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2017年10月12日 第1回科学的裏付けに基づく介護に係る検討会議事録

老健局老人保健課

しろまる日時

平成29年10月12日(木)
9:00〜11:00


しろまる場所

中央合同庁舎5号館3階共用第6会議室


しろまる議題

1. 開会
2. 検討会の趣旨、検討事項等について
3. 既存のエビデンスの確認、整理について
4. 閉会

しろまる議事

しろまる井口課長補佐 定刻となりましたので、ただいまから第1回「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」を開会いたします。

皆様方におかれましては、お忙しい中御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。

開会に際しまして、本日欠席の鈴木医務技監にかわりまして、濱谷老健局長より御挨拶を申し上げます。

しろまる濱谷局長 皆様、おはようございます。

本日は、お忙しい中、御出席いただきありがとうございます。

今回のこの検討会でございますけれども、さかのぼりますと、一億総活躍プランの中で、今回の考え方のもとになるような、よくなるための介護ということで、行程表の中にも位置づけられております。

また、ことしになりまして、4月14日に開催されました未来投資会議では、当時の塩崎厚生労働大臣から、科学的に自立支援との効果が裏づけられた介護を実現するために、科学的分析に必要なデータを新たに収集する、データベースを構築するということ。それから、そのデータベースを分析いたしまして、科学的に自立支援との効果が裏づけられたサービスを国民に提示する。こういったプレゼンテーションをいたしております。

また、未来投資戦略あるいはいわゆる骨太にも触れられておりますとおり、このデータベースにつきましては、2020年度の本格運用開始を目指すことになっております。

こうしたことを踏まえまして、今回の検討会では、介護分野におけるエビデンスの蓄積と活用に向けまして、一つは、実は平成29年度の老人保健健康増進等事業という、厚労省の向上事業で、自立に資する介護に関する調査研究事業を実施しておりまして、そこで収集した既存のエビデンスについて整理を行っていただきたいと思っております。

また、新たに構築するデータベースで収集する情報とその活用方法についても御検討いただきたいと考えております。

これはこれまでにない取り組みでありまして、検討すべき点が多々あると思いますけれども、どうか忌憚のない御意見、御議論をいただきまして、しっかり成果を出していただければありがたいと思っております。よろしくお願いいたします。

しろまる井口課長補佐 それでは、冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきます。

なお、検討会終了後、11時めどでこの共用第6会議室において記者ブリーフィングを設けておりますので、御希望の報道関係者の方は引き続きよろしくお願いいたします。

しろまる井口課長補佐 続きまして、本検討会の構成員について御紹介申し上げます。

まず、本検討会の座長につきましては、国立長寿医療研究センター理事長の鳥羽研二構成員にお引き受けいただくよう、あらかじめお願いしておりますので、よろしくお願いいたします。

座長より、本検討会について一言、頂戴できればと存じますので、よろしくお願いいたします。

しろまる鳥羽座長 皆様、おはようございます。

暑苦しい日ですが、私だけ孤立無援のところにおります。

きょうはお忙しいところ、ありがとうございます。

本日から始まる「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」ですけれども、キーワードは「介護と科学的裏付け」ということでございます。

言うまでもなく、介護といったものは、当事者目線あるいは利用者目線で見ますと、自立支援に結びつくようないい介護を求めていることは自明の理でありますけれども、科学といったものは何かに関しても、医療のように裏づけが長く続いたものと違いまして、どのようなものを科学的とするかに関して、皆様からゼロベースで御意見をいただいて、本日は、重立った課題を抽出して、今後の検討日程に載せていきたいということでございます。

科学といいましても、介護の科学は、全体像がどのようになったかという物差しの議論といったものがございますし、一方、介護の現場では、利用者の持っているさまざまな課題一つ一つに対して、どのようなアプローチをしたらよくなるかといったような個別の問題があります。

したがいまして、全体の問題と個別の問題で相当広い広がりを持った議論になると思いますが、本日はそのようなことを予断なく議論していただきたい。そして、恐らくこれから出てくる資料に関しましても、全体像のものと個別のものがある程度まざり合って出てきますので、あらかじめ皆様にその辺のところの頭を整理していただいて、今後の御議論につなげていただきたいと思います。

それでは、よろしくお願いいたします。

しろまる井口課長補佐 次に、構成員の皆様について、五十音順に御紹介をさせていただきます。

まず、東京大学医学部附属病院老年病科教授の秋下雅弘構成員でございます。

しろまる秋下委員 秋下です。どうぞよろしくお願いいたします。

しろまる井口課長補佐 続きまして、山梨県立大学人間福祉学部福祉コミュニティ学科准教授の伊藤健次構成員でございます。

しろまる伊藤委員 伊藤です。よろしくお願いいたします。

しろまる井口課長補佐 東邦大学医療センター大森病院リハビリテーション科教授の海老原覚構成員でございます。

しろまる海老原委員 東邦大学の海老原です。どうぞよろしくお願いします。

しろまる井口課長補佐 日本福祉大学健康科学部リハビリテーション学科教授の白石構成員でございます。

しろまる白石委員 日本福祉大学の白石です。よろしくお願いします。

しろまる井口課長補佐 名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学老年科学教室准教授の鈴木構成員でございます。

しろまる鈴木委員 名古屋大学の鈴木でございます。よろしくお願いいたします。

しろまる井口課長補佐 愛媛大学医学部附属病院栄養部部長の利光構成員でございます。

しろまる利光委員 愛媛大学の利光でございます。よろしくお願い申し上げます。

しろまる井口課長補佐 大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻地域包括ケア学・老年看護学研究室教授の福井構成員でございます。

しろまる福井委員 福井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

しろまる井口課長補佐 日本作業療法士協会事務局の三上構成員でございます。

しろまる三上委員 日本作業療法士協会の三上です。どうぞよろしくお願いいたします。

しろまる井口課長補佐 東洋大学ライフデザイン学部生活支援学科准教授の八木構成員でございます。

しろまる八木委員 東洋大学の八木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

しろまる井口課長補佐 なお、本日ですが、このほか、近藤構成員、真田構成員、武田構成員、藤井構成員、松田構成員が御欠席でございます。

また、本日はオブザーバーとして、全国老人保健施設協会から、折茂オブザーバーに御出席いただいております。

しろまる折茂オブザーバー 全老健の折茂です。よろしくお願いいたします。

しろまる井口課長補佐 同じく全国老人福祉施設協議会から、瀬戸オブザーバーに御出席いただいております。

しろまる瀬戸オブザーバー 全国老施協の瀬戸と申します。よろしくお願いいたします。

しろまる井口課長補佐 また、厚生労働省顧問の葛西重雄顧問が出席しております。

しろまる葛西顧問 葛西でございます。よろしくお願いします。

しろまる井口課長補佐 なお、事務局からの出席者については、配付させていただいています座席表に記載のとおりでございますので、個々の御紹介は省かせていただきます。

続きまして、議事に入る前に資料の確認をさせていただきます。

資料ですけれども、クリップをお外しいただきまして、本体資料が1-1から1-2、1-3。

また、次の議題の資料として、資料2-1から2-5まで。

そして、参考資料1と参考資料2がございます。

もしお手元に不足の資料がございましたら、事務局までお申しつけくださいませ。

それでは、議事に入らせていただきます。これから先は、鳥羽座長に議事の進行をお願い申し上げます。

しろまる鳥羽座長 それでは、早速、資料1-1、1-2、1-3について、事務局から15分程度での説明をお願いいたします。

しろまる井口課長補佐 では、資料に沿って御説明させていただきます。

最初に、資料1-1「『科学的裏付けに基づく介護に係る検討会』開催要綱」でございます。

こちらには、「1.開催の趣旨等」「2.検討事項」「3.構成員及び運営」について、それぞれ開催要綱をお示ししております。

また、次のページに、別紙としまして、この検討会の構成員の方々のお名前、そして御所属を挙げております。

続きまして、資料1-2「検討会の基本的な問題意識及び共通理解の確認について」でございます。

こちらは、この検討会を開催するに至った問題意識の御説明及び検討会を進めていくに当たって、最初に皆様に御確認いただくことで、今後の検討会の議論を円滑に進めていけるのではないかと、事務局で考える事項を挙げております。

まず「基本的な問題意識について」の部分でございます。

ポツが3つございまして、1つ目のポツは、介護保険制度を、それまでの措置制度から利用者がみずからの希望に基づいて介護サービス事業者を選択し、利用する制度として発足したこと。

また、利用者のニーズに応じて多彩なサービス類型があり、個々の類型の中でも事業者の方々がサービスに独自の工夫をしていらっしゃるということを述べております。

次のポツですけれども、一方で、それぞれのサービスにおいて、狙った効果がどの程度得られているのか、どのようなリスクが伴っているのかについて、肌感覚では理解できていても、客観的な情報、科学的な検証に裏づけられた情報はまだ十分ではないのではないかということが次のポツに書いてございます

個々の事業者の多様なサービスを比較しながら、自分のニーズに合った最適なサービスを利用者が選択できるように支援を行っていくためには、介護分野においても科学的手法に基づく研究を進め、いわば「Evidence Based Medicine」の介護版「Evidence Based 介護」を確立すべく、エビデンスを蓄積し、活用していくことが必要でありますし、また、そのような取り組みを進め、事業者にフィードバックしていくことによって、事業者にとってもサービスの底上げができるのではないかということが書いてございます。

本検討会は、このような問題意識に基づいて、介護分野におけるエビデンスの蓄積と活用に向けて必要な議論を行ってまいります。

次に、「共通理解の確認について」の部分でございます。

本日、お集まりの先生方には釈迦に説法な部分もございますけれども、本検討会の議論を行う上で、ここで申し上げることに留意して、前提としていく必要があるかと思いますし、もし先生方に御確認いただければ、これが共通の理解になっているという前提のもとで議論が進められますので、この先も効率的に進んでいくのではないかと考えて、幾つか挙げてございます。

まず1つ目のポツですけれども、「くろまる利用者による介護サービスの選択」というのは、利用者がどのサービスを受けるのか。例えば、施設なのか在宅なのか、訪問なのか通所なのか、リハビリテーションなのか通所介護なのかといった「 サービス類型の選択」の段階であったり、サービス類型が決まりますと、今度はどこの事業者を利用するのか、どのくらいの頻度で利用するのかという選択の段階があります。

