成年年齢引下げに関連する国会における主な質疑(要約)
事項 質問内容 答弁内容
成年年齢の意義
成年と未成年を民法によって区別をしている
根本的な意義や理由は何か。
民法上,成年年齢は,法律行為を単独ですることができる者の範囲や親権者の親権に服さなくなる者の範囲を定めるものであり,判断能力等が未熟であるために一定の保護が図られている未成年者と,経済取引等の場面でも
一人前の大人として取り扱われる成年者とを区別し,民法上の取扱いを変えることとしている。(5月25日衆・法務委,法務省政府参考人)
成年年齢を引き下
げる理由
民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下
げることとした理由は何か。
若年者の積極的な社会参加を促すという観点から,18歳,19歳の者に,国民投票法の投票権及び公職選挙法の選挙権が既に与えられている。このような国政上の判断がされ,それが我が国の社会に定着してきたことを踏ま
えると,法制度としての一貫性や簡明性といった観点からは,市民生活の基本法である民法においても,18歳,19歳の者を経済取引の面で一人前の大人として扱うことが適当であると考えられる。
また,世界的にも成年年齢を18歳と定めるのが一般的となっている。
さらに,学習指導要領の改訂により,高等学校までの教育課程において,消費者教育,法教育及び金融経済教育の取扱いの充実が図られており,成年年齢を引き下げる環境整備も図られている。(4月24日衆・本会議,法務
大臣)
成年年齢を引き下
げる意義
今般の成年年齢の引下げの意義は何か。
成年年齢の引下げは,国民投票の投票権年齢や公職選挙法の選挙権年齢が18歳と定められ,国政上18歳以上の者を大人として見るとの判断がされたという政策的な流れの中に位置付けられるものであり,18歳,19歳の
若者に参政権という権利を与えるとともに,私法上も大人として扱うことにより,これらの者が責任ある立場で積極的に社会に参加することを促進し,ひいては我が国の将来を活力あるものにすることにつながると考えられる。
また,成年年齢の引下げにより,18歳,19歳の者は自ら就労して得た金銭などを自らの判断で使うことができるようになるほか,自ら居所を定めたり,また希望する職業に就いたり,未成年であることが欠格事由とされている
様々な職業にも就くことができるようになる。これは,若者の自己決定権を様々な場面で尊重するものであり,若者にとって大きな意義がある。(5月31日参・法務委,法務大臣)
(1) これまでに実施されてきた環境整備
事項 質問内容 答弁内容
平成21年の法制
審議会答申の指摘
事項
平成21年の法制審議会の答申の中でも,
若者たちの自立を促す施策や消費者被害拡
大への施策が実現される必要があると指摘
されているが,政府はこのためにどのような
施策を行ってきたのか。
その効果は検証されたのか。
若年者の自立を促すような施策としては,平成21年に成立した子ども・若者育成支援推進法に基づき,若年者の育成支援施策の推進を図るため,平成22年7月に子ども・若者ビジョンを策定し,平成28年2月には,これにか
えて新たな子供・若者育成支援推進大綱を決定した。
こうした方針のもと,例えば,文部科学省によるインターンシップの促進等のキャリア教育の推進,厚生労働省による課題を抱える若者に対する各種の就労支援の実施といったキャリア形成支援などの施策が実施されてきた。
消費者被害に対する施策としては,教育の面からは,平成20年及び21年の学習指導要領の改訂によって,消費者教育,法教育,金融経済教育等の充実が図られ,現在の高校生は既に改訂後の学習指導要領に基づく教育
を受けている。
また,今国会には,若年者を中心に発生する消費者被害事例を念頭に置いた取消権の創設等を内容とする消費者契約法の一部を改正する法律案が提出されている。(5月11日衆・法務委,法務省政府参考人)
成年年齢の引下げに向けた環境整備の施策には,各種の教育あるいは周知啓発活動など様々な施策が含まれており,その全体的な効果を定量的に検証するということは困難である。したがって,その施策の全体的な効果に
ついて定量的な結果を得られるような検証は行っていない。
しかしながら,消費者被害の拡大を防止するための施策としては,消費者教育の充実を図った学習指導要領に基づく教育が行われている。また,消費者庁の設置により消費者行政の一元化及び充実が図られている。これらの
施策は,若者に対して直接的な効果を有する内容であると理解しており,消費者被害の拡大を防止するための施策についても相応の効果が上がっているものと判断している。(5月31日参・法務委,法務省政府参考人)
