03/06/16 第13回社会保障審議会議事録 第13回社会保障審議会 しろまる日時 平成15年6月16日(月)14:30〜17:15 しろまる場所 厚生労働省 省議室(9階) しろまる出席者 貝塚啓明会長 <委員:五十音順、敬称略> 阿藤 誠、糸氏英吉、岩男壽美子、奥田 碩、鴨下重彦、岸本葉子、 北村惣一郎、京極高宣、清家 篤、??木 剛、永井多惠子、中村博彦、 廣松 毅、星野進保、山本文男、若杉敬明、渡辺俊介 <事務局> 水田邦雄 政策統括官(社会保障担当)、青柳親房 参事官(社会保障担当)、 高原正之 統計情報部企画課長、中村吉夫 雇用均等・児童家庭局総務課長、 岡田太造 社会・援護局保護課長、足利聖治 障害保健福祉部企画課長、 松田茂敬 老健局総務課長、間杉 純 保険局総務課長、 高橋直人 年金局総務課長、伊原和人 政策企画官、 岩崎康孝 医政局総務課課長補佐 しろまる議事内容 1.開会 (伊原政策企画官) 定刻になりましたので、ただいまから、「第13回社会保障審議会」を開会させていた だきます。 本日は、青木委員、浅野委員、稲上委員、岩田委員、翁委員、西尾委員、長谷川委 員、堀委員、宮島委員がご欠席でございます。 北村委員、糸氏委員につきましては、遅れてご出席とのご連絡をいただいておりま す。 出席いただきました委員が3分の1を超えておりますので、会議は成立しております ことをご報告いたします。 それでは、以降の進行は貝塚会長にお願いいたします。 (貝塚会長) 皆様、本日はお忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。 それでは、本日は、前回の審議会でお諮りしました審議会とりまとめ意見について、 審議したいと思います。 また、本日は、このあと木村副大臣がお見えになる予定です。 前回の審議会以降、各委員から事務局に寄せられた「起草に当たってのご意見」をも とに、私と4名の起草委員の方々で意見(案)を作成しましたので、本日は、この資料 に基づき、ご審議いただきたいと思います。 まず、審議に入ります前に、原案作成にあたり、起草委員の方々には大変ご苦労いた だきましたことをご報告し、また、この場を借りまして、起草委員の方々に対し、御礼 を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。 それでは、早速、審議に入りたいと思います。事務局から資料の説明をお願いしま す。 (青柳参事官) 私からご説明申し上げます。まず、今回の意見書(案)に至りますまでの作業手順で すが、去る6月3日に起草委員会を開いていただきまして、起草委員(案)の第1次案 を作成していただきました。この際には、前回5月20日の審議会で配付いたしました 「前回までの主な議論」と、5月20日の審議会における委員のご意見、さらに「起草に 当たってのご意見」を寄せていただきましたところ、およそ10名の委員の先生方からご 意見を賜りました。これらを集約する形で6月3日の起草委員会で第1次案をお作りい ただいたわけでございます。 その後、この案を全委員にお送りしまして、さらに起草案に対するご意見を12名の委 員の先生方からいただきました。これを起草委員の先生方に持ち回りの形でご相談させ ていただきまして、これを反映する形で本日の第2次案をご用意させていただきまし た。 委員の先生方のお手元にはアンダーラインを引いた資料をお配りしていると存じま す。第1次案をお配りしましたあと起草案に対するご意見をいただきましたので、本日 の第2次案になっていますが、その違いの部分がおわかりいただけるようにということ で作りましたので、ご参照いただければと存じます。 それでは、全体の概要を簡単にご報告いたします。 まず1ページの「はじめに」では、本意見書のとりまとめに至る経緯、ねらいが記さ れております。一番最後の6つ目のしろまるに「今後の社会保障改革の方向性について本審議 会の考え方をとりまとめた」というくだりがありますので、これをそのまま引用して、 本日ご用意させていただきました意見(案)のタイトルは「今後の社会保障改革の方向 性に関する意見」となっております。 2ページの「基本認識」では、20世紀型の社会保障が変容を迫られている中で、社会 保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくための考え方が整理されておりま す。最後のパラグラフに「21世紀型の社会保障の実現」というくだりがありますので、 これを反映して、サブタイトルが「21世紀型の社会保障の実現に向けて」となっており ます。 3ページは「I 社会保障の機能・役割」ですが、これは(1) セーフティネットとし ての社会保障、(2) 社会経済との関係、この2つの部分から構成されております。 (1) セーフティネットとしての社会保障では、本審議会でのご議論を踏まえて、セー フティネットについて整理しております。全体の総括的な表現としては6番目のパラグ ラフにありますが、「国民皆年金、皆保険により全ての国民を対象とした普遍的な制度 であることを踏まえつつ、生涯を通じて生活保障を行っていく」ということをセーフ ティネットの中心とするという整理になっております。 (2) 社会経済との関係につきましては、4ページの4番目のパラグラフにありますよ うに、「社会保障は、経済の活性化への貢献、社会の安定、有効需要の創出、労働力の 再生産など継続的な企業活動を支える面があることに留意しつつ進めることが必要であ る」という整理になっております。 4ページの後段からは「II 社会保障の給付と負担」ですが、これは(1) マクロベー スで見た給付と負担、(2) ライフコース・家計から見た給付と負担、この2つの部分か ら成り立っております。これらにつきましては、これまで審議会の過程の中で様々なデ ータに基づいてご議論いただいたファクトの確認が中心になっているものかと存じます ので、ご確認いただければと存じます。 6ページからは「III 社会保障改革の基本的視点」ですが、ここでは「社会経済と の調和」、「公平性の確保」、さらに「施策・制度の総合化」という3つの基本的な視 点に基づいて議論が整理されております。 