を与30えた場合においては,
その者に対し,
通常生ずべき損失を補償しなければならな31い(同条第4項)。328(5) 公共下水管の所有者と土地の所有者との関係1私道の地下に市町村等が所有・管理する公共下水管を設置する際,
市町村等は,2私道の所有者との間で,公共下水管を設置するために地下を利用する権利を設定3しており,
設定する権利は,
貸借権,
区分地上権等,
一様ではないようであるが,4その期間は,一般に,公共下水管の使用の必要があるときまでとされており,数5十年にわたる長期間の利用も可能とされている。6また,一般に,市町村が私道の地下に公共下水管を設置する際,公共下水管の7補修工事,取替工事等の公共下水管の維持管理の際に必要となる私道の利用につ8いても併せて承諾を得ていることが多い。9109【ガス事業及び導管関係】1(ガス事業及び導管関係に関する法律関係)2(1) ガス事業について3ガス事業の全体構造の概要は下図のとおりである。4需要家である一般家庭がガス小売事業者とガスの小売供給契約を締結すると,ガ5ス製造事業者により製造されたガスは,一般ガス導管事業者の導管を経由して需要6家に供給される。78
【出典:経済産業省】9(2) 一般ガス導管事業者の義務10ア 託送供給義務11一般ガス導管事業者は,
ガス小売事業者からの依頼に対し,
正当な理由がなけ12れば,
その供給区域におけるガスの託送供給を拒んではならない
(ガス事業法
〔昭13和29 年法律第51 号〕第47 条第1項)とされている。14一般ガス導管事業者は,
ガス小売事業者がガスを供給する相手方であるガスの15需要家に対し,
ガスを託送供給することになるが,
その際,
必要な導管の設置は,16一般ガス導管事業者が行っている。17イ ガス工作物を技術上の基準に適合するよう維持する義務18導管は,ガス事業法におけるガス工作物(同法第2条第13 項)に該当する。19一般ガス導管事業者は,
一般ガス導管事業の用に供するガス工作物を経済産業20省令で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならず
(ガス事業法2110
第 61 条第1項)
,これを受けたガス工作物の技術上の基準を定める省令(平成112 年通商産業省令第111 号。以下「技術基準省令」という。
)においては,導管2につき,
「供用中の荷重並びに最高使用温度及び最低使用温度における最高使用3圧力に対し,設備の種類,規模に応じて適切な構造でなければならない。」(技術4基準省令第15 条第1項第6号)などと定められている。5導管は,
その種類ごとに,
技術基準省令で定める適切な方法により検査を行い,6漏えいが認められなかったものでなければならない(技術基準省令第 51 条)な7どとされていることから,
一般ガス導管事業者は,
定期的にガスの漏えいの有無8を検査する義務を負っており,
漏えいが発見されれば,
導管を補修するなどして,9漏えいが認められない状態を維持しなければならない。10したがって,一般ガス導管事業者は,私道下に導管を設置した場合,当然に導11管の維持管理義務を負い,
それに必要な限度で私道を利用することが予定されて12いるといえる。13(3) 導管等の所有関係14一般ガス導管事業者は,
事業者ごとに託送供給約款を作成し,
これに基づいてガ15スの託送供給を行っているが,導管は,本支管,供給管,内管の3種類に分類され16ている。17ア 本支管18原則として公道
(道路法その他の法令に定めのある国又は地方公共団体の管理19する道路)に並行して公道に埋設する導管をいう。本支管は,事業者の所有に属20する。21なお,
私道に埋設する導管についても,
不特定多数の人及び原則として道路構22造令第4条第2項に定める普通自動車の通行が可能である等の要件を満たす私23道については,事業者による変更・修繕について承諾が得られた場合には,本支24管として取扱われる。25イ 供給管26本支管から分岐して,
道路と需要家等が所有又は占有する土地との境界線に至27るまでの導管をいう。供給管も,事業者の所有に属する。28ウ 内管29イの境界線からガス栓までの導管及びその付属施設をいう。30内管は,ガス利用者の所有に属する。31(4) 導管を私道下に設置する場合の法律関係32ア ガスの需要家と一般ガス導管事業者との関係3311
ガスの供給に関し,
需要家が供給契約を締結するのは,
ガス小売事業者との間1であり,一般ガス導管事業者との間では契約関係がない。2イ 導管設置における一般的取扱い3託送供給約款においては,
一般ガス導管事業者が需要家等のために私道に導管4を埋設する場合には,
需要家等は私道所有者からの承諾を得る必要がある旨規定5されている。6この承諾については,
需要家自身又は工事を実施する業者が,
一般ガス導管事7業者宛ての導管設置工事の承諾書を私道所有者から徴し,
それを一般ガス導管事8業者に提出するのが通常である。現在,当該承諾書では,導管の補修,取替え等9を行う必要がある場合の工事についても,
承諾の対象としており,
工事の際に改10めて承諾を得る必要がないようになっている。11ただし,過去に結ばれた一部の承諾書では,導管の補修,取替え等に係る工事12についての承諾を含まない場合がある。この場合,一般ガス導管事業者は,工事13の際に,
私道内で工事を行うことを承諾する旨の承諾書を私道所有者から提出さ14せ,
それに基づいて工事を行っている。
私道所有者との関係で工事の承諾が取得15できない場合であっても,
現にガスの漏えいが発生しているような場合には,民16
法第698 条の緊急事務管理の考え方に基づき,
一般ガス導管事業者が補修工事を17実施している。18一般ガス導管事業者と私道所有者の間の私道の利用権の性質については,
貸借19権,区分地上権等,一様ではないようであるが,その期間は,一般に,ガス管の20設置後,
撤去するときまでとされており,
数十年にわたる長期間の利用も可能と21されている。222324252612
【電気事業及び電柱関係】1(電気事業及び電柱関係に関する法律関係)2(1) 電気事業について3電気事業の全体構造の概要は下図のとおりである。4需要家である一般家庭が小売電気事業者と電気の小売供給契約を締結すると,発5電事業者により発電された電気は,送配電事業者の送配電設備を経由して需要家に6供給される。7891011121314151617181920
【出典:経済産業省】2122
(2) 一般送配電事業者の義務23ア 託送供給義務24一般送配電事業者は,
小売電気事業者からの依頼に対し,
正当な理由がなけれ25ば,その供給区域における託送供給を拒んではならない(電気事業法〔昭和 3926年法律第170 号〕第17 条第1項)とされている。2713
一般送配電事業者は,電気小売事業者が契約している需要家に対し供給する1ための電気を託送することになるが,
その際,
必要な電柱の設置は,
一般送配電2事業者が行っている。3イ 事業用電気工作物を維持する義務4(ア) 私道に設置される電柱は,一般的に,一般送配電事業者が所有・管理して5いる。これらの電柱は,電気事業法における事業用電気工作物(同法第 386条第3項)であり,電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商7産業省令第52 号)における「支持物」に当たる(同省令第1条第15 号)。8
(イ) 一般送配電事業者は,
事業用電気工作物を経済産業省令で定める技術基準9に適合するように維持しなければならないとされているところ
(電気事業法10第39 条第1項),これを受けた電気設備に関する技術基準を定める省令にお11いては,
電柱を含む支持物の材料及び構造は,その支持物が支持する電線等12による引張荷重,風速 40 メートル毎秒の風圧荷重及び当該設置場所におい13て通常想定される気象の変化,
振動,
衝撃その他の外部環境の影響を考慮し,14倒壊のおそれがないよう,
安全なものでなければならない旨規定されている15(第32 条第1項)。16
また,一般送配電事業者は,電柱を含む事業用電気工作物の工事,維持及17び運用に関する保安を確保するため,
保安を一体的に確保することが必要な18事業用電気工作物の組織ごとに保安規程を定めて経済産業大臣に届け出た19上で,それを守らなければならないとされている(電気事業法第 42 条第120項,第4項)。21
したがって,一般送配電事業者は,私道に電柱を設置した場合,当然に電22柱の維持管理義務を負い,
それに必要な限度で私道を利用することが予定さ23れているといえる。24(3) 電柱等を私道に設置する場合の法律関係25ア 電気の需要家と一般送配電事業者との関係26電気の供給に関し,需要家が供給契約を締結するのは,小売電気事業者との間27であり,一般送配電事業者との間では契約関係がない。28一般送配電事業者が,需要家である一般家庭に電気を供給するため,私道に電29柱を設置するには,小売電気事業者からの供給申込みを受ける必要がある。30イ 電柱設置における一般的取扱い31一般送配電事業者が需要家のために私道に電柱を設置する際,実務においては,32電柱を設置する土地の地番を特定した上で,当該地番の土地の所有者から一般送3314
配電事業者が所有・管理する電柱の設置のために使用すること及びこれに対して1土地の使用料を支払うことにつき,
承諾を得た上で,
電柱設置工事を行っている。2私道所有者からの承諾は,一般的には,私道所有者から,一般送配電事業者宛3ての電柱設置に係る承諾書を受領することにより得ている。4一般送配電事業者は,この承諾に基づいて私道に電柱を設置し,それを経由し5て需要家に電気を供給している。6なお,電柱の取替え等を行う必要がある場合,一般送配電事業者は,私道内で7工事を行うことを承諾する旨の工事承諾書を私道所有者から受領し,それに基づ8いて私道を掘削した上で,電柱の取替え等をしている。9事業者と私道所有者との間で設定される電柱設置のための土地利用権の性質に10ついては,一般的には賃借権であり,その期間は,一般に,一般送配電事業者が11設備の設置を必要とする期間とされており,数十年にわたる長期間の利用も可能12とされている。13141515