また、実際に事業者を利用し始めるときには、事業所のスタッフの方と相談して、具体的にどのようなサービスを利用していくのかという選択の段階があります。

それぞれの段階の中で、選択を支援するエビデンスというものがあるだろうと思っておりますし、それらを蓄積していくことが必要であると考えております。

2つ目のポツですけれども、利用者にどのようなサービスが提供されたかであるとか、それに伴って利用者の状態がどのように推移していったかということをデータベース化していくことによって、それを探索的に分類することで、例えば、Aというサービスを受けている人はBの状態が改善しているケースが多いから、AのサービスというのはBの状態を改善させる効果があるのではないかという仮説を見出せる。また、そういった仮説を効率的に得られるようにしていくことによって、エビデンスの蓄積が加速できるのではないかということを書いてございます。

3つ目のポツですが、では、そのような利用者に提供されたサービスであるとか、利用者の状態がどのように推移していったかというデータを収集していくときに、どのような細かさで捉えていくのかということが問題になってまいります。

これについて、ある程度細かくしたほうが利用者の変化を鋭敏に捉えることができますし、サービスにおける細かな工夫も反映することができますけれども、同時に、細かいデータ収集は介護現場の方々に負担をかけることになりますし、場合によっては、採血のデータのように、医療職がいないような現場ではとるのがなかなか難しいこともございます。

また、仮に細かくとれたとしても、統計解析の場ではある程度、各グループでnの数を確保しなければなりませんので、結局のところ、データを丸めることになってしまう。

そのため、どの程度詳細にデータをとる必要があるのかは、十分な見きわめが必要であると考えてございます。

また、仮に細かくとるとしても、既に現場で収集されている情報、例えば、介護記録の記載などの情報の活用を次の策として考えることをあわせて書いてございます。

最後のポツですけれども、エビデンスは蓄積するだけでは意味がなくて、活用することが必要でございます。個々の利用者やそのサービスの選択を支援する介護支援専門員の方に「エビデンスをわかりやすく提示するための方法(見える化)」を検討する必要がございます。

また、個々の事業所へのフィードバックを考えたときには、蓄積されたエビデンスを整理し、ガイドライン化することが必要になってまいりますし、介護現場の側でも、科学的な思考であるとか、そういったリテラシーの向上が必要になってきます。

これらについて、少し後のほうにはなりますけれども、検討会のスコープに含める必要があると思っておりますので、そのことを記載しております。

以上が資料1-2の御説明でございます。

続きまして、資料1-3について御説明いたします。

先ほど申し上げましたような問題意識に基づいて検討していただくに当たり、まずは現時点でどのくらいのことが知られているのかということを確認、整理する必要があると考えております。それを第1回、つまり今回の開催で御議論いただこうと考えております。

続きまして、先ほど申し上げましたようなデータの収集について、どのような情報を収集していくのかという論点でございます。

こちらについては、参考資料1、その中の、右下に「19」と書かれている資料を横に置いてごらんください。

この資料は、ことしの4月に、未来投資会議において、当時の厚生労働大臣がプレゼンテーションした際の資料でございます。

ここに、科学的に自立支援等の効果が裏づけられた介護を実現するため、科学的分析に必要なデータを収集し、データベースを構築しますということが書かれております。

これについて、2020年の本格運用を目指して、まず今年度は、どのようなデータを集めるのかというデータベースの仕様を固めることがミッションになっております。

この検討会における議論についても、年内に主だったテーマについて御議論いただきつつ、年度末に中間取りまとめとしてデータベースの仕様を固めることを考えております。

主だったテーマとしましては、今のところ、「1 栄養」「2 リハビリテーション」「3 (主として介護支援専門員による)アセスメント」「4 ケアマネジメント」「45 認知症」といったことを挙げてございます。

次回の開催で、総論的な部分をもう少し掘り下げて御説明しまして、その後の議論の進め方についても御相談させていただいた上で、次回以降に各論の議論を進めさせていただきたいと思っております。

最後に、「くろまる介護領域におけるエビデンスの蓄積、活用に必要なその他の事項について」は、平成30年4月以降に議論するということを記載しております。

資料1-1から資料1-3までの御説明は以上でございます。

しろまる鳥羽座長 どうもありがとうございました。

データベースのこと、データ収集にかかわる物差しの問題、それから活用、教育などの問題について、日程も含めて御説明がありました。

ただいまのところまでで御質問、御意見などはございますでしょうか。

確認ですけれども、本日は第1回で既存のエビデンスの確認、整理をするとなっております。第2回目に向けての、今後のエビデンスの蓄積に向けて収集すべき情報の整理についても、本日、議論してよろしいということですか。

しろまる井口課長補佐 事務局でございます。

データベースのお話については、総論的な部分も含めて、次回の開催時に資料を御用意しようと思っております。

しろまる鳥羽座長 データベースのとり方というか、基本的な考え方についての御議論をいただいてもよろしいということですか。

しろまる井口課長補佐 はい。お時間がありましたら。

しろまる鳥羽座長 わかりました。

いかがでしょうか。

後ほど、おのおの意見をいただく時間がまたあると思いますので、引き続き議論を進めて、ディスカッションの時間を十分とりたいと思います。

それでは、議題3「既存のエビデンスの確認、整理について」、事務局より説明をお願いいたします。

しろまる井口課長補佐 では、再び事務局から、資料に沿って御説明を申し上げます。

今回、介護領域における既存のエビデンスを確認、整理するに当たりまして、網羅的にというまでには至りませんでしたけれども、幾つか事務局において老健事業を立てて調査を行っております。

資料2-1の1枚目では、横表のものでございますけれども、これまでの厚生労働科学研究事業であるとか、老健局として老人保健健康増進等事業というものがございますので、その中でシステマティック・レビューを行ったものでありますとか、最近、介入研究を行って、一定の知見が得られたものがございますので、その例を挙げております。

また、資料-2においては、老健事業の成果と得られた知見の介護報酬制度への反映について、平成16年から平成20年までの老健事業と、平成18年度及び平成21年度の介護報酬改定の例をもとに御説明しております。

続きまして、資料2-2でございます。

こちらは、「参考資料2」とある資料を横に置いてごらんいただければと存じます。

老健局では、「自立に資する介護に関する調査研究事業」という老健事業を1つ立てておりまして、その一環としまして、ことしの7〜8月にかけて約1カ月間、広く一般の方々も含めて、介護分野の既存のエビデンスに関する情報というものを募っております。その際に提案書としていただくフォームとその記載要領について、参考資料にございます。

これについて、研究者の方、事業者の方、企業の方などから、合計105通の御応募をいただいております。

これらについて、いわゆるエビデンスレベルで分類したときにどうなるのか。また、裏づけとなる論文であるとか公的な報告書、それから、学会発表などが添付されていたかどうかという2つの観点から分類したものが2ポツでございます。

御応募のうち、半数以上について、比較対照を持たない記述研究、例えば、御自身の施設でどのような状態だった人が、このように改善した例がありますというものでございました。

一方で、無作為化比較試験、非無作為化比較試験、後ろ向きコホート研究といったものも7つ程度ございまして、それらについて、この資料2-2の後半でお示ししております。

それぞれ左に番号1から7まで振っておりまして、それぞれの御研究について簡単に御説明いたします。

まず1つ目、左側に「1」と書いてあるものでございますけれども、誤嚥性肺炎で入院されて、自宅退院となった方々について調べたところ、訪問リハを使っていらっしゃった方と使っていらっしゃらなかった方で在院日数を比較すると、使っていらっしゃった方のほうが有意に短かったという研究でございます。

2つ目の御研究ですが、特養の入所者の方を無作為に介入群と対照群に割りつけをして、介入群に特定の方法論によるリハビリテーションを実施して、関節可動域の変化を比較したという研究でございます。

サブグループの解析も幾つかされていらっしゃいまして、それによりますと、要介護4のサブグループの方の右の肩関節、要介護3の方のサブグループの右の膝関節、それから、要介護度によって分けない場合の左の足関節の背屈、要介護3のサブグループの方の左右の足関節の背屈において、介入群は対照群より有意にすぐれた改善が認められたという研究でございます。

3つ目ですが、やはり特定の方法論のリハビリテーションについて、それを実施している通所リハビリテーション事業所における要介護の改善、維持、悪化の割合と、別の既存研究になった、ある医療法人のデータにある改善、維持、悪化のそれぞれの割合を、方法論としては自由度2のカイ2乗検定で比較されたところ、帰無仮説の棄却、つまり、全く割合が一緒とは言えないことが棄却されたため、そこから改善には差がなく、要介護度の維持、悪化には差があると結論された研究でございます。

左側に「4」とある研究でございます。

ある通所介護事業所において、理学療法士の方、また作業療法士の方の配置を行って、かかりつけ医との連携体制の確保、リハビリテーション科の医師の方の関与体制の確保を行ったところ、握力、Time Up and Go Test等の指標において、同一法人の通所リハビリテーション施設と有意差がない結果を得たというものでございます。

左側に「5」とある5つ目の御研究ですが、全国の通所リハビリテーション事業所26施設の利用者の方230名、ここには要支援の方も要介護の方も含まれますけれども、この230名の方を無作為割りつけして、研究群には生活行為向上マネジメントと言われるものを標準的な方法で実施して、対照群の方には通常の機能訓練であるとかレクリエーションを実施したところ、研究群ではADLIADLQOLとも有意な改善が見られた一方で、コントロール群、対照群ではIADLに有意な改善が見られたというものでございます。

6つ目でございます。

通所介護のうち、理学療法士、作業療法士が配置されている事業所の利用者を、配置されていない事業所の利用者と比較した研究でございます。

介入群、つまり、理学療法士、作業療法士が配置されている事業所では、全事業所の共通の介入について、理学療法士や作業療法士が必ず実施するとした上で、さらに個々の利用者の歩行機能の変化に合わせて、適切な歩行補助具の提案を行って、12カ月観察したものでございます。

指標については、歩行速度で比較をしておりまして、歩行速度というのはADLの障害の発生の予測因子として知られているものなので、歩行速度を選んだということでございます。

12カ月後、介入群の歩行速度に変化はなかった一方で、コントロール群では歩行速度が有意に低下していたという御研究でございます。

最後、7つ目になりますけれども、ゲーミフィケーション、通常の訓練にゲームの要素を取り入れて、楽しく継続しやすくなるように狙ったものですが、これを通所介護事業所6カ所で実施して、別の6カ所の事業所を対照群として比較したところ、肩の可動域、足の可動域、認知機能が対照群より研究群で有意に改善していたという御研究でございます。

