05/11/18 第7回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 第7回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 1 日 時 平成17年11月18日(金)10:00〜11:35 2 場 所 厚生労働省6階 共用第8会議室 3 出席者 【委 員】公益委員 今野部会長、石岡委員、勝委員、武石委員、 田島委員、中窪委員 労働者側委員 加藤委員、田村氏、??石委員、??橋委員、 中野委員、横山委員 使用者側委員 池田委員、川本委員、杉山委員、竹口委員、 原川委員 【事務局】厚生労働省 青木労働基準局長、松井審議官、熊谷総務課長、 前田勤労者生活課長、名須川主任中央賃金指導官、 山口副主任中央賃金指導官、梶野課長補佐 4 議事次第 今後の最低賃金制度の在り方について 5 議事内容 ○しろまる今野部会長 ただ今から、第7回「労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会」を開催いたしま す。本日の出欠状況は、前田委員、須賀委員がご欠席です。なお、須賀委員の代理とし て、田村雅宜日本労働組合総連合会労働条件局長がご出席です。 本日の議題は、「今後の最低賃金制度の在り方について」です。前回の意見の整理を していただいていますので、その報告からお願いいたします。 ○しろまる前田勤労者生活課長 資料1−1は、産業別最低賃金の在り方に関する意見の整理です。この3頁の中ほど に、派遣社員やパートタイム労働者でも基幹的な業務をしているということで、パート タイマーだからといって、基幹的労働者から外すというやり方では対応できないという ご意見がありました。下から2つ目のポツで、能力と賃金との関係で、能力が高まるこ とは高い賃金の職に就ける可能性があるという選択肢にすぎない、というご意見で修正 しております。 資料1−2は、地域別最低賃金の在り方に関するご意見です。1頁の3つ目で、労働 市場の規制緩和などの中で、非正規雇用が増大しているということで、最低賃金の機能 であるセーフティネット、あるいはナショナルミニマムの強化を求められるということ です。 1頁の下の方で影響率の議論があります。影響率が低下していることの問題意識を持 っているということで、セーフティネットとして効果のない最低賃金になっているので はないか、というご意見がありました。これに対して、一方で影響率が低いということ について、最近は引上げ額そのものが低いということであって、当然影響率が低くなる ということであろう。以前は、消費者物価も賃金も上がっていたということで、引上げ 額が大きかったので影響率も高かったということにすぎないのではないかというご意見 がありました。 同様ですが、消費者物価がマイナスになっている中で、最低賃金は実質的に上がって いるということで、影響率だけを見た議論はおかしいのではないか。2頁で、そもそも 最初に地域別最低賃金をつくったときに、当時の業者間協定方式の中卒の初任給をベー スに決まったということで、現在になっては進学率も上がっているということで、当時 つくった中卒の初任給をベースにしたものを引き上げていくというままではおかしいと いうご意見です。 真ん中辺りで、地域別最低賃金は、公労使それぞれが中央・地方で十分議論して、行 政の責任において決定してきたということで、これまで責任のある立場で決められてき たものであるということで、それが機能していないという批判は疑問があるというご意 見です。 一方、現在の目安は同一の率で示すというような運用になっていて、毎年毎年はそれ が正しいとしても、積み重ねてくると実態から離れてくる可能性はあるということで、 そもそもの水準が実勢や最低賃金の機能に照らして妥当であるかどうかを常に検討する 必要があるというご意見です。 最低賃金の改正については、引上げの他に引下げという意味もある。そのことを解釈 なり法律で明らかにすることが必要ではないかというご意見です。これに対しては、最 低賃金が効いていない今の水準で、その機能を考えることなしに、引下げの議論をする ことはあり得ないというご意見がありました。 3頁では、決定基準について、労働の対価としての賃金をもらう能力というものを4 つ目の要素として考慮すべきではないかというご意見がありました。それに対しては、 ナショナルミニマム以下で働く労働者をなくして、生活の改善を図り、国民経済の健全 な発展につなげるという最低賃金法の目的を踏まえるならば、能力といったものをもと に議論するのは問題ではないかというご意見がありました。 4頁では生活保護との関係で、ネットで比較して生活保護を上回るべきである、とい うことを条文上書き込むことが必要ではないかというご意見です。 4頁の下の方で「類似労働者の賃金」の議論の中では、平均値という議論があるわけ ですが、平均値と最低賃金の格差で最低賃金を決定するというものではなくて、水準の 妥当性とか適正をみるために、平均賃金との関係というものを判断の材料として重視し て評価することが大事ではないか。もちろん、それは平均賃金との関係だけではなくて、 様々な指標を参考にすべきであるというご意見です。 「類似の労働者」ということについて、地域別最低賃金だけについて考えた場合に、 それが何かというのがわかりにくいということで、低賃金労働者ということに考えられ ているけれども、そこは「地域の労働者の賃金」という、地域別最低賃金に特化するな らば、そういうふうに改めるべきではないかというご意見です。 「類似労働者」について、現在30人未満規模の企業で、賃金引上げの調査をして、そ れを参考にしておりますが、そういう企業以外の企業の労働者も考慮すべきというご意 見です。それに対しては、高いところに合わせるということではなくて、低いところを 考慮するのは当然である。賃金の低い全労働者の7割も占めている中小企業の労働者を 重視すべきというご意見です。 参考とするデータについては、目安の審議においても様々な資料で検討していて、そ れが年々充実してきているということで、今の制度でいいのではないかというご意見で す。 都道府県ごとの賃金分布について、最低賃金のところで分布がゆがんでいるような地 方については、最低賃金が効いているとみることができるのではないか。東京や大阪な どの都市部では、そういう分布のゆがみがないという見方ができるというご意見です。 さらにセーフティネットということなので、都道府県ごとに一般的な賃金と最低賃金の 比率に差があるのは問題ではないかということです。地域によって物価も違うことも加 味して賃金は決めていくということで、そういう地域に着眼して最低賃金額を決めるこ とが大事ではないかということです。 目安について、昭和55年以降は、引上げ率が同一という形で目安をこれまで出してき たということで、そういう意味では各地域の差があまりつかないように整合性をとって きたというこれまでの経過があります。それを、今になって地域ごとの差をよりつける べきという主張をするのはおかしいのではないかというご意見です。 6頁の支払能力の議論の中では、「事業の支払能力」というのは、普通の企業の支払 能力のはずで、限界企業の支払能力ではないということであるが、使用者側からはいつ も厳しいところの話になるということで、そういう誤解があるならばきちんと明記すべ きではないかというご意見です。 8頁の適用除外等のところで、訓練中の者の適用除外についての手続を簡素化して欲 しいというご意見です。 適用除外ということについては、労働生産性の低い労働者については、最低賃金を適 用すると雇用を失うということから差をつける必要があるということではあるが、適用 除外ということであると限りなくゼロに近いことも可能になるということで、減額に変 えた方がいいのではないかというご意見です。それに対しては、法的には適用除外とい うことで、実際に申請したときには実態として減額されていることからすると、法律上 減額にすると、今の考え方とは違う概念になってくるので、法律は適用除外で、実態で 減額という今の現状でいいのではないかというご意見です。 9頁の設定単位の広域化の議論の中で、仮に広域化すると、中央最低賃金審議会で検 討するようになるのかどうか、それは可能なのか、あるいは中央と地方の関係をどう担 保するか、あるいは設定単位を広域化する場合には何を基準にしてやっていくのか、と いうご意見がありました。前回のご意見の整理は以上です。 ○しろまる今野部会長 ご質問がありましたらお願いいたします。 ○しろまる川本委員 質問ではなくてお願いという意味合いです。意見の整理ということで、産業別最低賃 金の方と、地域別最低賃金の方と2種類出ているわけです。1枚目の右上の方に※(注記)で注 書きということで「最低賃金部会及び中央最低賃金審議会における意見、最低賃金制度 のあり方に関する研究会の報告書を整理したもの」ということになっているわけです。 ペーパー自体は公式のものですので独り歩きするというところから、正直な話、今の説 明の中でも使側委員からとか、労側委員とかとありますけれども、できますればそれぞ れの意見に、労働者側の委員なのか、使用者側の委員なのか、公益委員のご意見なのか、 あるいは研究会報告なのか、あるいは本日示されていく予定であります公益委員試案な のか、それぞれ括弧書きでそれぞれ付け加えておいていただいた方がよろしいかと思い ます。これはお願いです。 ○しろまる今野部会長 この右側に欄を付けて、労、使、研究会、公益で丸か何か付けたらどうでしょうか。 ○しろまる川本委員 丸でも何でも、それぞれ括弧書きでも結構です。公とか、労とか、使でも構いません、 報告書の報とか。 ○しろまる今野部会長 あと全員とか。内容を見れば、どちらの主張だかはわかると思いますがどうですか。 ○しろまる前田勤労者生活課長 大体わかると思いますが、この部会でそういうことを合意していただければ結構だと 思います。 ○しろまる川本委員 何を申し上げたいかといいますと、公労使それぞれの意見がどれなのかというのが、 これだけ増えてくるとわかりにくいということが1つあります。それから、ここの場で 意見は出ていないのだけれども、前の報告書にあったものの抜粋のところもあります。 その辺で、ここで議論されているかされていないのかがわからない。このペーパーだけ が外へ行くと、そういうところは非常に誤解を受けやすいものですから明確にしておい ていただいた方がいいかと思った次第です。 ○しろまる今野部会長 わかりました。どういうやり方かは別にして、この意見は労とか、この意見は使とい う星取表を作ったときの、その星取表自身が正しいかという問題が出てくる。いや、そ んなこと言った覚えはないというような話になるから、そういう星取表を作ったら、も う一度労使に確認していただかなければいけないということになりますね。やるのでし たら、星取表を作っていただいて、事前に労使に言ったことを確認していただきましょ う。研究会の方はちゃんと文章になっているから、それに対応しているからいいと思い ます。公益の方もあるわけですから、公益の方も確認しますか。星取表を作るのだった ら、そうした方がはっきりするのでいいと思います。 ○しろまる勝委員 この部会で話し合われたものなのか、あるいは報告書なのかという分類でも。 ○しろまる今野部会長 川本委員のご意見は、この部会でも、これは使、これは労ということをはっきりして ほしいということだと思います。それについては、速やかにご協力いただけるというこ とで、どうですか、川本委員からそういうご意見が出ましたが。 ○しろまる加藤委員 了解しますが、中にはいくつかの意見を組み合わせて整理してあるようなのも見受け られますので、再精査しなければいけないのではないかと思います。そういうことも含 めて、取扱いはお任せしたいと思います。 ○しろまる今野部会長 一度作っていただいて、申し訳ないのですけれども、ここでこの意見は俺が言った、 言わないというのは時間がもったいないので、事前に労使チェックしていただいて、公 益の方は公益でやります。そういう作業を事前にやっていただくということで、星取表 を作っていただくことにいたしましょう。 他にないようでしたら次に入ります。前回申し上げましたように、今後の最低賃金制 度の在り方について、公益委員の試案を作成してご報告する、ということを約束しまし たので作成してまいりました。まず、事務局で試案を朗読していただき、その後にご質 問をお受けいたします。 ○しろまる梶野勤労者生活課長補佐 資料2を朗読させていただきます。 今後の最低賃金制度の在り方の骨子について(公益委員試案) 「今後の最低賃金制度の在り方について」は、平成17年4月8日付けで厚生労働大臣か ら諮問を受け、本部会において、同年6月16日から累次にわたり労使双方の立場から議 論を行ってきたところであるが、依然として結着がつくに至っていない。 そこで、これまでの議論を踏まえ、今後の部会における建設的な議論に資するよう、 制度の枠組みにかかわる事項について、公益委員としての見解を示す時期に来ていると 考え、公益委員試案を提示することとした。 この試案は以下のような基本的な考え方に立ってとりまとめたものである。 最低賃金制度については、今後とも賃金の低廉な労働者の労働条件の下支えとして十 全に機能するようにすることが必要である。現在の最低賃金法においては、地域別、産 業別など多元的な最低賃金の設定が可能な体系の下で、運用上すべての都道府県におい て、地域別最低賃金が整備されているが、就業形態の多様化、低賃金の労働者層の増大 等の中で、地域別最低賃金がすべての労働者の賃金の最低限を保障する安全網として十 全に機能するようにする必要があると考える。 また、産業別最低賃金の果たす公正な賃金決定といった役割は評価すべきものではあ るが、産業構造の変化、就業形態の多様化により労働移動が増大し、従事する仕事に応 じた処遇の重要性が増加している状況の下で、今後は、産業ごとの賃金の決定というよ りは、基幹的な職種に応じた企業横断的な処遇の確保、労働生産性の向上という機能を 重視するという観点から、最低賃金制度とは別の社会的なルールとして、労使が一致し て取り組む枠組みとする必要がある。 なお、下記に掲げる事項のうち、最低賃金法の改正を要する事項については改正法成 立から1年程度の準備期間を経て施行することとし、法改正に伴う運用に係る事項につ いては、改正法施行までの間に引き続き審議会において検討するものとする。また、( 目安制度の在り方など)その他の運用に係る事項については、地方で円滑な運用が確保 されるよう、さらに引き続き審議会において検討するものとする。 I 産業別最低賃金等の在り方について 1 基本的考え方 「産業別最低賃金」については、以下の視点に立って、現行の「産業別最低賃金」が 労使の協力の下に一定期間かけてなだらかに経済社会の変化に応じたものに組み替え られるよう、所要の法的措置等を講ずる必要がある。 (1)最低賃金の第一義的な役割は、すべての労働者について賃金の最低限を保障する 安全網であり、その役割は地域別最低賃金が果たすべきものであることから、「最低賃 金法」は「地域別最低賃金」に特化する。(最低賃金法改正事項) (2)「産業別最低賃金」は、企業内における賃金水準を設定する際の労使の取組みを 補完し、公正な賃金決定にも資する面があることを評価し、産業構造の変化等の中で、 基幹的な職種に応じた企業横断的な処遇の確保を通じて、労働生産性の向上に資するも のとなるよう見直す。このため、労使一致して見直しに取り組めるよう、最低賃金法か ら「産業別最低賃金」に関する規定を削除し、別に法的根拠を設け、円滑な対応ができ るようにする必要がある。 (3)その他の法改正に伴う運用に係る事項については、さらに労使の自主的な取組み を促す観点から、改正法施行時までの間に、引き続き審議会において検討するものとす る。 2 具体的方向 上記1の基本的考え方を踏まえた具体的な項目は以下のとおりであるが、(2)(3) については、改正最低賃金法成立後、施行までの間に、引き続き審議会で具体的な案を 検討し、決定するものとする。 (1)基本的な枠組み(別の法律で措置する事項) ・ 関係労使が公正な処遇の確保の観点から必要と認める職種についての下限となる賃 金(「職種別設定賃金」)を設定できるものとする。 ・ 「職種別設定賃金」は、公的機関(例えば地方最低賃金審議会)の場において労使 が合意して決定するものとする。 ・ 「職種別設定賃金」に達しない賃金を定める契約は、その部分については無効とす るものとする。無効となった部分は、「職種別設定賃金」と同様の定めをしたものとみ なすものとする。 (2)適用対象労働者(運用に係る事項) ・ 適用対象労働者は、必ずしも全産業横断的に一定の職種の労働者を対象とする必要 はなく、特定の産業(中分類等)内の職種の労働者に限定してもよいこととする。 ・ また、職種については、例えば、対象産業を製造業に限定し、技能職で一定程度以 上の技能を有する者と定義する。