運輸経済月例報告 今月のトピックス

運輸経済月例報告 平成11年4月のトピックス



明石海峡大橋開通による地元への影響

新設・高速バスの好調が続く一方、航空・旅客船は大幅減
観光交流は拡大するも、物流の面では競争激化の方向
明石海峡大橋が平成10年4月5日に開通し、大鳴戸橋(昭和60年6月開通)等と併せて神戸〜鳴門ルートが全面開通したが、これにより阪神地域と淡路・四国地域が直結し、観光交流、物流等の多方面にわたり様々な変化が生じてきている。以下では、明石海峡大橋開通後1年を経過しての地元への影響をまとめてみる。

1 明石海峡大橋、大鳴門橋及び瀬戸大橋の通行台数(図11−2参照)
明石海峡大橋は、平成10年4月5日の開通後の10年度通行台数が9,238千台(1日平均26千台)であり、車種別シェアは、普通車(乗用車等)72.1%、中型車(中型トラック等)6.2%、大型車(大型トラック、路線バス等)11.8%、特大車(貸切バス等)2.9%、軽自動車等7.0%となっている。瀬戸大橋等と比べると、普通車のシェアが大きい一方、大型車のシェアが小さく、また、日平均交通量が休日は平日の1.7倍と多く(瀬戸大橋は1.3倍、大鳴門橋は1.5倍。ちなみに、首都高速道路は0.86倍。)、物流・業務目的に比べ観光目的の利用が進んでいる。
大鳴門橋は、10年度通行台数が6,032千台(1日平均17千台)であり、神戸〜鳴門ルートの全面開通及び通行料金引下げ効果により、9年度と比べ1.8倍の大幅増となった。しかし、明石海峡大橋通行台数の6割強にとどまっており、阪神方面からは淡路島でUターンする乗用車、貸切バス等が多いことがわかる。実際、神戸〜鳴門ルートを直通する台数は、10年度において3,378千台(1日平均9千台)であった。
瀬戸大橋(昭和63年4月開通)は、10年度通行台数が5,764千台(1日平均16千台)であり、9年度と比べ2.1%減となったが、車種別にみると、普通車・中型車(1.6%減)、大型車(5.8%減)の減少に対し、特大車(2.0%増)、軽自動車等(3.4%増)が増加している。理由としては、景気低迷の影響、神戸〜鳴門ルートへの一部転換、観光目的の貸切バスや軽自動車の増加等が考えられる。

2 交通機関別輸送動向(図2参照)
明石海峡大橋開通に伴い、10年4月6日から運行を開始した高速バスによる10年度輸送旅客数は、阪神〜淡路間が合計2,583千人(1日平均7,125人、1便平均19人)、阪神〜徳島間が合計1,416千人(1日平均3,933人、1便平均23人)となっており、運賃の割安感、便数の多さ(13路線1日あたり合計254往復)、都心まで乗り換えなしで行ける利便性の高さ等から、概ね好調な実績を示している。
これに対し、旅客船・フェリーによる10年度輸送旅客数及び自動車航送台数を9年度と比べると、航路の廃止・縮小がなされたこともあり、阪神〜淡路間は、旅客数が13,124千人から4,103千人と7割減、自動車航送台数が3,625千台から649千台と8割減となった。また、阪神〜徳島間は、旅客数が1,174千人から321千人と7割減、自動車航送台数が164千台から0となった。この結果、阪神〜淡路/徳島の自動車航送台数は、9年度3,789千台から10年度649千台と減少したが、一方、10年度の明石海峡大橋通行台数が9,238千台のため、大橋開通により両地域間の自動車交通量は、2.6倍に増加したことになる。
航空による10年度の輸送旅客数を9年度と比べると、減便が行われたこともあり、大阪〜徳島便が309千人から143千人と半減し、大阪〜高松便が176千人から106千人と4割減となった。
(参考)阪神〜淡路/徳島間の交通機関別運賃・料金及び所要時間の例

しろまる神戸淡路鳴戸自動車道(利用促進のため、当初5年間は20%引き料金を設定)
垂水〜淡路(明石海峡大橋区間)11.3km 普通車 2,600円、大型車 4,250円
淡路島南〜鳴戸北(大鳴戸橋区間)7.1km 普通車 1,300円、大型車 2,100円
神戸西〜鳴戸(全区間)89.0km 普通車 6,050円、大型車 10,000円