○しろまる 導管関係等対照表★事例の改定内容が固まり次第更新予定1共同所有型 相互持合型 共同所有型 相互持合型 共同所有型 相互持合型
公共的導管
に接続
事例11
(給水管新設)
持分に応じた使用
→ 単独で可
事例12
(給水管新設)
地役権
→ 単独で可
事例19
(排水管新設)
持分に応じた使用
→ 単独で可
事例20
(排水管新設)
下水道法
→ 単独で可
私人導管
に接続
事例13
(給水管新設)
持分に応じた使用
→ 単独で可
事例14
(給水管新設)
地役権
→ 単独で可
事例13参照
持分に応じた使用
→ 単独で可
事例14,20参照
下水道法,地役権
→ 単独で可
事例21参照
管理に関する事項
→ 持分の過半数の
同意で可
事例22参照
設置部分の
各土地の所有者が
地方公共団体との間で
利用権設定必要
事例21
(公共下水管新設)
管理に関する事項
→ 持分の過半数の
同意で可
事例22
(公共下水管新設)
設置部分の
各土地の所有者が
地方公共団体との間で
利用権設定必要
事例23
(ガス管新設)
管理に関する事項
→ 持分の過半数の
同意で可
事例22参照
設置部分の
各土地の所有者が
事業者との間で
利用権設定必要
事例15
(給水管補修)
持分に応じた使用
→ 単独で可
事例16
(給水管補修)
明示又は黙示の合意
→ 単独で可
事例15参照
持分に応じた使用
→ 単独で可
事例16,20参照
下水道法
明示又は黙示の合意
→ 単独で可
事例17
(配水管取替え)
明示又は黙示の合意
→ 公共的導管の
設置・管理者単独で可
事例18
(配水管取替え)
明示又は黙示の合意
→ 公共的導管の
設置・管理者単独で可
事例17参照
明示又は黙示の合意
→ 公共的導管の
設置・管理者単独で可
事例18参照
明示又は黙示の合意
→ 公共的導管の
設置・管理者単独で可
事例24
(ガス管補修)
明示又は黙示の合意
→ 公共的導管の
設置・管理者単独で可
事例18参照
明示又は黙示の合意
→ 公共的導管の
設置・管理者単独で可
共同所有型 相互持合型
事例25
(電柱新設)
管理に関する事項
→ 持分の過半数の
同意で可
事例25参照
設置部分の
各土地の所有者が
事業者との間で
利用権設定必要
事例26
(電柱取替)
明示又は黙示の合意
→ 公共的導管の
設置・管理者単独で可
事例26参照
明示又は黙示の合意
→ 公共的導管の
設置・管理者単独で可
事例27
(電柱取替)
管理に関する事項
→ 持分の過半数の
同意で可
事例27参照
設置部分の
各土地の所有者が
事業者との間で
利用権設定必要
新 設
取 替
(隣接場所)
取 替
(同一場所) 補修・取替
私人導管の
補修・取替え
公共的導管の
補修・取替え
導管関係においては,導管の所有・管理者が誰か,接続先の導管が公共的導管か私人導管か,導管を設置する私道が共同所有型か相互持合
型かの各要素の組合せにより,それぞれの法律関係が決定されるが,導管の種類が異なっても,法律関係は同じ場合もある。
そこで,本ガイドラインにおいては,一般的に支障事例が多数生じていると考えられる代表的な類型の事例を取り上げ,それと同様の規律となる
ことが明らかな事例については,下記の対照表で結論のみを掲げ,考え方については,代表的な類型についての説明を参照できるようにしたの
で,適宜参照されたい。
なお,導管設置等の工事を私道所有者や公共導管設置・管理者単独で実施することができる類型の枠は水色で,私道の各所有者の持分の過
半数の同意で行うことができる類型の枠は黄色で,私道所有者全員の同意がなければ実施することができない類型の枠はピンク色で表示してい
る。
電 柱
ガ ス
(通常想定されない)
(通常想定されない)
(通常想定されない)
私人導管を
私道下に
設置 水 道 下 水 道
新設
公共的導管を
私道下に設置2316事例11 給水管の新設事例
〜給水管を配水管に接続(共同所有型)
1.私道の概要
・平成10年私道築造
・延長20m,幅4m(コンクリート舗装)
・➀〜4は,自己所有の給水管(下図紫色部分)を公道下の配水管と接続
2.権利関係等の概要
・1筆の私道(下図青枠内)を1〜5が共有(共有持分は各5分の1,2は所在等不明)
・5は自宅の新築に伴い,私道下に自己所有の給水管を設置し,公道下の配水管に接続する必要
あり
3.工事の概要
・工事の実施主体は5
・私道を掘削し,5所有の給水管(下図黄色部分)を設置して公道下の配水管と接続させ,路面を舗
装する
○しろまる 共同所有型私道を経由して給水管を公道下の配水管に接続する必要
があるが,共有者の一部が所在等不明で給水管設置工事の同意が得ら
れない事例
➀賛成
【概略図】
公道
配水管
2所在等不明5給水管
1〜5の
共同所有型私道
3賛成
4賛成1217事例11 給水管の新設事例1〜給水管を配水管に接続(共同所有型)23
事例のポイント4○しろまる 5の共有者が,
自己の宅地内に新たに水を引き込むため,
共同所有型私道下に給水5管を設置する。6○しろまる 工事の実施主体は,5の共有者である。7○しろまる アスファルト舗装された私道下に5の共有者が所有する給水管を設置するために,8必要な範囲でアスファルトを剥がして路面を掘削し,給水管を設置した後,路面まで9埋め戻し,再度アスファルト舗装する工事を実施する。1011
事例の検討12○しろまる 共有者は,共有物の全部について,その持分に応じた使用をすることができるため13(現行民法第249 条,新民法第249 条第1項)
,共同所有型私道について共有持分を14有する共有者は,それぞれ,その持分に応じて私道を使用することができる。15本事例では,5の共有者は,その持分に応じて私道を全部使用することができ,給16水管を設置することにより,
他の共有者が持分に応じた使用収益を侵害されるもので17はないと考えられるから,掘削工事を行うことについて,民法上,2の共有者の同意18を得る必要はない。192018事例12 給水管の新設事例
〜給水管を配水管に接続(相互持合型)
1.私道の概要
・平成10年私道築造
・延長20m,幅4m(コンクリート舗装)
・➀〜4は,自己所有の給水管(下図紫色部分)を公道下の配水管と接続
2.権利関係等の概要
・5筆の土地で構成される私道(下図青枠内)を1〜5が各1筆ずつ所有(2は所在等不明)
・5は自宅の新築に伴い,私道下に自己所有の給水管を設置し,公道下の配水管に接続する必要あり3.工事の概要
・工事の実施主体は5
・私道を掘削し,5所有の給水管(下図黄色部分)を設置して公道下の配水管と接続させ,路面を舗装○しろまる 相互持合型私道を経由して給水管を公道下の配水管に接続する必要が
あるが,所有者の一部が所在等不明で給水管設置工事の同意が得られな
い事例
➀賛成
【概略図】
公道
配水管
2所在等不明51所有
3賛成
4賛成
5所有
4所有
2所有
給水管
3所有1191事例12 給水管の新設事例2〜給水管を配水管に接続(相互持合型)3事例のポイント4○しろまる 相互持合型私道に接した宅地を所有する者が,当該宅地内に水を引き込むための給5水管を設置する。6○しろまる 宅地に水を引き込むには,他人の所有する通路敷の下に給水管を設置する以外には7方法がない。8○しろまる アスファルト舗装された私道下に5の所有者が所有する給水管を設置するために,9必要な範囲でアスファルトを剥がして路面を掘削し,給水管を設置した後,路面まで10埋め戻し,再度アスファルト舗装する工事を実施する。11○しろまる 工事の実施主体は,5の所有者である。1213
事例の検討14○しろまる 私道下に給水管が設置されている場合,私道を構成する土地の提供者は,相互に,15地上の通行だけではなく,
通路の地下に,
公道に設置されている配水管に接続するた16めの給水管を設置することを明示又は黙示に承諾していたものと考えられる。17したがって,このような場合には,新たに給水管を設置する者(5)に対する関係18においても,
私道の地下に給水管の設置を目的とする地役権(民法第280 条)が明示19又は黙示に設定されていると解され,
5の所有者は,
給水管を設置することができる20と考えられる。21○しろまる なお,他の土地を経由しなければ,水道事業者の設置した配水管から宅地に給水を22受けることができないいわゆる導管袋地については,
他の土地に囲まれて公道に通じ23ない土地(袋地)の所有者の通行権(囲繞地通行権)に関する民法第210 条から第24213 条までの類推適用により,他人の土地の使用が認められる場合もある。25○しろまる また,新民法においては,土地の所有者は,他の土地に設備を設置し,又は他人が26所有する設備を使用しなければ水道水の供給等の継続的給付を受けることができな27いときは,
他の土地等の所有者に対する通知を行った上で,
当該継続的給付を受ける28ために必要な範囲内で,
他の土地に設備を設置し,
又は他人が所有する設備を使用す29ることができることとされている(新民法第213 条の2第1項及び第3項)。3020本事例では,
5の所有者は,
他人の所有する通路敷の下に給水管を設置する以外に1宅地に水を引き込む方法がないため,
1〜4の同意を得なくとも,
通知を行った上で,2給水管を用いた水道の継続的給付を受けるために必要な限度で給水管を1〜4の所3有する土地に設置することができる。
この場合,
所在等が不明である2の所有者に対4しては,公示による意思表示をもって,通知を行うことになる(民法第98 条)。5