以上が、エビデンスレベル4以上の7件の御研究の概要でございます。

資料2-1と2-2の事務局からの御説明は以上でございます。

しろまる鳥羽座長 ありがとうございました。

大分、各論に入ってしまって、しかもこの資料の中にさまざまな省略語も入っていますので、一般の方にはわかりにくいと思いますが、この今までのエビデンスの総括を簡単に国内のもので見ますと、まず数が余り多くないことと同時に、非常に各論に入っていて、どのような場面で、どのようなことをやってあげたら、どのようなことがよくなったというところが非常に狭い範囲で報告されているということ。

また、先ほどから話しております物差しの話も、自立度の物差しが要介護度の場合もありますけれども、バーセルインデックス(BI)と書いてあるものとか、リハビリで使われているFIMとか、さまざまな物差しがばらばらに使われていて、もちろん各分野で使われていることが、実はここに皆様から知っていただきたいところであります。

このように、エビデンスを集めていくに当たって、全体像でよくなるものとして、どのようなエビデンスを今後、収集して、あるいは集めていったらいいのか。それから、おのおのの状態像について、どのように集めていいかを、今までの既存の研究のオーバービューから、問題点を皆さんにわかっていただきたいという資料だということであります。

しろまる井口課長補佐 続きまして、資料2-3の御説明を鳥羽先生からお願いいたします。

しろまる鳥羽座長 座長みずからこれを出すのは大変恐縮ですけれども、各論にも入ってしまうので、簡単にしたいと思います。

一つは、今回の科学的介護の中で一番重要なことは、要介護になるべくならない、要介護になっても軽くしていくということで、要介護の要因というものを最近のデータで見ますと、2-3の右上のグラフにありますように、「認知症」が急増していて、また、「関節疾患」「骨折・転倒」といった、いわゆるフレイル、ロコモ関係が相当重要になってきていることを示しておりますが、その左側にありますように、加齢に従って転倒率は上がっているということであります。

転倒は要介護度を悪化する因子でもありますので、転倒予防のケアが大切ということで、そこに外的要因や内的要因を挙げております。一旦、骨折してしまいますと、ADLが落ちて生存率が悪くなることが右下のグラフに書いてあります。

物差しの話ですけれども、左下にありますように、研究レベルのもの、下から2番目の学問レベルで「専門機関で行う方法」、そうではなくて、どこでも行えるチェックリストもありまして、おのおの精密度と、それが本当に大丈夫かという特異度といったものが検定されておりますが、転倒スコアは感度、特異度とも下のものに負けないことが検定されている方法ですので、物差しとしては転倒予防学会などでも採用されている規格であります。

次のページを見ていただきますと、ケアの設定項目としてはどういうことを気をつけたらいいかということですけれども、「転倒歴を規定する因子」です。そこを見ますと「つまずく」からいろいろあります。

したがいまして、この「つまずく」から始まって、必要なことをどうやって見ていくかということになるわけですけれども、科学的根拠はケアの観察項目です。

例えば、転倒におきましては、認知症の入浴の問題とか、あるいはこのような病気別のケア観察項目がありますけれども、それがおのおの疾患ベースで医学的に積み上がったエビデンスをもとにやっていったらどうかという御提案であります。

さらに、来年度以降の議論になりますけれども、このようなエビデンスが積み上がったときに、どのような教育、啓発、活用をしていくかに関しましては、わかりやすいガイドラインでありますとか、ハンドブックでありますとか、eラーニングといったものでつくっていったらどうかという、転倒予防ガイドラインの中での一つの例を示しています。これは数十ページに及ぶものですけれども、つまずくきっかけのエビデンスからこのようなポンチ絵に落としています。

最後のページですけれども、転倒予防手帳の配布効果によって、転倒が大分減っておりますけれども、いいケアといったものは、結局はエビデンスを積み上げて、それを現場に返したときに、転倒なら転倒が減る。これは個別の領域であります。転倒が減ることによって要介護度の悪化が減る、あるいは生活をはかる物差しが改善する。このような形でやっていったらどうかということであります。

確かに、サービスが充実するということは、ケアプランが充実するということですけれども、特定の施設でありますけれども、経年的にケアプランを充実しているだけで転倒、転落が相当減っていくといった実績も出しておりますので、このような科学的な介護に基づく実践といったものは有効ではあろうと思います。そこのインセンティブの議論は別といたしまして、一例としてお見せしました。

それでは、海老原先生、お願いいたします。

しろまる海老原委員 東邦大学の海老原でございます。

お手元の資料2-4をごらんください。

私も各論に入った感じで恐縮なのですけれども、私からは高齢者の栄養の問題を提起したいと思います。

栄養の問題の中でも、栄養そのものではなくて、栄養を摂取する問題ということで、嚥下の問題を取り上げてみたいと思います。

バックグラウンドでございますけれども、日本人の死因ではどんどんどんどん、人口の高齢化とともに肺炎が上昇しておりまして、脳血管障害は低下しております。平成23年には、脳血管疾患を抜いて肺炎が日本人の死因の3位になっているということでございます。

ほとんどの肺炎は高齢者でございますけれども、高齢者の肺炎はどういったものかということで、次に「入院を要した肺炎患者全体のうち誤嚥性肺炎患者の割合」のグラフを見ていただきたいのですが、これを見ますと、80歳以上はほとんどが誤嚥性肺炎で入院されているということであります。90歳以上だと100%に近いです。

誤嚥性肺炎というのは、御存じのように、口腔内分泌物や食事などが誤って気管、肺に入ってしまう肺炎でありまして、そのリスク因子としては、何といっても嚥下障害というものがございます。

嚥下障害が非常に重要だと思うのは、この下の表を見ていただきたいのですが、今回のターゲットであります、施設入所の高齢者では51%という、入所者の半分は何らかの嚥下障害を持っているといういろいろな報告があります。

これは、入所者の全体の半分ということでありますが、実は、入所して時間がたってくるに従って、長年入所している患者さんほど、どんどん嚥下障害の比率がふえてくる。2年入所していますと、大体80%以上の方が嚥下障害を持っているという、New England Journalなどの報告があります。そういった意味で、嚥下障害をどう介護分野で取り扱っていくかは非常に重要な問題になってくるかと思います。

もう一つ、次のページを見ていただきたいのですけれども、別な問題の提起としては、ことしの4月、日本呼吸器学会から「成人肺炎診療ガイドライン」が出ました。

これを見ていただくと、肺炎をまず「市中肺炎」と「院内肺炎」「医療・介護関連肺炎」の大きく2つに分けます。この中の「医療・介護関連肺炎」が、こういった老人施設で起こる肺炎そのものを指しておりますが、この中でポイントとしましては、まずフローチャートで、「NHCAP」と言いますが、これを分けまして、その中で「・誤嚥性肺炎のリスクの判断」「・疾患終末期や老衰状態の判断」が行われ、もしその入所者が「易反復性の誤嚥性肺炎のリスクあり、または疾患終末期や老衰の状態」ということになりますと、考え方としては、その方は「個人の意思やQOLを考慮した治療・ケア」、つまり、赤く囲ったものの反対側を見ますと「治療薬の決定」となっていますので、実は抗生剤治療をしない群に分類されるという考え方が提唱されております。

しかしながら、ここの問題点といたしましては、こういったことを「易反復性の誤嚥性肺炎のリスクあり」とか、その方の「疾患終末期や老衰の状態」で抗生剤治療をしなくていいことをどのように判断するのか。また、「QOLを考慮した治療・ケア」とは何かというのは、嚥下リハビリテーションの可能性を含めて問題かなと考えております。

次のページを見ていただきたいのですが、「嚥下チームによる誤嚥対策」ということで、東邦大学でやっているものを例として提示したいと思います。

東邦大学では、なかなか医師などもそんなにいっぱいいませんので、まず病棟に入院した患者を全て、嚥下評価はリンクナース、またはプライマリーナースの看護師が全てやる形になっております。

嚥下評価をして、それに基づいて間接訓練までを実際に担当する看護師が行う形になっておりまして、そこで何か問題があるときだけ、我々のリハビリテーション科などの嚥下チームに投げてきます。

一体全体、その看護師が患者さんに対してどういった評価をしているのかというと、まず病棟の看護師レベルでフードテストというものと嚥下評価をやっております。フードテストを行う形としては、水をちゃんと飲めるか、ゼリーがちゃんと食べられるか、とろみがちゃんと食べられるかといったことに応じて、右のような表がありまして、それに応じて嚥下食を細かく、うちの病院では嚥下食が6種類設定されているのですが、そのどれに当てはまって開始するのがいいかを決めて、それに基づいて嚥下のケアプランを使いまして、この下にあるようなプロトコールで、病院ですので、最後にお薬などは使うのですが、大きなこととしては、まずケアでできる部分をケアプランとしてやっていって、誤嚥性肺炎などで入院している患者さんは、最初は重症の場合、絶食でございますので、それをうまく嚥下機能を回復させるような形に持っていくというようなことをやっております。

この左下のグラフを見ていただきますと、このような方法で、誤嚥性肺炎で入院した患者さんが再び経口摂取を開始した後に、再誤嚥をしたかどうかを比べた研究であります。

この「コントロール群」と「プロトコール群」は実は同じ患者さんであります。ということは、この患者さんたちは、繰り返す誤嚥性肺炎の患者さんなのです。

こういった患者さんを見ましても、繰り返す誤嚥性肺炎の患者さんといえども、きちんとした嚥下に対する評価と対処をされると、再誤嚥が3分の1に減るという結果がありますので、こういったことを介護施設でもやることが非常に重要ということになります。

もう一つ重要なポイントとしましては、こういった患者さんに適切な食事形態が病院できっちり決まります。その病院できっちり決まったものを介護施設におろしても、実は私たちは6段階の嚥下食が用意されているのですが、介護施設は、見てみますといろいろな難しさがあるのでしょうけれども、1〜2種類ぐらいの数しかないです。

そうなりますと、介護施設に行った段階でこれがうまく反映されないと、すぐ誤嚥をしてしまう場合があるということです。

また、もう一つの問題点としては、うまくそこが成り立ったとしても、介護施設から時々、外泊などでおうちに帰る方がおります。おうちに帰るときに、料理をする家族の方に、この患者さんはどういった食事形態が誤嚥を防ぐのにちょうどいいのかがきちんと伝わるか伝わらないか。その辺の申し送りの問題も非常に重要と思いまして、こういった点を科学的介護という点から評価していただきたいと思って提案させていただきました。

