無戸籍の方の戸籍をつくるための手引書
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- 1 -
目次
1 無戸籍問題 ·············································································· 3
Q1 「無戸籍問題」とはなんですか。また、「離婚後300日問題」とはなんですか。 ·····················3
Q2 なぜ、
離婚後300日以内に出生した子は血縁上元夫の子でないにもかかわらず、
法律上元夫の子として扱わ
れるのですか······················································································3
Q3 嫡出推定制度は、なぜ必要なのですか。····························································4
Q4 令和4年民法改正による嫡出推定規定の見直しの概要について教えてください。························4
2 無戸籍の方を戸籍に記載するための手続 ············································· 6
2-1 母が手続を行う場合 ···························································· 6
Q5 婚姻が成立した後に生まれた子や離婚後300日以内に生まれた子は、(元)夫から嫡出否認の手続をと
ってもらわない限り、戸籍上(元)夫の子とされるのですか。 ······································7
Q6 離婚後に元夫ではない男性との間の子を懐胎したのに、早産であったため、離婚後300日以内に子が生まれた
というような場合にも、裁判手続を経なければ、元夫の子という扱いになってしまうのですか。 ·············7
Q7 嫡出否認の手続は、どのようなものですか。························································8
Q8 親子関係不存在確認の手続は、どのようなものですか。また、強制認知の手続は、どのようなものですか。 · 8
Q9 親子関係不存在確認の手続を経ずに強制認知の手続をとることは可能ですか。 ·························9
Q10 嫡出否認の手続以外の裁判手続をとる場合にも、
必ず(元)夫に出席又は出頭してもらわなければならないので
すか。····································································································9
Q11 (元)夫にとっては、裁判手続に協力するメリットがないように思うのですが、裁判手続に関与してもらうこ
とには、どのような意味があるのですか。 ························································9
Q12 (元)夫からのDVがあった場合に、裁判所で(元)夫と顔を合わせなければならないとか、裁判手続をとるこ
とによって元夫に現住所を知られてしまうといった不都合が生じるのではないですか。 ··················9
Q13 親子関係不存在確認の調停手続を申し立てた場合、どのくらい期間がかかって、何回くらい裁判所に
行くことになるのですか。········································································10
Q14 調停が不成立となった場合には、どうすればよいのですか。·······································10
Q15 裁判手続により、(元)夫の子でないと認定された場合、どのような手続をとればよいのですか。 ·····10
2-2 無戸籍の方が手続を行う場合 ·················································· 11
Q16 母が既に離婚しているときは、どのような手続を行えばよいのですか。 ··························11
【母の元夫を父とする戸籍の記載を求める方法】
Q17 無戸籍の方が母の元夫を父としてその戸籍に記載されることを求める場合の手続は、どのようなものですか。
·································································································12
Q18 「出生事項記載申出書」とは、どのようなものですか。 ···········································12
Q19 無戸籍の方が母の元夫の戸籍に記載された後、母の戸籍に入ることはできますか。 ·················12
【母の元夫を父としない戸籍の記載を求める方法】
Q20 無戸籍の方が母の元夫を父としない戸籍の記載を求める場合は、
元夫に嫡出否認の手続をとってもらわなけ
ればならないのですか。 ··········································································13
Q21 親子関係不存在確認の手続は、どのようなものですか。また、強制認知の手続は、どのようなものですか。· 13
Q22 親子関係不存在確認の手続を経ずに強制認知の手続をとることは可能ですか。 ·························14
Q23 母の元夫又は血縁上の父が死亡し、又は所在不明となっている場合にも、親子関係不存在確認の手続又は
強制認知の手続をとることができるのですか。·······················································14
Q24 裁判手続により、母子関係を認定した上で、母の元夫の子でないと認定された場合、どのような手続をとれ
ばよいのですか。 ············································································14
【母との親子関係が明らかでない場合の手続】
- 2 -
Q25 法務局において母子関係の認定をすることができない場合には、どのような手続をとればよいのですか。 ···15
Q26 母との間の親子関係存在確認の手続は、どのようなものですか。 ···································15
Q27 母が死亡し、又は所在不明となっている場合にも、親子関係存在確認の手続をとることができるのですか。
·································································································16
Q28 就籍許可の裁判手続は、どのようなものですか。 ············································16
【無戸籍の方の婚姻】
Q29 無戸籍であっても婚姻することはできますか。 ················································16
3 戸籍に記載される前であっても受けることができる行政サービス等 ··············· 17
4 民事法律扶助制度の概要 ······························································ 19
5 相談窓口 ··············································································· 21
はじめに
子(日本人)が生まれた場合、出生の届出をすることにより、その子の戸籍がつくられます。
戸籍とは、人が、いつ誰の子として生まれて、いつ誰と結婚し、いつ亡くなったかなどの親族的身分
関係を登録し、その人が日本人であることを証明する唯一のものです。
出生の届出がされない場合、その子の戸籍がつくられず、無戸籍状態となります。そのため、その子
の母や父が誰であるかといった親族的身分関係やその子が日本人であることを戸籍によって証明する
ことができなくなるほか、
行政上のサービスを十分に受けられないなど、
社会生活上の不利益を被るお
それがあります。
この手引書は、
無戸籍の方の戸籍をつくるための手続等を案内し、
1日でも早く戸籍がつくられるこ
