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障害者関係3審議会の意見具申について



今後の障害保健福祉施策の在り方について

(平成11年1月19日)

身体障害者福祉審議会

中央児童福祉審議会障害福祉部会 合同企画分科会

公衆衛生審議会精神保健福祉部会


目 次

第1 はじめに

第2 利用者本位の考え方に立つ新しいサービス利用制度の在り方

1.基本的考え方
2.新しいサービス利用制度の条件整備

(1) 「選択」を保障するための条件整備
(2) 「直接で対等な関係」を保障するための条件整備

3.新しいサービス利用制度への移行
4.利用者負担の在り方

第3 サービス水準の確保

第4 利用者の保護

第5 障害者の参画

第6 社会福祉事業への位置づけ

第7 終わりに


第1 はじめに

1.障害者保健福祉施策全般について、総合的に見直しを行うため、平成8年10月に、身体障害者福祉審議会、中央児童福祉審議会障害福祉部会、公衆衛生審議会精神保健福祉部会に、それぞれ企画分科会が設置され、同年11月から合同で審議を開始した。

2.本合同企画分科会では、平成9年12月に、「今後の障害保健福祉施策の在り方について(中間報告)」(以下「本分科会中間報告」という。)として、障害保健福祉施策全般について、基本的理念、基本的な施策の方向及び具体的な施策の方向を提言した。

(注) 基本的理念: (1)障害者の自立と社会経済活動への参画の支援
(2)主体性・選択性の尊重
(3)地域での支え合い
基本的な施策の方向: (1)障害者の地域生活支援策の充実
(2)障害保健福祉施策の総合化
(3)障害特性に対する専門性の確保
(4)障害の重度・重複化、高齢化への対応
(5)障害者の権利擁護と参画

3.さらに、本合同企画分科会では、昨年に入り、同中間報告の主要論点のうち、障害保健福祉施策全般にわたる共通の重要事項、特に、平成9年11月以降、中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会で議論されてきた社会福祉基礎構造改革に関する事項のうち、障害保健福祉施策と深く関連する事項として、新しいサービス利用制度の在り方、障害保健福祉サービス水準の確保、利用者の保護等を中心に審議を行ってきた。
その際、中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会による、昨年6月17日の「社会福祉基礎構造改革について(中間まとめ)」と昨年12月8日の「社会福祉基礎構造改革を進めるに当たって(追加意見)」で提言されている、改革の理念及び具体的な改革の方向を尊重しながら、本分科会中間報告で示した障害保健福祉施策の基本的理念の下、同報告の基本的な施策の方向に沿って、新しいサービス利用制度の在り方、障害保健福祉サービス水準の確保、利用者の保護等について具体的な改革の内容を検討した。

(注) 改革の理念: (1)個人の選択を尊重した制度の確立
(2)質の高い福祉サービスの拡充
(3)個人の自立した生活を総合的に支援するための地域福祉の充実
具体的な改革の方向: (1)利用者の立場に立った社会福祉制度の構築
(2)サービスの質の向上
(3)社会福祉事業の多様化、活性化
(4)地域福祉の充実

4.また、身体障害者福祉施策関係で重点的に議論すべき事項については身体障害者福祉審議会に、障害児福祉施策、知的障害者福祉施策関係で重点的に議論すべき事項については中央児童福祉審議会障害福祉部会に、精神保健福祉施策関係で重点的に議論すべき事項については公衆衛生審議会精神保健福祉部会に審議を委ね、それぞれの審議会において、地域における自立した生活の実現を支援するという視点等を中心に、審議が行われてきたところである。

5.本合同企画分科会では、このような経緯をたどりつつ、鋭意検討を重ねてきたが、今般、新しいサービス利用制度の在り方、障害保健福祉サービス水準の確保、利用者の保護等について、これまでの審議を集約し、とりまとめたので、意見具申する。

6.本意見具申はもとより、本分科会中間報告と、本意見具申と同じ時期に身体障害者福祉審議会、中央児童福祉審議会障害福祉部会及び公衆衛生審議会精神保健福祉部会(以下「障害者関係3審議会」という。)から提言される意見具申に基づき、関係制度について所要の見直しが速やかに進められることを切に望むものである。


第2 利用者本位の考え方に立つ新しいサービス利用制度の在り方

福祉サービスの新しい利用制度(以下「新しいサービス利用制度」という。)の在り方については、本分科会中間報告では、「利用者の選択を尊重して、利用者本位のサービスが提供できるような仕組みの在り方を検討すべきである」と提言している。また、社会福祉基礎構造改革の重要な柱の一つとして、福祉サービスの利用制度化、すなわち、福祉サービスについて利用者が事業者と対等な関係に基づきサービスを選択する利用制度の構築が議論されてきたことから、本合同企画分科会においても、昨年に入り、新しいサービス利用制度の在り方について議論を行ってきた。その検討結果は次のとおりである。

1.基本的考え方

(1) ノーマライゼーション及び自己決定の理念の実現のために、利用者の選択権を保障し、また、利用者とサービス提供者との間の直接で対等な関係を確立するなど個人としての尊厳を重視した、21世紀にふさわしい利用者本位の考え方に立つ新しいサービス利用制度とする必要がある。

(2) 新しいサービス利用制度の検討に当たっては、

(1)福祉サービスの供給基盤の整備を推進すること
(2)公的責任や公費負担を後退させないこと
(3)利用者の権利擁護システムを整備すること
に十分留意する必要がある。

(3) さらに、新しいサービス利用制度においては、利用者が福祉サービスの種類や福祉サービスを提供する事業者・施設(以下「サービス提供者」という。)を選択することができるようにする必要があり、こうした利用者による選択を通じ、サービス提供者間において競争が行われ、サービス内容の向上や事業の効率化にも資することが期待されるが、利用者の選択を担保し、これらの効果を実現するためには、

(1)障害者プランにより福祉サービスの供給基盤の整備が行われているが、その着実な推進を含め、福祉サービスの十分な供給を確保すること
(2)サービス内容やサービス提供者に関する情報が利用者に適切に提供、開示されるとともに、事業運営の透明性を確保するために必要な情報が適切に公開される仕組みとすること
(3)第三者によるサービスの質の評価や苦情解決、行政による効率的・効果的な監査が実施されるようにすること
(4)重度重複の障害者など福祉サービスのニーズの高い障害者が必要な福祉サービスを利用できないといったこととならない仕組みとすること
(5)障害者の自己決定を尊重し、福祉サービスの利用を支援する仕組みを導入すること。
こうした観点から、障害者が日常生活を送っていく上での様々な需要を把握し、保健・福祉・医療サービスを総合的・効率的に提供できるよう、障害者ケアマネジメントの導入を検討すること、また、現在法務省において検討中の「成年後見制度」の早期導入が図られるとともに、福祉の分野においてその利用を援助する仕組みを整備すること
などが必要である。

(4) さらに、新しいサービス利用制度の検討に際しては、

(1)現行の障害保健福祉施策を一律に論じるのではなく、個々の障害者の特性や福祉サービスの特性を踏まえ、また、利用者の需要の多様性に対応するため福祉サービスが一層多様化していくことを勘案する必要があるとともに、
(2)利用者の費用負担については、障害者が福祉サービスを利用するという観点や福祉サービスを利用する者と利用しない者との間の公平という観点に立ち、現行の負担能力に応じた負担方式から、同一のサービスには原則として同一の負担とする応益負担の仕組みに変更することも含め、障害者の所得の保障等も勘案しつつ、具体的に検討を進めていく必要がある。

2.新しいサービス利用制度の条件整備

新しいサービス利用制度への移行に際しては、1.基本的考え方で示している「利用者の選択」と「直接で対等な関係の確立」を保障するため、また、新しいサービス利用制度が円滑に機能するため、次のような条件整備を総合的に図る必要がある。

(1) 「選択」を保障するための条件整備

(1)総合相談の充実

しろまる障害者の自己決定を尊重し、地域で生活する障害者を支援する上で、相談事業が果たす役割は重要である。このため、行政庁による相談事業を推進するほか、障害者地域生活等支援事業(例えば、身体障害者の場合、在宅サービスの利用援助、社会資源を活用するための支援、社会生活力を高めるための支援、当事者相談、専門機関の紹介)を制度化するなど、地域で生活する障害者のための総合的な相談体制を充実する必要がある。

(2)行政庁による情報提供

しろまる障害者が自ら福祉サービスを選択することができるようにし、在宅・施設サービスの円滑な利用を援助するため、行政庁は区域内の在宅・施設サービスの事業者、設備、運営状況等に関する情報提供を行わなければならないものとする必要がある。

(3)サービス提供者による情報提供・情報開示

しろまる障害者が自ら福祉サービスを選択することができるようにし、在宅・施設サービスの円滑な利用を援助するため、サービス提供者は、地域の住民に対し、提供するサービスの内容等に関し、必要な情報提供を行い、また、利用しようとする者に対し、サービスの内容等に関し、その理解が得られるよう説明を行わなければならないものとする必要がある。
しろまる福祉サービス提供において中心的な役割を果たしている社会福祉法人について、社会福祉基礎構造改革で提言されている、法人の業務・財務に関する情報、提供するサービスの内容等に関する情報の開示を義務づけるとともに、利用者がこれらの情報を入手しやすい体制の整備が必要である。また、社会福祉法人以外のサービス提供者においても、提供するサービスの内容に関する情報について、関連する制度との整合性を図りつつ、開示が行われる必要がある。

