「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」に適合していることの確認を行うことの可否に関する食品衛生調査会の答申等について
平成9年12月3日
生活衛生局食品保健課
食品化学課
組換えDNA技術を応用して製造された5品種の食品及び1品目の食品添加物が「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針(以下、「安全性評価指針」という。)」に適合していることの確認を行うことの可否については、平成9年5月27日付けで、厚生大臣より食品衛生調査会あて諮問したところでありますが、本日付けで、食品衛生調査会より答申されました。
また、あわせて、安全性評価指針に係る後代交配種の取扱いについて、食品衛生調査会より意見具申がなされました。
1 これまでに諮問された食品及び食品添加物について
(1) 平成9年5月24日、組換えDNA技術を応用して製造された食品5品種及び食品添加物1品目が安全性評価指針に適合していることを厚生大臣が確認することの可否について、厚生大臣より食品衛生調査会あて諮問され、同日、バイオテクノロジー特別部会あて付議されました。
(2) 平成9年10月22日付けでバイオテクノロジー特別部会の報告が提出され、本日、食品衛生調査会より次の食品5品種及び食品添加物1品目について、それぞれ安全性評価指針に沿って安全性評価がなされていると判断する旨答申がなされました。
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性 質
除草剤耐性
申請者
日本モンサント株式会社
開発者
Monsanto Company(米国)
性 質
除草剤耐性
申請者
日本モンサント株式会社
開発者
Calgene Incorporated(米国)
性 質
除草剤耐性
申請者
ヘキスト・シェーリング・アグレボ株式会社
開発者
Plant Genetic Systems(ベルギー)
性 質
除草剤耐性
申請者
ヘキスト・シェーリング・アグレボ株式会社
開発者
Hoechst Schering AgrEvo GmbH(ドイツ)
性 質
日持ち性の向上
申請者
麒麟麦酒株式会社
開発者
Calgene Incorporated(米国)
申請者
日本ロシュ株式会社
開発者
F.Hoffmann - La Roche(スイス)
(3) 平成8年10月24日に諮問され、継続審議となっていた次の食品4品種のうち、アからウの3品種については、さらに検討が必要なことから、審議を継続することとされました。
なお、エの品種については、申請者から申請を取消したい旨の申し出がすでになされています。
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ア
対象品種
とうもろこし(MON809)
性 質
害虫抵抗性
申請者
パイオニア ハイブレッド ジャパン株式会社
開発者
Pioneer Hi-Bred International,Inc.(米国)
イ
対象品種
とうもろこし(DLL25)
性 質
除草剤耐性
申請者
株式会社 東食
開発者
Dekalb Genetics Corporation(米国)
ウ
対象品種
とうもろこし(DBT418)
性 質
害虫抵抗性
申請者
株式会社 東食
開発者
Dekalb Genetics Corporation(米国)
エ
対象品種
とうもろこし(MS3)
性 質
除草剤耐性
申請者
ヘキスト・シェーリング・アグレボ株式会社
開発者
Plant Genetic Systems (ベルギー)
(4) これまでの経緯
平成9年5月27日
食品衛生調査会に諮問、バイオテクノロジー特別部会に付議
5月28日
バイオテクノロジー特別部会審議
6月6日
第1回組換えDNA技術応用食品等の安全性評価に関する分科会審議
6月17日
第2回組換えDNA技術応用食品等の安全性評価に関する分科会審議
7月15日
第3回組換えDNA技術応用食品等の安全性評価に関する分科会審議
8月8日
第4回組換えDNA技術応用食品等の安全性評価に関する分科会審議
9月9日
第5回組換えDNA技術応用食品等の安全性評価に関する分科会審議
10月22日
食品衛生調査会バイオテクノロジー特別部会開催
〃
バイオテクノロジー特別部会報告
10月27日
申請資料公開(社団法人日本食品衛生協会において閲覧)