とにより、戸籍がないことによる社会生活上の不利益をなくすこと等を目的として作成しました。
出生届
子が生まれた場合、出生の届出をしなければならず(戸籍法49条1項、52条)、その届出が市区
町村長に受理された場合、その子は戸籍に記載されます。
戸籍は、法律上の親子関係を公証するものですから、出生届書には、法律上の親子関係のある父母を
記載する必要があります。
子の父母が婚姻している場合には、夫を父、妻を母とする出生届書を提出すれば、出生の届出が受理
され、その夫を父、妻を母として子が戸籍に記載されます。
また、母が元夫との離婚後300日以内に子を出産した場合、法律上、母の元夫の子として扱われま
すが、
母が元夫以外の男性と再婚した後に子が出生した場合には、
再婚後の夫の子として扱われます(民法772条2項・3項)。
ここで、
子の血縁上の父が(元)夫や再婚後の夫とは別の男性である場合には、
法律上の父と血縁上の
父とが異なることになりますが、
市区町村の戸籍窓口においては、
子の法律上の父が血縁上の父と同一
か否かという実質的な審理はできませんから、
血縁上の父を父とする出生届書を提出しても、
出生の届
出は受理されません。
- 3 -
1 無戸籍問題
Q1 「無戸籍問題」とはなんですか。また、「離婚後300日問題」とはなんですか。
A1 「無戸籍問題」とは、子の出生の届出をしなければならない方(注)が、何らかの理由
によって出生の届出をしないために、戸籍に記載されない子が存在するという問題です。
「離婚後300日問題」とは、母が、元夫との離婚後300日以内に子を出産した場合
には、その子は民法上元夫の子と推定されるため、子の血縁上の父と元夫とが異なるとき
であっても、原則として、元夫を父とする出生の届出以外受理されず、戸籍上も元夫の子
として扱われることになるという問題、あるいは、このような戸籍上の扱いを避けるため
に、母が子の出生の届出をしないことによって、子が戸籍に記載されず無戸籍になってい
るという問題のことです。
これらの問題を解消するため、令和4年12月に民法が改正されました。
改正された民法の詳細は、Q2〜Q4を御覧ください。
子が出生した場合には、出生の届出をすることによって、その子が戸籍に記載されます。
戸籍は、法律上の親子関係を公証するものですから、出生届書には、法律上の親子関係のある父母
を記載する必要があります。子の父母が婚姻している場合には、夫を父、妻を母とする出生届書を提
出すれば、出生の届出が受理され、夫を父、妻を母として子の戸籍に記載されます。
また、
令和4年12月の改正前の民法においては、
母が元夫との離婚後300日以内に子を出産し
た場合、
母が再婚したか否かに関係なく、
その子は元夫の子と推定されるため
(改正前民法772条)、元夫を父、妻を母とする出生届書を提出すれば、出生の届出が受理され、元夫を父、妻を母として子
の戸籍に記載されることとされていました。
ここで、
子の血縁上の父が夫とは別の者である場合には、
法律上の父と血縁上の父とが異なること
になります。市区町村の戸籍窓口においては、子の法律上の父が誰であるかは法律の規定に従い判断
できますが、
子の血縁上の父が誰であるかについての実質的な審査はできませんから、
血縁上の父を
父とする出生届書を提出しても、出生の届出は受理されません。
(注) 父母が婚姻している場合には父又は母が(ただし、子の出生前に父母が離婚した場合には母が)、父母が婚
姻していない場合には母が、
まずはそれぞれ出生の届出をしなければなりません
(戸籍法49条1項、
52条)。Q2 なぜ、離婚後300日以内に出生した子は血縁上元夫の子でないにもかかわらず、法律
上元夫の子として扱われるのですか。A2ちゃく嫡しゅつ出す い推て い
定制度によるものです。嫡出推定制度とは、法律上の父子関係を早期に確定させ
るための民法上の制度です。
なお、令和4年12月に民法が改正され、嫡出推定に関する規定が見直されました。改
正後の民法では、離婚後300日以内に出生した子について、子の出生前に母が元夫以外
の男性と再婚した場合には、再婚後の夫の子と推定されることになります。
血縁上の母子関係は、通常は分娩の事実自体から明らかであるのに対し、血縁上の父子関係は、必ずしも
明らかではありません。しかし、夫婦の間に生まれた子は、血縁上も夫の子であることが通常であるという
経験則を背景として、
令和4年改正前の民法では、
まず、
妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定し、
次に、
婚姻成立の日から200日を経過した後又は離婚後300日以内に出生した子については、
婚姻中に懐胎し
たものと推定すると定めていました(改正前民法772条)。
これに対し、令和4年改正後の民法では、1妻が婚姻中に懐胎した子に加え、婚姻の成立後に生まれた子
であって婚姻の成立前に懐胎されたものについても、
夫の子と推定するものとし
(民法772条1項後段)、また、
2離婚後300日以内に出生した子であっても、
母が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に2
回以上の婚姻をしていたときは、出生の直近の婚姻における夫の子と推定する(民法772条3項)ことな
どを定めています。
- 4 -
このような改正後の民法の嫡出推定に関する規定により、婚姻が成立した後に生まれた子や離婚後30
0日以内に生まれた子は、原則として(元)夫の子と扱われることとなりますが、離婚後300日以内に
出生した子については、子の出生前に母が再婚していた場合、再婚後の夫の子として扱われることとなります。
そして、(元)夫や再婚後の夫の子であることを否定するためには、原則として、裁判手続によらなけれ
ばならないとされています(Q5参照)。
この裁判手続は、嫡出否認の訴えと呼ばれており、令和4年改正前の民法では、父のみが、子又は親権を
行う母に対して、子の出生を知った時から1年以内に限り訴えを提起することができるとされていました
が、令和4年改正後の民法により、訴えを提起することができる者が父、子、母及び上記2の場合におい
て、子の懐胎の時から出生の時までの間に母と婚姻したものであって、子の父以外の者(以下「前夫」と
表記します。)(民法774条1項・3項・4項)とされ、また、訴えを提起することができる期間も、
父及び前夫については子の出生を知った時から3年以内、子及び母については子の出生の時から3年以内
に伸長されました(母が手続を行う場合については、詳しくはQ7を参照。また、子が手続を行う場合に
ついては更に期間を伸長する例外があります(詳しくはQ20を参照)。)。
なお、
後記のとおり、
訴えを提起する前に、
まずは調停を申し立てることになります
(詳しくはQ7参照)。Q3 嫡出推定制度は、なぜ必要なのですか。
A3 法律上の父子関係を早期に確定するとともに、家庭のプライバシーを守りながら家庭の
平和を尊重し、子の福祉を図ろうとする制度であるからです。
嫡出推定制度によって、母の婚姻した後又は婚姻の解消若しくは取消し後300日以内に生まれた子は、
父の認知や裁判上血縁関係を証明しなくても、当然に法律上の父がいることになります。仮に、嫡出推定
制度が存在しなければ、誰からでも、また、いつまでも法律上の父子関係を否定することができることに
なってしまいます。例えば、長年、父の子として生活してきたにもかかわらず、父が死亡した後になって、
他の相続人から、父の子であることを否定されるといった事態もあり得ることになります。さらに、第三
者から、子の血縁上の父が母の夫以外の男性であるという主張がされることにもなり得ますが、このよう
な主張は、その主張の真偽にかかわらず、それ自体が家庭内の平穏とプライバシーを害するものであり、
これによって家庭が崩壊するといった事態も生じかねません。
つまり、嫡出推定制度は、民法772条による嫡出推定が及ぶ子について、一定の者のみが、一定の期
間内に限り、嫡出否認の訴えを提起することができるものとすることにより、その後は、血縁関係の有無
にかかわりなく、誰も法律上の父子関係を否定することができないものとすることによって、法律上の父
子関係を早期に確定するとともに、家庭のプライバシーを守りながら家庭の平和を尊重し、子の福祉を図
ろうとする制度です。
Q4 令和4年民法改正による嫡出推定規定の見直しの概要について教えてください。
A4 無戸籍者問題については、(元)夫以外の者との間の子を出産した女性が、戸籍上その
子が(元)夫の子と記載されることを避けるために出生届を提出しないことにより、戸籍
に記載されない子が生じるという経緯が典型でした。
そこで、嫡出推定制度の趣旨を踏まえつつ、嫡出推定の範囲等に係る規律を見直すこと
により、出生届の提出がためらわれることとなる状況の発生を防止し、無戸籍となる子が