個別の技能の程度については、労使が実情を勘案して 決定する。 (3)「職種別設定賃金」決定のための手続(運用に係る事項) ・ 関係労使間で適用対象労働者についての賃金に関する労働協約が締結されている場 合その他これに準ずる場合に、関係労使の申出により公的機関(例えば地方最低賃金審 議会)の場において審議することができるものとする。 ・ 申出に係る要件等については、現行の産業別最低賃金の運用上の要件等を配慮した 上で実効が上がるようなものとする。 (4)労働協約拡張方式(最低賃金法改正事項) ・ 労働協約拡張方式は廃止するものとする。 (5)その他(最低賃金法改正事項) ・「産業別最低賃金等」の基本的枠組みの変更は、十分な移行期間の中で行うこととし、 実務面で大きな混乱が生じることのないよう所要の措置を講ずるものとする。 3 運用に係る事項 下記に掲げる事項に関しては、改正法施行までの間に、引き続き審議会において検討 し、具体的内容を決定するものとする。 (1)申出要件 ・ 労働協約が一定程度以上締結されている場合の機関決議や個人合意の取扱い ・ 申出の数量的要件の取扱い (2)決定手続 ・ 必要性及び金額の審議の在り方 ・ 「全会一致に努める」としている議決方法の取扱い II 地域別最低賃金の在り方について 1 基本的考え方 地域別最低賃金については、産業別最低賃金の見直しと併せて、以下の視点に立って、 所要の法的措置等を講ずる必要がある。 (1)すべての地域において地域別最低賃金を決定しなければならない旨を明確にし、 すべての労働者の賃金の最低限を保障する安全網として十全に機能するようにする必要 がある。 (2)社会保障政策と整合性のある政策を展開する必要がある。 (3)地域の賃金実態との整合性の確保、派遣労働者の増加等就業形態の多様化への対 応等といった観点からの見直しを行う必要がある。 (4)その他の法改正に伴う運用事項については、安全網として十全に機能するように という観点から改正法施行までの間に、引き続き審議会において検討するものとする。 (5)法改正とは直接関係しない運用に係る事項についても、同様の観点からさらに引 き続き審議会において検討するものとする。 2 具体的方向 上記1の基本的考え方を踏まえた具体的な項目は以下のとおりである。 (1)必要的設定(最低賃金法改正事項) ・ 国内の各地域ごとに、すべての労働者に適用される地域別最低賃金を決定しなけれ ばならないものとする。 (2)決定基準の見直し(最低賃金法改正事項) ・ 「労働者の生計費」については、生活保護との関係も考慮する必要があることを明 確にする。 ・ 「類似の労働者の賃金」については、「地域における労働者の賃金」に改めるもの とする。 (3)減額措置の導入(最低賃金法改正事項) ・ 現在適用除外対象者について運用により講じられている減額措置を、法律に基づく ものに改めるものとする。 (4)罰則の強化等(最低賃金法改正事項) ・ 地域別最低賃金の実効性確保の観点から、地域別最低賃金違反に係る罰金額を労働 基準法第24条違反よりも厳しいものとする。 ・ 監督機関に対する申告及び申告に伴う不利益取扱いの禁止に係る規定を創設するも のとする。 ・ その他最低賃金法の罰則の整備を行うものとする。 (5)その他(最低賃金法改正事項) ・ 派遣労働者に係る最低賃金は、派遣先の地域別最低賃金を適用するものとする。 ・ 最低賃金の表示単位を時間額に一本化し、併せて所定労働時間の特に短い者につい ての適用除外規定を削除するものとする。 ・ 最低賃金の設定単位等を見直し、より労働市場の実情等を反映した運用が可能とな るようにするものとする。 3 運用に係る事項 下記に掲げる事項のうち、(1)〜(3)については改正法施行までの間に引き続き 審議会において検討し、(4)については地方で円滑な審議が行われるよう引き続き審 議会において検討し、具体的内容を決定するものとする。 (1)「労働者の生計費」について、生活保護との関係を考慮するための具体的な方法 (2)「地域における労働者の賃金」を考慮するための具体的な方法 (3)設定単位を見直す場合の具体的な基準 (4)目安制度の今後の取扱い 以上です。 ○しろまる今野部会長 今、読み上げていただきまして、ご意見、ご質問はいろいろあろうかと思いますが、 その前に我々の気持をちょっと表現させていただきます。 我々がこれを作るときに、これまでここでいろいろ議論していただいたのですが、労 使の意見の隔たりが非常に大きいので、前回もお話しましたように、この部会で公益委 員が試案を出して、より建設的な議論をしていただきたいということで、たたかれ試案 を出すということで出させていただきました。 1頁に基本的な考え方が書いてあります。地域別最低賃金については、すべての労働 者の賃金の最低限を保障する安全網として十全に機能させたいというのが第1点です。 第2点の、産業別最低賃金については、これまで果たしてきた公正な賃金決定といっ た役割は評価すべきだとは思います。ここにも書いてありますけれども、産業構造が変 わった、就業形態の多様化が進んだ、労働移動が増大したという背景の下で、従事する 仕事に応じた処遇の重要性が増加していると考えております。したがって、今後は産業 ごとの賃金決定というより、基幹的な職種に応じた、企業横断的な処遇の確保、それに 基づいて労働生産性の向上という機能を重視するという観点から、最低賃金制度とは別 の社会的なルールとして、労使が一致して取り組む枠組みに変えていきたいということ です。そういう必要があると考えております。 1頁の下になお書きがありますが、そこでは運用面を含む今後の見直しの検討の基本 的な段取りについて書いてあります。以上が基本的な考え方です。 2頁以降が、産業別最低賃金と地域別最低賃金それぞれについて少し詳細に書いてあ ります。2頁は、産業別最低賃金についてですが、先ほども申しましたように、基本的 な考え方としては、最低賃金の第一義的な役割は、すべての労働者について賃金の最低 限を保障する安全網であることから、現在全国で設定されている地域別最低賃金はその 役割を担うこととして、最低賃金法はその地域別最低賃金の根拠法に特化すべきである と考えています。 したがって、産業別最低賃金については、関係労使が公正な処遇の確保の観点から、 必要と認める職種について下限となる賃金、ここではまだ仮置きなのですが「職種別設 定賃金」と呼んでおりますが、そういうものを設定できる制度に見直すべきであると考 えています。 2頁の2の(1)に、その基本的な枠組みについて書いてあります。最低賃金法を、 地域別最低賃金の根拠法に特化するということから、その法的措置は別の法律で対応す ることにしました。別の法律を何にするかについては、まずここの部会で、その法的措 置の必要性を明確にした上で、具体的にどの法律に委ねるかを考えなければいけないわ けです。それについては、今後きちんと考えたいと思いますが、1つの可能性としては、 現在、労働契約に係る制度全般の在り方について議論が行われておりますので、労働条 件分科会でやっていただくか、あるいはここでやるかについては改めて考えていきたい と思っています。 職種別設定賃金の新設を円滑に行うために、地方での実務を考えるとなれば、十分な 移行期間が必要であることから、他の法的措置の例なども参考にしながら、所要の措置 を講ずる必要があるだろうと考えております。 適用対象労働者や、決定手続の基本的な考え方は、2頁の下から3頁にかけて書いて あります。3頁の3にあるように、運用面の具体的な内容については施行までの間に引 き続き検討したいと考えています。 4頁以降に、地域別最低賃金について書いてあります。先ほども申しましたように、 まず基本的な考え方としては、すべての労働者の賃金の最低限を保障する安全網として、 十全に機能するように、すべての地域において地域別最低賃金を決定しなければならな い旨を明確にすることが必要であると考えています。 社会保障と整合性のある政策を展開するということと共に、地域の賃金実態との整合 性を確保する。あるいは、派遣労働者の増加と就業形態の多様化への対応といった観点 からも見直しが必要だろうと考えています。 具体的な方向としては、「労働者の生計費」や「類似労働者の賃金」に関しての決定 基準を見直すということと、地域別最低賃金に係る罰則の強化をするということ、派遣 労働者については派遣先の地域別最低賃金を適用するということなどが、4頁から5頁 に書いてあるとおりです。 