(2) 成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議について
事項 質問内容 答弁内容
連絡会議の概要
成年年齢の引下げは,多くの国民に影響を
与えるものであって,広く様々な分野に波及
するものであるため,政府一体となって環境
整備に取り組んでいく必要がある。今般,成
年年齢引下げを見据えた環境整備に関する
関係府省庁連絡会議が立ち上がったところ
だが,この連絡会議はどのようなものか。
成年年齢の引下げに向けた環境整備については,関係府省が連携して対応しなければ成果が上がらないことから,今般,成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議を開催した。これは,関係府省庁相
互の密接な連携協力を確保し,総合的かつ効果的な取組を推進することを目的とするもので,今後も継続的に開催することを予定している。
この連絡会議は,若年者の消費者教育,消費者保護,与信審査,若年者自立支援など,成年年齢引下げを見据え,対応が必要とされる課題をテーマとして取り上げることとしている。
このような体制により,関係府省庁が足並みをそろえて必要な施策を効果的に実施していくことができると考えている。(5月25日衆・法務委,法務大臣)
連絡会議の進捗管
理方法,開催頻度
連絡会議の趣旨として,成年年齢引下げを
見据え,環境整備が必要な個別施策の報
告,所要の措置,進捗管理を行うとされてい
る。この報告や進捗管理は具体的にどのよ
うに行っていくのか,連絡会議を開いて管理
をするのか,そうであれば,この会議はどの
程度の頻度で開催するのか。
連絡会議においては,個別の施策ごとに工程表を作成した上で,その実施状況を連絡会議の構成員である関係府省庁が相互に確認をし,施策の進捗状況を管理をすることを予定している。
取り上げるテーマについては,今後必要に応じて追加することもあり得ると考えており,国会における御議論を十分に踏まえた形で更に検討していきたい。
連絡会議は,年に数回程度開催することを予定しており,そのもとで幹事会を開催し,実務的な協議を行っていく予定である。(5月16日,25日衆・法務委,法務大臣)
1 成年年齢引下げについて
2 成年年齢引下げの環境整備について1 (3) 消費者教育,消費者保護,消費生活相談体制の充実について
事項 質問内容 答弁内容
消費者教育の必要
性について
成年年齢を引き下げれば,18歳,19歳の
消費者被害が拡大,急増することは明らか
だと思われるがどうか。
民法の成年年齢を引き下げた場合には,18歳,19歳の者は,民法第5条が規定する未成年者取消権による保護を受けることができなくなる。そのため,何らの対策も講じなければ,18歳,19歳の者の消費者被害が拡大する
おそれがあると考えられる。(5月16日衆・法務委,法務省政府参考人)
消費者被害拡大防止については,これまでも政府として消費者教育の充実などの施策に取り組んできた。今後も平成34年4月1日までの期間を用いて関係省庁としっかり連携をし,更なる環境整備の施策の充実強化に取り組
んでいきたい。(5月31日参・法務委,法務大臣)
現在までの消費者
教育への取組
消費者教育の現状を問う。
文部科学省では,学校教育及び社会教育を通じて幅広い世代に対する消費者教育を推進している。
小・中・高等学校では,平成20,21年の学習指導要領の改訂の際に,主に社会科や家庭科などの関連する教科において消費者教育に関する内容の充実を図っており,例えば,高等学校の授業において,高金利問題や多重
債務問題などを扱い,消費者としての権利や責任について考察させること等の学習が行われている。
大学等においては,各大学の自主的・自律的な判断により,例えば,消費者教育に関する授業科目等が開設されているほか,学生に対するガイダンスや学生相談等において消費者トラブルやその対処方法についての啓発な
どが行われている。
社会教育においては,消費生活センターや弁護士会等と連携しつつ,公民館等の身近な場で幅広い年代の住民を対象とした消費者教育に関する講座が展開されている。
(6月5日参・法務委,文部科学省政府参考人)
18歳以上の若者が成熟した成年として自立
するためには,高校生の間に消費者教育を
徹底するとともに,消費者保護の法律を充実
させることで,取引経験が不足した若者で
あっても回復不可能な財産被害が起きない
ような環境を整えるのが政策論の本筋であ
る。そのために,今後,高校生に,法教育の
充実,消費者教育の充実,金融経済教育の
充実をどのようにすすめていくのか。