○しろまる 設備設置権・設備使用権を有する者は,設備を他の土地に設置し又は他人が有する6設備を使用するために,
当該他の土地や当該他人が所有する設備がある土地を使用す7ることができる。この場合においては,新民法第213 条の2第4項により,隣地使用8権に関する新民法第209 条第1項ただし書及び第2項から第4項までの規定が準用9される。詳細については前記のコラム:新民法4を参照されたい。101121事例13 給水管の新設事例
〜給水管を共有給水管に接続(共同所有型)
1.私道の概要
・昭和60年私道築造
・延長30m,幅4m(コンクリート舗装)
・私道下には,私道開設と同時に,2〜4の共有給水管(下図紫色部分の黒点線枠内)が設置され,
2〜4は,自己所有の給水管を共有給水管に接続(1,6〜➇は公道に自己所有の給水管を接続)2.権利関係等の概要
・1筆の私道(下図青枠内)を1〜6が共有(共有持分は➀〜3,6が各5分の1,4と5は各10分
の1,6は所在等不明)
・4は,下図緑枠内の土地を所有していたが,分筆して一部を5に譲渡するとともに,自己の私道の
持分の半分を5に譲渡
・5は自宅の新築に伴い,私道下に自己所有の給水管を設置し,2〜4の共有給水管に接続する
必要あり
3.工事の概要
・工事の実施主体は5
・私道を掘削し,5所有の給水管(下図黄色部分)を設置して2〜4の共有給水管と接続させ,路面
を舗装する
○しろまる 共同所有型私道下に給水管を新設し,共有給水管に接続する必要があるが,共有
者の一部が所在等不明で給水管設置工事の同意が得られない事例
2〜4の
共有給水管
1〜6の
共有私道
【概略図】
公道
配水管
配水管
6所在等不明
➇(私道の持分なし)
7(私道の持分なし)13254公道
2〜4の
共有給水管
➀〜➅の
共同所有型
私道1221事例13 給水管の新設事例2〜給水管を共有給水管に接続(共同所有型)34
事例のポイント5○しろまる 5の私道共有者が,
自己の宅地内に新たに水を引き込むため,
共同所有型私道下に6給水管を設置する。7○しろまる 私道の地下には,
公道に設置された配水管に直結する共有給水管が設置されている。8給水管の共有者は,
2〜4の私道共有者であり,
5の私道共有者が共有給水管に給水9管を接続することについても同意している。10○しろまる 工事の実施主体は,5の私道共有者である。11○しろまる アスファルト舗装された私道下に5の私道共有者が所有する給水管を設置するた12めに,必要な範囲でアスファルトを剥がして路面を掘削し,給水管を設置した後,路13面まで埋め戻し,再度アスファルト舗装する工事を実施する。1415
事例の検討16○しろまる 共有者は,共有物の全部について,その持分に応じた使用をすることができるため17(民法第249 条,新民法第249 条第1項)
,共同所有型私道について共有持分を有す18る共有者は,それぞれ,その持分に応じて私道を使用することができる。19本事例では,
5の私道共有者は,
その持分に応じて私道を全部使用することができ20るから,掘削工事を行うことについて,民法上,6の私道共有者の同意を得る必要は21ない。22○しろまる また,2〜4の私道共有者の共有給水管に,5の私道共有者が給水管を接続する工23事については,2〜4の私道共有者の同意が得られている。24○しろまる なお,民法第220 条及び第221 条の類推適用により,共有給水管を使用することが25できるものと考えられる(
【事例14】参照)。26
○しろまる 新民法の下では,5の私道共有者は,2〜4の共有給水管に接続しなければ水道の27供給を受けられないときには,2〜4の共有者に通知を行った上で,当該水道の供給28を受けるために必要な範囲内で,
2〜4の共有給水管に自己の給水管を接続して給水29管を使用することができる(新民法第213 条の2第1項及び第3項)
。共有給水管の3023
共有者の一部が所在不明である場合,所在等不明の共有者に対しては,公示による意1思表示によって通知を行うことになる(民法第98 条)。234524
事例14 給水管の新設事例
〜給水管を共有給水管に接続(相互持合型)
1.私道の概要
・昭和60年私道築造
・延長30m,幅4m(コンクリート舗装)
・私道下には,私道開設と同時に2〜4の共有給水管(下図紫色部分の黒点線枠内)が設置され,
2〜4は,自己の給水管を共有給水管に接続(1,6〜➇は公道に自己所有の給水管を接続)
2.権利関係等の概要
・6筆の土地で構成される私道(下図青枠内)を1〜6が1筆ずつ所有(6は所在等不明)
・4は,下図緑枠内の土地を所有していたが,分筆して一部を5に譲渡するとともに,私道部分に有し
ていた2筆の土地のうちの1筆分を5に譲渡
・5は自宅の新築に伴い,6の土地下に自己所有の給水管を設置し,2〜4の共有給水管に接続
する必要あり
3.工事の概要
・工事の実施主体は5
・6所有の土地を掘削し,5所有の給水管を設置して2〜4の共有給水管と接続させ,路面を舗装
○しろまる 相互持合型私道に隣接する宅地の居住者が,他人の土地である私道下
に給水管を新設し,共有給水管に接続する必要があるが,土地所有者が
所在等不明で給水管設置工事の同意が得られない事例
1所有
6所有
2所有23所有
【概略図】 公道
公道
配水管
配水管45所有
4所有
➇(私道の持分なし)
7(私道の持分なし)12〜4の
共有給水管
6所在等不明351225事例14 給水管の新設事例12
〜給水管を共有給水管に接続(相互持合型)34
事例のポイント5○しろまる 相互持合型私道に接した宅地を所有する者が,当該宅地内に水を引き込むための給6水管を設置する。7○しろまる 宅地に水を引き込むには,他人の所有する通路敷の下に給水管を設置する以外には8方法がない。9○しろまる 私道の地下には,他の宅地の所有者が共有する給水管が設置されている。10○しろまる 工事の実施主体は,5の所有者である。11○しろまる アスファルト舗装された私道下に5の所有者が所有する給水管を設置するために,12必要な範囲でアスファルトを剥がして路面を掘削し,給水管を設置した後,路面まで13埋め戻し,再度アスファルト舗装する工事を実施する。1415
事例の検討16○しろまる 現行民法下の判例では,宅地の所有者は,他の土地を経由しなければ,水道事業者17の設置した配水管から宅地に給水を受けることができない場合において,
他人の給水18設備を給水のため使用することが他の方法に比べて合理的であるときは,
その使用に19より当該給水設備に予定される効用を著しく害するなどの特段の事情のない限り,民20
法第 220 条及び第 221 条の類推適用により,
当該給水設備を使用することができると21されている(最高裁判所平成 14 年 10 月 15 日第三小法廷判決・民集 56 巻8号 179122頁参照)
。そのため,5の所有者は,6の所有者の同意がなくても,給水管の設置の23ために6の所有者の通路敷を使用することができると考えられる。24○しろまる また,自己の宅地内に水を引き込むための給水管を,他人が共有する給水管に接続25するために,他人が所有する隣地を使用せざるを得ない場合には,給水管の設置とい26う生活に不可欠の導管を設置する必要性の観点から,
袋地利用を確保するための相隣27関係の規定である民法第 210 条から第 213 条の類推適用により,
他人の土地の使用が28認められる場合があると考えられる。29○しろまる また,私道下に給水管が設置されている場合,通路敷となる土地の提供者は,相互30に,地上の通行だけではなく,通路敷の地下に,公道に設置されている配水管に接続3126
するための給水管を設置することを明示又は黙示に承諾していたものと考えられる。1したがって,このような場合には,新たに給水管を設置する者(5)に対する関係2においても,通路敷の地下に給水管の設置を目的とする地役権(民法第 280 条)が明3示又は黙示に設定されたと考えられ,地役権に基づき給水管を設置することもできる4と考えられる。5○しろまる 新民法においては,土地の所有者は,他の土地に設備を設置し又は他人が所有する6設備を使用しなければ水道水の供給等の継続的給付を受けることができないときは,7他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に対する通知を行った上で,8当該継続的給付を受けるために必要な範囲内で,
他の土地に設備を設置し,
又は他人9が所有する設備を使用することができることとされた
(民法第 213 条の2第1項及び10第3項)。11
そのため,5の所有者は,6の所有者及び私道を現に使用していると評価できる者12に対して通知(所在等不明の6の所有者に対しては公示による意思表示での通知)を13行った上で,設備設置権に基づき,給水管の設置のために6の所有者の通路敷を使用14することができる。また,5の所有者は,2〜4の同意がなくとも,これらの者に対15して通知を行った上で,設備使用権に基づき,5の所有者が所有する給水管を2〜416の共有給水管に接続して使用することができる。17○しろまる 新民法では,設備設置権・設備使用権を有する者は,設備を他の土地に設置し又は18他人が有する設備を使用するために,
当該他の土地や当該他人が所有する設備がある19土地を使用することができることについては,事例 12 を参照されたい。202122(参考)23○しろまる最高裁判所平成 14 年10 月 15 日第三小法廷判決・民集 56 巻8号 1791 頁24宅地を所有する者(X)が,宅地内に水を引き込み,また,下水を公流又は下水道25等まで排出するため,市道に設置された他人(Y)所有の給排水設備を使用すること26の承諾を求めた事案についてのもの。最高裁判所は,宅地の所有者が,他の土地を経27由しなければ,
