96/07/01 医薬品による健康被害の再発防止対策についてNO3

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 医薬品による健康被害の再発防止対策についてNO3
  2. 対策の決定・実施
 しろまる 副作用や汚染等医薬品による健康被害の発生・拡大が疑われる場合におい
 て、当該医薬品に対する必要な指示、薬事法に基づく回収命令、また、必要
 な医薬品の緊急輸入等各般の措置が的確に行使できるよう、中央薬事審議会
 、厚生科学審議会(仮称)の役割や行政権限行使の発動条件等も含むマニュ
 アルを作成する。
  関連して、中央薬事審議会の専門性をより一層活用する観点から、医薬品
 の有効性、安全性に係る問題に関する中央薬事審議会の提言機能を強化する
 。
 しろまる 行政からの製薬企業に対する指示及び重要な依頼、製薬企業からの行政へ
 の報告については文書化するとともに、製薬企業に対する行政処分の基準の
 明確化を図るなど、行政と製薬企業の関係の透明化を図る。
  3. 情報提供等
 しろまる 緊急の副作用情報については、「緊急医薬品情報伝達システム」(緊急フ
 ァックス)による医療機関への即時の情報提供、関係行政機関による医療関
 係団体等への情報提供、製薬企業からの緊急安全性情報(ドクターレター)
 の発行、マスコミを通じた国民への情報提供等、多様な情報提供手段により
 重要度、緊急度に応じた的確な情報提供を実施する。また、このためのマニ
 ュアルを作成する。
 しろまる 厚生省において集約された副作用、感染症、治験、承認審査に関する情報
 を医療機関等に提供するためのデータベースを医薬品機構に構築する方向で
 検討を進めるとともに、医療機関に対する情報提供手段として重要な役割を
 担っている医薬品の添付文書の記述について薬務局において内容の確認及び
 指導を行い、承認審査及び市販後の安全性の調査を適切に反映させた情報提
 供を行う。
 しろまる 患者等に対し適切な情報提供を行う観点からも、相談機能の充実強化が必
 要であり、行政、医薬品機構、医療機関、民間団体等において、その責任と
 役割分担を踏まえた相談体制の充実強化を図る。
 (2) 治験における透明性と信頼性の確保
  治験については、製薬企業、医療機関及び行政の責任の明確化を図り、国際的
 に通用する透明で信頼性の高い治験ルールを確立する。
 (講ずべき方策)
  1. 今回法制化されたGCP(治験実施基準)の具体化
 しろまる 製薬企業自身の責任で適切かつ信頼性の高い治験が実施されるよう、治験
 総括医師制度は廃止し、治験実施計画の策定や実施医療機関の選定について
 の製薬企業への助言は当該企業が設置する諮問委員会に行わせる方向で見直
 すとともに、適正なモニタリング(治験実施中の進行状況の監視)及びオー
 ディット(治験実施後の治験全体の検証)の実施を義務づける。
 しろまる 被験者の人権保護や自己決定に資するため、被験者に対するインフォーム
 ド・コンセントの文書化を義務づける。
 しろまる 治験医療機関には治験審査委員会を置くこととし、必ず外部の非専門家も
 参加するものとする。
 しろまる 治験時に得られた副作用やウイルス等による汚染に関する情報については
 、厚生大臣に報告するとともに、治験実施医療機関へ周知することを製薬企
 業に義務づける。
  2. 治験に関する情報の公表
 しろまる 治験実施の届出制に基づき、厚生省に届け出られた治験実施医療機関名、
 治験対象疾病名等の情報をできる限り公表する方向で検討を進める。ただし
 、治験の実施それ自体が製薬企業の知的所有権、競争戦略等に関わる面もあ
 ることから、公表の範囲及び公表に関する手続について検討する。
  治験を安全上の観点から中止する届出がなされた場合も公表する方向で検
 討を進める。
  3. 治験費用の支払を含めた製薬企業と治験担当医師の関係の公正及び透明性の
 確保
 しろまる 治験に関し、製薬企業と医療機関の関係の公正及び透明性の確保を図るた