生じることを防止するため、令和4年12月に、民法が改正され、嫡出推定に関する規定
や嫡出否認の訴えに関する規律が見直されました。
嫡出推定に関する規定については、令和4年改正により、婚姻の成立した日から200日以内に生まれ
た子についても、夫の子と推定することとし、婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子について
は、母が(元)夫以外の男性と再婚した後に生まれた場合には、再婚後の夫の子と推定することとされま
した。これにより、婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子であっても、母が(元)夫以外の男
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性と再婚した後に生まれた場合には、再婚後の夫を父とする出生の届出をすることが可能となりました。
嫡出否認の訴えに関する規定については、令和4年改正前は、夫のみが、嫡出否認の訴えにより、父子
関係を否定することができることとされていましたが、令和4年改正により子及び母も嫡出否認の訴えを
提起できるようになりました。これにより、子又は母は、自ら嫡出否認の訴えを提起し、これを認める判
決を得た上で、(元)夫を父としない出生の届出をすることが可能となりました(なお、離婚後300日
以内に生まれた子につき、子の懐胎の時から出生の時までの間に母と婚姻した者であって、子の父以外の
者についても、嫡出否認の訴えを提起することができます。)。
また、令和4年改正前は、嫡出否認の訴えを提起することができる期間を1年としていましたが、令和
4年改正により、期間が3年に伸長されます(子が手続を行う場合については更に期間を伸長する例外が
あります(詳しくはQ20を参照)。)。
令和4年改正により見直された嫡出推定に関する規定は、
令和6年4月1日以降に生まれた子に
適用されます。
なお、改正民法の施行日前に生まれた子についても、子及びその母の側から、自己の権利の行使として、
生物学上の父子関係を伴わない嫡出推定を否認することを可能とすることにより、無戸籍者問題の抜本的
解消を図る観点から、改正民法の施行日である令和6年4月1日より前に生まれた子やその母であっても、
令和6年4月1日から1年間に限り 、嫡出否認の訴えを提起して、血縁上の父ではない者が子の父
と推定されている状態を解消することが可能とされました。
- 6 -
2 無戸籍の方を戸籍に記載するための手続
2-1 母が手続を行う場合
出生の届出がされず、戸籍がつくられていない子について、母が子を戸籍に記載す
るための手続の概要は、子が出生した時期に応じて次の図1及び2のとおりです。
図1 戸籍の記載を求める方法(令和6年4月1日以降に出生した子)
図2 戸籍の記載を求める方法(令和6年4月1日より前に出生した子)
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Q5 婚姻が成立した後に生まれた子や離婚後300日以内に生まれた子は、(元)夫から嫡出
否認の手続をとってもらわない限り、戸籍上(元)夫の子とされるのですか。
A5 令和4年改正前の民法では、夫のみが、嫡出否認の訴えにより、父子関係を否定することが
できることとされていましたので、原則として、(元)夫から嫡出否認の手続をとってもらう必
要がありました。
令和4年改正後の民法により、子及び母も嫡出否認の手続を行うことができることとされま
したので(詳しくはQ4参照)、(元)夫から嫡出否認の手続をとってもらわなくても、母が
嫡出否認の手続を行うことができます。
また、令和4年の民法改正の施行の前後を問わず、嫡出推定が及ばないことが医師の作
成した証明書や裁判手続(親子関係不存在確認・強制認知)によって認められた場合は、
戸籍上、(元)夫の子として取り扱われません。
嫡出推定が及ぶ場合には、
嫡出否認の手続によらなければ、
父子関係を争えないのが原則です(Q7参照)。
令和4年に改正される前の民法では、夫のみが、嫡出否認の訴えにより、父子関係を否定することがで
きるとされていましたが、令和4年改正により子及び母も嫡出否認の訴えを提起できるようになりました。
これに対し、令和4年の民法改正の施行の前後を問わず、嫡出否認の手続によらない場合であっても、
戸籍上、母の(元)夫の子として取り扱われない場合があります。具体的には、戸籍事務の担当者に、嫡
出推定が及ばないということがはっきり分かれば、嫡出否認の手続によることなく、戸籍上(元)夫の子と
はしないという取扱いが可能です。そのような例としては、まず、離婚後300日以内に出生した子であ
っても、医師の作成した証明書により、婚姻中に懐胎した子ではないこと(=離婚後に懐胎したこと)を
直接証明することができる場合があります(Q6参照)。
このほかにも、裁判手続(注)において嫡出推定が及ばない事情が証明されれば、嫡出否認の手続によ
ることなく(元)夫との父子関係を争うことが可能とされており、その結果、(元)夫との間に父子関係がな
いことが明らかになれば、戸籍上も(元)夫の子として取り扱わないことが可能です。どのような場合に嫡
出推定が及ばない事情があるといえるかについて、最高裁判所は、「妻が子を懐胎すべき時期に、既に夫
婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がな
かったことが明らかであるなどの事情が存在する場合」と判示しており(最判平成12年3月14日)、
一般的には、母の懐胎時に外観上婚姻の実態がない場合をいうと解されています。裁判手続によらなけれ
ばならないのは、このような事情があるか否かについて、市区町村の戸籍窓口で調査し認定することは困
難なためです。
(注)裁判手続の具体的な方法としては、(1)(元)夫を相手として、父子関係がないことの確認を求める親子関係不存在確
認の手続、(2)血縁上の父を相手として、子であると認めることを求める強制認知の手続があります。
なお、親子関係不存在確認の手続を経ずに、強制認知の手続をとることも可能です(Q9参照)。
Q6 離婚後に元夫ではない男性との間の子を懐胎したのに、早産であったため、離婚後30
0日以内に子が生まれたというような場合にも、裁判手続を経なければ、元夫の子という
扱いになってしまうのですか。
A6 裁判手続を経ない場合であっても、離婚後に懐胎したことを医学的に証明することがで
きるときは、元夫の子という扱いにはなりません。
- 8 -
離婚後300日以内に出生した場合でも、離婚後
に懐胎したことが医学的に証明できるときには、「妻
が婚姻中に懐胎した子」(民法772条1項)には当
たらないので、元夫の子として扱う必要はありませ
ん。このような場合については、通達により、出生届
書とともに、医師が作成した一定の様式の証明書を市
区町村の戸籍窓口に提出することで、元夫を父としな
い出生の届出をすることができることになっていま
す(平成19年5月7日民事局長通達)。
※(注記)
「懐胎時期に関する証明書」
...出生した子及びそ
の母を特定する事項のほか、
推定される懐胎の時
期及びその時期を算出した根拠について診断を
行った医師が記載した書面をいいます。
Q7 嫡出否認の手続は、どのようなものですか。
A7 令和4年改正前の民法では、(元)夫(子の父と推定される者)のみが、子又は親権を
行使する母を相手方として、家庭裁判所に嫡出否認の調停を申し立てることができ、嫡出
否認の調停を申し立てることができる期間は、子の出生を知った時から1年以内に限られ
ていました。
令和4年改正後の民法により、令和6年4月1日以後に生まれた子については、子及び
母も嫡出否認の調停を申し立てることができることとされ、(元)夫(子の父と推定される
者)は子又は親権を行う母を、子及び母は父を相手方として、また、前夫(→Q2説明欄
参照)は父及び子又は親権を行う母を相手方として、それぞれ、家庭裁判所に嫡出否認の
調停(詳しくは裁判所HP「嫡出否認調停」参照)を申し立てることができます。また、
嫡出否認の調停を申し立てることができる期間は、子の出生を知った時(子又はその母に
あってはその子の出生の時)から3年以内に伸長されました(Q2参照)。
また、子は、その父と継続して同居した期間が3年を下回ることなどの要件の下、21
歳に至るまでの間、嫡出否認の調停を申し立てることができます。
なお、令和6年4月1日より前に生まれた子及びその母であっても、令和6年4月1日
から1年間に限り、嫡出否認の調停を申し立てることができます。
調停とは、当事者間の話合いによって事件を解決する手続ですが、嫡出否認の手続は、子の父が誰であ
るかという子の福祉にとって極めて重要な事柄を決めるものですから、単に当事者間で子の父が誰である