5頁の3の「運用に係る事項」ですが、地域別最低賃金についても、法改正にかかわ る運用面の具体的な内容については、施行までの間に引き続き検討することにしており ます。さらに、目安制度の今後の取扱いなど、その他の運用に係る事項についても引き 続き検討するというふうに考えております。 以上が試案の内容の概要です。この試案は、これまでの議論を踏まえて公益委員とし て、先ほど申しましたように整理したものです。したがって、この試案をベースに労使 からご意見をいただいて、答申をまとめていきたいと考えております。資料2について、 私から補足させていただきました。皆様からご質問をいただければと思います。 ○しろまる加藤委員 ただ今の部会長のコメントで、私が質問しようとしたことはかなり含まれていました ので、その確認も含めて4点ほどお伺いします。1頁の下から3行目は、産業別最低賃 金と地域別最低賃金の両方に関することだと思いますが、「改正法施行までの間に引き 続き審議会において検討するものとする」ということですが、ここでいう審議会という のはどういう審議会を想定しているのかということです。 2点目は、ただ今の部会長のお話でよくわかりましたが、私が質問しようと思ってい たのは、産業別最低賃金の1の基本的な考え方の(2)のところで、産業別最低賃金に ついては「別に法的根拠を設け、円滑な対応ができるようにする必要がある」というと ころで、「別に法的根拠を設ける」ということは、どのような法を想定しているのか、 あるいは、ここでいう産業別最低賃金、あるいは仮称でいっている「職種別設定賃金」 についての単独の新たな法律を考えているのかなどについて、現時点でのお考えを聞か せてもらえればと思います。先ほどの部会長のお話では、どれを根拠法とするかも含め て、労働条件分科会、あるいはこの部会で検討したらどうかということですが、今時点 でのお考えがあれば聞かせていただければありがたいと思います。 3点目は、地域別最低賃金のところで、基本的な考え方の(2)で「社会保障政策と 整合性のある政策を展開する必要がある」と記載してありますが、これまで議論してき た、例えば生活保護基準などを念頭に置いているのか、あるいはもう少し幅広く社会保 障政策全体との整合性を考慮したものを考えているのかどうかということです。 4点目は、5頁の上から2行目の「その他最低賃金法の罰則の整備」のところで、「 その他最低賃金法の罰則」というのはどの部分を指すのかということと併せて、どのよ うな整備ということを念頭に置いているのかということです。以上4点についてお願い いたします。 ○しろまる今野部会長 私からお答えします。公益委員の方で相談をしたのですが、細部の細かいところまで 全部相談しきれるかというとそうでもないので、ちょっと違うぞということがあったら 公益委員からも意見を言っていただければと思います。 1点目の質問は、1頁の下から3行目の「改正法施行までの間に引き続き審議会にお いて」の審議会はどういうことかということですが、本日は粗々どういうテーマがあり 得るかということは書いてあるわけです。いろいろやっていたときに、制度にかかわる 部分と、運用にかかわる部分があるということです。制度にかかわる部分はここでやる ことになると思います。運用にかかわる部分は中央最低賃金審議会でやるのが原則だろ うと考えています。そういう考え方に基づいて整理していくことになるのだろうと思い ます。 2点目は、2頁の1の(2)の一番最後の行の「法的根拠を設け、円滑な対応ができ るようにする必要がある」というのは先ほど私が言ったことなのですが、重要なことは、 法的措置としてどういうことをするかというのはここで決めるわけですが、その法律は どの法律を当てはめるかということです。これについて、私はこれというのをあまり考 えていないです。可能性としては、先ほど言いましたように労働契約法制の議論もして いますので、そことのかかわりもあるかもしれませんし、他もあるだろうということで す。 労働契約法制の議論がかなり行われていますので、それとの関連で今言った問題を考 えるという可能性は大いにあるだろうと思っていますが、今ここでどっちとか、どれと いうふうに公益委員としては決めていないということです。 3点目は、4頁の社会保障政策で、1の(2)の社会保障政策の範囲は何かという話 ですね。私は、あまり広くは考えていないで、生活保護かと考えています。 4点目は、5頁のところで私が考えていたのは、4頁の一番下の行からですけれども、 「申告及び申告に伴う不利益の取扱いの禁止」ということが書いてありますが、そうい うことも含めた罰則の整備ということを念頭に入れていると理解しております。それで よかったでしょうか。 ○しろまる前田勤労者生活課長 最後の、「その他最低賃金法の罰則の整備」というところについて、公益委員の見解 の中で、現在ある最低賃金法第35条の報告をしないとか虚偽報告する、あるいは最低賃 金法第38条の労働基準監督官の臨検を拒否するということについての罰則があるわけで す。そういうものについても、今は法律上5,000円という罰金になっていますので、そ ういうものを引き上げる必要があるというふうに認識しております。 ○しろまる今野部会長 補足をしていただきましたけれども、よろしいですか。 ○しろまる加藤委員 はい。 ○しろまる今野部会長 公益委員から何か補足はありますか。 (特に発言なし) ○しろまる今野部会長 他にありましたらお願いいたします。 ○しろまる川本委員 質問ということですが、私が思っていたところを加藤委員からだいぶお聞きいただい たわけですけれども、その他についてもかなりありますので質問させていただきます。 2頁の真ん中のところに「具体的方向」とあり、(1)基本的な枠組みというのがあり、 その下のポツの1番目に「職種についての下限となる賃金(「職種別設定賃金」)」と なっております。ここを見ますと下限であり、下回れば無効ということが書いてありま す。「最低」という言葉を使わないで、なぜ「設定」という言葉を使ったのかお考えが あればお聞かせください。 2点目は3つ目のポツに、達しない部分については無効と書いてありますけれども、 これは下回った場合には無効になるけれども、罰則はないと理解してもいいのかという ことです。 3点目は、3頁の1行目で、「職種については、例えば」ということで例が書いてあ ります。「技能職で一定程度以上の技能を有する者と定義する」とあります。この「一 定程度以上の技能」という意味合いに何か基準的なイメージを描いているのか、何かお 持ちであればお聞かせください。 4点目は、その下の(3)「職種別設定賃金」決定のための手続というのがあり、1 つ目のポツの「関係労使間で適用対象労働者についての賃金に関する労働契約が締結さ れている場合その他これに準ずる場合」というのがあります。「これに準ずる場合」と いうのはどういう意味合いなのかをお聞かせください。 5点目は、その下のポツの「申出に係る要件等については、現行の産業別最低賃金の 運用上の要件等を配慮した上で実効が上がるようなものとする」というときの、この「 配慮」という意味合いはどういうことなのかをお聞かせください。つまり、現行の産業 別最低賃金のルールをそのまま適用するつもりなのか、配慮はするけれどもかなり見直 すつもりなのか、何かイメージがあって書かれているのかと思いますのでお聞かせくだ さい。 6点目は、(5)その他のところで「産業別最低賃金等の基本的枠組みの変更は、十 分な移行期間の中で行う」といっていますが、この「十分な移行期間の中で」という意 味合いといいますか、期間とその中身についてどのようなイメージをお持ちなのかをお 聞かせください。 7点目は、4頁の下の方の2の「具体的方向」の(2)決定基準の見直しの1つ目の ポツの「労働者の生計費については、生活保護との関係も考慮する必要があることを明 確にする」と書いてあります。先ほど加藤委員から、社会政策全体の話がありましたが、 「生活保護との関係も考慮する」というのはどういう意味合いであるのかをお聞かせく ださい。 8点目は、その下の「類似の労働者の賃金については、地域における労働者の賃金に 改める」とありますが、「類似」を「地域」という言葉に改める理由もお聞かせくださ い。 9点目は、その下の(4)罰則の強化等のところで先ほどご説明がありましたけれど も、1つ目のポツの、違反があった場合の罰金額をより厳しいものにする、とかその次 のところもありますが、ここは金額的なイメージがあるのかどうか、あればお聞かせく ださい。