資料33
諸外国における
情報通信技術の活用に関する法制・運用の概要
【暫定版・更新版】
・ 一覧表 (33-1)
・ イギリス (33-2)
・ アメリカ (33-3)
・ ドイツ (33-4)
・ フランス (33-5)
・ 韓国 (33-6)
諸外国における情報通信技術の活用に関する法制・運用の概要【暫定版】(注1) 資料33-1
大項目 中項目 小項目 イギリス(注2) アメリカ(注3) ドイツ フランス 韓国(注4)
(ノーザンプシャー地方警察における取扱い)
しろまる捜索差押許可状を請求する警察官は,令状請
求専用フォームに必要事項を記入し,電子署名
を付した上で、これを電子メールで請求受付
メールアドレスに送付して請求。
しろまる裁判官は,担当警察官と電話でやり取りをし
て,令状を発付すると判断した後,電子メール
で令状の写しのデータを警察官に送付して発
付。
しろまる捜査官は,必要書類を電子データで送信する
などの方法で令状を請求することができる。
しろまる裁判官は,捜査官に令状の電子データを送信
するなどの方法で令状を発付することができ
る。
しろまる現状,令状は紙媒体により発付・執行されて
いる(法制上は令状手続を電子化することがで
きる。)。
しろまる予審判事は,捜索状等をデジタル形式で作成
することができ,令状がデジタル形式で作成さ
れた場合,令状を発付した予審判事の署名は,
デジタル形式による。
しろまる発付された令状を,デジタル形式のまま,映
像面に表示して「提示」したり,電磁的方法に
より送信して「交付」することができる。
しろまる電子文書等の形態で提示・転送する方法によ
り令状を執行することができる(電子文書等で
執行することが困難な場合には,電子文書等の
出力書面で執行することができる。)。
しろまる弁護人に対する証拠開示については,上記シ
ステムを通じて行われる。
しろまる電子データとしての証拠を記録媒体に格納し
て手交するなどのほか,プラットフォームに証
拠の電子データをアップロードし,弁護人がこ
れをダウンロードする方法もとられている。
しろまる連邦等が開設した「記録閲覧ポータル」サイ
トにおいて記録の内容を読み出すことによって
開示される。
しろまるデジタル刑事記録が開示される。 (しろまる電子文書として作成された証拠記録は,弁
護人等において,端末を通じて閲覧,出力する
ことが予定されているとのことである。)
しろまる捜査機関が通信事業者等から電子データを押
収する場合,通信事業者が用意したポータルサ
イトに貼られたデータのリンクから,電子デー
タをダウンロードしたり,通信事業者等から電
子メールで提出を受けることがある。
しろまる動画データは,データそのものが証拠として
取り扱われ,「検証」によって証拠調べが行わ
れる。
しろまる司法警察員等は,通信事業者が保有する電子
データの請求及び取得について,技術的に不可
能な場合を除き,プラットフォームを介して行
う。
取調べ等
しろまるオンラインでの参考人の取調べは法令上禁止
されておらず,電話等で行われることがある。
しろまる留置中の被疑者の取調べを,遠隔地に所在す
る警察官がライブリンクを利用して行うことが
できる。
しろまるオンラインでの参考人の取調べは法令上禁止
されておらず,ビデオ会議システムを利用して
行われることがある。
しろまるオンラインでの被疑者取調べは法令上禁止さ
れていないが,オンライン方式によって行われ
ることはほとんどないとされる。
しろまるオンラインでの参考人の取調べが法律上認め
られている。
しろまるオンラインでの被疑者の取調べについて法律
上の規定はない(概説的な聴取はテレビ電話等
を利用して行うことができる。)。
しろまるオンラインでの勾留審査が法律上認められて
いる。
しろまる被疑者を含む関係者の尋問や勾留されている
者の予審判事による尋問等の手続は,テレビ会
議システム等を用いて行うことができる。
弁護人の
接見等
しろまる身柄拘束中の被疑者・被告人に対して,弁護
人が電話で法的助言を与えることができる。
しろまる弁護人は,電話で身柄拘束中の被疑者・被告
人と接見することができる(新型コロナウイル
ス感染症の拡大を受け,テレビ電話による接見
が応急的に認められている。)。
しろまる弁護人は,テレビ電話等の方法で身柄拘束中
の被疑者・被告人と接見することができる。
しろまる弁護人は,未決勾留に付された者と,電話で
接見することができる。
しろまる弁護人は,近くの矯正施設を訪問し,遠隔地
の未決収容者と映像と音声の送受信により接見
することができる。
出廷
しろまる何人も,裁判所の命令がある場合,ライブリ
ンクを利用して公判廷に出廷することが可能
(新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた法
改正による。)。
しろまる被告人の同意を得た上で,勾留審問,イニ
シャル・アピアランスなどにおいてビデオ会議
システムを利用でき,検察官・弁護人・被告人
は法廷以外の場所から手続に参加できる(裁判
官が法廷以外の場所から参加することもあ
る。)。
〇事実審理や陪審員選任手続等は,ビデオ会議
システムの利用が認められていない(一部の州
裁判所ではオンラインで陪審員選任手続を実施
した例がある。)。
しろまる訴訟関係人(裁判官,検察官及び弁護人)の
オンライン出廷は認められていない。
しろまる軽罪裁判所への被告人の出頭や,判決言渡期
日への被告人の出頭などについては,テレビ会
議システム等を用いて行うことができる。
証人尋問
しろまるライブリンクの方法を通じて行うことができ
る。
しろまる証人尋問については,一定の場合にビデオリ
ンク方式で実施することができるほか,それ以
外の場合でも,裁判官の判断により,ビデオ会
議システムを利用して実施されることがある。
しろまる鑑定人について,特段の実体的要件なしにオ
ンラインで尋問することができる。
しろまるそれ以外の証人について,一定の要件を満た
す場合にオンライン方式で尋問することができ
る。
しろまる証人や鑑定人の尋問については,テレビ会議
システム等を用いて行うことができる。
〇証人尋問については,ビデオ等の中継装置を
用いて行うことができる。
その他
しろまる在宅の軽微事件における被告人の有罪答弁
は,オンラインで実施できる。
しろまる陪審員がオンラインで参加することは認めら
れていない。
しろまる最高裁判所は,公判審理をオンラインでライ
ブ公開し,オンデマンド配信を実施。
しろまる陪審員がオンラインで参加することは行われ
ていない。
しろまる一部の手続について,電話により審理を傍聴
することができる(メリーランド地区連邦地裁
における,新型コロナウイルス感染症の拡大を
受けた取扱い)。
しろまる被告人質問,参審員の公判審理への参加,傍
聴についてオンライン化の予定はない。
しろまる参審員の公判審理への参加や,傍聴について
は,オンライン化の予定はない。
(注1)法務省刑事局調査によるものであり,今後修正があり得る。また,調査により得た情報を基に,情報通信技術の活用に関する法制・運用の一部を掲げたものであり,必ずしもそれら法制・運用の状況を網羅的に掲げたものではない。
(注2)イングランド及びウェールズにおけるものである。
(注3)連邦におけるものである。
(注4)「刑事司法手続における電子文書利用等に関する法律制定案」の法制化が予定されており,本表の記載は,「弁護人の接見等」・「証人尋問」を除き,同法律制定案による。
しろまる裁判官,検察官及び弁護人の間において,1
訴訟関係書類を電子データとしてやり取りし,
2検察官及び弁護人が,電子データ化された証
拠書類を証拠として裁判所に提出するための共
通のシステムを利用。
しろまる裁判所に対する申立ては,ライブリンク(遠
隔地と音声のみ又は音声と映像をつなぐ措置)
等を用いて行うことができる。
〇書類を電子データとして作成し,同書類が署
名を求めるものである場合,署名を「電子的な
認証」によって行うことができる(具体的には
電子署名を付すといったことが行われてい
る。)。
書類の電子
データ化
発受のオン
ライン化
オンラインを
活用した非対
面・遠隔化
令状手続の電子化
証拠開示
その他
公判段階
捜査段階
関係者間における発受のオン
ライン化・書類の電子データ
化の在り方
しろまる全ての連邦裁判所において,手続関係書類を
オンラインで提出するためのシステムを利用。
しろまる検察官・弁護人は,電子データにより,手続
関係書類を同システムを通じて裁判所に提出し
なければならない。
しろまる同システムにID・パスワードを使ってログ
インし,署名欄に記名がある電子データを提出
した場合,署名をしたものとみなされる。
しろまる電子データとして作成した書類は,電子署名
を付して,事件管理のための内部システムに保
管(紙で作成した書類も,検察官によっては,
電子化して保管している。)。電子データ自体
が証拠である場合も,これをシステム内に保管
(メリーランド地区連邦検察庁における取扱
い)。
しろまる「記録」(複数の文書の意識的な編成)を電
子的に作成することができる(2026年から,電
子的に作成することが義務化される。)。
しろまる記録が電子的に作成される場合,刑事捜査機
関・裁判所は,相互に文書を電子文書として送
信する。弁護人等は,刑事捜査機関・裁判所に
対して電子文書を提出することができる(弁護
人について,2022年から書面等を電子文書とし
て提出することが義務化される。)。
しろまる書面として作成され,署名がなされるべき電
子文書について,1刑事捜査機関又は裁判所が
作成する場合,全ての責任者の適格電子署名
(作成時点で有効な適格証明書に依拠し,か
つ,安全な署名作成基準に基づいて作成された
電子署名をいう。)が付されなければならず,
2弁護人が提出する場合,責任ある者の適格電
子署名を付して作成する等の方法で提出する必
要がある。
しろまる司法警察業務を行う公務員等は,訴訟関係書
類をデジタル形式で作成し,提出することがで
きる。
しろまる刑事訴訟手続のあらゆる局面で書面を電子的
に送信することができ,被告人や被害者を含む
訴訟手続の関係者全体が電気通信の対象者であ
るとされる。
しろまる刑事訴訟法典に掲げるあらゆる書面であっ
て,捜査・予審・裁判に係る書面又は他のあら
ゆる訴訟関係書類をデジタル形式で作成し,又
はデジタル形式に変換することができる。署名
を要するときは,デジタル形式による署名によ
ることができる。
しろまる訴訟記録は,「デジタル訴訟記録」として保
存することができる。
しろまる刑事司法業務処理機関(裁判所・検察庁・警
察庁等)所属の公務員は,裁判書,公訴状等の
刑事司法業務と関連する文書を電子文書として
作成し,システムを通じて電子的方法により送
付しなければならない。
しろまる被疑者・被告人・被害者・弁護人等は,刑事
司法業務処理機関に提出する書類をシステムを
利用して電子文書等により提出することができ
る。システムを利用しようとする者は,使用者
登録をしなければならない。
しろまる法官(裁判官)や検事・司法警察官吏等は,
作成する文書に電子署名を付し,陳述者の署名
が必要な場合は陳述者に電子署名させなければ
ならない。
しろまる刑事司法業務処理機関に電子文書等を提出し
ようとする者は,その電子文書等に電子署名を
しなければならない。
資料33-21イギリス(令和3年12月時点)
(注記) 本資料の内容は,イングランド及びウェールズにおけるものである。
1 書類の電子データ化,発受のオンライン化
(1) 関係者間における発受のオンライン化の在り方
しろまる 裁判官,
検察官及び弁護人の間において,
訴訟関係書類を電子データと
してやり取りするとともに,検察官及び弁護人が,
電子データ化された証
拠書類を証拠として裁判所に提出するための共通のシステムを利用して
いる。
しろまる 裁判所に対する申立ては,ライブリンク(注:遠隔地との間で音声だけ
をつなぐ「オーディオリンク」と,映像と音声をつなぐ「ビデオリンク」
の両方を含む用語である。)や,電子メールといった電子的通信手段を用
いて行うことができるとされる(2020年刑事手続規則3.5条)。
しろまる 文書は,
電子的方法により送達することができる(2020年刑事手続
規則第4.6条(2))
(2) 書類の電子データ化の在り方
書類を電子データとして作成し,同書類が署名を求めるものである場合,
署名を「電子的な認証」によって行うことができるとされ(2020年刑事
手続規則5.3条),具体的には電子署名を付すといったことが行われてい
る(なお,電子署名の法的要件は,2000年電子通信法第7条に規定され
ている。)。
(3) 令状手続の電子化
捜索差押許可状を請求する警察官は,携帯電話機等を用いて,令状請求の
ための専用フォームに,
請求の理由等の必要事項を記入し,電子署名を付して(この場合の電子署名は,当該警察官に割り当てられたパスワードを入力
することによって認証される。),これを,電子メールで,請求受付のため
のメールアドレスに宛てて送付し,令状請求を行う。
裁判官は,令状を発付するに当たり,担当警察官に電話をし,令状発付の
資料33-22要件を満たしているかについて確認を行う(2020年刑事手続規則47.
25条)。裁判官は,令状を発付すると判断した後,令状を作成し,その原
本を保管しつつ,
令状の写しとなるデータを,
電子メールで警察官に宛てて
送付して,令状を発付する。
(注記)1 以上の令状手続の電子化は,ノーザンプシャー地方警察の取扱い。
(注記)2 被処分者等に対し,令状の写し(謄本)を紙媒体で交付等する必要がある
(1984年警察及び刑事証拠法第16条(5)〜(7))。
(4) 証拠開示
弁護人に対する証拠開示は,上記(1)記載のシステムを通じて行われる。
2 オンラインを活用した非対面・遠隔化
(1) 被疑者,参考人の取調べ等
ア 参考人の取調べについて,
これをオンライン方式によって行うことを禁
ずる法令上の規定は見当たらず,電話で取調べを行い,その供述内容を録
取した供述調書を電子メールで供述者に送信した上,電子署名等((注記))を
付させて供述調書を返信させるという方法がとられることがあるとされ
る。
(注記) 具体例として,1供述者の通常の署名を表すデジタル画像表象(タッチペン
による署名や,氏名をタイピングしたものが想定されている。),2紙に手書き
した署名をスキャンしたもの,
3署名者により承認・認証された電子署名,4パスワードを使用する方法
(安全で,
かつ,
アクセスにパスワードを要求する名前
付きのメールアカウントから送信されたメールは,当該アカウントの保持者に
よって署名されたものと認められる。)があるとされている。
イ 警察署内に留置されている被疑者の取調べについて,
遠隔地に所在する
警察官が,ライブリンクを利用して行うことができる(1984年警察及
び刑事証拠法第39条)。
(2) 弁護人による接見
弁護人は,
身柄拘束中の被疑者・被告人に対して,
電話で法的助言を与え
ることができる。
(3) 公判段階における手続等
しろまる 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた法改正により,
何人も,裁判
所の命令がある場合,
ライブリンクの方法を通じて公判廷に出廷すること
が可能となり,例えば,勾留中の被告人に対する被告人質問についても,
オンラインで実施することができることとされた
(2020年コロナウイ
資料33-23ルス法による改正後の2003年刑事司法法51条)。なお,証人の尋問は,同改正の前から,ライブリンクの方法を通じて行うことが認められて
いた(同改正前の2003年刑事司法法51条)。
このほか,在宅の軽微事件における被告人の有罪答弁(2003年刑事
司法法29条(2)(b))についても,オンラインで実施することができるとさ
れる。
〇 裁判所は,
ライブリンクの方法を通じて公判廷に出廷させるか否かを判
断するに当たって,
その所在場所の設備の適合性などを考慮しなければな
らないとされている
(2020年コロナウイルス法による改正後の200
3年刑事司法法51条)。特定の場所に制限されてはおらず,国外からラ
イブリンクの方法を通じて出廷することも可能である。
なお,
運用上,
証人がライブリンクの方法により証人尋問を受ける場合,
前記の設備の適合性が確保された「remote link site」から出廷すること
が期待されている。
(注記) 「remote link site」とは,証人が裁判所構外からライブリンクの方法を通
じて証言することができると認証された場所である。例えば,刑事司法関係機
関の建物や,被害者・証人援助団体の建物,地方自治体の建物などの中にも,
「remote link site」として認められている場所があるようである。
しろまる 陪審員がオンラインで参加することは認められていない
(2003年刑
事司法法第51条(1B))。
しろまる 最高裁判所は,
2014年から,
公判審理をオンラインでライブ公開し
ており,2015年からは,オンデマンド配信を実施している。
(注記) オンラインによる出廷には,
「クラウドビデオプラットフォーム」
というビデ
オ会議システムなどが用いられるとされる。
(関連規定)
・ 2020年刑事手続規則
・ 2000年電子通信法
・ 1984年警察及び刑事証拠法
・ 2003年刑事司法法
資料33-24しろまる 関連規定(仮訳)
* 注記は,事務当局において付したものである。
【2020年刑事手続規則】
第3.5条(裁判所の事件管理権限)
(1) 裁判所は,第3.2条に基づく義務(注:積極的に事件を管理する義務)を
果たすに当たり,
本規則を含む法令等に反しない限り,
事件を管理するため,
積極的に命令を発し,あらゆる措置を講じることができる。
(2) 裁判所は,特に,次のことをすることができる。
(a)〜(c) (略)
(d) 手紙,電話,ライブリンク,電子メールその他電子的通信手段を通じた申
立て,通知,意見及び情報を受信すること並びにライブリンク,電話その他
電子的通信手段を通じて審理を実施すること
(以下略)
第4.2条(送達の方法)
(1) (略)
(2) 第4.6条に基づいて文書を電子的手段によって送達する場合,原則として,
同条が規定する方法を用いて行わなければならない。
第4.6条(電子送達)
(1) 本条は,次のいずれかの場合に適用される。
(a) 送達を受ける者が
i 電子アドレスを提供し,かつ,同アドレスを通じて送達を受けることを
拒んでいない場合
ii 文書が保管される電子アドレスに対するアクセス権を付与されており,
同アドレスに文書が保管されることによって送達を受けることを拒んで
いない場合
(b) 送達を受ける者の法的代理人(注:弁護人等)が
i 電子アドレスを提供している場合
資料33-25ii 文書が保管される電子アドレスへのアクセス権を付与されている場合
(2) 文書は,次のいずれかの方法によって,送達することができる。
(a) 送達を受ける者が指定したアドレスに宛てて,電子的手段を用いて文書
を送信する方法
(b) 送達を受ける者にアクセス権が付与されたアドレスに文書を保管する方
法であり,かつ
i 送達を受ける者がその文書を閲読し,
又はその内容を視聴することがで
きること
ii 裁判所が別段の指示をしない限り,送達を受ける者が,
文書の電子コピ
ーを作成し,かつ,これを保管することができること,及び
iii 送達を受ける者に対して,
文書が前記アドレスに保管されていることを
通知したこと(同通知は,電子的手段を用いて行うことができる。)
(3) (略)
(4) 本条に基づいて文書を送達する場合,
送達を行う者は,
送達を受ける者に対
して,紙の写しを提供する必要はない。
第5.3条(書式への署名)
(1) 本条は,書式が署名を求める場合に適用される。
(2) 他に特段の定めがなく,裁判所が別途命じない限り,署名は,署名者又は署
名者の権限による手書きの又は当該書式への電子的な認証によって,これを
行うことができる。
第47.25条(裁判所の権限行使)
(1) 裁判所は,令状請求について,以下の条件の下で決定する。
(a) 裁判所が別途命じない限り非公開の審理において,
(b) 令状を請求した者の立会いの下
(c) 令状請求者が捜索を希望する物件の占有者又は管理者を含む,
当該令状の
執行対象者不在の下
(2) 裁判所が命じた場合,
令状の請求者は,
ライブリンク又は電話の方法により,
当該審理に出席することができる。
資料33-26(以下略)
資料33-27【2000年電子通信法】
第7条(電子署名及びこれに関連する証明書)
(1) いかなる法的手続においても
(a) 特定の電子通信若しくは特定の電子データに組み込まれ,
又は論理的に関
連付けられた電子署名及び
(b) かかる署名の署名者による証明書は,それぞれが,
当該電子通信若しくは電子データの真正性又は完全性に関す
る論点に関連する証拠として認められる。
(2) 本条において,電子署名とは,次の電子形式のものをいう。
(a) 電子通信若しくは電子データに組み込まれ,
又はその他の方法により論理
的に関連付けられていること及び
(b) それを作成した個人により署名に用いられることを目的としているもの
であること
(以下略)
資料33-28【1984年警察及び刑事証拠法】
第16条 令状の執行
(1) 家宅等への侵入及び捜索を許可する令状は,すべての司法巡査がこれを執
行することができる。
(2)〜(4) (略)
(5) 司法巡査は,令状を執行する場合において,侵入及び捜索を行う家宅等に
その占有者が現在するときは,次の措置をとらなければならない。
(a) その占有者に身分,その他自己を特定する事項を告げ,かつ,制服を着用
していない司法巡査の場合には,
司法巡査であることを証明する文書をその
者に示すこと。
(b) その者に令状を呈示すること。
(c) その者に令状の謄本 1 通を交付すること。
(6) 次の各号のいずれにも該当する場合には,前項の規定中占有者に関する部
分は,これを管理者に関するものと読み替えて,適用する。
