論告メモ
(検察官)検察官の意見は次のとおりです。
(検察官)被告人が,犯人であることは以下に述べる理由から,明らかです。
まず,第1に,被告人が持っていたお金は,被害者から奪われた金と同一性
が認められます。その理由は,
(金の同一性)
1まず,被告人が持っていたお金は,被害者が奪われた金額と同じ5万5,0
00円であり,
2「1万円札4枚,5千円札3枚」というお札の種類まで同じです。
3また,被告人が持っていた 万円札に開いていた「2つの穴」は,その穴と1穴の間隔,それぞれの穴の直径,位置などが,被害者が奪われた金が入っ
ていた封筒に残されていた「ホッチキスの針の跡」と一致します。
4さらに,被告人は,財布を持っていたにもかかわらず,5万5,000円も
の大金を裸でポケットに入れていたのであって,不自然と言えます。
(検察官)第2に,被害者が,犯人について供述する「白っぽい長袖シャツを着た若い
男」という特徴に,被告人は一致しています。
(検察官)また,被告人が逮捕されたのは,奪われた巾着等が捨てられていた場所から
わずか500メートルしか離れていない場所でしたし,被告人には,決まっ
た仕事がなく,収入が不安定だったから,お金を目当てに事件を起こしても
不思議ではありません。
(検察官)さらには,被告人は,訪ねようとした友達の名前や住所,金を貸した相手の
名前を知らないと言ったり,金を貸した相手を被告人に紹介したという親友
の名前を言えないなど 「あいまい」な説明しかできておらず,被告人の供,述は,信用性に欠けるものです。
(検察官)以上から,被告人が本件犯人であることに間違いありません。
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弁論メモ
(弁護人)弁護人の意見は次のとおりです。
(弁護人)被告人は,犯人ではなく,無罪です。
(供述の一貫性)
被告人は,裁判の前から「自分は犯人ではなく,事件の現場を通っていな
い 」と一貫して供述してきました。。(指紋の不存在)
被害者が犯人に奪い取られた巾着袋や封筒には,被告人の指紋が付いていま
せん。これは,被告人が巾着袋や封筒に触っていないことを裏付けます。
(弁護人)検察官が指摘する証拠も,被告人が犯人であることを裏付けるものではあり
ません。
(目撃者の曖昧さ)
1被害者は,犯人の顔を見たわけではなく,
2犯人は 「白っぽい長袖シャツを着た若い男」だったと言いますが,その,ような男は被告人以外にもたくさんいます。
(事件現場からの距離)
1また,被告人が逮捕されたのは,事件の発生から20分も後であり,
2その場所も,事件が起きた現場から2キロも離れているところであり,
被告人が事件現場にいたことの裏付けにはなりません。
(所持していた現金)
1被告人は,持っていた現金について 「事件の2日前に友人から返しても,らったもの」と一貫して供述してきました。
2他方,被害者の息子は,過去に家賃をどのようなお札の組合せで払って
いたか,一つ一つは覚えてはいないと供述しました。そうすると,事件
当時に持っていた現金が本当に1万円札4枚と5千円札3枚であったの
か,疑問が残ります。
(弁護人)以上のとおり,被告人が犯人であるとするには,合理的な疑いが残りますの
で,被告人は無罪です。
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