不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース第3回資料1自治体ヒアリング結果要旨
戸籍部門とひとり親支援部門の連携など自治体における支援の強化について,
2つの自治体の戸籍窓口担当者とひとり親支援窓口担当者から,法務省職員と
厚生労働省職員が合同でヒアリングを行った。
ヒアリングの結果,得られた知見の要旨は以下のとおりである。
<<離婚届用紙の配布のタイミングを活用した支援について>>
(自治体A)
しろまる 離婚届用紙については,
インターネットでダウンロードする人が増えてい
るが,現在でも庁舎に取りに来る人はいる。庁舎に取りに来る人の中には,
窓口で離婚手続や養育費について質問する者もいるが,庁舎内で「離婚」と
いう言葉を発することさえ抵抗があるという者も多いようで,
そういった場
合には,置いてある離婚届用紙を持って帰るのみである。現状では,離婚届
用紙に法務省のパンフレットを挟むといった取扱いはしておらず,
手続教示
を通じて未成年の子がいることを把握できた場合に,
必要に応じて交付して
いる。
しろまる 支援が必要な人に確実に情報提供するため,
全ての離婚届用紙にパンフレ
ット等を挟み込んで交付するという取扱いにすることは,
そのような運用と
すれば可能である。
また,
離婚届用紙のダウンロードページを設け,
当該ページにパンフレッ
ト等のデータも併せて掲載し,
ダウンロードできるようにすることも可能で
ある。
(自治体B)
しろまる 全ての離婚届用紙に法務省のパンフレットを挟み込むことについては,
消極である。
例えば,
長い不妊治療を経て離婚に至ったような方に対しても
一律に配布するというのは,
当事者の心情に照らし,
相当でないと思われる。
そういったことを考慮すると,
挟み込む資料は,
内容も養育費や面会交流だ
けでなく離婚で問題になること全般を記載したものがよく,分量としても
両面印刷1枚程度が限度ではないか。
しろまる 法務省のパンフレットは,その内容自体はとても充実している良いもの
だと思うが,
実際に窓口対応をしている感覚からすると,
未成年の子を持つ
親の世代には,
パンフレットのような紙媒体による周知より,
QRコードで
スマートフォンからサイトにアクセスさせ,パンフレットの内容に誘導す
る方法が効果的だと思う。
不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース第3回資料2リーフレットを作成する場合も,
あまり文字が多いものよりも,
現に困っ
ている人でも関心を持つような端的な記載にすべきである。
<<別居時点などより早期の段階での把握について>>
(自治体A)
しろまる 父母の別居後直ちに行政から支援を行うために,転居届や転入届の機会
を利用して婚姻費用等の周知を行ってはどうかという考え方については,
実際には難しいと思われる。
別居理由には単身赴任等もあるので,
窓口で別
居理由を詳しく聞いたり,理由を問わず全ての人に婚姻費用等の案内をし
たりすることは,相手の心情を害するおそれがある。
実態としては,
別居前の時点や,
別居直後に離婚届用紙を取りにくる者も
多いことから,離婚届用紙の交付時に周知を行うのが適切ではないか。
(自治体B)
しろまる (支援が必要な人に行政が早期にコンタクトできるタイミングについて)
夫婦が別居により住民票を移す手続をするために自治体窓口にくる段階で
婚姻費用や養育費等に関する周知を行うことは,
相手の事情にかかわらず一
律で資料配布することになるため,
かなり難しい。
ほとんどは単身赴任等で,
離婚も視野に別居を開始するという事例の割合はかなり低いのではないか。
<<戸籍部門とひとり親支援部門の連携について>>
(自治体A)
しろまる 戸籍窓口の担当職員が,
戸籍以外の養育費等に関する相談業務を行うこと
は人員的に難しい。
離婚届の用紙を取りにきた人などに対し,
現在も配布し
ている養育費・面会交流パンフレットに加えて,
何らかの資料を一律に配布
することは可能である。
しろまる 仮に,
戸籍窓口の担当職員が,
当事者にひとり親支援担当部署の窓口にも
行くように勧奨するというような業務を考えていくのであれば,法務省か
らその旨の通知が発出されないと一般的には対応が難しいのではないか。
しろまる 戸籍窓口において,
電話連絡を希望するひとり親の電話番号を聴取し,その者に対して,ひとり親支援窓口から積極的に連絡をしてはどうかという
考え方については,
個人情報を部署間でやり取りすることとなるため,
個人
情報保護の観点から難しい面もあるし,ひとり親支援担当部署の人的対応
能力を超えているものと考えられる。
仮に,
そのような積極的なサービスを行うことを考えるのであれば,
当該
業務について専従する職員の配置が必要不可欠である。ひとり親支援担当
部署の対応能力や政策効果を考えても,現実的には連絡窓口を幅広く周知
不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース第3回資料3し,当事者から連絡を貰うことの方が現実的だと思う。
しろまる 実際の相談の場面では,養育費の金額の変更の可否や方法等について相
談を受けることが多いため,
この点についての情報提供や,
相談の際に利用
することができるツールの提供があれば,非常に有益である。
(自治体B)
しろまる 仮に,
電話連絡を希望するひとり親の電話番号を聴取し,
ひとり親支援窓
口から連絡して積極的な支援を行うというスキーム例を考えた場合におい
ては,
個人情報を取り扱うため工夫が必要になるし,
用紙に連絡希望者の連
絡先を記載してもらうという方式だと,
改めてリストを作成し,
転記する必
要が生ずるが,その過程でミスが生ずるリスクもある。
他の方向性として,
例えば,
支援を希望する人に連絡先を登録してもらい,
登録すると情報が送信されるというアプリといったものが考えられる。
その
ようなシステムがある場合,戸籍窓口でシステム登録の案内を配布し,ひと
り親支援窓口において,
当該システムを利用したプッシュ型支援を行うとい
うことが考えられる。
しろまる ひとり親支援担当部署から,当事者に対して一律に電話をして困ってい
ることがないかを聞くというのは,ひとり親支援担当部署の人的資源の観
点からも難しい。
また,
率直に言って,
どこまでニーズがあるか疑問である。
プッシュ型支援としては,
メーリングリスト等により情報提供を行い,メールを読んだ当事者から連絡を貰う方が現実的だと思う。プッシュ型支援
として自治体から積極的な情報提供をする場合,どのような情報をどれく
らいの頻度で送るかが問題となるが,メーリングリストがあればそのハー
ドルは下がると思う。それでも,提供できる情報には限りがあり,頻繁な提
供は難しい。

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