(1)
平成11年4月1日から平成16年1月31日までに得られたクロイツフェルト・ヤコブ病等(以下、「プリオン病」という)の患者に関する情報は695件(重複して報告されている例を含む)でした。このうち、平成15年10月1日から平成16年1月31日の間に、サーベイランス委員会によって収集された89例に関する情報について、本委員会において検討しました。
その結果、89例中62例がプリオン病と判定され、現行のサーベイランス体制(平成11年4月1日に整備)になってから新たに登録された症例は501例となりました(表1、表2)。なお、収集された89例中、除外された27例の内訳は以下の通りです。
・4例...
判定を保留とし、今後とも情報収集を継続することとなったもの
・5例...
プリオン病を否定されたもの
・17例...
過去の報告例に関する追加情報であったもの(既報告例)
・1例...
前回までにプリオン病として登録されていたが、新たに収集された情報によりプリオン病を否定され、登録除外されたもの(既報告例)
また、乾燥硬膜移植歴を有する症例が新たに6例報告され(表2)、これまでに把握された乾燥硬膜移植歴を有する症例は108例(累計)となりました。なお、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の症例は見られませんでした。
(2)
プリオン蛋白遺伝子検索は277例(新規登録例では33例)で実施されており、このうち11例を除く266例で結果が判明し、そのうちプリオン蛋白遺伝子の異常を認めたのは54例で、その内訳はコドン102が17例、同105が2例、同178が2例(家族性クロイツフェルト・ヤコブ病、家族性致死性不眠症各1例)、同180が10例、同200が14例、同208が1例、同232が4例、extra-repeat insertional mutationが1例、詳細不詳が3例でした。
3.
感染症法に基づくプリオン病の届出症例については、平成16年には8月29日現在で合計109例(概数)であった旨の報告がありました。
4.
手術等の医療行為によるCJD感染防止の件について報告がありました。(別紙)
表1.患者の性・発病年の分布
登録例全員
新規登録例(再掲)
性
男
207(41)
27(44)
女
294(59)
35(56)
発病年
-1995
16
1
1996
5
1997
30
1
1998
52
1999
84
2
2000
97
4
2001
109
6
2002
70
18
2003
38
30
計
501(100)
62(100)
注)
括弧内は%(四捨五入の関係で合計は100%にならないこともある)
表2.患者の発病時年齢分布[病態別]
年齢(歳)
全患者
孤発性
CJD1)
硬膜移植
歴のある
CJD
遺伝性プリオン病
分類
未定の
CJD3)
家族性
CJD2)
GSS
FFI
登録例全員
10-19
2
2( 4)
20-29
3( 1)
3( 6)
30-39
8( 2)
4( 1)
1( 2)
3(15)
40-49
29( 6)
16( 4)
5(11)
4(11)
3(15)
1
50-59
110(22)
80(20)
11(23)
10(28)
8(40)
1
60-69
169(34)
137(35)
16(34)
11(31)
4(20)
1
70-79
149(30)
129(33)
8(17)
9(25)
2(10)
1
80-89
31( 6)
28( 7)
1( 2)
2( 6)
計
501(100)
394(100)
47(100)
36(100)
20(100)
1
3
501(100)
394( 79)
47(9)
36(7)
20(4)
1
3(1)
平均(歳)
64.6
66.1
57.3
63.7
54.3
7
標準偏差(歳)
11.2
9.8
15.9
10.7
11.8
新規登録例(再掲)
30-39
1( 2)
1( 2)
40-49
1( 2)
1( 2)
50-59
11(18)
10(19)
1(17)
60-69
19(31)
14(27)
3(50)
2(40)
70-79
25(40)
22(42)
1(17)
2(40)
80-89
5( 8)
3( 6)
1(17)
1(40)
計
62(100)
51(100)
6(100)
5(100)
62(100)
51( 82)
6( 10)
5( 8)
平均(歳)
67.7
66.2
68.2
72.6
標準偏差(歳)
9.9
10.2
9.4
9.9
注1)
プリオン蛋白遺伝子の検索を行っていない例を含む。
2)
プリオン蛋白遺伝子の変異を認めないが、CJDの家族歴がある例を含む。
3)
硬膜移植歴の有無を調査中が2例、プリオン蛋白遺伝子検索中が1例ある。
括弧内は%(四捨五入の関係で合計は100%にならないこともある)
(別紙)
CJD感染防止の件について
事案の概要
