厚生労働省においては、社会福祉基礎構造改革が進められている中で、介護サービスの質を向上させる施策の一環として、介護福祉士養成施設の教育課程の改正を平成12年4月に実施したところです。
介護福祉士の資質の一層の向上を図るためには、介護福祉士の養成に携わる教員についても、その資質の向上を図ることが不可欠です。
このため、平成12年9月から「介護教員養成講習会に関する検討会」を開催し、介護福祉士養成施設の教員の資質の向上に向けた取組について検討を行ってきたところですが、今般、その検討結果がとりまとめられ、報告がなされましたので、情報提供いたします。
1 趣旨
2 受講対象者
3 講習会の内容
4 講習会の実施主体
5 講習会の形態等
6 適用等
(問合わせ先) 厚生労働省社会・援護局福祉基盤課 担当者:金子、中村 電話:内線 2847、2848 直通 03-3595-2617
平成13年3月23日
介護教員養成講習会検討会
介護福祉士登録者数は、昭和62年5月の資格制度創設時から順調に増加し、平成12年9月には21万人を超えている。そのうち、約9万人は介護福祉士養成施設(以下「養成施設」という。)の卒業生であり、平成12年度には養成施設数は、339校(390課程)、入学定員数は22,886人と、養成施設数、定員数ともに急増している。平成13年度以降も、新規開設を希望する養成施設は多く、これに伴う養成施設の教員の需要は、依然高い状況にあることが認められる。
また、社会福祉基礎構造改革が進められている中で、介護サービスの質を向上させる施策の一環として、介護福祉士養成課程の教育課程等の改正が平成12年4月に実施されたところであるが、介護福祉士の資質のより一層の向上を図るためには、介護福祉士の養成に携わる者についても、その資質の向上を図ることが不可欠である。
本検討会では、これまでの養成施設の教員養成の在り方について見直すとともに、その資質の向上に向けた具体的な取り組みについて検討を重ね、今般、その結果を取りまとめたので、ここに報告する。
なお、本報告において提言する、養成施設の教員に対する講習会に係る措置の適用時期については、平成15年4月以降となっているが、既に養成施設において教員となっている者についても、経過措置を含んだ対応が求められるため、できる限り早い時期から自発的な取り組みをすることが望まれる。
II 介護教員養成講習会の必要性
制度創設以来、養成施設数は急増し、その新規開設及び定員増に伴う教員の需要は高く、介護福祉士の養成に携わる者の養成及び確保に関し、具体的な検討の必要性が高まっている。
また、国民が安心して利用できる質の高い介護サービスを提供するためには、質の高い教育を効果的に実施する教員の確保が不可欠であるが、養成施設の教員について、必要な講習等を受講していること等を要件としておらず、教員の資質の向上のための専門的な学習の機会も、全国社会福祉協議会中央福祉学院で実施している「介護福祉士養成施設介護担当教員特別研修課程」(年間2回開催/各4日間(22時間))等に限られている。そのため、教員の資質の向上は、それぞれの自己研鑽に依存する部分が多く、十分なものとはなっていない。
このような現状に照らし、養成施設の教員に必要な知識、技術について明らかにし、教員として採用される前にこれらを踏まえた一定の講習会等の受講を義務づけ、教員の資質の確保に取り組むことが必要である。また、採用後についても継続的に研修等を実施し、教員の資質の向上により介護教育の内容の充実及び向上を図っていくことが求められる。
以下、養成施設の教員に係る採用前の講習会の内容等について述べる。
III 受講対象者
受講対象者については、介護福祉士の養成に携わる者全ての資質の向上を図ることとし、専任教員のみならず、非常勤教員についても含めるべきである、との意見もあった。しかしながら、当面は、まず、介護に係る科目を教授する専任教員の資質の確保を図ることとし、受講対象者は、専門分野の「介護概論」、「介護技術」、「形態別介護技術」、「介護実習」又は「介護実習指導」を教授する専任教員を対象とする。また、「社会福祉援助技術」又は「社会福祉援助技術演習」を教授することができる者は、「介護実習」及び「介護実習指導」を教授することができるとされていることから、「社会福祉援助技術」又は「社会福祉援助技術演習」を教授する専任教員についても、受講対象者とする。