(a) 司法巡査が令状を執行する際に,
侵入,
捜索を行う家宅等にその占有者が
現在しないこと
(b) その家宅等につき管理の責任を負うと認められる他の者が現在すること
(7) 前項の家宅等につき管理の責任を負うと認められる者が現在しないとき
は,その家宅等の目につきやすい場所に令状の謄本 1 通を残しておかなけれ
ばならない。
第39条 被留置者に関する留置管理官の義務
(1) (1)及び(4)に定める場合に従い,
警察署の留置管理官は,
次に掲げることを確
保する義務を負う。
(a) 当該警察署において警察留置に付されている全ての者が,
この法律及びこ
の法律に基づいて発せられる警察留置に付された者の取扱いに関する運用
規定の定めるところに従い,取り扱われること。
(b) この法律又はこの法律に基づいて発せられる運用規定により記録を作成
しなければならないとされる被留置者に関する全ての事項が,
当該被留置者
に関する留置記録表に記録されること。
資料33-29(2) 留置管理官は,この法律に基づいて発せられる運用規定の定めるところに
従い,警察留置に付された者を
(a) 当該被留置者の警察留置の理由となっている又は当該犯罪と関連する犯
罪の捜査の一部としての取調べを目的として,
当該被留置者が留置されてい
る当該警察署の他の警察官の拘束下,又は
(b) 当該警察署外でその者の管理に責任を負う警察官の拘束下
に移し,
又は移すことを許可した場合,
上記の(1)(a)の規定により課される義務
を負わない。
この場合において,
この法律及び上記の(1)の運用規定の定めると
ころに従い被留置者が取り扱われることを確保するのは,
移送を受けた警察官
の義務である。
(1) 当該犯罪の捜査を担当する警察官は,被留置者を留置管理官による拘束
下に戻した場合,当該警察官による拘束下にあった間における本条及び運
用規定の遵守状況を留置管理官に報告するのはその犯罪を捜査している警
察官の義務である。
(3A) (3B)及び(3C)は,この法律に基づいて発せられる運用規定の定めるとこ
ろに従い,留置管理官が,当該犯罪を捜査している他の警察官であって,警察
留置に付されている者が取調べを受ける際に所在する警察署に現在しない者
がいかなる範囲でもライブリンクによる取調べを行う目的で,警察留置に付
された者を(2)(a)に規定された警察官による拘束下に移し,又は移すことを許
可した場合に適用される。
(3B) 警察署に現在しない警察官は,被留置者がこの法律の規定及び(1)に規定
される運用規定の定めるところに従い,
取り扱われることを確保するため,(2)(a)に規定された警察官と同じ義務を負う。
(3C) 警察署に現在しない警察官は,被留置者を留置管理官による拘束下に戻
した場合,(2)(a)に規定された警察官と同様,(3)に規定された義務を負う。
(3D) (3C)の適用において,(3)中「当該警察官による拘束下にあった間」とあ
るのは
「当該警察官による取調べを受けていた間」
と読み替えるものとする。
(3E) (3A)中「ライブリンク」とは,警察署に現在しない警察官が,当該警察
署で留置されている被留置者を見聞きでき,かつ,当該被留置者,その法定代
理人及び当該警察署における留置管理官から見聞きされる状態をいう(この
資料33-210場合,視力又は聴力の障害は考慮されない。)。
(以下略)
資料33-211【2003年刑事司法法】
第29条(新たな訴追方法)
(1) 公訴官は,
被疑者を犯罪で告発する旨の告発状を発することにより,
訴追を
開始する。
(2) 公訴官は,
告発状を発するに当たり,
同時に次のものを発しなければならな
い。
(a) 出廷命令書,又は
(b) 在宅の軽微事件に関する刑事手続の通知書
第51条(刑事訴訟におけるビデオリンク)((注記)2020年コロナウイルス法
による改正後のもの)
(1) 何人も,裁判所の命令により,以下の方法を通じて,
「適格な刑事手続」に
参加することができる。
(a) ライブ音声(注:
遠隔地との間で音声だけをつなぐ措置)
による方法又は,
(b) ビデオリンク(注:遠隔地との間で映像と音声をつなぐ措置)による方法
(1A) 裁判官は,
本条の命令により,
ライブ音声又はビデオリンクを通じて,
「適
格な刑事手続」に参加することができる。
(1B) 陪審員は,
ライブ音声又はビデオリンクを通じて,
適格な刑事手続に参加
することができない。
(2) 本章において,「適格な刑事手続」とは,次のものをいう。
(a) 略式裁判
(b) 刑事控訴及びその予備的又は付随的な手続
(c) 正式起訴裁判又は刑事法院におけるその他の裁判
(ca) 1964年刑事訴訟(心神喪失)法第4A条又は第5条に基づく手続
(cb) 1983年精神保健法第3章に基づく手続
(cc) 以下に基づく手続
(i) 2000年刑事裁判所権限(刑事判決)法第11条又は
(ii) 1981年上級裁判所法第81条(1)(g)又は前記2000年刑事裁
判所権限(刑事判決)法第11条に基づいて事件が延期された場合に
治安判事裁判所によって再拘留された者についての本法第16条
資料33-212(d) 控訴院刑事部に対する控訴及びその予備的又は付随的な手続
(da) 1988年刑事司法法第4章に基づく法務総裁による控訴院への付託
及びその予備的又は付随的な手続
(e) 1995年刑事不服審査法第9条又は第11条に基づく付託の審理及び
その予備的又は付随的な手続
(f) 被告人の有罪の答弁後に行われる治安判事裁判所又は刑事法院における
審理
(fa) 1980年治安判事裁判所法第142条(1)若しくは(2)に基づき,
又は2
000年刑事裁判所権限(刑事判決)法第155条に基づく審理
(g) 本法第80条に基づく控訴院における審理及びその予備的又は付随的な
手続
(h) 有罪判決後,被告人の保釈について決定を下す目的で行われる審理
しかし,
1998年犯罪及び秩序違反法第3A章が適用される審理
(同法5
7A条(1)を参照)は,「適格な刑事手続」には含まれない。
(3) 本条に基づく命令は,(a)訴訟当事者の申立てにより,又は,(b)裁判所の職権
で発せられる。
(4) 裁判所は,
次の要件を満たす場合でなければ,
ライブ音声又はビデオリンク
を通じて「適格な刑事手続」に参加することを命じることができない。
(a) 裁判所が,
その命令により,
当該者がライブ音声又はビデオリンクを通じ
て訴訟手続に参加することが正義にかなっていると確信していること
(b) 訴訟関係人に対して,意見を述べる機会が与えられること
(c) 当該手続の被告人が,
以下のいずれかに該当する場合,
関連する青少年犯
罪防止チームに意見を述べる機会が与えられること
i 被告人が18歳に達していないこと,又は
ii 被告人が,
当該刑事手続開始後に18歳に達し,
かつ,
裁判所において,
当該事件について被告人が18歳に達していないものとして継続するこ
とを決定していること
(4A) 本条に基づく権限には,以下のものが含まれる。
(a)・(b) (略)
(c) イングランド及びウェールズの外部(英国の内外を問わない。)にいる者
資料33-213に対して,ライブ音声又はビデオリンクを通じて「適格な刑事手続」に参加
するよう命じること
(4B)〜(4F) (略)
(4G) 本条に基づくライブリンクに関する命令は,裁判所の職権又は訴訟関係
人の申立てにより,変更し又は取り消すことができる。もっとも,訴訟関係
人による申立ては,
命令が発せられた後の状況に重大な変更がない限り,行うことができない。
(4H) (略)
(5) (略)
(6) 本条に基づく命令の発出又は取消しの決定において,裁判所は,当該事件
に関する全ての状況を考慮しなければならない。
(7) 前項に掲げる状況としては,特に,次のものが含まれる。
(a) (略)
(b) 手続に参加する者に対して命令を発出する場合においては,
(i)〜(iii) (略)
(iv) 裁判所の命令に基づき,当該者が手続に参加することが予定されてい
る場所の設備の適合性
(v) (略)
(以下略)
以 上
資料33-31アメリカ合衆国(令和3年12月時点)
(注記) 本資料の内容は,連邦におけるものである。
(注記) 本資料中,別段の記載がない限り,引用法令は全て連邦刑事訴訟規則である。
1 書類の電子データ化,発受のオンライン化
(1) 関係者間における発受のオンライン化の在り方
しろまる 全ての連邦裁判所において,
CM/ECF
(Case Management/Electronic Case
Files の略。手続関係書類をオンラインで提出するためのシステム)を利
用しており,
検察官及び弁護人は,正当な理由に基づき裁判所に許可され
た場合等でない限り,
起訴状,
不服申立書,
答弁合意書
(plea agreement)
などといった手続関係書類について,電子データにより,
同システムを通
じて裁判所に電子的に提出しなければならない(第49条(b)(3)(A))。
しろまる CM/ECF を利用した電子的提出については,同システムによる書面の提
出に際し必要となる ID・パスワード及びそれに基づくログインにより,
提出された電子データの署名欄に記名がある場合,
署名をしたものとみな
される(第49条(b)(2)(A))。
〇 提出された書類は,同システムによって,裁判所,検察官及び弁護人の
間で共有される(なお,弁護人に対する証拠開示のように,裁判所が関与
しない手続については,CM/ECF が利用されることはない。)。裁判所が作
成した判決書については,判決言渡後,CM/ECF にアップロードされて閲
覧に供される。
しろまる 電子データとして取得した証拠書類については,通常,同電子データの
内容を印字した紙又は同電子データを記録した記録媒体を提出する方法
によって,裁判所に証拠提出するとのことである。
(2) 書類の電子データ化の在り方
メリーランド地区連邦検察庁においては,
電子データとして作成した書類
について,電子署名を付して,「内部ファイル機構」(注:事件を管理する
ための内部ネットワークシステム)に保管する。紙媒体で作成した書類につ
資料33-32いても,
検察官によっては,これを電子化して同機構内に保管するとのこと
である。
また,同地区連邦検察庁においては,証拠書類や証拠データについて,証
拠として押収したときの状態のまま保管しておくよう義務付けられており,
紙媒体やUSBメモリ等の記録媒体を押収した場合には,
これらを証拠保管
庫に保管し,
電子データ自体が証拠である場合には,
これを証拠保管用のシ
ステム内に保管することとされている。
(3) 令状手続の電子化
令状請求は,捜査官が,裁判官に対し,犯罪事実が記載されたコンプレイ
ント(Complaint)等を提出することにより行われるが(第3条),電話又
はその他の信頼できる電子的方法による請求も認められている
(第4.1条,
第4条及び第41条)。
例えば,捜査官は,裁判官に対し,電話でコンプレイントや令状の案の内
容を読み上げ,
又はそれら案の電子データを電子メールにより送信するなど
の方法で令状を請求することができ,
裁判官は,読み上げられた内容を自ら
入力してコンプレイントや令状を作成し,
又は送信された案のデータに入力
することでそれらを作成して,
電子署名を付し,又は手書きの署名をスキャ
ンしたデータを付した上で,
捜査官に対して令状の電子データを電子メール
により送信するなどの方法によって,令状を発付することができる。
(注記) 令状の執行・呈示については電子化されていないため,捜査官は電子データで
令状の発付を受けた場合,その内容を紙面に印刷して被逮捕者に示さなければな
らない(第4条(c)(3)(A))。
(4) 証拠収集・証拠開示
ア 証拠収集
捜査機関が通信事業者等から電子データを押収する場合,
通信事業者の
多くは,通信事業者が用意した安全なポータルサイトに,押収の対象とな
る電子データに関するリンクを貼り付け,捜査機関は,同サイトにアクセ
スして,
貼り付けられたリンク先に保存された電子データをダウンロード
して押収している(このほかに,通信事業者が,捜査機関に対して,対象
となる電子データを電子メールによって直接送信して提出することもあ
る。)。
資料33-33イ 証拠開示
検察官から弁護人に対する電子データとしての証拠の開示方法は,
検察
官によって様々であり,
記録媒体に電子データを格納して弁護人に郵送す
るか,検察庁において手交する手段が用いられることがあるとされる(な
お,新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて,対面でのやり取りを避け
るため,検察官は,司法省が出資して作成した「USAfx」というプラット
フォームに証拠の電子データをアップロードして弁護人にその旨を知らせ,弁護人が同プラットフォームにアクセスして同電子データをダウンロ
ードして取得し,
証拠開示を受ける手段がとられるようになったとのこと
である。)。
2 オンラインを活用した非対面・遠隔化
(1) 被疑者,参考人の取調べ等
しろまる 参考人の取調べについて,
これをオンライン方式によって行うことを禁
ずる法令上の規定はなく,例えば,参考人が高齢であり遠隔地に居住する
ような場合には,
ビデオ会議システムを利用して取調べを行うことがある
とされる。
しろまる 被疑者の取調べについても,
これをオンライン方式によって行うことを
禁ずる法令上の規定はないが,オンライン方式によって行われることは,
ほとんどないとされる
(弁護人の立会いがテレビ電話等によるものである
場合,
憲法上認められている弁護人立会権を十分に保障しているかについ
て疑義があるため,
仮に被疑者の取調べをオンライン方式で行う場合には,
被疑者の同意が必要であるとされる。)。
(注記) オンラインで取調べを実施した際に,被聴取者の署名については,電子署名
の方法によるほか,調書を印字して被聴取者に郵送し,これに手書きの署名を
してもらい,返送してもらうことがあるとのことである。
(2) 弁護人による接見
しろまる 弁護人は,
収容施設に収容されている被疑者・被告人との間で監視を伴
わない電話通信を行うことができる(連邦行政命令集第28編第540.
102条)。収容施設の長は,被収容者が手紙,面会又は通常の電話によ
る弁護士とのコミュニケーションが十分でないことを疎明した場合,
被収
容者による弁護士への電話の回数を制限してはならない
(連邦行政命令集
資料33-34第28編第540.103条)。
(しろまる 新型コロナウイルスの感染拡大を受け,
テレビ電話による通話が応急的
に認められている(連邦行政命令集第28編第540.106条)。)
(3) 公判段階における手続等
しろまる 被告人が同意する場合に,イニシャル・アピアランス(initial
appearances)又は罪状認否の手続について,ビデオ会議を用いて行うこ
とができる(第5条(f),第10条(c))。
しろまる 「コロナウイルス支援,救済及び経済的安全保障法」(CARES ACT)に
基づき,刑事手続の一部について,被告人の同意を得た上で,ビデオ会議
システム
(同システムを利用することができない場合は,電話会議システ
ム)を利用して行うことができるようになった(同法第 15002 条(b))。具
体的には,勾留審問,イニシャル・アピアランス,予備審問,罪状認否手
続などにおいてビデオ会議システム等を利用することが可能である
(同条
(b)(1))。また,
重罪の答弁及び判決についても,
より一層厳格な要件の下,
ビデオ会議システム等を利用することが可能である
(同条(b)(2))
((注記)1)。もっとも,事実審理(trial)や陪審員選任手続等については,ビデオ
会議システムを利用することが認められていない
(ただし,
州レベルでは,
一部の州裁判所において,運用上,新型コロナウイルスの流行を受けて,
オンライン方式により陪審員選任手続を実施した例があるようである。)。
ビデオ会議システム等を利用して手続を行う場合,通常は,裁判官及び
裁判所書記官だけが在廷し,検察官,弁護人及び被告人は,それぞれ法廷
以外の場所から,
ビデオ会議システム等を利用して手続に参加することと
なる(なお,裁判官が,自宅等の法廷以外の場所から参加することもある
とされる。)。
しろまる 証人尋問については,
一定の犯罪類型に該当する事件において,18歳
未満の者が証人となる場合におけるビデオリンク方式による証人尋問の
規定(合衆国法典第18編第3509条)のほか,ビデオリンク方式によ
り実施することができるとの規定は設けられていないが,
裁判官の判断に
より,
ビデオ会議システムを利用して実施される場合もあるとのことであ
る。
資料33-35(注記) 裁判所は,ビデオリンク方式による証人尋問の実施について,これがアメリ
カ合衆国憲法修正6条に必ずしも違反するものではない旨を判示した Maryland
v.Craig 判決に沿って判断を行っているようである。
具体的には,
アメリカ合衆
国憲法修正6条は,被告人が自己に不利な証人との対質を求める権利を有する
と規定しているところ,Maryland v. Craig 判決は,この権利には物理的に証人
の面前で対質を行う権利が含まれると解釈した上で,これは絶対的な権利では
なく,物理的な対質を否定することが重要な公共目的のために必要であり,か
つ,当該証言の信頼性が別の方法により確保されている場合には,同規定の違
反とはならない旨を判示している。
〇 被害者がオンライン方式で量刑手続に参加し,量刑等に関する意見
(Victim impact statements)を述べることが広く認められているとのこ
とである。
しろまる 通訳人は,
一定の実施要件を満たす場合には,オンライン方式により出
廷することができる。
しろまる 陪審員がオンラインで参加することは行われていない。
しろまる メリーランド地区連邦地裁においては,
新型コロナウイルス感染症の拡
大により,
イニシャル・アピアランスにおける審問や予備審問等の事実審
理(Trial)以外の手続について,電話により審理を傍聴することができ
る取扱いがされている((注記)2)。
なお,多数の被害者・遺族のいるテロ事件の公判において,裁判所の同
一構内の別室や,別の都市において審理を傍聴することができるように
する措置が採られたことがあったようである。
(注記)1 上記
「コロナウイルス支援,
救済及び経済的安全保障法」
によるビデオ会議
システムの利用は,新型コロナウイルスによる緊急事態が止むに伴い終了す
る(同法第 15002(b)(5))。
(注記)2 同地裁のホームページに審理予定表及び事件ごとの電話番号が掲載され,
手続の予定時刻にその番号に電話をかけると手続の内容を聞くことができる。
(関連規定)
・ 連邦刑事訴訟規則
・ 連邦行政命令集(第28編)
・ コロナウイルス支援,救済及び経済的安全保障法(CARES ACT)
・ 合衆国法典(第18編)
資料33-36しろまる 関連規定(仮訳)
【連邦刑事訴訟規則】
第3条(コンプレイント)
コンプレイントとは,犯罪事実を構成する重要な事実が記述された書面であ
る。第4.1条に規定されている場合を除き,コンプレイントは,マジストレ
イト判事の面前における宣誓の下で,それが不可能である場合には州若しくは
地方司法官の面前における宣誓の下で作成されなければならない。
第4条(コンプレイントに基づく逮捕状又は召喚状)
(a) 発付
コンプレイント又はこれと共に提出された1つ又は複数の宣誓供述書が,被疑者が当該罪を犯したと認めるに足りる相当な理由を疎明した場合,
裁判官は,
逮捕状を執行する権限を与えられた捜査官に,
逮捕状を発付しなければならな
い。(以下略)
(b) (略)
(c) 執行及び返還
(1),(2) (略)
(3) 方法
(A) 令状は,逮捕によって執行される。逮捕に当たり,令状の原本又は写
しを所持している捜査官は,被逮捕者にこれを示さなければならない。
これを所持していない場合,逮捕状が発付されていること及び犯罪事実
を告げ,被逮捕者が要求した場合,できるだけ早く逮捕状の原本又は写
しを示さなければならない。
(以下略)
(d) 電話その他信頼できる電子的手段による令状
第4.1条に従い,マジストレイト判事は,電話その他信頼できる電子的手
段によって伝えられた情報に基づいて令状又は召喚状を発付することができ
る。
資料33-37第4.1条(電話その他信頼できる電子的手段によるコンプレイント,令状,
召喚状)
(a) 総則
マジストレイト判事は,
コンプレイントを審査する際や,
令状や召喚状を発
付するか否かを決定する際に,
電話その他信頼できる電子的手段によって伝え
られた情報を考慮することができる。
(b) 手続
マジストレイト判事が本条に基づいて手続を進めると決定した場合,
以下の
手続を適用する。
(1) 宣誓に基づく証言の取得
マジストレイト判事は,
請求者やその請求を基礎付ける証言を行うあらゆ
る者に対して宣誓をさせなければならず,その上で審査することができる。
(2) 証言及び証拠物に関する記録の作成
(A) 証明に限定された証拠
請求者が,
信頼できる電子的手段によって提出された書面である宣誓
供述書の内容を証明するにすぎない場合,マジストレイト判事は,当該
宣誓供述書について,書面による証明を認めなければならない。
(B) 追加の証言又は証拠物
マジストレイト判事が追加の証言又は証拠物を考慮する場合,
当該マ
ジストレイト判事は,
i 電子的記録装置,裁判所の記録係又は書面によって,証言を一語一句
そのままに記録しなければならない。
ii 記録や記録係のメモを反訳し,
当該反訳が正確であると認証し,
かつ,
これらを保管しなければならない。
iii その他の書面による記録に署名し,その正確性を認証し,保管しなけ
ればならない。
iv 確実に証拠物を保管しなければならない。
(3) コンプレイント,令状,召喚状の案の写しの準備
請求者は,コンプレイント,令状,召喚状の案の写しを準備しなければな
