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平成12年1月17日

いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会中間報告書の公表について

  1. このたび、別添のとおり、「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」中間報告書を公表することとしました。

  2. 「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」においては、平成12年3月の最終報告の取りまとめを行うに当たり、同検討会における現在までの検討事項について取りまとめた別添資料の中間報告書について、食品衛生調査会及び公衆衛生審議会の関連部会において意見聴取するとともに、国民の皆様等からの意見を募集することとしております。

  3. 具体的な公募方法等について
    電子メールまたは郵送にて本日から平成12年2月29日(火)まで受け付けます。
    提出された意見については、次回の検討会で公表いたします。
−提出先−
しろまる 電子メールの場合
www-admin@mhw.go.jp(テキスト形式)
しろまる 郵送の場合
〒100-8045 東京都千代田区霞ヶ関1−2−2
厚生省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室宛

【別添資料】

1. 「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」中間報告書(概要)
2. 「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」中間報告書
3. 「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」委員名簿

(参考)これまでの日程

第1回 平成10年12月17日(木) 第6回 〃9月20日(月)
第2回 平成11年3月11日(木) 第7回 〃10月18日(月)
第3回 〃6月3日(木) 第8回 〃12月8日(水)
第4回 〃7月2日(金) 第9回 〃12月20日(月)
第5回 〃8月2日(月)

これまでの本検討会での議論については、議事録を行政相談室またはインターネット上(http://www.mhw.go.jp/shingi/seikatu.html#eiyouhojo)で公開

照会先
 厚生省生活衛生局食品保健課
 吉田新開発食品保健対策室長(内線2456)
 担当:古畑、温泉川(内線2458)
  浅沼(内線2459)



いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会中間報告書概要
  1. 意義及び目的
    しろまる 栄養の補給・補完としての意義・目的
    しろまる QOL(生活の質)、健康の維持増進としての意義・目的

  2. 定義
    しろまる 栄養成分を補給し、又は特別の保健の用途に適するものとして販売の用に供する食品のうち、錠剤、カプセル等通常の食品の形態でないもの

  3. 範囲
    しろまる ビタミン、ミネラル、ハーブその他の食品成分

  4. 4.名称
    しろまる 「栄養補助食品」の名称が適切

  5. 表示
    (1) 義務表示
    ・食品であることと、栄養補助食品の類型を示す表示
    [類型]特定保健用食品、特定栄養補助食品、その他の健康食品
    ・栄養成分等の表示
    ・過剰摂取等に対する注意喚起表示
    ・一日当たりの摂取量の目安及び適切な摂取方法の表示

    (2) 任意表示
    ・栄養素機能表示(当該栄養素の機能についての表示。身体の成長、発達、正常な機能における栄養素の生理的な役割を表示)
    例:「カルシウムは、歯や骨を丈夫にします。」
    ・特定保健用途の表示(当該食品が健康の維持増進に役立ち、特定の保健の用途に適することの表示。)
    例:「この食品は、吸収の良いカルシウムを多く含み、歯や骨を丈夫にし、健康の維持増進に役立ちます。」
    *疾病リスク低減表示(リスクリダクション表示)は、医薬品的効能効果と区別がつかないことから、当面、時期尚早。
    例:「この食品は、カルシウムを多く含み、将来の骨粗しょう症の危険要因を減らします。」

    (3) 表示制度の法的枠組み
    ・栄養改善法と食品衛生法の表示制度を併用
    ・「個別許可型」と「規格基準型」

    (4) 虚偽又は誇大な表示及び広告の規制

  6. 安全性の確保
    (1) 食品成分の規格基準及び食品添加物規制

    (2) 製造施設に係る基準等 など

  7. その他
    (1) 健康食品全体の類型化
    ・特定保健用食品→保健用途の表示も認める(個別許可型)
    ・栄養調整食品、栄養補助食品→栄養素機能表示まで認める(規格基準型)
    ・その他の健康食品→栄養素含有表示のみ

    (2) その他の健康食品の取扱い
    ・従来のガイドラインに止まらず、食品衛生法の規制上の位置付けを明確にし、適当な表示の義務付け等が必要。

    (3) 今後の予定
    ・関係方面の意見も聞きながら、12年3月に最終報告
    ・その後、個別の成分ごとの基準設定作業等を行い、施行する。



いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会 中間報告書

平成12年1月

  1. はじめに

  2. 検討の背景
    1. 我が国の現状 2. 国際的な動向

  3. 本論
    1. 意義及び目的について 5. 表示について
    2. 定義について 6. 安全性の確保について
    3. 範囲について 7. その他
    4. 名称について

