平成12年1月17日
【別添資料】
(参考)これまでの日程
これまでの本検討会での議論については、議事録を行政相談室またはインターネット上(http://www.mhw.go.jp/shingi/seikatu.html#eiyouhojo)で公開
照会先 厚生省生活衛生局食品保健課 吉田新開発食品保健対策室長(内線2456) 担当:古畑、温泉川(内線2458) 浅沼(内線2459)
平成12年1月
I.はじめに
我が国では、国民の健康に対する関心、知識の向上や、食経験に基づく知見の積み重ねなどから、これまで、医薬品として使用されてきたビタミン等について、食品としての流通を求める声や、身体における働きが明らかとなったこれら栄養素等の補給等を目的とする食品について、消費者の選択に資するため、その働きを表示することを求める声が強まってきた。
このような食品は、適切に摂取することにより、食生活を通じて国民の健康の保持増進に寄与することから、このような動きを背景として、政府の規制緩和推進計画及び市場開放問題苦情処理推進会議(OTO)報告において、ビタミン等について医薬品の範囲を見直すとともに、食品として流通することとなったものについて、栄養補助食品として新しいカテゴリーとすることを検討することが決定された。
一方、アメリカではDietary Supplementという名称で、食品や医薬品とは別のカテゴリーが定められている。また、英国などEU各国では、食品の一類型として、表示方法等について制度化され、又は検討が進められている。さらに、食品の国際規格を定めるFAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)では、栄養成分表示のあり方について一定の結論が得られているほか、ビタミン及びミネラル補助食品の規格について検討が始められている。このような中で、食品衛生調査会及び公衆衛生審議会の関係部会より指示を受け、いわゆる栄養補助食品のあり方に関して検討を行うため、平成10年12月、厚生省生活衛生局長の下に、「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」を設け、これまでに9回の会合を持った。この間、平成11年11月には「論点整理事項」を公表し、一般からの意見を広く求めたほか、関係者から意見聴取を行うなど、各方面の意見を広く参考としつつ、検討を進めてきたところである。
本検討会では、現時点における検討状況を中間報告書として公表し、改めて各方面の意見を聞くとともに、食品衛生調査会及び公衆衛生審議会へ中間的な報告をし、今後の審議会での審議状況等を踏まえた上で、平成12年3月末までに最終の報告書をとりまとめることとしている。
II.検討の背景
1.我が国の現状
近年、国民の健康に対する関心の高まりや健康観の多様化、食経験に基づく知見の積み重ねなどから、これまで、医薬品として取り扱い使用されてきたビタミン等について、食品としての流通を求める声が強まっている。このような背景の下、次のような対応がなされてきた。
(1)規制緩和推進計画
平成8年3月には「規制緩和推進計画(改定)」が閣議決定され、医薬品の範囲の見直しについて、次のとおりとされた。
(2)OTO(市場開放問題苦情処理対策本部)決定
また、同月、OTO(市場開放問題苦情処理対策本部)決定がされ、栄養補助食品について、次のとおりとされた。
(3)医薬品の範囲の見直し
このような動きを背景として、厚生省では、医薬品の範囲の見直しについては、これまで、下記のビタミン、ハーブ類及びミネラル類については、「当分の間、「食品」の文字等を容器、被包前面及び内袋にわかりやすく記載する等食品である旨が明示されており、かつ、医薬品的な効能効果を標榜しないものについては、その形状がカプセル剤、錠剤又は丸剤であっても医薬品に該当しないものとして取り扱うものであること。」とした。
<ビタミン>
<ハーブ類>
<ミネラル類>
(4)注意喚起の通知
また、いわゆる栄養補助食品に係る注意喚起の問題については、アメリカで、ビタミンAの過剰摂取と奇形発現等の関係に関し、妊娠前3ヶ月から妊娠初期3ヶ月までにビタミンA補給剤を1日10,000μgレチノール当量以上継続摂取した女性から出生した児に、奇形発現率の増加が認められると推定されるとの疫学的知見が学術誌に報告されたことを受けて、厚生省では平成7年12月に、ビタミンAを含有する健康食品に関し、過剰摂取を防止するための表示等について、関係営業者の指導等を行うよう、各都道府県等に通知している。さらに、規制緩和推進計画に基づき医薬品の範囲が見直され、今後ビタミン又はミネラルを多量に含む食品の流通増加が予想され、また、「第六次改定日本人の栄養所要量」において、ビタミン又はミネラルの許容上限摂取量が示されたことに伴い、平成11年10月に、これら栄養素を多量に含む食品の過剰摂取の防止等の観点から、その留意点等について、各都道府県等に通知している。