2 後代交配種の取扱いについて
バイオテクノロジー特別部会において、「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」に基づく後代交配種の安全性評価の必要性の有無について意見がまとめられたことから、これについて、検討が行われた結果、別添の意見具申がなされました。
3 今後の予定
(1) 安全性評価の適合性確認がなされた食品5品種及び食品添加物1品目については、答申を受け、速やかに、申請者あてに「厚生大臣による安全性評価指針への適合を確認」した旨の通知を出す予定としています。
(2) 安全性評価指針に係る後代交配種の取扱いについても、意見具申を受け、関係者に通知する予定としています。
問い合わせ先 厚生省生活衛生局
堺 食品保健課長
担 当 佐原、井関、佐々木(内2447、2451)
中山(食品化学課、内2483)
食調第84号
平成9年12月3日
- 厚 生 大 臣
- 小 泉 純一郎 殿
食品衛生調査会
委員長 寺田 雅昭
後代交配種の取扱いについて
安全性が確認された組換え品種と従来品種とを、伝統的な育種の手法を用いて掛け合わせた品種(以下「後代交配種」という。)の安全性評価については、現在の組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針(以下「安全性評価指針」という。)に記載がなく、具体的な評価のあり方について未定となっている状況である。
後代交配種の安全性評価のあり方については、国際的には、1996年10月のWHO/FAOの合同レポート(「Biotechnology and food safety」)等において、従来品種と同等の安全性が確保された組換え品種の後代交配種については、遺伝子組換え技術に特有な評価方法による安全性評価は必要ないとの見解が示されているものの、我が国においてはこの問題について十分な議論がなされてきたとは言えない状況にある。
今般、食品衛生調査会常任委員会において、安全性評価の確認がされた品種と従来の品種との掛け合わせによって作出された後代交配種の安全性評価のあり方について、バイオテクノロジー特別部会報告を受けて審議した結果、後代交配種の取扱いについて下記のとおり、意見具申する。
記
1.後代交配種の安全性について
厚生省により安全性が確認された組換え品種の後代交配種のうち、次の(1)〜(3)のすべての項目を満たすものについては、その安全性に問題はないものと考えられる。
- (1)組換えDNA操作により新たに獲得された性質が後代交配種においても変化していないこと
- 安全性評価指針においては、導入した遺伝子とその産物について毒性やアレルギー性等を評価しているが、導入した遺伝子に基づく形質が変化していない場合には、在来種との交配においてタンパク質としての構造が変化する等の事象が起こっている可能性は小さく、毒性やアレルギー性等の新たな問題が生じる可能性はほとんどないと考えられる。
- (2)亜種(変種)間での交配が行われていないこと
- 導入遺伝子が酵素として発現する場合、安全性評価指針においては酵素の基質特異性を検討し、宿主たる植物体中に既に存在する物質がこの酵素の基質となって他の毒性のある物質に変化する可能性を検討している。後代交配種について、交配に用いる従来品種と組換え品種とが亜種(変種)間の関係にある場合には、交配に用いる従来品種の成分が組換え品種のそれと大きく異なることもあり、基質特異性について再度検討が必要であるが、亜種(変種)間での交配が行われていない場合にはその必要はないと考えられる。
- (3)摂取量、食用部位、加工法等の変更がないこと
- 安全性評価指針においては、摂取量、食用とする部位、加工法等についても検討している。したがって、安全性評価がなされた組換え品種と後代交配種との間に、これらの評価項目における実質的な相違がない場合、その安全性の確保に支障が生じることはないと考えられる。
2.安全性評価の確認について
1.の(1)〜(3)の各条件を一つでも満たさない後代交配種を製造又は輸入しようとする者等は、個別に厚生省に対しその安全性評価の確認を求めることが望ましい。
3.その他
組換え品種の後代交配種についても、これまでに十分な食経験がなく、遺伝子組換え食品の安全性の一層の確保を図る観点から、後代交配種の安全性評価についも厚生省による調査・研究を引き続き進めていくことが望ましい。