  4. おわりに


I.はじめに
我が国では、国民の健康に対する関心、知識の向上や、食経験に基づく知見の積み重ねなどから、これまで、医薬品として使用されてきたビタミン等について、食品としての流通を求める声や、身体における働きが明らかとなったこれら栄養素等の補給等を目的とする食品について、消費者の選択に資するため、その働きを表示することを求める声が強まってきた。
このような食品は、適切に摂取することにより、食生活を通じて国民の健康の保持増進に寄与することから、このような動きを背景として、政府の規制緩和推進計画及び市場開放問題苦情処理推進会議(OTO)報告において、ビタミン等について医薬品の範囲を見直すとともに、食品として流通することとなったものについて、栄養補助食品として新しいカテゴリーとすることを検討することが決定された。
一方、アメリカではDietary Supplementという名称で、食品や医薬品とは別のカテゴリーが定められている。また、英国などEU各国では、食品の一類型として、表示方法等について制度化され、又は検討が進められている。さらに、食品の国際規格を定めるFAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)では、栄養成分表示のあり方について一定の結論が得られているほか、ビタミン及びミネラル補助食品の規格について検討が始められている。このような中で、食品衛生調査会及び公衆衛生審議会の関係部会より指示を受け、いわゆる栄養補助食品のあり方に関して検討を行うため、平成10年12月、厚生省生活衛生局長の下に、「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」を設け、これまでに9回の会合を持った。この間、平成11年11月には「論点整理事項」を公表し、一般からの意見を広く求めたほか、関係者から意見聴取を行うなど、各方面の意見を広く参考としつつ、検討を進めてきたところである。
本検討会では、現時点における検討状況を中間報告書として公表し、改めて各方面の意見を聞くとともに、食品衛生調査会及び公衆衛生審議会へ中間的な報告をし、今後の審議会での審議状況等を踏まえた上で、平成12年3月末までに最終の報告書をとりまとめることとしている。

II.検討の背景

1.我が国の現状
近年、国民の健康に対する関心の高まりや健康観の多様化、食経験に基づく知見の積み重ねなどから、これまで、医薬品として取り扱い使用されてきたビタミン等について、食品としての流通を求める声が強まっている。このような背景の下、次のような対応がなされてきた。

(1)規制緩和推進計画
平成8年3月には「規制緩和推進計画(改定)」が閣議決定され、医薬品の範囲の見直しについて、次のとおりとされた。

・ 医薬品の範囲を見直し、医薬品的な形状のカプセル等を使用した一部のビタミンについて、食品として流通を認める。
・ ハーブの成分の一種について、医薬品から食品への分類の変更を図る。
・ 医薬品の範囲を見直し、医薬品的な形状のカプセル等を使用した一部のミネラルについて、食品としての流通を認めることの検討に着手する。

(2)OTO(市場開放問題苦情処理対策本部)決定
また、同月、OTO(市場開放問題苦情処理対策本部)決定がされ、栄養補助食品について、次のとおりとされた。

・ 医薬品と食品の区分方法について、中長期的には、食品素材や成分に対する規制の緩和を含め、栄養補助食品を新しいカテゴリーとする対応を取ることを検討する。
・ 形状(剤型)の制限については、消費者において自ら正しい選択ができ、両者を混同しないよう明確に食品(栄養補助食品)として適切な表示がなされれば、廃止又は大幅な緩和を行う。
・ 表示の制限については、適切な摂取方法や栄養補助的効能、注意表示等について、消費者が自分に必要なものを的確に選択できるような表示を可能とする。
・ 通常海外で食品として流通・販売されているものが医薬品として規制されることなく食品として取扱いできるようにするため、ビタミンについては平成8年度、ハーブ(生薬)については平成9年度に、形状(剤型)及び表示の現行基準をできる限り緩和し、ビタミン、ハーブ以外のものについても、平成10年度からミネラルをはじめとして順次実施する。