(4)サービス供給基盤の整備

しろまる利用者によるサービス提供者の選択やこれを通じた適正な競争を推進するためには、福祉サービスの供給体制の整備が必須である。このため、障害者プランに基づき、着実に供給体制を整備することが必要である。また、聴覚障害者などが必要な福祉サービスを利用できるようにするため、コミュニケーションの確保に関する施策を推進する必要がある。
しろまるさらに、すべての市町村における障害者計画の早期策定に向けて、国、都道府県による市町村への支援をさらに推進するとともに、社会福祉基礎構造改革で提言されている地域福祉計画との連携を図る必要がある。また、一市町村だけでは対応が困難な各種の福祉サービスが面的・計画的に整備されるよう、都道府県の支援の下、障害保健福祉圏域による広域的なサービス提供体制の整備を推進する必要がある。
しろまるまた、社会福祉基礎構造改革において提言されている、社会福祉事業の規模要件の緩和や社会福祉法人が社会福祉施設のための用地や建物を取得する場合等の規制の緩和により、社会福祉事業の推進や社会福祉施設の整備の促進を図る必要がある。

(5)地域生活を支援するための福祉サービスの拡充

しろまる地域における障害者の生活を支援するとともに、社会経済活動への参加を支援するため、障害者関係3審議会においては、次のような福祉サービスの新設・拡充が提言されているが、これらの施策の推進を図る必要がある。
・障害者ケアマネジメント
・障害者地域生活等支援事業
・身体障害者社会リハビリテーションサービス
・精神障害者ホームヘルプサービス
・視聴覚障害者情報提供施設の役割・機能の拡充 等

(6)自己決定を支援する仕組みの制度化

しろまる障害者が自ら選択し、必要とする福祉サービスを利用することが尊重されることは当然のことであるが、知的障害者や精神障害者のうち、自己の能力で様々な福祉サービスを適切に利用することができない者について、これらの者の権利を擁護し、地域において安心して生活を送れるよう支援する必要性が高まっている。このため、現在、法務省において「成年後見制度」の検討が進められ、平成12年度から実施する予定となっており、この実現が望まれる。
しろまるさらに、これらの者に対し、財産管理にとどまらず、福祉サービスの利用の援助等の日常生活上の支援を行うことが重要である。このため、障害者地域生活等支援事業をはじめとした各種の相談・援助事業の中で、これらの者に対する福祉サービスの利用援助を充実させていくとともに、社会福祉基礎構造改革において提言されている、これらの者に対する福祉サービスに関する情報提供・助言、手続きの援助等の福祉サービスの利用援助等を行う仕組みが必要である。

(2) 「直接で対等な関係」を保障するための条件整備

(1)サービス提供者に対する応諾義務の制度化

しろまるサービス提供者は、利用者からサービス利用の申込みがあったときは、空き定員がない、入院治療が必要などの正当な事由がない限り拒んではならないものとする必要があり、「3.新しい利用制度への移行」に掲げる具体的な仕組みのうち、利用料助成を採った場合には、「第3(4)指定事業者制度」の指定基準にこの旨を盛り込む必要がある。

(2)苦情解決体制の整備

しろまる利用者からの苦情の解決については、サービス提供者段階での取組みを促すとともに、サービス提供者段階で解決が困難な事項に関しては、社会福祉基礎構造改革で提言されているように、都道府県段階に設置する中立的な第三者機関において調整する仕組みが必要である。
しろまるこのほか、障害者地域生活等支援事業や「障害者110番」運営事業などの相談事業においても、利用者の人権擁護や利用者の直接で対等な関係を保障する観点から、利用者からの苦情に対応することができるよう、その充実を図ることが必要である。

(3)契約の適正化に関する方策

しろまる「3.新しいサービス利用制度への移行」に掲げる具体的な仕組みのうち、利用・運営費補助又は利用料助成を採った場合に、利用者の適切な選択を確保するとともに、利用者とサービス提供者との意思の疎通を前提とした利用者保護の観点から、標準的な契約例の策定、サービス提供者による事前説明、虚偽・誇大広告の禁止など、社会福祉基礎構造改革で提言されている契約の適正化を図るための方策が必要である。

3.新しいサービス利用制度への移行

(1) 在宅・施設サービスの利用の既存の仕組みとしては、

・措置制度
・利用制度(保育所、利用・運営費補助(例えば、身体障害者福祉ホーム、精神障害者社会復帰施設)
があるが、このほか、社会福祉基礎構造改革では、利用料助成が提言されている。

(2) これらの具体的な内容は、参考2のとおりであるが、それぞれの特色等は次のとおりである。

1)措置制度
・措置権者(市町村等)が、個々の障害者の障害の内容や程度等に応じ、どのような種類の福祉施設へ入所させ、又は、どのように在宅サービスを提供するかを判断し、決定する。
・措置権者は、当該措置に要する費用をサービス提供者に支弁し、本人及び扶養義務者の負担能力に応じて、費用徴収を行う。
・身体障害者、知的障害者及び障害児の在宅・施設サービスのほとんどは措置制度によっている。


2)利用制度
(1)保育所
・平成9年の児童福祉法の一部改正により、平成10年4月1日から施行された保育所の利用手続きは以下のとおりである。
・利用者は、入所を希望する保育所を記載して、市町村に保育の申込みを行い、市町村は、保育の必要性を確認し、保育所への入所を承諾する。利用者は、市町村の承諾に基づいて利用する。
・市町村は、保育の実施に要する費用を保育所に支弁し、本人及び扶養義務者から、費用を全額徴収した場合に、家計に与える影響を考慮して、費用徴収を行う。
・利用者の選択を容易にするため、市町村、保育所による情報提供を行う。

(2)利用・運営費補助
・利用者は、自らサービス提供者と契約し、福祉サービスを利用し、サービス提供者に対し、利用料を支払う。
行政庁は、サービス提供者に対し、事業運営費の一部(職員の人件費等)を補助する。
・利用者の選択を容易にするため、行政庁、サービス提供者による情報提供が望ましい。
・利用者のサービス利用を支援するため、行政庁は、利用者の求めに応じ、サービス利用について、あっせん・調整を行うとともに、サービス提供者に対し、当該利用者の利用の要請を行う必要がある。
・福祉ホーム、福祉工場や精神障害者社会復帰施設は利用・運営費補助によっている。

(3)利用料助成
・利用者は、自らサービス提供者と契約し、福祉サービスを利用する。
利用者は、サービス提供者に対し、利用料を支払うこととなるが、当該サービス利用に要する費用について公費助成を受けることができる。その手続きは、利用者は、行政庁に対し、あらかじめ当該サービスの利用に要する費用について助成申請を行い、行政庁は、当該申請について、公費助成の対象者であることを確認(助成決定)し、助成する。
なお、この場合、サービス提供者による代理受領(サービス提供者が利用者に代わり行政庁から支払いを受けとる)により、現物給付化する。
・利用者の選択を容易にするため、行政庁、サービス提供者による情報提供が必要である。
・利用者のサービス利用を支援するため、行政庁は、利用者の求めに応じ、サービス利用について、あっせん・調整を行うとともに、サービス提供者に対し、当該利用者の利用の要請を行う必要がある。

なお、社会参加促進事業については、地方公共団体により、手話奉仕員派遣事業、生活訓練事業等の各種の事業が、予算補助のメニュー事業として行われている。それぞれの事業の性格等に応じ、措置制度や利用・運営費補助等に類似した仕組みにより実施されている。

(3) 今後のサービス利用制度として以上のいずれが適切かについては、1.の基本的考え方で指摘したように、障害保健福祉施策を一律に論じるのではなく、利用者のニーズの多様性に対応するため様々な障害保健福祉サービスがあることを勘案しつつ、その機能や対象者などによる類型ごとに検討する必要がある。

(4) このため、

(1)在宅サービスと施設サービスの別、あるいは、介護サービス、リハビリテーションサービス、(手話通訳派遣などの)コミュニケーション支援サービス、就労支援(授産)サービスの別など、サービスの機能別
(2)身体障害者、知的障害者、障害児、精神障害者の施策の対象者別などの視点から検討を行ったところであるが、その結果は次のようにまとめることができる。

1)身体障害者福祉施策、知的障害者福祉施策については、1.の基本的考え方で示している「利用者の選択」と「直接で対等な関係の確立」という二つの理念を同時に実現するためには、2.の新しいサービス利用制度の条件整備を総合的に推進することを前提として、現行の措置制度によっている福祉サービスについては、利用料助成への移行が適当である。
なお、訓練の場という性格と就労の場という性格を併せ持つ授産施設について、作業収入を得るために利用者が施設に利用料を支払う仕組みにすることには疑義があるとの意見もあり、授産施設の在り方も含め、この点について検討する必要がある。

2)障害児施策についても、基本的な方向は、身体障害者福祉施策、知的障害者福祉施策と同様であるが、次のような点を勘案する必要があり、いわゆる児童の発達保障の観点からは、専門的な療育機能を担っている障害児施設の利用について、措置制度から保護者と施設との利用契約に任せる利用料助成に移行することには、さらに検討する必要がある。
(1)児童福祉法第2条において、国及び地方公共団体は保護者とともに児童の健全育成の責任を負う旨が定められていること
(2)専門的な療育を担う障害児施設の選択や入退所の時期等に関しては高度の専門的判断が必要とされること
(3)障害児施設への入所が適当と判断されるケースの中には被虐待や家庭の事情などから高度の要保護性を有するものも少なからずみられること

なお、障害児を対象とするホームヘルプサービスなどの在宅サービスについては、地域で家族とともに生活することを出来る限り支援する観点から、在宅サービスのニーズが生じたときに機動的にかつ円滑に利用できるようにする必要があり、利用料助成への移行が適当である。

