厚生労働省
平成17年7月4日
担当
雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課
課長 麻田 千穂子
課長補佐 金成 真一
電話番号 03-5253-1111 内線7854
夜間直通 03-3595-3274
「母性保護に係る専門家会合」報告書について
男女が共にその持てる力を十分に発揮できるような社会を構築するためには、なお、課題が残されていることから、平成16年9月より、男女雇用機会均等の更なる推進について、労働政策審議会雇用均等分科会において幅広い検討が開始されている。
女性が十分に能力を発揮し、働くためには、適切な母性保護を行うことが不可欠であるため、これまでも男女雇用機会均等法制の見直しに際しては、母性保護のあり方についてもあわせて見直しが行われてきた。
平成7年から平成9年にかけて男女雇用機会均等法制が見直された際も、平成8年に「母性保護に係る専門家会議」が開催され、(1)産前産後休業、(2)重量物取扱業務、(3)有害物の発散する場所における業務のあり方等について医学的・専門的見地から検討が行われたが、重量物取扱業務及び有害物の発散する場所における業務の制限については、今後も引き続き検討していくことが必要とされたところである。
このため、厚生労働省では、平成17年3月より「母性保護に係る専門家会合」(座長:中林正雄総合母子保健センター愛育病院院長)を開催し、(1)産前産後休業、(2)重量物取扱業務、(3)有害物の発散する場所における業務について、専門的見地から検討を行ってきた。このたび、その検討結果が取りまとめられたので、その内容を公表する(概要は別添1、報告書本体は別添2(
PDF:147KB))。
(2) 検討結果の概要
イ 産前休業については、妊娠末期は、母体への負担が増加するため、労働による負担を軽減するとともに、日常生活においても十分な休養をとることが求められること、分娩週数は、妊娠36週から目立って多くなっていることを考慮すると、妊娠36週の2週間前である妊娠34週に相当する産前6週間前から休業できる現行制度の基準は適切であり、変更する必要性はない。
ロ 産後休業については、現行制度は産褥期間(妊娠及び分娩によって生じた子宮等の変化がほぼ妊娠前の状態に回復するまでの期間)が産後6週間から8週間であることを考慮して定められているものであり、これを否定する知見はなく、現行の休業期間を変更する必要はない。
ハ 妊娠高血圧症候群重症や早産のおそれ等のために産前産後休業期間以外の時期に休業等の措置が必要な労働者は、全体からみれば例外的な病的な状態にあることから、医師の指導により個別の事情に応じて母性健康管理の措置を講じていくことが適当。
(2) 検討結果の概要
イ 重量物の運搬は、出産、加齢等の他の要因とともに子宮下垂・脱を起こす要因の一つとされており、現段階においても重量物取扱業務の将来の妊娠・分娩への影響を否定する充分な知見は見当たらず、保護が不要であり、ただちに現行の制限をなくすべきとまで言うことはできない。今後も医学的な知見を踏まえ、引き続き検討していくことが必要。
ロ 女性一般に対して一律に就業制限を設けることについては慎重であるべきであり、今後、重量物取扱業務に関する規制のあり方について検討するに際しては、作業の実態、事業場における労働安全衛生対策の状況や国際的な動向も踏まえ、一律に一定の重量の水準を定め、就業を制限するという方法が適切かどうかについて、検討が必要。
(2) 検討結果の概要
イ 女性一般に対する有害物を発散する場所における業務の就業制限については、鉛のように現に妊娠・出産機能に対して有害であると考えられる物質が存在していることに鑑みると、ただちにその制限をなくすべきということはできない。
ロ しかしながら、就業制限の対象となっている化学物質は、現在の知見に照らせばそのすべてが妊娠・出産機能に明確に有害性を有するとは必ずしも言えない状況にあり、一方、新たな化学物質の使用等への対応も必要であることから、基本的には、規制対象となる化学物質の範囲について、新たな知見を踏まえて見直すことが適当。
ハ 現在、我が国においては「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)」に関する国連勧告への対応として、生殖毒性も含めた化学物質の危険有害性の程度等の分類作業が進められている。同作業は、実質的には女性の妊娠・出産に係る機能に有害である化学物質の検討と重なるものであることから、その結果を踏まえ、母性保護の観点からの規制対象となる化学物質を検討することが適当。
ニ また、一定の水準を定めて一律に就業を禁止するという保護の手法が適切かどうかについても、労働安全衛生政策や国際的な動向等を踏まえ、今後の課題として引き続き検討することが必要。
ホ 事業場において、妊娠出産機能の保護が適切に行われるためには、事業主、労働者、産業保健スタッフ等が、化学物質の有害性等についての十分な情報を適切な方法により得られるようにしていくことが重要。