05/09/16 労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会 第3回議事録 第3回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 1 日時 平成17年9月16日(金)10:00〜12:00 2 場所 厚生労働省専用第21会議室 3 出席者 【委員】 公益委員 今野部会長、石岡委員、勝委員、武石委員、 田島委員 労働者側委員 加藤委員、須賀委員、??石委員、??橋委員、 中野委員 使用者側委員 池田委員、川本委員、杉山委員、竹口委員 原川委員、前田委員 【事務局】厚生労働省 青木労働基準局長、松井審議官、 尾澤総務課長、前田賃金時間課長、 名須川主任中央賃金指導官、 山口副主任中央賃金指導官、梶野課長補佐 4 議事次第 (1)産業別最低賃金及び労働協約拡張方式の在り方 (2)その他 5 議事内容 しろまる今野部会長 第3回「最低賃金部会」を開催いたします。本日は、中窪委員がご欠席です。また横 山委員がご欠席ですが、本日は弥富洋子日本食品関連産業労働組合総連合会政策局長に 代理として出席をいただいております。 それでは、早速議題に移ります。本日の議題は、「産業別最低賃金及び労働協約拡張 適用方式の在り方」についてですが、議題に入る前に前回の宿題がありますので、事務 局からご説明をお願いいたします。 しろまる前田賃金時間課長 資料1−1です。前回、中窪委員から在宅ワークがそもそも家内労働法の対象になっ ているのかどうかというご質問があり、その関係の資料です。資料1−1にありますよ うに、平成2年にワープロ作業の取扱いについて、解釈が通達で出ております。「記」 の1にありますように、原稿に従ったワープロ操作を行って、ワープロ操作に発生した 電気信号をフロッピーディスク、その他に保存する作業は、家内労働法にいう「加工」 に該当する。2でフロッピーディスクの提供又は売渡しがあった場合は、家内労働法に いう「物品」の提供又は売渡しがあったものとすること、ということです。したがっ て、原稿があって、それに沿ってワープロを打ち、それをフロッピーディスクに保存す るという作業は、家内労働法の家内労働に当たり、それ以外のものは当たらないという ことです。 例えば、次にあるように、ホームページを作成してMOに保存する作業については、 家内労働法の「加工」や「物品」に該当しないか、という疑義照会があって、これにつ いては原稿に従ってフロッピーディスク、その他の外部記憶媒体に入力するように委託 されて、それに入力して委託者に納入するという形態だけが家内労働法の適用になると いうことで、自ら考案して外部の記憶媒体に保存するものを作成する場合には、原稿に 従ってやる場合と異なるので、家内労働法の「加工」には該当しないということです。 原稿に沿って単純にそれを打って、フロッピーに保存するものだけが家内労働法の 「加工」なりに該当するということです。 資料1−2ですが、これも前回、中窪委員から臨床研修医の最低賃金法違反の判決に ついて紹介いただきたいということでした。平成17年6月3日に最高裁で判決が出され ました。事実としては関西医科大学附属病院で、医師国家試験に合格して、臨床研修を 平成10年6月から受けていた方が、8月に亡くなったということです。 臨床研修は改正前の医師法に基づいてやっていましたが、2年間の研修期間で、1年 間が外来診療で病歴の聴取、症状観察などをやり、2年目の1年間が関連病院で更に高 いレベルの研修を行うものでした。実際にこの方がやっていたのが、(4)にあるよう に、7時30分ごろから患者の採血を行う。そのあと一般外来患者の検査の予約、採血の 指示、診察補助を行う。あるいは問診、点滴、処方せん内容作成、午後に専門外来の診 察見学、診察の補助、手術見学、さらにカルテを見たり、文献を読んで自己研修、その あと点滴を行ったり、入院患者に対する処置の補助、指導医がいない場合などは単独で 処置を行うこともあり、指導医が当直する場合に翌朝まで副直します。ですから、原則 午前7時半から午後10時まで指導医の指示に従って臨床研修に従事していたということ です。その際に奨学金として月額6万円の金員と副直1回当たり1万円が支払われ、そ れについて病院の方では給与等に当たるとして源泉徴収を行っていたところです。 これについて労働基準法上の労働者であって、最低賃金を支払うべきということで争 った。これ以外に過労死ということで安全配慮義務に基づく損害賠償なども別途争って います。 本件については3にありますように、平成11年の医師法改正前の臨床研修医であった ということで、2年以上大学の医学部、あるいは附属病院で研修を行うよう努めるもの とされていたものです。 その際の判断として、指導医の指導の下に、研修医が医療行為に従事することを予定 している。そういう研修医が、このようにして医療行為に従事する場合に、病院の開設 者のための労務の遂行という側面を有するということで、病院の開設者の指揮監督の下 に、これを行ったと評価することができるということで、その限りにおいて労働基準法 の労働者に当たるという判断です。 本件については、労働基準法第9条の労働者に当たるということで、最低賃金法の労 働者にも当たりますので、最低賃金と同額の賃金を支払うべき義務を負っていたという 判決が出されています。 しろまる今野部会長 質問された肝心の中窪委員がいないのですが、ご質問なりご意見がありましたらお願 いいたします。よろしいでしょうか。 それでは、続きまして今日の本題に入りたいと思います。議事次第にありますよう に、「産業別最低賃金及び労働協約拡張方式の在り方」について、事務局から説明をい ただきたいと思います。 しろまる前田賃金時間課長 資料2−1です。1枚目は「最低賃金制度見直しに関する主要な論点」ということで 書いています。現在の最低賃金制度の現状を簡単に図で整理したものです。 地域別最低賃金が各都道府県ごとに47県で設定されており、適用労働者が原則として すべての労働者ということで約5,000万人です。加重平均額が、昨年で時間額665円で す。地域別最低賃金は、すべての労働者に賃金の最低額を保障する安全網として設定さ れています。毎年中央最低賃金審議会が目安を提示し、それを参考に地方最低賃金審議 会で審議して、都道府県労働局長が決定しています。 地域別最低賃金はそういう形で、原則としてすべての労働者に適用されるということ ですが、それとは別に産業別最低賃金が、関係労使が地域別最低賃金よりも高い最低賃 金を必要と認める産業の労働者に限定して設定することとされています。現在250件あ って、約410万人の労働者に適用されており、加重平均で時間額758円です。 産業別最低賃金は大きく申出のケースを基に、労働協約ケースと公正競争ケースとい う2つに分かれています。労働協約ケースが同種の基幹的労働者の相当数ということ で、最低賃金を新設する場合には1/2以上、改正廃止の場合には1/3以上とされて います。そういう方に最低賃金に関する労働協約が適用されている場合に申出を行うこ ととされています。その申出に基づいて最低賃金審議会において、まずその必要性を審 議し、さらに必要性ありという場合に、金額を審議することになりますが、運用上、関 係労使のイニシアティブに基づくということがあって、全会一致に努めるという運用が されています。 公正競争ケースについては、申出が事業の公正競争を確保する観点から、同種の基幹 的労働者に最低賃金を設定することが必要である場合に申出をするということで、労働 者又は使用者のおおむね1/3以上の合意があることが、一応数量的には整理されてい ます。これについても申出があった場合に、最低賃金審議会において必要性の審議を行 い、必要性がある場合に、金額審議を行って設定するということですが、同様に全会一 致に努めるという運用になっています。 地域別最低賃金と産業別最低賃金はそういうことで、最低賃金審議会の調査審議に基 づいて最低賃金を設定するということです。 右上の労働協約拡張方式が、それと別のものとしてあり、地域別最低賃金より高い水 準について、労働協約の拡張適用を必要とするものについて設定するということで、条 件としては同種の労働者及び使用者の大部分ということで、解釈上、おおむね2/3以 上とされています。そういう大部分に最低賃金に関する労働協約が適用される場合に、 申請をして労働協約に基づいて最低賃金を設定しています。現在、全国で2件しかな く、約500人が適用されており、時間額で868円です。そこまでが現行制度の現状です。 次に、「産業別最低賃金の在り方に関する主要な論点(たたき台)」です。これまで の労使のご意見、これまでの中央最低賃金審議会での考え方の整理、答申や報告、今年 3月にまとめられた最低賃金の在り方に関する研究会での報告の内容などを基に、これ までの議論を整理しました。(労)とか(使)と書いてあるのは、それぞれ労働者側及 び使用者側のご意見で、特に書いてないものについては、中央最低賃金審議会の考え方 の整理、あるいは最低賃金に関する研究会における報告書の中での整理です。 1頁の1で、産業別最低賃金の在り方について、地域別最低賃金との関係について整 理しています。1に、そもそも産業別最低賃金の存否についてということで、大きく分 けて、(1)産業別最低賃金を廃止すべきというものと、(2)現行制度の枠組みを維 持、(3)現行制度の枠組み変更という3つの考え方で整理しています。 まず(1)の廃止ですが、一番上は最低賃金制度の役割の問題で、第一義的役割は、 すべての労働者を不当に低い賃金から保護する安全網としての役割であるということで す。産業別最低賃金は、公正な賃金の決定や公正競争の確保、あるいは労使交渉の補完 ・促進という役割を果たすとされていますが、最低賃金制度として、そういう役割は第 二義的、副次的なものである。最低賃金法の第1条の目的について、解説書などで考え 方が整理されておりますし、研究会でも役割の整理がされています。 