らず,読み上げるか他の方法で,マジストレイト判事に対し,その内容を一
資料33-38語一句そのまま伝達しなければならない。
(4) コンプレイント,令状,召喚状の原本の準備
請求者が案の写しの内容を読み上げる場合,マジストレイト判事は,
原本
のコンプレイント,令状,召喚状にその内容を記入しなければならない。請
求者が信頼できる電子的手段によってその内容を送信する場合,
マジストレ
イト判事が受信した内容が,原本として取り扱われる。
(5) 修正
マジストレイト判事は,コンプレイント,令状,召喚状を修正することが
できる。その場合,当該マジストレイト判事は,(A)請求者に対し,信頼で
きる電子的手段によって修正版を送信し,
又は,
(B)修正した原本を保管し,
当該請求者に対し,
それに応じた写しの案の修正を指示しなければならない。
(6) 発付
令状や召喚状を発付するために,マジストレイト判事は,(A)原本に署名
し,(B)令状又は召喚状を発付した日時を記載し,かつ,(C)請求者に対して
信頼できる電子的方法によって令状若しくは召喚状を送信するか,又は,請
求者に対し,写しに,当該マジストレイト判事の名前を署名し,日時を記入
するように指示しなければならない。
(c) 証拠排除の制限
悪意が認定されなければ,
本条に基づいて発付された令状により獲得された
証拠は,
本手法による令状の発付が当該状況の下では不合理であるという理由
では排除されない。
第5条(イニシャル・アピアランス)
(a) 総則
(1) 逮捕時の出頭
(A) アメリカ国内で逮捕を行った者は,法令上特段の定めがない限り,不
必要な遅滞なく被告人をマジストレイト判事又は本条(c)に規定される州
若しくは地方判事の下に連れて行かなければならない。
(B) アメリカ国外で逮捕を行った者は,法令上特段の定めがない限り,
不必
要な遅滞なく被告人をマジストレイト判事又は第5条(c)に規定する州
資料33-39又は地方の裁判官の下に連れて行かなければならない。
(2) (略)
(b)〜(e) (略)
(f) ビデオ会議
被告人が同意する場合,
本条の出頭手続について,
ビデオ会議を用いて行う
ことができる。
第9条(正式起訴状又は略式起訴状に基づく逮捕状又は召喚状)
(a) 発付
裁判所は,正式起訴状(インダイトメント,indictment)に名前が挙がって
いる被告人に対して,
又は,
略式起訴状
(インフォメーション,
information)
に名前が挙がっている被告人に対して
(略式起訴状に添附された1つ又は複数
の宣誓供述書により,
当該被告人が当該罪を犯したと認めるに足りる相当な理
由が疎明された場合に限る。),逮捕状又は連邦政府の請求があった場合には
召喚状を発付しなければならない。(以下略)
(b),(c) (略)
(d) 電話その他の手段による令状
第4.1条に従い,マジストレイト判事は,電話その他信頼できる電子的手
段によって伝えられた情報に基づいて逮捕状又は召喚状を発付することがで
きる。
第10条(罪状認否手続)
(a) 総則
罪状認否手続は公開の法廷で行われなければならず,
以下のものから構成さ
れなければならない。
(1) 被告人が正式起訴状又は略式起訴状の写しを所持するよう確保すること
(2) 正式起訴状若しくは略式起訴状を被告人に読み聞かせ,
又は被告人に訴追
内容を告げること
(3) 被告人に対し,正式起訴状又は略式起訴状に対する認否を求めること
(b) (略)
資料33-310(c) ビデオ会議
被告人が同意する場合,
罪状認否手続について,
ビデオ会議を用いて行うこ
とができる。
第41条(捜索及び押収)
(a)〜(c) (略)
(d) 令状の取得
(1),(2) (略)
(3) 電話その他信頼できる電子的手段による令状請求
第4.1条に従い,マジストレイト判事は,電話その他信頼できる電子的
手段によって伝えられた情報に基づいて令状を発付することができる。
(以下略)
第43条(被告人の在廷)
(a) 在廷が求められる場合
本条,第5条又は第10条に特段の定めがない限り,被告人は,以下の場合
に在廷していなければならない。
(1) イニシャル・アピアランス,最初の罪状認否手続及び答弁
(2) 陪審員の選任及び評決を含む全ての事実審(trial)の段階
(3) 量刑審(sentencing)
(b) 在廷が求められない場合
被告人は,以下の場合には,在廷することは要しない。
(1) (略)
(2) 軽罪
犯罪の法定刑が罰金若しくは1年以下の拘禁刑又はその併科であり,
かつ,
被告人の書面による同意がある場合,裁判所は,罪状認否手続,答弁,事実
審及び量刑審について,
ビデオ会議により,又は被告人の在廷なしで行うこ
とを許可することができる。
(以下略)
資料33-311第49条(書類の送達と提出)
(a) 当事者への送達
(1),(2) (略)
(3) 電子的手段による送達
(A) 裁判所電子提出システムの使用-弁護士が代理人となっている当事者
については,裁判所電子提出システムに書面を提出することによって登
録された利用者に書面を送達することができる。弁護士が代理人となっ
ていない当事者については,裁判所の命令又は地方の規則によって許可
された場合に限り,これを行うことができる。送達は,書面がシステム
に提出された時点で完了するが,送達する者が,送達されるべき者の下
に当該書面が到達しなかったことを知っているときは,その送達は無効
である。
(B) その他の電子的手段の使用-書面によって同意したその他の電子的手
段によって,書面を送達することができる。送達は,書面が送信された
時点で完了するが,送達する者が,送達されるべき者の下に当該文書が
到達しなかったことを知っているときは,その送達は無効である。
(4) (略)
(b) 提出
(1) (略)
(2) 提出の方法
(A) 電子的な提出方法-裁判所電子提出システムに提出することにより,
文書を電子的に提出する。
提出者の電子提出アカウントを通じてなされ,
当該提出者の署名欄に提出者の氏名が記載されて提出者により承認され
ている提出は,当該提出者の署名があるものとみなされる。電子的に提
出する場合,本規則による書面とみなされる。
(B) 非電子的な提出方法-非電子的な提出方法による場合,次の方法で提
出する。
i 書記官に送付する,又は
ii これを受理することに同意した裁判官に送付する。この場合,裁判官
は受領した書面に受領した日付を記載し,
これを直ちに書記官に送付し
資料33-312なければならない。
(3) 弁護士が代理人となっている当事者又は弁護人が代理人となっていない
当事者の使用する手段
(A) 弁護士が代理人となっている当事者-弁護士が代理人となっている当
事者は,非電子的な提出方法によることが正当な理由の下に裁判所に許
可され,又は地方規則(local rule)により許可若しくは要求されてい
る場合を除き,文書を電子的に提出しなければならない。
(B) 弁護士が代理人となっていない当事者-弁護士が代理人となっていな
い当事者は,電子的な提出方法によることが裁判所の命令又は地方規則
により許可されている場合を除き,文書を非電子的に提出しなければな
らない。
(以下略)
資料33-313【連邦行政命令集(第28編)】
第540.102条(被収容者による通話の監視)
収容施設の長は,施設内に設置された電話機による通話を監視することを可
能にする手続を定める。
かかる監視は,
施設の安全かつ秩序ある運営を維持し,
公衆を保護するために行われる。
収容施設の長は,
監視が行われ得ることを被収
容者に通知しなければならない。
職員は,
被収容者が適切に弁護人に対して行う
電話を監視することができない。収容施設の長は,被収容者に対し,監視を伴わ
ない弁護人との間の電話による通話を行うための適切な手順を教示する。
第540.103条(被収容者による弁護士への通話)
収容施設の長は,被収容者が手紙,面会又は通常の電話による弁護士とのコ
ミュニケーションが十分でないことを疎明した場合,被収容者による弁護士へ
の電話の回数を制限してはならない。
第540.104条(被収容者の電話の不正使用に対する責任)
被収容者は,電話の不正使用について責任を負う。収容施設の長は,被収容者
による違法な電話使用を法執行機関に通報する。
収容施設の長は,
被収容者に対し,電話通信に関する施設の規則に違反した場合,
施設における懲戒処分の対象
となり得ることを通知する。
第540.106条(コロナウイルス支援,救済及び経済的安全保障法
(CARES ACT)に基づくテレビ電話及び電話による通話)
(a) 新型コロナウイルス感染症に関して
「コロナウイルス支援,
救済及び経済的
安全保障法(CARES ACT)」が規定する「対象となる緊急期間」において,司
法長官が,当該緊急事態が刑務所局の機能に重大な影響を与えると判断した
場合,刑務所局は,個別事案ごとに,第540各条の規定にかかわらず,無償
で,テレビ電話及び電話による通話を行うことを許可することができる。
(b) テレビ電話及び電話による通話は,刑務所局の安全,セキュリティ,秩序維
持及び公衆の保護を確保するため,本サブパートのロジ面及び安全面に関す
る規定に沿う方法でのみ行われる。
資料33-314(c) 本条に基づくテレビ電話及び電話による通話は,
緊急事態の期間中,
司法長
官が指名する刑務所局長による,当該緊急事態が刑務所局の機能に引き続き
及ぼす重大な影響の程度に関する決定に基づき,
変更,
終了又は再開させるこ
とができる。
(d) 刑務所局のシステムや技術を不正使用した場合,第28編第541各条に
基づく通信制限,懲戒処分の両方又はいずれかの対象となることがある。
(e) 被収容者は,第28編第542各条に基づく刑務所局の行政救済プログラ
ムを通じて,本条に基づく刑務所局の決定に異議を申し立てることができる。
第540.204条(電話による通信の制限)
(注記) 本条は,テロリストや証人威迫の実質的な危険性があるなどの理由により指定された一部
の収容者についてのみ適用される。
(a) 監視下での電話通信は,近親者との間のものに限られる。かかる電話通信
は,1か月間に3回に限り,1回当たり15分以内とする。収容施設の長
は,かかる電話通信を英語で行うか,承認された通訳者によって通訳される
ことを要求することができる。
(b) 監視を伴わない電話通信は,被収容者の弁護人との間の特権的なものに限
られる。被収容者の弁護人との間の監視を伴わない特権的な電話通信は,進
行中の訴訟のために必要であり,信書,訪問又は監視下での電話通信による
弁護人とのやり取りが緊急又は差し迫った期限のために適切ではないことを
疎明した場合に認められる。
資料33-315【コロナウイルス支援,救済及び経済的安全保障法(CARES ACT)】
第15002条(b)(刑事手続のためのビデオ会議)
(1) 総則-(3),(4)及び(5)に従い,新型コロナウイルス感染症に関して,大統領が
国家緊急事態法
(合衆国法典第50編第1601条等)
に基づいて宣言した国
家非常事態による緊急事態が,連邦裁判所全体又は特定の連邦地方裁判所の
機能に重大な影響を与えるものと米国司法議会が判断した場合,連邦地方裁
判所長((略))は,司法長官又は司法長官から指名を受けた者の申立て又は
裁判官からの提案により,
以下の手続について,
ビデオ会議又はビデオ会議の
利用が適さない場合は電話会議の利用を許可することができる。
(A) 合衆国法典第18編第3142条に基づく勾留審問(Detention
Hearing)
(B) 連邦刑事訴訟規則第5条に基づくイニシャル・アピアランス
(C) 連邦刑事訴訟規則第5.1条に基づく予備審問(Preliminary Hearing)
(D) 連邦刑事訴訟規則第7条(b)に基づく大陪審による起訴手続の放棄
(Waivers of indictment)
(E) 連邦刑事訴訟規則第10条に基づく罪状認否手続
(F)〜(H) (略)
(I) 連邦刑事訴訟規則第43条(b)(2)に基づく軽罪の答弁及び量刑審
(J) (略)
(2) 重罪の答弁及び判決-
(A) 総則-(3),(4)及び(5)に従い,新型コロナウイルス感染症に関して,大統
領が国家緊急事態法
(合衆国法典第50編第1601条等)
に基づいて宣言
した国家非常事態による緊急事態が,
連邦裁判所全体又は特定の連邦地方裁
判所の機能に重大な影響を与えるものと米国司法議会が判断した場合で,連邦地方裁判所長((略))において,司法長官又は司法長官から指名を受け
た者の申立て又は裁判官からの提案により,
連邦刑事訴訟規則第11条に基
づく重罪の答弁及び同規則第32条に基づく重罪の判決について公衆衛生
及び公衆の安全を深刻な危険にさらすことなしに対面で行うことができず,
かつ,
個別の事案において当該答弁又は判決手続をそれ以上遅らせることが
正義に反すると特に認めた場合は,
それらの手続について,
ビデオ会議又は
資料33-316ビデオ会議の利用が適さない場合は電話会議の利用を許可することができ
る。
(B) (略)
(3) (略)
(4) 同意-(1)又は(2)に基づいて許可されたビデオ会議又は電話会議は,被告人
の同意を得た上で,被告人が少年の場合弁護人と相談した後で少年の同意を
得た上でのみ行うことができる。
(以下略)
資料33-317【合衆国法典(第18編)】
第3509条(児童の被害者及び証人の権利)
(a) (略)
(b)(1)(A) (略)
(B) 裁判所は,次の各号に定める理由により,児童(注:18歳未満
の者であって,身体的虐待,性的虐待・搾取に係る犯罪の被害者,
又は,他の者に対して行われた犯罪の証人となる者)が,被告人の
いる公開の法廷において証言することができないと認めた場合に
は,(A)に規定されているような閉回路テレビ会議システム(注:
証人が所在する法廷以外の場所と,法廷との間で,双方向に送受信
する閉回路テレビ会議システム)によって当該児童の証人尋問を実
施することができる。
(i) 当該児童が恐怖のため証言することができないとき
(ii) 専門家の証言に基づき,当該児童が,証言をすることによっ
て心的外傷を被る実質的なおそれがあると認められるとき
(iii) 当該児童が精神的又はその他の疾患を患っているとき
(iv) 被告人又は弁護人による行為により,当該児童が証言を続け
ることができないとき
(以下略)
以 上
資料33-41ドイツ(令和3年12月時点)
(注記) 本資料中,別段の記載がない限り,引用法令は全て刑事訴訟法である。
1 書類の電子データ化,発受のオンライン化
(1) 関係者間における発受のオンライン化の在り方
〇 現行法において,
「記録」
(注:
「複数の文書の意識的な編成」
とされる。)は電子的に作成することができるとされ(第32条1項1文)
,記録が電
子的に作成される場合,刑事捜査機関及び裁判所は,相互に,当該記録を
構成する文書について,
これを電子文書として送信することとされている
(第32b条3項。同規定は,警察や検察といった刑事捜査機関相互の間
における文書のやり取りにも適用されると解されている。)。
なお,2017年の法改正により,2026年以降,
「記録」は電子的に
作成することとされ,刑事手続における文書の完全電子化が行われること
が決定されている。
〇 弁護人等は,
「刑事捜査機関又は裁判所による処理に適したもの」であ
れば,刑事捜査機関及び裁判所に対して,電子文書を提出することが可能
である(第32a条1項,2項)
。なお,弁護人については,2022年以
降,書面等を電子文書として提出することが義務付けられる(2022年
1月1日施行予定の第32条d)。(2) 書類の電子データ化の在り方
〇 刑事捜査機関又は裁判所の文書が電子文書として作成される場合,
全て
の責任者の名前が文書に記載されなければならず,書面として作成され,
署名がなされるべき電子文書については,全ての責任者(注:当該文書の
記載内容に責任を負う者をいう。
)の適格電子署名(注:作成時点で有効
な適格証明書((注記)1)に依拠し,かつ,安全な署名作成基準に基づいて作
成された電子署名をいうとされる。
)が付されなければならない(第32
b条1項)
((注記)2)。〇 弁護人が刑事捜査機関等に提出する電子文書のうち,
書面として作成さ
資料33-42れ,署名がなされるべき電子文書については,責任ある者の適格電子署名
を付して作成する等の方法で提出する必要がある(第32a条3項)。しろまる 非電子的な文書を電子文書に書き換える場合,書換えに用いた手続と,
元の非電子的な文書と書換え後の電子文書の外観及び内容が一致してい
ることを記載した書換え証明を付さなければならない
(第32e条3項)。(注記)1 政府が認可した民間企業が,qualified trust service provider として電
子証明書を発行する。
(注記)2 公務員が職務上作成する電子データに電子署名を付与する場合,署名カー
ド及びPINコードの使用が想定されている。
(3) 令状手続の電子化
現状,令状は紙媒体により発付・執行されている(法制上は令状手続を電
子化することが可能であるが(第32b条)
,試験的なものを含めて,運用
に至っていない。)。
(4) 証拠収集・証拠開示
ア 証拠収集
捜査機関が通信事業者等から電子データを押収する場合の対象データ
の受渡し方法について,刑訴法上特段の定めはない。
イ 証拠開示
弁護人に対する証拠(電子的に作成された「記録」
)の開示は,記録の
内容を読み出すことによって行う(第32f条1項)
。実際には,通常,
連邦と州が開設した
「記録閲覧ポータル」
というサイトにおいて行われる。
ドイツ全土の裁判所と検察庁は,
同サイトを利用して,
記録を閲覧に供
することができる。弁護人は,記録閲覧を申請し,裁判所又は検察庁がそ
の記録閲覧を認めた場合,
同サイトにログインするための仮のユーザーI
Dの通知を受け,
同IDを利用して同サイトにログインし,
該当する記録
を呼び出して閲覧することができる。
同サイトを通じて閲覧する場合,記録の不正提供を抑止するため,
「記
録を閲覧した者の名前は,
技術的措置により,
読み出された記録及び送信
された電子文書において,
技術的水準に応じて,
永続的に認識し得る状態
にすべきである」とされる(第32f条4項)
。記録を閲覧することが認
められた者は,入手した記録等を公にし,手続外の目的で第三者に渡し,
資料33-43又は第三者が見られる状態にしてはならない(同条第5項)。(5) その他
動画データについては,
データそのものが証拠として取り扱われることに
なる(当該データを保存した記録媒体については,証拠と同様に,安全に管
理しなければならないとされる。)。
電子化された証拠の公判廷における証拠
調べは,刑事訴訟法第86条に規定された「検証」によって行われる。
2 オンラインを活用した非対面・遠隔化
(1) 被疑者,参考人の取調べ等
〇 参考人の取調べについて,
「画像と音声で同時に送信する方法」により
行うことができる(第58b条,第161a条1項2文,第163条3項
2文)。〇 被疑者について同様の規定はないが,概説的な聴取については,電話や
テレビ電話を利用して行うことができるとされている。
(注記) 供述調書における供述者
(被疑者又は参考人)
の署名は必要的とされておらず,
供述者の署名がない場合には,
その理由を記載すれば足りるとされている
(第1
68a条3項,第168b条2項)
。これを受けて,バイエルン州司法省では,
供述調書における供述者の署名について,署名パッドを用いた署名を利用する
ことができるものとしている。
〇 勾留審査(第117条)において,被疑者又は被告人が遠隔地にいるた
め,若しくは病気のため,その他除去することのできない障害のために引
致できないとき,
裁判所は,
被疑者又は被告人が滞在する場所及び法廷に,
映像と音声で同時に中継する方法で,
口頭弁論を行うよう命じることがで
きる(第118a条2項)。(2) 弁護人による接見
身体を拘束されている被疑者又は被告人には,
書面及び口頭による弁護人
との交通が許される(第148条1項)
。同規定にいう交通には,テレビ電
話等の遠距離通信手段による接見も含まれるとされている。
具体的な規定は,各州法による((注記)1)
((注記)2)。(注記)1 バイエルン州勾留手続法
21条(テレコミュニケーション)
・ 勾留中の者は,緊急の場合には,安全上,秩序維持上及び施設の場所的・人
的・組織的関係上の問題がない限り,
施設長の許可を得て電話をすることがで
きる。施設入所後,可能な限り時間的に近接した時点において,電話をするこ
とが許されなければならない(1項)。 資料33-44・ 訪問者との接見の監視・中断等に関する規定は電話にも準用される
(2項)。・ 電話以外の方法の利用を要求する権利はない(3項)。22条(弁護人との交流に関する規定)
・ 21条1項の要件を充足する場合には,
弁護人との監視なき電話接見が許さ
れなければならない。
(注記)2 ベルリン州勾留手続法
40条(テレコミュニケーション)
・ 刑事収容施設は,勾留中の者に対して,電話を許可することができる。
・ 必要があれば,
電話接見の内容を監視することができるが,
弁護人との電話
接見の内容を監視することは許されない。
(3) 主に公判段階における手続
〇 訴訟関係者(裁判官,検察官及び弁護人)がオンライン方式により公判
廷に出廷することは認められていない。
〇 鑑定人以外の証人については,
公判に在廷している者の面前で尋問すれば,その証人の福祉に重大な不利益をもたらす差し迫った危険があるとき,
裁判所は,オンライン方式で証人尋問を行うことができる(第247a条
1項)
。証人の所在場所は,裁判長の判断に委ねられており,裁判所外の
建物における適切な設備が備わった部屋(国外にある場所でも良い。)も念頭に置かれている。
〇 他方,鑑定人については,裁判所は,
(特段の実体的要件なしに)オン
ライン方式で尋問を行うことができる(第247a条2項)
。通訳人につ
いても,裁判所は,
(特段の実体的要件なしに)法廷とは別の場所に滞在