水道事業者の敷設した配水管から当該宅地に給水を受け,
その下水を28公流又は下水道等まで排出することができない場合において,
他人の設置した給排水29設備をその給排水のため使用することが他の方法に比べて合理的であるときは,
その30使用により当該給排水設備に予定される効用を著しく害するなど特段の事情のない31限り,
民法第 220 条及び第 221 条の類推適用により,
当該給排水設備を使用すること32ができるものと解するのが相当であると判示し,
YはXによる当該給排水設備の使用3327
を受忍すべきであるとした。12328
事例15 給水管の補修事例(共同所有型)
1.私道の概要
・平成5年私道築造(アスファルト舗装)
・延長12m,幅約4m
・1〜3は,私道開設と同時に,自己所有の給水管を公道下の配水管に接続
・2所有の給水管が損傷しており,補修の必要がある
2.権利関係等の概要
・1筆の私道(下図青枠内)を1〜3が共有(共有持分は各3分の1, 1は所在等不明)
・公道下の配水管は水道事業者所有
・給水管(下図紫色部分)は1〜3がそれぞれ所有
3.工事の概要
・工事の実施主体は2
・私道の一部を掘削し,➁所有の給水管を補修後,埋め直して路面の一部(×ばつ4m=12m2)をアス
ファルト舗装
○しろまる 共同所有型私道の地下に設置されている給水管から漏水したため,共同
所有型私道を掘削し,給水管を修復する必要が生じたが,共有者の一部が
所在等不明のため,工事の同意を得られない事例。
破損箇所
配水管【概略図】
公道
公道
1所在等不明
2賛成
3賛成
要舗装箇所
配水管
1〜3の
共同所有型私道
3賛成
要補修箇所1229事例15 給水管の補修事例(共同所有型)1事例のポイント2○しろまる 共同所有型私道の地下に設置された給水管が破損して漏水している。3○しろまる 工事の実施主体は,2の共有者である。4○しろまる 共同所有型私道の路面を掘削し,地中に設置されている給水管を補修した後,路面5まで埋め戻し,再度アスファルト舗装する工事を実施する。67
事例の検討8○しろまる 私道の共有者は,共有物の全部について,その持分に応じた使用をすることができ9るため(現行民法第 249 条,新民法第 249 条第1項)
,一般に,共同所有型私道の下10に給水管を設置することができる。11○しろまる そして,当該給水管に損傷が生じた場合には,持分に応じた土地の使用として,設12置した給水管の損傷を補修するために必要な工事を行うことができる。13○しろまる 本事例においては,2の共有者は,共同所有型私道下に設置した自己所有の給水管14を補修するため,持分に応じた使用として,1の共有者の同意がなくても,工事を行15うことができるものと考えられる。1617181930事例16 給水管の補修事例(相互持合型)
1.私道の概要
・平成5年私道築造(アスファルト舗装)
・延長12m,幅約4m
・1〜3は,私道開設と同時に,自己所有の給水管を公道下の配水管に接続
・2所有の給水管が損傷しており,補修の必要がある
2.権利関係の概要
・3筆の土地で構成される私道(下図青枠内)を1〜3が各1筆ずつ所有(1は所在等不明)
・公道下の配水管は水道事業者所有
・給水管(下図紫色部分)は1〜3がそれぞれ所有
3.工事の概要
・工事の実施主体は2
・私道の一部を掘削し,➁所有の給水管を補修後,路面の一部(×ばつ4m=12m2)をアスファルト舗装
○しろまる 相互持合型私道の地下に設置されている給水管から漏水したため,私道
を掘削し,給水管を修復する必要が生じたが,所有者の一部が所在等不明
のため,工事の同意を得られない事例。
破損箇所
配水管【概略図】
公道
公道
1所在等不明
2賛成
3賛成
配水管
3所有 2所有
要舗装箇所
要補修箇所
1所有1311事例16 給水管の補修事例(相互持合型)2事例のポイント3○しろまる 相互持合型私道が築造されたのと同時に,私道下に1〜3がそれぞれ所有する給水4管が設置され,現在に至るまで使用されている。5○しろまる 相互持合型私道の地下に設置された給水管が破損して漏水している。6○しろまる 工事の実施主体は,2の所有者である。7○しろまる 相互持合型私道の路面を掘削し,地中に設置されている給水管を補修した後,路面8まで埋め戻し,再度アスファルト舗装する工事を実施する。9事例の検討10○しろまる 相互持合型私道においては,特段の合意がない場合,それぞれの所有土地部分を要11役地とし,互いの所有地部分を他方の通行のための承役地とする地役権(民法第 28012条)が黙示に設定されていることが多い。また,地役権の内容は,設定行為によると13ころ,敷地内に建物を建てるのと同時に通路(私道)を開設するとともに,給水管も14設置していたような場合には,土地の提供者は,相互に,私道の地下に各土地の所有15者の自宅敷地内に水を引き込むための給水管を設置して私道下を利用することを内16容とする地役権(民法第 280 条)を明示又は黙示に設定したと考えるのが合理的であ17る。18○しろまる 私道下の給水管(導管)の設置を目的とする地役権が設定されていると考えられる19場合に,本事例のように,給水管が損傷して漏水し,その利用が阻害されているとき20には,要役地所有者(2の所有者)は,私道下の給水管の利用を確保するために補修21工事を実施することができ,承役地所有者(1の所有者)はこれを受忍すべき義務を22負うと考えることができる。23○しろまる 新民法においては,土地の所有者は,他の土地に設備を設置しなければ水道水の供24給などの継続的給付を受けることができない場合には,
通知を行った上で,
当該他の25土地に設備を設置することができ,
また,
当該設置のために当該他の土地を使用する26ことができるとされている(新民法第 213 条の2第1項,第3項及び第4項)
。ここ27でいう設備の設置は,
設備の新設だけでなく,
既設の設備の取替えや補修を含むもの28と解される。29他の土地を経由しなければ,水道事業者の設置した配水管から宅地に給水を受ける30ことができないいわゆる導管袋地については,他の土地に囲まれて公道に通じる土地31(袋地)の所有者の通行権(囲繞地通行権)に関する民法第 210 条から第 213 条まで3232
の類推適用により,他人の土地の使用が認められる場合もある。1○しろまる 新民法においては,設備設置権・設備使用権を有する者は,設備を他の土地に設置2し又は他人が有する設備を使用するために,
当該他の土地や当該他人が所有する設備3がある土地を使用することができることについては,事例 12 を参照されたい。4533事例17 配水管の取替事例(共同所有型)
1.私道の概要
・昭和44年私道築造(アスファルト舗装)
・延長20m,幅約5.5m
・私道下には配水管(昭和44年布設)が設置されているが,老朽化している
・配水管の老朽化により耐力が低下し,破損・損傷による水質悪化,漏水の危険がある
2.権利関係等の概要
・1筆の私道(下図青枠内)を1〜➇が共有(共有持分は各8分の1, 7は所在等不明)
・私道下の配水管(赤点線部分)は水道事業者所有
・給水管(下図紫色部分)は1〜8がそれぞれ所有
3.工事の概要
・工事の実施主体は水道事業者
・路面を掘削して老朽化した配水管を取り替えた後,路面全体をアスファルト舗装
○しろまる 共同所有型私道の地下に設置されている配水管が老朽化したため,路面
を掘削し,配水管を取り替える必要が生じたが,共有者の一部が所在等不明
のため,工事の同意が得られない事例。3賛成
5賛成
【概略図】
6賛成 7所在等不明 8賛成
1賛成 2賛成 3賛成 4賛成
配水管
配水管
1〜➇の
共同所有型私道
公道
公道
配水管1341事例17 配水管の取替事例(共同所有型)2事例のポイント3○しろまる 共同所有型私道が築造されたのと同時期に,私道下に水道事業者が所有・管理する4配水管が設置され,現在に至るまで使用されている。5○しろまる 私道下に設置されている配水管が老朽化することにより,配水管の耐力が低下し,6破損・損傷による,漏水の危険が生じるため,配水管を管理する水道事業者は,配水7管の補修・取替えを行う必要がある。8○しろまる 工事の実施主体は,水道事業者である。9○しろまる 共有私道の路面を掘削し,地中に設置されている配水管を取り替えた後,路面まで10埋め戻し,再度アスファルト舗装する工事を実施する。1112
事例の検討13○しろまる 水道事業者(市町村等)は,配水管を設置する際,通常,私道の共有者全員の同意14を得て,配水管の設置のため地下を利用する権利の設定を受けている。また,水道事15業者は,
配水管設置のための地下の利用権の設定を受ける際,
配水管の補修・取替え・16撤去のための私道の利用についての承諾をあらかじめ得ることによって,
工事につい17て合意していることが多い。18○しろまる 私道の共有者全員の承諾書が存在しない場合でも,共有者は配水管を通じて水の供19給を継続的に受けているのであり,配水管の設置・補修等につき,共同所有する私道20の利用権が黙示に設定されたと認められることが多い。21○しろまる また,水道事業者は水道施設である配水管が耐力を有し,水が汚染され,かつ,漏22れるおそれのないようにすべき責務がある。23○しろまる 本事例において,水道事業者は,7の共有者を含む私道共有者の合意に基づき,配24水管の取替工事をすることができ,私道共有者は,工事を受忍すべき義務を負うもの25と考えられる。26○しろまる なお,
本事例において,
共有者の一部が工事の実施について反対しているケースや,27賛否を明らかにしないケースにおいても,1〜8の共有者にとって,共有地中に設置28された配水管の工事を行うことに同意することは,
共有地である私道の性質を変えな29い範囲内において,
その状態の改良を行う行為であると考えられるから,