成年年齢の引下げに向けて,法教育,消費者教育,金融経済教育を一層充実していくことが重要である。文部科学省では,本年2月に,消費者庁,法務省,金融庁と連携して「若年者への消費者教育に関するアクションプログ
ラム」を決定し,2020年度までの3か年を集中強化期間とするなど,取組を推進している。具体的には,高等学校等において,社会科や家庭科など関連する教科の学習指導要領の趣旨の徹底を図ること,消費者庁作成の高
校生向け消費者教育教材の活用を促進すること,実務経験者の外部講師としての活用を推進すること,教員養成,教員研修等の充実を図ること等を進めることとしている。また,大学等においても消費生活センターとの連携の
促進などを行うこととしている。
今後とも,関係省庁と連携し,法教育,消費者教育,金融経済教育の充実に向けて取組を加速していく。(5月30日参・本会議,文部科学大臣)
18歳,19歳の若者を未成年者取消権による
保護から外すことで,若者の消費者被害が
増加するとの懸念が示されているが,この懸
念にどう答えるのか。
消費者教育の充実は特に重要であることから,実践的な教材「社会への扉」を作成し,昨年度は徳島県の全ての高校でこれを活用した授業を実施した。
さらに,本年2月には,文部科学省等の関係省庁と連携をして,2020年度までの3年間を集中強化期間とするアクションプログラムを決定し,「社会への扉」を活用した授業が全ての都道府県で行われることを目指す。このよう
な取組を通じ,自立した消費生活を送ることができる若者を育成できると考えている。(5月11日衆・本会議,消費者担当大臣)
学校における消費
者教育のための外
部人材の活用
消費者教育を行うに当たっては、生徒・学生
の記憶に残ることが重要であり、その点で、
外部講師の活用は望ましいと考える。
外部講師の活用の推進に当たって国として
どのようにパックアップするか。
消費者教育に関する知識や経験に基づく指導力を有する外部の人材を積極的に活用することにより、学校において実践的かつ効率的な消費者教育が期待できる。
外部人材の学校教育現場での活用が進むように、学校とこれらの外部の人材の間に立って調整を行うことができる消費者教育コーディネーターという役割の人材を地方公共団体へ配置していきたい。(3月23日参・文科委,消
費者庁政府参考人)
若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラムに掲げているとおり、全ての都道府県の消費者教育コーディネーターの配置に向けた支援に取り組む。地方公共団体における消費者教育コーディネーターの配置が
円滑に進むように、実態把握を進めるとともに、地方消費者行政強化交付金を活用して積極的に支援する。(5月11日衆・法務委,消費者庁政府参考人)
消費者契約法改正
による消費者被害
対策
平成21年の法制審議会の答申では,成年
年齢引下げの法整備を行う条件として,消費
者保護施策の充実を求めているが,政府
は,今回の消費者契約法改正で十分と考え
ているのか。
今般の消費者契約法の改正により,不安をあおる告知や人間関係の濫用等によって締結された消費者契約に関する取消し権が追加されるが,これは,若年者を中心に発生している消費者被害事例等を念頭に置いたものであ
り,消費者教育の充実等の他の施策と相まって,十分な消費者被害への対策となるものと考えている。(5月30日参・本会議,法務大臣)
本改正案は,法制審最終報告書が指摘する,成年年齢引下げに対応した消費者保護施策ともなっているものである。
具体的には,個々の消費者の知識及び経験を考慮した上での情報提供を事業者の努力義務として明示をしている。また,社会生活上の経験の乏しさに着目して,不安をあおる告知や恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用を,
取消しの対象となる不当な勧誘行為として追加をしている。
更なる消費者保護政策については,消費者被害の状況等を勘案しつつ,必要に応じて検討してまいる所存である。(5月30日参・本会議,消費者担当大臣)
包括的な取消権の
創設
成年年齢を引き下げるとしても,年齢を要件
とする取消権を維持すべきではないか。
未成年者取消権は,未成年者が法定代理人の同意なく行った法律行為について,取引の種類などを限定することなく,原則としてこれを取り消すことができるとするものであり,未成年者を保護する機能を果たしてきた。もっと
も,未成年者に対して契約等の取消権が付与されていることは,民法上,成年者と未成年者との最も重要な差異の一つである。