かということについての合意が成立しただけでは、調停成立(=事件解決)にはなりません。この手続に
おいては、(1)当事者間に申立ての趣旨(例:「子が(元)夫の嫡出子であることを否認する。」)のとおり
の審判を受けることについて合意が成立すること、(2)当事者間に父子関係の存否に関する事実関係に争い
がないことに加えて、(3)裁判所が必要な事実の調査を行った上で(1)の合意を正当と認めた場合に、申立
ての趣旨に沿った審判(合意に相当する審判。家事事件手続法277条)がされることになっており、そ
れ以外の場合には、調停は不成立として終了します。例えば、(2)について当事者間で父子関係について争
いがある場合や、(3)についてDNA鑑定等の事実の調査をした結果、(元)夫と子との間に父子関係が存在
しないという事実が認められなかったような場合には、調停は不成立となります(調停不成立後の手続に
ついては、Q14参照)。
Q8 親子関係不存在確認の手続は、どのようなものですか。また、強制認知の手続は、どの
ようなものですか。
A8 親子関係不存在確認の手続は、子が(元)夫を相手方として、強制認知の手続は子が血縁
上の父を相手方として、それぞれ調停を申し立てることになります(詳しくは裁判所HP
「親子関係不存在確認調停」及び「認知調停」参照)。各手続における申立人と相手方、
手続的要件は次のページの図のとおりです。
- 9 -
これらの手続においても、申立ての趣旨に沿った審判がされるためには、嫡出否認の手続と同様に、(1)
当事者間に申立ての趣旨(例:「子と(元)夫との間に親子関係がないことを確認する。」、「子が血縁上
の父の子であることを認知する。」)のとおりの審判を受けることについて合意が成立すること、(2)当事
者間に父子関係の存否に関する事実関係に争いがないことに加えて、(3)裁判所が必要な事実の調査を行っ
た上で(1)の合意を正当と認めたことが必要となります。
Q9 親子関係不存在確認の手続を経ずに強制認知の手続をとることは可能ですか。
A9 親子関係不存在確認の手続と強制認知の手続は選択的であり、優劣関係にはないことか
ら、親子関係不存在確認の手続を経ずに強制認知の手続をとることは可能です。
Q10 嫡出否認の手続以外の裁判手続をとる場合にも、必ず(元)夫に出席又は出頭してもら
わなければならないのですか。
A10 各裁判手続の当事者となる者や手続的要件は、Q8の図のとおりです。
調停手続においては、当事者間に合意が成立することが必要になりますので(Q8参照)、(元)夫が当
事者となる親子関係不存在確認の調停手続においては、(元)夫の調停出席が必要となります。他方、強制
認知の調停手続においては、子又は母と血縁上の父が当事者となり、(元)夫は当事者ではないため、(元)
夫の調停出席が必要となるわけではありません。もっとも、家庭裁判所が、嫡出推定が及ばない事情があ
るか否か(Q5参照)を審理するため等に必要と考えれば、(元)夫に手続への関与を求めることがあり得ます。
訴訟手続(Q14参照)においては、調停のように当事者間で合意が成立することは必要ではありませ
んので、(元)夫が裁判所に出頭しない場合であっても、手続が進められ、証拠による認定が行われて、判
決がされます。もっとも、訴訟においても、嫡出推定が及ばない事情が必要であることには変わりありません。
Q11 (元)夫にとっては、裁判手続に協力するメリットがないように思うのですが、裁判手
続に関与してもらうことには、どのような意味があるのですか。
A11 法律上の父子関係を決めるものであり、(元)夫にとって、裁判手続に協力するメリッ
トは大きいといえます。
嫡出否認、親子関係不存在確認及び強制認知の裁判手続は、法律上の父子関係を決めるものであり、裁
判手続の結果によっては、(元)夫が子の法律上の父として扶養義務を負わず、子が(元)夫の相続人になら
ないことになるため、(元)夫は重大な利害関係を有しています。したがって、(元)夫にとって、裁判手続
に協力するメリットは大きいといえます。
Q12 (元)夫からのDVがあった場合に、裁判所で(元)夫と顔を合わせなければならな
いとか、裁判手続をとることによって元夫に現住所を知られてしまうといった不都合が
生じるのではないですか。
A12 裁判所において事案に応じた措置が講じられています。裁判手続の申立ての際に裁判
所に申し出てください。
裁判所の構内で暴力を振るわれるおそれや、現住所が知られることにより生命や身体に危害が加えられ
るおそれがあると認められる場合などには、調停期日において当事者双方が顔を合わせないように配慮し
たり、申立書に現住所を記載することを厳格には求めない取扱いをしたりするなど、裁判所において事案
に応じた措置が講じられています。このような特別の事情がある場合には、裁判手続の申立ての際に裁判
所に申し出るとともに、提出する書類等にも現住所を記載することのないようご注意ください。
- 10 -
Q13 親子関係不存在確認の調停手続を申し立てた場合、どのくらい期間がかかって、何回
くらい裁判所に行くことになるのですか。
A13 事案にもよりますが、過去の例では、調停手続にかかった期間はおおむね1か月から
3か月程度、当事者の裁判所への出頭回数は1、2回程度となっています。ただし、調
停手続は、当事者双方が裁判所に出向いて合意することが前提になりますので、事案に
よっては、更に期間や回数をかけて事実の調査や意見の調整が図られることもあります。
調停手続は、
当事者双方が裁判所に出向いて合意することが前提になりますので、
事案によっては、
更に期間や回数をかけて事実の調査や意見の調整が図られることもあります。
Q14 調停が不成立となった場合には、どうすればよいのですか。
A14 更に裁判所で自己の主張を認めてもらいたいと考えるときは、家庭裁判所に、
訴えを提起することができます。
調停が不成立となった場合に、調停の申立人が、更に裁判所で自己の主張を認めてもらいたいと考える
ときは、家庭裁判所に、嫡出否認の訴え、親子関係不存在確認の訴え又は強制認知の訴えを提起すること
ができ、この中で父子関係の存否について審理されることになります。このうち、親子関係不存在確認の
訴え及び強制認知の訴えの場合には、訴訟手続の中で、嫡出推定が及ばない事情があること(Q5参照)
を主張し、立証する必要があります。
Q15 裁判手続により、(元)夫の子でないと認定された場合、どのような手続をとればよい
のですか。
A15 本籍地の市区町村の戸籍窓口において、以下の戸籍の届出や訂正申請の手続をとって
いただきます。また、戸籍窓口での手続は、本籍地の市区町村に限らず、届出をする方
の所在地の市区町村でも行うことができます。
なお、子の母が夫と離婚しているかどうかで手続が違います。
(1) 夫と離婚している場合(注1)
出生届書、裁判書の謄本(嫡出否認、親子関係不存在確認又は強制認知の申立て・請求を認容する審判
書・判決書の謄本)及び確定証明書(審判や判決が確定したことを示す証明書。審判又は判決をした裁判
所の書記官が発行します。)を市区町村の戸籍窓口に提出していただくことによって、子は母の戸籍に記
載されます。この場合、子は母の氏を称し、その父欄は空欄となります(注2)。強制認知の裁判手続を
とっているときは、上記に加え、裁判認知の届書を市区町村の戸籍窓口に提出していただくことによって、
子の父欄に血縁上の父の氏名が記載されます。
(注1)既に元夫の子として出生の届出をしている場合は、戸籍訂正申請書、裁判書の謄本及び確定証明書を市区町村の戸
籍窓口に提出していただくことによって、子は元夫の戸籍から削除され、母の戸籍に記載されます。この場合、子
は母の氏を称し、その父欄は空欄となります。
(注2)母が元夫の氏を称する婚姻中に子を出産し、その後離婚した場合には、親子関係不存在確認の手続又は強制認知の
手続をとったとしても、子の氏が元夫の氏(無戸籍の方の出生時の母の氏)となり、離婚後の母の氏とは異なるこ
ととなるため、そのままでは元夫の戸籍に記載されることになります。そのような場合には、出生届を提出する前
に、あらかじめ家庭裁判所において、無戸籍の方について、「母の元夫の氏」から「母の氏」に変更することの許
可(民法791条1項)を得た上で、出生届書の「その他」欄に「母の氏を称する入籍」と記載をすることによっ
て、無戸籍の方は母の戸籍に記載されることになります。
(2) 夫と離婚していない場合(注3)(注4)
出生届書、裁判書の謄本及び確定証明書を市区町村の戸籍窓口に提出していただくことによって、子は、
夫婦の戸籍に記載されます。嫡出否認の手続又は親子関係不存在確認の手続をとった場合、子は夫婦の氏
を称し、その父欄は空欄となります。強制認知の裁判手続をとっているときは、上記に加え、裁判認知の
