報道発表資料
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厚生年金基金の資産運用に係る受託者責任ガイドライン研究会報告書」について
平成9年3月31日(月)
1.研究会設置の趣旨
- ○しろまる厚生年金基金(以下「基金」という。)が老後の所得保障という目的を達 成できるようにするためには、加入員等の受給権保護の観点から、資産の安 全かつ効率的な運用を行っていくことが不可欠である。
- このためには、運用規制の緩和を図るとともに、英米における「受託者責 任」に関するルールのように、資産運用関係者の役割及び責任を明確化、具 体化したルールの確立を図り、基金が自己責任の下で、自主的に運用を行うことができる環境を整備することが重要である。
- ○しろまる基金の資産運用関係者の義務や責任については、厚生年金保険法等に規定されているが、これらの具体的内容は必ずしも明らかでなく、その結果、一般的には、関係者の責任意識は高いとはいえない状況
- ○しろまる早期に関係者の責任意識の醸成と運用管理体制の向上を図るためには、関係者の義務や責任を明確化、具体化するためのガイドラインを策定し、普及・定着させていくことが必要
2.研究会の概要
- ○しろまる委員は、基金関係者、有識者及び行政関係者から構成(別紙1参照)
- ○しろまる座長は、神田秀樹東京大学法学部教授
- ○しろまる研究会では、計8回にわたり、有識者からの報告や関係者からの意見聴取を交えて議論を行い、ガイドラインを策定
3.ガイドラインの性格・内容
- (策定に当たっての留意点)
- ○しろまるガイドラインの策定に当たっては、米国のエリサ法(1974年従業員退職所得保障法)における概念、義務等の基本的な考え方や精神をできる限り参考としつつ、我が国の実状に応じたものとなるよう留意した。
- (ガイドラインの性格)
- ○しろまるガイドラインは、現行法における「善管注意義務」や「忠実義務」の概念を、基金が管理運用業務を行う場面を想定して、具体的な行動指針として示したもの
- ○しろまるガイドラインは、法令そのものではなく、どのような事項に注意すれば、理事等に求められる職務を全うできると考えられるかを示したもの
- (ガイドラインの内容)
- ○しろまるガイドラインの内容は、次のとおり。(別紙2参照)
- (1)ガイドラインの目的・性格・対象
- (2)基金の資産運用関係者の役割分担
- (3)理事(一般的義務、基本的な留意事項、運用の基本方針、運用の委託、資産管理の委託、運用コンサルタント等の利用、自己研鑽、利益相反、理事の責任)
- (4)代議員
- (5)監事
- (6)資産運用委員会
- (7)その他(記録、情報提供)
4.その他
- ○しろまる報告書には、研究会としての要望(企業年金法制の整備等)も付記
- ○しろまる厚生省では、平成9年度にガイドラインの普及・定着を図り、平成10年度には、5・3・3・2規制を撤廃する予定
別紙1
委員名簿
座長
青木 孝俊
伊勢谷 茂春
遠藤 幸彦
柿沼 光宏
神田 秀樹
小林 昭雄
小林 廉夫
霜鳥 一彦
鈴木 旭
宗 大
角田 隆
土浪 修
渡辺 幹文
(安田信託銀行年金企画部副部長兼年金ALM長)
(セキスイ厚生年金基金常務理事)
(野村総合研究所政策研究センター主任研究員
(興銀NWアセットマネジメント業務部長)
(東京大学教授)
(全国電子機械工業厚生年金基金専務理事)
(東京都電機厚生年金基金専務理事)
(厚生省年金局運用指導課長)
(厚生年金基金連合会参与)
(味の素厚生年金基金常務理事)
(厚生年金基金連合会企画事業部長)
(ニッセイ基礎研究所主任研究員)
(フランク・ラッセル・ジャパン)
[五十音順]
問い合わせ先 厚生省年金局運用指導課
担 当 伊藤(内3348)
電 話(代) [現在ご利用いただけません]
(直) 03−3501−3450
別紙2
「厚生年金基金の資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドライン」の概要
1.本ガイドラインの目的・性格・対象
- ○しろまるガイドラインの目的は、基金の資産運用関係者の責任意識の醸成及び自主性の涵養を図るため、関係者の役割や職務の分担及び責任の内容を明確化、具体化すること
- ○しろまる現行の法的枠組みを前提とし、基金の資産運用のためのルールをできる限り網羅的、体系的に整理。現行法の下で、遵守しなければ義務違反を生じる可能性があると考えられるルール、現行法の精神から判断して遵守することが望ましいと考えられるルールについて記述
- ○しろまる対象者は、主として基金の理事。代議員、監事及び資産運用委員会も対象
2.基金の資産運用関係者の役割分担
- ○しろまる理事は、基金から委任を受け、理事会において管理運用業務の執行に係る意思決定を行う。意思決定は、基金自らの判断の下に行う。
- ○しろまる基金が外部の機関に委託した業務については、外部の機関が基金に対する責任を負う。基金の理事は、外部の機関の選任及び管理について、基金に対する責任を負う。
3.理事
(1)一般的な義務
- ○しろまる理事は、基金に対し、善良なる管理者の注意をもって職務を遂行する義務を負う(民法の類推適用)。また、理事は、管理運用業務について、法令等を遵守し、基金のため忠実にその職務を遂行しなければならない(厚生年金保険法)。
- ○しろまる理事は、管理運用業務について、常勤・非常勤の勤務形態やその職責の内容に応じ、理事として社会通念上要求される程度の注意を払い、基金のため忠実にその職務を遂行しなければならない。