なお、上記の科目を教授する非常勤教員及びその他の科目を教授する教員についても、希望があれば対象者として差し支えないものとする。
IV 講習内容及び時間数(単位数)
講習会は、介護福祉士の養成に携わる者に必要な知識、技術を修得させ、もって介護教育の内容の充実及び向上を図ることにより、質の高い介護福祉士の養成に寄与することを目的とする。
このため講習内容については、日本介護福祉士養成施設協会の設置した「介護教員の段階別研修会に関する研究会」が、平成12年10月に養成施設の教員に対し実施した「介護福祉士養成施設介護関連科目担当教員の研修に関する意識調査」の結果に基づき、先行事例として看護教員養成講習会の内容を参考にしつつ、検討を重ね、基礎分野、専門基礎分野及び専門分野の三分野に区分して実施することとした。(詳細については別添1参照)
時間数については、現実的な対応として、当面は、300時間程度とすることとし、専門分野以外の科目については、科目等履修生としての単位を認定することとするため、各科目毎に時間数とともに単位数を併記することとする。
V 講習会の実施主体
講習会の実施主体は、厚生労働省が定める基準に合致すると認める者とする。厚生労働大臣が定める基準については、別添2(実施要綱イメージ)を参照のこと。
当面は、全国社会福祉協議会中央福祉学院において実施することとするが、講習会の目的を効率的に達成するために、厚生労働省が定める基準を満たす者であれば、中央福祉学院に限定することなく、大学及び大学の附属機関等を含め、幅広く認定することとする。
VI 講習会の形態
1)開催場所
現在、就労している者についても講習会を受講することができるよう、通学等の利便に配意し、全国社会福祉協議会中央福祉学院で実施するほか、各地方厚生局の管轄区域内の少なくとも1ヶ所以上で開催できるよう目指すべきである。
なお、講習会の開催が適切に行われる条件が整備されていれば、養成施設等の活用も認めることとする。
2)開催期間及び開講パターン
開講期間と開講パターンについては、受講者の就労の継続を前提とする様々な工夫が求められる。
開講期間については、夏季・冬季休暇等を活用した集中型や、数ヶ月単位に分散しても単位取得ができるような分割型等が考えられ、開講パターンについても、同様に平日・昼間に限らず、土日等の休日開講や夜間開講型等のフレキシブルなコースの設定をする等、講習会の実施主体が創意工夫することが望まれる。
また、通信教育等(放送大学等)については、開講パターンに制約されず、受講者の時間的制約の緩和、通学等に関する不便を解消することも考えられるので、その積極的な活用が考えられる。
3)単位認定・単位互換
大学卒業者については、大学で履修した基礎分野及び専門基礎分野の単位を既習単位として読み替え、取得単位として認定する。
また、放送大学や他の大学での科目等履修生等として取得した上記分野の単位についても、同様に資格取得単位として認定することとする。
VII 講習会の一部又は全部免除
養成施設の教員の養成を合理的に推進する観点から、その教育歴及び研修歴等に照らし、講習会内容の一部又は全部の履修を免除することができると考えられる者については、下記のとおりとする。
1)基礎分野及び専門基礎分野の履修を免除できる者
2)専門分野の一部の履修を免除できる者
全国社会福祉協議会中央福祉学院の「介護福祉士養成施設介護担当教員特別研修課程」受講修了者については、専門分野のうち「介護教育方法」(30時間)の履修を免除する。
3)基礎分野、専門基礎分野及び専門分野の全ての履修を免除できる者
基礎分野、専門基礎分野及び専門分野の全ての履修を免除できる者は、平成15年4月1日の施行時において、次の項目に該当する者であること。