することを許可することができる(裁判所構成法第185条1a項)。〇 その他,被告人質問,参審員の選任・公判審理への参加,傍聴について
オンライン化は進んでおらず,その予定もない。
(関連規定)
・ 刑事訴訟法
・ 裁判所構成法
資料33-45しろまる 関連規定(仮訳)
* 注記は,事務当局において付したものである。
【刑事訴訟法】
第32条(電子的な記録の作成,命令の制定権限)
1 記録は電子的に作成することができる。
連邦政府及び州政府は,
法規命令に
より,
それぞれの管轄区域において,
記録が電子的に作成される開始時期を定
める。その際,電子的な記録作成を,個別の裁判所若しくは刑事捜査機関,又
は一般的に定められた手続に限定して導入することができ,
また,
紙の形式で
作成されてきた記録は,
電子的な記録作成が導入された後も,
継続して紙の形
式で作成することを定めることができる。
上記の権限がなされる場合には,どの手続で記録が電子的に作成され得るのかが公示される行政規則により規定
されることを,
法規命令において定めることができる。
連邦政府及び州政府は,
法規命令の制定権限を,担当の連邦省又は州省に委任することができる。
2 連邦政府及び州政府は,法規命令により,それぞれの管轄区域において,電
子的な記録作成に適用される組織上の条件及び技術状況に対応した技術的条
件を定める。そこには,データ保護,データ保全及びバリアフリーについて遵
守すべき要求が含まれる。連邦政府及び州政府は,法規命令の制定権限を,担
当の連邦省又は州省に委任することができる。
3 連邦政府は,連邦参議院の同意を得て,法規命令により,刑事捜査機関と裁
判所の間の電子記録の送信に適用される基準を定める。
連邦政府は,
連邦参議
院の同意を得ることなく,法規命令の制定権限を担当の連邦省に委任するこ
とができる。
第32a条(刑事訴追機関及び裁判所との電子的な法的交信:命令の制定権限)
1 電子文書は,
次項以下の基準に従って,
刑事捜査機関及び裁判所に提出する
ことができる。
2 電子文書は,刑事捜査機関又は裁判所による処理に適したものでなければ
ならない。連邦政府は,連邦参議院の同意を得て,法規命令により,送信と処
理に適した技術条件を定める。
資料33-463 書面として作成され,
署名がなされるべき文書は,
責任ある者の適格電子署
名が付された電子文書として作成されるか,又は責任ある者により署名がな
され,かつ,安全な送信方法により提出されなければならない。
4 安全な送信方法とは,以下のものをいう。
(1) De-Mail アカウントの電子私書箱サービス及び送受信サービス。ただし,
送信者が,情報の発信の際に,De-Mail 法第4条1項2文の意味における安
全なログインを行い,かつ,De-Mail 法第5条5項に従って,安全なログイ
ンを確認し得る場合に限る。
(2) 連邦弁護士法第31a条に基づく弁護士用特別電子私書箱又はそれに対
応する法律上の根拠に基づいて創設された電子私書箱と,
官庁又は裁判所の
電子私書箱の間の送信手段
(3) 本人確認手続の遂行後に設定された官庁又は公法上の法人の私書箱と,裁判所の電子私書箱の間の送信手段。
詳細は,
2項2文に基づく命令によって
定める。
(4) 連邦参議院の同意を得て連邦政府の法規命令により定められ,
かつ,
デー
タの完全性と不可侵性及びバリアフリーが保証された,
連邦で統一されたそ
の他の送信手段
5 電子文書は,受領用に定められた官庁又は裁判所の装置に記録されると同
時に,到達したものとする。送信者に対しては,到達の時点についての自動化
された認証が与えられなければならない。
6 電子文書が官庁又は裁判所の処理に適合していない場合には,有効に到達
していないこと及び通用する技術的条件を示した上で,そのことを遅滞なく
送信者に告知しなければならない。
送信者が,
官庁又は裁判所の処理に適した
形式で,
遅滞なく再提出し,
その内容が最初に提出した文書と一致しているこ
とを疎明した場合には,
電子文書は,
最初の提出の時点で到達したものとする。
第32b条(刑事訴追機関及び裁判所の電子文書の作成と送信:命令の制定権限)1 刑事捜査機関又は裁判所の文書が電子文書として作成される場合には,全
ての責任者の名前が文書に記載されなければならない。書面として作成され,
資料33-47署名がなされるべき文書については,
それに加えて,
全ての責任者の適格電子
署名がなされなければならない。
2 電子文書は,責任者により,又はその指示に基づき,電子記録に記録される
と同時に,記録としてつづられたことになる。
3 記録が電子的に作成された場合には,
刑事捜査機関と裁判所は,
文書は相互
に電子文書として送信する。起訴状,公判外での略式命令の発付の請求,控訴
とその理由,上告及びその理由と反論,電子文書として作成された裁判は,電
子文書として送信しなければならない。技術的な理由からそれが一時的に不
可能である場合には,紙の形式での伝達も許される。請求があれば,電子文書
を事後に送信しなければならない。
4 謄本及び認証謄本は,
紙の形式で,
又は電子文書として作成することができ
る。
電子認証謄本は,
認証する者の適格電子署名を付して作成しなければなら
ない。紙の形式の認証謄本が,適格電子署名を付して作成され,又は安全な送
信手段によって提出された電子文書によって書き換えられる場合には,認証
の記載は,電子文書の真正と完全性の審査の結果を含んでいなければならな
い。
5 連邦政府は,
連邦参議院の同意を得て,
法規命令により,
電子文書の作成と,
刑事捜査機関と裁判所の間の電子文書の送信に適用される基準を定める。連
邦参議院の同意を得ることなく,法規命令の制定権限を担当の連邦省に委任
することができる。
第32c条(電子フォーム,法定文書の発行権限)
連邦政府は,連邦参議院の同意を得て,法規命令により,電子書式を導入する
ことができる。
法規命令において,
書式に含まれる情報の全て又はその一部が,
構造化された機械で読み取ることができる形式で送信されなければならないこ
とを定めることができる。
書式は,
法規命令で定められるインターネットのコミ
ュニケーション・プラットフォームにおいて利用できるようにしなければなら
ない。また,法規命令において,第32a条3項とは異なり,身分証明書法第1
8条又は滞在法第78条3項に基づく電子的な人定証明を利用することにより,
電子書式の利用者の人定確認をすることができる旨を定めることができる。連
資料33-48邦政府は,
連邦参議院の同意を得ることなく,
法規命令の制定権限を担当の連邦
省に委任することができる。
第32d条
(未施行)
(注記) 弁護人について,2022年以降,書面等を電子文書として提出するこ
とを義務付ける規定である(2022年1月1日施行予定)。第32e条(記録作成のための文書の書換え)
1 記録の作成形式に対応していない文書(規格外文書)は,対応する形式に書
き換えることができる。
証拠手段として押収されている規格外文書も,
対応す
る形式に書き換えなければならない。
2 書換えの際には,技術水準に応じて,書換えがなされた文書が,規格外文書
と外見及び内容において一致していることが保証されなければならない。
3 非電子的な規格外文書を電子文書に書き換える場合には,書換えの際に用
いた手続と,外観及び内容が一致していることを記載した書換え証明を付さ
ねばならない。責任ある者による手書きの署名のある刑事捜査機関又は裁判
所の書類を電子文書に書き換える場合には,書記官の適格電子署名を付した
書換え証明がなされなければならない。
適格電子署名を付して作成され,
又は
安全な送信手段によって提出された電子的な規格外文書の書換えの場合には,
その文書の真正と完全性の審査の結果を記録にとどめなければならない。
4 証拠方法として押収されていない規格外文書は,手続が進行している間は,
書換えから少なくとも6か月間,
蔵置又は保管しなければならない。
最大限,
時効が完成した年の末まで,
蔵置又は保管することができる。
手続が終了した
場合には,証拠手段として押収されていない規格外文書は,最大限,手続が終
了した翌年の終わりまで,蔵置又は保管することができる。
5 証拠方法として押収されていない規格外文書は,押収されている証拠手段
と同様の要件の下で閲覧することができる。
記録の閲覧権を持つ者が,
それを
閲覧することができる。
資料33-49第32f条(記録閲覧権の保障の形態:命令の制定権限)
1 電子記録の閲覧は,
記録の内容を読み出すことによって行う。
特別な申請が
あれば,
事務室において電子記録を閲覧することによって行われる。
記録をプ
リントアウトしたもの又は電子記録の内容を記録した記録媒体は,申請者が
特別な利益を有している場合にのみ,理由を記した特別な申請に基づき提供
することができる。第1文に規定された形式での記録の閲覧を妨げる重大な
理由がある場合には,
申請なしに,
2文及び3文に規定された形式での閲覧を
することができる。
2 紙形式の記録の閲覧は,
事務室において記録を閲覧することにより行う。それを妨げる重大な理由がなければ,
(電子版を作成して)記録の内容を呼び出
す方法で,又は記録のコピーを持ち帰る方法で,閲覧を行うことができる。弁
護人又は弁護士は,
それを妨げる重大な理由がない限り,
特別な申請に基づき,
閲覧のために,記録を事務所又は自宅に持ち帰ることができる。
3 1項又は2項に基づく閲覧の方法に関する判断に対しては,不服を申し立
てることはできない。
4 技術的及び組織的な措置により,
記録の閲覧において,
第三者が記録の内容
を知ることができないことが保証されなければならない。記録を閲覧した者
の名前は,
技術的措置により,
読み出された記録及び送信された電子文書にお
いて,技術的水準に応じて,永続的に認識し得る状態にすべきである。
5 記録の閲覧が認められた者は,
1項及び2項に基づいて入手した記録,
文書,
プリントアウトしたもの若しくはコピーの全部又は一部を,
公にし,
手続外の
目的で第三者に渡し,
又は第三者が見られる状態にしてはならない。
第1項及
び第2項に基づいて得た個人関連データは,記録閲覧が認められた目的にの
み利用することができる。他の目的のために個人関連データが利用できるの
は,データの伝達又は記録の閲覧がその目的のために認められている場合の
みである。
記録の閲覧が認められた者には,
目的による利用の制限があること
を教示しなければならない。
6 連邦政府は,連邦参議院の同意を得て,法規命令により,電子文書の閲覧に
適用される基準を定める。
連邦参議院の同意を得ることなく,
法規命令の制定
権限を,担当の連邦省に委任することができる。
資料33-410第58b条(画像・音声の送信を通じた尋問)
公判廷外での証人尋問は,
証人が尋問者とは異なる場所に滞在した上で,
尋問
の様子を,
証人がいる場所と尋問をしている部屋に,
画像と音声で同時に送信す
る方法で行うことができる。
第86条(裁判官による検証)
裁判官が検証をしたときは,調書に,認識した事物の状態を明記し,また,事
件の特性から判断して存在したと推測される証跡又は特徴が逸失しているとき
は,これを示しておかなければならない。
第117条(勾留審査)
1 被疑者又は被告人は,
勾留されている間はいつでも,
勾留状の取消し又は第
116条による勾留状執行の猶予について,裁判所の審査を請求することが
できる(勾留審査)。2〜3 (略)
第118a条(勾留審査における口頭弁論)
1 口頭弁論の日時及び場所については,
検察官,
被疑者又は被告人及び弁護人
にこれを通知する。
2 被疑者・被告人は,弁論期日にこれを引致する。ただし,被疑者・被告人が
立会いを放棄したとき,又は被疑者・被告人が遠隔地にいるため,若しくは病
気のため,その他除去することのできない障害のために引致できないときは,
この限りでない。上記の要件が満たされている場合には,裁判所は,被疑者・
被告人を裁判所以外の場所に滞在させ,弁論を,被疑者・被告人が滞在する場
所及び法廷に,
映像と音声で同時に中継する方法で,
口頭弁論を行うよう命じ
ることができる。被疑者・被告人を口頭弁論に引致せず,かつ前項の手続がと
られなかったときは,
弁護人が弁論において被疑者・被告人の権利を行使しな
ければならない。この場合において,被疑者・被告人に弁護人がないときは,
口頭弁論のために弁護人を任命する。この任命については,第142条,第1
資料33-41143条及び第145条(注:公選弁護人の選定・解任等の規定)を準用する。
3,4 (略)
第148条(被疑者又は被告人と弁護人の交通)
1 被疑者又は被告人には,
身体を拘束されている場合であっても,
書面及び口
頭による弁護人との交通が許される。
2 (略)
第161a条(検察官による証人及び鑑定人の尋問)
1 証人又は鑑定人は,
召喚を受けたときは,
検察官の下に出頭して事実につい
て供述し,又は鑑定する義務を負う。証人及び鑑定人に関する第1編第6章
(注:
「画像・音声の送信を通じた尋問」について定める第58b条を含む。)及び第7章の規定は,
特別の定めがある場合を除いては,
本条の証人又は鑑定
人に準用する。
(以下略)
2〜5 (略)
第163条(捜査手続における警察の責務)
1,2 (略)
3 証人は,召喚を受けた場合で,その召喚が検察官の指示に基づくときは,検
察官の補助官の下に出頭して事実について供述する義務を負う。特段の定め
のない限り,第1編第6章(注:
「画像・音声の送信を通じた尋問」について
定める第58b条を含む。
)の規定を準用する。
(以下略)
第168a条(裁判官による審問行為の調書の様式)
1,2 (略)
3 調書は,手続に関与した者に対し,その関係部分について,確認のためにこ
れを読み聞かせ,
閲覧のために提示し,
又は画面に表示しなければならない。
確認があったことは,調書に記載するものとする。調書には,訴訟関係人が署
名し,また,署名がないときはその理由を記載するものとする。
(以下略)
4 調書には,裁判官及び調書作成者が署名しなければならない。
(以下略)
資料33-412第168b条(捜査機関による審問行為に関する調書)
1 検察官による審問行為の結果は,書面で記録しなければならない。
2 被疑者,証人又は鑑定人の尋問については,
(中略)第168a条の規定に
より調書を作成しなければならない。
(以下略)
3 (略)
第247a条(音声映像機器を用いる方式による証人尋問の命令)
1 公判に在廷している者の面前で証人を尋問すればその証人の福祉に重大な
不利益をもたらす差し迫った危険があるときは,
裁判所は,
証人がその尋問中
(法廷外の)別の場所にいるよう命じることができる。
(略)この裁判に対し
ては,不服を申し立てることができない。証言は,映像及び音声により,同時
的に法廷に伝達される。証人がその後の公判手続では尋問できないおそれが
あり,
証言の記録が真実解明のため必要であれば,
証言を記録しなければなら
ない。
(以下略)
2 裁判所は,鑑定人に対する尋問を,鑑定人が裁判所以外の場所に所在し,尋
問の音声と映像を同時的に鑑定人の所在する場所と審理室に伝達する方法で
行うことを命じることができる。
(以下略)
資料33-413【裁判所構成法】
第185条
1a 裁判所は,通訳人に対し,審理,聴聞又は尋問の間,他の場所に滞在する
ことを許可することができる。審理,聴聞又は尋問の映像及び音声は,リアル
タイムで(通訳人の)滞在地と法廷との間で中継される。
(以下略)
以 上
資料33-51フランス(令和3年12月時点)
(注記) 本資料中,別段の記載がない限り,引用法令は全て刑事訴訟法典である。
1 書類の電子データ化,発受のオンライン化
(1) 関係者間における発受のオンライン化の在り方
〇 司法警察業務を行う公務員等は,捜査,予審若しくは裁判に係る書面又
は他のあらゆる訴訟関係書類について,デジタル形式によって作成し,又はデジタル形式に変換した上で,
司法当局に提出することができる
(第8
01-1条,D589条等)。
〇 弁護人は,
デジタル形式で不服申立書面や主張書面等の書類を提出する
ことが可能であり(D589条,A53-9条),デジタル形式で提出さ
れた書類については,後述の「デジタル刑事記録」に編入される。
しろまる 刑事訴訟手続におけるあらゆる局面において,
書面を電子的に送信する
ことが可能であり((注記)1),被告人や被害者を含む訴訟手続の関係者全体
が電気通信の対象者であるとされ,
被疑者に対する通知や召喚についても,
電子的方法によって行うことができる
(第803-1条)
((注記)2)
((注記)3)。(注記)1 電子的方法の利用は,その利用に先立ち,当事者が明示的に同意した場合
に限られ,
かつ,
当該同意に際して,
当事者が利用を受諾する電気通信方式を
定めるものとされている(第803-1条II-1項)。
(注記)2 利用される電気通信方式は,実務上,SMSの送信又は電子メールの送信
のいずれかである。
(注記)3 2019年に,電子的方法による資料の送付に係るプラットフォームが整
備された。
(2) 書類の電子データ化の在り方
〇 刑事訴訟法典に掲げるあらゆる書面であって,捜査,予審若しくは裁判
に係る書面又は他のあらゆる訴訟関係書類について,
デジタル形式により
作成し,又はデジタル形式に変換することができる(第801-1条,A
53-7条)。
訴訟関係書類をデジタル形式で作成するに際し,署名を要するときは,
デジタル形式による署名((注記)1)によることが可能である(第801-1
条)。なお,デジタル形式に変換した後の書類については,所持者に返還
資料33-52するか,又は廃棄することができる(D589条4項)。
〇 訴訟記録は,その全てを,「デジタル訴訟記録」として,デジタル形式
によって保存することができる(同条)。デジタル形式での訴訟記録は,
司法官(注:裁判官及び検察官を指す。)等において,受理・作成・変換
した訴訟関係書類から構成される((注記)2)。
〇 デジタル訴訟記録を利用するため,各裁判機関において,訴訟関係書類
をデジタル形式で記録し,
「デジタル刑事記録」
に編入する処理を行う
((注記)3)((注記)4)。
(なお,デジタル形式で作成・変換されたあらゆる訴訟関係
書類は,必要に応じ,司法官,司法警察員等がこれを紙媒体に印刷して送
付し,又は関係者に手交することができる(A53-8条)。)
((注記)5)。
(注記)1 デジタル形式による署名は,1電子署名(具体的には,職員カード(carte
agent)
により認証した上,
PINコードを使用することが想定されている。),
2デジタル形式で収集された手書きの署名
(デジタル署名。
具体的には,
タブ
レット画面等の上にペン又は指で署名することが想定されている。)の2つ
が想定されており,
このほか,
3署名者の人的識別が要請されないときは,電子シールによることができる
(第801-1条,
D589-2条,
D589-
5条)。
(注記)2 デジタル訴訟記録は,安全性が確保された電子保管システムに保管され,
システム上,
閲覧,
追加,
移動,
消去及び抽出操作の追跡が可能となっており,
かつ,電子指紋によって,保管された書類のあらゆる事後的変更を検出する
ことができる(A53-6条)。
(注記)3 デジタル刑事記録には,1司法警察員,司法警察職員又は司法警察活動を
担う者が作成した調書及び報告書並びにこれらに添付された報告書,2鑑定
人等の作成した書面,3司法官や司法当局が作成した書面,4裁判書の正本
等が編入されるほか(R249-10条),訴訟関係当事者(証人,被害者,
被疑者,被告人,有罪宣告を受けた者,弁護士,鑑定人等)の人定事項,被疑
者・被告人等の前科・前歴,宣告刑の内容等が記録される。
(注記)4 デジタル刑事記録は,1公訴権が消滅するまでの間,2裁判機関に係属し
た場合には,裁判機関が実体審理を経て終局裁判を行うまでの間,3有罪宣
告がなされた場合には,刑執行終了までの間(又は刑の時効が完成するまで
の間),アクティヴデータベースで保存され(例外的に,裁判書の正本につい
ては,これが言い渡された日から8年間アクティヴデータベースで保存され
る。),その後は,必要に応じ,非アクティヴデータベース上で保存される。
(注記)5 デジタル形式で署名することとなった書類については,印刷後において,
i.(印刷を行った司法官や司法警察員等が所属する)部局が保持するデジタ
ル形式版に忠実なものである旨の単一の証明書が添付されたとき,
又はii.各
印刷について,これらの部局によって忠実性が確保された印刷である旨を証
する記載の対象となるときは,証拠としての価値を有する(A53-8条2
項)。
(3) 令状手続の電子化
予審判事は,
捜索状,
召喚状,
勾引状及び勾引勾留状を発付することがで
資料33-53きるところ,
これらの令状については,
デジタル形式で作成することができ
る(第801-1条)。令状がデジタル形式で作成された場合,令状を発付
した予審判事の署名は,デジタル形式による。
デジタル形式で作成された令状のうち,
1召喚状については,
対象者に通
告し,
2捜索状・勾引状及び勾引勾留状については,
対象者に通告してこれ
を執行し,その際,対象者に提示するものとされ,さらに,対象者は,これ
ら令状のいずれについても,
令状の写しの交付を受けるとされている
(第1
23条)ところ,これら「通告」・「提示」・「交付」の各態様について法
文上の制限はなく,
理論上は,
デジタル形式で作成された令状をタブレット
端末等の映像面に表示して
「提示」
することや,
デジタル形式のまま電磁的
方法により送信するなどして「交付」することが可能である。
(4) 証拠収集・証拠開示
ア 証拠収集
司法警察員等は,電子データ等を保有する機関等に対して,その管理に
係る情報処理システム等に含まれる情報を提供するよう請求することで,
これを入手することができる(第60-2条)。
同条に基づく通信事業者が保有する電子データの請求及び取得は,
