報道発表資料
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心豊かで活力ある長寿社会づくりに関する懇談会報告
平成9年3月25日
21世紀、高齢者が社会を変える
ー新しい高齢者像の確立をめざしてー
「心豊かで活力ある長寿社会づくりに関する懇談会」最終報告について
1.
懇談会設置の趣旨
本格的な高齢社会の到来を控え、介護問題への対応と並んで、高齢者が生きがいをもって、できるだけ元気に暮らし続けていけるようにする対策も重要である。それはとりもなおさず、要介護状態になることの予防につながると同時に、高齢社会を心豊かで活力あるものにする対策でもある。特に、「高齢者の世紀」たる21世紀を目前に控えた今日、「第2の現役世代」として社会を支えるという発想に立った新しい高齢者像を模索すべき時期を迎えている。
このような状況に対応し、高齢者の生きがいと健康づくり活動の新たなあり方等を検討するため、老人保健福祉局長の私的検討組織として標記懇談会を昨年4月に設置し検討を重ねてきたが、今般その検討結果が取りまとめられた。
2.
検討経過
・第1回
平成8年
4月17日
座長選任、検討項目の確認 等
・第2回
5月14日
関係団体からの活動報告 等
・第3回
6月 7日
フリートーキング
・第4回
6月21日
フリートーキング
・第5回
7月25日
フリートーキング
・第6回
9月 6日
「中間報告」取りまとめ
・第7回
平成9年
1月30日
活動実践団体の事例報告
2月17日
座長選任委員による論点整理
・第8回
3月10日
「最終報告」取りまとめ
3月25日
「最終報告」公表
3.
「心豊かで活力ある長寿社会づくりに関する懇談会」最終報告(要旨)
1.新しい高齢者像を考える
1)
「高齢者」観を変えよう ― 例えば、高齢者は70歳から ―
○しろまる
「高齢化率」は65歳以上の人口比で表示されるが、元気で長生きする高齢者の増加や高齢者自身の大きな意識の変化などを踏まえると、一般的な意味での高齢者として、例えば「70歳以上が高齢者」という考え方も必要である。
また、画一的な高齢者観や一律の取り扱いを変える必要がある。
○しろまる
雇用者層が全就業者の8割となっており、退職後の社会参加の場を求めているサラリーマンOBの多い「都市型高齢者像」を念頭に置く必要がある。
2)
高齢者は「第2の現役世代」である。
○しろまる
高齢者も「第2の現役世代」として、社会的に活躍し続けることが求められる。
そのためには、高齢者本人の意欲とそのパワーを生かす社会的仕組みやきっかけづくりが必要である。
○しろまる
その場合、就労を通じた社会参加や本格的な高等教育へのニーズに応えた取り組みも必要である。
3)
会社人間から社会人間へ
現役時代から地域社会ネットワークを形成することが、サラリーマンの定年退職後の地域適応の鍵である。
2.高齢者の生きがいと健康づくり活動とは何か
(1)
自己実現と共生をめざして
「生きがい」とは自己実現であり、仲間をつくり地域社会とのかかわりをもつことで生きがいづくり活動が活性化し、社会的意義をもつ。
(2)
生きがいづくりと健康づくりを一体的にとらえて
「健康」は精神・社会面も含め幅広くとらえられており、「生きがい」と一体的にとらえていく必要がある。高齢者が生きがいと健康づくりに努めることが、「心豊かな」高齢期を過ごすことになる。
(3)
なぜ生きがいと健康づくり活動が必要か
ア.高齢者本人にとって
高齢者が自由に生き、主体的に活動するためにも重要である。
イ.家族にとって
高齢者が健康でいきいきと生活することは、家族にとっても望ましい。
ウ.地域社会にとって
地域社会をつくり、変え、活性化していくという大きな意義をもつ。
エ.社会全体にとって
社会の活力を維持・増進し、高齢社会をより明るいものに変えていくことができる。
3.高齢者の生きがいと健康づくり活動を考える
(1)活動の方法を考える
ア.仲間をつくろう、外へ出よう
イ.知恵と経験を多様な活動で生かそう
ウ.高齢者の、高齢者による、高齢者のための活動をめざそう
エ.社会参加活動に目を向けよう
オ.活動の効果を世の中に示そう
(2)活動促進のための環境整備を考える
ア.活動の拠点を
イ.地域にコーデイネーターを
ウ.地域の活動情報を
(3)健康の保持・増進活動のあり方を考える
ア.高齢者の生きがいづくりは、まず健康づくりから
イ.高齢者にふさわしい健康の物差しを