2つ目が、使用者側のご意見で、一番上に関連しますが、最低賃金制度の第一義的役 割は安全網であるということで、それについては地域別最低賃金がその役割を果たして いるので、そういう中で産業別最低賃金は屋上屋を架すということで不要であるという ご意見です。 3つ目が、これも使用者側の過去の中央最低賃金審議会の産業別最低賃金の在り方に ついての議論でのご意見ですが、昭和56年や61年の中央最低賃金審議会答申で、産業別 最低賃金の役割として、大きく「労働条件の向上」と「公正競争の確保」という2つに 整理されていますが、そのうち労働条件の向上については、我が国の賃金水準が先進諸 国でもトップクラスとなった現在において、第三者の関与の下に継続すべき理由は乏し いという主張がされています。同じく公正競争の確保については、経済のグローバル化 の進展の中で、国際的な競争が重要になっており、そういう中で国内における事業の公 正競争の確保という意味が失われてきていることから、安全網に特化すべきというご意 見です。 (2)の現行制度の枠組み維持が労働者側のご意見ですが、地域別最低賃金が安全網 として機能していたとしても、産業別最低賃金が、当該産業における公正競争の確保と 実効ある賃金の下支えという役割を果たしてきているということで、その両者が相俟っ て最低賃金制度として実効あるものとなっている。さらに、我が国の賃金決定は企業内 の労使交渉の結果、決定をベースとしているということで、もともと欧米と比べても、 賃金決定の社会的波及力が弱い中で、産業別最低賃金が、唯一そういう社会的波及力を 持った仕組みとして機能しているということで、産業別最低賃金がなくなると「産業自 治、労使自治、団体交渉の補完」といった機能が否定されることになり問題であるとい うことから、現行の枠組みを維持すべきであるということです。 2番目ですが、労働力の流動化、雇用形態・就労形態の多様化の中で、公正な処遇の 確保がますます重要になってきている。これまで産業別最低賃金には、製造業等が多か ったのですが、今後は介護・福祉、医療、交通運輸など第三次産業分野も含めて、公正 な処遇の確保を図るためにも、産業別最低賃金の活用が必要である。これも中央最低賃 金審議会のこれまでの産業別最低賃金の在り方についての議論の中でのご意見です。 (3)は、現行制度の枠組み変更ですが、これについては主に最低賃金制度のあり方 に関する研究会などでの議論を整理したものです。1番上は、役割を地域別最低賃金と 産業別最低賃金とで明確に区分すべきということで、安全網は第一義的な役割として、 地域別最低賃金に委ねる。産業別最低賃金は公正な賃金の決定や労使交渉の補完・促進 という役割に徹するという役割分担を明確にするということです。 その中で産業別最低賃金というのは、申出の形態として、労働協約ケースと公正競争 ケースと2つあるわけですが、これまでの中央最低賃金審議会での報告などでは、産業 別最低賃金は労働協約ケースが中心である。公正競争ケースから労働協約ケースによる 申出に向けて一層努力するということとされていますので、本来的には労働協約ケース を中心と考えています。そういうことから研究会報告では、公正競争ケースについて は、最終的に廃止せざるを得ない。一方、労働協約ケースについては、労働協約という ことで労使である程度賃金決定についての合意がなされており、より有効に機能させる ための見直しを行うべきというご意見がありました。その場合に、産業構造の変化や就 労形態の多様化、外部労働市場が形成されている中で、企業横断的に職務に応じた処遇 がより重要になってきていることを踏まえるならば、それぞれの相場の底支えという意 味で、産業別最低賃金の役割が重要であることから、労働協約ケースをより有効に機能 させる必要があるという考え方になります。 その場合、今の産業別最低賃金は、産業分類で小分類になり細分類という小さなくく りで設定することとされていますが、そういうくくりで設定することが、企業横断的な 職務に応じた処遇という意味からは、かなり意味が低下しているということで、むしろ くくりは中分類なり、もっと大きなくくりの産業で設定し、基幹的労働者についても、 今、主に年齢や軽易な業務を除外するというネガティブリスト方式で基幹的労働者を定 義しているわけですが、その産業を代表するような職務に就く労働者に限定するものに 改めるべき、というご意見がありました。 ただ、特に昭和61年に現在の新産業別最低賃金に転換した当時から、基幹的労働者の 定義については、ポジティブリスト、ネガティブリストという2つの方式があるという ことで整理されていましたが、実態的に社会横断的に職種や職務給の広がりがないとい うことで、これまでネガティブリスト方式でやらざるを得なかったという現状が、これ までの実態の問題としてあると思います。 次は労働者のご意見で、研究会でヒアリングをした際等のご意見です。研究会報告で は、労働協約ケースが中心で、公正競争ケースについては廃止せざるを得ないという形 でまとめられていますが、労働協約ケースの労働協約と公正競争ケースのその他の機関 決議や個人の署名などを基に公正競争ケースの申出がなされるわけですが、これについ ても申出に当たっての合意の形成や合意の役割という意味で、同じ役割を果たしている との意見です。特に公正競争ケースの申出については、申出の際に労働者個人からの合 意を取り付けてやっているということで、むしろ労働協約ケースよりも的確に個々の労 働者の意思を反映するような運用を行っているということがあるので、公正競争ケース の役割を軽視すべきではないということが、労働者側のご意見としてあります。 一番下は、産業別最低賃金の枠組みを仮に変更する場合のことで、安全網として、地 域別最低賃金が罰則付きで、すべての地域に設定されているということですので、仮に 労働協約ケースについて枠組みを変更するとしても労使が必要と認めるものについて設 定するという趣旨からも、国が罰則をもってその履行を担保しなくても、労使のイニシ アティブに基づいて有効に機能するのではないかということで、研究会で罰則は不要で はないかということで整理されています。 2で産業別最低賃金を有効に機能させるための見直しについてということで整理して います。そもそも先ほどの産業別最低賃金の存否についてで(1)にあるような廃止の 立場に立つと、見直しは不要であるということです。ただ、現行制度を維持なり、枠組 み変更という立場からは、産業別最低賃金の趣旨・目的に照らして、より有効に機能さ せるための見直しの余地があるということで、そういう立場からの意見ということで整 理しています。 まず、労働者側のご意見として、今、産業別最低賃金の審議開始のための申出要件と いうことで最初にありましたように、労働協約ケースですと、新設1/2以上、改廃1 /3以上の基幹的労働者について、労働協約が適用されているとか、公正競争ケースに ついても、労働者のおおむね1/3以上の合意という要件があるわけですが、こういう 申出の要件については、あくまで審議会で産業別最低賃金の審議を開始する手続の発動 を促すための要件であるということで、労働協約拡張方式の場合には、その労働協約を そのまま拡張適用して最低賃金を設定することになっていますが、それと別に産業別最 低賃金の場合には、審議会において金額そのものを審議して決定することから、金額決 定の仕組みが異なっている。さらに、そもそも産業別最低賃金を利用できるようにとい うことで労働協約拡張方式よりは、既に申出の要件については、緩和を行っていること から、今後賃金決定の社会的波及力を高めるという観点に立つと、さらに申出要件を緩 和してもよいのではないか、というのが労働者側のご意見としてあります。 2つ目は、産業別最低賃金について申出があった場合に、最低賃金審議会において、 必要性審議と金額審議を分けて行っていますが、特に改正の審議の場合に、まず「改正 の必要性あり」という審議結果になったとしても、金額審議を行って、金額が据置きと いうか、引上げゼロという答申がなされることが、地方の審議の中では事例として見ら れます。そういうことがありますと、改正の必要性がありという審議を行いながら、金 額が据え置かれて改正されないということで、その辺がおかしな結果になることもあり ますので、少なくとも改正の際には必要性審議と金額審議を分ける意味はなく、一括審 議とした方がいいのではないか。これは審議の実態からの客観的な整理ということで す。 3つ目は、労働者側のご意見で、特に必要性審議について、「全会一致に努める」と いうことで、現在運用しているわけですが、必要性審議の議決方法について、団体交渉 の補完とか、実効ある賃金の下支えという必要性が特に高いことから、全会一致という 運用が厳しすぎるのではないか、というご意見があります。 最後は、仮に産業別最低賃金の存否について、(3)にあったような枠組みを変更す るという形にするとしても、現行の産業別最低賃金から枠組み変更について、なだらか に移行が行えるように措置する必要があるということです。 次の頁が労働協約拡張方式と産業別最低賃金との関係です。特に産業別最低賃金を残 すなり、あるいは枠組みを変更する場合に、労働協約拡張方式をどうするかということ で、大きくは(1)廃止、(2)存続ということですが、廃止については研究会報告な どで一応の整理がされており、労働協約拡張方式、現行の最低賃金法が、制定当初は業 者間協定、労働協約拡張方式、審議会方式など様々な多元的な設定方式を採用して、い ろいろな方法で最低賃金の設定を拡大していきました。いずれにしても、最低賃金設定 が任意な現行の最低賃金法の体系の下で適用拡大を図る観点から、多元的な設定方式を 採用したうちの1つが労働協約の拡張方式であるということですが、そもそも現在既に 労働協約拡張方式がなかなか適用できない場合に、同じような趣旨で、申出要件を緩和 して産業別最低賃金が適用できるような運用がなされてきたということがありました。 