以上です。

しろまる鳥羽座長 ありがとうございました。

御質問、御意見は後にして、もう一つ、松田先生からの資料2-5については、事務局のほうから御説明いただけますでしょうか。

しろまる村松地域情報分析支援専門官 事務局でございます。

それでは、資料2-5について御説明いたします。

資料2-5の印刷が粗くて大変申しわけございませんでした。

事前に解説も頂戴しておりますので、事務局のほうで読み上げさせていただきます。

ケアマネジャーが、本来の制度の目的を踏まえ、よりよいケアマネジメントの検討を行うことが重要と考えており、これまでの研究でも、個別性の反映されたケアプランが、要介護状態の重度化防止に有意な効果が示されることがわかっているということでございます。

具体的には、資料にあるとおり、20022003年の福岡県の介護レセプト、主治医意見書及びケアプランを用いて、無作為に抽出した介護保険サービスを利用する要支援及び要介護1の高齢者1,736名の、要介護度の変化に関する要因を検討したところ、資料にありますとおり、認知症の有無が要介護の悪化に有意に関連していたことと、利用者の希望をよく反映したケアプランが、要介護度の重度化予防に有効な効果が示されたことが明らかとなっているということでございます。

ケアマネジャーが高齢者の状態に応じて、どのサービスがきくかを理解した上でケアマネジメントを行えば、介護保険制度の本来の趣旨である自立支援に資するのではないかと考えるという御意見を頂戴しております。

事務局からは以上でございます。

しろまる鳥羽座長 ありがとうございました。

それでは、これまでのことを踏まえて、いろいろ各論のことも御発表がありまして、皆さんも少し整理されていないかもしれませんけれども、今までの確認、共通理解あるいは各論の発表、今後の方向性についての御発表もありましたが、どうぞ御自由に御意見をいただきたいと思うのですが、その前に、今後の方向性といたしまして、このようなエビデンスの蓄積あるいはこのエビデンスから得られた何らかの新しい知見が、今後、どう生かされていくかについて、すなわち、このようなディスカッションがどのように生かされるかについて、事務局に確認ですけれども、次回の介護報酬の議論も進んでいるところだと思いますが、今回、整理するエビデンスを踏まえた上での、何らかの改定といったものへの影響があるかどうかについて、何か御検討されているところがあれば、事務局からお願いいたします。

しろまる鈴木課長 老人保健課長でございます。

座長が御指摘のとおり、現在、社会保障審議会介護給付費分科会におきまして、平成30年度の介護報酬改定に向けた議論が進められております。

今回の科学的裏づけに基づく介護の重要性ですとか、それをもとにデータベース化をしていくということ。あと、現状でどのようなエビデンスがあるかについて調査をしていることなどにつきましては、現在、給付費分科会で報告をしているところでございます。

今後のお話でございますが、これは2段階あると思いまして、一つは今回の資料2-1ですとか2-2というような、既存のエビデンスをどうするかという問題と、将来的にこのデータベースを確立した後に介護報酬に反映させるのかという問題になりますが、まず後者につきましては、これまで未来投資会議等々におきましても、塩崎前厚生労働大臣が御発言されていますが、適宜、介護報酬改定に反映していくことについては発言しておりますので、そういったデータベースを構築し、きちんとした科学的介護ができるようになる。方法を確立するといいますか、わかることになりましたら、適宜、やっていきたいと思っております。

また、直近の30年度をどうするのかという問題でございますが、今回、資料2-1ですとか2-2等々で提案させていただいておりますけれども、そういった中で今回、具体的な提言をまとめて給付費分科会に送ることは考えておりませんけれども、今回、事務局として我々も勉強させていただきまして、今後、いいものがあれば、必要に応じて適宜、反映させていくということを考えている次第でございます。

しろまる鳥羽座長 ありがとうございました。

以上ですが、いかがでしょうか。三上構成員、どうぞ。

しろまる三上委員 日本作業療法士協会の三上です。

海老原先生のおっしゃった、「嚥下評価に基づく適切なリハ介入」という言葉があります。評価があって、それに基づく適切な介入のプロセスがとても重要だと思っております。

資料2-2の5番目は、大変恐縮なのですけれども、この「生活行為向上マネジメント」という提案は、日本作業療法士協会の提案だと思っております。この生活行為向上マネジメントを実施して、アウトカムが得られたということなのですけれども、この生活行為向上マネジメントというのは極めて単純で、プロセスを用いて対象者に介入することになります。そのプロセスを用いる中で、ICFの第2コードを転用して、対象者の課題を整理するという特徴もあります。

なので、このアウトカムを整理する中で、プロセスもあわせて評価をする。そのプロセスの中に今、ICFという共通言語を用いて、対象者の生活機能を分類をして、どういったプロセスを用いてアウトカムが変化したのか、その対象者にどういった生活像があったのかということは、ICFのコードの分類からもひもづけができる可能性もあると思っておりますので、生活行為向上マネジメントのプロセスで、どのようなプロセスの中で、ICFをどのように活用しているかというところもぜひ注目していただきたいと思います。

以上です。

しろまる鳥羽座長 いかがでしょうか。どうぞ御自由に。

しろまる海老原委員 一つ、データベースの範囲の問題があると思うのです。この資料2-2の「介護保険におけるエビデンス活用に係る提案募集」というものが、どのような形で、どのような範囲で行われたかというのを、少しそのときの状況をお聞きしたいのと、実際、恐らくはエビデンスとしてはエビデンスレベル4以上も7件と言いましたけれども、本当に世の中にあるデータとしましては、もっと物すごくいっぱいあると思うのです。

私たちもいっぱいやっているのですが、老健施設に関するいろいろな介護的な介入研究というのは、かなり古くからいろいろなされているので、恐らくこれでは網羅し切れていないレベルがあると思いまして、この範囲を聞きたいと思います。

しろまる鳥羽座長 事務局、お願いします。

しろまる井口課長補佐 ありがとうございます。

まず、資料2-2にあります「自立に資する介護に関する調査研究事業」で、どういった募集をさせていただいたのかというのをまずお話しいたします。

こちらにつきましては、ことしの7〜8月にかけて、委託先であります、みずほ情報総研のホームページを通じて募集をかけたものでございます。みずほ情報総研のホームページと同時に、各職能団体を通じて、また、我々の別のおつき合いのある方々も広く御連絡をいたしまして、厚生労働省としてプレスリリースも出しておりますので、それも報道されてございます。そういった中で、まずこういった募集がされている。

具体的にどんな募集かと申しますと、介護領域においてエビデンスの確立であるとか、エビデンスの活用が重要だと思っていて、今、どういったことがわかっているのかを幅広く、特に制限なしに御応募くださいとお願いしたものでございます。そこについて、1カ月でいただいたものが105通ということでございます。

確かに先生が御指摘のとおり、今回、例えば、網羅的にシステマティック・レビューを行ったものではございませんし、恐らく論文になっていないものについても知見はかなりあると思っております。

そういったものについて、今回、時間的なものがございまして、網羅的にはお調べできておりませんけれども、今後、例えば、既存のエビデンスを網羅的に調べていく方法も引き続き検討していきたいと思っております。

しろまる鳥羽座長 秋下構成員、どうぞ。

しろまる秋下委員 全体にかかわることで、私自身が気になっていることを少しお話をさせていただければと思います。

今、まず既存のエビデンスを整理してということなのですが、これは非常に重要な作業だとは思います。そのときに、通常やっているもの、これは普通やるだろうというものについてエビデンスがあることを示すことも大事ではあります。ただ、エビデンスがあるからといって介護報酬を高くするのかというと、何かそこは余りぴんと来ないのです。確認作業は必要だと思いますけれども。

それよりも、我々がやりたいのだけれども、エビデンスがなくて報酬がついていない、アンメットニーズみたいなものが実は結構あるのではないかと思っていまして、そういうものを掘り起こすことに意味があるのかなと。

例えば、それほどエビデンスレベルの高いものではないけれども、低いレベルのエビデンスがあることを前向きに評価して、それをやっていただけるようになれば、今までは何もインセンティブがないからやらなかった、やらないところが多かったものが、診療報酬を付ける代わりにデータ入力を義務化して、それを拾っていくことが次のエビデンスにつながっていくという仕組みを考えるのが一つあるのかなと思っています。もう一つなのですが、これは介護保険の話にとどめるのか、介護保険下で行う介護にとどめるのか。私は大学病院におりますので、介護保険を入院中は使わないわけですよね。だけれども、私が一番気になるのは、我々の老年病科に入ってくる方は大抵、要介護高齢者なのです。看護師さんたちは、我々は介護もやっていますとおっしゃいますけれども、入院中に実際に介護施設でやるような介護は提供できないのです。

そうしますと、例えば、誤嚥性肺炎の方が入ってくると、急性期は仕方がないけれども、その後、回復してくる経過の中で、栄養介入、運動といったことがしっかりできない、そういう人員がいない、評価もされない。丸め、DPCなのでもちろんそうなのかもしれませんが、そういうことに非常に悩んでおりまして、入院するとボケると患者の方とか家族の方はおっしゃるけれども、本当にボケてしまうのではないかと思うのです。回診に行くとみんなパジャマを着て寝ている。これではいけないだろうと。もっとちゃんと普通の格好をして、日中にちゃんと活動が提供できることが必要ではないか。誤嚥性肺炎、それからそのほかのサルコペニア、フレイルが認知症に合併している人も入ってこられますけれども、病院にある治療食は、何かを削ったものばかりあって、栄養を強化したものがないのです。塩分制限とかたんぱく制限とかそういうもので、たんぱくを強化した食事などは余りないのです。

そういうこともあって、医療保険下での介護をここで議論するのかしないのかをお聞きしたい。もしするのであれば、積極的に議論に参加させていただきたいと思いますし、しないのであればこの中の範囲で私も考えたいと思いますが、いかがでしょうか。

しろまる鳥羽座長 医療と介護が利用者にとっては一体的なものであり、また、介護施設から見ると急性期病院から介護施設への移動ですけれども、本人、家族にとっては一連の流れの中であるので、分けて考えるというのはおかしなものであろうと、前大臣からは私も言われておりますので、できればエビデンスで共通のものに関しては、医療と介護で両方生かせるものは一体的にエビデンスとして生かしていく中での議論でなくてはいけないと思うのですが、これは事務局はよろしいですか。

しろまる鈴木課長 問題とすれば多分、今のお話の中に2つあって、エビデンスをどう活用するかという点であれば、それは介護のエビデンスを医療側のほうで活用していただく。先ほど、ガイドラインというものもありましたけれども、そういった中で、いろいろなところで多方面に活用していただくことはできると思います。