(3)医薬品の範囲の見直し
このような動きを背景として、厚生省では、医薬品の範囲の見直しについては、これまで、下記のビタミン、ハーブ類及びミネラル類については、「当分の間、「食品」の文字等を容器、被包前面及び内袋にわかりやすく記載する等食品である旨が明示されており、かつ、医薬品的な効能効果を標榜しないものについては、その形状がカプセル剤、錠剤又は丸剤であっても医薬品に該当しないものとして取り扱うものであること。」とした。

<ビタミン>

・ ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン(制限なし)
・ 一日当たりの摂取量が以下の物
ビタミンB6(3mg以下)、ビタミンB12(3μg以下)、ビタミンK(120μg以下)、パントテン酸(6mg以下)、ビオチン(45μg以下)、葉酸(300μg以下)
*平成9年3月31日薬務局長通知「ビタミンの取扱いについて」により措置

<ハーブ類>

・ エキナケア(根、地上部)、エゾウコギ(根、根茎)、ノコギリヤシ(果実)、マリアアザミ(種子)、イチョウ葉、セイヨウオトギリソウ(花、地上部)、メマツヨイグサ(葉、茎、根、種子)、他161種類
*平成10年3月31日医薬安全局長通知「いわゆるハーブ類の取扱いについて」により措置

<ミネラル類>

・ カルシウム、鉄、マグネシウム、リン、カリウム
・ 1日当たりの摂取量が以下の物
亜鉛(50mg以下)、クロム(III)(0.4mg以下)、セレン(0.2mg以下)、銅(9mg以下)、フッ素(4mg以下)、マンガン(10mg以下)、モリブデン(0.3mg以下)、ヨウ素(1mg以下)
*平成11年3月31日(5月11日改正)医薬安全局長通知「ミネラル類の取扱いについて」により措置

(4)注意喚起の通知
また、いわゆる栄養補助食品に係る注意喚起の問題については、アメリカで、ビタミンAの過剰摂取と奇形発現等の関係に関し、妊娠前3ヶ月から妊娠初期3ヶ月までにビタミンA補給剤を1日10,000μgレチノール当量以上継続摂取した女性から出生した児に、奇形発現率の増加が認められると推定されるとの疫学的知見が学術誌に報告されたことを受けて、厚生省では平成7年12月に、ビタミンAを含有する健康食品に関し、過剰摂取を防止するための表示等について、関係営業者の指導等を行うよう、各都道府県等に通知している。さらに、規制緩和推進計画に基づき医薬品の範囲が見直され、今後ビタミン又はミネラルを多量に含む食品の流通増加が予想され、また、「第六次改定日本人の栄養所要量」において、ビタミン又はミネラルの許容上限摂取量が示されたことに伴い、平成11年10月に、これら栄養素を多量に含む食品の過剰摂取の防止等の観点から、その留意点等について、各都道府県等に通知している。

(5)食薬区分の見直しに関する検討
口から摂取するものが薬事法に規定する医薬品に該当するか否かは、そのものの原材料、効能効果、形状及び用法用量等を総合的に検討し、そのものが消費者に医薬品としての目的を持っているとの認識をもたせるか否かで判断しているが、その基準は、「医薬品の範囲に関する基準」(昭和46年薬務局長通知)により示され、食品と称していても、この基準で医薬品と判断されるものは、薬事法違反として取り締まられている。
しかし、この基準を示してから約30年が経過しようとしており、近年の食生活の多様化、国民の健康に対する関心の高まり等に伴い、医薬品や食品に対する意識が変化していることなどから、厚生省では、生活衛生局における栄養補助食品の制度の枠組みの検討と並行して、平成11年5月、医薬安全局長の下に「医薬品の範囲基準の見直しに関する検討会」を設置し、基準の見直しについて検討を進めているところである。


2.国際的な動向
諸外国の現状については、その国の法体系、習慣及び消費者の意識等により取扱いが異なるが、原則的に共通していることは、医薬品的な効能効果を目的としている場合、その物を医薬品と判断している。