現時点において、地域別最低賃金は、すべての地域で設定されていることを踏まえる ならば、ほかに多元的な設定方式をすべて残していく必要もないということで、その際 に同じような趣旨の制度である産業別最低賃金と労働協約拡張方式を考えると、現状に より馴染んでいる産業別最低賃金に特化する方がよいのではないかということで、研究 会報告では、労働協約拡張方式を廃止しても差し支えないという整理がされています。 労働協約拡張方式については、現在、全国2件ということですが、実際に廃止する場合 には、それに伴う影響を最少限にするための手当が必要だろうということです。 これに対して労働協約拡張方式を存続すべきというのが、労働者側のご意見ですが、 1つは仕組みの違いで労働協約拡張方式は、労働協約で定められた最低賃金の水準がそ のままアウトサイダーに適用される仕組みになっているということで、産業別最低賃金 はあくまで一定の申出要件を満たした場合に、必要性審議を行った上で、さらに最低賃 金審議会で金額水準そのものを審議し、決定することになっており、仕組みにおいて異 なっています。したがって、現在活用されていないということに捉われるべきではな く、選択肢を広げるという観点から、両方とも残すべきというご意見です。 もう1つは、そもそも労働協約拡張方式が、なかなか活用されないのは、その要件が 厳しすぎるためであるということで、同種の労働者及び使用者の大部分に最低賃金に関 する労働協約が適用される場合ということで規定されており、それがおおむね2/3と 解釈されているわけです。諸外国の要件などを比べても厳しいということで、そういっ た要件緩和を図って、労働協約拡張方式が、むしろ我が国の現状に馴染むように見直し を行う必要があるのではないか、というのが労働者側の意見です。以上です。資料2− 2以下は、前回も出した産業別最低賃金の現状とか、労働協約拡張方式の現状について の資料ですので、今回は説明を省略いたします。 しろまる今野部会長 それでは、産業別最低賃金と労働協約拡張方式について議論していただきたいと思い ます。その前に、特にこれまでの労側はこういう意見、使側はこういう意見と事務局で 整理していただきましたので、これは違うとか、これが入ってないというのがあった ら、言っていただきたいと思います。 しろまる須賀委員 最低賃金制度の在り方について、当部会で諮問を受けて議論をすると。今回の論点の 整理というのは、この部会で議論をしてきたことの論点整理ですか。内容のことは別途 議論をさせていただきたいと考えていますが、基本的な今日出された論点のたたき台の 位置付けを明確にする意味で、これまでいろいろなことがあって、冒頭にも説明があり ましたように、中央最低賃金審議会での議論、あるいはこの部会でもそれぞれ労使の立 場から考え方を表明した経過があります。さらには具体的な記載の中にもありますよう に、研究会の報告を受けた内容もいろいろ含まれています。つまり、どこに焦点を当て て論点を整理したものなのか。 第1回のときにも、私が確認したのを議事録で確認していただきたいのですが、研究 会報告はあくまでも研究会報告として扱うという整理があった中で、あえて論点の中に 持ち込んできたのは、何か意図があったとしか私どもには思えないのですが、そのこと について、事務方としては、どのように判断をされて、ここに提起されたのか。この2 点について考え方を聞かせていただきたいと思います。 しろまる前田賃金時間課長 ここで考え方ということで整理しましたのは、これまでの中央最低賃金審議会での産 業別最低賃金の在り方についての何回かの検討がありました。それは全員協議会などが ありましたが、そういう中でのご意見、あるいはこの部会が始まってから出されたご意 見、さらに中央最低賃金審議会のこれまでの検討の中で一定の整理がされた報告、それ に加えて最低賃金制度のあり方に関する研究会の中でまとめられた内容を盛り込んでい ます。 特に研究会報告との関係ですが、この部会の審議は、研究会報告そのものに縛られる ということではないのですが、研究会報告において、これまでの問題点を論点として整 理したということですので、今後の議論の参考という意味で、論点の中に研究会報告の 中身も含めて整理しています。 しろまる今野部会長 いかがですか。この論点を抽出したデータベースは、これまでの審議会での議論プラ ス研究会だということだと思います。 しろまる須賀委員 そうすると、この論点の位置付けはどういうことになるのですか。論点というのは、 議論をしてきて、こういうところがポイントでしたねということを、ある意味で確認す るような意味での論点というのが、私は通常なのではないかと思いますが、この部会で は、そこまでの議論はやってきていないので、論点、たたき台というのが、どういう位 置付けになるのか、その点を明らかにしてください。 しろまる今野部会長 私の理解は、これまでの審議会、あるいは研究会で出てきた賛成、反対、改善も含め て、いろいろな意見があり、それを整理したものです。須賀委員が言われたここでの論 点は、今から議論してくださいということになるのだと思います。そのための参考資料 として出されたと思います。そういう位置付けではありませんか。 しろまる松井審議官 この審議会は、第2回の議論を受けて見直しの建議をしていただくための場所ですの で、最低賃金制度について、ごく大ざっぱに言えば、どんなものでもその制度を残すと か改正するとか、大きく分けてということで、あえて分類立てして、その最終的な措置 に対応する考え方にはどんなものがあるのだろうという諸々の意見を、たたき台として 羅列したのがこの資料です。 したがって、この資料は審議会としての最終的な考え方を出していただくための、い わばたたき台ですから、部会長に指示していただきましたように、どの範疇にご意見が 分布するかということを、まず今からやって、労使意見が足りなければ出していただ き、それを棚揃えして、この審議会としてどういう方向に持っていくかを、今から詰め ていただくための基礎的な資料、たたき台だと理解しています。 しろまる川本委員 今、たたき台というご説明がありましたが、それには大変懸念があります。先ほど須 賀委員が言われたとおり、研究会報告については参考の資料として位置づけるという意 味合いで話も出たところです。これは確か加藤委員が確認したと思いますが、そういう 位置付けです。この表題も「産業別最低賃金の見直しに関する主要な論点」となってい ますが、確かにこの位置付けは部会の位置付けとしては、通常ここで出た議論の整理が されて論点という言い方をするのが一般的であろうかと思っています。 したがって意味合いとして、外も含めて、様々なご意見が出た整理だということであ るなら、産業別最低賃金の在り方に関する様々な意見の整理というぐらいの話にしかな らないのではないかと思います。 もう一点申し上げますと、この中に(労)(使)というのがあって、ないところもあ ります。それについては、研究会報告があったりという、いろいろなご説明でしたが、 (使)のご意見であっても、(労)の意見であっても、研究会報告の中に書いてあるも のもあるわけです。何を言いたいかというと、この文書が流れると、議事録を見ればと いうことになりますが、こういう書類というのは一人歩きしますので、その辺の心配も あるかと思っています。したがって、こういう括弧書についても、厳正を期すならば、 例えば、「(労)、かつ研究会報告」とか、それぞれに入れていただくなり、または欄 外に注で書いていただくなりということが大事なのではないかと思います。 しろまる須賀委員 それに加えて言葉尻を取るつもりはないのですが、審議官の今の答弁の真ん中ぐらい に、結論を出していくためという趣旨の話があったと思いますが、あくまでもこの部会 はゼロの状態で、どういう方向に持っていくのかということを議論する場と私どもは考 えておりまして、そういう意味からは、先ほど川本委員から言われたような意見があり ましたよ、だから、それを参考にして議論してくださいと。言っている趣旨はそういう ことだと分かっているつもりですが、ここは是非ご注意していただきたいと思います。 しろまる今野部会長 表題は「最低賃金制度見直しに関するこれまで行われてきた主要な論点」で、趣旨は そういうことですね。ここでの論点というか、そうだと私も思っています。ただ、川本 委員が言われた(労)とか(使)の付け方については、技術的な問題ですから、そうい う方向が良ければそのように修正するということでいいのではないかと思います。審議 官は、たたき台と言われましたが、たたき台というか、参考資料ですね。 しろまる須賀委員 たたき台ではないのではありませんか。たたいて崩れてしまっては困るのでしょう が、従来審議会でいろいろ使われている言葉からすると、「いろいろな議論があった論 点を審議会として整理したら、こういうことになりましたね」という部分で論点整理と いうことはよく使われていたと思いますが、それからすると、この内容は少し異質だと いうのが1つです。 それを踏まえて事務方なり全体で公益側か何かが議論をしていただくための基礎とな るべき姿はこんなものですね、というときに、たたき台を使っていると思いますが、こ こはゼロからのスタートを前提にしていくのであれば、ここにたたき台という言葉を使 っているのはいかがなものかと思います。 もう1つは、(使)、(労)をあえて付けない方がいいのかもしれません。読む人が 読めば、たぶん誰が言っているのかは分かりますし、やや難しい方向が書いてあった ら、研究会報告にあったのだろうなということも分かります。そういう意味から厳密に 言えば、(労)、(使)と書いてある中にも、ここまでのことは言っていないはずだと いう部分も、微妙な表現で入っていて、私どもの立場からは、組織を抱えていますの で、後ろから鉄砲玉が飛んでくるということもありますので、そういう意味では、あえ て(労)とか(使)と付ける必要もないのではないかと思いますが、いかがでしょう か。 