平成10年12月18日
水道におけるクリプトスポリジウム対策の実施状況について
クリプトスポリジウム対策については、平成8年10月「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」(以下、暫定対策指針)を策定し、都道府県を通じ、水道事業者等へ予防対策等の実施について周知及び指導をしてきたところである。
今般、平成10年6月に暫定対策指針を改正したこと等から、全国の水道事業者を対象として、平成10年6月末現在における暫定対策指針に基づく対策の実施状況を取りまとめた。
その結果、クリプトスポリジウムによる汚染のおそれがある浄水施設では、概ね所要の対応がなされていることが確認された。しかし、小規模な水道事業者等では対応が十分とは言えないことから、予防対策等の実施の徹底について、都道府県を通じ指導することとしている。
1.暫定対策指針に基づく予防対策の実施状況
平成10年6月末現在における暫定対策指針に基づく予防対策の実施状況は次表のとおり。
- (1)表流水、伏流水又は浅井戸を水源とする浄水施設11,501施設のうち、クリプトスポリジウムによる汚染のおそれがある施設(予防対策の必要な施設)は618施設(約5%)。
(2)このうち395施設(給水人口では約97%に相当)では、既にろ過施設設置等の予防対策について対応済。
(3)残る223施設では、ろ過施設設置等について検討中であり、当面の措置として、暫定対策指針に基づき水道原水の濁度を監視し、渇水等により原水の濁度レベルが通常よりも高くなった場合には、取水停止等を行っているところ。また、このような施設には簡易水道、専用水道等の小規模な水道事業者によるものが多い。
2.厚生省としては、今後も引き続き「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」に基づき恒久的な対策としてろ過施設の整備、水源の切り替え等の対策の実施の徹底について、都道府県等を通じ水道事業者等を指導することとしている。
表 暫定対策指針に基づく予防対策の実施状況
(平成10年6月末現在)
水道事業
水道用水供給事業
専用水道
合計
上水道
簡易水道
調査対象浄水施設数
2,800
7,572
149
980
11,501
対応の必要な浄水施設数
309
254
38
17
618
給水人口
20,413,550
262,596
19,289,265
54,976
40,020,387
対応済みの浄水施設数
249
96
38
12
395
給水人口
(比率)
19,405,151
(95%)
137,293
(52%)
19,289,265
(100%)
53,447
(97%)
38,885,156
(97%)
ろ過施設設置等を検討中の浄水施設数
60
158
0
5
223
給水人口
(比率)
1,008,399
( 5%)
125,303
(48%)
0
( 0%)
1,529
( 3%)
1,135,231
( 3%)
注1)
「調査対象浄水施設」とは、表流水、伏流水及び浅井戸を水源とする浄水施設である。
2)
「対応の必要な浄水施設」とは、水源となる表流水若しくは伏流水の取水施設の上流域又は 浅井戸の周辺に、人間又は哺乳動物の糞便を処理する施設等の排出源が存在し、かつ、水道 原水からクリプトスポリジウム又はその指標となる細菌が検出された施設で、平成8年10 月までに暫定対策指針に示す予防対策をとっていなかった施設である。
3)
「対応済みの浄水施設」とは、対応の必要な浄水施設のうちで平成8年10月から平成10年6月までの間に暫定対策指針に示す恒久的な予防対策を実施した施設である。
4)
「ろ過施設設置等を検討中の施設」とは、対応の必要な浄水施設のうちで暫定対策指針に示すろ過施設の設置等の恒久的な予防対策を検討中の施設である。なお、これらの施設では、当面の措置として、水道原水の濁度の監視、渇水等により原水の濁度レベルが通常よりも高くなった場合の、取水停止等を行っている。
クリプトスポリジウム対応状況(施設数)
都道府県
調査対象浄水施設数(A)
対応の必要な浄水施設数(B)
B/A(%)
対応済みの浄水施設数(C)
C/B(%)
ろ過施設設置等検討中の浄水施設数(D)
D/B(%)
北海道
472
54
11.4
50
92.6
4
7.4
青森県
143
2
1.4
2
100.0
0
0.0
岩手県
320
15
4.7
15
100.0
0
0.0
宮城県
182
15
8.2
15
100.0
0
0.0
秋田県
536
120
22.4
19
15.8
101
84.2
山形県
164
6
3.7
0
0.0
6
100.0
福島県
363
17
4.7
10
58.8
7
41.2
茨城県
139
