糖尿病実態調査の概要(速報分)
平成10年3月18日
平成9年11月に実施された糖尿病実態調査をまとめて集計し、作成したものである。
追って公表される、「糖尿病実態調査報告書」と確定数が若干相違する可能性があるが、大局的な観察にはほとんど支障はないものと考える。
厚生省保健医療局
生活習慣病対策室
糖尿病実態調査の概要
1 調査の目的
わが国の糖尿病に関する状況を把握することにより、今後の対策に資することを目的とした。
2 調査客体
平成9年国民栄養調査で栄養摂取状況調査に応じた20歳以上の人(10,865人)を
調査客体とし、血液検査及び糖尿病実態調査質問票の回答に応じた5,883人(54.1%)
を解析対象客体とした。
3 解析対象客体の概要
総数
20〜29歳
30〜39歳
40〜49歳
50〜59歳
60〜69歳
70歳以上
総数
5,883
649
842
1,117
1,212
1,171
892
男
2,335
230
311
431
480
521
362
女
3,548
419
531
686
732
650
530
4 調査項目
(1) 国民栄養調査
-
ア 身体状況調査
身長、体重、血圧測定、1日の運動量(歩行数)、問診(喫煙、飲酒、運動)
血液検査(血色素量、赤血球数、血糖値、ヘモグロビンA1c、総コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド、総たんぱく質)
イ 栄養摂取状況調査
ウ 食生活状況調査
(2) 糖尿病実態調査質問票
糖尿病に関連した家族歴、既往歴、保健事業の関わり、治療、合併症等について質問した。国民栄養調査の身体状況調査会場にて被調査者本人が記入した。
5 調査時期
平成9年11月(国民栄養調査・身体状況調査と同時に実施)
6 調査系統
調査系統は次の通り行った。
厚生省 ― 都道府県・政令市・特別区 ― 保健所 ― 糖尿病実態調査員
結果の概要(速報分)
糖尿病が強く疑われる人は690万人。
糖尿病の可能性を否定できない人を合わせると1370万人。
今回の調査で、糖尿病が強く疑われる人(現在治療中の人を含む)、糖尿病の可能性を否定できない人の割合については、図1、2のとおり。
今回の結果に平成8年10月1日の推計人口を乗じて推計したところ、糖尿病と強く疑われる人は690万人で、糖尿病の可能性を否定できない人を合わせると1370万人となった。(表1)
図1.糖尿病が強く疑われる人および糖尿病の可能性を否定できない人の割合(年齢階級別、男性)
図2.糖尿病が強く疑われる人および糖尿病の可能性を否定できない人の割合(年齢階級別、女性)
表1.糖尿病が強く疑われる人および糖尿病の可能性を否定できない人の推計
糖尿病が強く疑われる人
690万人
上記に糖尿病の可能性を否定できない人を含めた場合
1370万人
(参考)糖尿病総患者数
(平成8年患者調査)
218万人
糖尿病が強く疑われる人の28.0%、
糖尿病の可能性を否定できない人の26.9%が、現在、肥満である。
糖尿病の状況と、現在の肥満度の関係については、表2のとおり。
表2.現在の肥満度と糖尿病の状況
肥満度
糖尿病が強く疑われる人 (482人)
糖尿病の可能性を否定できない人 (465人)
今回の調査における検査で正常範囲
(40歳以上)(3475人)
-10%未満
41人 ( 8.5%)
40人 ( 8.6%)
487人 (14.0%)
-10%〜+10%
198人 (41.1%)
195人 (41.9%)
1884人 (54.2%)
+10%〜+20%
108人 (22.4%)
105人 (22.6%)
649人 (18.7%)
+20%〜
135人 (28.0%)
125人 (26.9%)
455人 (13.1%)
糖尿病が強く疑われる人の52.7%、