届書を市区町村の戸籍窓口に提出していただくことによって、子の父欄に血縁上の父の氏名が記載
されます。
(注3)離婚の手続がとられない限り、子を夫婦の戸籍に記載することになります。
(注4)既に夫の子として出生の届出をしている場合、戸籍訂正申請書、裁判書の謄本及び確定証明書を市区町村の戸籍窓
口に提出していただくことによって、夫婦の戸籍中、子の父欄に記載されている夫の氏名が削除されます。この場
合、子は夫婦の氏を称します。
- 11 -
2-2 無戸籍の方が手続を行う場合
出生の届出がされず、戸籍がつくられていない子が自ら法的な手続をとることがで
きるようになった場合の戸籍記載のための手続の概要図は、下図の通りです。
Q16 母が既に離婚しているときは、どのような手続を行えばよいのですか。
A16 母の元夫を父とする戸籍の記載を求めるか、元夫を父としない戸籍の記載を求めるか
によって、手続が異なります。
(1) 令和6年4月1日より前に生まれた子の手続
ア 無戸籍の方が元夫を父とする戸籍の記載を求める場合には、
法務局において母子関係の認定をすること
ができれば、裁判手続によることなく手続をすることができます。この場合には、原則として、父母の離
婚の際の氏を称し、
その戸籍に記載されることになります
(詳しくは母の元夫を父とする戸籍の記載を求
める方法(Q17〜Q19)参照)。
なお、母が復氏している場合には、離婚の際の戸籍から、母の戸籍に記載を移す手段があります(Q19参照)。
イ 無戸籍の方が母の元夫を父としない戸籍の記載を求める場合
(ア)令和4年改正前の民法では、夫のみが、子の出生を知った時から1年間に限り、嫡出否認の手続によ
り、父子関係を否定することができるとされていましたが、令和4年に改正された民法により、子及び
母も嫡出否認の手続を行うことができるようになります。
この規定は、
原則として令和6年4月1日以
降に生まれた子について適用されますが、改正民法の施行日である令和6年4月1日より前に
生まれた子であっても、子及びその母は、令和6年4月1日から1年間に限り、嫡出
否認の手続を行うことができます。
(イ)また、裁判手続(注)において嫡出推定の及ばない事情が証明されれば、嫡出否認の手続によること
なく元夫との父子関係を争うことが可能とされており、
その結果、
元夫との間に父子関係がないことが
明らかになれば、母の氏を称し、その戸籍に記載されることになります(詳しくは母の元夫を父としな
い戸籍の記載を求める方法(Q20〜Q24)参照)。
(注)裁判手続の具体的な方法としては、(1)元夫を相手として、父子関係がないことの確認を求める親子関係不存在確
認の手続、(2)血縁上の父を相手として、子であると認めることを求める強制認知の手続があります(Q21参照)。
(2) 令和6年4月1日以降に生まれた子の手続
ア 令和6年4月1日以降に生まれた子については、
無戸籍の方が元夫を父とする戸籍の記載を求める場合
には、上記(1)アの場合と同様の手続を行うことができます。
イ 無戸籍の方が母の元夫を父としない戸籍の記載を求める場合
- 12 -
(ア)子又は母が、子の出生の時から3年以内に限り、嫡出否認の手続によって、母の元夫を父としない戸
籍の記載を求めることができます。なお、子については、その父と継続して同居した期間が3年を下回
ることなどの要件の下、21歳に達するまでの間、嫡出否認の手続を行うことができます。
なお、
母が離婚してから300日以内に子が出生するまでの間に元夫以外の男性と再婚していた場合
については、原則として、再婚後の夫が父となります。その場合の手続については、別途窓口までご相
談ください。
(イ)裁判手続において嫡出推定の及ばない事情が証明された場合については、上記(1)イ(イ)と同様の手
続を行うことができます。
【母の元夫を父とする戸籍の記載を求める方法(Q17〜Q19)】
Q17 無戸籍の方が母の元夫を父としてその戸籍に記載されることを求める場合の
手続は、どのようなものですか。
A17 法務局において母子関係の認定をすることができる場合は、裁判手続によることなく
手続をすることができます。
まず、無戸籍の方から出生証明書や母子手帳など、母子関係があることを証する書面を法務局に提出し
ていただきます。また、法務局では、併せて無戸籍の方本人や関係者から聴き取りを行います。
このような調査の結果、法務局において母子関係があるとの認定をすることができると判断された場合
(認定をすることができない場合については、Q25参照)には、無戸籍の方から「出生事項記載申出書」
(Q18参照)を提出していただきます(注1)。
法務局は、母と元夫の婚姻中又はその離婚後300日以内に無戸籍の方が出生していれば、離婚の際に
おける父母の本籍地の市区町村にこの申出書を送付し、送付を受けた市区町村から母に対し、出生の届出
をするよう二度の催告をします(注2)。
それでも出生の届出がされない場合や、母が死亡し、又は所在不明になっていることから催告をするこ
とができない場合には、上記の本籍地の市区町村長において、法務局長の許可を得た上で、職権で無戸籍
の方を離婚の際の父母の戸籍に記載します。この場合、無戸籍の方は離婚の際における父母の氏を称し、
その父欄には元夫の氏名が記載されます。
(注1)母の協力が得られる場合には、本籍地又は所在地の市区町村の戸籍窓口に母から出生の届出をする方法により、
離婚の際の父母の戸籍に記載することもできます。
(注2)母が催告に応じて出生の届出をする場合も、注1と同様になります。
Q18 「出生事項記載申出書」とは、どのようなものですか。
A18 無戸籍の方本人を含め、出生届の届出義務者(父母等)ではない方が、所在地の市区
町村長に対し、無戸籍の方が出生した事実を戸籍に記載をするよう申し出るための書面
です。
Q19 無戸籍の方が母の元夫の戸籍に記載された後、母の戸籍に入ることはできますか。
A19 無戸籍の方が離婚の際の父母の氏である母の元夫の氏を称して、元夫の戸籍に記載さ
れても、その後、裁判手続により、氏を離婚後の母の氏に変更し、母の戸籍に入ること
ができます。
元夫の氏を称して婚姻した母は、離婚により婚姻前の氏に復し、元夫とは別の戸籍に記載されることに
なります。そして、母が婚姻前の氏に復したときは、母と子の氏が異なることとなります(母が離婚の際
の氏を称していた場合(民法767条2項)についても、母と子の氏が異なることとなります。)。しか
し、母と子の氏が同じでなければ一つの戸籍に同籍できません。そこで、家庭裁判所において、無戸籍の
方について、「母の元夫の氏」から「母の氏」に変更することの許可(民法791条1項)を得た上で、
本籍地又は所在地の市区町村役場において、母の戸籍への入籍の届出をすることによって、無戸籍の方は
母の戸籍に入ることになります。この場合、無戸籍の方は母の氏を称し、その父欄には元夫の氏名が記載
- 13 -
されます。なお、元夫の戸籍中、無戸籍の方の記載部分には、「除籍」との記載が加えられます。
【母の元夫を父としない戸籍の記載を求める方法(Q20〜Q24)】
Q20 無戸籍の方が母の元夫を父としない戸籍の記載を求める場合は、元夫に嫡出否認の手
続をとってもらわなければならないのですか。
A20 令和4年に改正される前の民法では、夫のみが、嫡出否認の訴えにより、父子関係を否
定することができることとされていましたので、原則として、(元)夫から嫡出否認の手続
をとってもらう必要がありました。
令和4年に改正された民法では、
子及び母も嫡出否認の訴えを提起できることとされました
ので(Q4参照)、(元)夫から嫡出否認の手続をとってもらわなくても、子が嫡出否認の手
続をとることができます。
なお、嫡出否認の手続によらない場合であっても、嫡出推定が及ばないことが、医師
の作成した証明書や裁判手続(親子関係不存在確認・強制認知)によって認められると
きは、戸籍上、母の(元)夫の子として取り扱われません。
嫡出推定が及ぶ場合には、
嫡出否認の手続によらなければ、
父子関係を争えないのが原則です
(Q7参照)。令和4年12月に改正される前の民法では、嫡出否認の訴えに関し、訴えを提起することができるのは
元夫のみで、しかも、訴えを提起することができる期間は、元夫が子の出生を知った時から1年以内に限
定されていましたので、無戸籍の方が自ら法的な手続をとることができるようになった頃にはこの期間を
過ぎていることが多いものと考えられます。
この点に関し、
令和4年12月に改正された民法により、
令和6年4月1日より前に生まれた無戸
籍の方は、同日から1年以内に限り、嫡出否認の手続によって母の元夫を父としない戸籍の
記載を求めることができます。
また、令和6年4月1日以降に生まれた子については、子又は母が、子の出生の時から3年以内に限り、
嫡出否認の手続によって、母の元夫を父としない戸籍の記載を求めることができます。なお、子について