8ページからは「IV 社会保障改革の方向性」ですが、8ページから11ページにわた り、最も分量の多い章となっております。(1) 給付の在り方では、8ページから9ペー ジにかけて給付の在り方についてのご議論が整理されております。 9ページから11ページにかけての(2) 負担の在り方では、負担の在り方の議論が整理 されております。 12ページには(3) 国民負担率をめぐる議論という項を設けていただきまして、当審議 会として国民負担率論に対する考え方が整理されております。 12ページから13ページにかけての(4) 国と地方をめぐる議論では、国と地方をめぐる 議論について、当審議会としての論点が整理されております。 以上、13ページまでが本文ですが、その次のページに「個別制度に関して指摘のあっ た事項」という項を設けております。この意味合いは枠の中に書いておりますが、本審 議会の報告のとりまとめに際して、個別制度に関して先生方から具体的なご指摘をいた だいております。これにつきましては、制度横断的な検討を行うという本審議会の趣旨 に照らして、直接にここで何らかの形で取り上げるよりは、今後、各専門部会における 議論の参考に供すべきではないかという観点から、そのような事項として整理をさせて いただいております。 以上、全体の構成について私からのご説明は以上のとおりですが、このあと具体的に 本文を読み上げながらご議論いただければと存じます。 (貝塚会長) それでは、本文を読んでいただけますか。 (伊原企画官) それでは拝読させていただきます。まず、「はじめに」から「I 社会保障の機能・ 役割」まで、1ページから4ページまで読み上げさせていただきます。 (朗読) (貝塚会長) それでは、ただいまの「はじめに」から「I 社会保障の機能・役割」について、ご 意見・ご質問等がございましたら、お願いいたします。 (高木委員) この部分について意見を2点申し上げたいと思います。1つは、1ページの「はじめ に」のところの3つ目のしろまるに「各分野での制度改革が進行中である」とありますが、こ のへんは少し認識が違いまして、医療でいえば負担増先行型、要改革事項について先送 りが多いというのが実態ではないかと思います。1997年に1割負担が2割負担に引き上 げられましたが、その時のいろんな公約にもかかわらず、その公約の中身がなかなか実 現せず、昨今は3割負担まで引き上げられました。こういうところを直そうという意味 での改革は先送りという状況があると思いますので、そういうことに触れていただくべ きではないか。 具体的には、この文章を生かすとすれば、「これらの提言に沿って、平成14年に健康 保険法の改正等が行われてきたが、改革を先送りしてきた面もある。今後、平成16年に 改革が予定されている年金をはじめ、各分野での制度改革に拍車をかけていく必要があ る」。このような表現にしていただくのが客観的かつ正しい表現ではないかと思いま す。 もう1点は、4ページの(2) 社会経済との関係のところの2番目のしろまるですが、「個人 の勤労意欲を削ぐほどの過度な水準となったり」という表現があります。日本の勤労者 は負担と給付の関係にも総じてリーズナブルに今まで対応してきていると思っておりま すが、「個人の勤労意欲を削ぐほどの過度な水準」なんていう表現があっていいんで しょうか。現実は負担ばかりが増えており、給付は切り下がる一方ということではない かと思います。「個人の勤労意欲を削ぐほどの過度な水準」など、いまだかつてないと 思いますし、将来もそういうことが起こる可能性はほとんどないのではないか。この間 のいろんな制度見直しは給付削減の繰り返しであり、勤労意欲を削ぐ過度な水準といっ たことにはほど遠い。逆に水準引下げが国民の不安を高めているという状況にあるので はないか。そのことがむしろ経済活力を削ぐという結果を招いているのではないか。 そういう意味で、ここは削除していただきたいという思いですが、もし削除できない ということであれば、次のような意見をぜひ入れてほしいと思います。「社会保障の役 割の後退、度重なる制度見直しと給付削減、制度の複雑化による制度への不信と将来不 安が経済活力を失わせるとの意見がある」といった趣のことを入れていただけないか。 この部分については以上2点でございます。 (貝塚会長) ほかにご意見等がございましたら、どうぞ。 (清家委員) いま高木委員が指摘された4ページのところの表現ですが、私もここはちょっと気に なりました。個人の就労意欲を給付の水準が抑制しているということもありますが、年 金制度の適用の対象範囲の問題とか、在職老齢年金制度の問題とか、給付の水準そのも のよりも制度の在り方のほうが問題になっているケースもあります。一般的に負担と給 付が個人の勤労意欲を削ぐというと問題の範囲が狭くなりすぎるという点もあるし、特 定化しすぎてるところもあると思いますので、もし可能であれば、もうちょっと一般的 に「社会保障制度が就業や雇用を抑制したりすることのないよう」とか、そのような表 現に変えられたほうがいいかと私も思います。 (永井委員) 2ページの「基本認識」のところに(1)と(2)がありますが、新しい社会保障改革の方 向性ということで新しさを出すとすれば、(2)のほうを先に書いたほうがいいのではな いか。冒頭に「(1)給付と負担について」というふうに書かれているわけですが、むし ろ次世代育成支援とか多様な働き方の支援というものも入れながら、生活保障改革とも いうべき方向性というのだとすれば、(2)のほうを強く打ち出すために入れ替えたらど うかという提案です。 (渡辺委員) 起草委員の一人として、高木委員と清家委員の言われた4ページの2つ目のしろまるです が、「経済活力の維持を図る観点から」この項目を書いているという意識で、私自身は この文章を事前に拝見して、この部分はこれでいいんじゃないかという判断があったん ですね。つまり、経済活力の維持を図る観点からは勤労意欲を削ぐほどの過度な水準で あって云々という文脈で言ってるつもりなんです。そういう意味からいうと、高木委 員、清家委員のおっしゃってることは、ここの部分の趣旨と違うんじゃないかという気 がしたんですが、その点を教えていただければと思います。 (高木委員) 勤労意欲を削ぐほどの過度な水準なんでいうことはまずあり得ないと私は思っており ますし、逆に給付削減がすぎたら、その場合の経済活力の低下は深刻なものになるので はないか。そっちの観点からこういう文章を読ませていただくと、いかがなものかなと いうことで、そういう立場で意見を申し上げさせていただいたわけです。 (清家委員) 経済活力の定義の問題にもなるかもしれませんが、社会保障制度がある種の形をして いなければ、もうちょっと活用できたかもしれない人的資源を活用できなくさせてしま ったりする問題がないようにするという趣旨で言えば、ここに書かれている「その負担 と給付が、個人の勤労意欲を削ぐほどの過度な水準となったり」というのは話を限定し すぎているし、労働経済学の立場から言いますと、壮年層の働き盛りの人のフルタイム の就業について、税とか社会保障制度が有意な影響を与えたという証拠はないわけで す。 勤労意欲というのは個人の意識の問題になりますが、それが労働供給行動に影響を与 えることが確認されているのは、女性の場合の年金の適用範囲の問題、つまり130 万円 のカベとか、高齢者の在職老齢年金の給付制限の問題とか、そういうところが確認され ていますが、一般的に給付の水準や負担の水準が中核的な労働層の就業行動に統計的に 有意な影響を与えたというエビデンスは今まで出されたことがないんですね。いま言い ました女性とか高齢者のところで制度が就労や雇用を抑制している面は確かにあります が、こういう形で給付や負担が勤労意欲を削ぐということを特定化して書きますと、経 済学的な実証分析の結果から、必ずしもこれが言えない場合もあるのではないかという 批判も出てくるかと思いますので、もうちょっと一般的に「就業や雇用を抑制したりし ないように」という表現にされたほうがいいのではないかと思ったということです。 (貝塚会長) 清家さんが言われましたように、引退する時とか60歳代とか女性とか、多方面の分野 における行動に関してと言ったほうが穏当な気がしますが、いかがですか。 (高木委員) 清家委員のおっしゃるような面もあると思います。これから将来、私どもの前に現れ てくるであろう年金の将来を考えていった時に、勤労意欲を削ぐほどの社会を我々は予 定できますかということです。 (貝塚会長) 高木委員のおっしゃる趣旨は理解しましたので、ここは検討して修文したいと思いま す。ほかにご意見はございませんか。 それでは、次に移らせていただきます。 (伊原企画官) 拝読させていただきます。4ページの「II 社会保障の給付と負担」及び「III 社 会保障改革の基本的視点」の7ページ最後まで拝読させていただきます。 (朗読) (貝塚会長) ただいま朗読していただきました部分について、ご意見がありましたらご自由にご発 言ください。 (清家委員) 基本的にはこれで結構だと思います。働き方と整合的な社会保障制度が必要であると いう意見を申し上げたことがありますが、そういった点を取り入れていただいてありが たと思っています。 一つ用語について、これでいいかどうかということなんですが、7ページの上から3 行目の「ライフコースを通じて社会保障制度が個人の選択に中立的であるとともに」、 これはとても大切なことだと思うんですね。 3つ目のしろまるのところに「多様な働き方の支援」という言葉が出てくるんですが、私の 理解では、多様な働き方をしようとすると社会保障制度が障害になったり、別の言い方 をすると、社会保障制度があるがゆえに、ある種の働き方を個人が選択したりするとい うことが問題になる。次世代育成支援はわかるんですが、多様な働き方の支援というこ とになると、具体的にどういう形のことを考えておられるのか。これを支援するという ことになると、多様な働き方を社会保障制度が積極的に進めるということですから、そ れは逆に言うと個人の選択に中立的ではなくて、一定の方向に働き方をより多様な形に 誘導していく形になってしまうのではないか。「多様な働き方を阻害しない」というの だったらわかるんですが、支援というと引っかかるんですが。 (貝塚会長) 中立性ということと支援ということがずれてるのではないかということですね。「多 様な働き方と整合的な」とか「共存」とか、そのほうがいいですね。 (清家委員) そのほうが表現としては中立的ではないかと思います。 (貝塚会長) おっしゃる趣旨はわかりました。 (岸本委員) 7ページの3番目のしろまるですけど、いま話題になったところは「多様な働き方への対応 」でよろしいんじゃないでしょうか。同じ3番目のしろまるの5行目に「年金等の制度改革の 中で就労形態の多様化への対応」というのもありますので、そことの整合性からいって も「多様な働き方への対応」で決着がつくように思われます。 (貝塚会長) 字句の修正については考えさせていただいて、適切な表現に改めたいと思います。 (廣松委員) 7ページの最初のパラグラフで清家委員がご指摘になって、これで結構だとおっしゃ った「社会保障制度は個人の選択に中立的であるとともに」という文章なんですが、個 人の選択のうち、就業、不就業の選択が強く出ていると思うんです。後ろのほうで「次 世代育成支援」ということが言われていて、これは子どもを持つことに対する支援、子 育てに対する支援ですから、突き詰めれば、個人が子どもを産む産まないとか、何人子 供を持つかという選択に対して必ずしも中立的ではなくなるのではないかというニュア ンスがあると思うんですね。ですから「個人の選択」というところを限定したような形 で書くことはできないのか。就業、不就業の選択に限定するという意味ですけど。 (清家委員) 私は「個人の選択に中立的」は残すべきだと思うんですね。「次世代育成支援」とい うのは、もし条件が許せばこれだけ子どもを欲しいという人の選択を担保するという意 味での支援であって、そもそも何人持ちたいかという考え方自体を変えるとか、もう ちょっと多く持つようにしてもらうというところまでやると次世代支援としてもやりす ぎじゃないかと思います。子どもを持つという選択をしたい人ができるような条件を整 えるという意味での支援と考えましたので、「個人の選択の中立性」というのはぜひ残 していただきたいと思います。 (廣松委員) わかりました。