糖尿病の可能性を否定できない人の37.3%が、過去に肥満だったことがある。
糖尿病の状況と、過去の肥満との関係については、表3のとおり。
表3.過去の肥満度と糖尿病の状況
肥満度
糖尿病が強く疑われる人 (482人)
糖尿病の可能性を否定できない人 (464人)
今回の調査における検査で正常範囲
(40歳以上)(3458人)
-10%未満
5人 ( 1.0%)
9人 ( 1.9%)
129人 ( 3.7%)
-10%〜+10%
99人 (20.5%)
141人 (30.4%)
1497人 (43.3%)
+10%〜+20%
124人 (25.7%)
141人 (30.4%)
922人 (26.7%)
+20%〜
254人 (52.7%)
173人 (37.3%)
910人 (26.3%)
(参考)
肥満度の年次推移(性・年齢階級別)
BMI
(男) (女)
BMI(body mass index) =体重(kg)/(身長(m))2 (平成7年国民栄養調査)
肥満の判定基準
BMI
肥満度
やせ
19.8未満
-10%未満
普通
19.8以上24.2未満
-10%以上+10%未満
過体重
24.2以上26.4未満
+10%以上+20%未満
満
肥満
26.4以上
+20%以上
(日本肥満学会 ,1992)
糖尿病が強く疑われる人のうち、
健診を受けたことのある人の半数以上は治療に結びついているが、
健診を受けたことがない人では、93.1%は治療を受けていない。
糖尿病は、自覚症状がないことが多く、健診でみつかることの多い疾患である。
今回の調査で、過去に住民健診、職場健診、人間ドック等における糖尿病の検査を含む健診を受けたことのある人は66.7%であった。
糖尿病が強く疑われる人についての健診と治療の状況については図3のとおり。
健診を受けたことがある人
健診を受けたことがない人
図3 糖尿病が強く疑われる人の健診と治療の状況
今回の調査において糖尿病が強く疑われる人のうち、現在糖尿病の治療を受けている人は、45.0%であった。
治療には、食事療法や運動療法があり、これで十分な効果が得られない場合、血糖降下剤などの内服薬や、インスリン注射等の薬物療法が加えられる。
今回の調査において糖尿病が強く疑われる人のうち、現在糖尿病の治療を受けている人は、45.0%であった。
残りの55.0%は、治療を受けていない人であり、その状況は図4のとおり。
図4.今回の調査で、糖尿病が強く疑われた人のこれまでの健診および治療の動向
糖尿病で現在治療を受けている人では、
神経障害20.3%、網膜症16.1%、腎症14.3%、足壊疸(あしえそ)0.5%。
糖尿病の状態が続くと、神経障害や、網膜症、腎症、足壊疸などの合併症が出現する。
医療機関で糖尿病と診断された人についての合併症の状況は、表4のとおり。
現在、治療を受けていない人の中にもこれらの合併症を持つ人がいた。
表4.糖尿病の合併症の状況、糖尿病状況別
神経障害
網膜症
腎症
足壊疸
現在治療を受けている
(217人)
44人
20.3%
35人
16.1%
31人
14.3%
1人
0.5%
今回の調査で異常値が示されているが、現在、治療をうけていない(140人)
7人
5.0%
6人
4.3%
15人
10.7%
1人
0.7%
糖尿病が強く疑われる人のうちでは、心臓病12.4%。脳卒中4.4%。
糖尿病では、網膜症や腎臓などの小血管障害とともに、心臓や脳などの大血管障害にも関連する。
心臓病及び脳卒中の罹患に関する状況は表5のとおり。
表5.脳卒中と心臓病の状況、糖尿病状況別
心臓病
脳卒中
糖尿病が強く疑われる人
(482人)
60人
12.4%
21人
4.4%
糖尿病の可能性を否定できない人
(468人)
50人
10.7%
19人
4.1%
今回の調査における検査で正常範囲(40歳以上)
(4452人)
287人
6.4%
110人
2.5%