現行5,000円というお話でしたけれども、これをどんな感じのイメージでお持 ちなのかをお聞かせください。 10点目は、5頁の上から3行目の(5)その他の3つ目のポツの「最低賃金の設定単 位等を見直し、より労働市場の実情等を反映した運用が可能となるようにするものとす る」と書いてありますが、これはどのようなことをお考えなのかイメージを聞かせてく ださい。 11点目は細かな質問という意味ではありませんけれども、先ほども説明がありました ように、運用の部分については法律の枠組みとは別ものだということで別の場所で審議 もするし、枠組みが決まった後で話をするということですけれども、先送りして議論す るということなのですね、ということを確認したいと思います。 つまり、今の最低賃金というのは地域別最低賃金であれ、産業別最低賃金であれ、実 はこの運用というのは重要な位置づけにある中で決まってきていると理解しております。 この部分は先送りなのですね。特に産業別最低賃金であれば、公正競争ケースから労働 協約ケースの方へだんだん収斂していきましょうとか、あるいは数量的なルールの問題、 規制の問題、全会一致原則とかいろいろあったわけですけれども、この辺は先送りして 白紙の状態から改めて検討する意味合いと読んでいいのかどうかという確認です。以上 です。 ○しろまる今野部会長 順番にいきます。2頁の2の(1)の最初の職種別設定賃金の、仕事別に最低でとい っているのに、なぜ職種別設定というように「設定」を使っているのかという趣旨です ね。 ○しろまる川本委員 それを使った理由です。 ○しろまる今野部会長 いいアイディアがなかったからです。いろいろ考えたのですけれども。先ほどの説明 のときに申しましたように、仮置きとして「職種別設定賃金」と申しましたのは、この 名前については、趣旨を踏まえていい名前があったらと考えております。 次は、その下のポツで、罰則はどうだということですね。 ○しろまる川本委員 そうです、無効の場合の話です。 ○しろまる今野部会長 これは民事効だからです。この場合には、職種別設定賃金より低くやったらそれは無 効にして、職種別設定賃金を払いなさいということになると思います。 ○しろまる川本委員 今のところは、この枠組みについては民事効で考えているということですね。 ○しろまる今野部会長 そういうことです。 ○しろまる川本委員 はっきり書いていないので、それを確認しようとしたわけです。 ○しろまる今野部会長 明確に書いていなかったですか。その次は、3頁のここの例示で1行目から3行目ぐ らいまでですよね。例えば、例示として製造業では、「技能職で一定程度以上の技能を 有する者」ということで、この「一定程度」とは何かということですが、これまでの議 論で公益委員側から何度も言っていますが、ポジティブリスト方式でいこうではないか ということですから、基幹的労働者でやってくださいと。それでは基幹とは何というこ とで、例示として「一定程度以上の技能」と書いたわけです。 この一定程度以上については、我々がこういうランクの人、というふうに公益委員の 中で明確には決めていませんし、この辺については労使が相談をしながら決めていただ くというふうに我々は考えております。ですから、原則は基幹的ということではっきり しております。 個人的意見もありますけれども、それは控えさせていただきます。次は、(3)でし たか。 ○しろまる川本委員 はい、(3)の1つ目のポツの「これに準ずる場合」というところです。「労働協約 が締結されている場合その他これに準ずる場合」とありますけれども、これはどういう 中身なのでしょうか。 ○しろまる今野部会長 原則的には、労働協約が中心でいくべきだと思っていますが、これまでも公正競争ケ ース等の場合は、機関決議や個人合意も申出に当たって合意形成や合意の役割という意 味としては同じに機能してきたというお話もここにあったものですから、現段階では、 今、私が言った機関決議や個人合意についても排除する必要はないだろうということで、 「これに準ずる場合」と書いておりまして、それを本当にどうするかということについ ては、またここで議論していただくことになろうかと思います。 その次はすぐ下のポツということでしたが、これは、内容をこう詰めたいということ です。要するに、産業別最低賃金がうまくいくように配慮したいということで、どうい うことがあり得るかということについては、今後検討していきたいという意味です。で すから、具体的に何と言われると、今のところ抽象的な範囲で考えております。次は何 でしたか。 ○しろまる川本委員 (5)の「十分な移行期間」ということですけれども、その期間はどのぐらいのイメ ージで、かつその変更の中で混乱が生じないようといっていますけれども、どのような ことをされるイメージなのですか。 ○しろまる今野部会長 「十分な移行期間」というのも、どの程度にするかというのはここで議論したいとい うことです。これは1年だとか、2年だとか、3年だとかというふうにはまだ考えてお りません。「混乱が生じることのないような所要の措置」についても、ここで議論しな がら考えていきたいと考えております。 ○しろまる川本委員 次は4頁の2の(2)のところです。 ○しろまる今野部会長 「労働者の生計費については、生活保護との関係も考慮する必要がある」というとこ ろの「考慮」とはどういう意味かということですが、生活保護との関係で、生活保護よ り最低賃金の方が低いということは、モラルハザードの問題があって、やはり大きな問 題であると基本的には考えております。それが原則ですが、実際に生活保護といっても 計算式は非常に複雑ですので、どのようにするのかについては今後検討したいというこ とです。 次は、その下の「地域における労働者の賃金」になぜしたかということですが、「類 似の労働者の賃金」といった場合、今はそうですが産業別最低賃金とか、職種別最低賃 金とかいろいろなのがありましたので、ここでは「類似の労働者の賃金」と書いてある と私どもは考えております。したがって、これからは地域別最低賃金一本にしますので、 そういう表現をする必要はありませんので、「地域における労働者の賃金」と改めると いうことです。 次は(4)の罰則の金額をいくらにするのかということですが、これは今後検討した いと思います。ここでは、基本的な考え方だけを提示しております。 次は(5)の設定単位の問題ですが、原則としてはこういうことだと思うのです。つ まり、労働市場にきちんと合った形で、設定単位を作るのがベストなわけですから、原 則としてはこういうことなのです。そのときに、もう少し大括りにすべきだとか、いや 従来でいいのだという両方の意見があったと思います。ですから、我々としてはこの問 題を議論の俎上には残しておきたいということでここに書いておきました。 公益委員の間では、例えばここであったように大括りでいくべきだとか、あるいは県 単位でいくべきか、もしかしたら理論的には日本全体でいくべきだとか、あるいは地域 や県をもっと分割すべきだということで何か決めているということではなくて、先ほど 言いましたような意見があったものですから、ここで議論のテーマとして残しておきた いということも含めてここに書いておきました。 最後は、目安制度の今後の取扱い方でしたね。 ○しろまる川本委員 目安制度ではなくて、私が言っているのはここの運用ルールのところです。つまり産 業別最低賃金であり、地域別最低賃金であり、運用にかかわる事項については、すべて 法改正施行までの間の1年ぐらいといっておりますけれども、本来運用ルールというの と、実際の実態としては非常に重要な位置づけになっていると思っております。それを、 ここに書いてあるとおり、切り離して先送りして議論するということですね、ここに書 いてあるとおりなのですね、という意味合いのことを確認したかったのです。 ○しろまる今野部会長 今おっしゃられているのは、現行運用しているのはその間どうするつもりですかとい うことですね。 ○しろまる川本委員 ここに書いてある趣旨は、別に切り離して先送りするのですね、ということを確認し ておきたいだけです。先ほど部会長から多少説明がありました。法的物事と運用は分け てというお話でしたけれども。 ○しろまる今野部会長 分けますよ。 ○しろまる川本委員 要するに、分けて別にやって先送りで議論するんです、という趣旨ですねということ だけ確認したいのです。 ○しろまる今野部会長 先送りと言われると、何か悪いことをするためみたいで、それがちょっと気になった のですが、原則としては先ほど言ったように、制度の問題と運用の問題は違いますとい うことです。 ○しろまる川本委員 そういうお考えで案を作られたということですね。 ○しろまる今野部会長 はい。 ○しろまる川本委員 先ほど生活保護のところの話があったのですが、この生活保護の中身については、今 後ここで議論ということなのですね。 ○しろまる今野部会長 そうです。 ○しろまる川本委員 イメージはないということですか。 ○しろまる今野部会長 基本的な考え方しか出していないということです。基本的な考え方を書きましたから、 イメージよりもう少し強いと思います。私が答えさせていただきましたけれども、不正 確なところがあるかもしれませんので、直していただければと思います。 ○しろまる中窪委員 公益委員の間でも、細かいところまで詰めて議論していないところも随分あります。 一番最初の「職種別設定賃金」という呼び名はいろいろな意見がありましたけれども、 意味としてはおっしゃったように最低なのです。それより下回るものは、無効となる民 事効があるわけですから、そういう意味では最低なわけです。 しかし、これは最低賃金法から除くわけですし、かつ先ほどご紹介がありましたよう に、罰則はなく民事効のみという理解ですから。そのときに最低とか、あるいは下限と いう言葉を使うことにより、両者が混乱する心配もあるのではないか、というところか ら若干はっきりしない面がありますけれども、「設定賃金」という呼び名を使いました。 最初は、職種別賃金というのもどうか、という議論もしておりましたけれども、それで はなんかベースという感じがしないだろうということで「設定」という言葉を仮に付け てみたということです。ですから、趣旨としては最低賃金法とは別の、しかし下限とし ての効力を有するという民事的な賃金であるという理解です。 ○しろまる今野部会長 今、補足していただきましたように、趣旨をそのまま表現すると職種別最低賃金にな るわけです。 ○しろまる川本委員 もうちょっと言ってしまうと、中の具体例のところの例も読んでしまったら、職種別 産業別最低賃金的な意味合いですよね。これは、産業別でもできるわけですよね。 ○しろまる今野部会長 それは、職種の範囲をどう取るかということについてですから、それは先ほど言いま したように、全国で設定するというのもあるかもしれませんし、産業大分類ベースもあ るかもしれませんし、産業中分類ベースもあるかもしれませんが、それは何がベストか というのはまだ考えていません。今、川本委員がおっしゃられたように、産業別で職種 別になるのかもしれません。 ○しろまる中窪委員 今、誤解を与えたかもしれませんけれども、最低賃金とは違うものでありますが、趣 旨・目的としても地域がセーフティネットであるのに対して、これは労使間の公正な処 遇、という違う目的のために設定するものですから、そこはやはり違うものだという理 解です。 ○しろまる今野部会長 試験を受けているようで大変緊張しているのですけれども、他に何かありますか。 ○しろまる池田委員 基本的に、私どもは最低賃金の中で2つを屋上屋を重ねるということで、産業別最低 賃金は廃止してほしいという主張をしたわけです。前文の流れの中で、果たしてこれが 規制緩和の流れの中に沿っているのか、規制緩和という文字が1つもないので、我々に とっては規制緩和なのか強化なのかわからないのですが、労使の主張は別々になると思 います。今の世の中の流れの規制緩和に即して、屋上屋を重ねているものをなくしてい くのだ、という主張がこの中には入らないのだろうかということが1つです。 その面からいくと、4頁の違反の罰則の強化というのは、違反が増えているときなら 罰金を増やすのはわかるのですが、なぜ減っているときに、これから上がるものに対し て罰則を増やすのかというところは規制緩和の流れからいくと承服できないと、一経営 者としてはそう思います。 文章はよくわかるのですが、とかく地方の経営者というのは文章を細かく読む人はい ません。年金ではありませんけれども、ある程度図式化して、全体の法律から産業別最 低賃金が分かれたよ、こういうふうになるんだよ、というものを分かりやすいものに変 えるという構想をしていただきたい。 単純に見ると、これは産業別に分かれるけれども、今度はもっと枠が増えてしまって 規制強化になってしまうのではないかという感じも大いにしますので、わかりやすく説 明できるような、図式化したものができないのかということが2つ目です。 3つ目は、最後の頁の(5)その他のところの、「所定時間の特に短い者」というの は適用除外ということですが、現実にはどういう人たちなのかということです。 ○しろまる今野部会長 池田委員の4点についてお答えします。最初の、規制緩和についての表現を前文に入 れろということについては事務局で考えていただくことにして。 ○しろまる前田勤労者生活課長 それは、ご意見として......。 ○しろまる今野部会長 我々としてもどうしますかね、それはちょっと考えさせてください。 ○しろまる川本委員 もう意見の聴取に入っているのですか。 ○しろまる今野部会長 ごめんなさい、失礼しました。そうすると、今のはご質問はないんですね。今の3点 は意見ですので、それはそれでとりあえずお聞きしておきましょうか。今は、この内容 についてのご質問を受けておりますので。忘れていました。 ○しろまる川本委員 今の最後のところは、労働時間に対してのご質問だったのではないですか。 ○しろまる今野部会長 これは時間額にするのでこうしているのですが、所定労働時間が特に短い人とはどう いう人かというお話ですね。 ○しろまる池田委員 はい。 ○しろまる今野部会長 この辺はどういう人ですか。 ○しろまる前田勤労者生活課長 今、法律上は日額もありますし、時間額もあるので、日額で最低賃金を設定する場合 には、所定労働時間の特に短い者については適用除外ということがあり得ります。時間 額で最低賃金を決定すると、その所定労働時間が特に短い者というのは適用除外とは関 係なくなるわけです。パートタイム労働者であろうと、1時間いくらということで適用 する限りはです。 今、地域別最低賃金は運用上時間額になっていますので、実際上は所定労働時間が特 に短い者について適用除外という者は法律上ありますが、運用上は意味がなくなってき ます。仮に法律上日額をなくして、時間額に一本化すれば、こういう適用除外の規定は 自然に意味がなくなるので、時間額に一本化すれば、制度的には所定労働時間が特に短 い者についての適用除外は不要になるということで、そういう削除にするというふうに 整理しております。 ○しろまる今野部会長 池田委員のご質問は、時間額にするのでそうなるということでいいのですけれども、 具体的にどんな人かということです。 ○しろまる前田勤労者生活課長 今は日額で、仮に1日何千円と決めていたときに、4時間しか働かないような人につ いて、そこは日額で最低賃金を決めた場合には適用除外というのはあり得るということ です。 ○しろまる今野部会長 私の趣旨は理解が違うんだ。例えば製造業の人とか、そういう意味ではないのですか。 ○しろまる前田勤労者生活課長 パートタイムで4時間しか働かないような人。 ○しろまる青木労働基準局長 日額で労働条件を提示しているパートタイム労働者が対象者になります。だけれども、 今度は時間額単位でやるので意味がなくなる、現実にも意味がなくなるということでし ょう。 ○しろまる今野部会長 そうなのですけれども、これは池田委員に代わって私が質問してもしようがないので すが、池田委員の趣旨からすると、どんな職種の人が多いとか、そういうご質問かと思 ったのです。そうすると4時間というと、小売りとかサービスといった産業の職種です かね。 ○しろまる松井審議官 最近はサービス経済化していますから、あらゆる場面で、例えば1日のうち午前中と か午後だけ軽易な作業をしていただきたいという形で働く方がまず想定されます。そう いう方は、大体パートタイム労働者とか、臨時雇いの方です。例えば、月水金、例えば 2時間ほどこの部屋を清掃してくれ、という方もいるでしょうし、コンビニなどの受付 をやってくれという方々です。俗に言う短時間労働者で、契約形態もたぶん有期の方々 が対象になっていると考えられます。実行上は、今はちゃんと適用されていて、今回は そういうものを法文上整理するという位置づけになっております。 ○しろまる今野部会長 よろしいでしょうかね、詳しい統計を持ってくれば、どういう職種か、どういう産業 が多いということがわかると思いますが、概況についてお話をいただきました。 ○しろまる中野委員 よくわからないので質問です。職種別設定賃金というのは、必要と認める職種の下限 であり、しかも民事効を持っている。そうしますと、民事効を持ちながら、なおかつ下 限でありますから最低基準効を持っている。最低賃金法は、その趣旨を地域別最低賃金 に特化するというふうに書かれていますが、最低基準効を持ち、なおかつ民事効を持っ ている制度を、なぜ最低賃金法から別の法的根拠に持っていかなければならないのかを 教えてください。 ○しろまる今野部会長 単純に言ってしまえば、役割が違うと思っているからです。最低賃金の場合は、あく までセーフティネットだと。ここで今回の言葉でいう職種別設定賃金というのは、公正 な賃金決定をしてほしいということです。ここで基本的に違うと考えたのです。最低賃 金の場合は、本当のセーフティネットの一番下を支えるのでそこに特化をした。そこで、 明確に切り分けをする。それでは駄目ですか。 ○しろまる中野委員 わかるのですけれども、他に法的根拠を持っていくというときに、最低基準効を持ち、 なおかつ民事効を持っているような制度を、どんな法律に入れるのだろうというふうに 考えたときに、あまり詳しくないもので思いつかないのです。 ○しろまる今野部会長 我々も、そういう点ではこの法律に持っていこう、というのは公益委員の中で最後ま できちんとシナリオが描けているわけではないです。その点についても、今後議論して いかなければいけないかと思っています。 ○しろまる松井審議官 情報だけですけれども、罰則抜きで民事効で、いわば効果として最低の条件を支える ような効果を持つ法律です。実態は抜きにして。労働組合法第18条に、労使が決めた協 約があればそれを合意して、全体に適用すると、他のところの協約もこの協約の水準に するという法体系がありますので、これはどこに置こうと民事効という形で、その法体 系に合えば置けると思います。 ○しろまる中野委員 最低賃金法は、憲法でいうところの第27条に基づく労働保護法だという理解をしてお ります。今のお話ですと、労働組合法の中にあるということです。労働組合法は、憲法 でいうと第28条の規定に基づく保護法だと思います。そうすると、地域別最低賃金につ いては第27条規制の中でやる、それから職種別設定賃金については、第28条規制の中で やるという理解でよろしいのでしょうか。 ○しろまる今野部会長 どういう法的措置ということを決めてない前に、どっちでしょうかと言われても。今、 そういう例示があるということ。 ○しろまる中野委員 例示がありましたので、そういう理解でいいのかということでお聞きしました。 ○しろまる今野部会長 今の例示はということですね。 ○しろまる中野委員 はい、そうです。 ○しろまる松井審議官 労働組合法第18条の民事効が、憲法第28条に直接基づく効果かどうか詳細は私もわか りません。しかし、労働組合の団結権を保障している法体系の中に入っている、という ことだけが事実だと思います。憲法の要請かどうかは、はっきりいたしません。法的な テクニカル上そこに載せた、ということを今、説明したくて申し上げただけです。 ○しろまる今野部会長 中窪委員はご専門ですが何かありますか。 ○しろまる中窪委員 すべてを第27条か第28条かに割り切るというのは。 ○しろまる中野委員 割り切るという意味ではなくて、そういう理解でいいのかということなのです。 ○しろまる中窪委員 今回の新しいものがということですか。 ○しろまる中野委員 そうです。 ○しろまる中窪委員 それは、労働協約とは違うもので、新しい労働条件設定の仕組みだと思うのです。第 27条に定める最低基準とはちょっと違うものと考えています。先ほど、設定のところで 十分に言い尽くさなかったかもしれませんけれども、これはあくまでも関係労使が下限 となる賃金を決めるということですので、主体は労使だと思っています。それについて、 一定の公的な場で合意して決定したものについて、特別な効力を与えるということです。 なぜそういうふうに作るかといえば、その職種について、労使でこれは必要であり、こ れを最低限にしようという労使の決定があった場合に、それに一定の法的効力を与える という意味で、セーフティネットとして最初から公的に決める最低賃金とは、自ずから 役割が違うだろう。だから、設定賃金という言葉を使ったのだと考えております。これ は、私の個人的理解かもしれませんが。 ○しろまる原川委員 1つ質問させていただきます。私ども、制度として最低賃金の改定における引下げの 可能性ということを前回申し上げたのですけれども、それについての検討はやっていた だけるのでしょうか、やっていただけるとしたらどこでやっていただけるのでしょうか。 ○しろまる今野部会長 ご質問は、引下げが可ということを法律にというか、制度的にだか、法律に書けるか どうかという問題提起ですか。 ○しろまる原川委員 検討の場所です。法律に書くかその運用かは別にして、そういう検討の場というのは、 この試案でいうとどの辺に入るのかということです。 ○しろまる今野部会長 私としては運用の仕方だと思っています。目安制度の在り方なども考えますので、そ ういう中で考えればいいかとは思っています。 ○しろまる川本委員 追加の質問ですが、2頁の真ん中に「具体的方向」があって、(1)基本的な枠組み (別の法律で措置する事項)の2つ目のポツに「職種別設定賃金は、公的機関(例えば 地方最低賃金審議会)の場において労使が合意して」となっているわけです。ここに「 例えば」となっておりますが、他に何かイメージはありますか。 ○しろまる今野部会長 民事効が入るので、公的機関が噛まざるを得ないかとは思っています。そのときに、 これまでの経緯からすると、やはり地方最低賃金審議会が一番いいかとは思っています。 それで、ここで「例えば」と書いてあります。 ○しろまる川本委員 最低賃金審議会は、公労使の三者構成ですから、労使の合意で決めているのではない ですね。 ○しろまる今野部会長 でも、最低賃金について民事効を効かせるわけですから、そうすると何らかの形で公 的機関が入って、そこで決定することが必要だと思います。それで、ここでは公的機関 と入っています。 ○しろまる川本委員 本日は質問ですので、質問の趣旨にはお答えいただいたものと思います。 ○しろまる今野部会長 それこそ、地方最低賃金審議会ではなくて、他に何かいい場があれば、また改めて出 していただきたいと思います。 ○しろまる杉山委員 今の問題ですが、地方最低賃金審議会が答申をして、労働局長が決定している。労使 が決めるということと、大抵の場合労使意見が分かれているにもかかわらず、公益委員 の案なるものを後で意見のみ述べて、それで労働局長が決める、というのが普通のパタ ーンだろうと思います。ここの表現とはちょっと違うものですから、地方最低賃金審議 会でやるというのはおかしいのではないか、という意見めいた質問だろうと思います。 ○しろまる今野部会長 いずれにしても、どういう手続でやっていくのか、どういう運用でやっていくのかと いうのは、今後またここで議論していただかなければいけない問題です。もう1つは、 それが運用手続に回ったときに、その場をどこでするのかというのが、ここでは例示と して地方最低賃金審議会が載っているということです。ですから、我々もこれしかない と思えば「例えば」などと書かないわけです。でも、これまでの経緯からしたら、とり あえず今のところいいかなと考えておりますので、「例えば」です。 ○しろまる池田委員 先程は個人の意見ではなくて、お願いしたのは公益委員の意見をこれから理解してい くのに、何か図式化したものはできないでしょうか、というお願いが1点です。先生方 がこれを作られた考え方の中に、規制緩和という意見が書いていないけれども、入って いるのでしょうかという質問をしたのです。その点だけなので誤解のないようにしてく ださい。 ○しろまる今野部会長 特に、図式化するということについては、わかりやすい方がいいわけです。ただ、こ こで全部合意ができてしまえば、何を図式化するかがはっきりした方が作りやすいので すが、いずれにしてもわかりやすくやっていきたいと思っています。最終的に合意案ま できたら、図式化でもしてわかりやすい資料を作ればいいかと思っています。 ○しろまる川本委員 この中身の話の質問ではなくて、本日いろいろ質問させていただいて、お答えを聞い ていて思ったのは、「これから議論して決めていただくのだ、イメージはないのだ」と いうお話の部分が多かったと思います。