 め、行政、医療機関、製薬企業等による検討の場を設け、製薬企業と医療機
 関の間のモデル契約を作成するとともに、業界団体に自主的に定めている治
 験費用の支払に関する基準の見直しを要請する。
  4. 治験データの信頼性の確保
 しろまる 治験データの統計学的な信頼性を高めるため、ガイドラインに基づき1施
 設当たりの治験例数の最低数を遵守させる。
 しろまる 今年度実施を予定しているGCP(治験実施基準)の適用についてのモデ
 ル事業の成果を踏まえて、医療機関における治験の実施体制の整備を進める
 。
 しろまる 医薬品機構の治験相談において、過去に問題のあった治験担当医師は、一
 定期間治験から排除するよう指導する方向で検討を行う。
 しろまる 治験で得られたデータについては、全症例について、承認申請の際に提出
 することを徹底する。
  5. 国立病院における治験受入れ体制の整備
 しろまる 政策医療を実施する役割を担う国立病院の性格にかんがみ、国立病院が有
 するネットワークを生かして治験を積極的に受け入れるべきであり、そのた
 めの条件整備を図る。
 (3) 薬事行政組織の見直し
  医薬品の審査体制を強化するため、中央薬事審議会の運営方法の改善及び透明
 性の確保を図るとともに、事務局審査体制の充実を図る。
  また、「治験、承認審査、市販後の安全対策等」の行政を一層厳格に実施して
 いくため、「研究開発振興、生産・流通対策等」の行政と原則として組織的に区
 分する方向で薬事行政組織を見直すこととし、組織の再編成につき速やかに結論
 を得ることとする。
  1. 審査体制の整備
  ア 審査方式について
 しろまる 医薬品の承認審査を行う方法としては、わが国が現在採用している中央
 薬事審議会を活用したいわゆる外部審査方式と米国(FDA)が採用して
 いる、多数の専門職員が基本的に自らの責任で審査を行う、いわゆる内部
 審査方式がある。
 しろまる 外部審査方式については、
 ・ 外部の専門家が有する最新の学術の動向、知識を取り入れて審査を
 行うことができる
 ・ 数多くの専門家による評価を受けることができるので、片寄った判
 断に陥るおそれが少ない
 等の利点がある一方、
 ・ 外部の専門家は、本来の業務を有していることから、当該業務との
 関係で薬事関係企業との間の透明性の確保が必要である
 ・ 本来の業務を有する外部の専門家の負担が大きい
 等の問題がある。
 しろまる 他方、内部審査方式については、
 ・ 専任の公務員が審査を行うという点で、身分上、薬事関係企業との
 関係が中立的である
 ・ 内部の審査担当官による詳細な審査、指導を行うことができる
 等の利点がある一方、
 ・ 対象疾病や薬効の異なる多種多様な医薬品を審査するために必要な
 各般の分野にわたる多数の専門職員を確保する必要がある。また、専
 門職員が絶えず最新の学術の動向、知識を吸収できる仕組みを構築し
 なければならない
 ・ 行政の簡素化の方向に反して、組織の肥大化を招くこととなる
 等の問題がある。
 しろまる 以上のように、外部審査方式、内部審査方式はそれぞれに利点と問題点
 を抱えており、どの審査方式が当然に優れているものとは言い得ない。要
 は、最新の学問的知見に基づくとともに公正で厳格な承認審査が行われう
 る体制をいかに築いていくかということにある。
  審査方式のあり方については、そうした視点に立ち、今後、常に見直し
 を行っていく必要があるが、現時点においては、わが国の公務員制度や官
 と民の間の人材の流動性が乏しいという現状等に鑑みれば、行政が多数の
 専門職員を常時確保することは容易でなく、当面、わが国においては、外
 部審査方式によらざるを得ないものと考える。
  その場合、外部審査方式の問題をできるだけ解消していくため、中央薬
 事審議会及び事務局審査体制につき、次のような措置を講じていくことと
 する。
  イ 中央薬事審議会の運営方法の改善と透明性の確保