3)実際に利用料助成に移行する場合には、利用料助成の申請者のニーズを把握し、助成の対象となるサービスの種類及び量を決定するため、障害者ケアマネジメントの効果的な活用を図るとともに、障害者の必要なサービスの利用に支障が生じることのないようにするため、
(1)市町村等は、利用者の求めに応じて、サービス利用について、あっせん・調整を行うとともに、サービス提供者に対して当該利用者の利用の要請を行うこと
(2)市町村等は、緊急の場合等利用料助成の仕組みの利用が機能しない場合には措置制度により必要な福祉サービスを提供することを制度上明記しておく必要がある。
また、利用料助成の水準については、現行の措置費の水準等を勘案しつつ、障害の程度に応じて適切な処遇が確保され、かつ、サービス提供者が一定水準以上の福祉サービスを安定的に提供することができるよう配慮する必要がある。

4)身体障害者福祉ホーム、精神障害者社会復帰施設など利用・運営費補助によっているものについては、施設の利用のための行政庁の決定を要しないという点で利用者にとって自由度の高い利用の仕組みであり、実際の運用状況をみても、施設の利用に特に支障が生じていない。一方、利用料助成にすると、施設の利用に際して、助成決定を受けることが必要となり、かえって利用しにくくなるおそれがある。したがって、現行の利用・運営費補助を維持することが適当である。
なお、この利用・運営費補助による施設についても、2.の条件整備の総合的な推進が必要なことはいうまでもない。また、より円滑な利用ができるようにするため、運営費補助の水準を充実する必要がある。
(5) 新しいサービス利用制度に移行する場合においては、公的責任・公費負担の後退があってはならないことは、1.基本的考え方で指摘したとおりであるが、この場合、公的責任とは、次の3点をいうものであり、国、都道府県、市町村がそれぞれの役割に応じ、必要な施策を推進する必要がある。
(1)障害者が必要な福祉サービスを利用することができるよう、サービス供給体制の整備を推進すること
(2)障害者が、必要な福祉サービスを利用することができるよう、公費助成を行うこと
(3)利用者の立場に立って、福祉サービスを必要とする者が円滑に利用することができるよう、情報提供、コミュニケーションの支援、利用のあっせん・調整及び要請、利用者の保護、サービス水準の確保等の利用者支援策を講ずること

(6) なお、現行の福祉サービスについては、新しい利用制度に移行するとしても、その利用対象者の範囲は、現行の利用対象者の範囲を基本とし、必要に応じ、その明確化を図る必要がある。

4.利用者負担の在り方

(1) 現行の措置制度による施設サービスの利用者負担については、昭和60年の身体障害者福祉審議会による「身体障害者更生援護施設に係る費用徴収基準の在り方について」や昭和62年の福祉関係三審議会合同企画分科会による「社会福祉施設(入所施設)における費用徴収基準の当面の在り方について」において、限られた資源(人的・物的資源、財源)の効率的、合理的な配分、在宅の者との負担の均衡、入所者の自立意識の醸成という視点から、負担能力に応じた相当の負担を求めるという基本的考え方が提言され、これに基づき、次のような費用徴収が行われている。
・市町村等は、入所者及び扶養義務者の負担能力に応じて費用徴収を実施。ただし、施設の種類ごとに、その上限額が設定されているものがある。
また、ホームヘルプサービスなど法定されている在宅サービスについては、次のような利用者負担の基準が定められている。

(1)ホームヘルプサービス
市町村は、生計中心者の所得税課税額に応じて費用を徴収。(平成10年度:1時間当たり0〜940円、7区分)
(2)デイサービス(身体障害者福祉の場合)
利用者は無料又は低額な料金を負担。ただし、入浴サービス、給食サービス等について、利用者は原材料費の実費を負担。
(3)ショートステイサービス(身体障害者福祉の場合)
利用者は飲食物費相当額を負担。(平成10年度:1日当たり1,530円)
(4)グループホーム
利用者は、家賃、飲食物費、光熱水費及びその他共通経費を負担。

(2) 新しいサービス利用制度に移行する場合に、利用者の負担をどのようにするのかについても検討する必要があるが、その際には次の点に留意する必要がある。

(1)所得にかかわらず、必要なときに必要なサービスを利用できるようにすること
(2)全体として、これまでの公費負担の水準を維持すること

(3) 具体的に考えられる方法としては、

1)応能負担の考え方に基づき、本人の所得等に応じた利用者負担額とする
2)応益負担の考え方に基づき、サービスの内容等に応じた定率の利用者負担とし、低所得者については、減免措置を講じる
の2方法が考えられ、これらの方法について、検討を行った。

(4) その結果、利用料助成に移行する場合の利用者負担について、利用する者と利用しない者との公平の観点から、応益負担的な考え方の導入を求める意見もあったが、新しい利用制度への円滑な移行、障害者の所得の状況等を勘案し、引き続き(1)で記述した現行の利用者負担の考え方に沿って、具体的な利用者負担を設定していくことが適当である。
その際、デイサービスとショートステイサービスについては、ホームヘルプサービスの利用者負担との均衡を図る観点から、当該サービス部分について応能負担の考え方を導入することについても検討する必要がある。

(5) また、措置制度による身体障害者及び知的障害者の施設入所については、現在、施設入所時に本人と同一世帯、同一生計にあった配偶者及び子(入所者が20歳未満の場合には配偶者、父母及び子)に対してその負担能力に応じて費用徴収を行っているが、これらが利用料助成に移行する場合にあっても、現行の利用者負担の考え方に沿って具体的な利用者負担を設定していくことから、現行同様に本人と上記のような配偶者及び子の負担能力に応じて利用者負担を設定することとなる。この場合、本人のみの収入を基準とした利用者負担に改めることが適当との意見があるが、配偶者等に多額の収入がある場合との均衡等の問題があり、引き続き慎重に検討する必要がある。
なお、20歳以上の身体障害者又は知的障害者に対するホームヘルプサービスの利用者負担については、生計中心者の範囲を検討する必要がある。


第3 サービス水準の確保

(1) 社会福祉事業及び施設に関する運営基準の見直し等

しろまるサービス提供者が、利用者の立場に立って、質の高い福祉サービスを提供するため、社会福祉基礎構造改革で提言されている、サービス提供に関する基本的な考え方の明確化や、サービス提供に関する基準を具体的に設定することが必要である。また、福祉サービスの質の向上のため、施設・設備や職員の配置の基準、職員の資質向上のための研修体制の充実等について速やかに検討する必要がある。

(2) サービス内容の評価に関する第三者評価

しろまる社会福祉基礎構造改革で提言されている、第三者評価機関による福祉サービス内容の評価のための仕組みを検討し、サービス提供者による改善を促進する必要がある。その際、障害者の特性や障害者施策の特性に十分に対応した基準を作成する必要がある。

(3) 行政による監査指導の重点化

しろまる社会福祉構造改革で提言されているとおり、利用者の利益を保護するとともに、適切なサービス提供の確保を図るため、行政による監査指導を重点化する必要がある。
また、新しいサービス利用制度への移行に併せ、情報開示内容の確認、苦情解決体制の状況の確認などの項目を監査項目に加えることが必要である。さらに、利用料助成の場合には、指定事業者による利用料助成の代理受領の状況、応諾義務の遵守の状況なども監査項目に加えることが必要である。

(4) 指定事業者制度

しろまる利用料助成にした場合には、福祉サービスの質を確保するため、利用料助成の対象となる福祉サービスに関するサービス提供者の指定制度(指定事業者制度)を創設する必要がある。
具体的には、サービス提供者の施設・設備、職員、運営・管理等に関する指定基準を作成し、都道府県知事は、当該指定基準を満たすサービス提供者を指定する。


第4 利用者の保護

しろまる利用者の保護を図るため、以下の施策を総合的に推進する必要がある。
・行政庁による区域内のサービス提供者等に関する情報の提供
(第2の2(1) 「選択」を保障するための条件整備(2))
・サービス提供者による提供するサービスの内容等に関する情報の提供
(第2の2(1) 「選択」を保障するための条件整備(3))
・社会福祉法人による法人の財務、提供するサービスの内容等に関する情報の開示
(第2の2(1) 「選択」を保障するための条件整備(3))
・自己決定を支援する仕組みの制度化
(第2の2(1) 「選択」を保障するための条件整備(6))
・苦情解決体制の整備
(第2の2(2) 「直接で対等な関係」を保障するための条件整備(3))


第5 障害者の参画

しろまる中間報告で提言したとおり、今後、障害者の当事者活動の強化を支援するとともに、障害者本人、障害者関係団体の代表者等の障害者施策推進協議会や関係審議会への積極的な参画の推進、行政との意見交換の実施等を通じて、障害者の意見が施策に反映されるように努めるべきである。

しろまるさらに、障害者地域生活等支援事業における当事者相談や身体障害者相談員制度はもとより、苦情解決、権利擁護など利用者の保護を図るための事業、サービス内容の評価基準の作成、障害者計画の立案、障害者ケアマネジメントなどに障害者が広く参画することができるよう支援することが重要である。


第6 社会福祉事業への位置づけ

1.地域で生活する障害者の自立を支援し、社会経済活動への参加を支援するため、障害者関係3審議会でその推進が提言された次の事業について、適正な運営を確保するとともに、その普及・促進を図るため、それぞれの事業の性格等を勘案しつつ、社会福祉事業への位置づけについて検討していく必要がある。
・障害者地域生活等支援事業
・障害者の情報伝達・意思伝達を支援する事業
・身体障害者社会リハビリテーション事業
・知的障害者デイサービス事業
・精神障害者ホームヘルプ事業
・精神障害者ショートステイ事業
・盲導犬育成事業等

2.また、小規模作業所については、法定外の仕組みとして、事業主体、事業内容等多様な形態をとりながら、障害種別に関わりなく受け入れる等創意工夫による柔軟な事業を実施している。このうち、地域での事業実績等を考慮し、事業の適正な運営が期待される場合にあっては、授産施設、デイサービス事業等の規模要件の引き下げ等を行い、法定事業・施設への移行を促進する必要がある。


