令和3年
6月更新版
知って役立つ労働法
働くときに必要な基礎知識
資料6−6
※(注記) このテキストは厚生労働省ホームページ(下記URL)でも公開されており、学習や研修などに際し
て、ご自由に印刷・配布等、ご使用頂くことができますので、ぜひご活用ください。
(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouzenpan/roud
ouhou/index.html)
※(注記) このテキストでは、名称の長い一部の法律等については、略称で記載しています。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び
職業生活の充実に関する法律
→ 労働施策総合推進法
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等
に関する法律
→ 男女雇用機会均等法
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の
福祉に関する法律
→ 育児・介護休業法
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に
関する法律
→ パートタイム・有期
雇用労働法
次世代育成支援対策推進法 → 次世代法
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律 → 女性活躍推進法
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保
護等に関する法律
→ 労働者派遣法
青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業
主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係
者が適切に対処するための指針
→ 若者法指針
本テキストの主な内容をまんがでまとめた
「これってあり?まんが 知って役立つ労働法Q&A」
(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/mangaroudouhou/)
とあわせて読んでいただくと、よりイメージがつかめます。
こちらもぜひご活用ください。i目次
はじめに .................................................................... 1
プロローグ:働くときの基礎知識................................................... 2
1 働き始めるときの基礎知識................................................ 2
2 働くときの基礎知識..................................................... 4
3 仕事を辞めるときの基礎知識 .............................................. 5
4 働くことに関する相談窓口
働くことに関する主な相談窓口フローチャート ....................................... 6
働くことに関する相談窓口
1 総合労働相談コーナー................................................... 7
2 労働基準監督署......................................................... 7
3 ハローワーク(公共職業安定所) ......................................... 7
4 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)、需給調整事業課(室) ............. 8
5 労働委員会............................................................. 8
6 都道府県............................................................... 8
7 日本司法支援センター(法テラス) ....................................... 9
8 日本年金機構(年金事務所)............................................. 9
9 地域若者サポートステーション(サポステ) ............................... 9
10 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」 .................. 10
11 ハラスメント悩み相談室................................................ 10
第1章 労働法について
1. 労働法とはなんだろう............................................................. 11
2. 労働法の役割とは................................................................. 11
3. 労働組合とは..................................................................... 12
もう一歩進んで1 不当労働行為 ................................................. 12
もう一歩進んで2 労働委員会 ................................................... 13
もう一歩進んで3 労働協約 ..................................................... 13
第2章 働き始める前に
1. 労働契約を結ぶとき............................................................... 14ii2. 採用面接などで「家族」や「出身地」のことなどを聞かれていませんか ................. 15
3. 就業規則を知っていますか ......................................................... 16
4. 安心して働くための各種保険と年金制度 ............................................. 17
もう一歩進んで4 労働契約の禁止事項 ........................................... 17
もう一歩進んで5 採用内定 ..................................................... 18
もう一歩進んで6 各種保険・年金制度を詳しく見てみよう.......................... 18
(1) 雇用保険.............................................................. 18
(2) 労災保険.............................................................. 19
(3) 健康保険.............................................................. 19
(4) 厚生年金保険.......................................................... 20
コラム1 働くみなさんが守るべきルール ......................................... 21
コラム2 学生アルバイト等の労働条件確保について................................ 21
コラム3 固定残業代について ................................................... 22
コラム4 試用期間について ..................................................... 22
コラム5 障害者の雇用について ................................................. 23
第3章 働くときのルール
1. 労働条件が違っていたら........................................................... 24
