平成11年1月12日
手足口病は、エンテロウイルス71型(EV71)、コクサッキーウイルスA16型、A10型等によって引き起こされるウイルス感染症です。手、足、口などに出現する発疹が特徴の本来軽症にすむ疾患で、我が国では毎年夏に流行します。
しかし、1997年には大阪において、急性脳炎による死亡例も報告され、また1998年4月下旬より台湾において手足口病の大流行に伴う死亡者がでているとの情報が入手されました。
このため、厚生省では、日本医師会あてに情報提供を行うとともに、台湾等と同様の状況が日本で発生した場合にそれを早期に把握することを目的として、全国の医療機関を対象に手足口病に伴って脳炎・脳症等の重症例が発生した場合に報告を行う調査を実施しました(1998年7月24日付け 結核感染症課長通知)。
その結果、調査対象期間の7月27日から12月28日までの5ヶ月の間に手足口病もしくはヘルパンギーナにともなった重症合併症例は、急性小脳失調症2例、急性脊髄炎1例、急性脳炎1例の合計4例報告(表1)のみであり、我が国においては、1998年の手足口病の流行期には幸いなことに台湾で見られたようなエンテロウイルス71型による手足口病やヘルパンギーナに合併した重症合併症例は認められませんでした。
なお本調査は、日本医師会及び本調査の趣旨にご賛同頂いた全国の医療機関の先生方および関係者の協力によってなされたことを報告するとともに、ご協力に対し深く御礼申し上げます。
調査対象期間報告例の詳細
手足口病・ヘルパンギーナに伴う重症合併症例は、急性小脳失調症2例、急性脊髄炎1例、急性脳炎1例の合計4例報告があり、いずれも典型的な発疹が見られました。このうち病原診断がなされたものは、急性小脳失調症の2例で、エコー18型、コクサッキーA9型がそれぞれ分離されました。残りの2例においてもウイルス分離が試みられていますが、いずれも分離されませんでした。患者の年齢は、10ヶ月が1例、1歳が2例、20歳が1例でした。予後は、3例が正常に回復、1例(急性脳炎)が発症5日目に急変し死亡しています。
(参考症例)
なお、調査期間中に報告があった症例のうち、発生が調査対象期間以前の3例を参考としました。1例は、14歳で非定型的な発疹を呈し、発症7日目に急性脳症を呈し死亡しています。血清中和抗体でコクサッキーA16の上昇が見られています。1例は、手足口病6日目に心停止をした26歳例で、臨床診断名は急性心筋炎であり、病原検索の結果は分離されず、正常に回復しています。1例は、1歳9ヶ月のヘルパンギーナで発症24時間以内に死亡、死因は乳幼児突然死症候群とされています。病理病原体検索は行われていません。
照会先:保健医療局結核感染症課 担当者:葛西(2376)、竹内(2382) 電 話:代表[現在ご利用いただけません] 直通3595−2257