 しろまる 中央薬事審議会の運営に関し、以下の事項を厳格に実行する。
 ・ 薬事関係企業の役員、職員又は定期的に報酬を得ている顧問等は、個
 別の医薬品の承認審査等に関与する中央薬事審議会の委員に任命せず、
 任期中にこれらの職に就いた場合は、委員からはずすこと
 ・ 委員のうち承認審査等の申請資料の作成に責任を有するものは、当該
 品目の審議・議決に関与しないこと
 しろまる 中央薬事審議会の常任部会については、多角的、総合的な視点からバラ
 ンスのとれた判断が求められるため、有効性や安全性の専門家のみならず
 、例えば、有識者として、理工学、法律等他分野の専門家を委員に加える
 こととする。
 しろまる 新薬については、中央薬事審議会における審議の内容、判断の根拠等を
 明らかにするため、承認後に新薬の有効性や安全性に関する調査報告書を
 公表する。
  特に、全く新規の医薬品については、中央薬事審議会の常任部会におけ
 る審査の前に、有効性や安全性に関わる主要な部分及び審査資料の公表文
 献(学会誌などに公表した新薬に関する論文)のリストを公表し、これに
 対して得られた意見を常任部会に報告する。
 しろまる 中央薬事審議会が必要と認める場合には、中央薬事審議会が申請者から
 直接説明を聴取する機会を設ける。
 しろまる 中央薬事審議会への諮問の要否、常任部会での審査の要否を含む医薬品
 の審査区分等の明確化を図るとともに、中央薬事審議会の運営に係る事項
 全般について明文化した上で公表する。
  ウ 事務局審査の充実
 しろまる 中央薬事審議会が専門的な見地からの審議に専念できるようにするため
 、事務局審査の一層の充実を図る。
 ・ 厚生省内において医薬品の審査を行う担当官の計画的増員
 ・ 事務局審査を多角的、総合的に行うために、薬学の分野のみならず、
 医学、統計学等の分野の専門家によるチーム審査方式の導入
 ・ 審査担当官の研修の充実、国立衛生試験所や国立予防衛生研究所の研
 究者の知見の活用など、事務局審査の専門性の向上
 しろまる 事務局審査を行う上で必要な調査業務については、承認審査業務におけ
 る最終的な責任は厚生省が負うという基本的な前提の下にこれを医薬品機
 構に委ねてきているが、調査機能の充実を図る等医薬品機構の体制を強化
 するとともに、事務局審査体制の整備の状況を踏まえつつ、そのあり方に
 ついて中長期的課題として検討する。
  2. 薬事行政組織の再編
 しろまる 「治験、承認審査、市販後の安全対策等」(医薬品の有効性及び安全性を
 医療機関における治験結果や副作用等の報告に基づき不断に評価するととも
 に、医療現場における医薬品の適正使用を推進するための行政)を担当する
 組織については、医薬品による危害の発生を防止する見地から一層厳格なも
 のとする必要がある。このため、薬事行政組織については、こうした「治験
 、承認審査、市販後の安全対策等」と「研究開発振興、生産・流通対策等」
 (医療ニーズに即応した優れた医薬品の研究開発を支援し、医療現場に対す
 る医薬品の適正かつ安定的な供給を促進するための行政)とを、原則として
 組織的に区分して担当させる方向で具体的に検討することとする。
  また、これらの薬事行政分野はいずれも医療と深く関わっており、最終的
 には、国民に良質な医療を提供していくための手段として位置づけられるも
 のである。したがって、医療の中の医薬品という視点を明確にしつつ、こう
 した行政がより円滑に行われるよう、組織の再編成を検討し、速やかに結論
 を得ることとする。
 しろまる 現在、薬事行政部局においては、各種職種により業務が行われているが、
 職種ごとの専門性が政策に有効に反映されるよう、業務に応じ、各種職種の
 弾力的でバランスのよい配置を図る。
 7.血液行政の見直し
  血液事業については、国、日本赤十字社、地方公共団体、製薬企業等の役割と責
 任を明確にし、相互の連携を強化するとともに、血液製剤の使用の適正化や外国か