しろまる川本委員 今、須賀委員からお話がありましたが、あえて(労)、(使)を付ける必要はないと いうことであれば、それはそれで結構だろうと思います。ただし、私は表題にはこだわ っていますし、その場合は必ず「注」なりに、研究会や様々な所で出てきたいろいろな 意見を整理したものであるという位置付けは、明確にしておいた方がいいのかなと思い ます。 つまり、普通は須賀委員が言われたとおりで、一般的に審議会で論点というのは、そ こで出されたものを途中でいろいろな意見が飛び交いますので、最終的に整理をした上 で、今後の議論をしやすくするためにするものの位置付けというのが多いわけです。し たがって、一般的に資料で流れていくと、こういう関わりを知っている方たちは、部会 でやられたものの位置付けとすぐ読んでしまいます。したがって須賀委員が言われた背 景も含めた話で、私も非常に理解できるところです。私どもも同じようにバックは抱え ているわけです。 しろまる今野部会長 事務局もそうですし、私もそうですが、これは内容的には、これまで行われた議論で 出てきた意見を整理したもので、しかもここの部会での議論を参考資料とするというの が認識だと思います。それは両者が言われたことだと思いますが、あとは、今、私が言 ったことを議事録で残せばいいですか。それともタイトルを変えて、もう一度資料を作 り直しますか。あとは括弧については取るということでよろしいのではありませんか。 今日はこれで出して、次回にもう一度作り直しますか。 しろまる川本委員 私は作り直していただいた方がいいと思います。つまり、流れていった場合に、議事 録まですべて読むかというと、そうではなくて、資料が一人歩きをするというのが、私 どもの今までの経験則であろうかと思っています。改めてその辺を直していただいて、 出していただいた方が、よりいいのではないかと思います。個人の意見ですので、ほか の皆さんはどう思われるでしょうか。 しろまる今野部会長 今日はこれで議論していただいて、次回に修正版ということでタイトル名を変えても らって、括弧を取り、正式な資料としてもう一度提出してもらうと。 しろまる前田賃金時間課長 いずれにしても公開になっていますが、一旦これが出ると困るのであれば、次回修正 することは可能ですが、今日の資料として、これで議論し、ここの資料は回収すると か、そういうことも可能かと思います。 しろまる今野部会長 一番厳密に言えばそうですね。傍聴の方も持っているのですか。 しろまる前田賃金時間課長 ええ、それも回収します。 しろまる今野部会長 それが一番しっかりしていていいのですが、ということは傍聴の方が途中で帰るとき も、ちゃんとチェックしなければ駄目ですよ。どうせやるのだったら、がっちりやった 方がいいです。入口の議論はこのぐらいにして括弧はないということで、ここの点はま だ論点として、まだ括弧があったのではないかということがあったら言っていただく。 今日はそういう形で、参考資料ということにさせていただき、自由に議論をしていた だきたいと思います。今日は大きく論点が2つ、産業別最低賃金の問題と労働協約拡張 方式の問題とありますので、ごっちゃにしてしまうと効率が悪いと思いますので、最初 に産業別最低賃金の問題を議論していただき、次に拡張方式について議論したいと思い ます。それでは、まず産業別最低賃金についてお願いします。 しろまる川本委員 前回もこの問題に触れて意見表明いたしましたが、今日は仕切り直しですので、改め て思っているところをご報告したいと思います。 私どもは産業別最低賃金は廃止という主張をしてきたわけですが、現在、日本経済は 踊り場を脱しつつあると言われており、回復基調を確かにするために、国を挙げてやっ ていくということですが、そのためには民主導による持続的な安定成長が必要だろうと 思っておりますし、併せて日本企業の国際競争力を維持・強化することが求められてい る現状にあると思います。 つまり、今の小泉内閣が進めている構造改革を、今後も止めることなく、着実に推進 することが極めて重要ではないかと思っております。いろいろな分野で規制緩和が働い ているわけですが、その流れは労働関係についても同様であろうと思っています。 今回、議論になっている産業別最低賃金ですが、平成16年に規制改革・民間開放推進 3カ年計画の中で、この在り方について速やかに検討するというのが出され、さらに今 年3月にも閣議決定された3カ年計画において同様の趣旨のものが指摘されているわけ です。したがって、規制改革という流れは明白で、このことを十分に認識しておく必要 があろうかと思っています。 ここからは申し上げたことですが、現在、経済のグローバル化が非常に進んでおりま す。そういう中で、日本の企業、もちろん大企業だけではなく、最低賃金の影響を色濃 く受けている中小・零細企業においても、厳しい国際競争の荒波にさらされているわけ です。国際競争力の維持・強化が図られるかどうかが、やはり企業の存続、あるいは発 展、それから従業員の雇用、生活にかかってくるわけです。このような状況下におい て、日本産業の中心的な役割を果たしているものづくり産業に対して、産業別最低賃金 が数多く設定されているというのは、私は規制改革、緩和というものの時代の趨勢から 見ても疑問を禁じ得ないわけです。 現在、地域別最低賃金が、47都道府県にあまねく設定され、定着しているところで す。これが労働の対価である賃金の最低保障という機能を果たしておりますし、国民の 生活安定、健全な発展の重要な役割を果たしているわけです。最低基準であるはずの最 低賃金について、地域別と産業別という2つの枠組みで存在しているということは、そ の意義は極めて薄くなっているのだと考えております。したがって、産業別最低賃金 は、私は廃止すべきであると主張しておきたいと思います。 しろまる今野部会長 ほかにございますか。 しろまる須賀委員 今、廃止に関して経営側の考え方が再度繰り返されたと思います。1つは、特にもの づくり産業を中心に設定されていることに関して、すでに賃金水準そのものが先進国の 中でもトップクラスになっている。だから、継続すべき理由は乏しいという意見なので すが、最低賃金そのものが対象となっている労働者は、トップクラスにある労働者では なく、今の産業分類ごとの最下層を規制をすることによって不公正な競争を排除すると いう趣旨があるわけです。そういう意味から、我が国の賃金水準が、ものづくり産業に おいて先進諸国の中でトップクラスになっていることと、最低賃金としての規制は意味 合いが違うと思いますので、これを理由に継続する理由は乏しいとすることについて は、そういう見方に立つべきではないと考えます。 規制改革推進会議なり、閣議決定等で、特に規制改革についていろいろな分野での改 革が必要だということについては認識していますが、必要なものまで廃止することが、 決して規制改革ではないと思っており、その規制が企業の収益にマイナスを与える。だ ったら、そんな規制はない方がいいという、少し乱暴な言い方ではないかと、特に規制 改革という観点では考えておりますし、この規制を外すことによって、結果において不 公正な競争を助長してしまう、もう一方での底支えという部分の枠組みを外してしまう などということが、最低賃金法のもともとの目的・趣旨である労働者の生活の安定、労 働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するという目的を逸脱するのではない かと考えるところです。 しろまる原川委員 産業別最低賃金の適用労働者は、約410万人と言われており、地域別最低賃金の適用 労働者5,000万人に比べると1割にも満たないという状況です。 その適用労働者の内容を見ますと、基幹的労働者とはいいつつも、実態は地域別最低 賃金の適用労働者とほとんど違いがない状況になっています。要するに、一部の業種で は最低基準が二重になっているわけで、そこの労働者だけが高い基準の適用がなされる という制度になっています。 このように、国が強行法規である最低賃金法で最低基準のダブルスタンダードという か、二重底の設定を一部の産業に限って認めることは、最低賃金法の第1条の趣旨、あ るいは法の下の平等から見ても、大いに問題があるのではないかと思います。 地域別最低賃金が先ほどから言われていますように、全国的に整備・適用がなされ て、賃金の最低保障としてのセーフティーネットの役割を果たしていますが、制度とし ての産業別最低賃金というのは、意味を失ってきているのではないかと思います。 したがって、国の最低賃金制度としては、速やかに産業別最低賃金制度を廃止し、地 域別最低賃金一本にすべきだと思います。それ以上のことは民間の労使に委ねるべきで あると考えます。 しろまる加藤委員 別の点で質問しようと思ったのですが、その前に産業別最低賃金の必要性について申 し上げておきたいのです。適用労働者が、400万人で1割にも満たないのではないかと いうことですが、産業別最低賃金の適用率が約9%くらいという実情については、原川 委員のおっしゃったとおりだと思います。それは地域別最低賃金のように、いわば厚生 労働大臣又は地方労働局長の諮問に基づいて行うといった行政主導型ではなく、すべて の労働者をターゲットにした安全網よりも高い最低賃金が必要だとする、労使の申出を 契機にしてつくっているわけです。その申出要件と関わることだろうと思っておりま す。私どもは、日本の賃金決定の現状、あるいは、先ほど地域別最低賃金一本にして労 使で決めればよいではないかというお話がございましたが、日本の賃金決定の現状や組 織率の現状なども踏まえれば、産業別最低賃金の機能というものをきちんと維持・拡充 していく必要があるのではないかと思っております。つまり、すべての労働者をターゲ ットにした地域別最低賃金だけでは、産業別ごとの公正な賃金決定に寄与するとは考え られないわけであります。何度も申し上げておりますとおり、地域別最低賃金をカバー する。