(5)食薬区分の見直しに関する検討
口から摂取するものが薬事法に規定する医薬品に該当するか否かは、そのものの原材料、効能効果、形状及び用法用量等を総合的に検討し、そのものが消費者に医薬品としての目的を持っているとの認識をもたせるか否かで判断しているが、その基準は、「医薬品の範囲に関する基準」(昭和46年薬務局長通知)により示され、食品と称していても、この基準で医薬品と判断されるものは、薬事法違反として取り締まられている。
しかし、この基準を示してから約30年が経過しようとしており、近年の食生活の多様化、国民の健康に対する関心の高まり等に伴い、医薬品や食品に対する意識が変化していることなどから、厚生省では、生活衛生局における栄養補助食品の制度の枠組みの検討と並行して、平成11年5月、医薬安全局長の下に「医薬品の範囲基準の見直しに関する検討会」を設置し、基準の見直しについて検討を進めているところである。
2.国際的な動向
諸外国の現状については、その国の法体系、習慣及び消費者の意識等により取扱いが異なるが、原則的に共通していることは、医薬品的な効能効果を目的としている場合、その物を医薬品と判断している。
(1)アメリカ
アメリカでは、1990年の「栄養表示教育法(Nutrition Labeling Education Act)」及び1994年の「栄養補助食品・健康・教育法(Dietary Supplement Health and Education Act)」(以下「DSHEA」という。)に基づき、食品への健康強調表示と機能表示が認められている。DSHEAにおいて、栄養補助食品(Dietary Supplement)は、ハーブ、ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の栄養成分を1種類以上含有する栄養補給のための製品として定義付けられている。また、これらの形状は錠剤、カプセル、粉末、ソフトジェル、ジェルカプセル又は液状といった通常の食物の形以外の形状をとることとされている。栄養補助食品には、一定の機能表示(人体の構造と機能に対する効果)が記載できるとされているが、機能表示の記載に当たっては、表示内容は正しく、誤解を生じさせないものであること、及び「FDAによる評価を得ていないこと」や「疾病の診断・治療・予防に用いられるものではないこと」を記載することが求められている。また、栄養補助食品の構成成分にRDA(栄養所要量)が設定されているものについては、その含有量をRDAのパーセントで記載すること、及び「栄養補助食品」であることを表示しなければならない。しかし、当該栄養補助食品に含まれる食品成分に、服用量の上限を規定する考え方は示されていない。一方、この法律には栄養補助食品に関する品質の確立を図るために、GMP(good manufacturing practice;優良製造規範)の規則制定に関する項目が盛り込まれている。
(2)イギリス
イギリス農水省(MAFF)は1996年12月「機能性食品と健康強調表示に関するレビュー」を発表しているが、この中で、表示の裏付けとしての科学的データには厳しい要求をしている。これを受けて、産・官・消費者からなる第3セクターの「健康強調表示合同推進機構(JHCI)」が、食品の健康強調表示に関する実行規範(Code of Practice on Health Claims on Foods)の最終案を1998年11月に作成し、各団体での協議が進められている。この規範では、産・官・消費者からなる運営委員会と事務局で構成される管理組織(CAB)」を置くとするとともに、健康強調表示を、科学的に正しいことが既に広く知られている一般健康強調表示(Generic Health Claim)と、新たに企業が科学的に立証した新規健康強調表示(Innovative Health Claim)に分類し、その表示を行う場合は管理組織に提出し、チェックを受けなければない。
(3)カナダ
Health Canada(日本の厚生省にほぼ相当)が1998年11月Policy Paper: Neutraceutical/ Functional Foods and Health Claims on Foods と題する基本方針を発表した。この方針に従って、アメリカの栄養表示教育法に基づく10の健康強調表示の科学的根拠をレビューし、規格基準型の表示を制度化するプロジェクトと、新規の健康強調表示について製品毎に個別審査する制度の検討プロジェクトが設置された。前者のプロジェクトは早期に結論を出す予定となっているが、後者については長期間の検討を要すると考えられる。
(4)コーデックス