したがって,成年年齢を引き下げるということは,18歳,19歳の者が未成年者取消権を行使することができないとすることにほかならないのであり,成年年齢を引き下げることとしながら,18歳,19歳の者が,年齢を要件とする
取消権を引き続き行使することができるとすることは,困難であると考えられる。(6月14日参・法務委,法務省政府参考人)
消費生活相談体制
の充実
消費者被害相談体制の充実について,消費
者ホットライン188の周知が重要であると考
える。
また,若者向けにはSNSを活用した相談体
制の整備も必要ではないか。
1.一元的な消費者相談窓口機能を整備することは,消費者庁設立以来の課題である。消費者ホットライン「188」は,消費生活センター等の消費生活相談窓口の存在や連絡先を知らない消費者に近くの消費生活相談窓口を
案内し,相談の第一歩をお手伝いするもの。平成27年7月より共通の3桁番号「188」を運用しており,その周知は大変重要であると認識している。
2.「188」の周知については,消費者庁ホームページ掲載・チラシの配布はもちろんのこと,政府広報や消費者庁ツイッターにおいても,個別の注意喚起を行う際には併せて行っている。
3.新たな取組としては,4月22日,「沖縄国際映画祭」に,消費者庁として初めて参加し,「188」を中心にPR活動を行った。また,消費者月間の取組として,吉本興業株式会社と提携したPR動画の公開も予定しており,従来と
は違った様々な取組を行っていきたい。
4.若年者の消費者被害を防止するための実践的な消費者教育として,消費者庁において作成した教材「社会への扉」には,
・話が違う!解約できるかな?と思ったら188へ
・これって,ネットトラブル?と思ったら188へ
・クレジットや借金で困ったら,まずは188へ
・製品やサービスで危ない!と思ったら188へ
と,具体的事例を記載し,注意喚起を行っている。
5.SNSなどの活用については,まずは消費者ホットライン188の周知を図り,若い世代も含めて「188」の利用の普及が重要と考えるが,メールによる相談等を取り入れている自治体もあり,今後も,時代の変化に応じて,消
費者が適切に相談を行える環境整備について検討していく。(5月17日衆・消特委,消費者庁政府参考人)
アクションプログラ
ムについて2 (4) 与信審査について
事項 質問内容 答弁内容
貸金業者のキャッ
シング
貸金業法について,資力用件とその確認方
法の厳格化を行うべきではないか。
貸金業者によるいわゆる消費者向けローンについては,貸金業法において,資金需要者に対する過度な貸付けを未然に防止するという観点から,いわゆる総量規制,さらに顧客の返済能力調査の義務づけ,契約内容の書面
の交付義務などが規定されている。
貸金業者がこのような貸金業法上の規定を厳正に遵守することが,若年者に対する過大な貸付けを未然に防止する上でまず重要であると考えており,金融庁では,検査監督を通じて,貸金業者における法令遵守を日ごろから
確認している。
また,自主規制機関である日本貸金業協会において,協会員に対する監査等を通じて法令遵守の実効性確保に取り組むとともに,貸金業者の中には,例えば若年者に対する貸付上限額を一定額に抑える,勤務先への在籍確
認によって返済能力調査を実施するなどの取組を行っている業者もある。
こうした状況を踏まえ,まずは協会や貸金業者による取組状況等を十分に把握して,より一層推進していくことが重要だと考えている。(5月25日衆・法務委,金融庁政府参考人)
銀行カードローン
貸金業法の適用を受けない銀行カードロー
ンにも総量規制を導入し,若年者に対する審
査を厳格化すべきではないか。
貸金業法上のいわゆる総量規制は,貸金業者のみが対象となっているが,銀行に対しては,監督指針において,過剰な貸付防止のための審査体制の構築について,着眼点を記載している。
いわゆるこの銀行カードローンについては,低金利環境を背景に,近年,残高が増加しており,過剰な貸付けが行われているという批判もあるため,昨年3月,全国銀行協会が申合せを行い,銀行業界として,業務運営の適正
に向けた自主的な取組を進めている。
金融庁としては,昨年9月以降,融資残高の多い銀行を中心に立入検査を実施し,改善に向けた取組を促すとともに,結果を中間取りまとめという形で本年1月26日に公表した。検査立入り先以外の全ての銀行に対しても,現
在,実態調査を実施しており,業界全体の業務運営の水準引上げを図る取組を進めている。
このような行政上の対応によって,業界全体の適切な業務運営の確立を図りたいと考えており,現時点では銀行を総量規制の対象とすることは考えていない。