そして両方の制度で最低賃金制度の実効性を高めること、合わせて、団体交渉の 補完機能を持たせているわけでして、申出することによって、当該労使が入った審議会 の中で適正な金額について審議をしながら決定していくと。こういった現状があるわけ でして、そうした機能が果たしている役割ということをあまり軽視すべきではない。む しろ、これを大事に育てていくことが重要なのではないかと考えています。 先ほど手を挙げたのは1点質問したかったのであります。後で回収するという今日の 参考資料の1頁、「産業別最低賃金の存否について」の廃止の1点目に、最低賃金制度 の第一義的な役割、第二義的な役割ということが記載されておりますが、これは研究会 報告に盛られている内容から取ったのかと思っているのですが、その点を確認したいの です。また、もしそうであるとすれば、研究会報告で触れている内容は、産業別最低賃 金の廃止ということを念頭に置いた整理だったのかどうか、その辺をお尋ねしたいと思 いました。要するに、廃止のジャンルの中に入っておりますので。 しろまる今野部会長 なるほど。どうですか。 しろまる前田賃金時間課長 研究会報告でも書かれておりますが、もともと最低賃金法の第1条に目的(資料2− 2)が、「賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働 者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国 民経済の健全な発展に寄与する」となっています。そしてこれの説明として、最低賃金 法の解説書、コメンタールなどで、基本的に労働条件の改善を図るのが第一義的な役割 ということで、すべての労働者を不当に低い賃金から保護するという役割であると。公 正競争などの役割は二義的、副次的なものであるということになっています。 資料2−3にあるように、中央最低賃金審議会では、例えば公正競争確保については 6頁の1に、平成4年の公正競争ケース検討小委員会の報告の1で、公正競争の確保は 「労働条件の改善を図る」という第一義的な目的とは異なり、最低賃金の設定により達 成される副次的な目的であるとなっています。 こういったことも含めて、研究会報告の中でも役割は、第一義的にはすべての労働者 を不当に低い賃金から保護する安全網である。公正な賃金決定、労使交渉の補完につい ては二義的、副次的であるとなっています。 必ずしもそれ自体が廃止ということにつながるわけではないのですが、2番目にある ように、一義的な役割に徹すべきという意見との関連で、ここにとりあえず書いたとい う趣旨でご理解いただければと思います。 しろまる加藤委員 これは位置が悪いですね。研究会報告でいうと総論の最初に出てくるわけです。とい うことは、研究会報告そのものは廃止を前提にしたまとめだと受け止めてよいのかどう かです。研究会報告に基づいて議論するわけではないですから、構わないといえば構わ ないのですが。 しろまる今野部会長 今のご質問は、研究会報告の意図はどうだったのかということですか。いかがでしょ うか。 しろまる前田賃金時間課長 研究会報告の中で、まず、最低賃金制度に求める役割として、ここにあるような整理 がされているのです。ただ、産業別最低賃金のあり方については、一方で、そういう第 一義的な役割があれば十分であって廃止すべきという意見があるのに対して、もう一方 では、産業別最低賃金について、労使交渉、労使自治の補完・促進という意義もあるの で、より有効に機能させるための見直しを行うべきであるという意見もありました。 いずれにしても、最低賃金としては、一般的な最低賃金としての地域別最低賃金と比 べて意義や役割は薄い。さらに、実態から言って、公正な賃金決定という本来の役割を 果たし得なくなっているということで、廃止を含めて抜本的な見直しが必要であるとい うことで研究会では整理いたしました。 しろまる今野部会長 この資料の1頁の廃止の最初の・ではこう書いてあるけれど、趣旨はその次の2番目 と連携した内容になっているというのが今の事務局の説明だと思うのです。2頁目の現 行制度の枠組みの変更の1つ目の・はそういう書き方になっているのです。事務局が整 理された意図はそういうことだと思うのです。書き方が少し悪いかもしれないけれど、 加藤委員が言われるほど位置が全く悪いとは。これをつなげて読んでもらえれば、どう でしょうか。 しろまる加藤委員 これは今日の部会の参考資料ですから。了解いたしました。 しろまる勝委員 今、いろいろ労使の意見を聞いて、それぞれの意見は大体理解したわけです。今の加 藤委員の質問とも関連して、最低賃金制度の第一義的な役割は何かということから、そ もそも論を考えることが重要なのではないかと感じております。例えばこの産業別最低 賃金、これはドイツで主になされているものですけれども、ドイツのような所は、労組 の組織率も高いし、社会保障制度も進んでいるということで、最低賃金制度にナショナ ルミニマムを求めなくても良い国であるという理解ができるわけです。ただ、日本やア メリカといったような所は、社会保障制度も中福祉であるということを考えると、やは りこの最低賃金制度というものが第一義的なナショナルミニマム、あるいはセーフティ ーネットであると考えなくてはならない。そのことからいえば、地域別最低賃金という ものは非常に重要であるということはできると思うのです。 ただ、使用者側が言うように、産業別最低賃金を廃止してよいのかと。その1つの理 由として、先ほど使用者側から、小泉内閣の規制改革という話が出ていたわけです。確 かに小泉内閣の規制改革というのは、民間の活力を増大するという意味で非常に重要で あるというのは私も理解しているわけですが、ただ、この思慮に関しては、これは慎重 に行うべきではないかと考えております。使用者側の意見として、ものづくり産業でも 産業別最低賃金は廃止すべきだという話もありましたが、ものづくり産業であるからこ そ、技術の継承といったようなことからみても、産業別最低賃金を廃止するというのは 少し乱暴なのかなという気がしておりまして、むしろ産業別最低賃金の枠組みを変更す るという形で考えていくことが必要なのではないかと思います。 前回の部会の議論でも、基幹的労働者の意味合いがほとんどなくなっていて、だから こそ産業別最低賃金というのは意味がないという議論があるということで、その部分で ネガティブリストで定義されているというところが問題であったわけですが、そこの部 分をポジティブに定義するような方向で枠組みを変更していくことが重要なのではない かと思います。ナショナルミニマムを確保することは最低賃金の非常に重要な役割では あるわけですけれども、それにプラスして、先ほど労側が言われたような、例えば労使 交渉の補完といったような意味もまだあるということであれば、いかに対象とされてい る人数が410万人で少ないとしても、もしその役割があるのであれば、枠組みを変更し て存続させることも考えるべきではないかという気がしております。今、両者の意見を 聞いて、感想めいたことを述べさせていただきました。 しろまる田島委員 地域別最低賃金があるのだから十分で、産業別最低賃金制度を設けておく必要はない という意見について疑問があるのです。もし地域別最低賃金ですべて充足しているとい うことであれば、現在1割弱の労働者が対象になっているにすぎないとおっしゃってい る産業別最低賃金の加重平均額が地域別最低賃金の加重平均額に対して100円弱高いと いうことで権利が守られている方がいることについて、どう考えるのか。結局、地域別 最低賃金の下限の額に多くの労働者の賃金額が張りついている現状であるならば、地域 別最低賃金で十分機能しているといえると思うのですが、現状をみると、必ずしもそう ではないのではないか。加重平均額というのは、一般的に考えても相当低い額ではない かという気がいたします。もし地域別最低賃金の制度一本で行くというのであれば、こ の金額をもう少し上げていかなければおかしいのではないかと思います。 産業別最低賃金について、同一の性格を持つ労働者の一部の業種のものについてだけ 上乗せの額になっているということに不公平感もある、という不要意見についても、そ れが不要だという理由にはならないのではないかと思います。今の基幹的労働者という ものの定義付けに問題があってそういう話が出てくるのだと思うのですが、基幹的労働 者の性格をもう少しポジティブに決め直すことによって、そのような人たちの賃金の額 を高めに設定して保障するという必要性はあるのではないかと考えております。 しろまる杉山委員 先ほど労側から、この論点の整理というものがどこに焦点を当てて、どういう方向に あるかという意味の質問が出ていたと思います。私も、最低賃金部会でこの問題を論議 するに当たって、基本的な物事の考え方があるのではないかと思います。言葉にこだわ ったりするつもりはないのですが、小泉内閣から提示された基本的な「規制改革・民間 開放推進3カ年計画」この路線を頭において、この問題をどうしていくかを考えるべき であろうと思います。これを機会に現在あるものの内容を変えて、より適用者を増やし て、より規制をしていくという方向に変えるための部会であるならば、この部会を持っ た初めの考え方に少しズレがあるのではないか。公正競争という問題を1つ取ってみて も、要するに最低賃金が適用されるような労働者がどういうところで競争にさらされて いるかといいますと、まずは中国、東南アジア、これらの労働者と競争をしているわけ であります。そういう中で、もちろん最低の保護は必要だと思いますけれども、特定の 産業について一定のつり上げといいますか、二重底をつくるということは、かえってそ の産業の空洞化を招く。要するに、実際に仕事がこなければ競争にならないわけですか ら、国内の公正競争ということだけを言って果たしてよいものかどうか。私は下げろと 言っているわけではありません。要は市場に任せる、民間の労使関係、労使交渉に任せ ると言っているわけであります。時代が変わり、考え方も変わっている中で、方向性を 考えた議論をすべきではないかと考えている次第です。 