もう一点全体として私が感じた点なんですが、6ページの2番目のしろまる のところで女性の労働力率のことが出てきましたので、ここで申し上げたいと思いま す。労働力人口を確保するのに女性の労働力率の上昇というのは重要ですが、もう一つ 大きな論点として外国人労働者の問題があります。外国人労働者の受け入れに関してい ろいろ議論があることは事実ですが、もし今後、受け入れていくことにした場合、その 人たちに対する社会保障をどういうふうに位置づけるのかという点に関しての記述が必 要ではないかと感じました。6ページの「基本的な視点」の一番上のしろまるの4行目に「特 定の者に限らず、全ての国民を対象とする普遍的な施策」という表現が出てくるんです が、外国人労働者の問題が出てきた時に、ここに含めるのかどうか。そのへんの記述が なされてないのではないかという印象を持った次第です。 (貝塚会長) 私の記憶では、外国人労働者に関するご議論があったことはそのとおりですので、折 衷的な案としては、「なお」書きか何かでどこかの箇所に入れておく必要があると思い ます。ここの場所は適当かと思いますが、あとで検討したいと思います。 (中村委員) 我が国の21世紀最初の社会保障改革の方向性を示す重要な意見書だけに、再三申し上 げている外国人労働者の対応をどこかに入れていただきたい。 (高木委員) ヨーロッパやアメリカとの比較論がいろいろ議論になって、年金部会等でも、どこの 国は保険料が高いとか低いとか、例えば退職金という形の給付はヨーロッパでは非常に 小さいとか、そういう議論を含めていろんな比較論があると思うんです。 5ページの下から2つ目のしろまるに「各国における賃金水準の相違があることから、保険 料率の高低のみをもって比較するのは適切でないとの強い意見があった」という記載が ありますが、保険料率もパーセントの世界と額の世界みたいなものがどういう関係にな るのかとか、いろんな検証が必要じゃないかと思うんですね。 その上に「アメリカより高い」とありますが、これは公的な管理のもとにある制度の ことであって、アメリカには私的な制度の世界があいろいろありますから、そういうも のを含めてトータルではどんな負担の形になっているのか。我が田に水を引きたいと か、そんな議論じゃなくて、冷静に客観的に分析をしていただきたものだ思いますの で、そのことだけ申し上げさせていただきます。 5ページの一番下のしろまるは「家計に占める社会保険料・税の負担は」という書き出しに なっていますが、例えば病気にかかった時に独自で払う医療保険の自己負担といった問 題も家計にかかわってきているわけでして、社会保障の給付を受けるにあたって、別 途、家計が負担しなくてはいけない世界も合わせて家計負担というのがあるんだろうと 思います。そのへんの記述がどこにもないんですね。そういう世界があるということを 少し触れていただく必要があるのではないか。 7ページの一番最後のしろまるに「社会保障に関する国の責任と役割」という表現がありま す。これ以外のところにも同様の表現が1、2カ所あったと思いますが、ここで言われ ている「国の責任と役割」というのは現在の役割より小さくするという発想なのか、そ もそもの在り方論まで含めて議論されるのか、どういう感覚でお書きになっておられる のか。私の意見を申し上げれば、もし国の責任と役割を過度に小さくするような方向で お書きになっているとすれば、こういう表現には賛成できないということです。そうで ないということなら結構なんですが、どういうことなのかお教えいただきたい。 (貝塚会長) ここでは中立的に書いてあるんですが、この作文のニュアンスはどういうことなんで すか。 (青柳参事官) ある委員から「国の責任と役割について明確にすべき」というご意見をいただいたと いうことですが、その意図は、いま高木委員がおっしゃったのと同様、国の責任と役割 を強化せよという意図であったと理解しております。 (高木委員) それだったら結構です。 (貝塚会長) 先ほど高木委員がおっしゃった自己負担というのをどこかに入れなくてはいけないん ですが、あとでどこかに入ってきそうですか。 (伊原企画官) 利用者負担に関しましては、9ページ以降の(2) 負担の在り方のところに出てまいり ます。10ページの上から2つ目のしろまるに「社会保障制度についての財源は、保険料、公費 負担、利用者負担の適切な組み合わせによって図っていくべきだ」とあります。さらに 各論に関しましては11ページの3つ目のしろまるに「国民の生活が多様であるように、国民一 人一人の所得や資産には格差がある」とありまして、「経済状況は各人で格差がある中 で、きめ細かな対応が必要である」という記述がございます。 (貝塚会長) どこかに付け加て入れておいたほうがいいかもしれませんね。場所については考えさ せていただきます。 それでは、次に、「IV 社会保障改革の方向性」について、朗読をお願いします。 (伊原企画官) 8ページから最後の13ページまで拝読させていただきます。 (朗読) (貝塚会長) それでは、最後の部分についてご意見がありましたらご自由にご発言ください。 (奥田委員) 全体的を通してなんですが、いろんなところに「こういう意見があった」という話が 出てくるんですね。この報告書自体が意見案であるが、意見案の中にさらにまた意見が あるという話で重複しているような感じがする。初めから落としてしまうとか、こうす べきだとか、何か書いておかないと、意見があったという話では各論併記みたいな話に なって、けじめがついてないような感じがする。 (貝塚会長) もともとの案文を作りましたあとで、いろいろ修正意見がありまして、いろんな方が 言われたことを「意見があった」という形で書かせていただきました。それ以外の部分 は皆さんのコンセンサスに近いものがあったという理解なんですね。審議会というのは どういうふうに運営するかという話でもありますが、社会保障審議会は、もともと医療 保険の時から一つの意見に完全にまとめるということは必ずしも考えてないんですね。 それぞれ筋はあるわけですが、賛成、反対の意見もあり得るわけで、俗に言えば官庁文 学的な表現になってるんです。 (奥田委員) 一番最後のページの「個別制度に関して指摘のあった事項」は、指摘はあったが、小 さなマターだから文章の中には入れなかったということなのか。 (貝塚会長) この審議会の構成上、年金部会において年金の細かい制度設計は議論が進行中ですの で、年金に関連する意見は年金部会にお伝えします。そのへんを参事官から説明してい ただけますか。 (青柳参事官) 冒頭にも少し申し上げましたが、本審議会では基本的には制度横断的なことをご議論 いただいていたものと承知しております。したがって、本文中においても個別制度に言 及する部分については、制度横断的な議論の例示として引用するという形で触れられて いる部分がありますが、これこれの制度についてこういうことを今後検討すべきだとか 改善すべきであるというご意見は、個別制度に関して指摘のあった事項として整理しま して、各部会において、今後、個別具体の議論をする際に反映させていただくという整 理になっているものと承知しております。 (貝塚会長) 意見書には方向性について書くというのが基本で、個別具体的なことを書くのは無理 じゃないかという理解なんですが。 (奥田委員) それはわかったのですが、意見があった、意見があったというのがたくさん書いてあ るのは、我々の意見を取り入れていただいたわけではなく、こういう意見があったと付 記していただいたということですね。 (貝塚会長) 起草委員会で草案を作りまして、その後、委員の方々に草案を提示して、それぞれご 意見があったわけです。個別の話は別として、全体の流れに関連するご意見があった場 合は「意見があった」と書かせていただいてるというのが私の理解です。 (青柳参事官) ただいま会長がおっしゃったような理解のもとに事務局も整理をさせていただいてお ります。 (奥田委員) ずっと拝見しておりますと、両論併記とか、こういう意見があったとか、そういう話 があちこちにたくさん出てくるんですね。これを読むと、あるところでは結論みたいな ものが出てくるが、出てないところもある。結論が出ないままに、こういう意見もあっ たということで逃げたというと変ですけど、留保したということですね。最近の審議会 のレポートを読むと、どこでも両論併記的な表現が多いが、こういうものはいらないな らやめてしまうとか、あるいは意見があったという表現ではなくて、もうちょっと別の 表現のほうがいいのではないか。読んでいても、これは本当に考えたのかという感じが する。 例えば10ページの下から4行目に「その際、徹底した歳出改革を行うことを前提に高 齢者を含め広く公正に負担する消費税を活用すべきとの意見があった」と書いてありま すけど、この意見に対して起草委員会の方はどういうふうに考えられたのか。取り入れ たことはいいと思うのだが、消費税を活用すべきであるとか、消費税は活用しないと か、あるいは「その道筋をつけるべきである」というところで切ってしまうとか。ずっ と読んでると、結論が全然ないような話になっている。書いていただいたのはありがた いが、入れ方の問題だと思う。 (貝塚会長) 中途半端な部分があるということでしょうか。 (奥田委員) 丸投げではないが、諮問会議にこれが出てくると思います。諮問会議の場で、こうい うふうに両方あったということになると、どちらかをとらなくてはいけない。それをど ういうふうに判断するのか。これを参考にして、こういうふうにすべきだと諮問会議が 独自で判断しなくてはならない。諮問会議はこんなことは書けませんから、はっきりイ エスかノーという表現でないといけない。そういうことですから、そこの書き方がこれ によってだいぶ変わってくるということです。 (貝塚会長) 今の点は行政の管轄とも関係するんですが、事務局はどういうふうにお考えですか。 (青柳参事官) 奥田委員の前で申し上げるのは失礼かもしれませんが、社会保障審議会は諮問会議の 下請をするという役割ではございません。社会保障制度を制度横断的に議論していただ いた結果は、お求めがあれば諮問会議にもご報告いたしますし、諮問会議のほうに反映 していただけるということも当然あろうかと存じます。いずれにいたしましても、この 審議会で年金とか介護保険とか医療保険とか具体の制度をどうするかという議論をして いただく時には、一つの方向をおまとめいただかないと制度改正の原案が作れないとい うことが当然生じてこようかと存じます。 ただ、この審議会は制度横断的な議論を全般についてしていただくということに大き な意味合いがありますので、その意味では、議論が漏れなく、幅広く、様々な観点につ いてご議論いただけたかどうかというところにポイントがあるのではないかと事務局と しては理解しております。したがいまして、最大公約数的に一定の結論に集約できたも のと、様々な議論が分かれた部分が結果的に審議会の意見書の中にも出てくるというこ とではないかと私どもとしては理解しておりました。 (奥田委員) そういうことで、事務局としてはこういう書き方をされたというのであれば、それで 理解できますから、我々はこれを見させていただいて、我々なりにこれを一つの参考と して判断していく。それを骨太の方針の中に入れていく、そういう形になると思いま す。 (貝塚会長) いま参事官が言われましたように、この社会保障審議会は全体としての社会保障の問 題を横断的に考えて、幅広くいろいろ議論をして、どういう形がいいかということを議 論するところにウエイトがかかっておりまして、あとの細かい論点の取捨選択は経済財 政諮問会議にお任せするし、ご判断はそちらにゆだねるということではないかと思いま す。 ほかにいかがでしょうか。 (岩男委員) この意見案のあちこちに「若い世代の理解を得る」ということが繰り返し書いてある んですが、これを若い世代の目で読み直してみますと、まだ十分でない点があるのでは ないかという印象を持ちます。 例えば8ページの一番下のしろまるのところで「今後、高齢者世代の理解を得ながら、高齢 関係給付の伸びをある程度抑制し、これを支える若い世代の負担の急増を抑える」とい う言葉になってるんですね。20代、30代の人たちと話をすると、年金制度は維持されな くなるんだという思い込みがものすごく強いんですが、それを前提として、若干の言葉 を補ったほうがいいのではないかという感想を持ちました。 