は、その父と継続して同居した期間が3年を下回ることなどの要件の下、21歳に達するまでの間、嫡出
否認の手続を行うことができます。
これに対し、改正民法の施行の前後を問わず、嫡出否認の手続によらない場合であっても、戸籍上、母
の(元)夫の子として取り扱われない場合があります。具体的には、戸籍事務の担当者に、嫡出推定が及
ばないということがはっきり分かれば、嫡出否認の手続によることなく、戸籍上元夫の子とはしないとい
う取扱いが可能です。そのような例としては、まず、離婚後300日以内に出生した子であっても、医師
の作成した証明書により、婚姻中に懐胎した子ではないこと(=離婚後に懐胎したこと)を直接証明する
ことができる場合があります(Q6参照)。
また、裁判手続(注)において嫡出推定が及ばない事情が証明されれば、嫡出否認の手続によることな
く元夫との父子関係を争うことが可能とされており、その結果、元夫との間に父子関係がないことが明ら
かになれば、戸籍上も元夫の子として取り扱わないことが可能です。どのような場合に嫡出推定が及ばな
い事情があるといえるかについて、最高裁判所は、「妻が子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離
婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明
らかであるなどの事情が存在する場合」と判示しており(最判平成12年3月14日)、一般的には、母
の懐胎時に外観上婚姻の実態がない場合をいうと解されています。裁判手続によらなければならないのは、
このような事情があるか否かについて、市区町村の戸籍窓口で調査し認定することは困難なためです。
(注)裁判手続の具体的な方法としては、(1)元夫を相手として、父子関係がないことの確認を求める親子関係不存在確認
の手続、(2)血縁上の父を相手として、子であると認めることを求める強制認知の手続があります(Q21参照)。
Q21 親子関係不存在確認の手続は、どのようなものですか。また、強制認知の手続は、ど
のようなものですか。
A21 これらの裁判手続は、嫡出推定が及ばない場合(懐胎時に外観上婚姻の実態がない場
- 14 -
合。Q20参照)にとることができる手続です。誰が当事者となるのかについては、Q
8の図(9ページ参照)のとおりです。
親子関係不存在確認の手続は子が母の元夫を相手方として、強制認知の手続は子が血縁上の父を相手方
として、それぞれ調停を申し立てます(詳しくは裁判所HP「親子関係不存在確認調停」及び「認知調停」
参照)。各手続における申立人と相手方、手続的要件はQ8の図のとおりです(元夫の裁判手続への関与
の有無等についてはQ10、Q11参照。親子関係不存在確認の調停手続に要する期間等についてはQ1
3参照)。なお、親子関係不存在確認の手続を経ずに、強制認知の手続をとることも可能です(Q22参照)。
なお、これらの手続においても、申立ての趣旨に沿った審判がされるためには、嫡出否認の手続と同様
に、(1)当事者間に申立ての趣旨(例:「子と元夫との間に親子関係がないことを確認する。」、「子が血
縁上の父の子であることを認知する。」)のとおりの審判を受けることについて合意が成立していること、
(2)当事者間に父子関係の存否に関する事実関係に争いがないことに加えて、(3)裁判所が必要な事実の調
査を行った上で(1)の合意を正当と認めたことが必要となります。
調停が不成立となった場合に、調停の申立人が、更に裁判所で自己の主張を認めてもらいたいと考える
ときは、家庭裁判所に、親子関係不存在確認の訴え又は強制認知の訴えを提起することができ、この中で
父子関係の存否について審理されることになります。この場合には、訴訟手続の中で、嫡出推定が及ばな
い事情があること(Q20参照)を主張し、立証する必要があります。なお、これらの裁判手続において
は、父子関係の存否を検討する当然の前提として、母子関係の存否についても審理され、事実の認定がさ
れることになります。
Q22 親子関係不存在確認の手続を経ずに強制認知の手続をとることは可能ですか。
A22 親子関係不存在確認の手続と強制認知の手続は選択的であり、優劣関係にはないこと
から、親子関係不存在確認の手続を経ずに強制認知の手続をとることは可能です。
Q23 母の元夫又は血縁上の父が死亡し、又は所在不明となっている場合にも、親子関係不
存在確認の手続又は強制認知の手続をとることができるのですか。
A23 手続をとることができます(血縁上の父が死亡している場合の強制認知の手続は、死
亡の日から3年以内に限ります。)。
親子関係不存在確認の手続の場合、母の元夫が死亡しているときには、調停を経ずに、検察官を被告と
して、親子関係不存在確認の訴えを提起することができます。
強制認知の手続の場合、血縁上の父が死亡しているときには、調停を経ずに、その死亡の日から3年以
内に限り、検察官を被告として、強制認知の訴えを提起することができます。
また、いずれの手続の場合も、元夫又は血縁上の父が所在不明のときには、調停を経ずに、親子関係不
存在確認の訴え又は強制認知の訴えを提起した上で、公示送達の方法によって訴状を送達することができ
ます。いずれの場合も、家庭裁判所は、元夫又は血縁上の父が出頭しないまま審理を行い、判決を
することができます。
Q24 裁判手続により、母子関係を認定した上で、母の元夫の子でないと認定された場合、
どのような手続をとればよいのですか。
A24 無戸籍の方から出生事項記載申出書等を提出していただきます。出生の届出をするよ
う市区町村から母に対して催告をしても届出がされない場合は、市区町村長において、
法務局長の許可を得た上で、職権で無戸籍の方を戸籍に記載します。
出生事項記載申出書(Q18参照)、裁判書の謄本(嫡出否認、親子関係不存在確認若しくは強制認知
の申立て又は請求を認容する審判書又は判決書の謄本)及び確定証明書を所在地又は母の本籍地の市区町
村の戸籍窓口に提出してください(注1)(注2)。また、強制認知の手続をとっているときは、上記に
加え、裁判認知の届書を提出してください。
これを受けて、
母の本籍地の市区町村から母に対し、
出生の届出をするよう二度の催告をします
(注3)。- 15 -
それでも出生の届出がされない場合や、母が死亡し、又は所在不明になっていることから催告をするこ
とができない場合には、母の本籍地の市区町村長において、法務局長の許可を得た上で、職権で無戸籍の
方を母の戸籍に記載します。この場合、無戸籍の方は母の氏を称し、その父欄は、親子関係不存在確認の
手続をとっている場合には空欄となり、強制認知の手続をとっている場合には血縁上の父の氏名が
記載されます。
(注1)母が元夫との婚姻中に無戸籍の方を出産し、その後離婚した場合には、親子関係不存在確認の手続又は強制認知の
手続をとったとしても、子の氏が元夫の氏(無戸籍の方の出生時の母の氏)となり、離婚後の母の氏とは異なるこ
ととなるため、そのままでは元夫の戸籍に記載されることになります。そのような場合には、出生事項記載申出書
を提出する前に、あらかじめ家庭裁判所において、無戸籍の方について、「母の元夫の氏」から「母の氏」に変更
することの許可(民法791条1項)を得た上で、出生事項記載申出書の「その他」欄に「母の氏を称する入籍」
と記載をすることによって、無戸籍の方は母の戸籍に記載されることになります。
(注2)母の協力が得られる場合には、最寄りの市区町村又は本籍地の市区町村の戸籍窓口に母から出生の届出をする方法
により、母の戸籍に記載することもできます。母が離婚により復氏した場合の取扱いは、(注1)と同様
になります。
(注3)母が催告に応じて出生の届出をする場合も、注2と同様になります。
【母との親子関係が明らかでない場合の手続(Q25〜Q28)】
Q25 法務局において母子関係の認定をすることができない場合には、どのような手続をと
ればよいのですか。
A25 裁判手続によることとなります。
家庭裁判所においては、DNA鑑定等の結果に基づいて、母子関係の認定をすることができます。裁判
手続の具体的な方法としては、(1)母を相手として、母子関係があることの確認を求める親子関係存在確認
の手続(Q26参照)があります。また、証拠となる資料が乏しい等の理由により、裁判手続においても
母子関係が認められなかったような場合には、無戸籍の方を戸籍に記載するための裁判手続として、(2)就
籍許可の手続(Q28参照)があります。
これらの手続をとった上で、市区町村の戸籍窓口で就籍の届出を行う必要があります。
Q26 母との間の親子関係存在確認の手続は、どのようなものですか。
A26 無戸籍の方が母を相手方として、家庭裁判所に親子関係存在確認の調停を申し立てる
ことになります。