17
12.2
12
70.6
5
29.4
栃木県
217
10
4.6
2
20.0
8
80.0
群馬県
251
5
2.0
5
100.0
0
0.0
埼玉県
93
20
21.5
8
40.0
12
60.0
千葉県
45
33
73.3
33
100.0
0
0.0
東京都
152
0
0.0
0
0.0
0
0.0
神奈川県
249
19
7.6
19
100.0
0
0.0
新潟県
424
9
2.1
8
88.9
1
11.1
富山県
107
2
1.9
2
100.0
0
0.0
石川県
126
3
2.4
3
100.0
0
0.0
福井県
171
2
1.2
1
50.0
1
50.0
山梨県
281
4
1.4
4
100.0
0
0.0
長野県
741
0
0.0
0
0.0
0
0.0
岐阜県
377
7
1.9
6
85.7
1
14.3
静岡県
306
0
0.0
0
0.0
0
0.0
愛知県
125
1
0.8
0
0.0
1
100.0
三重県
275
0
0.0
0
0.0
0
0.0
滋賀県
144
0
0.0
0
0.0
0
0.0
京都府
285
3
1.1
3
100.0
0
0.0
大阪府
121
33
27.3
33
100.0
0
0.0
兵庫県
406
38
9.4
37
97.4
1
2.6
奈良県
177
3
1.7
3
100.0
0
0.0
和歌山県
56
6
10.7
0
0.0
6
100.0
鳥取県
228
3
1.3
0
0.0
3
100.0
島根県
109
43
39.4
26
60.5
17
39.5
岡山県
291
3
1.0
1
33.3
2
66.7
広島県
201
5
2.5
5
100.0
0
0.0
山口県
215
15
7.0
7
46.7
8
53.3
徳島県
166
3
1.8
0
0.0
3
100.0
香川県
115
11
9.6
7
63.6
4
36.4
愛媛県
366
1
0.3
1
100.0
0
0.0
高知県
325
3
0.9
0
0.0
3
100.0
福岡県
246
46
18.7
37
80.4
9
19.6
佐賀県
121
4
3.3
4
100.0
0
0.0
長崎県
307
8
2.6
7
87.5
1
12.5
熊本県
360
9
2.5
0
0.0
9
100.0
大分県
280
1
0.4
1
100.0
0
0.0
宮崎県
213
0
0.0
0
0.0
0
0.0
鹿児島県
434
12
2.8
3
25.0
9
75.0
沖縄
76
7
9.2
6
85.7
1
14.3
合計
11501
618
5.4
395
63.9
223
36.1
クリプトスポリジウム対応状況表(給水人口)
都道府県
対応の必要な浄水施設の給水人口(A)
対応済み浄水施設の給水人口(B)
B/A(%)
ろ過施設設置等検討中の浄水施設の給水人口(C)
C/A(%)
北海道
1,895,916
1,866,486
98.4
29,430
1.6
青森県
16,449
16,449
100.0
0
0.0
岩手県
344,963
344,963
100.0
0
0.0
宮城県
1,444,646
1,444,646
100.0
0
0.0
秋田県
612,717
430,435
70.3
182,282
29.7
山形県
19,336
0
0.0
19,336
100.0
福島県
399,841
338,256
84.6
61,585
15.4
茨城県
765,758
709,758
92.7
56,000
7.3
栃木県
96,385
42,350
43.9
54,035
56.1
群馬県
196,037
196,037
100.0
0
0.0
埼玉県
6,867,995
6,668,860
97.1
199,135
2.9
千葉県
4,973,245
4,973,245
100.0
0
0.0
東京都
0
0
0.0
0
0.0
神奈川県
5,972,000
5,972,000
100.0
0
0.0
新潟県
812,498
802,760
98.8
9,738
1.2
富山県
14,900
14,900
100.0
0
0.0
石川県
8,492
8,492
100.0
0
0.0
福井県
512
362
70.7
150
29.3
山梨県
29,273
29,273
100.0
0
0.0
長野県
0
0
0.0
0
0.0
岐阜県
141,946
126,246
88.9
15,700
11.1
静岡県
0
0
0.0
0
0.0
愛知県
160
0
0.0
160
100.0
三重県
0
0
0.0
0
0.0
滋賀県
0
0
0.0
0
0.0
京都府
8,628
8,628
100.0
0
0.0
大阪府
4,790,832