しろまる瀬戸中央自動車道
早島〜坂出(全区間)37.3km 普通車 4,600円、大型車 7,550円

しろまる高速バス
神戸(三宮)〜淡路(洲本) 1時間20分 1,800円
神戸(三宮)〜徳島 2時間 3,200円
大阪〜徳島 2時間35分 3,600円
しろまる航空
明石〜淡路(岩屋) 20分 2,300円(乗用車+運転者)
320円(車なし)
大阪(泉佐野)〜淡路(津名) 1時間30分 6,680円(乗用車+運転者)
1,010円(車なし)
大阪(天保山)〜徳島 1時間45分 4,620円

3 観光交流の動向(図3参照)
明石海峡大橋は、世界最大の吊り橋(全長3,911m)であり、橋そのものが第一級の観光資源であるが、その開通により、観光交流の面で地元に大きな集客効果をもたらしており、これを機に、魅力ある観光施設の開設や大型イベントの開催、広域連携による共同キャンペーンの実施等が進んでいる。
神戸地域では、7年1月の阪神淡路大震災で大きな打撃を受けたが、その後、復興が進むとともに観光客数が増加し、10年の年間入込客数は、架橋効果もあって、2,528万人、前年比11%増となった。神戸港からのクルージング、特に、明石海峡をめぐるコースや10年7月に開設された地場産業体験型施設の「北野工房のまち」等が人気を集めており、淡路、四国方面の他、中京、山陽方面からの貸切バスを利用した団体客の増加傾向がみられる。
淡路地域では、10年の年間入込観光客数が1,500万人を超え、前年比で倍増となった。10年4月に新設された野島断層保存館、ハイウェイオアシス観光情報センター等の観光施設に年間250万人を超える入場者数があり、架橋効果が顕著である。また、東浦町及び淡路町が9年度の「観光地づくり推進モデル事業」のモデル地域に指定され、両町においては、観光地づくりプログラムに基づき観光振興策が進められている。さらに、12年3月から9月まで国際園芸・造園博覧会「ジャパンフローラ2000」が開催され、多数の来訪客が予想される。
徳島・香川地域でも主要観光施設の入場者数の大幅な増加がみられる。また、陶板名画を展示する大塚国際美術館(10年3月鳴戸市に開設)、工芸体験等ができる阿波海南文化村(10年4月海南町に開設)等の個性ある観光施設が相次いで整備され、人気を集めている。

4 物流面の影響(図4図5参照)
(財)阪神・淡路産業復興推進機構や四国経済連合会の行った事業者アンケートの結果等によれば、明石海峡大橋開通を機に、周辺地域に物流拠点を新設する動きは、景気低迷の影響もあり、まだ数例にとどまるが、神戸流通業務団地、ポートアイランド、六甲アイランド等に既に物流拠点を設置している企業は、大橋による配送時間の短縮や定時性の確保を高く評価し、今後の活用拡大を考えているところが多い。
また、阪神以東の地域から徳島方面に送る貨物は、従来は高松に輸送し、ここで仕分けして徳島に送る方式であったが、最近は大橋経由で直接徳島に送る方式が増加している。
さらに、四国地域外のトラック事業者が徳島方面の輸送へ参入する事例が増加しており、また、これら事業者の帰り荷獲得のための営業活動が運賃競争につながっているとの指摘もある。このため、徳島県のトラック事業者は、競争激化により経営環境が厳しくなったと感じており、受注窓口の一本化、共同配車、共同集金等によって、事業の効率化や競争力の強化を図る動きが出ている。
一方、四国の製造業、卸・小売業者の中には、大橋開通を関西方面でのビジネスチャンス拡大の契機として、?@在宅患者等を対象とした特別食の宅配事業、?A旬の「朝取り野菜」や新鮮な豆腐を迅速出荷する事業、?B大型家具店の神戸市内開設により四国産家具を販売する事業等に進出する動きがあり、新たな物流が生まれている。


11年5月1日には、尾道〜今治ルートの瀬戸内しまなみ海道が開通し、本四3架橋時代が到来したが、これにより瀬戸内海を囲んだ地域間の広域的な交流・連携がさらに促進され、地域全体の活性化が図られることが期待される。



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