ただ一方で、もう一つは、データベースのデータをどうするかという問題があって、これについては今のところ、介護保険の施設のほうできちんととらせていただくことを前提にお話をさせていただきたいと思っています。

しろまる鳥羽座長 いかがでしょうか。

未来投資のほうのポンチ絵の中に、データベースの集め方で、通常の介護施設ではとれないような骨の量とか、さまざまな項目も入っていて、それらが科学的介護の中に新しくいろいろとっていくものを、エビデンスとして検討して加えてあるような印象を与えるのですが、その辺はどのように解釈していますか。

しろまる鈴木課長 その辺につきましては、最終的には、1人の患者さんに対して医療のデータベースとどうリンクさせていくかというところに関係してくると思っておりまして、今のところ、まだデータをリンクさせるところが進んでいないのもありますので、将来的には、そういったリンクをすることによって、いろいろなところで個人の情報を得ながら最終的な評価をしていくことになると思います。

しろまる鳥羽座長 エビデンスの収集で必要な過程において、そういうことを検討会の中で要望したり、意見を出すことは有益であると考えてよろしいですか。

しろまる鈴木課長 はい。それは有益だと思います。

ただ、先ほども説明させていただきましたが、では、その介護保険施設の中で血液検査を全部させるのかということになると、それは施設の状態としては非常に難しいということがありますので、施設でとれるデータ、病院でとれるデータ、それからそれをどうやってリンクさせるかというのは今後の話だと思っております。

しろまる鳥羽座長 いかがでしょうか。折茂オブザーバー、どうぞ。

しろまる折茂オブザーバー 施設の側からいくと、先ほど、海老原先生がおっしゃったこともよくわかるのですけれども、やはり病院の中でできることと、生活モデルの中で、家族だとか本人だとかがやれるところはかなり違ってくると思うのです。だから、病院とか大学のほうではしっかりとした個体としての高齢者のエビデンスはぜひとっていただきたいです。

例えば、骨密度の薬は、本当に飲んでいたらいいのか悪いのかということとか、そうしたデータは病院でしかとれないと思うのです。ただ、我々は生活レベルとして、生活モデルの中で、例えば、施設もそうですし、おうちに帰っていただいた後、御家庭で継続してできることを、先ほど秋下先生がおっしゃいましたけれども、たんぱく強化型だとか、おうちでできるようなことと、それ以外にこれもだめ、あれもだめという制限だと、恐らくおうちではなかなかできないし、生活レベルでの利用者や家族の思いをどのように受け止めるのか。そこがこの生活の介護の中でのエビデンスの難しいところではないかと思います。

そこで、いろいろなエビデンスがきょうも幾つか出たわけですけれども、やはり一番大切なのは、生活の場面ではかれる物差しが果たして我が国にあるのか、世界にあるのか。物差しがあって初めてアウトプットを評価できるわけですから、難しい物差しは世の中にたくさんあると思うのです。生活の場面で評価できる物差しを、共通の言語として開発したり、それは、例えばADLもあるでしょうし、認知機能もそうでしょうし、さまざまな分野のところの物差しがしっかりあって、その客観的な物差しがあって初めてアウトプットの評価ができるわけですから、生活の場面での物差しにどんなものがあるのかをしっかり議論しないといけないと思います。例えば、主観的な尺度が入ってしまった物差しばかりだと、笑顔がどうのこうのという物差しでエビデンスを出そうと思っても、それは果たしてエビデンスなのかという話になる。だから、客観的な物差しをしっかり決めて、データをこれから収集していくことが我が国のこれからの道ではないかと思っています。

そういう面で、先ほどICFの話が出ましたけれども、全老健で開発させていただいたICFステージングは、そういう面では物差しの一つではなかろうかと我々は自負しているのですが、それがいいものか悪いものはともかくとして、家族とか素人でも評価できる物差しがあったらいいのではないかと思います。

しろまる鳥羽座長 どうぞ。

しろまる白石委員 日本福祉大学の白石です。

先ほど、アウトカムの話が出ていたと思うのですけれども、アウトカムで、ここのエビデンスレベルの今回、出していただいた資料を見ていますと、要介護、つまり介護時間であったりとかあるいは運動機能、例えば、歩行の速度というものが結構取り上げられているのですけれども、これは運動機能がよくなると当然、余命といったものがよくなるのでしょう。

ただ、それが介護の質に結びつくかというと、決してそういう場面ばかりではないと思うのです。私も在宅でよく仕事をしているのですけれども、運動機能という評価も大事だし、そういった意味では、いわゆる介護の質を見るものも大事で、多面的に評価できて、なおかつ先ほど、折茂先生が言われたような、介護の現場の者が簡単にできるものが要ることは実感しています。ICFなどもあるのですけれども、第2評価点ぐらいまで行くと結構細かくて、一般の方にわかるかというと、決してそこは理解しがたいところもありますので、やはりそういったとりやすさと多面的にというところを含めて議論していかないといけないと思います。

以上です。

しろまる鳥羽座長 いかがでしょうか。八木構成員、どうぞ。

しろまる八木委員 今の皆さんのお話を聞かせてもらいまして、介護の立場から一言お話ししたいと思います。

まず、まだ混在しております、自立支援という考え方自体を、どのようにこの会では考えていくのかの検討が必要ではないかと思っております。ただ単に要介護度の改善になりますと、先ほどもお話がありましたように、生活をしていく高齢者等にとっては、歩けるようになったからそれでいいという形になってしまうだけでしたら、介護が支援する暮らしをどのように考えていくのでしょうか。また、福祉の考え方も含めその人の暮らしをどう支えていくのかと考えていく必要があります。私たちは介護福祉士という国家資格がありますけれども、単なる要介護の改善でしたら、介護福祉士はまるでリハビリとか医療のお手伝いという形になってしまいます。その人が本当に求めている暮らし、思い、ニーズにどのような形で寄り添いながら、生きていてよかったを本当に思っていただけるような支援を考えていくのかということが抜け落ちてしまうことに危惧しております。

ですから、自立支援というところの持っていき方は、単純に効果としての要介護度の改善だけでは、そこから外れてくる方たちもいらっしゃるのではないかと個人的には考えております。画一的な方法とかエビデンスがとても大切なのはとてもよくわかるのですけれども、それが集団に対して効果があったとしても、個人レベルでさらに問題が複雑になるケースはたくさんあるのではないかと思っております。

介護福祉の業界というのは、個人を重視するので、こうした画一的な方法を選択した場合には、ある意味、副作用みたいなものが出てくるのではないかと考えております。

ですから、画一的な方法はとてもわかりやすいのですけれども、いわゆる高齢者の三原則にあります、自己決定の原則や個別化に対して反するようなやり方に特化されると、それにそぐわない方たちがとても悲しい思いをすることにもなるかと思います。

生活をいかにアセスメントをしていくのかという指標が、ただ単に歩ける、走れる、食べられるというところだけに特化してしまうと、危険性も孕むということを考えて、このエビデンスに乗せていきたいと個人的には思いました。

しろまる鳥羽座長 ほかにいかがでしょうか。福井構成員、どうぞ。

しろまる福井委員 今、生活の視点での物差しという話とか、最初に座長がおっしゃられた、全体の問題も個別の問題とあわせて考えていかなければいけないということで、きょうの資料の研究の御紹介は各論でというお話もあったように、先生方の御発表、特に医師のなさる研究ですと、御専門性から各論になってしまうのは、もうそういう専門性だからと考える一方、看護師、介護職の方もそうだと思うのですが、この資料1-2の、補佐から御説明があった問題意識のところで、2ポツ目ですけれども、狙った結果がどのようなリスクを伴っているかという考え方が、看護、そして介護職が生活をベースにして日々、やっていることだろうと考えました。

看護師がその方の生活を支えるという視点で、よく教科書レベルで言われるのが、座長が御説明くださった資料の、1枚目の裏の「ケア観察」項目と先ほど御説明くださった「入浴/食事/排泄」という、「入浴」は看護ではよく「清潔」と言うのですけれども、「食事」は「栄養」とも言えると思いますが、「清潔/食事/排せつ」に加えて「睡眠」と、下のほうに書いてある「転びそう」という「移動」と、プラス「ストレス」「感情」「思い」という、看護ではその6側面を主に考えて、その方の生活リスクを捉えて、そのリスクを回避するためにどういうケアをしたらいいかを日々、アセスメントして、介入して、評価してというものをやっているので、ICFが多項目に及んで難しいということもあったのですけれども、例えば、今、申し上げた6側面をアウトプットに置いて、それをどのようにケアをして改善するかということで、研究を全体的に行っていけば、それが介護とか看護の視点も反映させて、その方のQOLとか、行く行くは自立支援にもつながっていくのではないかと考えながら聞かせていただいておりました。

あとは、訪問看護に関しても、老健事業で私どもを中心に、いろいろとこの10年くらいエビデンスを、今、申し上げた生活の清潔とか、食事とか、排せつ、睡眠、転倒という視点でも、断片的にはデータを積み上げてきてはいるのですが、なかなか報酬改定の目の前の捉えるべきエビデンスのところを最優先するので、中長期的に、計画的に介護とか看護の介入の効果を今まで示せていないので、もし老健局の方々にお願いできるとすれば、少し研究のエビデンスを捉えるために、計画的にというか、中長期的に、サービス形態に応じて、例えば、訪問看護が早くから入った要介護度の低い人とか、病院の医師と在宅の医師が早くから連携を始めた方とか、各サービス類型の使用、未使用の方というような、比較のできるような研究デザインを組んで、その方のQOLとか自立度がどう変わったかといった研究を、これからもしできればすごくいいのだろうとここ数年ずっと思っておりましたので、長くなって恐縮ですが、発言させていただきました。

しろまる鳥羽座長 いかがでしょうか。どうぞ。

しろまる瀬戸オブザーバー オブザーバーで、老施協の瀬戸と申します。

最初に座長が、全体の問題と個別の課題に対する問題があるとおっしゃられていましたので、その両方は本当に必要だと思います。特に個別の課題として、特養では要介護5ですとか、あるいは看取りの方もたくさんいらっしゃいますけれども、要介護5や看取り期の場合は、身体的な改善を見込めない方々がたくさんいらっしゃいます。先ほど海老原先生も、嚥下に関してのアプローチをされていましたけれども、そういう介護もすごく重要で、身体的な改善が見込めない人への自立支援に対しての科学的な評価をするためのエビデンスもぜひ検討していただきたいと思いました。