4,790,832
100.0
0
0.0
兵庫県
3,406,663
3,406,595
100.0
68
0.0
奈良県
384,110
384,110
100.0
0
0.0
和歌山県
2,186
0
0.0
2,186
100.0
鳥取県
141,628
0
0.0
141,628
100.0
島根県
110,057
63,933
58.1
46,124
41.9
岡山県
4,843
1,543
31.9
3,300
68.1
広島県
510,671
510,671
100.0
0
0.0
山口県
293,678
273,372
93.1
20,306
6.9
徳島県
2,271
0
0.0
2,271
100.0
香川県
122,700
69,400
56.6
53,300
43.4
愛媛県
665
665
100.0
0
0.0
高知県
3,312
0
0.0
3,312
100.0
福岡県
3,718,806
3,616,892
97.3
101,914
2.7
佐賀県
77,372
77,372
100.0
0
0.0
長崎県
426,066
421,666
99.0
4,400
1.0
熊本県
49,318
0
0.0
49,318
100.0
大分県
28,000
28,000
100.0
0
0.0
宮崎県
0
0
0.0
0
0.0
鹿児島県
108,485
30,700
28.3
77,785
71.7
沖縄
1,217,027
1,215,259
99.9
1,768
0.1
合計
40,020,387
38,885,156
97.2
1,135,231
2.8
※(注記)水道用水供給事業については、供給先の水道事業者の給水人口で算出
(参考資料)
クリプトスポリジウムとは
・クリプトスポリジウムは、原虫の一種であり、環境中(水中など)ではオーシスト(嚢包体。いわゆる卵の殻に包まれたような状態)として存在。
・オーシスト(大きさは4〜6μm)は塩素に対して強い耐性を有するため、浄水場における通常の塩素処理では不活化できない。
・人間の他、牛、ネコ等多種類の動物に寄生し、糞便を通じて体外へ排出される。
・感染した場合の主な症状は、水溶性下痢、腹痛。
・我が国では平成8年6月に埼玉県越生町で汚染された水道水を原因として、8,000人を超える集団感染症が発生した。
(参考資料)
水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針の概要
平成10年6月
厚生省水道環境部
1 目的
水道におけるクリプトスポリジウム対策の緊要性に鑑み、水道事業者等や都道府県が当面講ずべき予防的措置や応急措置等について、暫定対策指針を定める。
2 水道水源に係るクリプトスポリジウム汚染のおそれの判断
水道の取水施設の上流域または浅井戸の周辺に、人間や哺乳動物の糞便を処理する施設等の排出源がある場合には、糞便性大腸菌等を検査し、糞便による水道原水の汚染の有無を把握することにより、水道水のクリプトスポリジウムによる汚染のおそれを判断すること。
3 予防対策
クリプトスポリジウムによる汚染のおそれがある場合には、水道事業者等は次の対応措置を講ずること。
(1) 浄水場での対応
浄水場においては、クリプトスポリジウムを除去できる浄水処理(膜ろ過法、急速ろ過法)等を行うこと。
(2) 浄水処理の徹底
ろ過池出口の水の濁度を常時把握し、ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持すること。
(3) 水源対策
取水施設の近傍上流域または浅井戸の周辺にクリプトスポリジウムを排出する可能性のある汚水処理施設等の排水口がある場合には、関係機関と協議のうえ、排水口または取水口の移設を図ること。
4 クリプトスポリジウム症が発生した場合の応急対応
水道水がその原因であるおそれがある場合には、関係者は次の対応措置を講ずること。
(1)応急対応の実施
水道事業者、都道府県の水道行政担当部局、保健所等は連携して応急対応を実施すること。
(2)水道事業者等における応急対応
- (1)水道利用者への広報・飲用指導等
水道が感染源のおそれがある場合には、直ちに、水道利用者への広報・飲用指導等を行うこと。
- (2)水道施設における応急対応
水道水が汚染された可能性のある場合には、給水停止の措置を講じた上で、浄水処理の強化、水源の切り替え等を実施すること。
その後、飲用水としての利用に支障がないと判断された場合に給水を再開すること。
- (3)都道府県等の水道行政担当部局における対応
関係の水道事業者等と連携を密にして、対策の早期実施に努めること。
照会先
生活衛生局水道環境部水道整備課
水道水質管理官:荒井真一(4031)
水源保全係長:大野秀也(4034)