(1)アメリカ
アメリカでは、1990年の「栄養表示教育法(Nutrition Labeling Education Act)」及び1994年の「栄養補助食品・健康・教育法(Dietary Supplement Health and Education Act)」(以下「DSHEA」という。)に基づき、食品への健康強調表示と機能表示が認められている。DSHEAにおいて、栄養補助食品(Dietary Supplement)は、ハーブ、ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の栄養成分を1種類以上含有する栄養補給のための製品として定義付けられている。また、これらの形状は錠剤、カプセル、粉末、ソフトジェル、ジェルカプセル又は液状といった通常の食物の形以外の形状をとることとされている。栄養補助食品には、一定の機能表示(人体の構造と機能に対する効果)が記載できるとされているが、機能表示の記載に当たっては、表示内容は正しく、誤解を生じさせないものであること、及び「FDAによる評価を得ていないこと」や「疾病の診断・治療・予防に用いられるものではないこと」を記載することが求められている。また、栄養補助食品の構成成分にRDA(栄養所要量)が設定されているものについては、その含有量をRDAのパーセントで記載すること、及び「栄養補助食品」であることを表示しなければならない。しかし、当該栄養補助食品に含まれる食品成分に、服用量の上限を規定する考え方は示されていない。一方、この法律には栄養補助食品に関する品質の確立を図るために、GMP(good manufacturing practice;優良製造規範)の規則制定に関する項目が盛り込まれている。

(2)イギリス
イギリス農水省(MAFF)は1996年12月「機能性食品と健康強調表示に関するレビュー」を発表しているが、この中で、表示の裏付けとしての科学的データには厳しい要求をしている。これを受けて、産・官・消費者からなる第3セクターの「健康強調表示合同推進機構(JHCI)」が、食品の健康強調表示に関する実行規範(Code of Practice on Health Claims on Foods)の最終案を1998年11月に作成し、各団体での協議が進められている。この規範では、産・官・消費者からなる運営委員会と事務局で構成される管理組織(CAB)」を置くとするとともに、健康強調表示を、科学的に正しいことが既に広く知られている一般健康強調表示(Generic Health Claim)と、新たに企業が科学的に立証した新規健康強調表示(Innovative Health Claim)に分類し、その表示を行う場合は管理組織に提出し、チェックを受けなければない。

(3)カナダ
Health Canada(日本の厚生省にほぼ相当)が1998年11月Policy Paper: Neutraceutical/ Functional Foods and Health Claims on Foods と題する基本方針を発表した。この方針に従って、アメリカの栄養表示教育法に基づく10の健康強調表示の科学的根拠をレビューし、規格基準型の表示を制度化するプロジェクトと、新規の健康強調表示について製品毎に個別審査する制度の検討プロジェクトが設置された。前者のプロジェクトは早期に結論を出す予定となっているが、後者については長期間の検討を要すると考えられる。

(4)コーデックス
食品の国際的な規格やガイドラインを設定しているFAO/WHO合同食品規格計画(コーデックス)の栄養・特殊用途食品規格部会において、現在、栄養補助食品のガイドラインが討議中であるが、最終合意には、ある程度の年月を要するものと予想される。また、食品の表示については、コーデックスの食品表示規格部会で検討された結果、栄養強調表示ガイドラインが示されており、エネルギー値、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル含有量等、その食品の栄養上の特性を表示することが認められている。なお、本ガイドラインでは栄養素機能表示についても示している。

III.本 論

1.意義及び目的について

厚生省では、これまで、「食生活指針」で示しているように、国民の健康はバランスのとれた食事を基本とすることを強調してきた。このため、いわゆる栄養補助食品の制度化は、特定の栄養成分をこのような特殊な形態の食品から摂取する

ことを奨励することにつながり、バランスのとれた食生活とは必ずしも相容れない部分があるのではないかとの懸念がある。
そこで、本検討会では、検討の前提を以下のとおり明確にするとともに、このような食品について新たなカテゴリーを設ける理由を明らかにし、消費者にその趣旨を理解いただき、適切かつ安全な摂取を促すこととした。

<前提>
健康を維持増進するためには、バランスのとれた食事をすることが基本であり、可能な限り必要な全ての栄養成分を普通の食事から摂取すべきである。また、「栄養補助食品」によって、食生活のバランスがないがしろにされることがあってはならない。

このことを前提として、当該食品の意義、目的について、

高齢化、食生活の乱れ等により通常の食生活を行うことが困難な場合等に、不足しがちな栄養成分を補給する食品として、国民生活上の意義、目的があること
すなわち、栄養の補給・補完としての意義、目的と、