 らの輸入に依存する度合いが高いアルブミン製剤等の国内自給に向けての取組を一
 層強化する必要がある。
  また、ウィルス等による汚染等の危険性を完全に排除することが困難であるとい
 う血液製剤の特殊性を踏まえつつ、血液製剤の安全性の確保に努める必要がある。
  このため、日本赤十字社をはじめ、幅広い分野からの専門家や有識者による検討
 の場を設け、下記のような方向で血液事業の新たな展開に向けてのあり方を検討し
 、できるだけ速やかに成案を得て必要な立法措置を講ずるとともに政策全般にわた
 る総合的な見直しを行う。
  あわせて、製造物責任法制定時に指摘されている輸血による健康被害救済制度に
 ついても検討を進める。
 (1) 効率的かつ透明な血液事業の総合的展開
 しろまる 日本赤十字社を血液事業の実施における第一義的な責任主体とし、国は血液
 事業の総合的な指導監督を担当することとするなど、血液事業における国、日
 本赤十字社等の役割と責任を立法措置により明確化する。あわせて、製薬企業
 と日本赤十字社の関係についても検討する。
 しろまる 血液行政の特殊性を踏まえつつ効率的かつ透明な血液事業の総合的展開を図
 るため、厚生省の組織の見直しや血液製剤に係る国家検定制度のあり方等を検
 討する。
 (2) 使用の適正化と血液製剤の完全な国内自給の達成
 しろまる 血液製剤の製剤別の適正使用基準について、対象製剤の拡大や疾患の特性に
 応じた指針の作成を行うとともに、これを遵守させるための具体的方策を検討
 する。
 しろまる 血液製剤の完全な国内自給の達成に向け、成分献血等の推進などの献血推進
 方策、広域的、計画的な需給体制の確立や分画後のペーストの活用等の献血血
 液の徹底的な活用方策などを盛り込んだ中長期的な需給計画を策定する。
 (3) 血液製剤の安全性の確保
 しろまる 中央薬事審議会に血液製剤を介しての感染に関し専門に調査審議を行うため
 の体制を設けることを含め、厚生省の安全確保のための体制を整備する。
 しろまる ウィルス等がより早期に検出できる検査法の研究開発を推進し、その早期導
 入を図るとともに、献血時の問診を強化する。
 しろまる 遺伝子組換え等の技術を応用した製剤や人工血液等の代替製剤の研究開発等
 の推進を図る。
IV 終わりに
 今回のような甚大な被害を発生させないために、本報告書で取りまとめられた改善
 方策は、可能な限り早期にかつ着実に実行していかなければならない。また、今後と
 も各方面からさまざまな意見等が出されることが予想されるが、そのような意見や指
 摘についても的確に受け止め、改善に生かしていくことが求められる。このため、定
 期的に進捗状況を把握するとともに、追加的な課題への対応方策を検討することを目
 的とするフォローアップのための体制を設けることが必要である。
 なお、血友病以外の患者に対する非加熱血液製剤の投与によるHIV感染の問題に
 ついては、省内の「血液凝固因子製剤による非血友病HIV感染に関する調査プロジ
 ェクトチーム」により実態把握のための調査が行われているところであり、その調査
 結果を踏まえて、必要な対策を講じるとともに、再発防止のための必要な改善方策に
 ついては、上記の体制において対応することが必要である。
 国民の生命や健康に直結するような分野においては、通常より重く厳しい責任が求
 められる。本報告書では、組織、システムの改革、改善から運営のあり方の改善まで
 幅広く取り上げているが、これに全力で取り組むこととあわせて、担当する職員が強
 い責任と鋭敏な危機管理意識を持って職務に従事することの重要性を、この際、再確
 認する必要がある。
 問い合わせ先 厚生省大臣官房政策課
   担 当 北村(内2243)、本田(内2259)
 電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
 (直)3591-9869

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