食品の国際的な規格やガイドラインを設定しているFAO/WHO合同食品規格計画(コーデックス)の栄養・特殊用途食品規格部会において、現在、栄養補助食品のガイドラインが討議中であるが、最終合意には、ある程度の年月を要するものと予想される。また、食品の表示については、コーデックスの食品表示規格部会で検討された結果、栄養強調表示ガイドラインが示されており、エネルギー値、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル含有量等、その食品の栄養上の特性を表示することが認められている。なお、本ガイドラインでは栄養素機能表示についても示している。
III.本 論
1.意義及び目的について
厚生省では、これまで、「食生活指針」で示しているように、国民の健康はバランスのとれた食事を基本とすることを強調してきた。このため、いわゆる栄養補助食品の制度化は、特定の栄養成分をこのような特殊な形態の食品から摂取する
ことを奨励することにつながり、バランスのとれた食生活とは必ずしも相容れない部分があるのではないかとの懸念がある。
そこで、本検討会では、検討の前提を以下のとおり明確にするとともに、このような食品について新たなカテゴリーを設ける理由を明らかにし、消費者にその趣旨を理解いただき、適切かつ安全な摂取を促すこととした。
<前提>
健康を維持増進するためには、バランスのとれた食事をすることが基本であり、可能な限り必要な全ての栄養成分を普通の食事から摂取すべきである。また、「栄養補助食品」によって、食生活のバランスがないがしろにされることがあってはならない。
すなわち、QOLの向上、健康の維持増進としての意義、目的について、積極的に評価すべきである。
なお、QOLの向上、健康の維持増進に関連して、生活習慣病等の罹患リスクの軽減(リスク・リダクション)という観点も、合わせて考慮すべきであるとの意見もあった。
2.定義について
3.範囲について
栄養補助食品の範囲としては、ビタミン、ミネラル、ハーブその他の栄養成分に及ぶが、安全性の確立していない成分を食品として用いることができないことは当然であり、また、栄養成分の機能等の表示も、人において科学的に証明できている場合に限定されることも当然である。
4.名称について
名称については、日常生活では不足しがちな、又は健康の維持増進のために意義のある栄養成分を補給するものであり、さらに、通常の形態の食品に対して補助的であるという位置づけにふさわしい名称として、既に一般的な使用例が多くなっている「栄養補助食品」の名称を総称として用いることが適切であると考えられる。
5.表示について
(3)栄養成分に関わる表示
例:「この食品はカルシウムを多く含みます。」
例:「カルシウムは、歯や骨を丈夫にします。」
例:「この食品は、吸収の良いカルシウムを多く含み、歯や骨を丈夫にし、健康の維持増進に役立ちます。」
例:「この食品は、カルシウムを多く含み、将来の骨粗鬆症の危険度を減らします。」
(4)注意喚起表示
(5)表示制度の法的枠組み
栄養補助食品を制度化する際の法的根拠としては、栄養の補給・補完ないしは健康の維持増進の意義から考えて、「国民の栄養を改善する方途を講じて国民の健康及び体力の維持向上を図ること」を目的とする栄養改善法の表示制度を根拠とすることが適切である。
また、栄養補助食品は、摂取の方法等によっては、健康に危害を生じたり、あるいは、健康に良い影響を期待しながらそれを得られないなどの問題が生じることから、「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止」することを目的とする食品衛生法の表示制度を根拠とすることも適切である。
従って、栄養補助食品の表示については、栄養改善法と食品衛生法の表示が表裏一体となって、両法に基づく表示制度として検討することが適当と考えられる。
この場合、次の既存の法律上の枠組みにより対応が可能であることから、これを活用して、栄養補助食品の表示制度を定めることが適当である。
(6)食品への具体的な表示方法
商品によっては、上記の表示をすべて行うには物理的スペースに限りがある場合がある。
この場合には、商品選択の上で必要な表示(例:危険に関する表示、栄養成分機能表示等)については、外包に表示するとともに、摂取の上で留意すべき表示(例:過剰摂取に関する注意喚起表示、一日当たりの摂取量の目安等)については、添付書に表示するなどの工夫が必要である。
(7)虚偽又は誇大な表示又は広告の規制
栄養補助食品の信頼を確保するためには、虚偽又は誇大な表示又は広告の規制が重要である。
このため、食品衛生法第12条(虚偽表示等の禁止)において、
6.安全性の確保について
栄養補助食品も食品である以上、安全性の確保は、何よりも重要であり、食品衛生法の以下の制度について、適切な運用が必要である。
(1)食品成分の規格基準及び食品添加物規制
ビタミン、ミネラルは、過剰摂取により健康被害を生じるおそれがあり、また、ハーブ等についても、安全な食経験に乏しい植物等が使用されるおそれもある。