調停とは、当事者間の話合いによって事件を解決する手続ですが、親子関係存在確認の手続は、子の母
が誰であるかという子の福祉にとって極めて重要な事柄を決めるものですから、単に当事者間で子の母が
誰であるかということについての合意が成立しただけでは、調停成立(=事件解決)にはなりません。こ
の手続においては、
(1)当事者間に申立ての趣旨
(例:
「子と母との間に親子関係があることを確認する。」)
のとおりの審判を受けることについて合意が成立すること、(2)当事者間に母子関係の存否に関する事実関
係に争いがないことに加えて、(3)裁判所が必要な事実の調査を行った上で(1)の合意を正当と認めた場合
に、申立ての趣旨に沿った審判(合意に相当する審判。家事事件手続法277条)がされることになって
おり、それ以外の場合には、調停は不成立として終了します。例えば、(2)について当事者間で母子関係に
ついて争いがある場合や、(3)についてDNA鑑定等の事実の調査をした結果、母とされる者と子との間に
母子関係が存在するという事実が認められなかったような場合には、調停は不成立となります。
調停が不成立となった場合に、調停の申立人が、更に裁判所で自己の主張を認めてもらいたいと考える
ときは、家庭裁判所に、親子関係存在確認の訴えを提起することができ、この中で母子関係の存否につい
て審理されることになります。この場合には、訴訟手続の中で、母子関係のあることを主張し、立証する
必要があります。家庭裁判所は、母子関係の存在を認めることができれば、母子関係があることを確認す
る旨の判決をします。
その上で、無戸籍の方において、市区町村の戸籍窓口に就籍届書、裁判書の謄本(親子関係存在確認の
申立て又は請求を認容する審判書又は判決書の謄本)及び確定証明書(審判や判決が確定したことを示す
証明書。審判又は判決をした裁判所の書記官が発行します。)を提出していただくことによって、無戸籍
- 16 -
の方は父母が婚姻中又は離婚後300日以内に出生している場合には、離婚の際における父母の氏を称し、
その戸籍に記載されます。この場合、その父欄には元夫の氏名が記載されます。
なお、就籍者が成年に達している場合は、その意思により、新たな本籍を定め、新戸籍を編製す
ることができます。
Q27 母が死亡し、又は所在不明となっている場合にも、親子関係存在確認の手続をとるこ
とができるのですか。
A27 親子関係存在確認の訴えを提起することができます。
母が死亡している場合には、調停を経ずに、検察官を被告として、親子関係存在確認の訴えを提起する
ことができます。また、母が所在不明の場合にも、調停を経ずに、親子関係存在確認の訴えを提起した上
で、公示送達の方法によって訴状を送達することができます。いずれの場合も、家庭裁判所は、母が出頭
しないまま審理を行い、判決をすることができます。
Q28 就籍許可の裁判手続は、どのようなものですか。
A28 就籍許可の裁判手続は、家庭裁判所の許可により、本籍を有しない者について本籍を
設け、戸籍に記載するための手続です。相手方はなく、調停を経る必要もありません。
家庭裁判所は、その審理において、無戸籍の方が日本国籍を有しており、かつ、戸籍法110条1項に
規定する「本籍を有しない者」(「本籍の有無が不明である場合」を含む。)と認められれば、就籍許可
の審判をします。一般的には、通称を戸籍上の氏名として就籍許可の審判がされます。
日本国籍を有するかどうかは国籍法の規定によることとなります。国籍法2条は、(1)父母のいずれかが
日本国籍を有している場合(1号2号)だけでなく、(2)日本で生まれた場合において、父母がともに知れ
ないとき又は国籍を有しないとき(3号)も、子は出生により日本国籍を取得すると規定しています。最
高裁判所は、「国籍法2条3号にいう『父母がともに知れないとき』とは、父及び母のいずれもが特定さ
れないときをいい、ある者が父又は母である可能性が高くても、これを特定するに至らないときも、右の
要件に当たる」としています(最判平成7年1月27日)。
就籍許可の審判を経た上で、無戸籍の方において、所在地の市区町村の戸籍窓口に就籍届書及び裁判書
の謄本(確定判決の場合は判決の謄本とその確定証明書)を提出していただくことによって、無戸籍の方
の新戸籍が編製されます。この場合、無戸籍の方は許可された氏を称し、その父母欄は空欄となります。
【無戸籍の方の婚姻】
Q29 無戸籍であっても婚姻することはできますか。
A29 市区町村長は、婚姻要件を備えていることを確認することができれば、婚姻の届出を
受理します。受理されることにより婚姻は成立します。
無戸籍の方を婚姻の当事者の一方とする婚姻の届出がされた場合、相手方の氏を夫婦が称する氏とする
届出であり、添付書類から婚姻要件を満たすことが認められるときは、婚姻の届出は受理され、婚姻が成
立します。無戸籍の方に関する戸籍の届出をすることをお考えの場合は、所在地又は本籍地の市区町村の
戸籍窓口や、法務局に御相談ください。
なお、市区町村の戸籍窓口に婚姻届書を提出する際には、添付すべき書類として、次の書類が必要です。
(1) 無戸籍の方の配偶者となる方の戸籍謄本等
(2) 無戸籍の方が住民票に記載されている場合は、その住民票の写し
(3) 母が戸籍に記載されている場合は、無戸籍の方の出生時の母の戸籍又は除籍の謄本等
(4) 母子関係があることを証する資料(注)
(注)資料の例は、次のとおりです。
ア 医師、助産師等が発行した出生証明書
イ 母子健康手帳
ウ 幼稚園、保育園等に入園していたときの記録、小学校等の在学証明書等
エ 母子共に写っている写真
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3 戸籍に記載される前であっても受けることができる行政サービス等
手続をとっている場合であっても、戸籍に記載されるまでには時間を要します。戸籍に
記載される前であっても、一定の要件の下、以下のような行政サービス等を受けることが
可能です。
(1) 住民票への記載
出生した子について住民票の記載がされるためには、戸籍法に基づく出生届が受理されていることが必
要です。しかしながら、民法772条による嫡出推定が及ぶことに関連して、出生届がされていない場合
であっても、親子関係不存在確認や強制認知等外形的に子の身分関係を確定するための手続を行っている
ときは、市区町村長は、当該手続が行われていることの疎明資料その他必要書類とともに申出を受け、申
出内容を審査の上適当と認める場合に、職権でその子の住民票の記載をすることができることとされてい
ます。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。
(2) 小学校、中学校等への就学
文部科学省においては、市区町村の教育委員会に対して、戸籍や住民基本台帳に記載されていない場合
であっても、義務教育の年齢にあたる6〜15歳の子供について、その市区町村に居住していれば、小学
校や中学校等に就学させるよう指導しているところです。現在、6〜15歳の子供がいる保護者は、子供
の就学の機会を逸することのないよう、直ちにお住まいの市区町村の教育委員会において就学に関する案
内を受けてください。なお、就学前となる5歳の子供がいる保護者におかれては、小学校等への入学に当
たって必要な健康診断(無償)が早ければ10月1日から始まります。子供の就学の機会を逸することの
ないよう、お住まいの市区町村の教育委員会において入学に関する案内を受けてください。また、経済的
な理由により就学が困難と認められる場合には、学用品費や学校給食費等について、援助を受けることも
できます。あわせて、市区町村の教育委員会に相談してください。
(3) 児童福祉行政上の取扱いについて
ア 児童手当
出生証明書により、児童及びその母が確認でき、かつ、児童が国内に居住している実態を確認でき
れば、児童手当の支給対象となります。
イ 児童扶養手当
ひとり親のご家庭等に支給する児童扶養手当については、出生証明書により、児童及びその母が確
認でき、
かつ、
児童が国内に居住している実態を確認できれば、
児童扶養手当の支給対象となります。
ウ 保育所・認定こども園・家庭的保育事業等
市区町村に小学校就学前の子供が居住している実態を確認することができれば、支給認定を受けた
上で、保育所・認定こども園・家庭的保育事業等を利用することができ、子供のための教育・保育給
付の対象となります。
エ 母子保健
市区町村に居住している実態を確認することができれば、母子保健に関する事業(母子健康手帳の
交付、保健指導、新生児の訪問指導、健康診査等)の対象となります。
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オ 特別児童扶養手当
調査により当該児童が国内に居住している実態を確認できれば、特別児童扶養手当の支給対象とす