2. 賃金についてのきまり............................................................. 25
(1) 賃金額についてのきまり..................................................... 25
(2) 支払われ方についてのきまり................................................. 26
3. 労働時間と休憩・休日についてのきまり ............................................. 26
(1) 労働時間のきまり........................................................... 26
(2) 休憩・休日のきまり......................................................... 28
4. 安全で快適な職場環境のために ..................................................... 28
(1) 安全で快適な職場環境のために............................................... 28
(2) 仕事で病気やけがをした場合................................................. 29
5. 男女がいきいきと働くために ....................................................... 30
(1) 性別による差別の禁止....................................................... 30
(2) 仕事と家庭の両立のために................................................... 30
もう一歩進んで7 賃金に関するその他のきまり.................................... 31
もう一歩進んで8 過労死等防止対策について...................................... 32
もう一歩進んで9 変形労働時間制 ............................................... 34
もう一歩進んで10 年次有給休暇 ................................................. 34
もう一歩進んで11 パワハラ、セクハラ及び妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハ
ラスメント、その他のいじめ・嫌がらせ ........................................... 36iiiもう一歩進んで12 間接差別の禁止 ............................................... 38
コラム6 女性活躍推進法、えるぼし認定・プラチナえるぼし認定.................... 38
コラム7 くるみん認定、プラチナくるみん認定.................................... 39
コラム8 男性の育児休業 ....................................................... 40
コラム9 介護離職の防止 ....................................................... 40
第4章 多様な働き方
1. 派遣社員(派遣労働者)........................................................... 41
2. 契約社員......................................................................... 42
3. パートタイム労働者............................................................... 43
4. 業務委託(請負)契約を締結し、いわゆる「フリーランス」などとして働く人 ........... 43
もう一歩進んで13 有期労働契約についての2つのルール(労働契約法) .............. 48
もう一歩進んで14 正社員とパートタイム労働者・契約社員・派遣労働者との間の「不合理
な待遇差の禁止」(パートタイム労働法、労働者派遣法の改正)...................... 48
第5章 仕事を辞めるとき、辞めさせられるとき
1. 仕事を辞めるには(退職) ......................................................... 50
2. 仕事を辞めさせられるとは(解雇) ................................................. 50
(1) 期間の定めがない場合 ........................................................ 50
(2) 期間の定めがある場合 ........................................................ 51
3. 会社が倒産したら................................................................. 52
4. 基本手当......................................................................... 52
5. ハロートレーニング(公的職業訓練)、訓練期間中の生活保障 ......................... 53
もう一歩進んで15 整理解雇 ....................................................... 53
もう一歩進んで16 退職勧奨について ............................................... 54
コラム 10 e-ラーニングでチェック!今日から使える労働法~Let’s study labor Law~ ... 54
第6章 就職の仕組み(新規大学等卒業者の場合)
1. 就職活動を始めよう............................................................... 55
2. 大学生の就職活動の標準的スケジュール ............................................. 57
もう一歩進んで17 大学生等の就職活動のルール ..................................... 57
コラム11 若者雇用促進法について ............................................... 58
コラム12 ユースエール認定企業について ......................................... 58
コラム13 就職活動に役立つ情報サイトについて ................................... 59
参考1 ハローワークでの若年者就職支援 ........................................... 61
(1) 新卒応援ハローワーク.................................................. 61iv(2) わかものハローワーク.................................................. 61
参考2 高校卒業者の方へ ......................................................... 62
参考3 就職が決まらないまま卒業された方へ ....................................... 62
参考4 働くことについて悩みを抱えている方へ ..................................... 62
索引 ................................................................................. 64
本テキストで赤字になっている重要ワード
(「労働契約」や「労働組合」など)を掲載して
います。「この言葉、どういう意味だっけ?」と
思ったら、ぜひめくってみてください!