しろまる池田委員 先般の新聞記事で、公益委員の先生方と同じような学者先生が、最低賃金は低い、上 げろというような記事が出ておりました。本省の方はそれぞれの対応をなさったようで す。私は前にも、公益委員の先生方の発言の中で見たことがあるのです。一生懸命に毎 年毎年最低賃金の目安を審議している者にとっては、何のためにやっているのかと。公 益委員の先生方から、今、最低賃金の水準が低いというお話がありましたが、財政制度 等審議会の中では、逆に生活扶助基準を下げろというような意見も出ているわけです。 私たちも一定の水準として目安をやってきたはずなのですが、ああいうふうに大変公的 なマスコミに大きな記事がどんどん出ますと、現実に産業別最低賃金と地域別最低賃金 とはものすごく差があるわけです。そうすると、例えばこれを見たときに、先生方は最 低賃金自体を上げたいのか、そして廃止・一本化していきたいのか。その辺のところが 何か非常に不公平だ。逆に、是非とも新聞に、今の最低賃金は妥当な金額なのだという ところも先生方からおっしゃって、記事も書いていただかないと、今後の論議も非常に やりにくいと思うわけです。やはり高い方で揃えろ、その上で廃止しろというような話 になってくると、これは全く論点が違うと思うのです。 この資料を見ましても、今、全国平均が、産業別が758円、地域別が658円。この時点 でたった80円の差ですが、例えばその産業が沖縄とか宮崎に工場をつくったときに、そ れがどうなるのかと言ったときに150円以上の差になってしまうわけです。我々が地域 ごとの状況に合わせてそれぞれの地域別最低賃金を決めているわけですから妥当性があ るわけですが、産業別がどんどん決まってしまうと、AランクとDランクという差のあ る同じ工場が行った場合に、Dランクの中小企業はどうなるのかという現実論からする と、地域別最低賃金の重要性をしっかりと踏まえた上で産業別最低賃金の論議をしてい ただかないと。今いろいろ話が出ていますが、大変最低賃金に近いところで商売をやっ ている中小企業なども大変な苦労をしているわけです。いかにその差が大きいかという 観点から見れば、今の給与体系というのは、業績に連動してやっていこうという時代で すから、今、お話のありました規制改革の時代からすれば、その部分だけが変更され、 単純化されて競争力が持てる制度が変更されないということは、私の方から見ればおか しいと思っておりますので、是非とも産業別最低賃金を1回廃止していただく。公平な 競争、そして地域別にちゃんとした雇用関係がつくれるような関係をつくっていただく ためには、やはり廃止すべきだと思っております。 あの記事の中にはタクシーの話が出ておりましたが、私も前に述べたように、未満率 をゼロにするというのが前提ではないかと思います。ますます産業別最低賃金が強化さ れ、未満率の多い所はどんどん出てくるような気がいたします。 しろまる須賀委員 池田委員に申し上げたいのですが、都道府県ごとに産業別最低賃金の差が開いている のです。ここの加重平均で開いているのとほぼ同じ差が地域では展開されていますので 誤解のないように。150円も開いているような所はなくて、加重平均で見れば、ほぼこ こと同じような状況にあるということで、そこのところの誤解は是非解いていただきた いと思います。 先ほどの使側の委員の皆様方の意見に少し反論させていただきたいと思います。私ど もは何も規制改革に反対しているわけではありません。今回の選挙の中でも、労働組合 が悪の権化のような言われ方をしまして、規制改革を止めているのは労働組合だという ように言われているのです。それは横に置きますが、必要な規制は外してはいけないと いうのが私どもの基本的なスタンスであります。 確かに今回のこの部会は、3カ年計画を受けた部分も当然あると思います。しかしな がら、もともと最低賃金制度はナショナルミニマムであり、あるいはセーフティーネッ トであるということが機能として求められているわけですから、それを簡単に外すわけ にもいかないだろうと思います。その上で、すべてを官から民へ、あるいは市場任せと いうことが本当によいのかどうかを厳密に問いながら、必要でない規制をいかに外して いくのかという視点が大事だろうと考えております。そういう視点からすると、この3 カ年計画の中身は、実態をよくわかっていないのではないか、そんな印象を持つところ であります。 それから適用労働者、特に産業別最低賃金の適用労働者は、結果において中国、東南 アジアとの競争の場にさらされているのだとおっしゃいましたが、時間当たり賃金で比 較すると、日本の20分の1あるいは30分の1といわれている中国と競争して勝つわけが ないのです。国際競争で何が勝っているのか。製品の価値や製品に求められている品 質、いろいろな意味でのトータルな競争力で勝っているはずなのです。それを20分の 1、30分の1の中国の賃金と比較して、国際競争力で勝てないのだったら、それこそ、 市場から出て行ってもらえばよいのです。こういう言い方に語弊があったら後ほど議事 録から削除していただきたいのですが。しかしそうではなくて産業として成り立たせよ うとするのであれば、当然、そういう国際競争力の中にあっても成り立ち得るだけの産 業としての価値を見出していただく、それが経営者の責任だろうと私どもは考えており ます。 空洞化されることによって結果的に雇用に不安を与えることには私どもも大きな懸念 を持っておりますし、そうならないように、どうすればよいのかということについては 日々関係労使で話し合っているところでもあります。そうした意味からしますと、単純 に時間当たり賃金だけでの比較において国際競争云々ということには問題を持つところ です。 それからもう1つ、市場に任せるという話がありました。残念ながら、私ども労働組 合の努力不足もありまして、組織率は年々低下する一方でありますが、多くの労働者が 弱い立場の中で、一方的な就業規則の変更というような形をとりながら、賃金引下げが どんどん行われております。そういった弱い立場にある労働者を保護するために、労働 基準法なり労働組合法なりがあるわけですが、特に労働組合法の関係で、実質的な適用 を受けない労働者がどんどん増えていく中で、法定産業別最低賃金あるいは法定地域別 最低賃金が果たしている役割は非常に大きいと思っております。そうした意味では、本 来の趣旨に沿った中身で、いかにあるべきかということをこの中では検討すべきであり まして、状況の中から、廃止すべきということに偏った議論はすべきでないと考えてい ることを申し添えておきたいと思います。 しろまる中野委員 ×ばつ22日働くという前提で1カ月に176時間、それでも668円ですので 11万7,500円程度にしかなりません。しかし、日本の2004年度の高卒の初任給を見てみ ますと、産業計で、第1・十分位ですら13万7,700円です。高卒の初任給の10に分けた 下から10%目のところよりも低いという水準で、果たしてセーフティーネットといえる のかどうかについては非常に疑問に思っているところです。そういう意味から言います と、なぜこのように低いのかということの検証が今後必要なのだろうと思います。 もう1つは国際競争力の観点からであります。先ほど須賀委員からありましたよう に、特に労働組合のないところにおいては、この間の不況の中で一方的な賃金切下げが 行われております。使用者側から、賃金はこう下げる、嫌ならば辞めてもらいたいとい うような話が出てくるわけです。そうした意味でいいますと、本来あるべき公正な賃金 決定というのが行われていないのではないか。一方的な賃金の切下げが行われている現 状について、どう考えるのかというところであります。労働組合がある所では労使自治 がありますので、そういう交渉をしながら、そういう賃金の引上げについてのコストの 引上げ分について、労使で生産性を上げるなり何なりの努力が行われるわけですが、一 方的に賃金が決定される労働組合がないような職場では、そういう生産性に対する議論 もあまりないのではないかと考えております。 イギリスでは最低賃金を決定した後必ずレポートが出るわけですが、最低賃金をイギ リスで引き上げた後の検証においては、例えばクリーニング屋さんでも、こういうふう な製造工程を変える、そのことによって最低賃金のコストアップ分を吸収するという努 力をしているということが、きちんとレポートの中に出てくるわけです。私たちがこれ から国際競争力を強めていくためには、そういう経営者の努力、あるいはそこにおける 労使の努力というものが必要なわけでありまして、最低賃金を、あるいは産業別最低賃 金における公正な賃金決定、団体交渉の補完機能というのは、そういう生産性を上げる ための労使の努力の契機になるものであるとも考えられると思います。そうした意味で は、経営側の努力を促すという意味でも、産業別最低賃金の労使交渉補完機能は必要で あります。もしこういうことがなければ、この市場競争の中で、その厳しさは一方的に 労働者に押しつけられるだけである。そして、もし甘えた使用者側があったとしても、 それを温存することになりかねません。そういった意味では、労使が協力して、きちん と競争力を高めていくためにも、こういう社会的機能を是非残していただきたいと思っ ております。 しろまる杉山委員 先ほど私が申し上げたのは、最低賃金法を制定した当時の「公正な競争」という概念 と、現在における「公正な競争」というのは質的に変わってきているのではないかとい うことです。要するに、日本全体が諸外国から低賃金の指摘を受けて、事実そのきらい もあった時代にできた法律であります。そのときの「公正競争」と今トップレベルの賃 金水準に達して、要するに低賃金の国との競争をしている中での「公正競争」とはいか なるものか。1つの国の中で、しかも限られた産業の中でやることが、どうして「公正 競争」なのか疑問がある、そういう意味です。 しろまる今野部会長 まだ議論があるとは思いますが、今日はもう1つ、労働協約拡張方式についてご議論 をいただいて、ここでの論点を整理したいと思いますので、次のテーマに入らせていた だきます。 