第7 終わりに

1.この意見具申で提言した事項については、利用者の立場を重視して、その具体化の検討を進める必要がある。また、具体的な制度改正の検討に当たっては、障害者団体などの関係団体の意見・要望を十分に聴取する必要がある。

2.サービス水準の確保と利用者の保護については、いずれの利用の仕組みによる場合にも重要な課題であり、速やかな実現を図る必要がある。

3.制度改正により、新しいサービス利用制度へ移行するに際しては、障害者ケアマネジメント、利用者の保護を図るための事業などの体制を整備するために、十分な準備期間を設ける必要がある。

4.障害者の所得保障については、年金制度における対応も勘案しつつ、税を財源とする障害者施策としてどのように取り組むべきか、引き続き幅広い観点から検討する必要がある。

5.このほか、障害者の保健福祉サービスに関する総合法制、障害認定・範囲、自閉症や高次脳機能障害への対応、障害者福祉制度における公的な後見人など、今回、十分な審議がなされなかった事項についても、今後の検討課題である。

(参考1)当合同企画分科会における開催状況(中間報告以降)

平成10年3月11日 しろまる社会福祉基礎構造改革について
4月23日 しろまる社会福祉基礎構造改革について
しろまる成年後見制度について
5月22日 しろまる社会福祉基礎構造改革について
しろまる障害保健福祉サービスの提供体制について
6月29日 しろまる社会福祉基礎構造改革について
7月28日 しろまる社会福祉基礎構造改革について
しろまる各審議会の審議状況について
10月5日 しろまる社会福祉基礎構造改革に係るこれまでの審議状況の整理について
しろまる新しいサービス利用の仕組みについて
10月26日 しろまる新しいサービス利用の仕組みについて
11月16日 しろまる新しいサービス利用の仕組みについて
(1) サービス利用対象者の範囲について
(2) 利用手続きについて
(3) 利用者負担の在り方について
(4) 社会リハビリテーションサービスについて
12月14日 しろまる社会福祉基礎構造改革について
しろまる新しいサービス利用制度について
平成11年1月11日 しろまる意見具申(案)について
1月18日 しろまる意見具申(案)について
(参考2)具体的な利用の仕組み

I.措置制度の場合

1)利用の手続き

・措置権者(市町村等)が、個々の障害者の障害の内容や程度等に応じ、どのような種類の福祉施設へ入所させ、又は、どのように在宅サービスを提供するかを判断し、決定する。

2)公費の支弁

・措置権者は、当該措置に要する費用をサービス提供者に支弁する。

3)利用者負担

・措置権者は、本人及び扶養義務者の負担能力に応じて、費用徴収を行う。

(注1)サービス利用希望者の申請、希望するサービス提供者の選択、サービス提供者との直接で対等な関係が制度上位置付けられていない。
(注2)援護の必要性の高い者から優先的に入所させることができる。
(注3)行政庁が、サービス内容を決定し、提供することにより、障害者本人やその保護者の理解が不十分な場合も、障害者本人の援護・更生を確保することができる。

II.利用制度の場合

(1) 保育所

1)利用の手続き

(情報提供・相談)

・保育所の利用を希望する者は、市町村の相談窓口等で、その区域内における保育所の設置者、設備・運営の状況等についての情報提供を受ける。

(保育の申込み)

・利用者は、入所を希望する保育所を記載して、市町村に保育の申込みを行う。

(保育の必要性の判定・保育所への入所の承諾)

・市町村は、保育の必要性を確認し、保育所への入所を承諾する。(定員超の申込等の場合には、公正な方法で選考)
・希望する保育所へ入所できない場合、市町村は、その他の適切な保護を行う。

(利用)

・利用者は、市町村との契約により、保育所を利用する。

2)公費の支弁

・市町村は、保育の実施に要する費用を、保育所に支払う。

3)利用者負担

・市町村は、本人及び扶養義務者から、費用を全額徴収した場合に、家計に与える影響を考慮して、費用徴収を行う。

(注)利用者の選択を容易にするため、市町村、保育所による情報提供を行う。


(2) 利用・運営費補助

1)利用の手続き

・利用者は、自らサービス提供者と契約し、福祉サービスを利用する。
この場合、行政庁は、利用者から求めがあったときは、利用者が必要とする福祉サービスを利用することができるよう、あっせん・調整を行うとともに、必要に応じ、サービス提供者に対し、サービス利用の要請を行う。

2)公費の支弁

・行政庁は、サービス提供者に対し、事業運営費の一部を補助する。

3)利用者負担

・利用者は、サービス提供者に対し、利用料(利用者負担分)を支払う。

(注1)利用者の選択を容易にするため、行政庁、サービス提供者による情報提供が望ましい。
(注2)利用・運営費補助により福祉サービスを提供している精神障害者社会復帰施設・事業では、保健所長による、サービス利用のあっせん・調整と利用の要請に関する規定が設けられている。


(3) 利用料助成

1)利用の手続き

(情報提供・相談)

・福祉サービスの利用を希望する者は、行政庁の総合相談窓口で、その区域内におけるサービス提供者、福祉サービスの内容、設備・運営の状況等についての情報提供を受ける。
・行政庁は、相談を通じ、その者のおおよそのニーズを把握し、利用可能な福祉サービスに関する情報を提供する。

(サービス利用の申込み)

・利用者は、利用を希望するサービス提供者に対し、サービス利用の申込みを行う。
・行政庁は、利用者の求めに応じ、福祉サービスの利用についてのあっせん
・調整を行うとともに、サービス提供者に対し、利用の要請を行う。

(利用)

・利用者は、利用の申込みを行ったサービス提供者との契約により、当該サービスを利用する。

2)公費の支弁

(助成申請)

・サービス利用について、公費助成を受けることを希望する者は、公費助成を希望する福祉サービスについて、行政庁に助成申請を行う。

(助成決定)

・行政庁は、申請に係る福祉サービスについて、公費助成の対象者であることの決定(助成決定)を行う。
・施設サービスの助成決定に当たっては、更生相談所等が判定を行う。

(助成)

・助成決定を受けた利用者が、サービス提供者より福祉サービスを利用したときは、行政庁は、利用者に対して利用者負担部分以外の費用を助成決定に基づき助成する。この場合、サービス提供者による代理受領を認めることにより、行政庁は、サービス提供者に対し、当該費用助成額を支払う。

3)利用者負担

・利用者は、サービス提供者に対し、利用料(利用者負担分)を支払う。

4)その他

(障害者ケアマネジメントの実施)

・行政庁は、福祉サービスの利用を希望する者に対し、利用者のニーズを総合的に把握し、個々人にふさわしいサービスが提供できるよう援助する障害者ケアマネジメントを受けることを薦める。この際、障害者ケアマネジメントでは、サービス利用計画を作成し、福祉サービスの種類とその量等を明らかにすることを説明する。
・行政庁は、障害者ケアマネジメントを希望する利用者に対し、障害者ケアマネジメントを行う。

(サービス提供者による代理受領)

・利用料助成の支払い方法については、その考え方としては、償還払い(利用者がサービス提供者・施設に費用の全額をいったん支払い、あとで行政庁から利用者負担分を除く費用助成を受ける)となるが、利用者やサービス提供者の便宜を図るため、代理受領(サービス提供者が利用者に代わり行政庁から支払いを受けとる)により、現物給付化する。

(注1)障害者ケアマネジメントとは

(1)障害者ケアマネジメントの内容
・利用者のニーズを把握し、利用者が望んでいる暮らしを明らかにし、利用できるサービスを検討
・サービス利用計画の作成(利用料助成の対象となる福祉サービスについては、その種類と量を記載)。サービス利用計画は、介護ニーズのみならず、利用者の自立や社会参加に関わるニーズを広く含めて作成する。
・サービス利用計画について、利用者の合意を得たのち、サービス利用計画に基づき、サービス提供者等との連絡調整を行う。
(2)障害者ケアマネジメントの実施主体
・行政庁。なお、専門的事項やサービス提供者との連絡調整等については、行政庁は他に委託することができる。
・施設サービスの利用については、必要に応じ、更生相談所等が専門的支援を行う。

(注2)利用者の選択を容易にするため、行政庁、サービス提供者による情報提供が必要。

(注3)利用者のサービス利用を支援するため、行政庁は、利用者の求めに応じ、サービス利用について、あっせん・調整を行うとともに、サービス提供者に対し、当該利用者の利用の要請を行う必要がある。

(注4)助成決定は、利用者からの助成申請に対する行政処分。助成申請の却下決定、助成の取消、給付内容については、行政不服審査法に基づき、不服申立を行うことができる。


合同企画分科会委員名簿

氏 名 職 名
(身体障害者福祉審議会)
安藤 豊喜 全日本聾唖連盟理事長
岸波 正 日本盲人会連合総合企画審議委員会委員長
京極 高宣 日本社会事業大学学長
斎藤 公生 全国社会就労センター協議会会長
初山 泰弘 国立身体障害者リハビリテーションセンター
藤井 博 日本労働組合総連合会自治労健康福祉局次長
前田 保 日本身体障害者団体連合会理事
三浦 文夫 元日本社会事業大学特任教授
(中央児童福祉審議会障害福祉部会)
有馬 正高 東京都立東大和療育センタ−院長
石井 哲夫 こどもの生活研究所所長
江草 安彦 旭川荘理事長
北沢 清司 東海大学健康科学部教授
君塚 葵 全国肢体不自由児施設運営協議会理事
田山 輝明 早稲田大学教授
長谷川泰造 長谷川総合法律事務所所長
八谷 祐司 日本知的障害者愛護協会会長
(公衆衛生審議会精神保健福祉部会)
大熊 由紀子 朝日新聞社論説委員
岡上 和雄 元中央大学法学部教授
笠原 嘉 元藤田保健衛生大学医学部教授
古谷 章惠 日本看護協会保健婦職能理事
牧 武 日本精神病院協会副会長
町野 朔 上智大学法学部教授
宮坂 雄平 日本医師会常任理事
谷中 輝雄 全国精神障害者社会復帰施設協会会長