以上です。

しろまる鳥羽座長 いかがでしょうか。鈴木構成員、どうぞ。

しろまる鈴木委員 細かいことで1点なのですが、きょう御出席されていない松田委員の要介護度の要因分析に関しまして、事務局にお尋ねしたいのです。

私はこの論文自体は読み込んでおりませんので、これだけで非常に限られた理解ではあるのですが、「利用者の希望をよく反映したケアプラン」というのは、どういう物差しで「よく反映した」と研究において捉えられているのか。

というのは、よく介護プランを立てる際に、恐らく介護を受ける本人の希望と、家庭内介護者がこうしてほしいという希望があると思うのですが、例えば、この場合の「よく反映した」というのは、あくまで本人の希望なのかあるいは家庭内介護者なのか。そこら辺をお伺いしたいということと、鳥羽座長のほうから、全体と個別はある程度、区別して考えるべきだということでいいますと、全体という意味では、当たり前といえば当たり前なのですが、介護保険の各認定のときの訪問調査の内容は、個人のデータを縦断的に捉える。その指標として、アウトカムが単に要介護度の変化だけになるかどうかは別にしまして、その調査の内容が、縦断的に全数として捉える意味では非常に貴重なデータで、これを利用しない手は全くないと思うのです。

しかも、私も鳥羽座長も含めて、老年医学の領域ではもう医療と介護を切り離して考えることは、現代の医療の立場から見ても非常に現実にそぐわない。しかも、政策的に、平成26年度に医療と介護は一体的に運用していく。つまり、言いかえれば、利用者とか患者さんのニーズに応じて、医療介護の資源を適正分配すると私は勝手に理解しているのです。

そういう意味では、訪問調査などでいろいろ質問項目がありますけれども、そこにある程度医療的な、きょうも海老原委員とか鳥羽座長のほうから、転倒あるいはフレイル、サルコペニア、それから嚥下ということで、今までのエビデンスの紹介がありましたけれども、そういうある程度は客観性が担保できるような項目を追加することによって、実際にそれが、仮に要介護度あるいはほかのいろいろな機能が縦断的にどう変化したのかを追跡すれば、ある程度、ブロードに全体として介入をすると、こういう効果が上がるということが浮かび上がってくるのではないかと考えております。

しろまる鳥羽座長 今のは重要なことで、本日のデータ収集の中に、新しくデータを集めることはそんなに容易ではないので「既に現場で収集されている情報の活用を考慮する」と書いてございますけれども、それに関して、介護保険の認定の際の70くらいの項目とか主治医の意見書なり、それらの既存のデータの今後のエビデンスへ追加していくための何らかの行程とかお考えは、事務局というか厚労省にございますでしょうか。

しろまる鈴木課長 老健課長でございます。

今、御指摘いただきました、いわゆる要介護認定の74項目のデータにつきましては、今、既に介護DBという形で、74項目のデータと介護のレセプトがリンケージしたものがデータベース化されておりまして、これまでは市町村からの任意でしたが、来年度以降はこれは義務になりまして、全員の要介護認定者の認定データと介護のレセプトが一緒になって、データベースとしておさまることになります。

今後なのですけれども、これと今回のデータベースは、当然のことながらリンクさせていきたいと思いますし、一方で、これまで行っています介護のデータベースと、いわゆる医療のデータベースですとか、そういったところとのリンクも今後、考えながら、トータル的なものについてデータベースをつくっていくのが、厚生労働省のいわゆる基本的な考え方になっております。

ただ、その場合に、まだクリアしていない、名寄せのところをどうするかという問題もありますので、そういったところをクリアしていきながら、将来的にはビッグデータをつくっていくことになると思います。

しろまる村松地域情報分析支援専門官 1点お尋ねいただきました、松田構成員から御提出いただいた資料について、利用者の希望を何をもってよいケアプランとしているかという御質問がありましたので、お答えをいたします。

頂戴した論文を読んでみますと、まずモデルとなるような理想的なケアプランをもってして、評価をする保健師さんたちにトレーニングをしたということです。そのトレーニングをした保健師さんたちが、実際のケアプランを評価して、これがよいのか悪いのかは、いい、悪い、普通という形で評価をして点をつけたということでございます。

ですので、何をもってよいとしたかというのが、トレーニングに使った、松田先生がお考えになったよいケアプランがモデルになってございます。

利用者の意向に家族が入っているか入っていないかでございますが、それについては論文の中では触れられてはおりませんでした。

しろまる鳥羽座長 いかがでしょうか。どうぞ。

しろまる伊藤委員 今のよいケアプランというものなのですけれども、私は介護とかケアマネジメントの領域の人間なのですが、どうしてもこういう感覚的な部分が強く出てしまっている面はあると思います。

先ほども、笑顔がふえたみたいなことに対して、それでは評価できないよねという感じになるのですけれども、介護の領域の人間は割とそういうことに価値を置いてしまう傾向があって、実際にケアをしていると、明らかに違うことがわかるけれども、それを科学的に説明しろと言われてもできない事象はかなりたくさんあるように感じております。

なので、ここまでのお話し合いをお聞きしていて、客観的、統計的なものでしっかりと押さえていくことの重要性はすごくよくわかるのですけれども、もう一方で、統計処理に今まで載ってこなかったものをどうキャッチしていくのか。例えば、脳の活性度と表情みたいなものの関連を画像的にとることがもし可能なのであれば、それをビッグデータとして集計していくと、こういう表情がふえていくこと。つまり、感覚的に介護や看護の方々が、いいケアをすると笑顔がふえるみたいに言っていたことを、画像データを膨大に集めることで、いいほうに脳がいっていることに、もしかしたら説明がつくように今の時代ならなるのかもしれない。そういう今までやってこなかった物差し、介護特有の質的で測定しがたい物差しをもし取り入れられると、それこそ世界のどこにもない、日本が先駆けてやる物差しがつくれるのかなという夢想もするのですけれども、それを介護の現場が研究データとして出せるかというと、ちょっとそこは苦手なので、逆に言うと、そういうデータをとるための手法を提案して、現場がそれに沿って動くであるとか、そういうやり方をしないと、データを挙げてください、根拠を示してくださいという形だと、どうしても統計処理に載りやすいものしか来ないのではないかとも思います。

なので、募集されたデータも、恐らく統計的処理に載るデータがほとんどなのではないか。あるいは、余りにも質的過ぎると、エビデンスとしては使えないという判断になるのではないか。そのようにも考えております。

なので、感じてはいるけれども、科学的に捉えられなかったものをキャッチする方法を示していけると、かなり大きな転換点をつくれるのかなと考えておりますが、では、それをどうやればできるかと言われると、ノーアイデアというか、まさに夢想の段階、アイデアしかない状態にはなります。

済みません。とりとめのない形なのですが、以上です。

しろまる鳥羽座長 いかがでしょうか。秋下先生、どうぞ。

しろまる秋下委員 今、伊藤構成員がおっしゃったことが非常に重要だと思っています。

先ほど、私はアンメットニーズということを申し上げましたが、ケアの仕方だけではなくて、評価に関してもまさにそうで、例えば、認知症の人のQOLをどうやって評価するかというと、これは難しいわけです。

そういう点で、今回のデータをとっていくほうの話なのですけれども、バイオマーカーの話なども出てきていて、それは多分、見た目みたいなものも一つのバイオマーカーですので、例えば、私たちは認知症の人の見た目年齢の研究などをしているのですけれども、認知機能は実年齢よりも見た目年齢によく相関するみたいなことも出てくるのです。それは、例えば介護される方が、いつも暗い表情をしている人が笑顔になったというのは、まさにそのものだと思います。

今、そういうデータはないと思います。では、それを主観的な評価でとどめて、アウトカムとして使っていいのかというと、それはまずい気もするのですが、客観的に評価できる手法が確立されれば、私はただ脳の画像などということではない、もっと簡便なものでなければいけないと思うのですけれども、そういうことも将来的には確立するべきだと思います。

名古屋大学の梅垣先生の、認知症の人でも評価できるQOLのようなものも非常に有効なのではないかと思っています。

しろまる鳥羽座長 在宅医療ですね。

しろまる秋下委員 在宅医療ですか。

しろまる鳥羽座長 ほかにいかがでしょうか。

しろまる秋下委員 では、もう一つついでですが、先ほど八木構成員とか福井構成員が言われたことの中で、個別化ということです。エビデンスをこれから整理していくに当たって、例えば、医療のガイドラインだと、この病気にはこういう治療法が推奨されると出てくるわけです。そうすると、介護の世界では、もちろん背景疾患も難しいのですけれども、状態によって違うわけですから、こういう状態の人にはこういう介護が推奨されるというような、ガイドラインはそういうものだと思いますけれども、そこをどのように層別化とか個別化していくか。エビデンスを拡大解釈するときに、かなり注意しないといけないのではないかと思っています。

その辺のところは、私たちは医者で、どうしても病気の立場から考えがちになるので、疾患ではなくて状態像とか要介護度でいくのか、縦と横を全部いくのか。余り細かくすると、ごく限定された人にしかこの介護法は有効ではないのかとなってしまうのですけれども、収集する際にそういう情報もきちんととらなければいけないと思います。

もう一つ、もし既存のエビデンスを集めてまとめる場合に、どうしても日本からだと、先ほど挙がったようなものになって、結局、海外の論文をシステマティック・レビューする形になってくると思うのですけれども、日本の多様な介護現場とは異なる、ナーシングホームが主体みたいになってくるのです。それを日本の介護現場に当てはめていいのかというところもありますので、そこは注意していかなければいけない。そこら辺は、むしろ介護の先生方に御意見を聞いておいたほうがいいのかなと思っています。

以上です。

しろまる鳥羽座長 折茂オブザーバー、どうぞ。

しろまる折茂オブザーバー とても重要なことだと思うのですけれども、例えば、医療はガイドラインでパッケージ化ができるわけですね。介護は同じ状態像でも、利用目的というか、願い、思いが全く違うわけですね。寝たきりでも私はひ孫のピアノの発表会に聞きに行くのが願いだという人と、何とか自分で御飯を食べたい人とか、利用目的というか、願い、思いによって個別化を考えてくるわけです。

ですから、先ほど座長がおっしゃった、全体と個別というのは、利用目的というか、その方の気持ちをどう捉えるかということで、医療はある意味、簡単ですよね。きのうの状態にすればいいわけですよね。血を吐く前の状態に直せばいい。心臓が止まる状態より前に直せばいいという、もとに戻すことが医療の目的ですけれども、介護の場合はその方の願い、思いをどのように受けとめて、どのように実現するかという、その個別化が、DPCみたいなことをやろうとすると、介護はとても難しい。だから、状態像だけでは何ともいえないのだと思います。