しろまる川本委員 今いろいろご指摘がありましたので少し申し上げておきたいのですが、非常に一方的 に経営者が賃金引下げをするとか、嫌なら辞めてくれというようなお話に聞こえたので すが、それが一般的な話とは思えません。かつ、日本の労働法体系というのは、経営の 自由、特に採用の自由等は認めていただいておりますが、一方で、解雇については解雇 濫用法理というのが判例で定着して、雇用保障ということでは非常に強く経営側を縛っ てきた国です。 また、賃金等の不利益変更問題につきましても、一度問題になれば、これも非常に合 理的な理由が必要ということになってくるわけです。したがって、そういうことは踏ま えた上でしていただきたいということが1つです。 組合の組織率の低下の話もございましたが、これも、日本の労働組合法というのは、 非常に組合もつくりやすくなっているし、また、不当労働行為に対しては大変厳しいも のですし、救済制度もあるのです。したがって、組織率が下がってきたから云々という お話、それをすべて法律に押しつけるというのは話の筋が違うのかな、私はこんなこと も思っているところです。 それからもう1つ。もともと大変低賃金で、日本の20分の1、30分の1ということ で、もともとそこでは競争にならないだろう、だからそこは関係ない、というようなお 話がございました。確かに製品の価値や品質や、いろいろなもののトータルですが、そ のトータルの中に当然この賃金、人件費という問題も含まれているということは申し上 げておきたいと思います。 しろまる中野委員 1点だけ言い残したことを申し上げたいのです。私が申し上げたこと、例えば一方的 に賃金決定が行われているということについてご意見がありましたけれども、すべての 使用者がそういうことをしているとは、もちろん思っておりません。ただ、念頭に置か なくてはいけないのは、紛争処理制度はできましたが、16万件という数字が相談の中で 上がってきているという実態については、その多くが解雇であったり、賃金の引下げで あったりという事実を認識しているという意味で申し上げたのです。 しろまる須賀委員 すみませんが、もう1点だけ言わせてください。組織率が下がっているからどうこう と言っているのではないのです。その外にいる80%の未組織の人たちをどうするかとい うことを私どもは常に考えざるを得ないという趣旨で言っていますので、誤解のないよ うにお願いしたいと思います。 しろまる今野部会長 川本委員は反論したいと思いますが、ここは我慢していただいて、労働協約拡張方式 について少し議論していただきたいと思います。ご意見をどうぞ。 しろまる加藤委員 前回言ったことの繰り返しになりますが、労働協約の拡張適用の仕組みは非常に大事 な仕組みだと私は思っております。組合の立場でいうと、組織労働者が労使で決めた、 最低賃金も含めた賃金の決定内容を同種の産業の同種の労働者に拡張適用していくとい う仕組みは、産業内における公正な賃金決定ルールとして最も望ましい姿なのだろうと 思っておりまして、そういう仕組みを、数が少ないから、2件、500人しか適用されて いないからなくしてよいのだということにはならないのだろうと思っております。 労働協約ケースというのが産業別最低賃金にあるではないかという議論もありました が、これは全く違う仕組みですので、労働協約の拡張適用という11条を廃止することに は反対、断固として守らなければならない仕組みだと思います。 しろまる今野部会長 使用者側委員は何かございますか。 しろまる杉山委員 私どもは、たった2件なのにということを主張してきたと思います。こういう問題が あるときに、どう考えるべきか。2件であるから、意味がないから廃止するという方向 が普通の考え方なのか、それとも、2件は問題があるので、それが増加するように、制 度も変え、保護もして増やすべきだと考えるかという基本的な考え方ですけれども、今 まで長い間時間をかけて2件にすぎなかったものは、その事実をしっかり見ていく必要 があるという意味で2件、2件と申し上げているわけです。実際に利用されないものは 不要なのではないか、簡単に言えばそういうことであります。 しろまる池田委員 今、数の問題が出ましたが、500人というのは、郵政改革の24万人から比べれば、こ れぐらいのものが整理していけなくて、何でこんな部会をやる必要があるのかと思うわ けです。この資料の中に、何らかの手当が必要と書いてあるのですが、それができれば 廃止できるという具体的な案があるのでしょうか。このように手当をすれば解決できる という問題があれば、その点を話し合って、少なくとも1つずつ整理できないものかと いう感じにならないのでしょうか。 しろまる今野部会長 手当が必要というのは、この資料のどこに出ていますか。 しろまる池田委員 4頁、廃止のところの意見です。これはお役所の考え方なのですが、それが相当に難 しいものなのか、大変な努力が必要になるものなのか。それがある程度可能なものであ れば、何も前進できないのではないかと思うのですが。 しろまる今野部会長 難しいかどうかは別にして、ここに書いてある意図は、今、決まっているのだから、 すぐに下げるというわけにはいきません、という趣旨だと思いますが。 しろまる中野委員 労働協約の拡張適用方式について、先ほど杉山委員がおっしゃったように、2件しか ないから、これはもう使えないのだからやめるべきなのか。それとも、少ないから、こ れから発展させるように何らかの工夫がいるのではないかというところを考えなければ いけないと思います。これはそもそも論だと思うのです。最近の労働市場の変化を見た とき、雇用形態の多様化、雇用形態の違いによる所得格差、あるいはフリーターやニー ト、若年層の離転職の増加、そういうことがどんどん起きているわけです。 一方で、これから日本が国際競争力を持ってやっていくためには、労働者の教育をし てスキルを引き上げるなり何なりが必要なのですが、企業内における職業訓練費用とい うのは、この間どんどん下がってきているわけです。そうすると、国際的な競争力を維 持するために、企業の中でできないのであれば、また、国が財政の問題などでできない とするならば、産業なり社会の中でそういうことをきちんとやらなければいけない、と いうことになろうと思います。それは非常に難しい問題なのですが、やらなければなら ないとするときに、それにインセンティブを与えていくような社会的な賃率決定が必要 だということになると思います。そうすると、そういう考え方で社会全体としての競争 力を持とうと日本が考えるのか、そうではなくて、そこはもうどうでもよいのだ、企業 でそれはやるから、つぶれる所は勝手につぶれて、残る所だけ残ればよいのだ、二極化 すればよいのだと考えるかの差だと思います。 私は、どちらかといえば、それぞれの企業が、労働組合がある所はもちろんのこと、 労働組合のない所でも、労使が努力をし、知恵を集めて、製品やサービスや品質で国際 競争力を持つようなことをやらないといけないわけですから、そのための仕組みという ものを一定程度までは社会的に形成する必要があるのではないか。今、職業訓練などを 国のシステムでやっていますが、それをもう少し機能的にやるようなことも含めて、や らなければいけないのではないかと思っております。 そうした意味からいいますと、こういう労使で拡張適用するようなやり方というのは 本来的には最も理想型ではないかと思うのです。今は使えないし、私が今申し上げたよ うなことも、いつになったらできるかわからないことですが、そういう意味からいう と、理想型は制度として残しながら、その努力は少しずつ続けていくべきではないかと 考えております。 しろまる今野部会長 「考え方」に書いてある廃止の最初の・の主張ですが、中野委員がおっしゃられたの は産業別最低賃金でやればよいのではないかという趣旨ですが。 しろまる中野委員 産業別最低賃金でやればよいと言っていますが、これは労使で一致して拡張適用する わけですから、産業別最低賃金よりもっと理想型なのです。そういう意味で私は申し上 げたのです。 しろまる今野部会長 拡張適用方式があったら産業別最低賃金はいらないということですか。 しろまる中野委員 そういう意味ではありません。それは理想型だけれども、現実に対応と両方考えない といけないので、理想型でできないからといって廃止というのは暴論ではないかと申し 上げたわけです。 しろまる今野部会長 使わないが残しておくということですか。 しろまる中野委員 残しておけばいいではないですか。本当は使えるようにしてもらえるのが、一番で す。 しろまる川本委員 私は、廃止あるいは存続という主張として申し上げるのではありません。なぜ2件な のか、あるいは、そもそも要件はなぜ厳しいのかというと、ヨーロッパと日本のやって きた社会的、文化的な違いなのかなと私は考えております。いつごろかというのは歴史 の教科書を持ってこなかったので言えないのですが、ヨーロッパは職種別賃金概念ある いは職務給概念というものが育った所です。そこでは徒弟制度があったり職種別組合や 産業別組合が発達して、拡張適用方式なども確立してきたものなのだろうと思っており ます。 一方、我が国におきましては戦後、企業別組合という概念の中で、職種は乗り越え て、組合も1つの組合になるということが一般的だと思います。そういう歴史をくぐり つつやってきたものであり、一方で賃金というものが、労働の対価というところだけに 特化せず、会社の支払能力と労働者の生活者としての立場を考慮しながら、いわゆる年 功賃金というものが形づくられてきたのかなと思っております。そういう歴史的につく ってきた賃金の考え方であったり賃金の中身の問題であったりというところが違うとい うことを踏まえて、拡張方式はなかなか増えていない。もしそういう状況の中で要件を 緩和して一方的に押しつけてしまうと、非常に馴染まない、そういうことがあるのだろ うと思っております。 