ウ.閉じこもりがちな高齢者などへの精神・心理面での配慮を
エ.高齢者の健康水準を向上させよう
(4)その他
「心の豊かさ」を考えた場合、高齢者の男女の問題や再婚の問題についても、避けることなく社会全体で正面から取り組む必要がある。
4.行政の役割
(1)地方自治体の役割
ア.市町村の役割
生きがいや健康づくりは、住民に最も身近な市町村が主体的に推進すべきものである。
今後は、サラリーマンOBを中心とした都市型高齢者のニーズに対応した取り組みが求められる。
イ.都道府県の役割
広域的、専門的な活動の支援を行う必要がある。
2)国の役割
国は、ゴールドプランのような「大枠の設定」が中心的役割であり、全国的な視点での取り組みに重点を置くべきである。また、自治体が柔軟に施策を展開しやすいよう行財政制度の改善が必要である。
5.関係団体などのあり方
(1)長寿社会開発センターおよび推進機構の役割は大きい
(2)老人クラブへの期待
(3)その他の関係団体について
ア.社会福祉協議会
イ.健康・生きがい開発財団
ウ.日本セカンドライフ協会
エ.健康・体力づくり事業財団
オ.シルバー人材センター
(4)関係団体共通の課題
ア.存在意義の明確化と事業企画力の向上
イ.財源の自立性と多様性
ウ.関係団体間の連携と再編成
(5)企業の役割
「会社人間から社会人間へ」という本人の意識変革のためには、現役社員が地域・社会的活動に参加しやすいような職場環境の形成や、第2の職業人生への選択の幅を広げるような企業サイドの取り組みが望まれる。
21世紀は、高齢者の世紀である。わが国は、本格的な少子・高齢社会を迎えており、近い将来、高齢者は人口の四分の一をも占めることになる。このように社会のかなりの部分を占める高齢者がどのような生き方をするかは、21世紀における社会のあり方に大きな影響を与えることになる。
高齢化の問題を考えるとき、介護の問題に注目が集まりがちである。確かに、この
問題は、非常に切実で大きな課題であり、要介護高齢者やその家族に対しては最大限の支援が必要である。しかし同時に、8割〜9割の高齢者は、通常は介護や援護を必要とせず暮らしている。このような比較的元気な高齢者が、できるだけ健康を保持し、その意欲と能力に応じて普通に社会とのかかわりを持ち続けることは、要介護高齢者の問題と同じように重要である。中でも、これからの高齢社会を明るく活力に満ちたものとしていくためには、高齢者のパワーを集約し、社会の中にうまく組み込んでいくことが、不可欠である。
新ゴールドプランにおいては、要介護高齢者施策の基盤整備という意味合いで「高齢者の社会参加・生きがい対策の推進」がうたわれ、様々な取り組みがなされてきている。公的介護保険制度が具体化されつつあり、また、関係団体においては21世紀を展望した新たな動きを示している今日、高齢者が社会の重要な一員として、他の世代とともに社会を支えていくという発想に立って、生きがいと健康づくり活動についても、より前向きなあり方を模索すべき新たな段階を迎えつつある。また、活動を支援する行政施策についても、地方分権という大きな流れの中にあって、そのあり方の抜本的な見直しを迫られている。
当懇談会では、昨年4月に発足以来8回にわたり、高齢者の生きがいと健康づくり活動について、その意義を再確認しながら今日的視点で見つめ直し、多くの元気な高齢者が、いわば「第2の現役世代」として高齢期を過ごせるようにするための新たな社会システムづくりを目指して、その活動のあり方や事業展開の方向性、さらには行政施策のあり方などを検討した。
途中、昨年9月にはそれまでの総論的な議論を集約し、「中間報告」という形で一応のまとめを行ったが、その後の懇談会における具体的活動事例に即した議論や、地方分権推進委員会等の行財政改革の最近の議論の動向などを踏まえ、この度、最終報告を取りまとめたところである。
本報告においては、全般的にできるだけ例示を多く挿入し活動事例に即した報告にす るとともに、高齢者観の見直し、高齢者の新しい「働き方」、新しい高齢者教育、地方 自治体(特に市町村)の役割の重視、高齢者・関係団体の主体性の強調、高齢者の結婚 問題への言及など、幾つかの問題提起を行った。
高齢者のみならず若い人も含めた国民全体、生きがいと健康づくり活動にかかわる関係団体、サラリーマンのOB対策を考える企業、そして行政が、それぞれの今後の生活・活動・事業・施策を進める上で本報告を活用していただければ幸いである。