はじめに1はじめに
いま、日本では、たくさんの人たちが日々働いています。みなさんも、「大学生になったら、あのお
店でアルバイトをしてみたいなあ」「いつかあの会社で働きたい」など、「働く」ということについて興
味や関心を持つことがあると思います。
一方で、「インターネットで、あそこの企業はブラック企業だって書いてあったけど、大丈夫かな」
「今のアルバイト、面接のときに言われた業務内容とだいぶ違って困っているんだけれど、どこに相談す
ればいいんだろう」など、疑問や不安を抱えることもあるでしょう。
このテキストは、そんなみなさんのために、働くときに知っておきたい基本的な知識について、わか
りやすくまとめています。具体的には、以下のような構成になっています。(構成図)
このほか、巻末(P.64-65)に重要な用語の索引もつけています。本テキストを活用し、働くときに
必要となる基礎知識をしっかり身につけて働くようにしましょう。困ったことがあったときは、このテキ
ストを読み返すとともに、相談窓口(P.7-10 又は裏表紙)にご連絡ください。
働くときの基礎知識2プロローグ:働くときの基礎知識
1 働き始めるときの基礎知識
「いい仕事ないかなあ。」そう呟きながら、あなたは求人誌で求人情報を見ていました。30
分ほど探したでしょうか、ふと、1つの広告が目にとまりました。「これ、よさそうに見えるけ
ど・・・。」さあ、以下の広告、どうチェックしましょう?(1-1 図)
1 ここでは「正社員」を募集していますが、そのほか、派遣会社と契約を結んだ上で別の会社
に派遣されて働く派遣社員や、事業主と期間の定めのある労働契約を締結し、決まった期間
働く契約社員、1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者(いわゆる
「正社員(無期雇用フルタイム労働者)」)より短い時間で働くパートタイム労働者など、
色々な働き方があります。どんな働き方で働くかは大きなポイントですので、しっかり確認
しましょう。
なお、働き方の中には、そもそも「労働契約」ではなく「請負契約」や「業務委託契約」な
どを締結し、労働者ではなく、いわゆる「フリーランス」などとして仕事をするという形も
あります。この冊子では、労働契約を締結して働く労働者を念頭に、「働くときのルール」
や「安心して働くための保険制度」などを解説していますが、「フリーランス」など、労働
者にならずに仕事をする場合、この冊子で解説している労働者の保護などが受けられなかっ
たり、雇用保険、労災保険や、被用者保険(健康保険・厚生年金保険)の対象にならないな
ど、仕事をする上でのリスクや、対応の仕方なども大きく変わってきます。
プロローグ3仕事を始めるに当たっては、まずは自分の希望する働き方をイメージするとともに、働く契
約をする際には「自分が相手とどのような契約をし、どのような働き方をすることになるの
か」をしっかり確認するようにすることが大切です。
⇒ 色々な働き方については、「第4章 多様な働き方」(P.41-49)で詳しく解説していま
す。特に「フリーランス」など、労働者ではない働き方については、この冊子で解説している内
容が当てはまらない部分がたくさんあります。この働き方については、まずは「第4章 多様な
働き方」の「4 業務委託(請負)契約などを締結し、いわゆる「フリーランス」などとして働
く人」(p.43)をご確認ください。
2 仕事の内容、給料、勤務日などの労働条件や、各種保険・年金制度の加入状況等は忘れずに
チェックし、必要に応じて会社に問い合わせるなどして、自分が具体的にどんなふうに働く
ことになるのかをしっかり確認しましょう。
⇒ 結果、「よさそうな仕事だな」ということになり、ハローワークで履歴書添削サービスな
どを受けてから面接に挑んで無事合格、さあ労働契約を交わす前に、労働契約の書面につい
て、求人広告の内容と違いがないかよく確認しましょう。(会社は、労働者を雇うとき、仕
事の内容など特に重要な6項目の労働条件について、口約束だけではなく原則として書面で
明示しなければならないことになっています。(例外的に、労働者本人が希望する場合に
は、FAX や電子メール等(出力して書面が作成できるものに限る。)による明示も可能で
す。)また、会社は、労働契約の内容に、求人広告との違いがある場合や、求人広告に書か
れていなかった内容が追加されている場合などには、どこが違う内容や追加された内容なの
か、明示しなければならないことになっています。)
また、「試用期間」や「固定残業代」などが労働条件に含まれていないか、よく確認しまし
ょう。
⇒「コラム3 固定残業代について」「コラム4 試用期間について」(P.22)参照。