通常の食生活における栄養摂取量からは期待することが困難な、一部栄養成分について明らかにされつつある身体の機能や構造に影響を与え健康を維持増進させる働きを評価し、その栄養成分の働きに着眼した栄養補助食品として、生活の質(QOL)の向上を図るとともに、国民の健康の維持増進を図るという意義、目的があること

すなわち、QOLの向上、健康の維持増進としての意義、目的について、積極的に評価すべきである。
なお、QOLの向上、健康の維持増進に関連して、生活習慣病等の罹患リスクの軽減(リスク・リダクション)という観点も、合わせて考慮すべきであるとの意見もあった。

(注) 「栄養成分」とは、食品に本来含有される成分で、人体で利用されるものをいい、本中間報告書では、栄養素のほかハーブ等に含まれる成分等を含めた広い意味に用いる。


2.定義について

一般的な意味での栄養補助食品の定義としては、

「栄養成分を補給し、又は特別の保健の用途に資するものとして販売の用に供する食品のうち、錠剤、カプセル等通常の食品の形態でないもの」
などと表現することが適切であると考えられる。


3.範囲について

栄養補助食品の範囲としては、ビタミン、ミネラル、ハーブその他の栄養成分に及ぶが、安全性の確立していない成分を食品として用いることができないことは当然であり、また、栄養成分の機能等の表示も、人において科学的に証明できている場合に限定されることも当然である。


4.名称について

名称については、日常生活では不足しがちな、又は健康の維持増進のために意義のある栄養成分を補給するものであり、さらに、通常の形態の食品に対して補助的であるという位置づけにふさわしい名称として、既に一般的な使用例が多くなっている「栄養補助食品」の名称を総称として用いることが適切であると考えられる。


5.表示について

(1)表示の意義
栄養補助食品の適切な選択や摂取を行う上では、消費者に対し適切な情報を提供する必要があり、表示の基準を適切に設定する必要がある。
表示の内容は、該当するすべての食品に対し表示が義務づけられる「義務表示」と、表示を行うか否かは表示者の任意である「任意表示」があり、次のとおりとすることが適当である。
(1)義務表示
・栄養補助食品の類型を示す表示
・栄養成分の表示
・過剰摂取等に対する注意喚起表示
(2)任意表示
・栄養成分機能表示、特定保健用途の表示

(2)類型名の表示
栄養補助食品は、医薬品等との誤認を与えないよう、食品である旨の表示が必要である。
さらに、栄養補助食品には、
(1)科学的な審査を経て特定の保健用途の表示を行うもの
(2)科学的に証明された栄養成分の機能の表示を行うもの
(3)その他の健康食品
の類型があり、国民に正しい情報が提供されるよう、それぞれの類型による名称の表示を義務づけることが適当である。

(3)栄養成分に関わる表示

(1) 栄養成分含有表示
当該食品が当該栄養成分を含むことの表示。この場合、食品中の栄養成分含有量の多い少ないを表示する場合もある。

例:「この食品はカルシウムを多く含みます。」

(2) 栄養成分機能表示
当該栄養成分の機能についての表示。身体の成長、発達、正常な機能における栄養成分の生理的な役割を表示するもの。
なお、その機能は、人において科学的な根拠で証明されたものでなければならない。また、疾病に言及して疾病の診断、治療又は予防を目的とする旨を表示することは、医薬品的効能効果であるから許されない。

例:「カルシウムは、歯や骨を丈夫にします。」

(3) 保健用途の表示
当該食品が健康の維持増進に役立ち、特定の保健の用途に適することの表示。食品に着目した表示。
なお、その機能は、人において科学的な根拠で証明されたものでなければならない。また、疾病に言及して疾病の診断、治療又は予防を目的とする旨を表示することは、医薬品的効能効果であるから許されない。

例:「この食品は、吸収の良いカルシウムを多く含み、歯や骨を丈夫にし、健康の維持増進に役立ちます。」

(4) 疾病リスク低減表示(リスクリダクション表示)
特定の疾病罹患リスクの低減ができる旨の表示。

例:「この食品は、カルシウムを多く含み、将来の骨粗鬆症の危険度を減らします。」

疾病リスク低減表示については、医薬品的効能効果である疾病の予防効果の表示と区別が付きにくいことから、我が国では、当面、時期尚早と考えられる。なお、現在、コーデックス食品表示部会において検討されている「健康強調表示の使用に関する勧告案」においては、疾病リスク低減表示を含めて検討がされていることから、それが国際的に承認された場合には、この表示も食品について認められるべきものと考えられる。