- 特に、管理運用業務を執行する理事(理事長、管理運用業務を行う常務理事及び運用執行理事等。以下「理事長等」という。)は、管理運用業務に精通している者が、通常用いるであろう程度の注意を払って業務を執行しなければならない。
- ○しろまる理事は、その職務の遂行に当たり、複数の利益が相反するような場合には、もっぱら加入員等の利益を考慮すべき。
(2)基本的な留意事項
- ○しろまる運用に当たっては、分散投資に務め、資産全体のリスク・リターンを重視しなければならない。
- ○しろまる少なくとも四半期ごとに資産状況を把握しなければならない。
(3)運用の基本方針
- ○しろまるすべての基金において、運用の基本方針を、基金自らの判断の下に策定しなければならない。
- ○しろまるすべての基金において、政策的資産構成割合を定めることが望ましい。
(4)運用の委託
- ○しろまる運用受託機関の選任については、定量評価及び定性評価により行うことが望ましい。
- ○しろまる運用の基本方針を運用受託機関に提示しなければならない。
- ○しろまる運用受託機関に対し、運用の実態等に関する報告を求めなければならない。
- ○しろまる運用実績の評価は、一定の期間で、あらかじめ提示しておいた基準に沿って行うことが望ましい。
- ○しろまる掛金払込割合の変更等は、適切な評価に基づき、基金自らの判断の下に行わなければならない。
(5)資産管理の委託
- ○しろまる資産管理機関の選任に当たっては、当該機関の信用力や資産の管理体制について説明を求めなければならない。
- ○しろまる資産管理機関の選任に当たっては、資産の分別管理の状況等に留意する必要がある。
(6)運用コンサルタント等の利用
- ○しろまる運用の基本方針や政策的資産構成割合の策定等に関し、必要な場合には、運用コンサルタント等に分析・助言を求めることが考えられる。
- ○しろまる運用受託機関の選任・運用評価に関する助言の契約を運用受託機関と締結する場合、助言の中立性・公正性に十分留意する必要がある。
(7)自己研鑽
- ○しろまる理事長等は、投資理論、資産運用に関する制度、投資対象の資産の内容等の理解及び資産運用環境の把握に努めなければならない。
(8)利益相反
- ○しろまる理事は、自己又は第三者の利益を図る目的で、特別な利益の提供を受けて、積立金の管理運用契約を基金に締結させること等法令上の禁止行為を行ってはならない。
- ○しろまる適正な評価の結果である等の場合を除き、理事が、基金をして、母体企業との間に緊密な取引関係等がある運用受託機関との間で、積立金の管理運用契約を締結させること等の行為を行う場合には、忠実義務違反のおそれがあることに留意する必要がある。
- ○しろまる理事は、管理運用業務の執行に当たっては、もっぱら加入員等の利益を考慮すべきであり、事業主の利益に配慮することが加入員等の利益を犠牲にするような場合には、基金に対する忠実義務に違反することについて、事業主の理解が得られるよう努めなければならない。
(9)理事の責任
- (意思決定)
- ○しろまる理事は、常勤・非常勤にかかわらず、基金から委任を受け、理事会において管理運用業務に関する意思決定を行うが、その勤務形態及び職責の内容に応じ善管注意義務及び忠実義務を負う。
- (業務の執行)
- ○しろまる理事長は、管理運用業務の執行全般について基金に対し善管注意義務及び忠実義務を負い、権限委任等の有無にかかわらず、それらの義務を免れることはできない。
- ○しろまる管理運用業務を執行する理事(運用執行理事、常務理事等)は、基金に対し善管注意義務及び忠実義務を負う。
- ○しろまる理事長等が管理運用業務の執行に当たり善管注意義務又は忠実義務に違反した場合には、連帯して基金に対し損害賠償責任を負う。
- (義務履行の評価)
- ○しろまる理事が義務を果たしたかどうかは、運用実績などの結果で判断するのではなく、職務遂行の時点を基準として、その職務遂行の過程が適切かどうかにより判断すべき。また、意思決定や業務執行の時点における基金の実状その他の具体的な状況に照らして総合的に判断すべき。
4.代議員・監事・資産運用委員会
- ○しろまる代議員は、代議員会における議決に当たっては、もっぱら加入員等の利益を考慮し、これを犠牲にして加入員等以外の者の利益を図ってはならない。また、代議員は、理事が管理運用業務を適正に執行しているかどうかを確認しなければならない。
- ○しろまる監事は、基金から委任を受けて、監事として通常要求される程度の注意をもって、理事の業務執行の状況を監査しなければならない。
- ○しろまるすべての基金において、資産運用委員会を設置することが望ましい。ただし、業務執行に関する意思決定は、あくまで理事会で行われるべき。
5.記録、情報提供
- ○しろまる理事は、業務執行の過程及び結果を記録にとどめ、保存しておくものとする。また、理事会における会議の状況及び決定事項については、詳細に記録し、整理保存することが望ましい。
- ○しろまる理事は、代議員会に対し、管理運用業務に関する情報(運用の基本方針、運用結果等)を、正確に、かつ、わかりやく報告しなければならない。
- ○しろまる理事は、加入員に対し、年1回以上、文書の送付により、管理運用業務に関する情報を、的確に、かつ、わかりやすく提供しなければならない。
- ○しろまる理事長等は、事業主に対し、定期的に、又はその求めに応じて、管理運用業務に関する情報を提供しなければならない。
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