3 求人雑誌等の場合、大きなスペースが無いため、労働条件について全てが記載されていない
場合もあります。求人広告に記載されていなかった内容にも、あなたにとって重要な項目が
あるかもしれませんので、求人広告に記載されていなかった内容も注意して確認するように
しましょう。(会社は、原則として、初めて面接に臨むときまでに、求人広告に記載できな
かった労働条件について明示すべきであることになっています。この場合も、2のとおり、
会社はどの内容が求人広告に書かれていなかった内容か、明示しなければならないことにな
っています。)
⇒働く前の留意事項は、「第2章 働き始める前に」(P.14-23)で詳しく解説しています。
働くときのルール24第 3 章 働くときのルール
1 労働条件が違っていたら
実際に働き始めたら、給料、労働時間、仕事の内容など、あらかじめ示された労働契約の内容と実際
の労働条件が違っていた場合にはどうすればよいのでしょうか。そのようなトラブルがないように、労働
基準法では労働条件の明示が義務づけられていることは既に述べましたが(P.14 参照)、実際に労働条
件が違っていた場合には、労働者は約束通りにするように要求できますし、そのことを理由にすぐに契約
を解除することが認められています(労働基準法第 15 条)。この場合は有期労働契約の契約期間途中で
あっても、退職することができます。
また、「今、経営が苦しいので来月から給料を引き下げます」などと、会社が勝手に労働条件を変更
しようとした場合にはどうすればよいのでしょうか。賃金などの労働条件は、会社と労働者で交わした約
束(労働契約)で定められているものですから、会社は払うと約束した賃金はきちんと支払わなければな
らず、労働者の同意がないのに、労働者に不利益なものに変更することは、約束違反であり許されません
(労働契約法第 9 条)。
ただし、引き下げられた給料をただ黙って受け取っていると、同意があったとみなされてしまうおそ
れがあるので注意しなくてはなりません。「いつもより額が少なかった」など、気になることがあった場
合は、会社に問い合わせましょう。
※(注記) 職場の共通ルールである就業規則の変更によって、就業規則で統一的に定まっている労働条件を
不利益に変更することについては、個々の労働者が同意しているかどうかに関係なく、その変更に合理性
があり、労働者に周知されていた場合には、従わなくてはいけないので、注意が必要です(労働契約法第
10 条)。
もっとも、合理性があるかは、変更の必要性や労働者が受ける不利益の度合い、変更後の就業規則の
内容の相当性、労働組合との交渉の状況などからしっかり判断されるべきものですので、それらの判断基
準を満たさない限り変更は無効です。また、変更後の内容が法令や労働協約に反している場合も無効で
す。これらの場合は、会社が就業規則を変更しても、変更後の労働条件に従う必要はありません。
※(注記) 労働条件について、決まりが守られていないと感じたら、「労働基準監督署や総合労働相談コー
ナー」(P.7 参照)までご相談ください。
第 3 章252 賃金についてのきまり
(1) 賃金額についてのきまり
仕事を選ぶときには、給料(法律では「賃金」といいます)×ばつ働いた時間分
(×ばつ時間)を後から請求することができます。
最低賃金には、すべての労働者とその使用者(会社)に適用される「地域別最低賃金」と、特定の産
業に従事する労働者とその使用者(会社)に適用される「特定最低賃金」があり、それぞれ都道府県ごとに
決められています。両方の最低賃金が同時に適用される場合には、高い方の最低賃金が適用されます。
詳しくは「最低賃金特設サイト」(http://saiteichingin.info/)を御参照ください。
働くときのルール26(2) 支払われ方についてのきまり
賃金が全額確実に労働者に渡るように、支払われ方にもきまりがあり、次の4つの原則が定められて
います(労働基準法第 24 条)。
1通貨払いの原則
賃金は現金で支払わなければならず、現物(会社の商品など)で払ってはいけません。ただし、労
働者の同意を得た場合は、銀行振込みなどの方法によることができます。また、労働協約で定めた
場合は通貨ではなく現物支給をすることができます。
2直接払いの原則
賃金は労働者本人に払わなければなりません。
また、未成年者だからといって親などが代わりに賃金を受け取ることもできません(労働基準法第
59 条)。
※(注記) 2022 年 4 月1日から、成年年齢が 20 歳から 18 歳に引き下げられます。
3全額払いの原則