9ページの一番上のしろまるのところにも「若い世代の共感を高めることにつながる」とあ ります。共感というのは既に理解があって、それがもっと深化したものが共感なんです けど、まず理解を得ることにつながるぐらいがせいぜいなんですね。そのくらい若い世 代の不信感は根強くて、「社会が変わっていくにつれて制度の不断の見直しをする」と いう文言が何回か出てきておりますが、見直しのたびごとに自分たちは割を食っていく というふうに彼らは固く信じているわけです。 制度はきちんと維持していくんだということを繰り返し言いながら、高齢者には比較 的甘くて、若い世代には今後ますます厳しくなるという形に受け止められるようなとこ ろを、できるだけ注意して書かないと、共感なんてとても無理だと思いますけど、理解 を得ることさえなかなか難しいのではないか。そのへんはもっとシビアに認識する必要 があるのではないかという感想を持ちました。 (奥田委員) 私も岩男委員と同じ感覚でして、報告書案の中に「改革に当たっては、国民の理解と 納得のもとで合意が得られるように配慮する」と書かれてあるが、これは大変重要なこ とで、非常にいいと思います。ただ、国民の理解と納得をどういう形で得るのか。特に 年金の世代別の負担と給付に関して制度を支えている若者が知りたいと思う情報を十分 に開示してやることが必要だと思うが、こういうことは具体的に可能なんですか。 (貝塚会長) ライフコース上の試算をお示ししていますが、日本の社会保障は高齢者に偏っていた ということは何カ所かに書いてありますね。裏を読んでいただけるとありがたいんです が、今後の社会保障制度はそういうことでは維持できないという認識があるんですね。 そこは重要なメッセージで、起草委員の方もそうお考えだと思います。その部分が重要 な要素で、たびたび出てきていると思いますが、岩男委員がおっしゃったように共感と いうのは行き過ぎてるかもしれません。理解とか、もう少し言葉を弱めたほうがいいか もしれません。従来の社会保障制度の考え方は高齢者中心ということがありましたの で、そこを考え直すべきだという点は力説してあるつもりです。 (渡辺委員) 年金について言いますと、年金部会で具体的な議論をやっておりますが、例えば保険 料固定、給付自動調整方式というのは年金部会では大勢の意見になっておりましてね。 若い世代の共感はオーバーかもしれませんが、そういったことで理解を得ようという方 策をやっています。 先ほど奥田委員が指摘された10ページの最後のしろまるのところは、ほかの委員は別の委員 の方々は別のご意見があるかもしれませんが、基礎年金の国庫負担の問題は各論ではあ るものの、私は起草委員の一人として社会保障全体の入り口になるテーマだと思ったの で、ここに入れることに賛成いたしました。 先ほど奥田委員が起草委員はどう考えるのかとおしゃったので申し上げますと、「道 筋をつけるべきである」ということで私はいいと思ったんですが、そのあと各委員から こういう意見が出てきたわけでして、消費税という意見もあったし、公的年金と公費と いう意見もありましたし、徹底した歳出構造の見直しという意見もあったので、ここは 「意見があった」としかできなかった。道筋をつけろ、それは消費税であてろというこ とはとても書けなかったので、このような表現をしたということです。 (高木委員) 先ほど来の奥田さんのお話だと、いろんな意見があったということをあげてきたっ て、経済財政諮問会議は骨太の方針の中で経済財政諮問会議の議論として整理するよと いうふうに聞こえたんですが、各省の審議会よりも経済財政諮問会議のほうが最終決定 に近い判断をされる場なんでしょう。 「こういう意見があった」と書いてある中には、日本経団連がかねて主張しておられ る流れの意見を言われて、それが書かれている点がかなりあるのではないか。私どもが お願いしたことも1つ2つはあるんでしょう。 9ページの(2) 負担の在り方の最初のしろまるですが、これを読みますと、財政赤字のため に社会保障費の縮減もあり得るのではないか、そのぐらいのことを覚悟せよというご意 見ですよね。こういう財政赤字があります、日本経済はこうした負担を支えていくのは しんどいですという意見があったということですが、こういう意見をお書きになるのな ら、社会保障費を削減して財政赤字を埋めるという発想は違うと思いますという意見も あったというのを書いておいてほしいということです。 (貝塚会長) 国民負担率の問題は財政支出全体にかかわることで、国民負担率をある水準にとどめ ることは社会保障給付費をカットするというニュアンスで語られることが多いんです が、そうではなくて、公共部門全体の役割の中で考えなくてはいかんというのがここの 議論の趣旨ではないかと思うんですがね。 (星野委員) 9ページの「11%に上る財政赤字の存在を考えると、日本経済がこうした負担を支え ていくことは難しい」という意見があったんですが、12ページの4つ目のしろまるでは「潜在 的国民負担率を社会保障のみと過度に関連づけて論じることは適当でない」と、はっき り断ってるわけです。9ページに付け足された「なお」以下を消しちゃったほうがすっ きりするんじゃないですか。 奥田さんが言われたように、対立した両方の意見があって、このペーパーでは結論が 出てないのなら、座長がおっしゃったように、両方の意見が収斂しないから、両方の意 見があったと書くのはいいんですけど、高木さんのご指摘のところは、12ページで結論 が出てるんだから、9ページで意見があったなんて載っけておく必要は何もないんじゃ ないかという気がいたします。私の理解は間違っているのでしょうか。 私は奥田さんと違って、座長の立場を尊重して、意見があったというのはいくらあっ てもいいと思ってるんです。まとまらないことがいっぱいあるわけですから、意見があ ったというのを出しておいて、座長がおまとめになるしかないと思うんですが、今の点 に関しては片方でこういう意見があったと言いながら、片方ですっきりした結論を出し てるんだから、9ペーのほうは消しちゃったほうがいいんじゃないですかね。もっと見 ていくとそういうのがあるのかもしれませんけど、いま思いついたのはそこなんです。 (貝塚会長) 星野委員のおっしゃる9ページの文章と12ページの文章はちょっと違うというか、9 ページは財政赤字は大変ですよということを言ってて、それを受けて潜在的負担率があ るんですが、それから先は社会保障とどういうふうに関係しているかということは何も 書いてないんですね。ですから矛盾はしてないんじゃないかという気がしますが、事務 局はいかがですか。 (青柳参事官) いま座長がおっしゃったように私どもも事務的には整理をしております。12ページに つきましては、社会保障そのものにどこまで国民負担率の議論を引きつけて議論するか という文脈の中では、私の記憶している限りでは、5月20日のご議論はこのような方向 にまとめさせていただいても支障がないのではないかと存じております。 ただし、一般論として国民所得費11%に上る財政赤字の存在を考えた時に、それが非 常に大きなものであるということをどう考えるかというご指摘はあるのかなと理解して おりましたので、厳密には9ページと12ページは両立しうるというふうに文章表現上は 理解しておりました。 (星野委員) そんなに詳しく追い詰める気はないんですけど、ここで言ってるのは社会保障改革の 方向性の中の給付の在り方で、(2) にちゃんと「負担の在り方」と書いてあるんだか ら、国全体の負担の在り方というよりは、それと関連づけながら書いてるはずなんです よね。そう言うと議論が遠すぎちゃうんじゃないかと思いますけど、いろんなご事情も あるんでしょうから、私は消せとは言いません。そういう事情はよくわかりますけど、 ここだけ気になりましたということだけ申し上げておきます。 (京極委員) もともとの原案には「意見があった」というのはあまりなかったんですけど、委員の 皆さんからいろんな意見をいただいたので、その処理をめぐって、必要なものは本文に も入れましょうという前向きの姿勢で「意見があった」と入れた。意見の中にはテイク ノートみたいなこともあるし、明らかに政策的な対立した意見があって、この中では収 拾がつかないだろうというのもあるし、いくつかの種類があって、それを全部「意見が あった」とまとめたので、奥田委員がおっしゃるようにわかりにくいものになったとい うことだと思うので、若干整理をしたほうがいいかと思います。 (山本委員) 8ページの3つ目の段落に書いてある文章は私はよく理解できません。給付のことが 書いてありますが、下から2行目に「なお、この際、我が国の財政構造を見直すことに より」と書いてあるんですね。いまこれが一番問題になってるんです。ご存じですね。 どうしてここでこういう表現が出てくるのかさっぱりわかりませんが、財務省側が言っ ているのは、補助金のうちの11項目を減額しろと言ってるわけです。その中に社会保障 が入ってるんです。いま財政構造が問題になってるわけです。ここで見直すということ を言えば、先取りしてくるに決まってるという感じになるんです。ここは文章が先走っ ているような感じがします。 (貝塚会長) この文章の意味は、確かにわかりにくいですね。 (伊原企画官) 委員の方々からいただいたご意見の中に一つ出てきたのが、公共事業を抑制し、むし ろ社会保障を充実すべきだという意味での財政構造というご意見だったように記憶して おります。 (貝塚会長) 歳出構造としたほうがいいんじゃないですか。財政構造というと国と地方が全部入っ ちゃうから、歳出構造のほうが具体的だと思いますよ。 (山本委員) 書き方を変えたらいいんじゃないですか。 (伊原企画官) 国の歳出構造とか。 (貝塚会長) 限定したほうがいいと思います。 (山本委員) わかりにくいような言葉は変えたほうがいい。 (貝塚会長) 国の歳出構造のほうがわかりやすいと思います。 ほかにご意見はございませんでしょうか。先ほど来、私がお答えできた部分はありま すけど、修文をせざるを得ない部分が残りまして、特に高木委員がおっしゃった点は修 文したほうがいいと思います。起草委員の方に集まっていただいて修文したいと思いま すが、よろしいでしょうか。 (中村委員) これだけ多くの意見があった、外国人労働者問題を是非入れてください。ここ3年、 4年いつもこの意見が出てきているのに、タブー視され、いつも消えてしまっている。 貝塚会長が一番よくご存じです、ぜひお願いしたいと思います。 (貝塚会長) どこか適当な場所に入れたいと思います。 それでは、暫時休憩にさせていただいて、修文をしたいと思います。 (休憩) (貝塚会長) それでは再開いたします。ただいま修正の案文をお配りしましたので、企画官から簡 単に説明してください。 (伊原企画官) 大変お待たせいたしました。起草委員の先生方にご議論いただきまして、お手元に配 付いたしました修文案を作成しております。 1ページ、「はじめに」のところの3つ目のパラグラフですが、「これらの提言に 沿って、平成14年に健康保険法の改正等が行われてきたが、なお不十分な面もある。現 在、平成16年に改革が予定されている年金をはじめ、各分野での制度改革が進行中であ り、今後、さらに改革を加速していくことが求められている」となりました。 2ページの「基本認識」のところですが、(1)と(2)の順番を逆にしまして、(1)の 「多様な働き方の支援」という部分を「多様な働き方への対応」と修正しております。 4ページ、(2) 社会経済との関係の2つ目のしろまるですが、「経済活力の維持を図る観点 からは、社会保障制度が、就業や雇用を抑制することになったり、公的部門の拡大によ り民間部門を圧迫するといった事態が生じることがないよう制度運営を図ることが必要 である。なお、給付の削減や度重なる制度の見直しなどは、社会保障制度に対する不信 と将来に対する招き、経済活力を損なうおそれがあるとの意見があった」という形に直 しております。 6ページにまいりまして、家計における利用者負担の議論がございましたが、1つ目 のしろまるの次に2つ目のしろまるとして、「なお、家計の負担を考える際には、社会保障サービス に係る利用者負担の水準についても配慮することが必要であるとの意見があった」とい う文章を入れております。 次に7ページですが、2つ目のしろまるの中の「多様な働き方の支援」を「多様な働き方へ の対応」と直しております。 