照会先 
障害保健福祉部企画課 内線3014


今後の身体障害者施策の在り方について

(平成11年1月25日)

身体障害者福祉審議会

目次

1.はじめに

2.相談・支援体制の強化

3.在宅福祉サービスの充実

4.社会参加の促進

5.身体障害者施設体系の在り方

6.介護保険制度との関係

7.関連施策との連携

8.終わりに


1.はじめに

・障害保健福祉施策全般について、総合的に見直しを行うため、平成8年10月に、身体障害者福祉審議会、中央児童福祉審議会障害福祉部会、公衆衛生審議会精神保健福祉部会に、それぞれ企画分科会が設置され、同年11月から合同で審議を開始した。

・この障害者関係三審議会合同企画分科会では、平成9年12月に、「今後の障害保健福祉施策の在り方について(中間報告)」(以下「分科会中間報告」という。)として、障害保健福祉施策全般について、基本的理念、基本的な施策の方向及び具体的な施策の方向を提言した。

(注) 基本的理念: (1)障害者の自立と社会経済活動への参画の支援
(2)主体性・選択性の尊重
(3)地域での支え合い
基本的な施策の方向: (1)障害者の地域生活支援策の充実
(2)障害保健福祉施策の総合化
(3)障害特性に対する専門性の確保
(4)四障害の重度・重複化、高齢化への対応
(5)障害者の権利擁護と参画

・そこで、同合同企画分科会では、昨年に入り、分科会中間報告の主要論点のうち、障害保健福祉施策全般にわたる共通の重要事項、特に、平成9年11月以降、中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会で議論されてきた社会福祉基礎構造改革に関する事項のうち、障害保健福祉施策と深く関連する事項として、新しいサービス利用制度の在り方、障害保健福祉サービス水準の確保、利用者の保護等を中心に審議を行ってきた。

・一方、本身体障害者福祉審議会では、分科会中間報告の主要論点のうち、身体障害者福祉施策関係で重点的に議論すべき事項として、相談・支援体制の強化、在宅福祉サービスの充実、社会参加の促進、身体障害者施設体系の在り方、介護保険制度との関係等について、分科会中間報告においてうたわれている以下のような基本的理念を基に、審議を行ってきたところである。

(1) 障害者の自立と社会経済活動への参画の支援

障害者施策の基本は、障害者が生涯のあらゆる段階において能力を最大限発揮し、その人らしい自立した生活を目指すことを支援すること及び障害の有無に関わらず誰もが社会の一員としてあらゆる活動に参加することができる社会を築くことであること。

(2) 主体性・選択性の尊重

障害者が保護の対象としてではなく、一人の生活者として自らの生活を自らの意思で選択・決定し、築いていきたいという考え方を尊重し、諸施策の在り方を考えなければならないこと。

(3) 地域での支え合い

障害者に対する支援は、総合的な視点から、各種の行政サービスや機会の提供、障害者に配慮したまちづくりなどの地域環境の整備を行うことがまず必要であり、また、心の通いあう地域社会の支援や障害者同士の支え合い、ボランティア活動などの幅広い支援活動が重要であること。

・本身体障害者福祉審議会では、昨年4月以降、このような経緯をたどりつつ、鋭意検討を重ねてきたが、今般、身体障害者の地域における自立した生活を支援するという視点を中心に、今後講ずべき措置等について意見をとりまとめたので、ここに意見具申する。

・本意見具申はもとより、分科会中間報告と、本意見具申と同じ時期に障害者関係三審議会合同企画分科会から提言される意見具申に基づき、身体障害者施策について所要の見直しが速やかに進められることを切に望むものである。


2.相談・支援体制の強化

・ 障害者が自立し社会に参加していくためには、様々な支援が必要であり、地域で幅広く相談できる総合的な窓口が必要である。

・このため、在宅の障害者等に対し、在宅福祉サービスの利用援助、社会資源の活用や社会生活力を高めるための支援、当事者相談等を行う市町村障害者生活支援事業を制度上明確に位置づけ、他の相談・支援機関等とのネットワーク化を図るとともに、身体障害者更生相談所、福祉事務所等の相談・支援体制を強化する必要がある。

・相談・支援体制の強化に当たっては、専門性を有した相談担当者を育成することが必要である。このため、指導者養成を推進するとともに、相談員、指導員に対する研修、指導等を充実する必要がある。

・ さらに、身体障害者相談員や市町村障害者生活支援事業の当事者相談員等、障害者自身が相談業務に従事していくことも重要である。

・また、総合相談窓口で相談して解決に結びつけていくには、利用できるサービスの充実を図る必要がある。


3.在宅福祉サービスの充実

(1)社会リハビリテーションサービス

・歩行訓練、点字・手話等のコミュニケーション手段の獲得など社会生活上必要な訓練等を行う社会リハビリテーションサービスが、障害者の自立と社会参加を進める上で、大きな役割を担っている。

・これらは、社会参加促進事業として都道府県等のメニュー事業として行われてきたが、今後は、社会リハビリテーションサービスとして制度化し、その普及、推進を図る必要がある。

・制度化に当たっては、障害者が身近な地域で利用できるようにするという観点から、市町村が自ら又は障害者団体等に委託して事業を実施することとし、総合リハビリテーションセンター、身体障害者更生施設、福祉系大学等が専門的知識や技能等に関する必要な支援を行うような仕組みとすべきである。

・社会リハビリテーションサービスの具体的な実施内容については、障害種別に配慮しながら生活技術訓練及び社会生活力を高めるための支援を中心とするとともに、その実施場所については、身体障害者福祉センター、デイサービスセンター、視聴覚障害者情報提供施設等を有効に活用することを検討していく必要がある。

(2)ケアマネジメント

・身体障害者が、地域において社会活動に参加しながら、豊かな生活を実現していくためには、身体障害者のニーズを把握し、その障害の程度に応じてサービスを総合的に利用することを支援するケアマネジメントが重要である。

・このため、これまで身体障害者介護等支援サービス指針(ケアガイドライン)、ケアマネージャー養成指導者の研修カリキュラムを作成するとともに、現在「障害者介護等支援サービス体制整備検討委員会」において、ケアマネージャーの資格・要件、養成テキスト等について検討しているところであるが、今後、ケアマネージャーの養成を重点的に進めていくとともに、ケアマネジメントの効果的な活用を図る必要がある。

(3)グループホーム

・身体障害者の地域での生活を推進していくためには、地域での生活の場の確保が重要であることから、身体障害者施策においても、現在知的障害者及び精神障害者について制度化されているグループホーム事業を創設すべきとの意見がある。

・これについては、グループホームと身体障害者福祉ホームの役割を十分精査し、福祉ホームの設置要件の緩和等により一層その普及を図るとしても、なお、グループホーム事業が必要かどうかについて検討する必要がある。

(4)住宅改修

・段差の解消など住環境の改善は、身体障害者の自立と社会参加を促進する上での基本的条件の一つと考えられる。

・このため、住宅改修に関する制度について検討する必要がある。

・なお、検討に当たっては、対象となる住宅改修の範囲を個々の障害特性に合ったものとするとともに、生活福祉資金等他の制度との関係にも留意すべきである。

(5)デイサービスの機能追加と充実

・ 障害者の自立と社会参加を進める上で、地域におけるリハビリテーションを進めていくことは重要であり、そのためデイサービス事業は重要な役割を果たしている。

・これまで、デイサービス事業においては、通所により機能訓練が行われてきたが、今後は、訪問による機能訓練も行うことを検討するとともに、重度の身体障害者の活動の場の確保のため、一層の充実を図る必要がある。

・また、デイサービスの実施場所には、社会リハビリテーションサービスの実施の拠点としての役割を果たすことも期待される。


4.社会参加の促進

(1)社会参加促進事業の基本的な方向

・点字・声の広報等の発行や各種奉仕員等の養成・派遣など、きめ細かく対応してきた社会参加促進事業の役割は今後とも重要である。

・社会参加促進事業を展開するに当たっては、各種事業のガイドラインを示すことにより、利用者である障害者が事業を評価し選択できるようにする必要がある。

・また、より効果的な事業を実施するため、当事者団体の代表者等が参画する障害者社会参加推進センターを活用し、積極的に実施事業の評価や改善等を推進すべきである。

・今後、市町村障害者社会参加促進事業の普及状況を勘案して、都道府県レベルの事業と市町村レベルの事業の関係を体系的に構築する必要がある。

(2)情報利用の円滑化等

・近年の情報通信システムや関連機器の発達と普及は、目覚ましいものがあり、障害者の情報利用の円滑化に向けて大きな役割が期待される。

・録音図書のデジタル化技術や画像、音声、文字等を同時に提供できるマルチメディアの技術等を活用して障害者が容易に様々な情報を得られるよう工夫していくべきである。

・ 情報の取得に困難や制限を伴う視覚障害者や聴覚障害者等に対して、障害者専用ラジオ放送・テレビ放送番組の制作、情報通信ネットワークの活用等の手段により、必要な情報の提供や相談等を行う必要がある。

・このような事業を行うことができる体制を整備するとともに、視聴覚障害者情報提供施設がコミュニケーション支援を行うようその役割・機能を拡充する必要がある。また、障害者団体の参画を得て事業の普及、推進を図る必要がある。

・点字図書館と比べて整備が著しく遅れている聴覚障害者情報提供施設の整備を推進する必要がある。

・聴覚障害者等については意思伝達や情報確保の手段の保障が極めて重要であることから、手話通訳士(者)、要約筆記者等意思伝達を支援する人材の養成・派遣を制度上明確にすることなどを検討するとともに、これらの者の養成・派遣・設置、点字による文書や録音物の作成等の充実を図るほか、国民の理解と協力が得られるよう啓発を行う必要がある。