賃金は全額残らず支払われなければなりません。したがって「積立金」などの名目で強制的に賃金
の一部を控除(天引き)して支払うことは禁止されています。
ただし、所得税や社会保険料など、法令で定められているものの控除は認められています。それ以
外は、労働者の過半数で組織する労働組合、過半数組合がない場合は労働者の過半数を代表する者
と労使協定を結んでいる場合は認められます。
4毎月1回以上定期払いの原則
賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければいけません。したがって、「今月分は
来月2か月分まとめて払うから待ってくれ」ということは認められませんし、支払日を「毎月20
日〜25日の間」や「毎月第4金曜日」など変動する期日とすることは認められません。ただし、
臨時の賃金や賞与(ボーナス)は例外です。
※(注記) 賃金について、決まりが守られていないと感じたら、「労働基準監督署や総合労働相談コーナ
ー」(P.7 参照)までご相談ください。
(→P.31 「もう一歩進んで7 賃金に関するその他のきまり」参照)
3 労働時間と休憩・休日についてのきまり
(1) 労働時間とのきまり
第 3 章27どんな仕事でも、長時間続けて働くことは心身ともに大きな負担となります。最近では、過労による
ストレスなども大きな問題となっています。労働者が働きすぎにならないように、労働時間や休憩・休日
についても、ちゃんときまりがあるのです。
先ほど述べたとおり、始業や終業の時刻は就業規則で決まっています(P.16 参照)。働くあなたは、
始業の時刻に遅刻しないようにし、勤務時間中は無断で職場を離れることなく、上司に従って誠実に業務
を遂行しなければなりません。
働く時間の長さは法律で制限されています。労働基準法では、労働時間を1日8時間以内、1週間で
40時間以内と定めています(法定労働時間、労働基準法第 32 条)。
法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合には、あらかじめ過半数労働組合、過半数組合がない場
合は従業員の過半数代表者との間に、「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結し、労働基準監督署
に届け出なければいけません(労働基準法第 36 条)。この協定は労働基準法第36条に規定されている
ことから、「36協定(サブロク協定)」と呼ばれています。
36協定により延長できる労働時間は、原則として月45時間、年360時間であり、臨時的な特別
の事情がなければこれを超えることはできません。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合で
も、年720時間以内、単月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間以内(休日労働を
含む)を超えることはできません。さらに、原則である月 45 時間を超えることができるのは、年間6か
月までです。
これらに違反した場合には、罰則の対象となります。
ただし、上限規制には、自動車運転の業務や建設事業など、適用を猶予・除外する事業・業務があり
ます。
また、会社が労働者に時間外労働をさせた場合、割増賃金を払わなければなりません。
※(注記) 1 ヶ月60時間を超える時間外労働については50%以上の割増賃金を支払わなければなりませ
ん。なお、中小企業についても、2023 年 4 月から適用となります。
さらにこの割増賃金は雇用形態に関わらず、すべての労働者に適用されます。よって、派遣社員、契
約社員、パートタイム労働者、アルバイトにも支払わなければなりません。
「サービス残業」といって法定労働時間を超えて働いているのに時間外手当が支払われないというこ
とを聞いたことがあるかもしれませんが、それは労働基準法違反ですので、会社が支払わない場合は労働
基準監督署(P.7 参照)に相談しましょう。
働くときのルール28※(注記) 派遣社員については、36協定の相手は派遣元であり、また、時間外労働、休日労働、深夜労働
の割増賃金の支払については、派遣元に責任があります(P.41 参照)。
(→P.32-34「もう一歩進んで8 過労死等防止対策について」参照)
(→P.34「もう一歩進んで9 変形労働時間制」参照)
(2) 休憩・休日のきまり
会社は労働者に、勤務時間の途中で、1日の労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、
8時間を超える場合には少なくとも60分の休憩を与えなければいけません(労働基準法第 34 条)。
