法務省東京矯正管区更生支援企画課
☎048-600-1560
kouseishien-tokyo@cccs.moj.go.jp✉第2号
令和2年9月7日発行 ホームページ
http://www.moj.go.jp/kyousei1/
kyousei08_00101.html
地方公共団体の皆様と矯正施設との連携による取
組をご紹介する本コーナー、連載2回目は茨城県の
牛久市と、茨城農芸学院・水戶刑務所とがタッグを
組んだ取組をご紹介いたします。
牛久市においては、平成31年度から地域再犯防
止推進モデル事業を実施しています。
同市に所在する茨城農芸学院(発達上の課題を有
する者を多く収容している少年院)において、学習
の専門家や放課後の学習支援に携わる指導員に、院
生の基礎学力の定着や復学、進学等に向けた学習支
援をしていただいております。
同市の放課後の学習支援に携わる指導員の方々は、
市内児童・生徒を対象に基礎学習の向上や学習習慣
の定着に向けて学習の支援をされています。同院で
の指導を通して、自身の学習指導のスキルや知見を
高めるなど、矯正施設が所在する自治体ならではの
取組を実施されております。
また、本年6月、牛久市駅前の商業ビル「エス
カード牛久」にオープンした地域物産を扱う「いば
らき自慢」では、茨城県の水戶刑務所をはじめとす
る刑務所で生産された「刑務所作業製品」を販売い
ただいています。地域物産のアクセントとして、刑
務所作業製品はいかがでしょうか?
再犯防止の取組 ご紹介コーナー
皆様、7月と言えば、何でしょうか?七夕?海?
いいえ、「再犯防止」です。
実は、平成28年に成立した「再犯の防止等の推
進に関する法律」いわゆる再犯防止推進法の第6条
で、国は「再犯防止啓発月間」を設けることとされ、
それが7月と規定されているんです。地方公共団体
の皆様にとっては、更生保護官署が中心となって実
施する「社会を明るくする運動」の強調月間として
の印象の方が強いかもしれませんね。
そんな再犯防止啓発月間ですが、今年は新型コロ
ナウイルスの感染拡大防止のため、当課では「非接
触型」の広報活動を何かできないかと考えた結果、
当管区の最寄り駅である「さいたま新都心駅」の大
型ビジョンに、広報動画を放映させていただくこと
としました。その様子が右の写真です。
パワーポイントで作成し、当課職員のナレーショ
ンを吹き込んだ手作り感満載の動画でしたが、再犯
防止のためには、地域の皆様のご協力が必要である、
というメッセージを、道行く方々に少しは届けられ
たでしょうか?
動画は「矯正局公式Twitter」で公開していますの
で、ご興味のある方は是非ご覧ください(7月8日
にツイートされています)。
再犯防止 大型ビジョンで迫力のアピール
さいたま新都心駅前/7月の啓発月間
茨城県牛久市と茨城農芸学院・水戸刑務所との連携
更生
刻々
動画放映時の様子@さいたま新都心駅
皆様は「コレワーク」をご存じですか?「テレ
ワーク」でも「ハローワーク」でもない、「コレ
ワーク」は、矯正施設に入っている人と、彼らを
雇いたい事業者の皆様との懸け橋になるべく、平
成28年、東京と大阪矯正管区の2か所に設置さ
れた「矯正就労支援情報センター」の別名です。
これまで事業者
の皆様から3,000
件以上のご相談に
応じてきたコレワ
ークが、本年7月、
札幌、仙台、名古
屋、広島、高松、
福岡の各矯正管区
で運営を開始することになり、全国8か所で、よ
りきめ細かく事業者の皆様に対応させていただけ
ることになりました。
地方公共団体の皆様と共に、事業者向けの広報
啓発セミナーを開催させていただいたこともあり
ます。
罪を犯した人の雇用に関して、ご相談、ご要望
等があれば、フリーダイヤル「0120−29−
5089」までお気軽にお電話ください。
更生
刻々
平成15年、府中
刑務所の刑務官
を拝命し、現在18
年目。夜勤、警備
隊などの勤務を
経て、現在は工場
担当として受刑者
の指導に当たる。
府中刑務所刑務官 笠原 さん
「千人のうち一人でも二人でも、感じてくれる人を拾いもらさないこと」
どうして刑務官という仕事を
選んだのですか?
高校、大学を通じてやってい
た柔道で、刑務官の方とご縁
があって、この道に進んだんで
す。あとあと考えると、柔道で
の人のつながりが私を生かし
てくれました。
これまで働いてきた中で、印
象に残っている出来事はあり
ますか?
拝命から二、三年目、刑務官
を続けるかどうか、悩んでいた
時期がありました。
当時は警備隊員として保護
室の掃除ばかりやっていまし
た。受刑者が汚した部屋をブ
ラシでこすりながら、自分は
何の役に立っているのか、この
仕事に何の意味があるのかと
自問自答していましたね。
大きな分岐点があったんで
す。ある先輩に弱音を漏らし
たとき、「誰もが嫌がることを
やっているんだから、誰かの役
には立っているだろ」と、笑い
ながら言われました。その言
葉に、人の役に立っているとい
う実感が持てた。おかげで、こ
れまで働き続けてこられまし
た。
受刑者の更生のために心掛
けていることは?
受刑者に教えているのはルー
ルについてです。刑務所のルー
ルはいっぱいある。ただ守るだ
けじゃなくて、ルールを守る意
味を考えてもらう。社会に出
た後、ルールを破ったらどうな
るんだと。ことあるごとに話し
ている。
千人のうち一人でも二人で
も、本当に感じてくれる人間
がいる。この人たちを拾いもら
すな、とベテランの先輩から教
わりました。我々が更生の可
能性を諦めていては、誰も救
えない。そう思っています。◇矯正施設で更生を支える人
たちをシリーズで紹介します。
全国稼働がスタート
のご紹介
コレワークHPは
コチラ→語るを更生支援
工場勤務に当たる笠原さん
犯罪者数 事件数
初犯
71.1%
再犯
57.7%
再犯
28.9%
「見えなかったものを見えるようにする」「隠れて
いたものを浮かび上がらせる」。和語動詞+状態の変
化を表す接尾辞から成る「見える化」である。元々は
トヨタの生産ラインでの「目で見える管理」として登
場した。広い分野で使われ出し、先輩格の「可視化」
とともに時代のキーワードになってきた。
犯罪白書はデータから実情に迫る。犯罪の分析史に
おいて画期的だったのが、平成19年版犯罪白書にある
「再犯者の実態と対策」だ。昭和23年から平成18年ま
での間に、わが国で100万人が起こした約168万件の犯
罪を分析すると、57.7%の事件が28.9%の再犯者に
よって起こされていた。つまり約3割の再犯者により、
約6割の犯罪が行われていたのである。ここに、刑事
政策として再犯者対策が重要であることの根拠がある。
刑法犯の検挙人員は平成16年をピークに減少に転じ、
数で見れば初犯者も再犯者も減少傾向にある。ただ、
減少割合の差で、相対的に再犯した人の割合を示す再
犯者率は上昇し続け、平成30年には48.8%になった。
検挙者の半数近くが再犯者という状況が続いている。
統計の数字は常に、現実を足場に息を吹き込まれる
ことで有用性が増す。再犯防止の取組があり、1人も
取り逃さない更生の取組がある。日々の姿が社会の認
識を押し広げ、その広がりと理解が自然に「見えて来
る化」すればどんなにいいだろう。
更 生 考 1再犯
初犯
42.3%
(100万人) (約168万件)