VIII 適用時期等
1)適用時期
平成15年度以降に、養成施設の教員として採用される受講対象者(全部免除者を除く。)に適用することとする。
なお、全国社会福祉協議会中央福祉学院においては、平成13年度内に、試行的にモデル事業を実施し、平成14年度から本格的に介護教員養成講習会を開講することとする。
しかし、資質の高い教員の養成には、非常に時間を要するため、公表された教育内容について、現時点から先んじて履修することが求められる。
既に介護福祉士養成施設において教員となっている者についても、必要とされる分野についての教育内容を履修していない者については、将来に備え、その資質の向上を目指し、積極的かつ計画的にこれらについて履修する姿勢を期待する。
2)経過措置
3)その他
介護教員養成講習会の受講料については、受益者負担を原則とするが、講習会の実施主体となる者は、厚生労働省の教育訓練給付制度等の活用を検討する等、受講対象者の能力開発の取り組みを支援することが望まれる。
IX 結びに
今後、厚生労働省においては、「介護教員養成講習会」の開講に向けて、具体的に検討するとともに、関係団体へ講習会の開催について積極的に働きかけることを期待する。
本検討会で検討した介護教員養成講習会の内容等は、採用前に限定されており、対象者も限定されたものとなっていることから、教員の資質が質の高い介護福祉士の養成に対し寄与する程度等に着目して、教員が強化すべき知識、技術等について、今後とも定期的に講習会の内容を見直すことが必要である。
なお、採用後の研修については、現在、日本介護福祉士養成施設協会における「介護教員の段階別研修会に関する研究会」により検討されているところであるが、採用前の講習会内容との整合性を保ちつつ、充実した研修が行われるようになり、継続的に教員の資質の向上が図られるようになることを望む。
1 目的
介護福祉士養成施設において、専門分野(以下「介護概論」「介護技術」「形態別介護技術」「介護実習」「介護実習指導」「社会福祉援助技術」「社会福祉援助技術演習」の5科目をさす)を教授する専任教員に対して必要な知識、技術を修得させ、もって介護教育の内容の充実向上を図ることを目的とする。
2 講習会の実施
講習会は、厚生労働省が認める者が実施するものとする。
3 期間
原則として300時間以上とする。
4 受講対象者
介護福祉士、保健婦、保健士、助産婦、看護婦又は看護士の資格を有し、5年以上実務に従事した者であって、本講習会修了後、介護福祉士養成施設において、専任教員として介護教育に従事する者とする。
ただし、非常勤教員として介護教育に従事する者も希望すれば、受講できるものとする。
5 受講者数
原則として、一カ所概ね10人以上とする。
6 教育内容
別添1の講習科目を標準とする。
7 教室等
(1)講習期間中、専用に利用できかつ学習環境としてふさわしい教室が確保できること。
(2)グループワークをするための部屋(演習室)が確保できることが望ましいこと。
8 講師
講師は大学教授、助教授又はこれに準ずる者とすること。ただし、これらの者とすることが困難な場合は、介護福祉士養成施設において通算して5年以上教務主任を勤めた経験を有する者とすることができる。
9 手続き
(1)講習会を実施しようとする者は、毎年度1月末日までに次の事項を記載した認定申請書を本職あて提出すること。
なお、認定申請は、実施しようとする講習会ごとに行うものとする。
また、申請後、その内容について変更がある場合には、あらかじめ変更申請を行い、承認を得ること。
(4)講習会修了者には、修了証を交付すること。
(5)受講者の出席状況を的確に把握し、出席状況が不良な者については修了を認めないものとすること。
(6)講習会の終了後は1ヶ月以内に次の事項を記載した実施状況報告書を本職あて提出すること。
(7)修了者に関する記録及び講習会の実施に関する記録は、適切に保管すること。
10 受講期限
受講開始後3年以内に6の内容の講習を全て受講するものとすること。