その上で,成年年齢の引下げに関しては,若年者に対する与信の提供であるため,例えば対面の契約の説明時などに契約内容をより丁寧に説明する,極度額の上限を設定するといったことによって,過剰な借入れとならない
ように配慮するような対応を業界に促しているところである。(5月25日衆・法務委,金融庁政府参考人)
クレジット利用
割賦販売法について資力要件とその確認方
法を厳格化すべきではないか。
割賦販売法では,契約者が過大なクレジット債務を負担することを防止するため,クレジット事業者に対して,与信審査に際し,申込者がクレジット債務の支払に充てることが可能と見込まれる額を調査することを義務付け,当該
額を超えるクレジット契約を締結することを禁止している。
こうした与信審査に関しては,収入額の確認について書面を求めるべきである,あるいは5万円を超えるクレジットについては資力審査を行うべきであるといった指摘があるが,与信審査については,消費者保護とともに,消費
者の利便性の観点,あるいはプライバシー保護の観点も含めて総合的に勘案していく必要があると考えている。
なお,クレジット事業者の業界団体である一般社団法人日本クレジット協会の調査によると,学生など若年者に対しては,多くのクレジット事業者においてクレジットの限度額を少額に設定する取組を自主的に行っている。
いずれにしても,引き続き状況やニーズを見極めていく必要があると考えており,成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省連絡会議においても,クレジットに係る与信審査の厳格化に取り組むこととしている。割賦
販売法の運用状況並びに業界の自主的な取組の状況を注視しながら,若年者を含めた消費者保護に万全を期していきたいと考えている。(6月12日参・法務委,経済産業省政府参考人)
(5) 若年者自立支援
事項 質問内容 答弁内容
若年者の自立支援
若者の社会における意識や自立を高める教
育が非常に重要だと考えるが,どのように行
われているか。
現在,文部科学省は,若者の自立支援に関する取組として,小学校からの起業体験や,中学校の職場体験活動,また高等学校におけるインターンシップの促進など,発達段階に応じた体系的なキャリア教育の推進を進めてい
る。
さらには,児童生徒の心のケアや,児童生徒を取り巻くさまざまな環境への働きかけを行うため,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置促進による教育相談体制の充実,保護者への相談対応等の家庭教
育支援の充実,総務省や法務省と連携した副教材の作成,配付などによる主権者教育や法教育の充実等を進めているところ。
引き続き,文部科学省としても,関係省庁と連携して,更に推進していきたい。(5月16日衆・法務委,文部科学副大臣)
困難を有する子
供・若者への支援
の推進
18歳で親権が外れるということで,自立が困
難な者に対する,身体的,精神的,経済的,
社会的なサポートについて,どのように考え
るのか。
厚生労働省としては,若年者の自立を支援するための施策として,キャリア形成支援や困難を有する子供,若者への支援を推進している。
具体的には,ニート,フリーター等の若者の社会的,経済的自立に向けた支援として,地域若者サポートステーションやわかものハローワーク等において,就職実現に向け課題を抱える若者に対するきめ細かい就労支援等を
行っている。学生アルバイトの労働条件確保対策,労働法に関する教育,周知啓発については,労働条件相談ほっとラインを設置し,夜間,休日の相談の受付を行ったり,ポータルサイトの運営を通じ,労働基準関係法令や事
案に応じた相談先の情報提供などを行っている。
また,社会的養護を必要とする方については,児童福祉法において,児童養護施設等への入所は20歳まで入所等の延長を可能にしているほか,児童養護施設等を退所した児童等に対する22歳の年度末までの必要に応じた
支援などの自立支援を行っている。さらに,ひとり親家庭については,就業支援を基本としつつ,子供の居場所づくりなどの子育て・生活支援,学習支援など総合的な支援を進めている。
これらの施策については,親権の対象年齢が引き下げられても支援の対象年齢は維持することとしており,これらの施策の一層の推進を通じて若年者の自立を支援してまいりたいと考えている。(5月31日参・法務委,厚生労
働省政府参考人)
ワン・ストップ・サー
ビスセンターの設
置等
法制審の答申では,各種相談を受けられる
ようなワン・ストップ・サービスセンターを設置
すべきとされているが,迅速に相談支援を受
けるためには,初期段階でどこへアクセスす
ればよいのか。また,各種相談窓口の周知
はどのように行っているのか。