一般的には,30共有物の管理に関する事項に当たり(現行民法第 252 条,新民法第 252 条第1項),3135共有者らは,
持分の過半数の同意により配水管の取替工事に同意することができるも1のと考えられる。そのため,水道事業者は,1〜8の共有者の持分の過半数の同意を2得て,工事を実施することができる。3共有者の一部に所在不明者や賛否不明者がいるために1〜8の共有者の持分の過半4数が確保できない場合であっても,新民法の下では,当該所在不明共有者等以外の共5有者は,所在不明共有者等以外の共有者による管理の裁判を得ることにより,所在等6不明共有者等を除いた残りの共有者の持分の過半数で決定して,工事に同意すること7ができる(新民法第 252 条第2項第1号及び第2号)。8936
事例18 私道下の配水管を取り替える事例(相互持合型)
1.私道の概要
・昭和44年私道築造(アスファルト舗装)
・延長20m,幅約5.5m
・私道下には配水管(昭和44年布設)が設置されているが,老朽化している
・配水管の老朽化により耐力が低下し,破損・損傷による水質悪化,漏水の危険がある
2.権利関係の概要
・8筆の土地で構成される私道(下図青枠内)を1〜➇が各1筆ずつ所有(7は所在等
不明)
・私道下の配水管(赤点線部分)は水道事業者所有
・給水管(下図紫色部分)は1〜8がそれぞれ所有
3.工事の概要
・工事の実施主体は水道事業者
・路面を掘削して老朽化した配水管を取り替えた後,路面全体をアスファルト舗装
○しろまる 相互持合型私道の地下に設置されている配水管が老朽化したため,路面
を掘削し,配水管を取り替える必要が生じたが、所有者の一部が所在等不
明のため,工事の同意が得られない事例。3賛成
5賛成
【概略図】
6賛成 7所在等不明 8賛成
1賛成 2賛成 3賛成 4賛成
6所有
3所有
8所有
5所有
2所有
4所有
7所有
1所有
公道
公道
配水管
配水管
配水管1237事例18 私道下の配水管を取り替える事例(相互持合型)1事例のポイント2○しろまる 相互持合型私道が築造されたのと同時期に,私道下に水道事業者が所有・管理する3配水管が設置され,現在に至るまで使用されている。4○しろまる 私道下に設置されている配水管が老朽化することにより,配水管の耐力が低下し,5破損・損傷による漏水の危険が生じるため,配水管を管理する水道事業者は,配水管6の補修・取替えを行う必要がある。7○しろまる 工事の実施主体は,水道事業者である。8○しろまる 私道の路面を掘削し,地中に設置されている配水管を取り替えた後,路面まで埋め9戻し,再度アスファルト舗装する工事を実施する。1011
事例の検討12○しろまる 水道事業者は配水管を設置する際,通常は,私道の所有者全員の同意を得て,配水13管の設置のため地下を利用する権利の設定を受けている。また,水道事業者は,配水14管設置のための地下の利用権の設定を受ける際,配水管の補修・取替え・撤去のため15の私道の利用についての承諾をあらかじめ得ることによって,工事について合意して16いることが多い。17○しろまる 私道の所有者全員の承諾書が存在しない場合でも,私道の各所有者は,水道事業者18が設置する配水管を通じて水の供給を継続的に受けているのであり,
私道の各所有者19は,水道事業者に対し,配水管を設置するための土地の利用権を黙示に設定したもの20と認められることが多い。21○しろまる また,水道事業者は水道施設である配水管が耐力を有し,水が汚染され,かつ,漏22れるおそれのないようにすべき責務がある。23○しろまる 本事例において,地方公共団体は,7の通路敷所有者を含む私道所有者の合意に基24づき,配水管の取替工事をすることができ,私道所有者は,工事を受忍すべき義務を25負うものと考えられる。26○しろまる なお,配水管の設置について,7の所有者による明示又は黙示の合意が認められな27い場合であっても,水道事業者は,裁判所に対して,7の所有者について不在者財産28管理人等の選任申立てを行うか,
又は7の通路敷を対象とする所有者不明土地管理命29令の申立てを行い(民法第 264 条の2第1項)
,選任された管理人に対して,配水管30の取替工事の実施に係る承諾を求めることも考えられる。3313 当該私道の所在する市町村が水道事業者である場合には,当該市町村の長は,所有者381
不明土地の適切な管理のため特に必要があると認められるときは,利害関係の有無を問
わず,
管理人の選任等の請求をすることができる
(所有者不明土地特措法第 38 条第1項
及び第2項)。39
事例19 私有排水管の新設事例(共同所有型)
1.私道の概要
・平成9年私道築造(アスファルト舗装)
・延長18m,幅約4.5m
・公共下水道の排水区域内
・7は,自宅の新築に伴い,私道下に排水管を設置して公道下の公共下水管に接続し
なければ,宅地の下水を公共下水管に流入させることが困難
2.権利関係等の概要
・1筆の私道(下図青枠内)を1〜➆が共有(共有持分は各7分の1,➀は所在等不明)・私道下の排水管は2,3,5,6がそれぞれ所有
・公共下水管は地方公共団体所有
3.工事の概要
・工事の実施主体は7
・路面を掘削して,7所有の汚水枡を地方公共団体所有の公共下水管に接続し,路
面を埋め戻して,必要な限度でアスファルト舗装
○しろまる 共同所有型私道下に排水管を設置したいが,共有者の一部が所在等不
明で工事の同意を得られない事例。
【概略図】
4賛成 6賛成
5賛成
1所在等不明 2賛成 3賛成71〜➆の
共同所有型私道
公共下水管
汚水枡
公共下水管
公道
排水管1401事例19 私有排水管の新設事例(共同所有型)2事例のポイント3○しろまる 公共下水道の排水区域内である。4○しろまる 工事の実施主体は,7の共有者である。5○しろまる アスファルト舗装された私道下に7の共有者が所有する排水管を設置するために,6必要な範囲でアスファルトを剥がして路面を掘削し,排水管を設置した後,再度アス7ファルト舗装する工事を実施する。8事例の検討9○しろまる 共有者は,共有物の全部について,その持分に応じた使用をすることができるため10(現行民法第 249 条,新民法第 249 条第1項)
,共同所有型私道について共有持分を11有する共有者は,それぞれ,その持分に応じて私道を使用することができる。12本事例では,7の共有者は,その持分に応じて私道を全部使用することができるか13ら,掘削工事を行うことについて,民法上,1の共有者の同意を得る必要はない。1415161718192021222324252627282930314112342事例20 私有排水管の新設事例(相互持合型)
1.私道の概要
・平成9年私道築造(アスファルト舗装)
・延長18m,幅約4.5m
・公共下水道の排水区域内
・7は,自宅の新築に伴い,私道下に排水管を設置して公道下の公共下水管に接続し
なければ,宅地の下水を公共下水管に流入させることが困難
2.権利関係等の概要
・7筆の土地で構成される私道(下図青枠内)を1〜 7が各1筆ずつ所有( 1は所在
等不明)
・私道下の排水管は2,3,5,6がそれぞれ所有
・公共下水管は地方公共団体所有
3.工事の概要
・工事の実施主体は7
・路面を掘削して,7所有の汚水枡を地方公共団体所有の公共下水管に接続し,路
面を埋め戻して,必要な限度でアスファルト舗装
○しろまる 相互持合型私道下に排水管を設置したいが,所有者の一部が所在等不
明で工事の同意を得られない事例。
【概略図】
4賛成 6賛成
5賛成
1所在等不明 2賛成 3賛成71
公共下水管
汚水枡
公共下水管
公道
排水管
➀所有
2所有
3所有
4所有
5所有 ➅所有 ➆所有1243事例20 私有排水管の新設事例(相互持合型)1事例のポイント2○しろまる 公共下水道の排水区域内である。3○しろまる 私道に隣接する宅地の所有者は,他人の所有する通路敷の地下に排水管を設置4して私道下の公共下水管に接続させなければ,宅地の下水を公共下水道に流入さ5せることが困難である。6○しろまる 工事の実施主体は,7の所有者である。7○しろまる アスファルト舗装された私道下に7が所有する排水管を設置するために,必要8な範囲でアスファルトを剥がして路面を掘削し,排水管を設置した後,再度アス9ファルト舗装する工事を実施する。1011
事例の検討12○しろまる 公共下水道の供用が開始された場合には,原則として,当該公共下水道の排水13区域内の土地の所有者は,遅滞なく,その土地の下水を公共下水道に流入させる14ために必要な排水管,排水渠その他の排水施設(以下「排水設備」という。)を15
設置しなければならないとされている(下水道法第 10 条第1項)。16
○しろまる 下水道法第 10 条第1項により排水設備を設置しなければならない者は,
他人の17土地又は排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難18であるときは,他人の土地に排水設備を設置し,又は他人の設置した排水設備を19使用することができるとされており(下水道法第 11 条第1項)
,この場合,他人20の土地又は排水設備にとって最も損害の少ない場所又は箇所及び方法を選ばな21ければならない(下水道法第 11 条第1項)。22
○しろまる 下水道法第 11 条第1項の規定により他人の土地に排水設備を設置することが23できる者は,当該排水設備の設置をするためやむを得ない必要があるときは,他24人の土地を使用することができ,この場合においては,あらかじめその旨を当該25土地の占有者に告げなければならないが(下水道法第 11 条第3項)
,当該土地の26所有者の同意を得なくても排水設備を設置することができる。27○しろまる 本事例においては,7の所有者は,1の所有者が所有する私道部分の下の公共28下水管に接続させなければ公共下水道に下水を流入させることが困難であるから,29下水道法第 11 条第1項に基づき,