技術
的に不可能な場合を除き,
「国家司法傍受プラットフォーム」を介してこ
れを行う(第230-45条I-2項)。
イ 証拠開示
弁護人に対しては,
デジタル刑事記録が開示される
(R249-13条)。2 オンラインを活用した非対面・遠隔化
(1) 被疑者,参考人の取調べ等
司法の円滑な運営のため,被疑者を含む関係者の尋問,
勾留されている者
の予審判事による尋問,
警察留置又は司法留置延長のための出頭,
未決勾留
延長のための対審審理などの手続について,
テレビ会議システム等の電気通
信手段((注記)1)((注記)2)を用いて行うことができる(第706-71条,R5
3-33条ないしR53-39条)。
(注記)1 利用可能な電気通信手段は,
音声による電気通信手段
(電話)
又は視聴覚電気
通信手段(いわゆるテレビ会議システムを含む。)の二つである。ただし,警察
留置又は司法留置の延長のための出頭に際しては,視聴覚電気通信手段のみを
資料33-54用いることができる(R53-33条)。
(注記)2 未決勾留又は未決勾留の延長を裁定する審理に関する場合において勾留に付
された者が審理日及び当該手段の使用が検討されている旨の通知を受けたとき
などには,
勾留に付された者等は,
視聴覚電気通信手段の使用を拒否することが
できる。ただし,公序に重大な混乱をもたらし,又は,逃亡するおそれがあるこ
とを理由として,
移送を回避すべきものと認めるときはこの限りでない
(第70
6-71条4項)。
(2) 弁護人による接見
弁護人は,未決勾留に付された者との間で,予審判事の許可を得て,電
話で接見をすることが可能である(第145-4条1項,2項)。
(3) 主に公判段階における手続
〇 司法の円滑な運営のため,軽罪裁判所への被告人の出頭(ただし,検事
正・全当事者の同意が必要),証人,附帯私訴原告又は鑑定人の尋問,判
決言渡期日への被告人の出頭などについて,
上記2(1)記載の電気通信手段
を用いて行うことができる(第706-71条,R53-33条ないしR
53-39条)。その場合における証人の所在場所に関する特段の限定は
なく,外国に所在する者について証人尋問を実施することもできる。
しろまる 尋問中に通訳人の援助が必要な場合において,
通訳人がその場に赴くこ
とが不可能なときは,
尋問又は対質を電気通信手段により行うこともでき
る(第706-71条)。
〇 現時点においては,
参審員など公判審理に関与する国民のオンラインに
よる参加・評議や,オンラインによる公判傍聴の実施は,想定されていな
いとのことである。
(関連規定)
・ 刑事訴訟法典
資料33-55〇 関連規定(仮訳)
* 注記は,事務当局において付したものである。
【刑事訴訟法典】
* 項番号(ローマ数字及び丸囲みの号番号を除く。)及び各条文の括弧内の条見出し
は,法文にはないが,便宜上付したもの
第60-1条(通信事業者が保有する電子データの押収)
1 検事正,
司法警察員又はその監督下にある司法警察職員は,
情報処理システ
ム又は記名データの処理から生ずるものを含め,捜査に関係する情報を所持
している可能性のあるあらゆる者,あらゆる公私の施設若しくは団体又はあ
らゆる官公庁に対し,
必要に応じて法令に定める規範に従い,
取り分けデジタ
ル形式により,
これを提出するよう,
適宜の方法により求めることができる。
正当な理由がない限り,職業上の秘密を理由にこの請求を拒否することはで
きない。
この請求が第56-1条ないし第56-5条に掲げる者
(注:弁護士,
出版社等,
医師等,
国防の秘密に関わる者及び裁判の秘密に関わる者を指す。)に関するものであるときは,
これらの者の同意がなければ,
情報を提出するこ
とができない。
2 第56-1条ないし第56-5条に掲げる者を除き,
遅滞なく,
又は必要に
応じて求められた期間内に前項の請求に応じない行為は,3750ユーロの
罰金で罰する。
3 報道の自由に関する1881年7月29日法律2条に違反する請求によっ
て得られた要素は,
事件記録に編てつすることができず,
編てつした場合には
これを無効とする。
第60-2条
1 前記2016年4月27日(UE)規則9条2d並びに情報処理,ファイル
及び自由に関する1978年1月6日法律第78-17号80条2号に規定
する者を除き,
公の団体又は私法上の法人は,
司法警察員又はその監督下にあ
る司法警察職員の請求に基づき,自らが管理する情報処理システム又は記名
データ処理に含まれる情報であって真実の発見のために有用なものを,情報
資料33-56通信又は情報処理の方法により,当該司法警察員又は司法警察職員の用に供
しなければならない。
ただし,
法律の定める秘密によって保護された情報につ
いては,この限りでない。
2 司法警察員又はその監督下にある司法警察職員は,自由勾留判事の命令に
よって事前に許可を受けた検事正の請求に基づき,
電気通信事業者,
及び取り
分けデジタル経済における信頼のための2004年6月21日法律第200
4-575号6条I-1項に規定する通信事業者に対し,
速やかに,
当該通信
事業者の提供する役務の利用者が閲覧した情報の内容を1年を超えない期間
にわたり保存することを確保するために適当なあらゆる措置を講ずるよう求
めることができる。
3 本条に規定する団体又は人は,
遅滞なく,
情報通信又は情報処理の方法によ
り,求められた情報を請求者の用に供しなければならない。
4 正当な理由がないのに本条の請求に応じない行為は,3750ユーロの罰
金で罰する。
(以下略)
第145-4条
1 予審対象者が未決勾留に付されている場合,予審判事は10日の期間を限
って接見の禁止を命ずることができる。予審判事は,接見禁止の期間を更新
することができる。ただし,更新は,10日の期間に限る。予審対象者の弁
護人に対しては,いかなる場合にも,接見禁止が適用されない。
2 前項に規定する場合を除き(注:前項の規定の留保の下で,という意味で
ある。),未決勾留に付されたあらゆる者は,予審判事の許可を得て,勾留
場所への訪問者と面会し,又は第三者と電話することができる。
3〜7(略)
第230-45条(国家司法傍受プラットフォーム)
I.1 国家情報処理自由委員会の理由を付した公開の意見を徴した後に定め
られた国務院の議を経たデクレ
(注:共和国大統領又は首相のなす行政決定)により,
国家司法傍受プラットフォームの任務及び機能方式を定める。
資料33-572 技術的に不可能な場合を除き,本法典第60-2条,第74-2条,第
77-1-2条,第80-4条,第99-4条,第100条ないし第10
0-7条,
第230-32条ないし第230-44条,
第706-95条
及び第709-1-3条又は関税法典第67条の2-2の適用によりな
される請求及び要求は,
その執行を集中化する国家司法傍受プラットフォ
ームを介してこれを送付する。
3 記録の封印付置及びその破壊時における調書の作成に関する本法典の
規定は,
国家司法傍受プラットフォームにより保存されるデータに対して
は,これを適用しない。
4 本 I-1項に掲げるデクレにおいて,本法典第230-32条ないし第
230-44条,
第706-95-20条及び第709-1-3条の適用
により収集されたデータ又は通信が国家司法傍受プラットフォームによ
って集中され,かつ保存される方式についてもまた,これを定める。
II.1 国家司法傍受プラットフォームは,これを有資格者の監督下に置き,当
該有資格者は,その構成員に国民議会議員1名及び上院議員1名を含む
委員会による補佐を受ける。
2 前項の委員会の任務,構成,組織及び機能は,国務院の議を経たデクレ
により,これを定める。
第706-71(刑事訴訟手続におけるテレビ会議システムの利用)
1 司法の円滑な運営のため,
刑事訴訟手続中,
訴訟手続を担当する司法官又は
受訴裁判機関の長が必要と認めるときは,本条に規定する場合及び方式の下,
視聴覚電気通信手段を利用することができる。
2 捜査又は予審の必要性に鑑み必要なときは,人の尋問又は被疑者尋問及び
数人間の対質は,共和国領土の複数の地点において,又は,欧州捜査決定の執
行に関しては共和国領土と欧州連合加盟国領土の間において,通信の秘匿性
を保証する電気通信手段を用いて連結することにより,これを行うことがで
きる。
警察留置又は司法留置の延長のための出頭についても,
同一の要件の下,
視聴覚電気通信手段を使用することにより,
これを行うことができる。
この場
合,それぞれの場所において,行われた操作に関する調書を作成する。かかる
資料33-58操作は,録音録画又は録音の対象とすることができ,この場合,第706-5
2条3項ないし8項の規定は,これを準用する。
3 視聴覚電気通信手段の使用を定める前各項の規定は,
証人,
附帯私訴原告及
び鑑定人の尋問に関し,判決裁判機関においてもこれを準用する。また,これ
らの規定は,
検事正及び全当事者の同意の下,
被告人が勾留されているときは
軽罪裁判所へ被告人の出頭に関してもまた,これを準用する。
4 (略)。未決勾留又は未決勾留の延長を裁定する審理に関する場合において,
勾留された者が審理日及び当該手段の使用が検討されている旨の通知を受け
たときは,
勾留された者は,
視聴覚電気通信手段の使用を拒否することができ
る。ただし,公序に重大な混乱をもたらし,又は,逃亡するおそれがあること
を理由として,
移送を回避すべきものと見られるときは,
この限りでない。(以下略)
5 (略)
6 前各項の適用に際し,
対象者が弁護人又は通訳人の援助を受けるときは,これらの者は,司法官,権限ある裁判機関若しくは委員会,又は当事者のもとに
いることができる。前者の場合,弁護人は,視聴覚電気通信手段を用いて,当
事者と秘密接見ができる状態でなければならない。
後者の場合,
訴訟記録の全
体の写しが,勾留施設において,その用に供される。ただし,記録の写しが既
に弁護人に交付されていたときはこの限りでない。これらの規定が審理中に
適用されるときは,審理は,対象者自身が,その意見を述べる権利を保障する
条件の下において,開かれなければならない。
7 対象者が勾留されているときは,
裁判機関による鑑定の告知は,
視聴覚電気
通信手段を使用することによりこれを行わなければならない。
ただし,
理由を
付した反対の決定がなされた場合,
又は,
他の処分と同時に行うべきときは,
この限りでない。
8 尋問中に通訳人の援助が必要な場合において,通訳人がその場に赴くこと
が不可能なときは,
尋問又は対質は,
電気通信手段によりこれを行うことがで
きる。
9 (略)
第706-52条
資料33-591,2 (略)
3 検事正,
予審判事又は捜査を担当し若しくは共助嘱託を受けた司法警察員は,
前項の
記録手続のため,資格を有するあらゆる者に協力を求めることができる。(以下略)
4 手続中,事後に閲覧することを容易にするため,録音録画媒体の写しを作成する。こ
の写しは,訴訟記録に編てつする。録音録画媒体の原本は,封印する。
5 予審判事の決定の下,
手続中に録音録画媒体を視聴することができる。
録音録画媒体
の写しは,予審判事又は書記官の立会いの下,当事者,弁護人,鑑定人がこれを視聴す
ることができる。
6 刑事訴訟法典第114条最終8項の規定は,録音録画媒体に準用しない。ただし,当
事者の弁護人は,裁判所において,閲覧の秘匿性が確保される要件の下,その写しを視
認することができる。
7 技術上の問題により録音録画を実施することが不可能である場合は,不可能な理由
を明らかにしつつ,
その旨尋問調書に記載する。
当該尋問が捜査中又は共助嘱託中に行
われたものであるときは,検事正又は予審判事は直ちにその旨通知を受ける。
8 本条の適用により作成された録音録画又はその写しを頒布する行為は,
何人も,1年の拘禁刑及び1万5000ユーロの罰金で罰する。
第114条
8 予審判事は,前項の請求を受理してから5日(休日を含まない。)以内に,被害者,
予審対象者,弁護人,証人,捜査官,鑑定人,その他手続に協力する者に圧力が加えら
れるおそれがあることに関する理由を付した特別の決定により,予審対象者又は私訴
原告人に対し,請求に係る写し又は複製の全部又は一部の交付又は送付を禁止するこ
とができる。
R53-33
1 第706-71条の規定を適用するに当たり,音声による電気通信手段又は視
聴覚電気通信手段を用いることができる。
2 ただし,警察留置又は司法留置の延長のための出頭に関しては,視聴覚電気通
信手段の使用のみが許可される。
R53-34
捜査中,第706-71条2項の規定の適用による電気通信手段の使用は,検事正
がこれを決する。
R53-35
予審係属中,第706-71条2項の規定の適用による電気通信手段の使用は,検
事正の意見を徴した後,予審判事がこれを決する。
R53-36
審問,尋問又は対質が行われる地点が裁判機関の管轄外であるときは,当該地点が
所在する区域を管轄する検事正は,事前にその旨通知を受ける。
R53-37
数個の地点から尋問を受ける者による供述は,手続を担当する司法警察員,検事正
又は予審判事の監督の下で作成される各別の供述調書に書き写される。
同一人の供述
の書き写しに相違が見られるときは,
当事者の署名のある供述調書又は第706-5
8条に定める要件の下で作成された供述調書のみが証拠となる。
R53-38
1 使用される電気通信手段の技術的性質は,第三者との関係で,忠実に,公正に,
かつ,秘匿性が確保された形で中継することを確保するものでなければならない。
2 送信を混乱させるあらゆる支障は,
R53-37条に規定する調書に記載されな
ければならない。
3 司法大臣及び内務大臣の共同アレテ
(注:大臣及び行政機関の発する命令・処分・
資料33-510規則の総称)により,視聴覚電気通信手段に固有の,又は電話以外の音声による電
気通信手段に関する特性を定める。
R53-39
予審係属中に第706-71条3項の規定が適用されるときは,
第102条2項に
規定する通訳人の宣誓は,
対象者の尋問を電気通信手段により行う予審判事又は司法
警察員によって収集される。
第706-71-1(対象者の同意の手続)
1 視聴覚電気通信手段の使用が対象者の同意を得た場合においてのみ可能な
ときは,
対象者は,
審理日及び当該手段の使用が検討されている旨の通知を受
けたときから5日以内に,その同意を知らせる。
2 対象者が拒否したことによりかかる手段の使用ができないときは,対象者は,審理日及び当該手段の使用が検討されている旨の通知を受けたときに,その拒否を知らせなければならない。
3 1項の規定に従い視聴覚電気通信手段の使用を承諾した者,
又は,
2項に規
定する場合においてその使用に反対しなかった者は,
その後,
その使用を拒否
することができない。
第801-1条(訴訟関係書類のデジタル形式での作成等)
I.1 本法典に掲げるあらゆる書面であって,捜査,予審若しくは裁判に係る
書面又は他のあらゆる訴訟関係書類は,
デジタル形式により,
これを作成
し,又は変換することができる。
2 訴訟記録は,安全性が確保された条件の下,紙媒体を要することなく,
デジタル形式により,その全てを保存することができる。
3 前各項に掲げる書面がデジタル形式で作成され,かつ,本法典の規定に
より署名が求められるときは,それらの書面は,頁数にかかわらず,署名
者ごとに,
当該書面が事後に修正されないことを確保する技術的方式に従
い,デジタル形式による単一の署名によるものとする。その場合,当該書
面には,印を要しない。
II.次に掲げる本法典の規定は,デジタル訴訟記録にはこれを適用しない。
1 原本とその写しの区別をするもの
2 謄本認証を規定するもの
資料33-5113 マルチメディア又はデータを含む資料について,
それが記録に編てつさ
れる限り,その封印付置(完全な封印を含む。)に関するもの
III.本条の適用方式は,規則によって,これを明らかにする。
D589条(デジタル形式の訴訟関係書類の提供等)
1 第801-1条1項の適用によりデジタル形式で作成され又は変換されたあら
ゆる訴訟関係書類は,
本法典の規定に従い,
許可された者において,
これを提供し,
又は閲覧することができる。
2 国家警察,国家憲兵隊,司法警察業務を行う公務員及び担当官,行政部局,青少
年司法保護部局,並びに,明示の許可の下であらゆる公私の者は,デジタル形式に
より,紙媒体を要することなく,訴訟関係書類を作成し,変換し,かつ,これを司
法当局に提出することができる。
3 前項に規定する許可は,
プロトコル上は司法大臣又は司法大臣によらない場合に
は受信者たる裁判機関の長により,訴訟手続上は,捜査を指揮する司法官,捜査を
行う司法警察員又はその監督下の司法警察職員により,
これを付与することができ
る。私人に関しては,前記プロトコルが法人又は当該私人が属し又は当該私人が監
督下にある職業上の機関との間で締結される。
4 内容がデジタル形式に変換されたあらゆる紙媒体は,
その所持者に返還すること
ができ,又は,デジタル形式の書類が司法当局に送信可能な限り,これを廃棄する
ことができる。
D589-2条(デジタル形式の署名手続)
1 電子署名及びデジタル形式で収集された手書きの署名は,
第801-1条I-3
項にいうデジタル形式の署名手続を構成する。
2 書面において署名者の人的識別が要請されないときは,電子シールは,デジタル
形式による署名手続とみなす。
3 第11条にいう手続に協力する者も含め,あらゆる者は,前各項に定める手続を
利用することができる。
D589-3条(電子署名)
1 電子署名は,署名者の識別を可能とし,署名とそれがなされた書面との関連性を
保証し,その書面の完全性を確保する手続が使用された場合においてのみ,これを
有効に行うことができる。
2 前項の署名は,少なくとも,域内市場における電子取引のための電子識別子及び
トラストサービスに関するものであって,
指令1999/93/CEを廃止する2
014年7月23日欧州議会・理事会規則(UE)第910/2014号にいう適
格証明に立脚した先進レベルのものでなければならない。ただし,前項の署名が,
適格証明に立脚した先進レベルにある電子署名の要請を満たしていないとの一事
をもって,訴訟手続の無効原因とはなり得ない。
D589-4条(デジタル形式で収集された手書きの署名)
1 デジタル形式で収集された手書きの署名は,
署名者がデジタル形式で書面を把握
した後,技術的装置によって,これを行う。
2 前項の署名は,その収集後に,第11条にいう訴訟手続の協力者によって当該書
面に電子署名がなされたとき,又は,R49-1条に定める安全性が確保された機
器を用いた場合においてのみ,これを有効に行うことができる。
3 前項の者が署名を拒否し,又は,その者が署名することが不可能なときは,書面
にその旨記載する。
資料33-512D589-5条(電子シール)
1 電子シールは,D589-2条に定める要件の下,D589-3条に規定する電
子署名に代えて,これを使用することができる。D589-4条の適用によるデジ
タル形式で収集された手書きの署名後に電子シールが付された場合も,
同様とする。
2 前項の電子シールは,2014年7月23日欧州議会・理事会規則(UE)第9
10/2014号にいう適格証明を伴う先進レベルのものでなければならない。ただし,
前項の電子シールが適格証明を伴う先進レベルの要請を満たしていないとの
一事をもって,訴訟手続の無効原因とはなり得ない。
D589-6条
1 第801-1条II項に規定する適用除外は,
司法当局が保有するデジタル形式の
あらゆる訴訟書類及び司法当局に提供可能な書類に,これを適用する。
2 捜査を指揮する司法官は,D589条2項に掲げる部局,部隊又は人によって送
付された,マルチメディア又はデータを含む資料につき,必要に応じてその封印を
命じた上,これをデジタル訴訟記録に組み込まないことを決定することができる。
A53-6条(デジタル訴訟記録の保管)
1 D589-1条に掲げるデジタル訴訟記録は,
安全性が確保された電子保管シス
テムに保管される。同システムは,同記録が含む証拠の保存,統合,判別及びアク
セスを保証するとともに,閲覧,追加,移動,消去及び抽出操作について,その追
跡可能性を保証する。
2 電子保管システムに保管された書類の全ては,
保管された書類のあらゆる事後的
変更が検出可能であることを確保する,電子指紋によって証明される。
3 デジタル形式の書類の可視性を確保するためにかつて行われた移動操作は,
追跡
可能であり,かつ,各書類に新たな電子指紋が生成される限りにおいて,内容又は
その形式の変質を構成しない。
4 前各項の適用により生成された指紋及び痕跡は,
保管されたデジタル形式の書面
と同じ期間にわたり,その変更を許さない条件の下,保存される。
A53-7条
1 司法当局に提出され又はデジタル訴訟記録に編入され得るあらゆる書類のデジ
タル形式への変換は,司法当局の責任の下で行われ,また,その形式,内容及び
色彩を忠実に複製することを保証するデジタル装置の利用を課する。
2 D589条にいう許可されていない者によりデジタル形式に変換されたあらゆ
る書類は,その忠実さ,完全性,発信者の人定事項及び変換日を確認した後にお
いてのみ,これをデジタル訴訟記録に編入することができる。
3 訴訟に関する書類の変換,返還び廃棄は,保存に適用される法令に規定する要
件を遵守した上で,これを行う。
A53-8条(紙媒体での送付等)
1 デジタル形式のあらゆる訴訟関係書類は,
必要に応じて,
これを紙媒体で手交し,
又は送付するため,司法官及び同人を補佐する書記課職員,国家警察部局,国家憲
兵隊,司法警察権限を行使する公務員及び担当官,行刑又は青少年司法保護部局に
よって印刷される。
2 D589-2条にいうデジタル形式での署名手続の対象となった書類は,
その印
刷後において,
1項に定める部局が保持するデジタル形式版に忠実なものである旨
の単一の証明書が添付されたとき,又は,各印刷について,同部局によって忠実性