(4)注意喚起表示

(1) 過剰摂取に対する注意喚起表示
当該食品は、過剰摂取により健康危害をもたらすおそれのある栄養成分を高単位で含むものもあることから、過剰摂取に対する注意喚起表示として、
過剰摂取による危害発生が明らかな成分に関しては、具体的な過剰摂取による症状の表示を義務づける
こととする。
ただし、成分によっては、過剰摂取による症状が一つに特定できない場合や、摂取量、年齢・性別等により症状が異なる場合などがあることから、個別成分毎に表示方法を検討することが適切である。
(2) 一日当たりの摂取量の目安
当該食品は、医薬品ではないことから、医薬品的な用法用量の表示は適切でないが、過剰摂取を防止し、また、含有栄養成分が効果的に吸収されることを図るため、
一日当たりの摂取量の目安、及び、適切な摂取方法の表示
を義務づけることが必要である。
また、あわせて、一日当たりの栄養所要量が示されている栄養成分を含有する場合は、
一日当たりの栄養所要量に対する摂取割合の表示
を義務づけることが必要である。
なお、その場合、栄養所要量が年齢、性別で異なることにも対応できる表示を行えるような方法を考慮することが望ましい。

(3) その他注意喚起表示
当該食品が含有する成分によっては、特定の人(妊婦や子供、特定の医薬品を服用している人など)にとって摂取が危険である場合もあることから、このような危険事項に関する表示も義務づける必要がある。
また、他の栄養補助食品や通常の食品とのいわゆる「食べ合わせ」などの摂取上の注意事項もあわせて表示する必要がある。
なお、これとあわせて、「1.意義及び目的について」で述べた栄養補助食品制度の検討に当たっての前提、すなわち、「健康を維持増進するためには、バランスのとれた食事をすることが基本である」旨も表示すべきとの意見もあった。


(5)表示制度の法的枠組み
栄養補助食品を制度化する際の法的根拠としては、栄養の補給・補完ないしは健康の維持増進の意義から考えて、「国民の栄養を改善する方途を講じて国民の健康及び体力の維持向上を図ること」を目的とする栄養改善法の表示制度を根拠とすることが適切である。
また、栄養補助食品は、摂取の方法等によっては、健康に危害を生じたり、あるいは、健康に良い影響を期待しながらそれを得られないなどの問題が生じることから、「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止」することを目的とする食品衛生法の表示制度を根拠とすることも適切である。
従って、栄養補助食品の表示については、栄養改善法と食品衛生法の表示が表裏一体となって、両法に基づく表示制度として検討することが適当と考えられる。
この場合、次の既存の法律上の枠組みにより対応が可能であることから、これを活用して、栄養補助食品の表示制度を定めることが適当である。

(1) 栄養改善法の表示制度
ア. 法第12条(特別用途表示の許可)の特定保健用食品制度
栄養改善法第12条では、
「販売の用に供する食品につき、乳児用、幼児用、妊産婦用、病者用等の特別の用途に適する旨の表示(以下「特別用途表示」という。)をしようとする者は、厚生大臣の許可を受けなければならない。」
とされており、同法施行規則第8条第1項第5号において、
「食生活において特定の保健の目的で摂取をする者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をするもの(以下「特定保健用食品」という。)」
とされており、特定保健用途の表示を行う場合には、厚生大臣の許可が必要とされている。
この規定は、食品である以上、錠剤やカプセル形状の栄養補助食品にも当然に適用されるものであり、従って、(3)(3)の保健用途の表示を行うためには、許可が必要となるものである。[個別許可型]