休憩時間は労働者が自由に利用できるものでなければならないので、休憩中に電話対応や来客対応を
指示されている場合、休憩時間ではなく労働時間とみなされます。
また、労働契約において労働義務を免除されている日のことを休日といいます。会社は労働者に毎週
少なくとも1回、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません(法定休日、労働基
準法第 35 条)。
※(注記) 労働時間や休憩・休日について、決まりが守られていないと感じたら、「労働基準監督署や総合
労働相談コーナー」(P.7 参照)までご相談ください。
(→P.34-36「もう一歩進んで10 年次有給休暇」参照)
4 安全で快適な職場環境のために
(1) 安全で快適な職場環境のために
働き始めると、職場で一日の多くを過ごすことになりますから、心身ともに気持ち良く過ごしたいと
ころです。職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的として、労
働基準法の特別法である労働安全衛生法が定められています。
労働安全衛生法は、会社に、仕事が原因となって労働者が事故に遭ったり、病気になったりしないよ
うに措置する義務を定めるとともに、労働者に対しては、労働災害を防止するために必要な事項を守り、
会社が行う措置に協力するように定めています。
例えば、会社は、労働者を雇い入れる際とその後、年 1 回、医師による健康診断(その他6か月に1
回、有害な業務をしている労働者への健康診断もあります。)を行わなければならず、労働者はその健康
診断を受ける必要があります(労働安全衛生法第 66 条)。
また、最近では仕事上のストレスによるメンタルヘルス不調も大きな問題となっており、会社は、労
働者に対して、1年以内ごとに1回、ストレスチェックを行わなければなりません(労働者数 50 人未満
の事業場については、努力義務)。
第 3 章29※(注記) 労働安全衛生法に基づく健康診断・ストレスチェックは、正社員だけでなく、派遣社員、契約社
員、パートタイム労働者やアルバイトであっても、1期間の定めのない契約により使用されていること
(期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されていること又
は更新により1年以上使用されていること)21週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従
事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であることの2点を満たす場合は対象にな
ります。
(→P.36-38「もう一歩進んで11 パワハラ、セクハラ及び妊娠・出産・育児休暇・介護休業等に関
するハラスメント、その他のいじめ・嫌がらせ」参照)
(2) 仕事で病気やけがをした場合
仕事で病気やけがをしてしまった場合は、労災保険(P.19 参照)により補償されます。
労災保険は、健康保険よりも、補償内容が手厚くなっています。例えば、労災保険の指定病院にかか
れば、治療費は原則として無料になりますし(指定病院以外の場合、本人が一旦費用を負担することとな
りますが、労災保険の請求をすることにより負担した費用の全額が支給されます)、仕事を休まなければ
いけなくなったときには休業補償(休業4日目から、平均賃金に相当する額の8割支給)が受けられま
す。また、業務災害で療養休業中とその後30日間は、労働者を解雇することはできません(労働基準法
第 19 条)。
また、労災保険は仕事中の病気やけがの他、出勤中に駅の構内で転倒した場合など、通勤中のけがな
ども対象になります。また、長時間労働や職場におけるパワーハラスメントなど仕事が原因で発症したう
つ病などの精神障害も労災の対象となります。
このような仕事や通勤中の病気やけがは、健康保険は使えませんので、労災保険に請求しましょう
(労働者が仕事を休業しなければならないほどの労災を被った場合には、労働者による労災請求とは別
に、会社が労災事故を労働基準監督署長に届ける必要があり、届けない場合、「労災かくし」として法律
違反となります)。
労災請求をする際に会社が協力してくれない場合は、労働基準監督署(P.7 参照)に相談しましょ
う。
※(注記) 労災保険は、正社員だけでなく、派遣社員、契約社員、パートタイム労働者やアルバイトでも
対象になります。
※(注記) 派遣社員の健康診断の実施、災害補償については、派遣元が責任を負います(ただし、有害な業
務に関する特別な健康診断の実施については、派遣先が責任を負います。)。