が確保された印刷である旨を証する記載の対象となるときは,
証拠としての価値を
保持する。
A53-9条
資料33-5131 D589条2項に従いデジタル形式の書類の送付を許可されたあらゆる公人又
は私人は,かかる許可に規定する要件及び方式を厳に遵守しなければならない。
2 前項の許可が弁護士又は同人が属する弁護士会に対してなされた場合,当該許
可において,次に掲げる事項を義務的に定める。
- 受信者の電子メールアドレス,及び,必要に応じて,安全性が確保された,使
用書類及びファイル交換プラットフォームを明記した,利用される遠隔通信手段- 本法典において,満期の定めがあるときは,これを経過した場合には受理でき
なくなる書類の受領の日時
- 送付がそれ以降受信者たる裁判機関によって受領されたとみなされる技術的事
象。この技術的事象により,必要な場合には,本法典の規定により定める期間
が起算される。
3 前項の許可は,本手段により送付することのできる,又はかかる送付から除外
することのできる処分,請求,申告及び意見を網羅的にリスト化することができ
る。この点の明記がない場合,本法典に規定するあらゆる処分,請求,申告及び
意見は,かかる手段によりこれを送付する。
4 D589条3項に依拠し,裁判機関の長及び弁護士又は同人が属する弁護士会
との間で交わされたプロトコルにおいて,D591条ないしD593条に規定す
る要件,制限及び方式の全部又は一部を適用しない旨,定めることができる。
R249-9
各裁判機関において実行される「デジタル刑事記録」と称する個人データ自動処
理の創設は,司法大臣において,これを許可する。成人及び少年に関する同処理の
目的は,次のとおりとする。
1 次に掲げることを可能とし,司法官,書記官及びこれらを援助する資格を有
する者による刑事記録の取扱いを容易にし,かつ,改善すること
a) 刑事手続を追行するための,デジタル訴訟記録並びに同記録のデジタルコ
ピー,少年に関する身上記録及びデジタル化された正本の利用
b)完全にデジタル化された方法で記録を個別化する調査
2 次に掲げる者において,本法典及び少年犯罪に関する1945年2月2日オ
ルドナンス第45-174号5-2条の規定を遵守しつつ,情報交換及び訴訟
記録へのアクセスの流動性を高めること
a) 裁判機関内部,及び,記録又は一定の証拠を把握すべき裁判機関の間で
b) 11条にいう手続を利用する者,弁護士及び当事者と共に
c) 特別の法令上の規定により,刑事記録又は裁判の全部又は一部の閲覧を認
められたあらゆる行政機関,施設,当局又は公私の者と共に
R249-13
I.次に掲げる者は,R249-9条に規定する処理に際して記録された情報にアク
セスすることができる。
1 第一審,
控訴審及び上告審の全裁判機関において職務を行う裁判官及び検察官
は,受理した犯罪又は手続の処理のため,並びに,司法修習生は,その付託され
た任務を遂行する目的においてのみ
2 1号に掲げる司法官を補助する,
書記課職員及び司法組織法典R123-14
条の適用による有資格者,並びに,その付託された任務を遂行する目的において
のみ,同法典K123-4条に掲げる法律補助職及び裁判機関の組織及び民事,
刑事及び行政手続に関する1995年2月8日法律第95-125号20条に
掲げる司法補助者
資料33-5143 本法典R15-33-30条に規定する検事正の代理人は,
司法当局から第4
1-1条ないし第41-2条のために付託された任務を遂行するため
4 本法典第628-9条及び第706条に規定する特別補助者については,
その
付託された任務のみを遂行するため
5 弁護士については,専らその担当する手続のためであって,かつ,当該手続に
ついて意見を表明するため
II.R249-9条に規定する処理に際して記録された情報の全部又は一部は,次に
掲げる者に対して開示される。
1 訴訟記録及び正本へのアクセスの枠内では,本法典の規定を遵守した上で,第
11条にいう手続の利用者,弁護人,当事者
2 身上記録に関しては,
少年犯罪に関する1945年2月2日オルドナンス第4
5-174号5-2条に規定する要件の下,未成年者の弁護人,その父母,後見
人又は法定代理人,及び附帯私訴原告,青少年司法保護専門家,資格を有する団
体の部門又は施設の職員
3 特別の法令の規定により,あらゆる行政機関,施設,当局又は公私の者,刑事
記録若しくは裁判の全部又は一部を閲覧することを許可された者
第803-1条(書類の電子的方法による送付等)
I.本法典の規定の適用により,弁護士に対して,書留郵便又は受領証付書留郵
便により通知を行うべきものと規定されている場合において,
当該通知は,ファックス形式で,
又は,
電気通信手段により弁護士の電子メールアドレス宛て
になされる送信によりこれを行い,その痕跡を言語により保存するものとす
る。
II.1 本法典により,司法当局が,適宜の方法,単純郵便,書留郵便又は受領
証付書留郵便により,
通知,
召喚又は資料を人に対して送付すべきものと
規定されているときは,
当該送付は,
手続中になされた当該者による明示
的な申告によってこれに事前に同意する限り,
電子的方法によっても,これを行うことができる。
かかる同意において,
その者が受諾する電気通信
方式を定める。当該送付の痕跡は,言語により,記録に保存するものとす
る。
2 前各項の送付が書留郵便により行われる旨規定されているときは,
利用
される技術的方式は,
送付日を確実な手段で証明することを可能とするも
のでなければならない。
前各項の送付が受領証付書留郵便により行われる
旨規定されているときは,
利用される技術的方式は,受信者による受領日
を同様に証明することを可能とするものでなければならない。
資料33-5153 資料を送付するときは,その方式は,司法大臣のアレテに規定する方式
に従い,
電気通信における当事者の識別の信頼性,送付される資料の完全性,情報交換の安全性及び秘匿性並びに行われた送信の保存を確保するも
のでなければならない。
4 本II項は,
本法典により執行官送達が義務付けられているときは,これ
を適用しない。
以 上
資料33-61韓国(令和3年12月時点)
1 略式手続の電子化
(1) 概要
韓国では,現在,飲酒運転及び無免許運転の事案を略式手続等で処理する
場合,法院(注:日本の裁判所に相当)
・検察庁・警察庁・法務部(注:日本
の法務省に相当)等が共同で利用するシステムである「KICS」
(Korea
Information System of Criminal Justice Services.刑事司法手続電子化
促進法第2条4号の「刑事司法情報システム」を指す。
)を用いて,手続を
電子的に処理することができる
(略式手続等における電子文書の利用等に関
する法律(以下「略式電子文書法」という。
)第3条1項)。(2) 捜査手続
しろまる 対象事件の被疑者は,
「KICS」に使用者登録をし,電子文書により,当
該事件を電子的処理手続により処理することに同意する旨の同意書を作
成し,これに電子署名((注記))を付して提出する(略式電子文書法第3条1
項,第4条1項・5項)。同意書には,略式命令が刑事司法ポータルに登載されている事実の通知
(略式電子文書法第8条2項)を受ける電子的手段(電子郵便又は携帯電
話のメッセージサービスをいう。
)を記さなければならない(略式電子文
書法第4条2項)。(注記) 「電子署名」には,タッチパッドにタッチペンを用いて氏名を手書きすること
も含まれ,実務上,この方法により電子署名が行われている。
しろまる 被疑者は,前記同意について,略式命令の請求前までに,紙文書又は電
子文書で撤回書を提出する方法により,撤回することができる(略式電子
文書法第4条3項)。しろまる 検事又は司法警察官吏は,対象事件を捜査する場合,
・ 被疑者尋問調書(注:被疑者の供述を録取した調書)
・ 陳述調書(注:被疑者以外の参考人の供述を録取した調書)
・ 飲酒測定の情況・結果及び飲酒運転者の運転情況を記した文書(無免
許運転事案の場合,運転免許の照会結果及び無免許運転者の運転情況を
資料33-62記した文書)
などを含む捜査上必要な文書を電子文書で作成する。
作成者は,これらの文書に行政電子署名(電子政府法第2条9号)を付し,陳述者に電子署名をさせなければならず
(略式電子文書法第5条1項・
6項)
,これら行政電子署名及び電子署名は,
「刑事訴訟法」で規定する署
名,署名捺印又は記名捺印とみなされる(同条7項)。しろまる 法院,検察庁,警察庁等の刑事司法業務処理機関に所属する公務員は,
対象事件に関する電子的処理手続において提出された紙媒体等の書類(電子化対象文書)について,スキャナを利用してその内容等が同じように変
換される方法により,電子化文書を作成し,これに行政電子署名を付する
(略式電子文書法第6条1項・2項)。電子化文書の作成者の所属機関は,電子化対象文書を一定の期間保管し
なければならない(同条3項)。(3) 略式命令請求及びその後の手続
しろまる 検事は,対象事件について略式命令を請求する場合,
「KICS」を通じて
電子文書でこれをしなければならず(略式電子文書法第5条2項)
,捜査
において作成された電子文書及び電子化文書を証拠書類として法院に提
出する(略式電子文書法第7条)。しろまる 法院は,略式命令が請求された場合,検事及び被告人に対し,略式命令
その他の訴訟に関する書類を「KICS」を利用して電子的に送達し,又は通
知する(略式電子文書法第8条1項)
。この場合,法院書記官等は,略式
命令を「KICS」に登載した後,被告人に対し,その旨を同意書に記された
電子的手段により知らせなければならない(同条2項)。しろまる 被告人は,刑事司法ポータルのサイトにアクセスし,略式命令の謄本を
閲覧・出力することができ,被告人が略式命令を確認したときに,略式命
令が送達されたものとみなされる(同条3項)。しろまる 法院は,システムの障害等により電子的送達が不可能である場合,略式
請求その他の書類に関する書類を紙文書に出力して送達することができ
る(略式電子文書法第9条1項)
。この場合,同紙文書は,文書の固有識
別番号や,複写及び偽造・変造の防止標識が備わっているなどの要件を満
資料33-63たして出力されなければならず((注記))
,その出力物は,当該電子文書の謄本
とみなされる(同条2項)。(注記) 固有識別番号及び防止標識は,
「KICS」を通じて出力する場合,自動で表示さ
れる仕組みとなっている。
しろまる 検事は,電子文書で刑の執行を指揮することが困難である場合を除き,
電子文書で刑の執行を指揮する(略式電子文書法第11条1項・2項)。2 その他の手続
(1) 弁護人による接見交通
未決収容者について,接見を希望する者が近くの矯正施設を訪問し,遠
隔地の矯正施設に収容されている未決収容者と映像と音声の送受信により
接見を行うことができる(
「画像接見」
。法務部の訓令による)。(注記) 逃亡・罪証隠滅防止等の観点から,矯正施設同士の接続に限定されている。
(2) 公判段階における手続
しろまる 従前は,同一法院内において,ビデオ等の中継装置による中継施設を通
じて証人尋問を実施することができる旨の規定が設けられていたところ,
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け,
相当数の裁判が遅延する事態が
発生していたことから,このような事態を解消し,必要な裁判手続を進行
することができる方法を講ずる方策の一つとして,
遠隔地に所在する証人
についても,
ビデオ等の中継装置による中継施設を通じて証人尋問を実施
することができるよう条文が改正された
(刑事訴訟法165条の2
((注記)))。
(注記) 同改正は,2021年8月17日に行われた(施行日は同年11月18日)。しろまる 規定は設けられていないが,通訳人や鑑定人についても,
「心理的な負
担により精神の平穏を著しく失うおそれ」があると認められる場合,裁判
所の裁量により,
オンラインで公判期日に参加することは可能であると解
されているようである。
3 「刑事司法手続における電子化文書利用等に関する法律制定案」
現在,法務部,検察,警察等の刑事司法機関により,
「刑事司法手続におけ
る電子文書利用等に関する法律制定案」
(略称:刑事手続電子文書法)の法制
化を推進中である(現在,国会審議中)。 資料33-64(関連規定)
・ 略式手続等における電子文書の利用等に関する法律
・ 刑事司法手続における電子文書利用等に関する法律(制定案)
・ 刑事司法手続電子化推進法
・ 刑事訴訟法
資料33-65しろまる 関連規定(仮訳)
* 注記は,事務当局において付したものである。
【略式手続等における電子文書の利用等に関する法律】
第1条(目的)
この法律は,「刑事訴訟法」第4編第3章による略式手続等における電子文
書の利用・管理に関する基本原則及び手続を規定することにより,略式手続等
の情報化を促進し,迅速性と効率性を高め,国民の権利保護に資することを目
的とする。
第2条(定義)
この法律において使用する用語の意味は,次のとおり。1.「電子文書」
とは,
刑事司法情報システムにより電子的な形態で作成され,
送信・受信され,又は貯蔵される情報であって,文書の形式が標準化された
ものをいう。2.「電子化文書」とは,紙文書その他の電子的形態で作成されていない文書
を刑事司法情報システムが処理することができる形態に変換した文書をい
う。
3.「刑事司法情報システム」とは,「刑事司法手続電子化促進法」第2条第
4号の刑事司法情報システム(以下「システム」という。)をいう。
4.「刑事司法ポータル」とは,「刑事司法手続電子化促進法」第2条第6号
の刑事司法ポータルをいう。
5.「電子署名」とは,「電子署名法」第2条第2号の電子署名をいう。
6.削除
7.「行政電子署名」とは,「電子政府法」第2条第9号の行政電子署名をい
う。
8.「刑事司法業務処理機関」とは,「刑事司法手続電子化促進法」第2条第
2号の刑事司法業務処理機関をいう。9.「電子的処理手続」とは,刑事司法業務処理機関が電子文書又は電子化文
書を利用して略式事件(「刑事訴訟法」第4編第3章による略式手続により
資料33-66処理する事件をいう。)及び不起訴事件(検事が不起訴の処分をする事件を
いう。)を処理する手続をいう。
(参照条文)
電子署名法第2条
この法律において使用する用語の意味は,次のとおり。
1.(略)2.「電子署名」とは,署名者を確認し,署名者が当該電子文書に署名したことを示
すのに利用するために当該電子文書に添付され,又は論理的に結合された電子的
形態の情報をいう。
(以下略)
電子政府法第2条
この法律において使用する用語の意味は,次のとおり。
1〜8.(略)9.「行政電子署名」とは,電子文書を作成した次の各目のいずれか1つに該当する
機関又はその機関において直接業務を担当する者の身元及び電子文書の変更の有
無を確認することができる情報であって,その文書に固有なものをいう。
ア.行政機関
イ.行政機関の補助機関及び補佐機関
ウ.行政機関と電子文書を流通する機関,法人及び団体
エ.第36条2項の機関,法人及び団体
(以下略)
第3条(対象事件)
1 この法律は,検事が「刑事訴訟法」第448条により略式命令を請求するこ
とができる事件のうち,被疑者が電子的処理手続によることを同意した次の
各号のいずれか1つに該当する事件に対して適用する。1.「道路交通法」第148条の2第3項,第152条第1号及び第154条
第2号に該当する事件
2.第1号に該当する事件と関連する「道路交通法」第159条に該当する事件2 この法律は,
「交通事故処理特例法」第3条第2項本文に該当する事件のう
ち,同項本文又は同法第4条により公訴を提起することができないことが明
白な事件に対して適用する。
3 第1項及び第2項にかかわらず,次の各号のいずれか1つに該当する事件
に対しては,電子的処理手続によらない。1.第1項又は第2項に該当する事件とそうでない事件を併合して捜査し,又は審判する場合
資料33-672.被疑者が第4条第3項により第1項の同意を撤回した場合3.追加的な証拠の調査が必要な場合等捜査の進行の結果に照らして電子的処
理手続によることが適切でない場合
4 次の各号の場合,
検事又は司法警察官吏は,
その時までに当該事件と関連し
て作成された電子文書及び電子化文書を出力した紙文書を当該事件の記録に
編てつする。この場合,第9条第2項を準用する。1.第1項又は第2項に該当する事件とそうでない事件を併合して捜査するこ
ととなった場合2.次の各目のいずれか1つに該当する場合等電子的処理手続によることが適
切でない場合
ア.追加的な証拠の調査が必要な場合
イ.被疑者に対して拘束令状又は逮捕令状等を申請し,又は請求する場合
第4条(被疑者の同意及び撤回)
1 第3条第1項の同意は,
被疑者がシステムに使用者登録をし,
同意書を電子
文書で作成・提出する方式により,しなければならない。
2 第1項の同意書には,第8条第2項により略式命令が刑事司法ポータルに
登載されている事実の通知を受ける電子的手段(電子郵便又は携帯電話のメ
ッセージサービスをいう。)を記さなければならない。
3 被疑者が第3条第1項の同意を撤回するには,
略式命令の請求前までに,紙文書又は電子文書で撤回書を提出しなければならない。
4 第3項の撤回を受け付けた検事又は司法警察官吏は,その時までに当該事
件と関連して作成された電子文書及び電子化文書を出力した紙文書を当該事
件の記録に編てつする。この場合,第9条第2項を準用する。
5 第1項の同意書を作成するとき,
被疑者は電子署名を,
検事又は司法警察官
吏は行政電子署名をしなければならず,第3項の撤回書を電子文書で作成す
るとき,
被疑者は電子署名
(署名者の実地名義を確認することができるものを
いう。)をしなければならない。
第5条(電子文書の作成)
資料33-681 検事又は司法警察官吏は,第3条第1項又は第2項に規定された事件を捜
査する場合,次の各号の文書を電子文書で作成する。
1.被疑者尋問調書及び陳述調書
2.逮捕及び釈放に関する文書
3.飲酒運転者に対する飲酒測定の情況・結果及び飲酒運転者の運転情況を
記した文書
4.無免許運転者に対する運転免許の照会結果及び無免許運転者の運転情況
を記した文書
5.犯罪経歴照会回報書
6.その他捜査上必要な文書
2 検事は,第3条第1項に規定された事件に関して略式命令を請求する場合,
システムを通して電子文書でしなければならない。
3 検事は,第3条第1項に規定された事件に関して不起訴の処分をする場合,
システムを通して電子文書でする。
4 検事は,第3条第2項に規定された事件に関して「交通事故処理特例法」第
3条第2項本文又は同法第4条により不起訴の処分をする場合,システムを
通して電子文書でする。
5 法院は,
第2項により略式命令が請求された場合,
略式命令その他訴訟に関
する書類を電子文書で作成する。
6 第1項から第5項までの電子文書の作成者は,電子文書に行政電子署名を
しなければならず,陳述者に電子署名をさせなければならない。
7 第6項の行政電子署名及び電子署名は,
「刑事訴訟法」で定める署名,署名
捺印又は記名捺印とみなす。
8 第1項から第5項までの電子文書の契印は,頁数を表示する方法によりす
る。
第6条(電子化文書の作成)
1 刑事司法業務処理機関の所属公務員は,第3条第1項又は第2項に規定さ
れた事件に関する電子的処理手続において提出された紙文書その他電子的形
態で作成されなかった文書(以下「電子化対象文書」という。)を電子化文書
資料33-69で作成する。
2 電子化文書は,スキャナを利用して電子化対象文書とその内容及び形態が
同じように変換されるよう作成されなければならず,
作成者は,
電子化文書に
行政電子署名をしなければならない。
3 電子化文書の作成者の所属機関は,電子化対象文書を略式命令若しくは判
決が確定する時まで又は検事の処分がある時まで,保管しなければならない。
ただし,電子化文書の作成者の所属機関が電子化対象文書を他の機関に送付
した場合には,送付を受けた機関において電子化対象文書を保管しなければ
ならない。
第7条(電子文書及び電子化文書の提出)
検事は,
第5条第2項により略式命令を請求する場合,
同条により作成された
電子文書及び第6条により作成された電子化文書を略式命令をするのに必要な
証拠書類として法院に提出する。
第8条(略式命令等の電子的送達・通知)
1 法院は,
第5条第2項により略式命令が請求された場合,
検事及び被告人に
略式命令その他の訴訟に関する書類をシステムを利用して電子的に送達し,
又は通知する。
2 第1項の場合,
法院書記官,
法院事務官,
法院主事又は法院主事捕
(以下
「法
院事務官等」という。)は,略式命令をシステムに登載した後,被告人にその
事実を同意書に記された電子的手段により知らせなければならない。
3 第2項の場合,送達を受ける者が刑事司法ポータルに登載された略式命令
を確認した時に,略式命令が送達されたものとみなす。
4 第2項の場合,送達を受ける者が刑事司法ポータルに登載された略式命令
を確認しない場合には,法院事務官等が第2項により略式命令を登載した事
実を知らせた日から2週間が経った日に,
送達されたものとみなす。
ただし,
送達を受ける者が責任を負うことができない事由により刑事司法ポータルに
登載された略式命令を確認することができなかった場合には,
「刑事訴訟法」
第458条において準用する同法第345条から第348条までの規定によ
資料33-610る正式裁判請求権の回復の請求をすることができる。
5 システムを通した電子的送達及び通知の具体的な手続は,大法院規則で定
める。
第9条(出力物でする略式命令等の送達)
1 法院は,
第5条第2項により略式命令が請求された場合,
システムの障害に
より電子的送達が不可能であるか,その他大法院規則で定める事由がある場
合には,略式請求その他の訴訟に関する書類を紙文書に出力して送達するこ
とができる。
2 第1項による出力物は,システムを通して次の各号の要件を全て満たして