- 本年6月、国内の病院において、脳神経外科手術を受けた患者について、手術の10日後の段階でCJDが疑われたため、同病院はサーベイランス委員会へ連絡・相談をし、その1週間後に当該委員会により孤発型CJDと診断された事例が発生。
- 当該手術から当該委員への連絡・相談までの10日間、手術のための通常の感染防止対策は行われていたものの、CJD感染防止のための特別な滅菌法がなされないまま、11名の他の患者が同病院にて脳神経外科手術を受けた。
- 同病院からの連絡を受け、サーベイランス委員会が同病院に対して滅菌状況の指導等感染防止対策の指示をするとともに、この間に手術を受けた患者の感染に関しては、当該病院では通常の手術のための感染防止対策は充分なされているため感染の可能性は極めて低いと思われるが、異常プリオンの暴露を受けた可能性を否定できないため、サーベイランス委員会から助言を得て8月中旬から9月上旬にかけて同病院において患者への説明が実施され、さらに今後の長期間にわたる定期的な診察等のフォローアップが行われている。
- なお、現在まで、諸外国において同様の暴露事例においてCJDが発生したとの報告は確認されていないと聞いている。
医政指発第0914001号
健疾発第0914001号
平成16年9月14日
各都道府県衛生主管部(局)長 殿
厚生労働省医政局指導課長
厚生労働省健康局疾病対策課長
医療機関におけるプリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病を含む)
感染防止対策の推進について
本年、国内の医療機関において、脳神経外科手術を受けた患者が、手術後に孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病であることが判明した事例があり、プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病(以下「CJD」という。)を含む)の感染防止の重要性が改めて認識された。
医療機関におけるCJD等のプリオン病に係る医療行為についての感染防止の重要性については、これまでも厚生労働科学研究「プリオン病及び遅発性ウイルス感染に関する調査研究班」の調査等により指摘されてきたことから、「「クロイツフェルト・ヤコブ病診療マニュアル」の啓発普及について」(平成9年1月9日指第2号・健医疾発第1号厚生省健康政策局指導課長・保健医療局疾病対策課長連名通知)及び「クロイツフェルト・ヤコブ病診療マニュアル〔改訂版〕の啓発普及について」(平成14年2月27日健疾発第0227001号厚生労働省健康局疾病対策課長通知)により、適正な対処方指導をお願いしているところである。
ついては、下記の事項につき貴管内関係機関及び医療従事者への周知等についてご協力方よろしくお願いする。
記
1
厚生労働科学研究「医療機関におけるクロイツフェルト・ヤコブ病保因者(疑い含む)に対する医療行為についてのガイドライン策定に関する研究」において作成された「クロイツフェルト・ヤコブ病感染予防ガイドライン」の周知徹底を図るとともに、医療機関において当該ガイドラインが的確に活用され、プリオン病の臨床症候の周知及び感染防止等がより一層図られるよう指導すること。
2
プリオン病を疑わせる症状を有する患者の診断等の医療支援を希望する場合には、「難病特別対策推進事業について」(平成10年4月9日健医発第635号厚生省保健医療局長通知、平成15年4月22日健発第0422002号厚生労働省健康局長通知)第5の規定に従い、厚生労働省が指定する神経難病専門医と連絡を取るよう指導すること。
(参考)
「クロイツフェルト・ヤコブ病診療マニュアル〔改訂版〕」及び
「クロイツフェルト・ヤコブ病感染予防ガイドライン」の入手方法について
標記ガイドラインについては、難病情報センターホームページ(
http://www.nanbyou.or.jp/)から入手可能である。具体的な入手方法は以下のとおり。
記
http://www.nanbyou.or.jp/にアクセス
(難病情報センターホームページ)
→
「一般利用者向け情報・疾患群別索引」を選択
→
「神経・筋疾患」を選択
→
「プリオン病 (1)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)」を選択
(1)
「クロイツフェルト・ヤコブ病感染予防ガイドライン」
→
「国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第七部」を選択
→
「各種ガイドライン」を選択
→
「クロイツフェルト・ヤコブ病感染予防ガイドライン(2003年3月版)」からダウンロード
(2)
「クロイツフェルト・ヤコブ病診療マニュアル〔改訂版〕」
→
「クロイツフェルト・ヤコブ病診療マニュアル〔改訂版〕」からダウンロード
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