1の所有者の同意を得ることなく,
当該私道に30とって最も損害の少ない場所又は箇所及び方法によって私道下に公共下水管に接31続させる排水管を設置することができる。32なお,
私道に排水管を設置するための私道の使用により他人に損失を与えた場33合においては,その者に対し,通常生ずべき損失を補償しなければならないとさ34れている(下水道法第 11 条第4項)。353644
事例21 公共下水管の新設事例(共同所有型)
○しろまる 下水道設置のため,共同所有型私道を掘削して地下に公共下水管を新
設し,アスファルトで再舗装する事例。
1.私道の概要
・平成5年築造(アスファルト舗装)
・延長40m,幅4m
・これまで排水区域外であったため,下水道が普及しておらず,2〜➆,9,➉は浄化
槽を利用
・新たに排水区域指定され,下水管を整備する必要
2.権利関係等の概要
・1筆の私道(下図青枠内)を1〜➉が共有(共有持分は各10分の1 ,3は所在等不
明 )
・公共下水管は全て地方公共団体所有
・私道共有者は,地方公共団体との間で,公共下水管(下図赤点線部分)設置のため
の利用権設定契約を締結したい
3.工事の概要
・工事の実施主体は地方公共団体
・必要な範囲で路面を掘削し,私道下に公共下水管を布設し,再度路面をアスファルト
舗装
公道
【概略図】
➅賛成 ➆賛成
11賛成
1〜11の共有私道
公共下水管
5賛成
1賛成
2賛成
3所在等不明 4賛成
➇賛成
9賛成
➉賛成
1〜10の
共同所有型私道
公共下水管
汚水枡1245事例21 公共下水管の新設事例(共同所有型)1事例のポイント2○しろまる 私道沿いの各居宅は,汚水処理のために浄化槽を利用しており,私道下に排水3管は設置されていなかった。4○しろまる 地方公共団体は,通常,私道下には公共下水管を設置しないが,下水道事業に5おける下水管整備の一環として,
私道所有者全員から同意が得られた場合等の一6定の条件の下で,地方公共団体の負担で公共下水管を設置することがある。7○しろまる 工事の実施主体は,地方公共団体である。8○しろまる アスファルト舗装された私道下に公共下水管を設置するために,
必要な範囲で9アスファルトを剥がして路面を掘削し,公共下水管を設置した後,再度アスファ10ルト舗装する工事を実施する。11○しろまる 地方公共団体は,私道下に公共下水管を設置するために,私道の所有者との間12で公共下水管を設置するための利用権設定契約を締結し,
長期間土地を使用する。1314
事例の検討15○しろまる 市町村等が私道の地下に公共下水管を設置する際には,一般に,私道の所有者16との間で,
公共下水管を設置するために地下を利用する権利を設定する契約を締17結している。設定される利用権の法的性質は一様ではないようであるが,一般に18このような利用権を設定する際には,契約期間は定まっていないものの,数十年19にわたる長期間の利用が予定されている。20○しろまる 市町村等が私道下に公共下水管を設置する場合,
市町村等が公共下水管の改築,21修繕,維持その他の管理を行うこととなり(下水道法第3条)
,公共下水道を良22好な状態に保つように維持し,修繕する等の義務を負い(下水道法第7条の2,23同法施行令第5条の 12)
,私道が公共の管理に服することとなる。24○しろまる もっとも,公共下水管を私道の地下に設置した場合には,私道の地下の状態は25物理的に変更されるものの,一般的に,私道の機能についての変更は生じないこ26とや,私道共有者自身も公共下水管を使用することからすると,私道の地下に公27共下水管を設置する行為は,共有物の管理に関する事項に当たり,共有者の持分28の過半数で決する(現行民法第 252 条本文,新民法第 252 条第1項)。29
したがって,持分の過半数の共有者の同意により,公共下水管の設置工事を行30うことができるから,民法上は,3以外の共有者の同意に基づいて工事を行うこ31とができるものと考えられる。32○しろまる なお,本事例において,共有者の一部が工事の実施について反対しているケー33スや,賛否を明らかにしないケースにおいても,工事の実施主体である地方公共34団体は,1〜10の共有者の持分の過半数の同意を得て,公共下水管の設置工事を35実施することができる(新民法第 252 条第1項)。36
なお,共有者の一部に所在等不明者や賛否不明者がいるために1〜10の共有者37の持分の過半数が確保できない場合であっても,新民法の下では,所在等不明共3846
有者以外の共有者による管理の裁判や賛否不明共有者以外の共有者による管理の1裁判を得ることにより,所在等不明共有者等を除いた残りの共有者の持分の過半2数で決定して,工事に同意することができる(新民法第 252 条第2項第1号及び3第2号)。4547
事例22 公共下水管の新設事例(相互持合型)
○しろまる 下水道設置のため,相互持合型私道を掘削して地下に公共下水管を新
設し,アスファルトで再舗装する事例。
1.私道の概要
・平成5年築造(アスファルト舗装)
・延長40m,幅4m
・これまで排水区域外であったため,下水道が普及しておらず,2〜➆,9,➉は浄化
槽を利用
・新たに排水区域指定され,下水管を整備する必要
2.権利関係等の概要
・10筆の土地で構成される私道(下図青枠内を1〜10が所有 ,3は所在等不明 )
・公共下水管は全て地方公共団体所有
・私道所有者は,地方公共団体との間で,公共下水管(下図赤点線部分)設置のため
の利用権設定契約を締結したい
3.工事の概要
・工事の実施主体は地方公共団体
・必要な範囲で路面を掘削し,私道下に公共下水管を布設し,再度路面をアスファルト
舗装
公道
【概略図】
6賛成 7賛成
11賛成
1〜11の共有私道
公共下水管
5賛成
1賛成
2賛成
3所在等不明 4賛成
➇賛成
9賛成
10賛成
公共下水管
汚水枡
➉所有
9所有
➇所有
➆所有
➅所有
3所有
➀所有
2所有
4所有
5所有1248事例22 公共下水管の新設事例(相互持合型)1事例のポイント2○しろまる 私道沿いの各居宅は,汚水処理のために浄化槽を利用しており,私道下に排水管は3設置されていなかった。4○しろまる 地方公共団体は,通常,私道下には公共下水管を設置しないが,下水道事業におけ5る下水道管整備の一環として,
私道所有者全員から同意が得られた場合等の一定の条6件の下で,地方公共団体の負担で公共下水管を設置することがある。7○しろまる 工事の実施主体は,地方公共団体である。8○しろまる アスファルト舗装された私道下に公共下水管を設置するために,必要な範囲でアス9ファルトを剥がして路面を掘削し,公共下水管を設置した後,再度アスファルト舗装10する工事を実施する。11○しろまる 地方公共団体は,私道下に公共下水管を設置するために,私道の所有者との間で公12共下水管を設置するための利用権設定契約を締結し,長期間土地を使用する。1314
事例の検討15○しろまる 市町村等が私道の地下に公共下水管を設置する際には,一般に,私道の所有者との16間で,
公共下水管を設置するために地下を利用する権利を設定する契約を締結してい17る。設定される利用権の法的性質は一様ではないようであるが,一般にこのような利18用権を設定する際には,契約期間は定まっていないものの,数十年にわたる長期間の19利用が予定されている。20○しろまる 市町村等が私道下に公共下水管を設置する場合,市町村等が公共下水管の改築,修21繕,維持その他の管理を行うこととなり(下水道法第3条)
,公共下水道を良好な状22態に保つように維持し,修繕する等の義務を負い(下水道法第7条の2,同法施行令23第5条の 12)
,私道が公共の管理に服することとなる。24○しろまる 相互持合型私道においては,私道の全ての土地の所有者が,それぞれ地方公共団体25との間で利用権設定契約を締結することが必要となると考えられる。26なお,その際,共有となっている土地がある場合は,
【事例 21】に準じて,共有物27の管理に関する事項に当たり,
当該土地の共有者の持分の過半数の同意が必要となる28(民法第 252 条第1項)。29
○しろまる したがって,3の所有者の同意がない限り,3の所有者の所有に係る土地に公共下30水管を新設することは困難である。3149
○しろまる もっとも,地方公共団体は,3の所有者について不在者財産管理人等の選任申立て1を行うか,
又は3の所有者の所有に係る通路部分の土地について所有者不明土地管理2命令の申立てを行い,選任された管理人から,公共下水管の設置についての承諾を得3ることにより,私道下に公共下水管の設置を受けることができると考えられる4。4
4 当該私道の所在する市町村が水道事業者である場合には,当該市町村の長は,所有者
不明土地の適切な管理のため特に必要があると認められるときは,利害関係の有無を問
わず,
管理人の選任等の請求をすることができる
(所有者不明土地特措法第 38 条第1項
及び第2項)。50
事例23 ガス管の新設事例(共同所有型)
1.私道の概要
・昭和52年私道築造(アスファルト舗装)
・延長約20m,幅約4m
・私道下にガス管(本支管,供給管,内管)が設置されておらず,新設する必要がある
2.権利関係等の概要
・1筆の私道(下図青枠内)を➀〜➆が共有(共有持分は各7分の1,➆は区域外で居住していたが所在等
不明)
・設置後,本支管(下図茶色部分)と供給管(下図オレンジ色部分)は一般ガス導管事業者所有,内管(下
図黄色部分)は各個人(1〜6)所有となる
・私道所有者は,一般ガス導管事業者との間で,本支管及び供給管設置のための契約を締結したい
3.工事の概要
・工事の実施主体は一般ガス導管事業者
・私道上のアスファルトを撤去して掘削し,下図のように,私道下に本支管と供給管を新設した後,路面全
体をアスファルト舗装