出力されなければならない。この場合,その出力物は,その電子文書の謄本と
みなす。
1.出力日,頁数及び総頁数,文書の固有識別番号
2.複写及び偽造・変造の防止標識
第10条(公判手続等により審判する場合の処理)
1 「刑事訴訟法」
第450条又は第453条により公判手続により審判する場合,法院は,
その時までにシステムを通して提出された訴訟に関する書類及び
証拠書類を検事に電子的に送付し,
これを受けた検事は,
紙文書に出力して法
院に提出しなければならない。
2 検事が略式命令を請求せずに公訴を提起する場合には,既に作成された電
子文書及び電子化文書を紙文書に出力して法院に提出する。
3 検事が第3条第2項に規定された事件を不起訴の処分をせずに略式命令を
請求し,
又は公訴を提起する場合には,
既に作成された電子文書及び電子化文
書を紙文書に出力して法院に提出する。
4 第1項から第3項までの場合,第9条第2項を準用する。
第11条(電子文書等による執行の指揮)
1 検事は,この法律による略式命令が確定した場合には,
「刑事訴訟法」第4
61条本文にかかわらず,電子文書で刑の執行を指揮する。
資料33-6112 第1項により電子文書で刑の執行を指揮することが困難である場合には,
電子文書で作成された略式命令を紙文書に出力して刑の執行を指揮する。こ
の場合,第9条第2項を準用する。
第12条(委任規定)
この法律において規定した事項のほかに第3条第1項において定めた事件に
関する略式裁判手続における電子文書の利用・管理に必要な事項は,
大法院規則
で定める。
第13条(他の法令との関係)
電子的処理手続に関し,この法律に特別な規定がなければ,
「刑事訴訟法」等
の他の法令を適用する。
資料33-612【刑事司法手続における電子文書利用等に関する法律制定案】(注記)国会提出版
第1条(目的)
この法律は,刑事司法手続において,電子文書等の利用・管理に関する基本原
則と手続を規定することにより,
刑事司法手続の電子化を実現し,
迅速性と透明
性を高め,国民の権利保護に貢献することを目的とする。
第2条(定義)
この法律において使用する用語の意味は,次のとおり。1.「電子文書」とは,
「電子文書及び電子取引基本法」第2条1号による電子
文書をいう。2.「電子化文書」とは,紙文書やその他の電子的な形態で作成されていない
書類又は図面・写真・音声・映像資料等(以下「電子化対象文書」という。)を電子的な形態に変換して本条第5号による電算情報処理システムに登載
する電子文書をいう。3.「刑事司法業務」とは,
「刑事司法手続電子化促進法」第2条1号による刑
事司法業務をいう。4.「刑事司法業務処理機関」とは,
「刑事司法手続電子化促進法」第2条2号
による刑事司法業務処理機関をいう。5.「電算情報処理システム」とは,
「刑事司法手続電子化促進法」第2条4号
による刑事司法情報システムとして第3条各号のいずれか一つに該当する
法律による刑事司法手続に必要な電子文書を作成・提出,
送信・受信したり,
管理するのに利用されるものをいう。6.「電子署名」とは,
「電子署名法」第2条2号の電子署名をいう。7.「行政電子署名」
とは,
「電子政府法」
第2条第9号の行政電子署名をいう。8.「司法電子署名」とは,行政電子署名として法官(注:日本の「裁判官」に相
当)又は法院書記官・法院事務官・法院主査・法院主査補(以下「法院事務
官等」という。
)が刑事司法手続において使用するものをいう。
(注記) 電子署名法第2条2号
電子署名とは,
次の各目の事項を示すときに利用するため,
電子文書に添付された
り,論理的に結合された電子的形態の情報をいう。
カ 署名者の身元
資料33-613ナ 署名者が該当電子文書に署名したという事実
(注記)(注記) 電子情報法第2条第9号
行政電子署名とは,電子文書を作成した次の各目のいずれか一つに該当する機関
又はその機関において直接業務を担当する人の身元と電子文書の変更の可否を確認
することができる情報としてその文書に固有のものをいう。
カ 行政機関
ナ 行政機関の補助機関及び補佐機関
タ 行政機関と電子文書を流通する機関,法人及び団体
ラ (略)
第3条(適用範囲)
この法律は,次の各号の法律による刑事司法手続に適用する。1.「刑事訴訟法」2.「家庭暴力犯罪の処罰等に関する特例法」
(第2章(注:家庭保護事件)部
分に限定する。)3.
「保安観察法」4.「性売買あっせん等行為の処罰に関する法律」
(第3章(注:保護事件)部
分に限定する。)5.
「性暴力犯罪の処罰等に関する特例法」6.「少年法」7.「児童虐待犯罪の処罰等に関する特例法」
(第4章(注:児童保護事件)部
分に限定する。)8.
「即決審判に関する手続法」9.「通信秘密保護法」10.「刑事補償及び名誉回復に関する法律」
11.第1号から第10号までの法律を適用ないし準用する法律
第4条(他の法律との関係)
1 この法律は,刑事司法手続の電子的処理に関して他の法律に優先して適用
する。
2 刑事司法手続の電子的処理に関して,この法律に特別の規定がある場合を
除いて,
「刑事訴訟法」及び「刑事司法手続電子化促進法」を適用する。
資料33-614第5条(電子文書による刑事司法手続の遂行)
1 被疑者,被告人,被害者,告訴人,告発人,弁護人及びその他大統領令又は
大法院規則により定める者は,
第7条による使用者登録をした場合,
刑事司法
業務処理機関に提出する書類又は図面・写真・音声・映像資料等(以下本条に
おいて
「書類等」
という。)を大統領令又は大法院規則で定めるところにより,
電算情報処理システムを通じて電子文書により提出することができる。
2 「電子文書及び電子取引基本法」
第4条の2による要件を備えた電子文書を
本この法律により作成・提出・送達・保存した場合には,第3条各号に掲げる
法律に定められた要件と手続により書類等を作成・提出・送達・保存したもの
とみなす。
3 この法律により変換・登載した電子化文書は電子化対象文書と同一のもの
とみなす。
4 この法律により電算情報処理システムを通じて電子文書を出力した書面は,
電子文書と同一のものとみなす。
5 第3条各号に掲げる法律において書類等の写しを発給・交付,提出・送達及
び保存するようにした場合,電算情報処理システムを通じて電子文書を出力
した書面は第3条各号に掲げる法律による書類等の原本又は写しとみなす。
第6条(電算情報処理システムの運用)
1 刑事司法業務処理機関の長は,電算情報処理システムをそれぞれ設置・運
営する。
2 刑事司法業務処理機関は,電子文書等の利用及び管理に関する標準を設け
るために相互に協力しなければならない。
3 刑事司法業務処理機関は,この法律を適用したり電算情報処理システムを
運営するに当たり,障害者や老弱者等が刑事司法手続で権利を十分に行
使できるよう努力しなければならない。
第7条(使用者登録)
1 電算情報処理システムを利用しようとする者(刑事司法業務処理機関所属
の公務員は除く。
)は,大統領令又は大法院規則で定めるところにより,使用
資料33-615者登録をしなければならない。
2 第1項により使用者登録(以下「使用者登録」という。
)をした者(以下「登
録使用者」という。
)は,大統領令又は大法院規則により定めるところにより
使用者登録を撤回することができる。
3 刑事司法業務処理機関の長は,次の各号のいずれか一つに該当する事由が
ある場合には,
大統領令又は大法院規則で定めるところにより,
登録使用者の
電算情報処理システム使用を停止したり,使用者登録を抹消することができ
る。
1.登録使用者の同一性が認定されない場合
2.使用者登録を申請し,又は使用者情報を変更するときに,電算情報処理シ
ステムに虚偽の内容を入力した場合3.他の登録使用者の電算情報処理システム使用を妨害し,
又は他の登録使用
者の情報を盗用するなど電算情報処理システムを利用した刑事司法手続
の進行に支障を与えた場合4.故意又は重大な過失により,
電算情報処理システムに障害を起こした場合5.その他第1号から第4号までに準ずる事由として大統領令又は大法院規則
で定める事由がある場合
第8条(電子署名)
1 刑事司法業務処理機関に電子文書を提出しようとする者は,その電子文書
に電子署名
(署名者の実地名義を確認することができるものをいう。
以下この
項において同じ。
)をしなければならない。ただし,電子署名を利用すること
ができない場合として,提出者の身元が確認された場合等大統領令又は大法
院規則に定める場合には,電子署名をしないことができる。
2 法官又は法院事務官等は,
裁判書,
調書等を電子文書により作成する場合,
大法院規則で定めるところにより司法電子署名を行う。
この場合,
第3条各号
に掲げる法律により陳述者の署名が必要な場合には,陳述者に電子署名をさ
せなければならない。
3 法院以外の刑事司法業務処理機関所属公務員は,決定文,調書,報告書等を
電子文書により作成する場合,大統領令で定めるところにより行政電子署名
資料33-616を行う。
この場合,
第3条各号に掲げる法律に定める陳述者の署名が必要な場
合には,陳述者に電子署名をさせなければならない。
4 第1項から第3項までの規定による電子署名,司法電子署名又は行政電子
署名を行う場合には,
第3条各号に掲げる法律による署名,
署名捺印又は記名
捺印をしたものとみなす。
5 第1項から第3項までの規定により提出したり作成した電子文書に頁数を
表示した場合には,第3条各号に掲げる法律により間印(注:日本の「契印」に
相当)をしたものとみなす。
第9条(電子文書の受付)
1 電子文書は,電算情報処理システムに電子的に記録されたときに受け付け
られたものとみなす。
2 電算情報処理システムを通じて提出された電子文書を受け付ける手続と方
法は,大統領令又は大法院規則により定める。この場合,提出された電子文書
の同一性維持のための技術的措置に関する事項をその内容に包含しなければ
ならない。
3 刑事司法業務処理機関は,第5条1項により電子文書を提出した登録使用
者が受け付けられた電子文書の同一性確認を要求する場合,大統領令又は大
法院規則に定めるところにより,その同一性を確認することができる機会を
与えなければならない。
4 登録使用者は,第5条1項により提出した電子文書と受け付けられた電子
文書の内容が一致しない場合には,大統領令又は大法院規則に定めるところ
により,刑事司法業務処理機関に修正を要求することができる。
5 刑事司法業務処理機関は,受け付けられた電子文書の偽造又は変造の有無
を確認する必要がある場合には,電子文書を提出した登録使用者にその原本
を提示したり提出したりすることを要求することができる。
第10条(電子文書の作成)
1 刑事司法業務処理機関所属の公務員は,裁判書,公判調書,公訴状,不起訴
決定書,送致意見書,被疑者尋問調書(注:日本における被疑者の供述調書に
資料33-617相当)
等の刑事司法業務と関連する文書を作成する場合には,
電子文書として
作成しなければならない。
ただし,
次の各号のいずれか一つに該当する場合と
して大統領令又は大法院規則に定める事由がある場合にはその限りでない。
1.電算情報処理システムに障害がある場合
2.電子文書で作成することが顕著に困難であったり適合しない場合
2 刑事司法業務処理機関所属公務員は,第1項柱書本文により被疑者尋問調
書を電子文書で作成する場合には,大統領令で定めるところにより,
「刑事訴
訟法」による被疑者尋尋問調書の作成手続と方法が電子的に具現されるよう
にしなければならない。
(参照条文)
刑事訴訟法第244条(被疑者尋問調書の作成)
1 被疑者の陳述は調書に記載しなければならない。
2 第1項の調書は,
被疑者に閲覧させ又は読み聞かせなければならず,
陳述したまま
に記載されていない,
若しくは事実と異なる部分の有無を問い,
被疑者が増減又は変
更の請求等の異議を提起したり,
意見を陳述したときには,
これを調書に追加で記載
しなければならない。
この場合,
被疑者が異議を提起した部分は読めるように残して
おかなければならない。
3 被疑者が調書に異議や意見がないことを陳述したときには,被疑者をしてその趣
旨を自筆で記載させ,調書に間印した後,記名捺印又は署名させる。
刑事訴訟法第244条の2(被疑者陳述の映像録画)
1 被疑者の陳述は,映像録画することができる。この場合,事前に映像録画事実を伝
えなければならず,調査の開始から終了までの全過程及び客観的状況を映像録画し
なければならない。
2 第1項による映像録画が完了したときには,
被疑者又は弁護人の面前で,
遅滞なく,
その原本を封印し,被疑者をして記名捺印又は署名させなければならない。
3 第2項の場合に,
被疑者又は弁護人の要求があるときには,
映像録画物を再生し,
視聴させなければならない。
この場合,
その内容について異議を陳述するときには,
その趣旨を記載した署名を添付しなければならない。
刑事訴訟法第244条の3(陳述拒否権等の告知)
1 検事又は司法警察官は,
被疑者を尋問する前に,
次の各号の事項を伝えなければな
らない。
1 一切の陳述をしなかったり,個々の質問について陳述をしないことができること2 陳述をしなかったとしても,不利益を受けることはないこと
3 陳述を拒否する権利を放棄して行った陳述は,
法廷において,
有罪の証拠として
使用することができること
4 尋問を受けるときには,弁護人を同席させるなど弁護人の助力を受けることが
できること
2 検事又は司法警察官は,
第1項によって伝えたときには,
被疑者が陳述を拒否する
権利と弁護人の助力を受ける権利を行使することの可否を質問し,これに対する被
疑者の回答を調書に記載しなければならない。この場合,被疑者の回答は,被疑者を
して自筆で記載させたり,検事又は司法警察官が被疑者の回答を記載した部分に記
資料33-618名捺印又は署名させなければならない。
刑事訴訟法第244条の4(捜査過程の記録)
1 検事又は司法警察官は,
被疑者が調査場所に到着した時刻,
調査を開始して終えた
時刻,その他に調査過程の進行経過を確認するために必要な事項を被疑者尋問調書
に記録したり,別途の書面に記録した後,捜査記録に編てつしなければならない。
2 第244条第2項及び第3項は,第1項の調書又は書面に関して準用する。
3 第1項及び第2項は,被疑者ではない者を調査する場合に準用する。
第11条(電子化文書の作成)
1 刑事司法業務処理機関所属公務員は,電子化対象文書を電子的な形態に変
換して電算情報処理システムに登載しなければならない。
ただし,
電子化対象
文書を電子的な形態に変換することが顕著に困難であったり適合しない場合
として大統領令又は大法院規則に定める場合には,
変換・登載をしないことが
できる。
2 電子化対象文書を電子的な形態に変換して電算情報処理システムに登載す
る手続と方法は大統領令又は大法院規則により定める。
この場合,
電子化対象
文書の同一性維持のための技術的措置に関する事項をその内容に包含しなけ
ればならない。
第12条(電子化対象文書の保管)
1 刑事司法業務処理機関は,
第11条により変換・登載する電子化対象文書を
大統領令又は大法院規則で定める期間まで保管しなければならない。
2 刑事司法業務処理機関は,電子化対象文書を提出した者の要請がある場合
には,第1項にかかわらず,電子化対象文書を返還することができる。
3 刑事司法業務処理機関は,第2項により電子化対象文書を提出した者に電
子化対象文書を返還する場合,大統領令又は大法院規則に定めるところによ
り,電子化文書と電子化対象文書の同一性を確認することができる機会を与
え,確認書を受け取らなければならない。
第13条(電子文書の流通)
1 刑事司法業務処理機関は,刑事司法手続と関連して作成した電子文書を他
の刑事司法業務処理機関に送付するときには,電算情報処理システムを通じ
資料33-619て送付しなければならない。
2 刑事司法業務処理機関が,刑事司法業務処理機関以外の機関に事件を移送
又は送致するときには,
電子文書を,
電算情報処理システムを通じて出力した
後,その書面を送付する。ただし,電子文書を送信・受信することができるシ
ステムを持つ機関として大統領令又は大法院規則により定める機関に移送又
は送致するときには,電子文書を電子的方法により送付することができる。
3 第2項本文により電子文書を出力する手続と方法は,大統領令又は大法院
規則により定める。
この場合,
電子文書の同一性維持のための技術的措置に関
する事項をその内容に包含しなければならない。
第14条(電子的送達又は通知)
1 刑事司法業務処理機関は,送達又は通知を受ける者が次の各号のいずれか
一つに該当する場合には,送達又は通知を電算情報処理システムを通じて電
子的に行うことができる。
1.刑事司法業務処理機関である場合
2.刑事司法業務処理機関所属公務員である場合
3.電子的送達及び通知に同意した登録使用者として大統領令又は大法院規
則に定める者に該当する場合
である場合
2 第1項による送達又は通知は,刑事司法業務処理機関が電子文書を電算情
報処理システムに登載し,
その事実を,
送達又は通知を受ける者に電子的に通
知する方法により行う。
3 第2項により送達又は通知した場合には,その送達又は通知を受ける者が,
電算情報処理システムに登載された電算文書を大統領令又は大法院規則によ
り定める手続と方法により確認したときに送達又は通知されたものとみなす。
4 第3項にかかわらず,送達又は通知を受ける者が電算情報処理システムに
登載された電子文書を確認しない場合には,第2項により登載事実を電子的
に通知した日から14日が過ぎた日に送達又は通知されたものとみなす。た
だし,被疑者又は被告人等の刑事司法手続上の権利を保護するために必要な
場合として大統領令又は大法院規則により定める場合には通知されたとみな
資料33-620さない。
5 電算情報処理システムの障害等大統領令又は大法院規則に定める事由で送
達又は通知を受ける者が電子文書を確認することができない期間は,第4項
本文の期間に算入しない。
この場合,
電子文書を確認することができない期間
の計算方法は大統領令又は大法院規則により定める。
第15条(電子文書を出力した書面による送達)
1 刑事司法業務処理機関は,
次の各号のいずれか一つに該当する場合には,電子文書を電算情報処理システムを通じて出力した書面を
「刑事訴訟法」
第60
条から第65条までの規定による方法で送達しなければならない。
1.送達を受ける者が,第14条1項各号のいずれにも該当しない場合2.(略)
3.電算情報処理システムの障害等大統領令又は大法院規則に定める事由が
ある場合
2 第1項により電子文書を出力する手続と方法は,大統領令又は大法院規則
により定める。この場合,電子文書の同一性維持のための技術的措置に関す
る事項をその内容に包含しなければならない。
第16条(電子文書の閲覧・複写)
1 「刑事訴訟法」第35条,第55条,第59条の2,第59条の3,第17
4条,第185条,第200条の4,第262条の2後段,第266条の3,
第266条の4,
第266条の11及び第294条の4にかかわらず,
この法
律により作成された電子文書を閲覧・謄写又は複写する場合には,
インターネ
ット又は電算情報処理システムを通じて電子的に閲覧・複写又は転送する方
法により行うことができる。
2 第1項にかかわらず,登録使用者でない者が電子文書の閲覧又は複写を申
請する場合には,電子文書を電算情報処理システムを通じて出力した書面を
交付する方法によりこれを行うことができる。
3 第1項による電子文書を閲覧・複写又は転送する手続と方法は,
大統領令又
は大法院規則により定める。
この場合,
電子文書の同一性維持のための技術的
資料33-621措置に関する事項をその内容に包含しなければならない。
4 被告人
(被告人であった者を含む。)又は弁護人
(弁護人であった者を含む。)は,第1項により閲覧・複写又は転送された「刑事訴訟法」第266条の3第
1項による書類(その目録を含む。
)に該当する電子文書を当該事件又は関連
事件の訴訟を準備するための目的ではなく他の目的で他の者にインターネッ
ト又は電算情報処理システムを通じて転送したり,
交付
(電子文書を書面で出
力して交付することを含む。
)又は提示(電子文書を書面で出力して提示する
ことと電気通信設備を通じて提供することを含む。
)してはならない。
(参照条文)
刑事訴訟法266条の3第1項
被告人又は弁護人は,検事に対し,公訴提起された事件に関する書類又は物件(以下
「書類等」
という)
の目録と公訴事実の認定又は量刑に影響を及ぼし得る次の書類等の
閲覧・謄写又は書面の交付を申請することができる。ただし,被告人に弁護人がいる場
合には,被告人は閲覧だけを申請することができる。
1 検事が証拠として申請する書類等
2 検事が証人として申請する人の姓名・事件との関係等を記載した書面又はその人
が公判期日前に行った陳述を記載した書類等
3 第1号又は第2号の書面又は書類等の証明力に関連する書類等
4 被告人又は弁護人が行った法律上・事実上の主張と関連する書類等
(関連刑事裁判
確定記録,不起訴処分記録等を含む)
第17条(令状の執行に関する特例)
1 検事又は司法警察官吏は次の各号の令状,鑑定留置状,許可状,許可書及び
要請書等(以下「令状等」という。
)が電子文書として発付された場合には,
大統領令又は大法院規則に定めるところにより電子文書を提示し,又は転送
する方法により令状等を執行することができる。1.「刑事訴訟法」第73条,第113条,第200条の2,第201条及び
第215条による令状2.「刑事訴訟法」第172条及び第221条の3による鑑定留置状3.「刑事訴訟法」第173条及び第221条の4による許可状4.「刑事訴訟法」第473条による刑執行状5.「金融実名取引及び秘密保障に関する法律」第4条による令状6.「通信秘密保護法」第6条及び第8条による通信制限措置許可書7.「通信秘密保護法」第13条による通信事実確認資料提供要請許可書
資料33-6228.
