3
)岩手県
所在地
〒020-857 岩手県盛岡市内丸10番1号
岩手県保健福祉部障害保健福祉課
TEL 019-629-5447 fax 019-629-5454
E-MAIL AD0006@pref.iwate.jp
【
特徴】
県が実施した自殺の実態調査を踏まえ、岩手医科大学と連携して自殺多発地域でのモデル事業を実施するなど、高齢者の心の健康づくりに積極的に取り組むとともに、平成14年度からは共通の課題に面した4道県で広域的な自殺予防対策に取り組みを進めている。
【
現状】
平成12年の国政調査時の人口は1,416千人、世帯数476千戸、老年人口285千人(20.1%)となっている。平成14年の人口動態によると「自殺を死因とする死亡者数」は年間500人(35.6/10万人)で全国平均(23.8/10万人)に比べて高く、秋田県(42.1/10万人)、青森県(36.7/10万人)に次いで全国第3位になっている。圏域別では二戸、久慈地区といった県北地域が高い。
【取り組みの経緯】
1.
人口動態統計によると自殺死亡者数が常に高い状態が続いていること
2.
自殺死亡者の年齢構成では70歳以上が27.4%、50歳代が23.6%、60歳代が17.4%と中高年の自殺死亡率が高いこと(平成14年県警察本部)
【事業概要】
1.
昭和63年〜平成2年度の3カ年で、自殺死亡率の高い県北にある浄法寺町等4町村で「高齢者自殺調査研究事業」が行われた。この事業は過去10年以内に自殺した高齢者70人への遡り調査と、65才以上の高齢者1,151人への調査の2種類の調査からなり、家族・知人の自殺経験率が高いこと、自殺に至る経緯で大部分の高齢者にうつ状態の精神症状が認められること等の結果が得られた。
本調査結果により、高齢者の家族等への意識啓発、保健医療福祉サービス従事者への研修、相談窓口等の体制の整備、自殺多発地域への重点対策の実施などの方向性が示された。
2.
平成5年〜平成15年(現在)まで、岩手県環境保健部が実施主体となり「老人の心の健康づくり推進事業」を行っている。本事業は、自殺死亡率の高い市町村において高齢者に対するうつ対策の充実を図るため、県が当該市町村に委託して行うものである。
最近の6年間(平成8年〜13年度)でモデル事業を実施した町村は浄法寺町、九戸村、葛巻町、新里村の4町村で、事業内容は以下の通りである。
(1)
心の健康に関する窓口相談事業
保健師による相談窓口には年間10〜80件程度の相談があり、医療機関や保健所等へ連絡、紹介の他、訪問指導が実施されている。また、普及啓発として、講習会の開催やパンフレットの作成・配布が行われている。
(2)
専門的研修
保健所において、市町村保健師への知識・技術研修を実施するとともに、モデル町村に対し技術援助や必要に応じた医師等の訪問指導等を行っている。
3.
平成12年〜平成14年度には自殺死亡率の高い久慈地域において、久慈保健所が岩手医科大学との連携のもとで自殺予防に関する調査研究と自殺予防に関する普及啓発を行った。
4.
平成14年度からは自殺死亡率が高いという共通の課題を有している北海道、青森、岩手、秋田の4道県で、うつ対策への取り組みを実施している
【成果】
1.
「高齢者自殺調査研究事業」や「久慈地域調査研究事業」等の調査及びその結果を情報提供することにより、自殺の背景にあるうつ病の有病率やその背景にある家族や職場での孤立感等の実態が明らかになり、行政施策の推進につながった。
2.
県の委託事業の後も、モデル町村自らが自殺予防に積極的に取り組み始めている。
3.
岩手医大との連携強化が図られ、行政と大学の連携のもとでの自殺防止対策が推進されつつある。
4.
共通課題を有する4道県の広域的取り組みに発展し、効率的に事業を展開できるとともに、各地域の取り組み事例を踏まえ、効果的な方法の開拓と普及が期待されている。
【課題】
1.
地域や職場における県全体の意識の向上
2.
自殺死亡率の高い県北地域の重点的取り組みの強化
4
)石川県
所在地
〒920-8580 石川県金沢市鞍月1丁目1番地
石川県健康福祉部健康推進課
TEL 076-225-1436 fax 076-225-1444
E-MAIL kennsui@pref.ishikawa.jp
【
特徴】
壮年期死亡の上位にある自殺に対応するために、モデル事業を踏まえて、うつ病のスクリーニングの実施、精神科医と一般診療科医との連携強化のための取り組みを行っている。
【
現状】
平成12年度国勢調査時の人口は1,181千人、世帯数411千戸、老年人口219千人(18.6%)となっている。平成12年における「自殺を死因とする死亡者数」は年間平均205人(20.2/10万人:平成元年〜12年)で全国平均(23.8/10万人)に比べると必ずしも高くはないものの、50歳代の自殺死亡者数が23.9%、次いで70歳以上20.2%、60歳代17.1%、40歳代16.6%と40〜50歳代の働き盛りの自殺死亡率が高く年々増加傾向にある。
【取り組みの経緯】
1.
平成12年3月に石川県健康づくり計画「いしかわ健康づくり21」が策定されたことや、年間平均205人の自殺死亡者のなかで壮年期死亡の割合が高く年々増加傾向にあること、なかでも40歳代、50歳代の男性の死亡原因の上位を自殺が占めていること等から、保健医療従事者のなかに自殺予防対策の必要性が高まっていた。
2.
平成12年〜14年度の3カ年で実施された「心のオアシス21推進事業」において、うつ病患者へのアンケート調査や一般診療科医や精神科医への実態調査が行われるとともに、専門医とかかりつけ医の連携強化のために会議や研修会が開催され地域医療体制の基盤整備について検討がなされた。
3.