イ. 法第17条(栄養表示基準)
栄養改善法第17条では、
「販売に供する食品につき、栄養成分(厚生省令で定めるものに限る。)又は熱量に関する表示(以下「栄養表示」という。)をしようとする者は、厚生大臣の定める栄養表示基準に従い、必要な表示をしなければならない。」
とされている。
(3)(2)の栄養成分機能表示については、表示する栄養成分の機能は、人において科学的な根拠で証明されたものでなければならないことから、法第17条の栄養表示基準により、その機能が人において科学的な根拠で証明された栄養成分について、ポジティブリストにより列挙し、栄養素機能表示を行うことができる栄養成分の種類と、表示できる機能の内容を規制することが適当である。[規格基準型]
なお、これに該当する栄養成分としては、当初は、日本人の栄養所要量における一日当たりの適正摂取量が示されているビタミン、ミネラル等が中心となることが予想される。多様なハーブ類については、その機能の科学的根拠による証明が未だ不十分である場合が多く、その場合は、当面、栄養成分機能表示は認められず、(3)(1)の栄養成分含有表示のみが許されることとなる。
ただし、当該成分の機能の科学的証明ができていない場合でも、当該成分を含む個別の食品について、その機能の科学的根拠が示されれば、ア.の個別許可型の制度を活用して、栄養成分の機能の表示ができる。
(2) 食品衛生法の表示制度
食品衛生法では、法第11条(食品の表示の基準)があり、
「厚生大臣は、公衆衛生の見地から、販売の用に供する食品若しくは添加物に関する表示につき、必要な基準を定めることができる。」
とされている。
栄養補助食品は、摂取の方法等によっては、健康に危害を生じたり、あるいは、健康に良い影響を期待しながらそれを得られないなどの問題が生じることから、栄養改善法に基づく表示制度と合わせて、食品衛生法の表示制度においても根拠付けておくことが適切と考えられる。


(6)食品への具体的な表示方法
商品によっては、上記の表示をすべて行うには物理的スペースに限りがある場合がある。
この場合には、商品選択の上で必要な表示(例:危険に関する表示、栄養成分機能表示等)については、外包に表示するとともに、摂取の上で留意すべき表示(例:過剰摂取に関する注意喚起表示、一日当たりの摂取量の目安等)については、添付書に表示するなどの工夫が必要である。

(7)虚偽又は誇大な表示又は広告の規制
栄養補助食品の信頼を確保するためには、虚偽又は誇大な表示又は広告の規制が重要である。
このため、食品衛生法第12条(虚偽表示等の禁止)において、

「食品、添加物、器具又は容器包装に関しては、公衆衛生に危害を及ぼす虞がある虚偽の又は誇大な表示又は広告はこれを行ってはならない。」
とされており、この規定等を適切に運用し、適切な措置を講じることが必要である。


6.安全性の確保について

栄養補助食品も食品である以上、安全性の確保は、何よりも重要であり、食品衛生法の以下の制度について、適切な運用が必要である。

(1)食品成分の規格基準及び食品添加物規制
ビタミン、ミネラルは、過剰摂取により健康被害を生じるおそれがあり、また、ハーブ等についても、安全な食経験に乏しい植物等が使用されるおそれもある。
さらに、錠剤、カプセル等を形作る材料についても、安全性が明らかでないものが使用されるおそれがありうる。
このため、食品衛生法の規格基準において成分の規制を行うことについても、検討が必要と考えられる。
また、食品衛生法に基づく食品添加物の規制についても、検討が必要と考えられる。

(2)製造施設に係る基準等
医薬品では、品目ごとの製造承認制度のほか、製造所の許可制度があり、また、製品の製造管理、品質管理の方法について、GMPの制度もある。今般、栄養補助食品を医薬品から外して食品として流通できるようにするに当たり、医薬品よりも簡便なもので良いとしても、食品衛生の制度として、その安全性を確保するための仕組みを維持することは重要である。
食品衛生法においても、製造施設等について、営業施設の基準等の制度があることから、具体的な適用方法について検討が必要と考えられる。

(3)監視制度
規格基準、表示基準の監視については、食品衛生法に基づく食品衛生監視員による監視制度等の適切な運用が必要となる。

(4)消費者への情報提供、相談指導
消費者が適切かつ安全に栄養補助食品を摂取するためには、この制度の意義が正しく消費者に理解されることが重要である。また、この食品は、消費者が各人の食生活を十分理解した上で適切に摂取することにより、初めてその効果が得られるものである。
したがって、機会をとらえて「栄養補助食品」制度の啓蒙普及を図るとともに、消費者が当該食品を選択する際の適切な情報提供やアドバイス方法について、具体策を検討する必要がある。