ることができます。
カ 障害児福祉手当
調査により当該児童が福祉事務所所管区域内に居住している実態を確認できれば、障害児福祉手当
の支給対象とすることができます。
キ 障害児通所給付費等
当該障害児の保護者が当該市町村に居住している実態を確認できれば、障害児通所給付費、特例障
害児通所給付費、障害児入所給付費の支給対象とすることができます。
以上の事業について、詳しくは、市区町村窓口にお尋ねください。また、手当等の受給に当たっては、上
記を除く各種要件を満たす必要がありますので御留意ください。
(4) 国民健康保険の取扱いについて
他の公的医療保険に加入していない場合、市区町村に居住している実態を確認することができれば、被
保険者として適用する取扱いとなります。詳しくは、市区町村窓口にお尋ねください。また、手当等の受
給に当たっては、上記を除く各種要件を満たす必要がありますので御留意ください。
(5) 生活保護制度の取扱いについて
戸籍の有無を要件としておらず、自らの利用し得る資産、能力、その他あらゆるものを活用してもなお
生活に困窮している方に対して保護を適用することとしています。詳しくは、市区町村窓口にお尋ねくだ
さい。また、手当等の受給に当たっては、上記を除く各種要件を満たす必要がありますので御留意くださ
い。
(6) 旅券
旅券の発給の申請をするためには、原則として、戸籍謄本又は戸籍抄本を提出しなければなりません。
もっとも、人道上やむを得ない理由により、戸籍への記載を待たずに渡航しなければならない特別の事情
があると認められる場合には、親子関係不存在確認や強制認知等の手続を行っていることの疎明資料その
他必要書類を提出することによって旅券の発給を受けることができることとされています。旅券の発給に
ついて、詳しくは、都道府県の旅券事務所にお尋ねください。
1収入等
2資産
単身者 2人家族 3人家族 4人家族
手取り
月収
(居住地が生活保護一級地の場合)
182,000 円以下
(200,200 円以下)
251,000 円以下
(276,
100 円以下)
272,000 円以下
(299,200 円以下)
299,000 円以下
(328,900 円以下)
家賃・住宅ローンを負担している場合の加算限度額(居住地が東京都特別区の場合)
41,000円(53,000円)
53,000円(68,000円)
66,000円(85,000円)
71,000円(92,000円)
※(注記)5人家族以上は、1
人増につき 30,000 円
(居住地が生活保護ー級地の場合は 33,000 円)を加算
※(注記)医療費、教育費などの出費がある場合は、相当額を控除※(注記)代理援助・書類作成援助の場合には、
同居している家族から金銭的な援助を受けている場合、
その金額と申込者の手取り月収との合計額が、上表の基準以下であることが必要
単身者 2人家族 3人家族 4人家族以上
現金・預貯金の合計 180 万円以下 250 万円以下 270 万円以下 300 万円以下
※(注記)医療費、教育費などの出費がある場合は、相当額を控除※(注記)不動産
(自宅や係争物件を除く)
、有価証券などの資産を保有する場合は、その時価と現金・
預貯金との合計額が上表の基準以下であることが必要
代理援助・書類作成援助の場合
4 民事法律扶助制度の概要(1) 民事法律扶助制度とは
民事法律扶助制度は、資力の乏しい方が法的トラブルに遭った場合等に以下の援助を行う
ものであり、国民の裁判を受ける権利(憲法32条)を実質的に保障するもの
弁護士等による法律相談を無料で実施
(※(注記))
民事裁判等で自己の権利を実現できるよう弁護士費用等を立替え
裁判所提出書類の作成にかかる弁護士費用等を立替え
※(注記)特定援助対象者法律相談援助の場合、資力にかかわらずご利用いただけますが、一定
の基準を超える資力をお持ちの方には、相談料をご負担いただきます。
(2) 民事法律扶助の対象者
国民または我が国に住所を有し適法に在留する者で、以下の条件を満たす者
ア 資力が一定額以下であること
原則として、申込者及びその配偶者の収入・資産で判断(夫婦間の紛争の場合を除く)
法律相談援助
代理援助
書類作成援助
法律相談援助の場合
イ 勝訴の見込みがないとはいえないこと
ウ 民事法律扶助の趣旨に適すること
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和解、調停、示談成立等による紛争解決の見込みがあるもの、自己破産の免責見込みが
あるものなどを含む
相手方への嫌がらせや自己宣伝、報復的感情を満たすだけのもの、権利濫用的な訴訟の
場合は援助不可
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法律相談援助 費用
弁護士等による相談 0 円
※(注記)弁護士等には、法テラスから法律相談費(1 件 5,500 円)が支払われる
代理援助 実費 着手金 立替金合計
就籍許可 10,000円 44,000円 54,000円
親子関係不存在確認、認知の訴え 35,000円 231,000円 266,000円
※(注記) D N A 鑑定料も立替えの対象となる
(ただし上限があり、
D N A 鑑定が、訴訟上の準備・追行上不
可欠な場合とそうでない場合とで上限額が異なる。訴訟上の準備・追行上不可欠な場合の上限額は
523,808 円)。※(注記)別途、事件の結果に応じて決定された報酬金を立て替える場合あり
書類作成援助 実費 報酬 立替金合計
親子関係不存在確認訴訟や認知の訴え
についての訴状の作成
15,000円 27,500円 42,500円
就籍許可申立書作成 10,000円 27,500円 37,500円審査・援助決定事件処理申込み審査事件終結・審査立替金の償還(3) 民事法律扶助の対象事件(民事裁判等手続)
民事訴訟・民事保全・民事執行・破産・非訟・調停・家事審判その他裁判所における
民事事件、家事事件又は行政事件に関する手続(これらに先立つ和解の交渉で特に必要
と認められるものを含む)
(4) 主な事件の立替額の例
(5) 手続の流れ
・法テラスの事務所で受付
・契約弁護士等の事務所で受付
・資力要件
・民事法律扶助の趣旨
※(注記)法律相談援助は、
「勝訴の見込み」は要件に含まず
※(注記)法律相談で解決が図れないときは以下の手続に進む
・資力要件
・勝訴の見込み
・民事法律扶助の趣旨
・受任者等の選任
・償還金額、方法等の決定
・裁判前の交渉代理
・裁判手続の代理
・裁判所提出書類の作成
・報酬金の決定(総立替額の決定)
・償還金額、方法等の決定
代理援助・書類作成援助の実施
※(注記)生活保護を受給している場合などには、償還が猶予又は免除されることがある。
・立替金の償還(原則3年以内、毎月
5,000円〜10,000円ずつ返済
(無利息))・償還金額等の変更
完済 猶予 免除
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‐20‐
5 相談窓口
無戸籍相談窓口一覧(法務局・地方法務局)
●くろまる
「無戸籍の相談」
とお伝え
ください。
※(注記)受付時間:
(平日)
午前8時3
0分〜午後5時15分- 21 -
‐21‐
無戸籍相談窓口一覧(弁護士会)
●くろまる
「無戸籍の相談」
とお伝え
ください。
- 22 -
‐22‐
平日 9:30〜17:00
土曜 9:30〜11:30
306 3851
平日 10:30〜12:00
13:00〜16:30
平日 9:00〜12:00
12:45〜17:00
1法律相談センター
075ー231ー2378
2子どもの権利110番
075ー231ー23441516:30209:0000子どもの権利委員会
16:30
平日 9:30〜12:00
13:00〜16:0000民事法律扶助制度の利用について(法テラス)
人権相談(法務局・地方法務局)
法務省ホームページ
●くろまる法テラス
・サポートダイヤル0570 ー 0
おなやみなし78374※(注記)受付時間:
(平日)午前9時〜午後9時、
(土曜)午前9時〜午後5時
(祝日・年末年始を除く)
●くろまるインターネッ
ト人権相談
https://www.jinken.co.jp/
(パソコン
、携帯電話、スマートフォ
ン共通)
※(注記)受付時間:2
4時間
●くろまる法務省ホームページ
「無戸籍でお困りの方へ」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00034.html
(パソコン
、スマートフォ
ン共通)
※(注記)受付時間:
(平日)
午前8時3
0分〜午後5時15分令和4年11月発行
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