どれもすごく重要な問題の部分でありますので、 スケジュール観をお聞きしたいのです。どの程度のイメージで、議論の過程を経て取り まとめていくお考えが公益委員にはあるのかをお聞かせください。 ○しろまる今野部会長 内容が固まっていない部分がすごく多いとおっしゃいましたが、いや、そうでもない んじゃないというのが私の考えです。これは、お互いの判断ですけれども。 もう1つスケジュールの問題ですが、なるべく早くしたいと思っています。ただ、労 使各側委員と相談をしながら進めなければいけないことですから、そういうことを踏ま えてなるべく早くしたいとは思っています。 ○しろまる杉山委員 追加ですが、法改正を要する場合にどの国会にかけるのか。大体それを決めれば、審 議に使える時間は決まってくるので、そのお考えはございますかというふうに具体的に 聞いた方がいいのではないでしょうか。 ○しろまる今野部会長 最速で法改正をする、ということを前提にスケジュールをもし組むとすると、議論で きるのは引っ張っていっても来年の1月いっぱいぐらいですか。私は、そんなスケジュ ールかなと思っていますが、一番遅くて。 ○しろまる松井審議官 もし、最速で次の通常国会に出すという手順を考えると、1、2月の段階では、普通 のやり方からいくと、議論していただいて、おおむね合意いただいた法案の要綱という 形で内容を審議していただくことになると思います。その前には、一定の法案を作るた めの、必要な基礎的な部分の合意というものを、大臣に対する、諮問に対する答申とい う形でお出しいただいてという手順になると思います。審議会としては1、2月までか かると思いますが、審議する素材が、答申案を作るための審議と、それを踏まえた今度 は法律のスタイルというか、それを表す要綱で議論する、そんな段取りかと思います。 ○しろまる今野部会長 細部の部品があると思いますけれども、一番重要なところの議論の合意というのは、 1月いっぱいぐらいと私は考えていたのですが、それでは遅いですか。もう少し時間が ありますか。 ○しろまる松井審議官 今回の公益委員見解を踏まえると、審議会の運び方にもよるのですけれども、法案要 綱にかかわる法律条文といいますか、最低賃金法はほとんど枠組みだけでありまして、 運用については何も法律に書いてないというに等しいのです。とりあえず枠組みだけは 合意しておいて、それに必要な条文は用意するという処理でいいということで合意でき れば、今、言ったスタイルで、そして運用についての議論は、どうせこの法案をかけて も成立するかどうか正直に言ってわかりませんので、国会での議論、与野党の議論を踏 まえながら、ここの部分はこんな意見を踏まえて、運用部分はもう一度審議会で議論す る、ということが必ずいると思いますので、それらは仮に法律が成立したら、施行まで の間にある意味で時間をゆっくりかけてもできると思います。そういうやり方が1つで す。 いやいや、そういうものまで含めて、仮に成立したとして、それを踏まえてここをど うする、こうするということまでここの場で決めてやらなければいかんということで進 められるのであればずっとかかりますし、何年先になるかわからないです。つまり、枠 組み自体も、詳細を合意しなければ立てません、それが立たなければ議論し続けますと なると、今の最低賃金法と同じように、延々と議論が続く、極端にいうとそんな状況で す。どちらを選択するかによるかと思います。 ○しろまる川本委員 今のお話を聞いていての確認です。今、お話したスケジュール観の1つは、もし次の 通常国会に出すとするとと言われたけれども、もし次の通常国会に出さない場合も、ス ケジュール観的にはあるのですかという確認をしておきます。 もう1つは延々と議論が続くで、どちらを選択するかということですと言われました けれども、要するにそういう選択的なことを考えておられるということですか。いくつ かありますということですか。 ○しろまる松井審議官 考えているかどうかということと、どうしたいかというのは分けていただけるのなら ば、考えていることではあらゆるバリエーションを考えています。審議会ですから、も ともとここで合意していただいたことを取り上げて、そして大臣に答申していただいて、 それを法文化したいと思っています。どのレベルで合意できるかでありますので、合意 もないのに事務局がこうしたいからこうやるというのであれば、この審議会は意味があ りませんから、そこは考えていないという範囲でまずお願いしたい。 そして、今、申し上げた、時間がかかるというのは、詳細について皆様はまだ対立し た状況がありますので、それが整理できないと、その上に行く仕事はしない、すべきで ないともし判断されれば、永遠に作業はできないだろうということを申し上げました。 可能性はある、ということを申し上げただけでありまして、どれをやりたいかについて は事務局でお答えすべき性格ではないと思います。 ○しろまる今野部会長 だいぶご質問をいただきましたので、次にご意見を伺いたいと思います。 ○しろまる加藤委員 意見といっても、本日初めて公益委員試案をご説明いただいたわけですが、ちょっと ため息をついています。昭和43年に最低賃金法を改正して以来の、最低賃金の枠組みの 大きな転換をイメージした公益委員試案だと受け止めています。また具体的に考えると、 今後、本日お示しになった新しい公益委員試案の枠組みがうまく実効ある制度として機 能させていくことができるか、などについても検討が必要なのだろうなと思っています。 私どもも本日初めて受けたわけですから、地方組織並びに産業別の組織を含めた組織 的な討議に付す必要があるだろうと考えておりまして、本日の試案については、一言で 言うと、持ち帰って慎重に検討させていただきたいと思っております。本日、労働側と しての意見はありません。 ○しろまる今野部会長 使用者側はいかがでしょうか。 ○しろまる川本委員 今、加藤委員が言われたとおり、本日初めてお示ししていただいたわけですけれども、 私ども使用者側委員が先般まで主張してきた意見とはかなりかけ離れたものだと思って 困惑しているところであります。特に、地域別最低賃金が全国で行われている現在に至 って、規制緩和の観点、あるいは日本企業の国際競争力の維持などの観点から、屋上屋 を課す産業別最低賃金の廃止ということを主張してきたわけですけれども、公益委員試 案では、産業別最低賃金は廃止する一方で、当部会としては意見として出てきていなか った職種別賃金という概念を、別枠で設定するというものが出てきたわけです。詳細は ともかくとしても、かなり表面だけ変わったというようなイメージがしないわけでもな いというところもあります。 また、地域別最低賃金については現行どおりと主張してきましたけれども、生活保護 との関係が明記という形になってきており、実際は驚きを禁じ得ないところであります。 さらに、職種別最低賃金の設定賃金ということ、あるいは地域別最低賃金ということ につきましても、今日まで産業別最低賃金、それから地域別最低賃金で行われてきた運 用について、これは別口でという形で検討という内容ですけれども、これについても非 常に困惑しているということです。 しかしながら、いずれにしても公益委員試案をお示しいただけましたので、私どもも 地方最低賃金審議会の使用者側委員等も含めて声を聞いた上で検討させていただきたい と思っております。 ○しろまる今野部会長 他に発言はございますか。 (特に発言なし) ○しろまる今野部会長 先ほど、池田委員の発言の中で、既に今回の公益委員試案に対するご意見がありまし た。それも議事録には残りますけれども、池田委員がよければ、また次回の会議で言っ ていただく、ということにしていただければと思います。 労使各側には、公益委員試案を持ち帰っていただいて検討していただくようよろしく お願いいたします。次回は、この試案について議論していきたいと思っております。次 回の日程は、検討するのに時間がかかったりいろいろなことがあると思いますので、申 し訳ないのですが日程は別途調整させていただいてご案内する、ということにさせてい ただきたいと思います。 本日の会議はこれで終了させていただきます。本日の議事録署名人は、加藤委員と池 田委員にお願いいたします。本日はありがとうございました。 【本件お問い合わせ先】 厚生労働省労働基準局勤労者生活部 勤労者生活課最低賃金係 電話:03−5253−1111 (内線 5532) 1