(3)障害者スポーツ及び文化・芸術活動の支援

・障害者が豊かな社会生活を送るためには、障害者スポーツや文化・芸術活動の果たす役割も大きい。

・障害者スポーツについては、重度障害者の参加にも配慮しつつ、生活の中で楽しむことができるスポーツ、さらには競技としてのスポーツを積極的に推進すべきである。

・このため、文部省との連携を図りつつ、障害者が利用しやすいスポーツ施設の整備、スポーツ大会への障害者の参加機会の確保、指導者の育成等を図るとともに、障害者スポーツ組織の育成、競技用具の研究開発・改良、競技選手の強化等を推進する必要がある。

・障害者の文化・芸術活動を振興するため、障害者自身の作品展や音楽会の開催など文化・芸術活動の場を充実するとともに、広く一般の文化・芸術活動の場に障害者が参加しやすいように環境の整備や必要な支援を促進すべきである。

(4)道路や建築物等の生活環境の整備改善

・障害者の自由な社会経済活動を可能とするためには、地域において障壁をなくす(バリアフリー化)等の障害者に配慮したまちづくりを推進する必要があり、そのためには、移動支援のための環境整備、公共・準公共建築物における障害者用トイレ・音声案内付きエレベーター等の整備、公衆ファックスの整備、住環境の整備等が不可欠である。

・これら生活環境の整備改善は、保健福祉分野のみで解決することは困難であり、様々な分野が協力して進めることが重要であることから、厚生省、建設省、運輸省等関係省庁が一層連携して推進する必要がある。

・また、生活環境の整備改善を推進するに当たっては、障害者を含めすべての者が使えるユニバーサルデザインの考え方の普及を図るべきである。

(5)盲導犬育成事業

・視覚障害者にとって盲導犬は、補装具と同様、身体機能を補完・代替するものであり、就労等社会参加のために有効なものである。

・しかし、盲導犬の稼働数は依然少なく、今後視覚障害者の需要に応えていくためには、盲導犬育成事業を制度上明確に位置づけ、事業の一層の普及、充実を図る必要がある。


5.身体障害者施設体系の在り方

(1)身体障害者更生施設

(1)相互利用の促進

・身体障害者更生施設については、現在、肢体不自由者、視覚障害者、聴覚・言語障害者、内部障害者、重度身体障害者の5つの施設類型に細分化されている。
・ しかし、聴覚・言語障害者更生施設のように数が少ないものについては、対象者が身近な地域で利用することには限界があり、また、肢体不自由者更生施設のように入所率が低いものについては、今後、単独で施設を運営していくことは容易ではないと考えられる。
・このため、今後は、身近な地域で利用することができるようにするため、身体障害者更生施設間の相互利用を一層進めていく必要がある。

(2)重度・重複障害者への対応

・重度身体障害者更生援護施設については、身体障害者療護施設の待機場所となっているなど、入所期間を超えて入所を継続している者が見られる一方、必ずしも入所対象者と言えない者が入所している例も見られる。
・このため、身体障害者療護施設の整備を促進するとともに、肢体不自由者更生施設など障害種別ごとの専門的機能を有する更生施設でも、障害者個人に着目した重度加算により、重度・重複障害者への対応は可能と考えられることから、障害種別ごとの更生施設で重度・重複障害者にも対応することとして重度身体障害者更生援護施設は廃止し、併せて重度・重複障害者の処遇の確保に必要な重度加算制度を創設することについて検討する必要がある。

(3) 早期退所の促進と通所事業の充実

・身体障害者の地域における生活を支援するためには、生活の場と 訓練の場の分離を進めていくべきである。
・このような観点から、更生施設についてできるだけ早期に退所できるようにするため、訓練内容の充実を図る一方、通所事業の普及充実など地域での生活を支援する施策も一層充実していく必要がある。

(2)身体障害者授産施設

(1)通所施設の整備促進

・ 障害者が普通に地域で生活できるようにするというノーマライゼーションの観点からは、できる限り、生活の場と活動の場とを分離すべきである。
・このため、今後、授産施設の整備に当たっては、一層の小規模化を図るとともに、原則として通所施設を整備していくようにする必要がある。

(2)通所授産施設の定員要件の緩和

・小規模化を推進する観点では、社会福祉基礎構造改革における社会福祉施設や社会福祉法人に係る規制の在り方に関する議論と整合性をとりつつ、通所授産施設の定員要件を緩和する必要がある。
・また、このような通所授産施設の定員要件の緩和により、小規模作業所の通所授産施設への移行による法定施設化が促進され、運営の安定化が図られると考えられる。

(3)身体障害者療護施設

(1) 入退所基準の明確化

・身体障害者療護施設に現に入所している者の中には、処遇の成果があがり通所が可能になった者など、身体障害者福祉法で規定されている「常時の介護を必要とするものを入所させて、治療及び養護を行う」という施設の目的に合致しない者も見られる。
・ また、身体障害者療護施設は、待機者が多い状況にある。
・ このため、施設整備の推進とあわせて入退所基準の明確化を図り、 施設の本来の目的に合致する者の入所を図る必要がある。

(2) 重度・重複障害者の受け入れの推進

・身体障害者療護施設は、常時の介護を必要とする身体障害者の治療及び養護を行う施設であり、その施設目的に照らせば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等による重度・重複障害者で入院治療は必要ないが日常生活において常時介護を必要とするものを積極的に受け入れることが望ましい。
・このため、そのような重度・重複障害者を受け入れる身体障害者療護施設について、人員配置等に配慮するとともに、特別に必要な施設・設備を整備するなどの施策を講ずる必要がある。

(3) 通所型の整備促進

・重度の身体障害者であっても、住み慣れた地域社会での生活を送りつつ、身体障害者療護施設を利用できるようにするためには、通所型の整備を促進すべきである。
・このため、現在、身体障害者療護施設が実施することとなっている身体障害者療護施設通所型について、他の身体障害者更生援護施設への併設や単独設置についても検討する必要がある。

(4)身体障害者福祉ホーム

・身体障害者の地域での生活を推進していくためには、就労や日中の 活動の場の確保とともに、地域での生活の場の確保が重要である。

・身体障害者の日常生活に適する居室等を低額な料金で提供するとともに、利用者の生活及び自立に関する相談、助言その他必要な援助を行う身体障害者福祉ホームは、こうした点で重要な役割を果たすものと考えられるが、今後その普及を促進するため、用地や建物の所有権の確保が困難な場合に、地上権や賃借権が登記されているなど安定的な運営が継続すると見込まれるときは、運営費補助の対象とすることを検討する必要がある。

・また、重度の身体障害者も利用することができるよう、福祉ホームでの生活を支援する在宅サービスの充実と併せて、入所要件を緩和することを検討する必要がある。

(5)視聴覚障害者情報提供施設

・視聴覚障害者情報提供施設は、点字刊行物・聴覚障害者用の録画物等を製作し利用に供する施設であるが、社会全体の情報化の進展に対応し、より利用しやすいものとすることが必要である。

・このため、上記4の(2)のとおり、視聴覚障害者情報提供施設の機能を拡充するとともに、これに併せ、設備や職員配置の基準についても見直しを検討する必要がある。

(6)相互利用の推進

・身体障害者の地域での生活を支援していくためには、身近な地域で 施設等の利用ができるようにしていくべきである。

・このため、現在身体障害者授産施設と知的障害者授産施設の間で相互利用が認められる等の措置が講じられているところであるが、今後とも、施設等の相互利用を一層進めていく必要がある。


6.介護保険制度との関係

(1)介護保険と遜色のないサービス水準の確保

・若年の身体障害者に対する介護サービスについては、介護保険法案に対する衆議院厚生委員会及び参議院国民福祉委員会の附帯決議でも指摘されているように高齢者に対する介護保険給付と遜色のないものとなるよう、障害者プランに基づきその拡充、充実を図る必要がある。

(2)介護保険制度の施行までの間に整理を要する事項

・介護保険制度の身体障害者への適用関係については、身体障害者も原則として介護保険の被保険者となり、介護保険と共通するホームヘルプ等の在宅サービスについては、65歳以降(介護保険制度の特定疾病による障害の場合は40歳以降)は、要介護認定又は要支援認定を受けられる場合は、介護保険のサービスと重ならないものを除き、介護保険のサービスに移行することが基本である。

・しかし、身体障害者施策と介護保険制度の仕組みの違いから、身体障害者施策から介護サービスの給付を受けてきた若年身体障害者が介護保険のサービスに移行する場合に、身体障害者施策と介護保険制度とで、ホームヘルプなど個別の在宅福祉サービスの提供量が減少したり、同一内容のサービスを受けても負担額が増加する等の場合がある。

・介護保険については、平成12年度の施行に向け、順次制度の細目が定められていくこととされており、上記の課題についてもこれと並行して検討を進めていく必要があるが、その際、介護保険からサービスの提供を受ける者との均衡にも配慮しつつ、利用できるサービスの水準や費用負担の水準が激変するなどにより介護保険への移行によって地域社会における身体障害者の自立した生活や社会参加のための活動が維持できなくなるといった事態が生じないよう留意する必要がある。


7.関連施策との連携

・ 身体障害者の就労については、福祉的就労から企業での雇用まで多様な形態があり、身体障害者個々人の状況に応じた適切な支援が肝要であることから、当審議会においても、今後、雇用政策と連携した就労支援策について検討していく必要がある。