政府が設置している窓口で若年者が必要な各種情報提供を受けたり,あるいは困ったときに各種相談が受けられる相談窓口としては,まず,地方公共団体が設ける子ども・若者総合相談センターがある。これは,平成30年4月
1日現在で82の地方公共団体に設置されている。
また,働くことに悩みを抱える15歳から39歳の無業の若者に対してサポートをする地域若者サポートステーションは,平成30年度時点で全国175か所に設置されている。
さらに,正社員での就職を目指す若者,若年者を対象に様々な支援を専門的に行う公共職業安定所としてわかものハローワーク等があり,平成30年4月1日現在で,わかものハローワークは全国28か所,わかもの支援コー
ナー等は全国206か所にそれぞれ設置されている。
引きこもりの状態にある者について支援を行うものとして,ひきこもり地域支援センターがあるが,これは,平成30年4月1日現在で全ての都道府県及び政令指定都市に設置されている。
以上のうち,子ども・若者総合相談センターは,一般的に子供,若者の育成支援に関する相談に応じる窓口であり,ワンストップサービスと呼ぶことができるものと承知している。そのほかの窓口も,それぞれ就労,引きこもりと
いった分野に関するものではあるが,その分野においては,一つの場所で様々な相談が受けられるものである。
これらの窓口の存在については,これまでも様々な形での周知が図られてきたところであるが,引き続き,成年年齢の引下げを見据えて,関係省庁と連絡しつつ,更に周知徹底を図っていきたい。(5月31日参・法務委,法務省
政府参考人)
アダルトビデオ出
演強要問題に対す
る認識と対策
成年年齢を引き下げた場合には,18歳,19
歳の者にアダルトビデオへの出演を強要す
る契約が広がる可能性があるが,今後どの
ように対応していくのか。
アダルトビデオ出演契約を締結したとしても,その契約上の債務の性質上,少なくとも意に反して出演を強制される法的な根拠は存在しないと考えられる。
また,契約が成立したとしても,公序良俗違反の主張,詐欺又は強迫,消費者契約法上の取消権,あるいは雇用契約における解除権等,違約金の支払義務を否定する各種の対抗手段があり,そのような請求を受けた場合に
は適切な第三者に相談することが重要である。
適切な第三者への相談ということについては,政府としても,ホームページ等で徹底して周知活動を行い,また相談体制の充実などにも取り組んできたところであり,継続してしっかりと取り組んでいく必要がある。
このように現行制度上も様々な対抗手段が存在するが,こうした対応のみで十分かどうかについては,政府として検討を続けなければならない喫緊の課題であると認識をしている。
この点については,いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・「JKビジネス」問題等に関する関係府省庁対策会議,また,成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議での検討を通じて適切に取り組んでい
くほか,法務省内に設置した性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループにおいて,この問題について取り上げ,政府の検討に資するべく取り組んでいきたい。(6月12日参・法務委,法務大臣)3 3 周知活動について
事項 質問内容 答弁内容
成年年齢引下げの
周知方法・対象者
民法一部改正法の施行まで,約4年もの期
間を置いているが,この期間,どのようにし
て周知や若者の機運の醸成をしていくのか。
本法律案は,直接の対象となる18歳,19歳の若年者のみならず,その親権者等を含む国民全般に影響を与えるものである。そのため,法務省としては,施行日を平成34年4月1日として十分な周知期間を確保することで,そ
の間に周知活動を徹底して行いたいと考えている。
調査方法等の詳細については現在検討中であるが,本法律案の成立後に,成年年齢を引き下げることの意味や,その時期,他の法律で定める年齢要件の変更の有無といった事項について,国民にどの程度浸透しているのか
調査することを検討している。また,成年年齢の引下げについて若年者と意見交換を行う機会も設けたいと考えている。
これらの取組によって得られた結果を分析した上で,その結果を活用して効果的な周知活動を行いたいと考えている。
具体的な周知活動としては,現在の高等学校への進学率が,高等専門学校等への進学まで含めると約99%であることを踏まえ,引下げの直接の影響を受ける若年者に対して効果的に周知活動を行うために,高等学校等に