さらに、錠剤、カプセル等を形作る材料についても、安全性が明らかでないものが使用されるおそれがありうる。
このため、食品衛生法の規格基準において成分の規制を行うことについても、検討が必要と考えられる。
また、食品衛生法に基づく食品添加物の規制についても、検討が必要と考えられる。
(2)製造施設に係る基準等
医薬品では、品目ごとの製造承認制度のほか、製造所の許可制度があり、また、製品の製造管理、品質管理の方法について、GMPの制度もある。今般、栄養補助食品を医薬品から外して食品として流通できるようにするに当たり、医薬品よりも簡便なもので良いとしても、食品衛生の制度として、その安全性を確保するための仕組みを維持することは重要である。
食品衛生法においても、製造施設等について、営業施設の基準等の制度があることから、具体的な適用方法について検討が必要と考えられる。
(3)監視制度
規格基準、表示基準の監視については、食品衛生法に基づく食品衛生監視員による監視制度等の適切な運用が必要となる。
(4)消費者への情報提供、相談指導
消費者が適切かつ安全に栄養補助食品を摂取するためには、この制度の意義が正しく消費者に理解されることが重要である。また、この食品は、消費者が各人の食生活を十分理解した上で適切に摂取することにより、初めてその効果が得られるものである。
したがって、機会をとらえて「栄養補助食品」制度の啓蒙普及を図るとともに、消費者が当該食品を選択する際の適切な情報提供やアドバイス方法について、具体策を検討する必要がある。
7.その他
(1)いわゆる健康食品全体の類型化
本検討会では、栄養補助食品は、錠剤、カプセル等の通常の食品の形態でない食品を言うこととするのが適当としたが、通常の食品の形態の健康食品も存在する。
通常の食品形態のものも含めた健康食品全体の類型としては、次の図のとおりに整理することができる。なお、これについては、類型やその名称をもう少し分かり易くできないか等の意見もあった。
いわゆる健康食品
(2)栄養調整食品の取扱い
近年、「栄養調整食品」などの名称で、シリアルやビスケット状等通常の形状をした食品であって、ビタミン、ミネラル等の栄養成分を強化した食品が広く販売されている。
このような食品については、「栄養補助食品」の範疇に含めることは適当ではないが、これらの食品についても特定栄養成分の過剰摂取等の注意喚起表示の必要があること、適切な栄養摂取バランスを考慮すべきこと、個々の栄養成分に関する表示の基準を定めることにより消費者の商品選択に資するものであること等から、別途厚生省が定める基準に従い表示を行うようにすべきである。
(3)その他の健康食品の取扱い
現在、健康の維持増進等に有効であると期待され、あるいは称される様々な食品が、いわゆる健康食品として販売されており、これらについては、身体の機能等に及ぼす働き等の表示は認められていないが、「健康食品の摂取量及び摂取方法の表示に関する指針」(昭和63年生活衛生局新開発食品保健対策室長通知)により、適正な摂取についての注意喚起表示を行うことや、誇大な表示、医薬品と紛らわしい表示を行わないよう定められている。
今後、本報告書による制度が実施された場合、これまでのいわゆる健康食品で錠剤等の形状のものは、栄養成分の人の健康に対する機能が科学的に証明されれば、逐次、規格基準型の「特定栄養補助食品」に指定され、当該食品について特定の保健的効果が科学的に証明されれば、個別承認型の「特定保健用食品」として許可されていくこととなる。
しかし、これらに該当しないその他の健康食品も相当数にのぼるものと予想され、これらについては、保健用途の表示、栄養成分機能表示が許されないことはもちろんである。
また、その中には、健康食品としての効果が疑われるもの、更には、消費者にとって誤った情報を提供して販売するものもあることから、従来のガイドラインにとどまらず、食品衛生法の規制上の位置づけを明確にして、適正な表示の義務づけ等をすることが必要である。
IV.おわりに
(1)中間報告書の趣旨と最終報告書
本検討会は、生活衛生局長の下の検討会として設置されたものであり、栄養補助食品の制度的枠組みについては、最終的には、厚生大臣の諮問機関である食品衛生調査会及び公衆衛生審議会における審議を経て決定されるものである。
このため、本検討会では、最終報告書をまとめる前に、現段階における検討状況として中間報告書を提出し、これらの審議会で検討いただき、その議論も踏まえ、また、更に、薬事法制との調整も図りつつ、最終的な報告書を、平成12年3月末までにまとめることとしている。
(2)制度的枠組み決定後の個別具体的な検討
検討会の報告書は、栄養補助食品等についての制度的枠組み案をとりまとめるものであり、実際の制度化に当たっては、今後別途、次のような個別具体的な検討が必要である。
いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会委員名簿