・身体障害者が、障害の種類や程度にかかわらず、高等教育を受けることができるよう、施設・設備の改善やコミュニケーション支援等の一層の充実が図られることが望まれる。

・身体障害者の地域での生活を推進していくためには、所得保障の水準との関連も含め、生活の場の確保について、今後、幅広い観点からの議論が必要である。


8.終わりに

・ 21世紀を迎えようとする今日、障害者の自立と社会経済活動への主体的な参加を求める意識が強まる一方で、社会全体にあっても障害者が地域の中で生活することは自然なことという意識に変わりつつある。

・ このため、今後とも、そのような変化に即応した施策を一層推進する必要がある。


(参考)身体障害者福祉審議会の開催状況(中間報告以降)

(開催日) (主な審議事項)
平成10年
4月22日 ・ 介護保険制度と身体障害者施策との関係について
・ 福祉用具の在り方について
6月10日 ・ 介護保険制度と身体障害者施策との関係について
6月22日 ・ 介護保険制度と身体障害者施策との関係について
・ 社会参加促進事業の今後の在り方について
7月22日 ・ 社会参加促進事業の今後の在り方について
・ 身体障害者更生援護施設について
10月27日 ・ 在宅サービスについて
・ サービスの質の評価の在り方について
12月4日 ・ これまでの議論の整理について
平成11年
1月12日 ・ 意見具申(案)について


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照会先 
障害保健福祉部企画課 内線3014


今後の知的障害者・障害児施策の在り方について

(平成11年1月25日)

中央児童福祉審議会

目次

1.はじめに

2.知的障害者・障害児の福祉サービスの充実

(1)地域での生活の支援
(2)就労・日中の活動の場の確保
(3)雇用政策との連携
(4)知的障害者更生施設の機能の見直し
(5)サービスの質の確保と利用者の権利擁護

3.知的障害者・障害児に関する事務の市町村への委譲

(1)知的障害者に関する事務の委譲
(2)障害児に関する事務の委譲

4.その他の検討課題


1.はじめに

・障害保健福祉施策全般について、総合的に見直しを行うため、平成8年10月に、身体障害者福祉審議会、中央児童福祉審議会障害福祉部会、公衆衛生審議会精神保健福祉部会に、それぞれ企画分科会が設置され、同年11月から合同で審議を開始した。

・この障害者関係三審議会合同企画分科会では、平成9年12月に、「今後の障害保健福祉施策の在り方について(中間報告)」(以下「分科会中間報告」という。)として、障害保健福祉施策全般について、基本的理念、基本的な施策の方向及び具体的な施策の方向を提言した。

(注) 基本的理念: (1)障害者の自立と社会経済活動への参画の支援
(2)主体性・選択性の尊重
(3)地域での支え合い
基本的な施策の方向: (1)障害者の地域生活支援策の充実
(2)障害保健福祉施策の総合化
(3)障害特性に対する専門性の確保
(4)障害の重度・重複化、高齢化への対応
(5)障害者の権利擁護と参画

・そこで、同合同企画分科会では、分科会中間報告の主要論点のうち、障害保健福祉施策全般にわたる共通事項、特に、中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会で議論されてきた社会福祉基礎構造改革に関する事項のうち、障害保健福祉施策と深く関連する事項として、新しいサービス利用制度の在り方、障害保健福祉サービスの水準の確保、利用者の保護等を中心に審議を行ってきた。

・一方、本中央児童福祉審議会の障害福祉部会では、分科会中間報告の主要論点のうち、知的障害者・障害児(重症心身障害者を含む。以下同じ。)の福祉施策関係で重点的に議論すべき事項として、知的障害者・障害児福祉サービスの充実及び知的障害者・障害児に関する事務の市町村への委譲について、以下のような基本的理念を基に審議を行ってきたところである。

(1)自立と社会経済活動への参画の支援

知的障害者・障害児施策の基本は、重度の人を含め、生涯のあらゆる段階において、自立した生活を目指し、社会経済活動へ積極的に参画できるような支援を行うこと及び障害のない者と同様に生活し、活動する社会を築くことであること。

(2)主体性・選択性の尊重

知的障害者・障害児が、自らの生活を自らの意思で選択・決定し、築きたいと考えることは当然のことであり、可能な限り本人の意思を尊重した社会的な支援活動が重要であること。

(3)地域での生活支援の充実と家族への支援の強化

知的障害者・障害児に対する支援は、身近な市町村が中心となって、各種の行政サービスや社会参加の機会を提供し、地域での生活支援の充実を図るとともに、家族への支援を強化していくことが重要であること。

・本中央児童福祉審議会の障害福祉部会では、昨年4月以降、上記のような経緯をたどりつつ、鋭意検討を重ねてきたが、今般、今後講ずべき施策等について意見をとりまとめたので、ここに意見具申する。

・本意見具申はもとより、分科会中間報告と、本意見具申と同じ時期に障害者関係三審議会合同企画分科会から提言される意見具申に基づき、知的障害者・障害児施策について所要の見直しが速やかに進められることを切に望むものである。


2.知的障害者・障害児の福祉サービスの充実

(1)地域での生活の支援

(1)地域での療育機能等の充実

ア)障害児(者)地域療育等支援事業の充実
・知的障害者及び障害児の地域での生活を支えるためには、身近な地域で療育相談、指導等が受けられる療育機能の充実を図るとともに、各種福祉サービスの利用に係る援助、調整等を行うことは重要である。
・このため、障害児(者)地域療育等支援事業を制度上明確に位置付けるとともに、その一層の充実を図る必要がある。

イ)障害児通園施設の相互利用制度の普及促進
・ノーマライゼーションの理念を踏まえ、障害児がより身近な場所で療育が受けられるようにすべきである。
・知的障害児通園施設、肢体不自由児通園施設及び難聴幼児通園施設において、障害種別の異なる障害児を受け入れることができるように「相互利用」が制度化されたところであるが、身近な場所で障害児の適切な療育を進めていくため、この制度を一層普及していく必要がある。

ウ)重症心身障害児(者)通園事業の普及促進
・重症心身障害児(者)についても、地域での生活を維持しながら、日常生活動作、運動機能等に係る訓練・指導等が受けられるようにすべきである。
・重症心身障害児(者)通園事業は、そのような観点から効果的な事業であり、今後、一層普及、充実していく必要がある。

(2) 知的障害者のホームヘルプサービス等の改善

・知的障害者の地域での生活を支援していくためには、家事、介 護等の日常生活の世話や、相談、助言等の必要な支援が重要であ る。
・ホームヘルプサービスについては、現在、心身障害児(者)ホームへルプサービス事業として、重度の障害児(者)の家族支援を中心とした制度になっているが、知的障害者本人も利用する制度として、障害児のホームヘルプサービスと分離するとともに、対象者の障害の程度についての要件緩和を検討する必要がある。
・また、知的障害者に対し相談、助言等の地域生活の支援を行う知的障害者生活支援事業について、その事業の中核となる生活支援ワーカーの増員等の充実を図る必要がある。
(3) 知的障害者の住まいの場の確保
・知的障害者が地域で生活していくためには、就労や日中の活動の場の確保とともに、地域での住まいの場の確保が重要である。特に、成人し独立した生活を望む重度の知的障害者の住まいの場の確保は重要である。
・このため、就労はしていなくても、障害基礎年金等の収入により、家賃、食費等が負担できる知的障害者もグループホームや知的障害者福祉ホームを利用できるようにするため、就労要件を撤廃するとともに、グループホームに重度の知的障害者も受け入れられる方策を検討する必要がある。
・知的障害者通勤寮については、その対象者を、一般就労している者に限定せず、通所授産施設等を利用する福祉的就労者にまで緩和する必要がある。

(4) 介護する家族等への支援

・家族と暮らす知的障害者及び障害児については、その家庭・家族を支援していくことも重要な課題である。
・このため、知的障害者や障害児のいる家族等の負担軽減を図る観点から、ショートステイ事業の弾力的運用により、知的障害者や障害児のいる親・家族を一時的に、一定の期間、介護等から解放することによって、日頃の心身の疲れを回復できるようにする事業(いわゆるレスパイトサービス)の制度化を検討する必要がある。なお、利用手続きについても、できるだけ簡便なものとなるよう配慮する必要がある。

(5) ケアマネジメント

・知的障害者及び障害児が地域において豊かな生活を実現していくためには、そのニーズを把握し、障害の程度に応じてサービスを総合的に利用することを支援するケアマネジメントが重要である。
・これまで知的障害者介護等サービス調整指針(ケアガイドライン)、ケアマネージャー養成指導者の研修カリキュラムを作成するとともに、現在「障害者介護等支援サービス体制整備検討委員会」において、ケアマネージャーの資格要件、養成テキスト等について検討しているところであるが、今後、ケアマネージャーの養成を重点的に進めていくとともに、ケアマネジメントの効果的な活用を図る必要がある。

(2)就労・日中の活動の場の確保

(1) 知的障害者授産施設(通所)の整備促進

・知的障害者が普通に地域で生活するというノーマライゼーションの観点から、生活の場と就労・日中の活動の場を分離するとともに、身近なところで施設を利用することができるよう、施設の一層の小規模化を図るべきである。
・このような観点から、今後、知的障害者授産施設の整備に当たっては、原則として通所施設を整備していくようにする必要がある。
・また、社会福祉基礎構造改革における社会福祉施設や社会福祉法人に係る規制の在り方に関する議論と整合性を図りつつ、知的障害者授産施設(通所)の定員要件を緩和する必要がある。

(2) 知的障害者デイサービス事業の拡充

・就労が困難な在宅の知的障害者の日中の活動の場を確保する観点から、デイサービス事業について、居住地の近いところで利用を可能にすることが重要である。
・このため、知的障害者デイサービス事業について、法律上明確 に位置付けを行うとともに、知的障害者デイサービス事業の実施 場所について、公民館、空き教室等の既存施設の活用による事業 の実施を可能とすることにより、その拡充を図る必要がある。そ の際、重度者への対応について、十分配慮する必要がある。

