1国際海運 GHG ゼロエミッションプロジェクト
第 1 回会合(平成 30 年 8 月 8 日開催) 議事要旨
1.ポイント
【本プロジェクトの基本方針】
国際海事機関
(IMO)
における、
国際海運からの GHG ゼロエミッションを目指す
「GHG 削減戦略」
の採択を踏まえ、
我が国の海上貿易及び海事産業の持続的発展
を図りつつ、地球温暖化に対処するための国際的な取組みに貢献すべく、以下を
基本方針として本プロジェクトを運営することを決定した。
【2030 年目標(効率 40%改善)に向けて】
GHG 削減戦略における合意事項を確認の上、今後の国際交渉の見通しや各国動
向等について情報交換した。主なポイントは以下の通り。
・ IMO では、2022〜2023 年の間に短期対策を決定することに合意済み。
・ GHG 削減戦略には短期対策の候補が複数掲げられており、既に、欧州では強制的な速度
規制等の検討が進められている。
上記情勢を踏まえ、我が国として、短期対策の決定に向けた IMO の審議を主導す
べく、1本年中を目途に具体的な短期対策案(実効性・即効性の高い運航効率改
善策)を取りまとめ、2来年 5 月の IMO 委員会に同案を提出し、32022 年まで
に国際合意を目指すべく、作業に着手することを決定した。
【2050 年目標(総量 50%削減)
・長期的な GHG ゼロエミッションに向けて】
海上技術安全研究所が、現在検討中の長期的な研究方針の概要について説明し、
今後、実海域性能を計測・評価する技術や低炭素燃料に対応した燃焼技術の確立
に向けて取り組む旨を表明した。
1 IMO における GHG 削減の取組を商機と捉え、日本海事産業の国際競争力強化につな
げるための長期戦略を策定し、産学官公での行動につなげること。
2 上記1の一環として、
日本海事産業が比較優位性を発揮できるような GHG 削減の国際
的枠組みを検討し、IMO に戦略的に提案し、国際合意を得ること。
3 実効性の高い GHG 削減対策の実現を通じて IMO の GHG 削減目標の達成に貢献し、
もって国際社会における国際海運及び IMO のプレゼンスを維持・強化すること。2造船業界から、船上での CO2 回収技術や再生可能エネルギーによるメタノール
燃料製造技術等を複合的に活用した GHG ゼロエミッション船を実現するための
方策について提言が出された。また、海運業界から、省エネ船の導入や運航効率
改善等を推進する旨を表明した上で、世界経済を支える国際海運の持続的発展や
規制の実効性等への慎重な検討も必要であるとの意見が出された。
これらの意見・提言を踏まえ、先述の短期対策の検討と並行して中・長期対策に
ついても検討を進めることとし、
適切なタイミングで IMO に提案できるよう準備
することとした。特に、長期的な課題である代替燃料の導入については、本年度
中に、他セクターも含めた代替燃料に関する現状の技術や主要国の政策等につい
ての基礎的な情報収集に着手し、検討を進めていくことを決定した。
さらに、政策決定の判断材料として IMO が実施する長期的な GHG 排出量予測等
に関する調査
(GHG Study)
に、
我が国としても積極的に参画を図ることとした。
【作業体制】
上記の検討作業を進めるため、ハード(船舶設計)
・ソフト(船舶運航)
・代替燃
料に関するタスクフォースをそれぞれ設置し、それらを有機的に連携させること
を決定した。各タスクフォースが行う具体的な作業内容は以下のとおり。
2.委員からの主な意見
【総論】
当面は 2022 年までに短期対策を決定することが重要であるが、
中・長期対策につ
いても出来るところから検討を始めた方が良い。
日本の海事クラスターの強みを分析・理解した上で対策を検討すべき。
船舶設計タスクフォース:新造船燃費規制の更なる強化についての検討。
※(注記)新造船燃費規制の技術的検討は(一財)日本船舶技術研究協会の船舶省エネ性能向上プロジェクト
において検討が行われていることを踏まえ、同プロジェクトと適宜連携する。
船舶運航タスクフォース:我が国として有効と考える短期対策案(実効性・即効性の高
い運航効率改善策)の検討(年内目途取りまとめ)、「効率」の定義の検討。
※(注記)経済的手法については、
(公財)日本海事センターに設置されている環境問題委員会において検討
が行われていることを踏まえ、同委員会と適宜連携する。
代替燃料タスクフォース:各種代替燃料の実現可能性、課題、導入スケジュールについ
ての検討。現状の技術や主要国の政策の現状についての基礎的な情報収集。3個別の対策をミクロに見るだけでなく、
GHG 削減戦略の目標に向けた全体像の中
で各対策がどの程度目標達成に寄与するのかといった目線も必要。
ハード(船舶設計)
・ソフト(船舶運航)を複合的に扱う対策も考えられる。それ
ぞれの検討アプローチが縦割りにならないよう留意すべき。
2030 年目標は CO2 が対象だが、2050 年目標は GHG 全体が対象。長期的にはメ
タンスリップ等の CO2 以外の要素も検討する必要がある。
【2030 年目標(効率 40%改善)に向けて】
省エネ船への更新を着実に進めることが重要であるが、
邦船社は隻数が多いので、
時間がかかる面もある。即効性を求めるのであれば、減速運航といった対策も検
討の候補なり得る。
減速運航等も含めて、各国提案や GHG 削減戦略に盛り込まれている対策の候補
を 1 つずつ分析して、短所・長所をしっかりと考えるべき。
検討に当たっては効率の定義など「物差し」を決めておくことが重要。
いずれの対策にしても、世界経済を支える国際海運の持続的発展の確保が必要。
さらに、ルールを遵守する損をすることが無いよう、不正対策等の実効性担保策
に取り組んでほしい。
【2050 年目標(総量 50%削減)
・長期的な GHG ゼロエミッションに向けて】
2050 年目標の達成には、ゼロ炭素代替燃料への転換が不可欠。燃料供給インフラ
や新技術の開発も必要となる。
代替燃料は長期的な課題であるが、価格、製造方法、供給見通し、ライフサイクル
での炭素密度等について先取りして勉強しておくべき。
船上での CO2 回収技術や再生可能エネルギーによるメタノール燃料製造技術等
を複合的に活用することで、ゼロエミッション船を実現できる可能性もある。そ
のような船舶については IMO でゼロエミッション認定を行う、回収した CO2 を
炭素クレジットとして扱うなど、新たな取組みを後押しする仕組みを検討いただ
きたい。
世界的な長期 GHG 排出量の見通しを策定する IMO の GHG Study に、日本とし
て積極的に参画すべき。
以 上