ただ、私は、笑顔が最後はすばらしいことなので、笑顔を否定しているわけではないのですけれども、笑顔も当然、一つの尺度なのですが、医療の世界のようなエビデンスが、介護の世界では余りにも少ないのではないかと思うのです。ですから、例えば、ADLのようなわかりやすいところについては、客観的なエビデンスのデータを取るべきだと思います。客観的なデータを集めないと、医療に近づくことは難しいと思います。最低限のエビデンスづくりを介護の世界でもうちょっとつくっていく。だけれども難しいのは、先ほど言った個別性の問題になってきますので、そこは切り分けて考えていくのがいいのではないかと思っています。

しろまる鳥羽座長 ほかにいかがでしょうか。

伊藤委員、どうぞ。

しろまる伊藤委員 今、お聞きしていて、医療ときちんと共有できる部分として、やはり歩行機能であったり嚥下機能であったり、そういった生理学的な要素であるとか医学的な要素をきちんと押さえて把握できる部分というのは共有できるかと思います。

そこで介護が終わらないのは、飲み込めるようになったことがその人のゴールではなくて、食えるようになって、それでどううまい飯を食うのとか、転ばないで動けるようになったよ、それで何をやるのというところを設定しないと結局、治ったけれどもつまらないみたいなことが起きてしまうのが介護の難しいところでもあり、逆に、何をやるのという個別性が余りにも強いというところが、これまでの科学的な根拠を出すということを遠ざけてきた。

吐いても食べたい人もいれば、まずいものを食うぐらいなら死んだほうがいい人もいれば、かじりついても長生きしたい人もいれば、そうでもない人もいるみたいに、一人一人違う。共通のゴール、例えば医療でいう治療目的に当たるような共通性がなかなか出せないことが介護の特徴の一つなのかと思います。

ですから、治りたくなくて病院に行くということはないわけですけれども、生きていたくないけれども介護を受けている人はいっぱいいたりするし、あるいは、生きていたくないというのも、自分の願うことができないから、こんなことなら死んだほうがいいと思ってしまっている状態像もすごくあって、その辺の多様性が実は介護のターゲットで、それをちょっとでもよくするということを一生懸命、現場の介護職やケアマネジャーがやっているわけですが、すごく根拠がはっきりしている領域から見ると、一体何をやっているのかというふうに、理解しがたいというか、そういうことが結構、医療と福祉の連携などの場面でも多く出てきています。なので、その辺の、共通して必ずこれは大事にする根本的な機能の部分と、それを上乗せしてやっていく部分、質的に見ていかなければいけない部分が整理できると、医療と福祉の連携などの面でも意味が出てくるのかと思いますし、介護特有の物差しの構築が大きなポイントになるのではないかと思いました。

以上です。

しろまる鳥羽座長 三上委員、どうぞ。

しろまる三上委員 対象者の目標は人それぞれ、千通りあると思っております。今、介護保険の個別機能訓練加算等で、興味・関心チェックリストというものもあると思うのです。そういったケアマネジメントの入り口のときに、高齢者に何を聞くか。目標も千差万別だと思いますけれども、どのようなところに興味があって生活をしているのか。ここも個別性の尺度という形で今、既にある興味・関心チェックリストというものを使って、対象者の意思を確認しながらリハビリテーションをしていきましょうと。今、既にあるものもありますので、興味・関心という入り口で少し整理もできるのかと思って聞いておりました。

以上です。

しろまる鳥羽座長 利光委員、どうぞ。

しろまる利光委員 栄養の分野ですが、栄養の分野というのは、医療でも、介護においても、食べられているから大丈夫だろうとか、何かではなく摂れているだろうとか、ゼロか100かというような論点で見られることが多いように感じます。医療の世界においても栄養士の数も少ないこともありますが、食事摂取について見られているようでいない部分でもあり、なかなか改善ができていないということも事実かと思います。

介護の部分において、私も介護のエリアの状態のサポートに参りましたときに、食べられなくなるタイミングというのが予測なく起きます。きょうは100%食べられていても、例えば、きょうは娘さんから電話がなかった。これだけで食べられなくなる。それがきっかけで食べられなくなる。もしくは、風邪を引いて食べられなくなる。そういうことも含めて、実際に摂取量を見るということも必要だと思います。食事や栄養がとれなくなる原因や理由を精査しながら、そのときにどう介入していくかということについても必要ではないかと感じています。

しろまる鳥羽座長 ほかにいかがでしょうか。

海老原委員、どうぞ。

しろまる海老原委員 介護全体をどう考えるかということが重要かと思うのですが、例えば医療の現場ですと、病院評価機構という第三者機関できちんと評価されて、ランクづけされて、それに応じてDPC係数とかが決まっていくわけであります。

しかしながら、皆様の介護施設はすばらしいのだと思うのですが、実は、そうは言ってもいろいろな介護施設があると思います。そういったものをどれだけ、介護施設を利用する利用者の立場から考えたら、自分がどこに入りたいか、親をどこに入れたいかということを考えると、いろいろな尺度があると思いますが、介護施設評価機構みたいな第三者機関できちんと評価して、そういったものである程度の評価されて、それに応じて、お値段が高いとかそういうのがあってもあえて入れるかとか、そういうのは利用者の判断になるかと思います。客観的にいいか悪いかと言うとまた語弊があるかと思うのですが、介護施設が自分たち(利用者)のニーズに応えられるのかどうかという指標を出していくのは、利用者の観点からいうと非常に重要なことかと思います。

しろまる鳥羽座長 福井委員、どうぞ。

しろまる福井委員 先ほど秋下先生がおっしゃった、今回出していただいたような日本語のエビデンスの知見と言うと、少し限局されるので、海外のレビューもというのは、やはり思考回路としては本当にそうするべきだろうと思い、私どもも看護とか医療、介護の連携というものをテーマにいろいろ考えていて、海外の論文のシステマティック・レビューをすると、日本でいう介護職はケアギバーとかケアワーカーとか、あとはケアワーカーとかの言葉を外れてナーシングエイドとかナーシングアシスタントというのでしかひっかかってこないということで、やはり根本的に仕組みが違って、日本ですと介護も専門職、医療も専門職という、両方が強みを出し合ってというのが連携と言われていると思うのですけれども、本当に全然無資格に近いような形ですので、研究も発展していないなということで、私どもが調べる範囲でもなかなかエビデンスが上がってこないと感じております。

そのような中、先ほど伊藤構成員がおっしゃった、少し未来型の、科学技術が物すごい勢いで発展している中、今、議論に出ているような笑顔だとか表情というのが、私がいる大学で、看護がケアする効果とかを何とか科学技術ではかれないかというので、工学系の先生と少しやりとりを始めているところなのですけれども、画像で、もちろん倫理的な処理などはたくさん施した上でという条件つきではあるのですけれども、市場に相当出回っているような、WiiだったりKinectというものであったりという、安価で売り出すレベルでの精密な行動や表情を捉えられるというような機械も出回っている状況もあるということですので、既存のデータベースで捉えているような項目は、一番王道できっちり考えていくのに加えて、少し先を読んで、場合によっては未来的な科学技術とかテクノロジーを使ったアウトカムを捉えておくということも必要かもしれない。それが先ほどおっしゃった日本の将来の強みになるかもしれないということで、場合によっては工学系のそういう医療や介護の研究でコラボされている先生などに、少し情報などもいただきながら、未来型のアウトカムの想定もしていいのではないかと私も考えました。

しろまる鳥羽座長 葛西顧問、どうぞ。

しろまる葛西顧問 私の立場で言うと、今回、厚生労働省ではデータヘルス改革推進本部という、医療も介護も健康も全部データを統合しましょうというプロジェクトにかかわっているのですけれども、きょうのこの資料、政策課題を書いた未来投資における議論について、この資料作成も多少関与しているので何ともいえないのですけれども、この形のデータベース型のイメージを結構捉える方が非常に多いのです。

もう一個私が気にするのは、実はきょうは介護の分野の方なので、介護の分野として科学的とわざわざつけるぐらい介護というのは、多分、今は科学的ではないから科学的に施行しようと。ところが、臨床の先生方にいろいろお話を聞くときに、葛西さん、実は医療も全然どこも何も科学的でも何でもないですと必ず言われて、私はもともと厚生労働省ではなくて、前は経産省だったのですけれども、厚生労働省に来るとみんな、それぞれ各分野で、我々の分野は科学的ではないのでと言い続けるというのがありました。

ところが、私としてはシステムをつくらなければいけないポジションでございます。そのシステムを急いでつくろうとしているわけでも、乱暴につくろうとも思ってはいないのですけれども、結構悩ましいのが、例えば基本的に定量的な検査データ。これは全部、何らかの標準化されたデータが捉えられています。

恐らく病院のドクターの方々ですと、その検査データをコピーペーストして医療記録を書きます。医療記録になると、当然ですけれども記録なのです。記録から保険請求するときに症状詳記を書くので、さらに長い文章になります。常にデータで難しいのは、定量化されたデータと記録の端境期にずっと挟まれ続けているのです。

そのときに悩むのが、名寄せの問題であるとか、データのリンクをとるとかいうときに、一つが、データの取得を既存のものを使うといったときに、ぜひ今後とも議論の中で御意見を伺いたいなと思って、きょういきなり何か結論を出してくるものではないのですけれども、既存のデータで取得するというのは電子カルテなのか。介護施設は違うでしょうし、何で皆さん既存のデータを取得していて、何をつないでいくといいのかというのが、実はとんとわからないというか、既存のものを生かすべきだというのはあたかも正論のようなのですけれども、既存のものを大量に生かすとなると非常に膨大なシステムを絡めることになります。

それから、もう一個。諸外国ですと、例えば介護分野ですと意外とブロックチェーンとか、いわゆる腎臓の記録を3年間データをとっていくのと、電子カルテを新しくリンクさせるみたいなことをイギリスがやっていたりします。

アメリカも実は同じようなシステムをつくっているのと、もう一個、アメリカのグーグルですと、まさに今、言ったような、画像であるとか介護ロボットです。介護ロボットと会話をさせた音声を全部センシングして、それを連携させるということもやっているようです。

これは、この資料のようなデータベースの構造には全くなっていなくて、いろいろなデータベースが自動的にリンクするというブロックチェーン型のシステムというものを使っているのです。