対して,成年年齢の引下げの意味や,ほかの年齢要件がどのように変わるのかといった内容を周知するためのポスターやパンフレットを配布することを検討している。
そのほか,成年年齢の引下げは,直接の影響を受ける若年者のみならず,その親や取引相手となる企業等にも大きな影響を与えるものであるため,幅広く説明会を開始したり,各種のメディアを活用するといった形で国民一般
に対する周知活動を進めていきたいと考えている。
なお,飲酒,喫煙年齢や公営競技関係の年齢など,改正法の施行により民法の成年年齢と異なることとなるものについては,社会的な混乱を避けるためにも,関係省庁と連携して手厚く周知活動を行う必要があると考えてい
る。
このような取組を通じ,施行日までに,新たに成年と取り扱われる18歳,19歳の方々に大人としての心構えを持っていただくことができるよう努力していきたい。(5月16日衆・法務委,法務省政府参考人)
4 成人式
事項 質問内容 答弁内容
成人式の時期や在
り方等に関する検討成年年齢の引下げに伴い,従来は20歳の1
月に行われていた成人式が,高校3年生の
1月に行われることになり,時期的に妥当で
はなく,また,着物業界など多くの関連業界
に影響が出ると考えられる。成人式は各自
治体が行うものであるが,このような事情を
踏まえ,何らかの統一指針を示すべきでは
ないか。
成人式については,現在,多くの自治体において,成人の日あるいはその前日に行われている。
この1月の第2月曜日の成人の日であるが,おとなになったことを自覚し,みずから生き抜こうとする青年を祝い励ます日とされている。「おとな」の意味については,必ずしも民法の成年を意味するものではないと考えられるが,
いずれにしても,選挙権年齢が18歳に引き下げられ,また民法の成年年齢も18歳に引き下げられることとなれば,この成人式の対象とされる者の年齢も18歳に引き下げられることになる可能性がある。
その場合には,多くの者が高校3年生の時点で成年に達することとなり,高校3年生にとって成人の日は大学入試センター試験の直前であるため,その時期に成人式を実施すると受験生が参加しにくくなるのではないかといった
問題が指摘されている。
また,着物業界から,これまで成人式に着ていくための振り袖等の着物の売上げが一定程度見込まれていたものの,こうした売上げが落ちるのではないかという懸念も寄せられている。
成人式の実施等については,法律で定められているわけではなく,現在,各地方自治体の判断で行われているものであるため,政府として一律に,成年年齢の引下げに伴う成人式の時期,あり方等の見直しについて何らかの
統一的な指針を示すことは,必ずしも適切ではない。
もっとも,成年年齢の引下げによって,実際上,成人式のあり方等に影響が及ぶことは避けられないと考えられるため,成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議において,改正法案の成立後に成人式
の時期やあり方等を検討課題として取り上げることを予定している。
政府としては,今後,関係者との意見交換などを通じて,関係者の意見や各自治体の検討状況を取りまとめた上で適切に情報発信し,各自治体がその実情に応じた対応をすることができるように取り組んでいきたい。(5月11
日衆・法務委,法務省政府参考人)
成人の日の時期
成人の日を1月にしなければならない理由は
あるか。
成人の日は,昭和23年に国民の祝日に関する法律,いわゆる祝日法が制定された際に,大人になったことを自覚し,みずから生き抜こうとする青年を励ます日として,昔の元服や裳着にかわるものとして設けられたものであ
り,それらがかつて1月に行われることが多かったということから,当初は1月15日と規定され,その後ハッピーマンデー化により現在は1月第2月曜日と規定されているという歴史的経緯はあるが,1月にしなければならない理
由はない。祝日法は,議員立法により制定され,これまでの改正も大半が議員立法によるものであることから,祝日法の改正に際しても,基本的には国会で十分御議論の上決定していただくべきものである。(5月16日衆・法務
委,内閣府政府参考人)
5 養育費
事項 質問内容 答弁内容
引下げ後に取り決
められる養育費の
支払期間の終期へ
の影響
成年年齢の引下げにより,養育費の支払期
間の終期に影響はあるのか。
養育費の存否及びその具体的な内容は,子が未成熟で自ら稼働して経済的に自立することを期待することができない場合に,両親の経済状況等の個別の事情を踏まえて判断されるものである。
したがって,養育費の支払期間の終期につきましても,その子の置かれた家庭環境や大学進学の可能性など,その子が経済的に自立することが見込まれる時期といった個別の事情によって定められるものであり,成年年齢が