○しろまる 共同所有型私道の路面を掘削し,地下にガス管を新設する必要が生じたが,
共有者の一部が所在等不明のため,工事の同意を得られない事例。
【概略図】
公道
7は区域外で居住していたが
所在等不明
行き止まり
本支管
1〜➆の
共同所有型私道 供給管
4賛成 5賛成 6賛成
1賛成 2賛成
内管
3賛成1511事例23 ガス管の新設事例(共同所有型)2事例のポイント3○しろまる ガス管が設置されていなかった地域において,共同所有型私道下にガス管(本支管4及び供給管)を新設する。5○しろまる アスファルト舗装された私道下に,本支管及び本支管から各戸に繋がる供給管を設6置するため,必要な範囲でアスファルトを剥がして路面を掘削し,ガス管を設置した7後,再度アスファルト舗装する工事を実施する。8○しろまる 工事の実施主体は,一般ガス導管事業者である。9○しろまる 設置する本支管及び供給管は一般ガス導管事業者所有である。10○しろまる 一般ガス導管事業者は,本支管及び供給管を設置するために,私道の所有者との間11でガス管を設置するための利用権設定契約を締結し,長期間土地を使用する。1213
事例の検討14○しろまる 一般ガス導管事業者が私道の地下に同事業者の所有するガス管を設置する際には,15私道の所有者との間で,
ガス管を設置するために地下を利用する権利を設定する契約16を締結している。
その設定される利用権の法的性質は一様ではないようであるが,一17般にこのような利用権を設定する場合,
数十年にもわたる長期間の利用も可能とされ18ている。19○しろまる ガス管を私道の地下に設置した場合には,私道の地下の状態は物理的に変更される20ものの,一般的に,私道の機能についての変更は生じないことや,私道共有者自身も21ガス管を使用することからすると,私道の地下にガス管を設置する行為は,共有物の22管理に関する事項に当たり,
共有者の持分の過半数で決する
(現行民法第252条本文,23新民法第 252 条第1項)。24
したがって,持分の過半数の共有者の同意により,ガス管の設置工事を行うことが25できるから,民法上は,7以外の共有者の同意に基づいて工事を行うことができるも26のと考えられる。27○しろまる なお,
本事例において,
共有者の一部が工事の実施について反対しているケースや,28賛否を明らかにしないケースにおいても,
工事の実施主体である一般ガス導管事業者29は,
1〜7の共有者の持分の過半数の同意を得てガス管の設置工事を実施することが30できる(新民法第 252 条第1項)。3152また,共有者の一部に所在等不明者や賛否不明者がいるために1〜7の共有者の持分の1過半数が確保できない場合であっても,新民法の下では,所在等不明共有者以外の共2有者による管理の裁判や賛否不明共有者以外の共有者による管理の裁判を得ること3により,所在等不明共有者等を除いた残りの共有者の持分の過半数で決定して,工事4に同意することができる(新民法第 252 条第2項第1号及び第2号)。5653
事例24 ガス管の補修事例(共同所有型)
1.私道の概要
・平成5年私道築造(アスファルト舗装)
・延長約20m,幅約4m
・私道下にガス管(平成5年設置)が設置されているが,本支管が破損し,微量のガス漏れが生じている
2.権利関係等の概要
・1筆の私道(下図青枠内)を1〜7が共有(共有持分は各7分の1, 7は区域外に居住していたが,
所在等不明)
・ 設置後,本支管(下図茶色部分の赤点線枠内) ,供給管(下図オレンジ色部分)は一般ガス導管事
業者所有,内管(下図黄色部分)は各個人(1〜6)所有となる
・ 1〜7と一般ガス導管事業者の間では,本支管と供給管を共有私道下に設置するための利用権設
定契約が締結されている
3.工事の概要
・工事の実施主体は一般ガス導管事業者
・私道の一部のアスファルトを撤去して掘削し,地下の本支管を補修した後,路面の一部をアスファルト
舗装(×ばつ4m=8m2)
○しろまる 地下の本支管が破損し,ガス漏れが生じていることから,共同所有型私道
の路面を掘削し,地下の本支管を補修する必要が生じたが,共有者の一部
が所在等不明のため,工事の同意を得られない事例。
【概略図】
公道
行き
止まり
破損箇所
1〜7の
共有私道
供給管
7は区域外で居住していたが
所在等不明
本支管
行き止まり
要補修箇所
1賛成 2賛成
内管
3賛成
4賛成 5賛成 6賛成1541事例24 ガス管の補修事例(共同所有型)2事例のポイント3○しろまる 共同所有型私道が築造されたのと同時期に,私道下にガス事業者が所有・管理する4ガス管(本支管)が設置され,現在に至るまで使用されている。5○しろまる 私道下に設置されている一般ガス導管事業者が所有・管理するガス管(本支管)か6らガスが漏れているため,ガス管(本支管)を管理する一般ガス導管事業者は,ガス7管(本支管)の補修を行う必要がある。8○しろまる ガスは,空気中で一定濃度を超え,着火源が存在すると着火する可能性があること9から,地中でガス漏れが生じている本事例においては,着火・爆発に至る可能性があ10る。11○しろまる 工事の実施主体は,一般ガス導管事業者である。12○しろまる 私道の路面を掘削し,地中に設置されているガス管を補修して埋め直し,路面を再13舗装する。1415
事例の検討16○しろまる 一般ガス導管事業者はガス管を設置する際,通常は,私道の共有者全員の同意を得17て,ガス管の設置のため地下を利用する権利の設定を受けている。また,一般ガス導18管事業者は,ガス管設置のための地下の利用権の設定を受ける際,ガス管の補修・取19替え・撤去のための私道の利用についての承諾をあらかじめ得ることによって,工事20について合意していることが多い。21○しろまる 私道の共有者全員の承諾書が存在しない場合でも,
共有者がガス管を通じてガスの22供給を継続的に受けているようなケースであれば,何らかの利用権が黙示に設定され23たと認められることが多い。24○しろまる 一般ガス導管事業者は,
私道下に設置しているガス管を維持管理すべき責務を負っ25ている。26○しろまる 本事例において,一般ガス導管事業者は,7の共有者を含む私道共有者の合意に基27づき,当該私道を利用してガス管の補修工事をすることができ,私道共有者は,工事28を受忍すべき義務を負うものと考えられる。29○しろまる なお,
私道の利用につき承諾があることや利用権が黙示に設定されていることにつ30いては,相互持合型私道においても同様であり,一般ガス事業者は,ガス管の補修部3155
分を行う部分の土地の所有者の合意に基づき,
当該土地を利用してガス管の補修工事1をすることができ,土地所有者は,工事を受忍すべき義務を負うものと考えられる。23456
事例25 電柱の新設事例
1.私道の概要
・平成10年築造(アスファルト舗装)
・延長20m,幅4m
・➀〜4は,公道上の電柱から自宅に電線を引き込んでいたが,5宅の新築に伴い,電気を供給す
るための電柱を共有私道内に新設する必要がある
2.権利関係等の概要
・1筆の私道(下図青枠内) を1〜5が共有(共有持分は各5分の1,3は所在等不明)。
・電柱は一般送配電事業者所有
・一般送配電事業者は,私道所有者との間で,電柱設置のための契約を締結したい
3.工事の概要
・工事の実施主体は一般送配電事業者
・必要な限度で路面を掘削して電柱を設置し,舗装する
・工事期間は約1か月間
○しろまる 共同所有型私道上に電柱を新設したいが,共有者の一部が所在等不
明であるため,工事の同意が得られない事例。
1賛成
1〜5の
共有私道
公道
【概略図】
新設
2賛成
3所在等不明
5賛成
電柱
4賛成1571事例25 電柱の新設事例2事例のポイント3○しろまる 私道上に電柱は設置されていなかった。4○しろまる アスファルト舗装された私道に電柱を設置するため,必要な範囲でアスファルトを5剥がして路面を掘削し,一般送配電事業者所有の電柱を設置する。6○しろまる 工事の実施主体は,一般送配電事業者である。7○しろまる 一般送配電事業者は,私道に電柱を設置するために,私道の所有者との間で電柱を8設置するための利用権設定契約を締結し,長期間土地を使用する。910
事例の検討11○しろまる 一般送配電事業者が私道上に新たに電柱を新設する場合,一般に,私道の所有者と12の間で電柱を設置するために土地を利用する権利を設定する契約を締結している。設13
定される利用権の法的性質は,一般的には賃借権であるが,その期間は,一般に,数14十年にわたる長期間の利用も可能とされている。15○しろまる 本事例において,私道の共有者が,一般送配電事業者との間で利用権設定契約を締16結し,同事業者に電柱の新設工事を行わせることは,私道の状態を物理的に変更する17ものの,一般的に,私道の機能についての変更は生じないことからすると,私道に電18柱を設置する行為は,私道の形状又は効用に著しい変更をもたらすものでもなく,共19有物の管理に関する事項に当たり,共有者の持分の過半数で決する(現行民法第 25220条本文,新民法第 252 条第1項)。21
○しろまる したがって,持分の過半数の共有者の同意により,電柱の設置工事を行うことがで22きるから,民法上は,3以外の共有者の同意に基づいて工事を行うことができるもの23と考えられる。24○しろまる なお,
本事例において,
共有者の一部が工事の実施について反対しているケースや,25賛否を明らかにしないケースにおいても,
工事の実施主体である一般送配電事業者は,261〜5の共有者の持分の過半数の同意を得て電柱の設置工事を実施することができ27る。28共有者の一部に所在等不明者や賛否不明者がいるために1〜5の共有者の持分の過29半数が確保できない場合であっても,新民法の下では,所在等不明共有者以外の共有30者による管理の裁判や賛否不明共有者以外の共有者による管理の裁判を得ることによ3158