なので、このデータベースに何を登録するかという議論から出発するのはちょっと危険で、何のデータをどう標準化するかというと、多分、ICD10で病名が決まっています。SS-MIXで病名が決まっています。しかし、電子カルテに行くと、人間は誰もSS-MIXどおり書きません。なので、多分ここで、私も大賛成なのですけれども、ICFが多分幅広いでしょうとか、実践記録様式が幅広いでしょうとは言うのですが、それを幾ら厚生労働省が標準をつくっても、現場でそのとおり入力することは多分ないと思うのです。

その実態に合わせた形で、どのようなシステムをデータ収集できるかというのをぜひ御議論いただくことが、私は非常に興味があるところでございます。

私自身も特に医療とか介護の専門職ではないので、逆にいうとITの専門でもあるので、そういう視点で御議論いただけると、要望を言うというよりは、どのような姿でシステムがあるのが一番望ましいのか、皆さんにとって一番いい姿なのかというのを、頭の片隅に添えて議論いただけるとすごくうれしいと思っています。

しろまる鳥羽座長 いかがですか。

それでは、ちょっと私から。

まず、医療も科学的ではない部分が多いという点に関してですけれども、高齢者がふえてきますので、先ほどの議論で、治せば大丈夫という医療がほとんど通用しなくなってきて、例えばフレイルの方ですと、20人のうち19人は外科手術した後に家に帰れないのです。すなわち、医療の中でも、医療と介護が一体で生活機能を重視した医療でないとだめで、そこにはエビデンスが少ないので科学的なものが少ないのは当たり前だと思うのですけれども、特に旧来の縦割りの臓器別の中では、いまだに病気だけ治して終わりというような古い医療が行われている意味では、非常に科学的ではないと思います。

先ほど葛西顧問が、どのような機能評価のデータを入れていくか。物差し論は別のところで議論されるでしょうけれども、議論のきっかけとして、私は実は物差し学として、総合的な機能評価のガイドラインも班長をやってつくった立場で、いろいろな議論をしました。もう15年くらい前の、20年前の議論も同じようなことがありました。

おのおのの現場で、おのおの違う物差しが使われているのを、統一したほうがいいのではないかという議論もありましたが、それはやはり無理だと思います。

それはおのおののところ、例えば看護のほうではMDSで三百何十項目でこれを、ナーシングホームの物差しで使っているところもありますし、リハビリでは何とかというのがいっぱいあるわけです。

それを統一するというより、物差しがどういう意味を持っているかということを皆さんで共通認識を持てば、メートル法もヤード法も尺貫法も若干違っていても、何をはかる物差しかということをまず共通認識として、場合によってはそれらをどのくらい互換性があるかを検討していくことによる。

ただ、その物差し自体は、評価自体はある程度認められたものでなくてはいけないし、先ほど発言があったように、将来認められていくべき、まだ開発されていないものをどんどんやっていくのは大変おもしろいと思いますけれども、現状ではこのデータに入れていくものは統一する必要はないけれども、どういうものをはかるものというカテゴリー別に必要な物差しを、この科学的介護の実現のためにどういうものを入れていくべきかということは、この委員会でぜひ議論していただきたいというのが私の入り口論です。

何かつけ加えることはございますか。

例えば、Barthel indexFIMというのも少しは違いますけれども、細かさが違うだけで、大まかな精神は違いませんし、細かさが違うだけで精神は同じなのです。何をはかろうか。ですから、そういうカテゴライズされたものを使えば、実はケアプランの中で既存の介護施設からとれると思います。

ただ、問題は、電子化されていないので、電子カルテの中から医療はとれるけれども、介護のほうは何をとれるか。ケアプランは今、どうですか。コンピュータ化されて記録が残っているのがほとんどですか。

しろまる折茂オブザーバー 多いですかね。

しろまる鳥羽座長 そうなるとケアプランの中に評価項目が、実はケアの評価の仕方も山ほど、星座理論とかいろいろな理論が5つ6つあるので、どの理論でやっているかということによって分け方は違うのですが、ただ、考え方は一緒なのです。星座理論でもどのようなものでも、心の分野、体の分野、食事、排泄など、そういう大まかなことを網羅していますので、集めるに当たって翻訳家というかトランスレーターが必要です。

このトランスレーターこそ、まさにこの委員会の構成員は一番いいトランスレーターでありますので、そのAというものとBというものでやったときにどうかというときは、翻訳の仕方はここで議論しておけば行けるのではないかと実は思っています。

ですから、一つに決めるという議論には、私は余りくみしないのです。

いかがでしょうか。

海老原先生、これに関して何かありますか。

しろまる海老原委員 鳥羽先生のおっしゃるとおりで、なれてきている評価とかもありますので、なかなか一つにまとめるのは難しい。

全体としてどうなるかということが大ざっぱにわかって、そういうことがそこできちんとなされているか、なされていないかとか、そういったことが重要かと思いますので、そういったことをうまく取り込んでいければと思います。

しろまる鳥羽座長 折茂オブザーバー、どうぞ。

しろまる折茂オブザーバー 本当にそうだと思うのですけれども、尺度が本当に何を目的としているかということを勘違いしてしまっている人が結構いて、例えば要介護認定がそうですね。あれは、よくなったかではなくて介護の手間ですし、介護報酬を決める尺度ですね。ですから、市町村が要介護4か3になったら御褒美をあげる。これは介護報酬が減るから、市町村はよかったわけで、それはそれでいい使い方なのだと思うのですけれども、決して4が3になったから、利用者はよくなったのかというと、その指標ではない。例えばの例なのですけれども、そこのところが日本中こんがらがってしまっていて、要介護度がよくなったほうがいいのだというふうにとられてしまっていて、介護報酬の尺度。データを今度、要介護認定でとるのも私はいいと思うのですけれども、その辺がみんな、国民もマスコミもこんがらがってしまっているのではないのか。ですから、何の目的の尺度なのかというところを、もっと明確に皆さんにアピールしていかないといけないのではいなかと思います。

しろまる鳥羽座長 葛西顧問、どうぞ。

しろまる葛西顧問 忘れないようにだけ言っておこうかと思うのですが、もしかしたら厚労省の方から、ええって。ただ、私はこれは一貫しているので。

何かというと、要介護認定のスケールというのは、もちろん否定するものでも何でもないです。一つの要介護認定は、介護を受ける側の人がどうなっていくかということの認定のあり方です。

私がずっと一貫して言っているのが、その周りにやはり家族がいます。それから、その周りに社会があって、その全体がバランスをとれなければいけないはずなのだけれども、逆に言うと、きょう何名かの方がおっしゃったとおり、ただ要介護認定が戻れば幸せとは限らないですねという話については、私は非常に興味があって、せめて家族のラインまでは意識するべきだろう。

ただ、そうなると当然記録になっていくわけです。私もそうですけれども、介護家族なので、デイサービスに送り迎えするときに連絡帳を書きますみたいなところから、全部記録になっていく。記録になっていくゾーンと、一番喫緊の救急とか、命にかかわる領域になるとデータになってくるので、その記録側のあり方をどうやってとるのかというのに非常に興味があるので、家族という範囲までの議論もすごく伺いたいと思っている次第です。

しろまる鳥羽座長 いかがでしょうか。

しろまる八木委員 先ほどの目的というところをはき違えたらということもあったのですけれども、例えば、この要介護認定を改善するという形で議論が進んだ後に、実際それが活用された後に一時的に要介護度が改善しました。しかしまたその後要介護度が悪化したときの御本人さんの気持ちや家族のショックとかはどうするのでしょうか。また次に、以前よりもハードなリハビリしたら戻るではないかといっても、一方で高齢化は進んでいる。そのようなさまざまな問題の複雑性みたいなところをフォローするのが、多分介護職になってくるのではないかと思うのですけれども、そこの評価をどのようにしていくのかということを懸念しています。

治りました、歩けるようになりましたね、介護保険を卒業しました、また悪化しました、なぜ悪くなったのか、私がやはり悪かったのだろうか、リハビリしなかったからなのだろうか、など、そういう気持ちの変化を支えていけるようなところもフォローしたような形のものをつくり上げられたらいいのではないかと思っております。

余談になるかもしれませんが、私は災害関係のこともやらせてもらっておりまして、昨年の熊本地震の後に医療関係者が入って、先遣隊の医師、保健師、看護師の中で福祉職が入ったかどうかは定かではないのですけれども、うまくトリアージされて、一般避難所と福祉避難所にぱっと分けられたということが評価されてはいます。実は福祉避難所の数が少なくて、介護が必要だ、認知症だという要介護者は福祉避難所への避難が他県にまで及んで、そちらに避難された方たちがいらっしゃる。

結局うまくトリアージされて、一般避難所に介護が必要な人は余りいなかった、よかった。しかし、福祉避難所に行かされたというか、要介護者たちが、納得していない状態で避難させられていたので、自分はここにいたくない、施設から脱走して家に帰ったり、一般避難所の家族のいるところに戻ったりということがあったそうです。ただ見た目だけのトリアージとなると、このような本人の想いにそぐわない結果のものが出てくるということも考えて、本人の想いに配慮したものをつくっていく必要性があるのではないかと考えております。

しろまる鳥羽座長 ありがとうございました。

ちょっと時間が押してきましたので、また次回に送れるものは送りたいと思います。

葛西顧問の、家族の介護負担に関しては、実際介護に対するエビデンスの中では相当、国内外であると思いますし、新オレンジプランでようやく日本も認知症の家族介護に初めて言及したのですけれども、ほかの認知症以外の要介護高齢者、家族介護に関しても、今後家族支援、家族の精神的な支援を介護負担も含めて重要になってくると思いますので、エビデンスは、この中で重要な項目として取り上げていくことに関してはよろしいですかね。

一方、先ほど最後に出た八木委員の意見ですが、チャンピオンデータだけに惑わされないでほしいというのは私は常に思っていまして、チャンピオンデータの後、チャンピオンの人がどうなっていったかというフォローは普通は報道されないことも多いので、チャンピオンデータの扱い。

ただ、チャンピオンデータがどういうところから出やすいかということは、リスクではなくて、よくなる部分をどうやって発掘していくかという点では、チャンピオンデータの出方というものを事例や文献から分析して、科学的介護に結びつけていくという点では、やはり今後も活用していくべきだと思っています。

そういうことで、最後に長く話してしまいましたけれども、時間となりましたので事務局にお返しいたします。

次回の予定などについてお願いいたします。

しろまる井口課長補佐 事務局でございます。

次回の日程につきましては、1026日を予定してございます。詳細につきましては追って連絡をさせていただきます。

よろしくお願いします。

それでは、本日の検討会は閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。


(了)

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