(3)小規模作業所

・小規模作業所については、法定外の仕組みとして、事業主体、事業内容等多様な形態をとりながら、障害種別にかかわりなく受け入れ、また、創意工夫による柔軟な事業を実施しているが、運営の安定化が課題となっている。
・このため、(1)、(2)で述べたような授産施設(通所)の定員要件の緩和やデイサービス事業における施設要件の緩和等により、法定施設・事業への移行を促進し、運営の安定化が図られるようにする必要がある。

(3)雇用政策との連携

・就労は、地域生活の基盤の上に成り立つものであり、知的障害者が安定して就労するためには、生活面の安定が不可欠であることから、知的障害者に対する就業支援と生活支援については、総合的に提供されるべきである。

・平成11年度予算案において、雇用政策との連携の下、知的障害者の生活支援と就業支援を一体的に行う「障害者就業・生活支援センター(仮称)」の設置に向けての試行的事業が盛り込まれているが、今後、さらに就業支援と生活支援を一体的に提供できるような体制を整備していく必要がある。

(4)知的障害者更生施設の機能の見直し

・知的障害者更生施設は、知的障害者に自立のために必要な指導及び訓練等を行うことを目的とする施設であるが、入所期間の長期化及びそれに伴う高齢化や一部には要介護化の傾向がみられるところである。

・このため、まず、重度の知的障害者も地域で生活できるように、地域での生活を支援するためのサービスの充実を図ることが肝要である。

・それを前提として、入所者の地域生活への移行を促進するため、障害の程度や年齢に応じ期間を定めた個別プログラムによる訓練機能の強化のほか、地域生活の準備の支援機能や地域生活へ移行した後のアフターケア機能等の強化を図る必要がある。

・一方、加齢等により身体機能が著しく低下した入所者に対し、日常生活上の介護のほか、身体機能の維持・回復の支援や生きがい等に配慮した支援が適切に行えるよう、施設の構造設備の改善や職員体制の在り方について、検討していく必要がある。

(5)サービスの質の確保と利用者の権利擁護

(1) サービスの質に関する第三者評価

・知的障害者・障害児に対して適切なサービスを提供するために は、サービスを客観的に評価する基準及び仕組みが必要である。
・このため、第三者評価機関によるサービス内容の評価のための仕組みを検討し、サービス提供者によるサービスの改善を促進する必要がある。その際、知的障害者・障害児の特性に十分に対応した基準を作成する必要がある。

(2) 苦情解決体制の整備

・知的障害者・障害児が適切なサービスを利用できるようにするためには、サービス等の苦情解決の体制を整備していくことも重要である。
・利用者からの苦情の解決については、社会福祉基礎構造改革で提言されている、サービス提供者段階での取組みを促すとともに、サービス提供者段階で解決が困難な事案に関しては、都道府県段階に設置する中立的な第三者機関において調整する仕組みを構築する必要がある。
・このほか、障害児(者)地域療育等支援事業や「障害者110番」運営事業などの相談事業においても、利用者の人権擁護の観点から、利用者からの苦情に対応することができるよう、その充実を図る必要がある。

(3) 自己決定を支援する仕組みの制度化

・障害者が自ら選択し、必要とする福祉サービスを利用することが尊重されることは当然であるが、知的障害者のうち、自己の能力で様々なサービスを適切に利用することができない者について、これらの者の権利を擁護し、地域において安心して生活を送れるように支援する必要性が高まっている。
・現在、法務省において「成年後見制度」の検討が進められ、平成12年度から実施する予定となっており、この適切な運用が望まれるが、障害者福祉制度における公的な後見人についても今後の検討課題である。
・さらに、これらの者に対し、財産管理にとどまらず、福祉サービスの利用の援助等を行うことが重要である。このため、障害児(者)地域療育等支援事業における各種の相談・援助事業の中で、知的障害者に対する福祉サービスの利用援助を充実させていくとともに、福祉サービスに関する情報提供・助言、手続きの援助、苦情解決制度の利用援助等を行う仕組みを構築する必要がある。


3.知的障害者・障害児に関する事務の市町村への委譲

(1)知的障害者に関する事務の委譲

(1) 委譲の必要性

・知的障害者の状況を日常的に把握しつつ、ニーズに対応したきめ細かなサービスを提供するためには、身近な行政主体である市町村が福祉サービスに関する権限を有することが望ましい。
・現在、知的障害者施策については、ホームヘルプ等の在宅サービスは市町村の権限により実施しているが、施設への入所措置等は、都道府県、市及び福祉事務所設置町村が実施しており、知的障害者のニーズに応じた適切なサービスを総合的かつ効率的に提供するためには、市町村において在宅サービスと施設サービスが一元的に提供されるようにすべきである。
・このため、知的障害者の施設入所等に関する事務を市町村に委 譲する必要がある。

(2) 委譲に当たっての体制整備

・委譲に当たっては、円滑な事業の実施等が図られるよう、十分な準備期間をおくとともに、市町村職員の研修を行う必要がある。
・また、市町村の財政負担の変化や職員の増員に伴う負担増に対応するための財源確保に支障が生じないよう十分配慮する必要がある。
・さらに、円滑な事業の実施等を図るため、従来どおり知的障害者更生相談所が施設入所に係る判定業務を行うとともに、広域的な観点から都道府県が市町村を支援する体制の整備を行う必要がある。
・このような体制整備を進めるに当たっては、都道府県及び市町村の意見を十分聴取し、円滑な委譲が図られるようにする必要がある。

(2)障害児に関する事務の委譲

・住民に身近なサービスは、可能な限り、住民に身近な地方公共団体が実施するという基本的な考え方によれば、障害児福祉サービスについても、住民に最も身近な行政主体である市町村が権限を持つことが望ましいことは言うまでもない。

・特に、障害児の地域における生活を支援する観点から、在宅サービスについては、身近な行政主体である市町村の権限により実施することが望ましいと考えられる。

・このため、現在、都道府県の権限により実施しているショートステイ事業、補装具の交付、日常生活用具給付等事業について、市町村へ委譲し、既に市町村が実施しているホームヘルプサービス、デイサービスと併せて、市町村が統一的に在宅サービスを取り扱うこととする必要がある。

・一方、施設サービスについては、基本的な考え方は、在宅サービスと同様であるが、次のような点を勘案する必要があり、市町村に権限を委譲することについては、さらに検討する必要がある。

ア) 障害児を含め児童は発達途上にあることから、その処遇に当たっては、医学、心理学、社会学、社会福祉学等各分野の専門家による総合的な判断が不可欠であるとともに、単にサービスを決定するだけでなく、その発達を総合的な見地からフォローし、処遇の再検討を行っていくことが必要であり、障害児施策の中でも、障害児施設への入退所については、特に、そのような高度の専門的判断が必要とされること。

イ) 障害児に関する事務について委譲を行った場合も、被虐待等の要保護性を有する児童に関する施策については、従来どおり、都道府県(児童相談所)が決定権限を有することとなるが、被虐待等の要保護性を有する障害児の障害児施設への入所について、市町村と都道府県(児童相談所)のどちらが決定権限を持つかという問題がある。
この点については、被虐待等の要保護性を有する障害児に対し 児童相談所が判定と処遇の両方を行うことにより迅速な対応ができること等から、引き続き都道府県(児童相談所)が決定権限を持つことが考えられるが、事務処理上、都道府県と市町村の間で、要保護性の有無をめぐって責任の所在が曖昧になる等の問題が生じる可能性があること。

ウ) 現在、障害児施設の事務費の支弁方法については、定員払い方式になっており、入所人員が定員を大幅に下回る施設において定員を直ちに改定し難い場合には、暫定定員を設定し、その暫定定員をもって支払う方式となっている。
一方、都道府県から市町村へ入所決定権限を委譲する場合、複 数の市町村が入所措置を行うことから、各市町村がその措置に係る障害児についてそれぞれ事務費を支払う現員払い方式とする必要があると考えられる。
このような現員払い方式に移行する場合、定員又は暫定定員に 基づく定員払い方式となっている施設の運営に支障が生じる可能性があること。


4.その他の検討課題

・知的障害者・障害児については、より一層適切な医療サービスが受けられやすくする必要があることから、医療サービスの提供体制の充実に向けて、幅広い観点から、検討していく必要がある。また、知的障害者・障害児の心のケアの在り方についても検討していく必要がある。

・自閉症については、基本的には、知的障害者福祉施策の中でサービスが提供されており、また、医療の必要性に応じて精神保健福祉法で対応しているが、自閉症等生活適応に困難を有する発達障害については、今後更に、心理的、社会的な処遇方法の開発等施策の充実を図る必要がある。


(参考)中央児童福祉審議会障害福祉部会の開催状況(中間報告以降)

(開催日) (主な審議事項)
平成10年
4月14日 しろまる 知的障害者施設体系の現状と課題について
しろまる 障害児及び知的障害者に関する事務の権限の市町村への委譲について
5月26日 しろまる 知的障害者更生施設の在り方について
(施設長からのヒアリング及び審議)
しろまる 障害児に関する事務の権限の市町村への委譲について
6月26日 しろまる 知的障害者授産施設の在り方について
しろまる 障害児に関する事務の権限の市町村への委譲について
10月5日 しろまる 在宅サービスの在り方について
しろまる 権利擁護・情報提供・サービスの質の評価等の在り方について
11月16日 しろまる 障害児及び知的障害者に関する事務の権限の市町村への委譲について
しろまる 知的障害者・障害児施策の在り方について
12月16日 しろまる これまでの審議の整理について
平成11年
1月20日 しろまる 意見具申(案)について


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照会先 
障害保健福祉部障害福祉課 内線3034


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