上記の調査結果や事業を、平成15年度から高齢者のうつ病対策推進事業として実施し県全域に広めて取り組みを行っている。
4.
また、産後うつを背景とした児童虐待事例が発生したことから、平成15年度から母親の不安増大等による産後うつに対応するため母親のメンタルヘルス支援事業を開始している。
【事業概要】
1.心のオアシス21推進事業
(1)
うつ病を早期発見・早期治療するための体制・施策について検討するための検討会を県に設置し、うつ病の実態を把握するためうつ病の診断を受け治療中の患者へのアンケート調査や内科、外科、産婦人科等のいわゆる一般診療科医、精神科医へのアンケート調査あるいはグループインタビューを行い、その後の行政施策の基礎資料とした。
(2)
能登中部保健福祉センターが、七尾市医師会の協力を得て、うつ病発見・早期治療体制を整備するための研修会や精神科医とかかりつけ医の連携会を開催するとともに、かかりつけ医用のパンフレットを作成し配布した。
2.高齢者のうつ対策推進事業
(1)
モデル事業を踏まえ、うつ病の早期発見のために自己評価うつ病尺度(SDS)を用いたスクリーニング方法についてかかりつけ医と精神科医の連携体制等に関する検討会を県に設置した。
(2)
各保健福祉センターに連携会議を設置し、精神科医、かかりつけ医、市町村等の関係機関が連携する場を確保するとともに、かかりつけ医を対象として精神科医が指導・研修する事業やうつスクリーニング事業を地域で実施することにしている。
3.母親のメンタルヘルス支援事業
(1)
産婦一般健康診査を受診した母親に、エジンバラ式産後うつ病問診票(EPSD)を活用し、産後うつ病が疑われる母親や精神的支援が必要な母親を積極的に把握し、支援を行うことにしている。
(2)
各県保健福祉センターは市町村、産科医療機関、精神科医療機関と連携をとるための地域ネットワーク会議を開催している。
(3)
講演会の開催やリーフレットの作成・配布
(4)
支援事例検討会
【
成果】
実態調査の結果、社会全体がうつ病のことを正しく理解すること、かかりつけ医がうつ病を正しく理解すること、精神科医とかかりつけ医との連携強化が必要であることが示され、事業展開のきっかけとなった。
【課題】
1.
県下全域に事業を展開していくため精神保健福祉センターや市町村等従事者の意識の向上
2.
地域や職場における県全体の意識の向上
【参考文献】
1)
石川県健康福祉部:心のオアシス21推進事業報告書.うつ病早期発見・早期治療体制整備事業.平成15年
2)
石川県健康福祉部健康推進課:母親のメンタルヘルス支援事業実施の手引き
3)
岡野禎治:産後うつ病の早期発見と支援の手引き〜産科医・保健師のために〜(暫定版).石川県健康福祉部健康推進課
5
)静岡県
所在地
〒422-803 静岡市有明町2−20 静岡総合庁舎別館3階
静岡県こころと体の相談センター
TEL 054-286-9245 fax 054-286-9249
【
特徴】
平成9年度以降、中高年のいわゆる働き盛りの世代の自殺死亡者が増加傾向にあったことから県精神保健福祉センターが主体となって調査研究を行うとともに、心の健康づくりに関するガイドブックを作成し、関係者を対象とした研修会等、普及啓発に活用している。
【
現状】
平成12年の国勢調査時の人口は3,767千人、世帯数1,278千戸、老年人口は665千人(17.7%)となっている。平成13年の人口動態統計によると自殺死亡者数は843人(34.2/10万人)で、特に高齢者の自殺死亡率は53.6/10万人と全国の33.6/10万人の1.5倍と高い状況にある。
【
取り組みの経緯】
平成9年の自殺死亡者数は693人であったが、平成10年は32%増の914人、平成11年は935人とさらに増加したため、県としても自殺予防対策を講じる必要があると認識していた。自殺死亡者の内訳として中高年者が多いこともあり、平成14年度は事業所や従業員を対象としたアンケート調査等を実施し問題点や課題を明らかにするとともに、シンポジウムや研修会を開催し1次予防対策を進めることとした。
また思春期における心のケアも重要になってきており、同時にライフステージや生活の場におけるメンタルへルス対策を講じることにした。
【事業概要】
1
.事業所・従業員へのアンケート調査
1,200事業所及び2,400人の従業員を対象としてアンケート調査を実施した。
2
.心の健康づくり指針策定事業
中高年のストレス解消、自殺予防対策、職場のメンタルヘルス等に関する指針を作成し中高年の精神保健の推進を図るために、保健、医療、労働、警察等の関係機関の策定会議を開催し、「しずおか 心の健康づくりガイド」(しずおか健康創造21 精神保健副読本)を作成した。
また、普及啓発用の講演会を開催している。
3
.こころの電話相談事業
精神保健福祉センターで年間3,600〜4,800件の電話相談を受けており、この3〜4年増加傾向にある。
【成果】
1.
県内の自殺の実態を関係機関・団体が共有することができた。
2.
中高年自殺に対する対策を進める必要性への認識が行政担当者に生まれてきている。
3.
精神保健福祉センターの役割がうつ対策を含め総合的な心の健康づくり対策のなかで重要になってきている。
【課題】
1.
労働行政と連携したメンタルヘルスへの積極的取り組み
2.
精神科と一般診療科との連携、及び精神科と事業所との連携強化
3.
健康相談や家庭訪問等の個別支援、健康教育等の集団への支援対策等、地域保健対策の強化
【参考文献】
1)
静岡県こころと体の相談センター(静岡県精神保健福祉センター):しずおか 心の健康づくりガイド(しずおか健康創造21 精神保健副読本).2003年3月
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