り,所在等不明共有者等を除いた残りの共有者の持分の過半数で決定して,工事に同1意することができる(新民法第 252 条第2項第1号及び第2号)。2
○しろまる もっとも,電柱の設置場所によっては,宅地からの出入りや公道への車による出入3りが困難になる等,共有者の一部の者の共有私道の利用を妨げる等の影響を及ぼすこ4とがあり得る。新民法の下では,電柱の設置について共有者の持分の過半数で決する5ことによって共有私道を使用する共有者に特別の影響を及ぼす場合には,その共有者6の承諾を得なければならないことになる(新民法第 252 条第3項)。7
○しろまる いずれにしても,トラブルの発生を防止するために,設置位置については可能な限8り共有者間で協議を行い,少なくとも,居宅前に電柱を設置される共有者の同意を得9る等十分に配慮することが望ましい。10○しろまる なお,相互持合型私道において,電柱を新設する場合には,電柱を設置する土地の11部分の所有者の同意が必要であると考えられる(当該土地が共有となっているときは,12共有物の管理に関する事項に当たり,共有物の持分の過半数で決する)。13
電柱を設置する部分の土地の所有者の所在が不明である場合には,一般送配電事業14者は,当該所有者について不在者財産管理人等の選任申立てを行うか,又は当該所有15者の所有に係る電柱が新設される予定の土地について所有者不明土地管理命令の申16立てを行い,選任された管理人から電柱の新設に係る承諾を得ることにより,電柱を17設置することができると考えられる。18○しろまる 実務上は,全員の同意が得られない場合は,同意が得られる宅地敷地内に電柱を設19置して送電ができるようにしていることが多い。202159事例26 電柱の取替事例(同一場所)
1.私道の概要
・昭和56年築造(アスファルト舗装)
・延長20m,幅4m
・➀宅前に事業者所有のコンクリート製の電柱が設置されている(下図星印,平成元年設置)が,ひび
割れするなど老朽化しており,取り替える必要がある
2.権利関係等の概要
・1筆の私道(下図青枠内) を1〜5が共有(共有持分は各5分の1,4・5は区域外に居住していた
が,いずれも所在等不明)
・電柱は一般送配電事業者所有
・事業者は,1〜5との間で,電柱設置のための契約を締結している
3.工事の概要
・工事の実施主体は一般送配電事業者
・本事例の場合,老朽化電柱の隣が2の居宅の玄関前であり,電柱を建てることができないため, (1)
下図の仮設先に電柱を建てて仮舗装する,(2)老朽化電柱から既設電線を撤去する,(3)仮設電柱に
新規電線を設置する,(3)老朽化電柱を撤去して,同所に新電柱を建てて本舗装する,(4)仮設電柱
の既設電線を撤去して,新電柱に新規電線を設置し,仮設先を本舗装するという流れで工事を実施
・工事期間は約6か月
○しろまる 共同所有型私道上の電柱を取り替えたいが,共有者の一部が所在等不
明であるため,工事の同意が得られない事例。
1賛成
1〜5の
共同所有型私道
商業用建物
(私道とは無関係)
商業用建物
(私道とは無関係)
公道
行き止まり
【概略図】
3賛成
仮設先
2賛成
商業用建物
(私道とは無関係)
老朽化電柱
45は区域外に居住し所在等不明12601
事例26 電柱の取替事例(同一場所)2事例のポイント3○しろまる 共同所有型私道が築造されたのと同時期に,私道上に一般送配電事業者が所有する4電柱が設置され,現在に至るまで使用されている。5○しろまる 私道に設置された電柱に大きな亀裂が生じており,将来的に倒壊する危険があるた6め,電柱を管理する義務を負う一般送配電事業者は,電柱の補修・取替えを行う必要7がある。8○しろまる 工事の実施主体は,一般送配電事業者である。9○しろまる 私道上の別の場所に仮設の電柱を設置し,
旧電柱に取り付けられた電線を取り外し,10仮設電柱に電線を移設する。11○しろまる 旧電柱を撤去し,同所に新電柱を設置した後,仮設電柱に取り付けられた電線を取12り外して新電線に移設し,仮設電柱を撤去し,同所を再舗装する。13○しろまる 一般送配電事業者と土地所有者との間では,土地につき,電柱を設置するための利14用権設定契約が締結されている。1516
事例の検討17○しろまる 一般送配電事業者が電柱を設置する際,通常は,私道の共有者全員の同意を得て,18電柱の設置のため私道を利用する権利の設定を受けることによって,
工事について合19意している。20○しろまる 私道の共有者全員の承諾書が存在しない場合でも,共有者は電気の供給を継続的に21受けているのであり,何らかの利用権が黙示に設定されたと認められることが多い。22○しろまる 本事例において,一般送配電事業者は,4及び5の共有者を含む私道共有者の合意23に基づき,電柱の取替工事をすることができ,私道共有者は,工事を受忍すべき義務24を負うものと考えられる。25○しろまる また,工事の期間中に仮設電柱を共有私道上に設置することも,電柱を設置する際26の合意の範囲内の行為とみることができ,
私道共有者はこれを受忍すべき義務を負う27ものと考えられる。28○しろまる これに対し,
相互持合型私道の場合には,
一般送配電事業者は,
電柱の設置の際に,29電柱を設置する部分の土地の所有者との間で,
電柱の設置のため当該部分を利用する30権利の設定を受けることによって,工事について合意している。3161
そのため,一般送配電事業者は,明示又は黙示の合意に基づき,電柱を取り替えて1再度同じ位置に設置することができる。2○しろまる 相互持合型私道において仮設電柱を設置する場合については,これを設置する土地3の所有者の同意を得る必要がある。4562事例27 電柱の取替事例(隣接場所)
1.私道の概要
・昭和56年築造(アスファルト舗装)
・延長20m,幅4m
・私道上の電柱が老朽化しており,取り替える必要がある
2.権利関係等の概要
・1筆の私道(下図青枠内) を1〜5が共有(共有持分は各5分の1,3は所在等不明)。
・電柱は一般送配電事業者所有
・一般送配電事業者は,私道共有者との間で,電柱設置のための契約を締結している
3.工事の概要
・工事の実施主体は一般送配電事業者
・➀現在の電柱の所在地から約1m離れた場所を必要な限度で掘削して新電柱を立てて舗装し,2
新電柱に新規電線等を設置した後,旧電柱の既設電線を撤去し,3旧電柱を撤去して路面を舗装
する
・工事期間は約3か月
○しろまる 共同所有型私道上の電柱を取り替えたいが,共有者の一部が所在等不
明であるため,工事の同意が得られない事例。
1賛成
1〜5の
共同所有型私道
公道
【概略図】
新電柱
2賛成
3所在等不明
5賛成
電柱
4賛成
老朽化電柱1263事例27 電柱の取替事例(隣接場所)1事例のポイント2○しろまる 共同所有型私道が築造されたのと同時期に,私道上に一般送配電事業者が所有する3電柱が設置され,現在に至るまで使用されている。4○しろまる 私道に設置された電柱に大きな亀裂が生じており,将来的に倒壊する危険があるた5め,電柱を管理する義務を負う一般送配電事業者は,電柱の補修・取替えを行う必要6がある。7○しろまる 工事の実施主体は,一般送配電事業者である。8○しろまる 現在の電柱の所在地に隣接する場所を必要な限度で掘削して新電柱を設置し,新電9柱に新規電線等を設置した後,旧電柱の既設電線を撤去し,旧電柱を撤去して路面を10再舗装する。11○しろまる 一般送配電事業者と土地所有者との間では,土地につき,電柱を設置するための利12用権設定契約が締結されている。1314
事例の検討15○しろまる 一般送配電事業者が電柱を設置する際,通常は,私道の共有者全員の同意を得て,16電柱の設置のため私道を利用する権利の設定を受けることによって,
工事について合17意している。18○しろまる 私道の共有者全員の承諾書が存在しない場合でも,共有者は電気の供給を継続的に19受けているのであり,何らかの利用権が黙示に設定されたと認められることが多い。20○しろまる 本事例において,一般送配電事業者は,3の共有者を含む私道共有者の合意に基づ21き,電柱の取替工事をすることができるが,電柱の設置位置を変更することにより,22土地の利用状況・方法が変更されるから,電柱を隣接場所に移設することは,共有物23の管理に関する事項に当たり,共有者の持分の過半数の同意が必要となる(現行民法24第 252 条本文,新民法第 252 条第1項)
。なお,電柱の危険度・電柱取替の緊急性が25高い場合には,電柱の取替のための土地利用について,保存行為(新民法第 252 条第265項)として,共有者の一人の承諾で足りる場合もあり得ると考えられる。27○しろまる なお,新民法においては,電柱の設置場所を変えることで共有者の一部の者に共有28私道の利用を妨げる等の特別の影響を及ぼす場合には,
その者の承諾を得る必要があ29ることについては,事例25と同様である。30○しろまる これに対し,
相互持合型私道の場合には,
一般送配電事業者は,
電柱の設置の際に,31電柱を設置する部分の土地の所有者との間で,
電柱の設置のため当該部分を利用する3264
権利の設定を受けているが,それ以外の部分の土地所有者との間では,利用権の設定1を受けていない。2そのため,一般送配電事業者は,新たな電柱を設置する土地の所有者との間で利用3権の設定を受けていない場合には,改めて,当該土地所有者との間で利用権の設定を4受ける必要がある。5なお,新たな電柱を設置する土地の所有者の所在が不明であるような場合,一般送6配電事業者としては,
当該所有者について不在者財産管理人等の選任申立てを行うか,7又は当該所有者の所有に係る新たに電柱が設置される予定の土地について所有者不8明土地管理命令の申立てを行い,
選任された管理人から新たな電柱の設置に係る承諾9を得ることにより,新たな電柱を設置することができると考えられる。10