「通信秘密保護法」第13条の2による通信事実確認資料提供要請書
2 第1項により令状等を電子文書の形態で執行することが顕著に困難であっ
たり適合しない場合には,電子文書で発付された令状等を電算情報処理シス
テムを通じて出力した書面で執行することができる。
3 第2項により電子文書で発付された令状等を電算情報処理システムを通じ
て出力する手続と方法は大統領令又は大法院規則により定める。
この場合,電子文書の同一性を維持して法官が発付する趣旨と異なって複数通が出力され
ないようにするための技術的措置に関する事項をその内容に包含しなければ
ならない。
(参照条文)
刑事訴訟法第73条(令状の発付)
被告人を召喚するには召喚状を,拘引又は拘禁するには拘束令状を発付しなければな
らない。
刑事訴訟法第113条(押収・捜索令状)
公判廷外で押収又は捜索をするには,令状を発付して施行しなければならない。
刑事訴訟法第200条の2(令状による逮捕)
1 被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり,正当な理由なく第200条
の規定による出席要求に応じなかったり,応じないおそれがあるときには,検事は,管
轄地方法院判事に対して請求し,
逮捕令状の発付を受け,
被疑者を逮捕することができ,
司法警察官は,検事に申請し,検事の請求により,管轄地方法院判事の逮捕令状の発付
を受け,被疑者を逮捕することができる。ただし,多額50万ウォン以下の罰金,拘留
又は過料に該当する事件に関しては,被疑者が一定した住居がない場合又は正当な理
由なく第200条の規定による出席要求に応じなかった場合に限る。
(以下略)
刑事訴訟法第201条(拘束)
1 被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり,第70条1項各号の1に該
当する事由があるときは,
検事は,
管轄地方法院判事に対し,
請求し,
拘束令状を受け,
被疑者を拘束することができ,司法警察官は,検事に対して申請し,検事の請求により
管轄地方法院判事の拘束令状を受け,被疑者を拘束することができる。但し,多額50
万ウォン以下の罰金,拘留又は科料に該当する犯罪に関しては被疑者が一定した住居
がない場合に限る。
(以下略)
刑事訴訟法215条(押収,捜索,検証)
1 検事は,
犯罪捜査に必要なときには,
被疑者が罪を犯したと疑うに足りる情況にあり,
該当事件と関係があると認定することができる場所に限定し,地方法院判事に請求し,
発付を受けた令状により,押収,捜索又は検証をすることができる。
2 司法警察官が犯罪捜査に必要なときには,被疑者が罪を犯したと疑うに足りる情況
にあり,
該当事件と関係があると認定することができる場所に限定し,
検事に対して申
請し,検事の請求により地方法院判事が発付した令状により,押収,捜索又は検証をす
ることができる。
資料33-623第18条(証拠調査に関する特例)
「刑事訴訟法」
292条及び第292条の3の規定にかかわらず,
刑事裁判にお
いて,電子文書に対する証拠調査は,次の各号の区分に基づく方法により行う
ことができる。
1.文字その他の記号,図面・写真等に対する証拠調査:該当電子文書をモニ
ター,スクリーン等を通じて閲覧する方法
2.音声や映像情報に対する証拠調査:該当電子文書の音声を聴取し,又は映
像を再生する方法
第19条(裁判の執行指揮に関する特例)
1 検事は,
裁判書又は裁判を記載した調書が電子文書として作成された場合,
「刑事訴訟法」第461条本文の規定にかかわらず,電子文書により裁判の
執行を指揮する。
2 第1項の規定にかかわらず,電子文書により裁判の執行を指揮することが
困難な場合には,電子文書として作成された裁判書又は裁判を記載した調書
を電算情報処理システムを通じて出力した書面により裁判の執行を指揮する。
3 第2項による電子文書を出力する手続と方法は,大統領令又は大法院規則
により定める。この場合,電子文書の同一性維持のための技術的措置に関す
る事項をその内容に包含しなければならない。
(参照条文)
刑事訴訟法第461条(執行指揮の方式)
裁判の執行指揮は,裁判書又は裁判を記載した調書の謄本若しくは抄本を添付した
書面でしなければならない。
但し,
刑の執行を指揮する場合のほかは,
裁判書の原本,
謄本若しくは抄本又は調書の謄本若しくは抄本に認定する捺印ですることができる。
第20条(電子文書の廃棄)
1 電算情報処理システムを通じて作成された電子文書は,次の各号の区分に
従い定められたときに廃棄しなければならない。
1.刑を宣告する裁判が確定した事件:刑の時効が完成したとき。ただし,拘
留又は過料の刑が宣告された場合には裁判確定日から3年が過ぎたときと
する。
2.無罪,免訴,刑の免除,公訴棄却又は宣告猶予の裁判が確定した事件:公
資料33-624訴時効が完成したとき
3.不起訴処分になった事件及び「刑事訴訟法」第245条の5第2号により
不送致決定された事件:公訴時効が完成したとき
2 第1項の規定にかかわらず,
国内外的に重大な事件,
共犯に対する捜査が必
要な事件等,
大統領令又は大法院規則に定める事件の場合には,
大統領令又は
大法院規則に定めるところにより,電子文書を永久保管したり第1項による
廃棄時期を遅らせることができる。
第21条(委任規定)
この法律で規定する事項以外に,
刑事司法手続における電子文書の利用・管理
及び電算情報処理システムの運用等に必要な事項は,大統領令又は大法院規則
により定める。
第22条(罰則)
第16条第4項に違反し,電子文書を他の者に転送したり交付又は提示した
者は,1年以下の懲役又は1000万ウォン以下の罰金に処する。
附則
第1条(施行日)
この法律は,
公布した日から5年を超えない範囲で,
法院以外の刑事司法業務
処理機関の刑事司法手続については大統領令により,法院の刑事司法手続につ
いては大法院規則により,それぞれ定める日から施行する。
第2条(他の法律の廃止)
略式手続等における電子文書の利用等に関する法律は,廃止する。
第3条(一般的適用例)
この法律は,その施行以後に捜査を開始する事件から適用する。
資料33-625第4条(
「略式手続等における電子文書の利用等に関する法律」廃止に関する経
過措置)
1 この法律の施行前に附則第2条により廃止される「略式手続等における電
子文書の利用等に関する法律」により電子文書で略式命令を請求した事件に
関しては,同法の規定に従う。
2 この法律の施行前に捜査を開始してこの法律の施行当時捜査が進行中の事
件について,
附則第2条により廃止される
「略式手続等における電子文書の利
用等に関する法律」
によりこの法律の施行前に進行された手続は,
この法律に
より進行された手続とみなす
資料33-626【刑事司法手続電子化促進法】
第1条(目的)
この法律は,刑事司法手続の電子化を促進して,迅速,公正,透明な刑事司法
手続を実現し,
刑事司法分野の対国民サービスを改善し,
国民の権益伸長に資す
ることを目的とする。
第2条(定義)
この法律で使用する用語の意味は,次のとおり。1.「刑事司法業務」とは,捜査,公訴,公判,裁判の執行等の刑事事件の処
理と関連する業務をいう。2.「刑事司法業務処理機関」とは,法院,法務部,検察庁,警察庁,海洋警
察庁及びその所属機関とその他の刑事司法業務を処理する機関として大統
領令で定める機関をいう。3.「刑事司法情報」とは,刑事司法業務処理機関が刑事司法業務処理に関連
し,刑事司法情報システムを利用して作成ないし取得して管理している資
料として電子的方式により処理され,符号,文字,音声,音響又は映像等に
より表現されたものをいう。4.「刑事司法情報システム」とは,刑事司法業務処理機関が刑事司法情報を
作成,取得,貯蔵,送信・受信するのに利用することができるように,ハー
ドウエア,データベース,ネットワーク,セキュリティ要素等を結合させて
構築した電子的管理体系をいう。5.「刑事司法情報共通システム」とは,刑事司法情報システム(以下「システ
ム」という。)中,2つ以上の刑事司法業務処理機関が共同で使用するシス
テムをいう。6.「刑事司法ポータル」とは,国民が刑事司法情報に容易かつ迅速に接近で
きるように刑事司法情報共通システム(以下「共通システム」という。)に構
築された刑事司法関連サービスポータルをいう。
第3条(刑事司法手続の電子化促進)
1 刑事司法業務処理機関は,刑事司法手続の電子化に必要な制度の改善とこ
資料33-627れを反映することができるシステム開発のために努力しなければならない。
2 刑事司法業務処理機関は,
刑事司法手続の電子化のために,
システムの流通
標準を遵守し,システムが安全に運営されるように協力しなければならない。
第4条(刑事司法手続の電子化計画)
刑事司法業務処理機関が樹立する
「国家情報化基本法」
第6条第4項の国家情
報化に関する部門計画には,次の各号の事項が含まれなければならない。
1.刑事司法業務電子化推進の基本方向
2.刑事司法業務電子化推進組織及び体系に関する事項
3.電子化対象文書等の選定・開発等に関する事項
4.共同活用する刑事司法情報の範囲に関する事項
5.刑事司法業務電子化に従う関連法令及び制度の情報に関する事項
6.電子化された刑事司法手続での情報公開,情報保護対策等の基本権保障
に関する事項
7.その他の刑事司法業務の電子化促進のために必要な事項
第5条(システム安全運営のための協力義務)
1 刑事司法業務処理機関は,判決文,公訴状,令状,調査等の刑事司法業務と
関連する文書を,
システムを利用して貯蔵・保管しなければならない。
ただし,
業務の性格上,システムを利用することが困難な場合には,法務部,検察庁,
警察庁,
海洋警察庁の業務に関しては大統領令により,
法院の業務に関しては,
大法院規則により,例外を定めることができる。
2 刑事司法業務処理機関は,
第1項の文書を作成又は活用するとき,
システム
で定める刑事司法情報の流通標準によらなければならない。
3 刑事司法業務処理機関は,
刑事司法情報を生成又は流通させるときには,その刑事司法情報の正確性を維持しなければならない。
第6条(情報の共同活用のための協力義務)
1 刑事司法業務処理機関は,刑事司法情報がシステムを通じて共同活用され,
迅速に流通されるように努力しなければならない。
資料33-6282 刑事司法業務処理機関は,刑事司法業務を迅速かつ正確に処理するために
必要な第9条による刑事司法情報体系協議会が定める刑事司法情報を,シス
テムを通じて他の刑事司法業務処理機関に提供することができる。
3 刑事司法業務処理機関は,刑事司法業務処理以外の目的で刑事司法情報を
収集・貯蔵又は利用することができない。
第7条(対国民のポータルサービス)
刑事司法業務処理機関は,刑事司法情報に国民が容易かつ迅速に接近できる
ように刑事司法ポータルを通じて刑事司法関連サービスを総合的に提供する。
第8条(システムの運営主体)
1 システムの運営・管理は,
これを使用する各刑事司法業務処理機関が行う。
ただし,
刑事司法ポータル及び各刑事司法業務処理機関が運営・管理するシス
テムを連携・支援する共通システムは,法務部に運営器具を置いて運営・管理
する。
2 1項の運営器具の組織と運営等に必要な事項は,大統領令で定める。
3 各刑事司法業務処理機関は,システムの安全な運営と管理のために必要と
認められれば,
システム維持・補修等の支援業務の一部を他の国家機関又は情
報化を支援する法院に委託することができる。
第9条(刑事司法情報体系協議会)
システムの流通標準に影響を及ぼす変更,開発及び改善に関する事項並びに
電子化を通じた刑事司法手続の改善等を協議・調整するために刑事司法情報体
系協議会(以下「協議会」という。
)を構成する。
第10条(協議会の構成)
1 協議会は,法務部次官,法院行政処次長,大検察庁次長検事,警察庁次長及
び海洋警察庁次長により構成する。
2 協議会の委員長は,委員の中から互選する。
資料33-629第11条(協議会の会議)
1 協議会の定期会議は,半期に1回開催する。
2 協議会で協議する事項があれば,
各委員は,
委員長に臨時協議会の開催を要
求することができる。
3 協議会の協議と調整は,委員全員の協議によらなければならない。
4 協議会は,
第12条1項各号の事項中,
大韓弁護士協会の所管事務と関連す
る内容があるときには,大韓弁護士協会の意見を聴かなければならない。
5 第1項から第4項までにおいて規定した事項以外に協議会の運営に必要な
事項は大統領令により定める。
第12条(協議会の機能)
1 協議会は,次の各号の事項について協議・調整する。
1.刑事司法業務の電子化を通じた刑事司法手続の改善に関する事項
2.刑事司法情報の流通標準及びその変更に関する事項3.システムを通じた刑事司法業務処理機関間の刑事司法情報の共同活用及び
変更に関する事項4.共通システムを通じた刑事司法情報の公開等の刑事司法ポータルの内容及
び運営に関する事項
5.共通システムの対象,範囲,変更,運営及び管理に関する事項6.刑事司法業務処理機関間の共同活用された刑事司法情報の保護に関する事項7.刑事司法情報の流通標準に影響を及ぼすシステムの変更,開発及び改善に
関する事項
2 協議会の運営には,各刑事司法業務処理機関のシステム運営上の独立性が
尊重されなければならない。
第13条(実務協議会)
1 協議会の業務を効率的に支援するために,協議会に刑事司法情報体系実務
協議会(以下「実務協議会」という。
)を置く。
2 実務協議会は,協議会に付された議案を事前に検討・調整し,
協議会から委
資料33-630任を受けた事項を処理する。
3 実務協議会は,協議会の各委員が指名する人で構成する。
4 第1項から第3項までにおいて規定した事項以外に実務協議会の運営等に
必要な事項は,大統領令で定める。
第14条(刑事司法情報の保護及び流出禁止)
1 刑事司法業務処理機関は,
刑事司法業務を処理するとき,
刑事司法情報が紛
失,盗難,流出,変造又は毀損されないように,安全性の確保に必要な処置を
しなければならない。
2 刑事司法業務に従事する者又は第8条第3項によりシステムの支援業務の
委託を受けてその業務に従事する者は,権限なく他の機関又は他の人が管理
する刑事司法情報を閲覧,複写又は転送してはならない。
3 刑事司法業務に従事し,若しくは従事していた者又は第8項第3項により,
システムの支援業務の委託を受けてその業務に従事し,若しくは従事してい
た者は,職務上知った刑事司法情報を漏洩したり,権限なく処理したり,他人
が利用するように提供するなどの不当な目的で使用してはならない。
第15条(罰則)
1 刑事司法業務処理機関の業務を妨害する目的で刑事司法情報を偽作又は変
作したり,抹消した者は,10年以下の懲役に処する。
2 第14条第3項に違反し,
刑事司法情報を漏洩したり,
権限なく処理したり,
他人が利用するように提供するなど不当な目的で使用した者は,5年以下の
懲役又は5000万ウォン以下の罰金に処する。
3 第14条第2項に違反し,権限なく他の機関又は他の人が管理する刑事司
法情報を閲覧,
複写又は転送した人は,
3年以下の懲役又は3000万ウォン
以下の罰金に処する。
第16条(罰則適用時の公務員擬制)
第8条第3項により委託を受けた業務に従事する法人の職員は,
「刑法」第1
29条から第132条までの規定による罰則を適用するときには,公務員とみ
資料33-631なす。
第17条(委任規定)
刑事司法情報の正確性維持等,この法律の施行に必要な事項中,法務部,検察
庁及び海洋警察庁関連事項は,大統領令で定め,法院関連事項は,大統領規則で
定める。
資料33-632【刑事訴訟法】
第165条の2(ビデオ等の中継装置等による証人尋問) (注記)改正後のもの
1 法院は,次の各号のいずれか一つに該当する者を証人として尋問する場合,
相当であると認めるときには,
検事と被告人又は弁護人の意見を聴いて,
ビデ
オ等の中継装置による中継施設を通じて尋問し,又は遮へい施設等を設置し
て尋問することができる。
1.「児童福祉法」第71条第1項第1号・第1号の2・第2号・第3号に該
当する罪の被害者
2.「児童・青少年の性保護に関する法律」第7条,第8条,第11条から第
15条まで及び第17条第1項の規定に該当する罪の対象となる児童・青
少年又は被害者
3.犯罪の性質,証人の年齢,心身の状態,被告人との関係その他の事情によ
り被告人等と対面して陳述する場合,心理的な負担により精神の平穏を著
しく失うおそれがあると認められる者
2 法院は,
証人が遠く離れた場所若しくは交通が不便な場所に住んでいる,又は健康状態等その他の事情により法廷に直接出席することが困難であると認
めるときには,
検事と被告人又は弁護人の意見を聴いて,
ビデオ等の中継装置
による中継施設を通じて尋問することができる。
3 第1項と第2項による証人尋問は,証人が法廷に出席して行われた証人尋
問とみなす。
4 第1項と第2項による証人尋問の実施に必要な事項は,大法院規則により
定める。

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