7.その他

(1)いわゆる健康食品全体の類型化
本検討会では、栄養補助食品は、錠剤、カプセル等の通常の食品の形態でない食品を言うこととするのが適当としたが、通常の食品の形態の健康食品も存在する。
通常の食品形態のものも含めた健康食品全体の類型としては、次の図のとおりに整理することができる。なお、これについては、類型やその名称をもう少し分かり易くできないか等の意見もあった。

いわゆる健康食品
(2)栄養調整食品の取扱い
近年、「栄養調整食品」などの名称で、シリアルやビスケット状等通常の形状をした食品であって、ビタミン、ミネラル等の栄養成分を強化した食品が広く販売されている。
このような食品については、「栄養補助食品」の範疇に含めることは適当ではないが、これらの食品についても特定栄養成分の過剰摂取等の注意喚起表示の必要があること、適切な栄養摂取バランスを考慮すべきこと、個々の栄養成分に関する表示の基準を定めることにより消費者の商品選択に資するものであること等から、別途厚生省が定める基準に従い表示を行うようにすべきである。

(3)その他の健康食品の取扱い
現在、健康の維持増進等に有効であると期待され、あるいは称される様々な食品が、いわゆる健康食品として販売されており、これらについては、身体の機能等に及ぼす働き等の表示は認められていないが、「健康食品の摂取量及び摂取方法の表示に関する指針」(昭和63年生活衛生局新開発食品保健対策室長通知)により、適正な摂取についての注意喚起表示を行うことや、誇大な表示、医薬品と紛らわしい表示を行わないよう定められている。
今後、本報告書による制度が実施された場合、これまでのいわゆる健康食品で錠剤等の形状のものは、栄養成分の人の健康に対する機能が科学的に証明されれば、逐次、規格基準型の「特定栄養補助食品」に指定され、当該食品について特定の保健的効果が科学的に証明されれば、個別承認型の「特定保健用食品」として許可されていくこととなる。
しかし、これらに該当しないその他の健康食品も相当数にのぼるものと予想され、これらについては、保健用途の表示、栄養成分機能表示が許されないことはもちろんである。
また、その中には、健康食品としての効果が疑われるもの、更には、消費者にとって誤った情報を提供して販売するものもあることから、従来のガイドラインにとどまらず、食品衛生法の規制上の位置づけを明確にして、適正な表示の義務づけ等をすることが必要である。


IV.おわりに

(1)中間報告書の趣旨と最終報告書
本検討会は、生活衛生局長の下の検討会として設置されたものであり、栄養補助食品の制度的枠組みについては、最終的には、厚生大臣の諮問機関である食品衛生調査会及び公衆衛生審議会における審議を経て決定されるものである。
このため、本検討会では、最終報告書をまとめる前に、現段階における検討状況として中間報告書を提出し、これらの審議会で検討いただき、その議論も踏まえ、また、更に、薬事法制との調整も図りつつ、最終的な報告書を、平成12年3月末までにまとめることとしている。

(2)制度的枠組み決定後の個別具体的な検討
検討会の報告書は、栄養補助食品等についての制度的枠組み案をとりまとめるものであり、実際の制度化に当たっては、今後別途、次のような個別具体的な検討が必要である。

(1) 規格基準型「特定栄養補助食品」の栄養成分のリストアップ
(2) 各成分毎の表示方法を含む規格基準、表示基準の検討
(3) 個別評価型の「特定保健用食品」の評価方法の検討
(4) 個別の食品添加物の取扱いについての検討
(5) 栄養調整食品、その他健康食品を含めた基準の検討
(6) 消費者への情報提供、相談指導の検討
(7) その他



いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会委員名簿

No. 氏名 所属先・役職
1 芦川修貳 実践女子短期大学生活文化学科教授
2 五十嵐脩 お茶の水女子大学生活環境研究センター教授
3 池上幸江 大妻女子大学家政学部食物学科教授
4 江指隆年 国立健康・栄養研究所応用食品部長
5 多田和生 (株)ジャフマック代表取締役社長
6 ☆田中平三 東京医科歯科大学難治疾患研究所教授
7 野中 博 医療法人社団博腎会 野中医院理事長
8 橋詰直孝 東邦大学医学部大橋病院臨床検査医学研究室教授
9 浜野弘昭 カルター・フードサイエンス(株)常務取締役
10 山田 隆 国立医薬品食品衛生研究所食品添加物部長
11 和田正江 主婦連合会会長

(注記)☆は座長



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