引き下げられた場合にも,18歳という年齢で一律に画されることにはならないものと考えられる。(6月5日参・法務委,法務省政府参考人)
成年年齢の引下げ
前に合意等がなさ
れた養育費の支払
期間の終期への影響成年年齢の引下げは,引下げ前にされた養
育費に関する合意又は審判に影響を及ぼす
のか。
当事者が,子が成年に達する日が属する月まで養育費を支払うと合意をしていた場合には,この合意をした当時の当事者の意思を推測することになる。一般的には,その合意をした当時の成年年齢は20歳であるから,その当
時,成年年齢に関する法改正があり得ることを想定して,それに連動させる意思を有していたというような例外的な場合を除き,成年に達するというのは20歳に達するという意味であると解釈するのが自然である。
また,当事者は,予測される子の監護状況,子に受けさせたい教育の内容,子が経済的に自立すると予測される時期等を考慮して,その後どれだけの期間養育費を支払う必要があるかを定めたと考えられるが,こうした事情は
成年年齢が引き下げられたとしても変わるものではない。
したがって,一般的には,成年に達する日が属する月までという表現で合意した場合も,合意当時の当事者の意思は,当時の成年年齢である20歳まで養育費を支払うものであると考えられる。
法改正前に既に確定している養育費の審判で成年に達する日が属する月までとしているものについては,当事者間で争いが生じた場合,最終的には裁判所の判断によって解決することとなるが,一般的には,先ほど述べた施
行日前の合意に関して答弁したところがほぼ当てはまるものと考えられる。(5月11日衆・法務委,法務省政府参考人)
養育費の支払期間
の終期に関する問
題に対する取組
成年年齢引下げに伴い,養育費の支払期間
の終期に関する問題について,どのような取
組を実施するのか。
養育費の取決めが適切に行われ,その取決めが確実に履行されることは,子の利益を図る観点から極めて重要である。こうした観点から,法務省では,平成28年10月から,養育費等の重要性について分かりやすく解説すると
ともに合意書のひな形を掲載したパンフレットを作成し,全国の市町村で離婚届用紙を取りに来た当事者の方への配付を行うなどの周知活動に取り組んできた。
なお,このパンフレットにおいては,養育費についての合意書の記入例として,現在でも支払期間の終期を子が22歳に達した後の3月までとする合意を記載しており,養育費が支払われるのは必ずしも子が未成年である場合に
限定されるものではないことを前提とする記載としている。また,この記入例につきましては,法務省のホームページにも掲載している。
法務省としては,今後も,養育費の支払義務が生じるのは子が未成年である場合に限定されるものではないことについて,更に周知に努めていきたい。(6月5日参・法務委,法務省政府参考人)
6 その他
事項 質問内容 答弁内容
施行日
本法律案の施行日について,5年以上の周
知期間が必要との指摘がある中で,施行日
を平成34年4月1日にしたのはなぜか
この法律案においては,施行日を平成34年4月1日として,3年以上の周知期間を確保しているが,これは成年年齢の引下げが,18歳,19歳の若年者本人やその親権者のみならず,国民一般の生活に広く影響を及ぼすもの
であるため,相当長期の周知期間を設ける必要があること等を考慮したもの。
もっとも,周知期間が長くなり過ぎると,改正法への国民一般の注目度が低くなり,差し迫った問題であると受け止めてもらうことができずに,かえって効果的な周知活動の妨げになるおそれもある。
この法律案の周知期間は,このような要素を総合的に考慮した上で定めたものであり,法務省としては,十分に合理的な期間であると考えている。(6月5日参・法務委,法務省政府参考人)
消費者団体,日弁
連などの関係団体
からの意見聴取の
必要性
日弁連,消費者団体などから意見を聴取す
る場を設けるべきではないか。
成年年齢の引下げの環境整備の諸施策については,今後も引き続きしっかりと取り組む必要があると考えており,いずれにしても,その内容の周知等も含め大変大事であると思っている。
今後,消費者関連団体あるいは日弁連などからの意見聴取や意見交換の機会を設けるかどうかにつきましては未定であるが,今後の環境整備に向けた諸施策,周知を効果的なものとするために,さまざまな団体からの意見
の聴取についても積極的に取り組んでいきたい。(5月11日衆・法務委,法務大臣)4

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