しろまる今野部会長 これは最低賃金とは違うかもしれませんが、現状をどうやって判断するかです。川本 委員がおっしゃられたような状況で日本の賃金決定はされてきたと思いますが、どうで しょうか。パートタイム労働者は市場賃金で決まる。派遣労働者も市場賃金で決まる。 正社員についても、経営者の方たちは、仕事と成果で決める、成果主義型の賃金を取っ ていくとなると、川本委員がおっしゃられたような賃金の決め方は徐々に変わりつつあ るのではないかという感じはするのですが、いかがでしょうか。 しろまる杉山委員 基本的にはそういうことで、賃金そのものが市場賃金になってくる。そういう意味で は、第三者が関与するような制度はミニマムにすべきで、市場に任せればそれなりにう まく設定されてくるのではないかというのが私の基本的な考え方です。 しろまる今野部会長 先ほどから問題になっている報告書、あそこは研究者が集まって議論しているのです が、そのように市場に任されたときに買い叩きということがあるので、買い叩きがあっ たらば何らかの社会的な規制ルールを入れなければいけないというのがあの報告書の趣 旨です。これは単なる解説ですが。 しろまる杉山委員 要は第一義的な意味の制度は必要だろうと思います。それから、買い叩きという表 現、これは非常に誤解を生む表現であります。そうではなくて、労働力も1つの商品と 同じように需給関係で決まってくるわけです。ですから、需要と供給の関係で、需要が 少なくなってくれば自動的に賃金は上がってくる、そういう関係にあるので、買い叩こ うといっても、たとえばパートタイム労働者の賃金を買い叩いたら、もう人は来ませ ん。 それこそが市場経済の最大のメリットなのだろうと思います。市場自身が下支えして いるのです。 しろまる今野部会長 その点については私も反論もあって、ここが大学のクラスでしたら反論するのです が、そういう場ではありませんのでいたしません。 しろまる武石委員 最低賃金にはどういう意味があるのか、先ほど勝委員からも問題提起がありました。 それはセーフティーネットで労働者の賃金を下支えするというのは、たぶん皆さん共通 していることだと思うのです。そして下支えする仕組みは必要であると。私は、地域別 最低賃金がきっちりとそこの役割を担うべきだと思うのです。それが高いか低いかとい う議論は次回以降になると思いますが、地域別最低賃金がきちんとその役割を担ってい くと思います。 労働側の委員の方がおっしゃるように、産業別最低賃金と労働協約方式、それぞれの 存在意義を私は十分理解するつもりなのですが、地域別最低賃金と産業別と労働協約拡 張方式、それらの仕組みが例えば罰則付きで、同じような形で縛りをかけるといいます か、規制がかかっているのが現状だと思うのです。2万円でよいのかという問題はある と思うのですが、セーフティーネットとしての地域別最低賃金に関してはきちんとした 罰則をする。しかし、産業別最低賃金と労働協約方式というものが団体交渉の補完機能 であるのだとすれば、この仕組みを公的な仕組みとしてきちんと認知するにしても、地 域別最低賃金と同じような仕組みで規制をかけていく必要があるのかというと、私はそ こには疑問があるので、その辺は労働側委員の意見を伺いたいのです。 しろまる須賀委員 最低賃金全般を捉えてセーフティーネットとするという部分についてはご理解いただ けているようです。その上で、産業別最低賃金の必要性、あるいは労働協約拡張適用方 式による方式についてもそれなりにご理解いただいているようです。しかし、それを罰 則抜きの形にしたらどうかということですが、では、罰則を抜いたセーフティーネット というのは、どういう意味があるのか、逆に質問させてください。 しろまる武石委員 こういう仕組みは公的にきちんと制度として用意しておきますと。罰則がなければ、 そこを逃れても何のペナルティーもなくなってしまうので法律として何の意味もないの ではないかというご意見だと思うのですが、ただ、罰則のない法律、罰金がかからない 法律は他にもあるわけです。地域別最低賃金と産業別最低賃金というのは、全く同じ規 制のレベルなわけです。しかし、もし地域別最低賃金と産業別最低賃金が一次的役割、 二次役割というように役割が違うのであれば、そこの考え方に傾斜をかけるようなこと はどうなのかということなのです。 しろまる須賀委員 1頁に、先ほどすわりがいいとか悪いとかいう話になりましたが、法律にも、こうい う表現は使っていないのですが、「労働者を不当に低い賃金から保護する安全網」とあ ります。その意味からすると、罰則のない安全網はもちろん、法律として努力規定型の 法律も労働法関係にたくさんありますが、セーフティーネット(安全網)というのであ れば、努力義務型のセーフティーネットはあり得ないというのが私どもの考え方であり ますし、そうしたことで考えていくのが、本来のセーフティーネットとしてあるべき姿 なのではないかと、そんなふうに考えているのですが、いかがでしょうか。 しろまる武石委員 ただセーフティーネットというのは国民共通にセーフティーネットの最低レベルとい うのがあると思います。そこが地域別最低賃金の役割を担っているとすると、セーフテ ィーネットと何が違うのかというところがわからないのです。 しろまる中野委員 今のご質問は、実態をどう考えるのか、あるいは理想の筋論としてどう考えるのかに よって少し考え方を変えなくてはいけないのかなと思う部分もあるのですが、我々は、 今の産業別最低賃金なり地域別最低賃金なりの実態の中で考えているわけです。そうす ると、産業別最低賃金の平均が758円ですか、これで罰則というのがどの罰則なのかが よくわからないので、それも答えられない1つの原因なのです。刑事罰だけを外すと言 われるのか、完全に効力のないものにするのか何なのか、そこもわからないので答えに くいのですが、今の実態の平均758円の中で、758円というのがセーフティーネットだろ うと。時給で2,000円あるいは2,500円というのだったら、それは何か考えないといけな い。普通の賃金の協約上の効力との問題などが出てくるかなとは思いますが、758円と いうことであれば、それは600何十円であったにしても、具体的に言えば750何円でも生 活できないのですから、それは刑事罰があって当たり前です。ですから、そういう実態 論を踏まえてのご質問なのか、全体の問題なのかがよくわからないので非常に答えにく いのです。 しろまる今野部会長 私の解釈は、地域別最低賃金と産業別最低賃金は性格が違うから、罰則をつけるので も、同じ厳しさでなくてもよいのではないか。いろいろな選択肢があるにしても、少し 緩くてもよいのではないかと、そういうご質問だったと思うのです。 しろまる中野委員 それはわかっていますが、実態上から見ればそういうことですので、それは今の状態 からいうと外せないだろうというのが基本だと思います。ただ、大きく何らかの状況が 変わったら、そのときにはそれなりの判断が必要になるかもしれませんが、今の段階で はそれしか言えないと思います。 しろまる武石委員 もし758円でないと生活できないのであれば、それは地域別最低賃金の665円が低すぎ るのであって、この産業別最低賃金から外れている人たちは困るわけです。そこのセー フティーネットとして758円が最低限だということが実態なのであれば、今の地域別最 低賃金は低すぎて、こちらをきちんとセーフティーネットとして機能するような水準に 上げる、それが最低賃金のセーフティーネットなのではないかと思うのです。 しろまる中野委員 考え方はわかりますが、地域別最低賃金を、私は3年ですが、何十年と議論してきて いるわけですが、それで上がらなかったわけです。ですから、それがポンと上がってう まくなるという魔法があれば、それはそのとき考えましょうということを申し上げてい るのです。 しろまる今野部会長 そろそろ時間になってまいりました。労働協約拡張方式については、使用者側はもと もと産業別最低賃金は廃止ですから議論する必要もないというのが基本的な立場でしょ うし、労側は、理念として残すべきだという立場で、なかなか議論がかみ合わない、そ れで議論は終わってしまうというテーマになっているのですが。今日は一応、ここの部 会での論点を整理するということで、両点について議論していただきました。今日はこ の辺にさせていただいて、次回は地域別最低賃金の論点について議論をしたいと思いま す。そのとき、資料の作り方が、今回と同じだと今回と同じ道を歩むことになりますの で、少し作り方を変えようと思います。それと、今日問題になった「最低賃金制度見直 しに関する主要な論点」という資料は、後ろに座っている方も含めて回収し、また次回 に改正版を作りますので、そのときに入手していただければと思います。次回の会議の 連絡についてお願いします。 しろまる前田賃金時間課長 次回は9月30日(金)10時から、経済産業省別館827会議室で開催を予定しておりま す。また正式には追って通知させていただきます。 しろまる須賀委員 これからの進め方でお願いがあるのです。すでに12月中旬までの日程を確保してある のですが、議論の中でも若干申し上げたとおり、私どもも組織を抱えた議論をさせてい ただいていますので、一定の論議が詰まっていく、あるいはステップがだんだん上がっ ていく段階で、バックとのやり取りが必要なタイミングが出てまいります。そこで、今 後の日程配置も含めて、いずれかの段階で相談をさせていただきたいと考えております ので、この点について是非ご了解いただきたいと思います。 しろまる今野部会長 その点は問題ありません。そのときにそういうことを言っていただければ、またご相 談をしたいと思います。本日の議事録の署名は高石委員と杉山委員にお願いいたしま す。今日の会議をこれで終了いたします。 【本件お問い合わせ先】 厚生労働省労働基準局勤労者生活部 勤労者生活課最低賃金係 電話:03−5253−1111 (内線 5532)

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