3つ目のしろまるについても同様に「多様な働き方の支援」を「多様な働き方への支援」と 直しております。 一番下のしろまるですが、「さらに、今後の人口減少社会を念頭に置けば、外国人労働者の 受け入れと、社会保障制度における位置づけについて検討することが必要であるとの意 見があった」という文章を新たに入れて明記しております。 8ページ、「IV 社会保障改革の方向性」のところで、3つ目のしろまるの最後の部分です が、「財政構造」を「歳出構造」に直して、「我が国の歳出構造を見直すことにより、 充実を図るべきとの意見があった」としております。 9ページの一番上のしろまるの「若い世代の共感」という部分を「理解」に直しまして、 「若い世代の理解を得ることにつながる」としております。 9ページの(2) 負担の在り方の1つ目のしろまるの最後の部分ですが、ここは2つの選択肢 を示しております。1つは、「なお、負担水準に関しては、2003年度現在で対国民所得 費約11%に上る財政赤字の存在を考えると、日本経済がこうした負担を支えていくこと は難しいのではないかとの意見があった」とありましたが、ここを削除するという案で す。 別案といたしまして、10ページにありますように、ただいまの部分を残した上で、 「また、財政赤字について、その責任は、政府の経済・財政政策に帰せられるべきもの であり、社会保障に求めるべきではないとの意見があった」という文章を入れて、両論 併記するということです。 以上が修正案でございます。 (貝塚会長) 9ページの下の部分は削除するという案と、削除せずに、10ページのように付け加え 長く書くという案があるんですが、どちらにいたしましょうか。私は簡単なほうがいい ように思いますが。 (星野委員) 言い出しっぺの私としては、座長にお任せします。別案のほうが当審議会としてはき らびやかだと思いますけど、えげつないような気がしないではない。座長にお任せしま す。 (貝塚会長) それでは、最初の案のように最後の3行を削除するということでよろしいでしょう か。 (若杉委員) 6ページに新しく入った文章なんですが、ちょっと見るとわかるようでいて、何を言 ってるのか、あまり意味がないような気がするんですが。 (貝塚会長) これは自己負担のことを言ってるんですね。「利用者負担(自己負担)」と書いたほ うがわかりやすいかもしれません。保険の自己負担の部分が無視てきなくなってきたと いう意味です。 (京極委員) 「社会保障サービス」の前に「税や保険料の負担のみならず」と入れるといいかもし れません。利用者負担というのは税とか保険料を除いてるんですね。 (若杉委員) 家計の負担という負担があって、そのあとに利用者負担とあるんですが、意味が違う わけですね。 (貝塚会長) カッコして自己負担と書いたほうがわかりやすいかもしれません。 (若杉委員) それならいいのかな。しょうがないと思います。 (貝塚会長) 税と保険料の話ばかり書いて、実際に適用を受けた人が自己負担がばかにならない水 準だから、それも含めないとバランスを喪失するんじゃないかということですかね。そ ういう趣旨でよろしいですか。 (青柳参事官) 今の点は、6ページの2つ目のしろまるの「利用者負担(自己負担)」と付け加えるという ことですね。 (貝塚会長) そのほうがわかりやすいんじゃないですか。 (青柳参事官) 承知いたしました。 (貝塚会長) それでは、意見案を修文した結果、皆様にお認めいただいたということにさせていた だいてよろしいでしょうか。 (高木委員) 先ほど議論しなかったんですが、「個別制度に関して指摘のあった事項」というのが 16項目ほど並んでますよね。ここに1つだけ付け加えていただきたいと思いますのは、 政管健保で被保険者が制度の運営なり制度の改廃の議論等に参加させていただく場が全 然ないんですね。社会保険庁で事業運営懇談会というのをやっておられますが、これか らの社会保障を考えた時に、被保険者というかユーザーというか、そういう人たちも一 緒に参加して運営していくという社会が必要ではないかとかねがね思っておりまして、 そういった1項をこの中に付け加えていただいたらどうかなと思います。それらしきも のが入ってないでしょ。 (貝塚会長) 高木委員のおっしゃった点を個別問題のところに付け加えるということですね。事務 局、よろしいですか。 (青柳参事官) 文章については座長にお任せということでお許しいただければ、なんとか対応できる と思います。 (高木委員) それで結構です。 (貝塚会長) それでは、ただいまご承認いただきました(案)を当社会保障審議会における「今後 の社会保障改革の方向性に関する意見」、副題としまして、「−21世紀型の社会保障の 実現に向けて−」としてとりまとめさせていただきます。 (伊原企画官) いまいただきましたご意見を入れて直しをします。あと5分ぐらいで全部打ち直し て、きれいなものが出来上がると思います。 なお、副大臣が参りますので、手渡しをお願いしたいと思います。 (貝塚会長) それでは、副大臣がお見えになりましたので、私から意見書を手渡させていただきま す。「今後の社会保障改革の方向性」について今日ご議論いただきまして、最終的に修 正した審議会の意見書を副大臣にお渡しいたします。 それでは、副大臣よりご挨拶をお願いいたします。 (木村副大臣) 厚生労働副大臣の木村義雄でございます。 委員の皆様におかれましては、お忙しい中、昨年12月以来、今回も含めまして約半年 間、6回にわたってご議論いただき、貴重な意見書をとりまとめていただきまして、心 から御礼申し上げます。 昨今、社会保障を取り巻く状況は大変厳しいものとなっており、従来型の社会保障だ けではなく、新しい観点からの制度の見直しが求められております。 そのような中で、今回、21世紀型の社会保障の実現を目指す上で「社会経済との調和 」、「世代内・世代間の公平性の確保」、「施策・制度の総合化」といった観点が必要 とのご指摘、また、これまでなかった「生活保障改革」といった幅広い視野からの改革 が必要というご指摘など、今後、社会保障改革を進めるに当たっての貴重なご示唆を与 えていただいたと考えております。 今後は、本日のご提言等を踏まえまして、年金・医療・介護の各制度につきまして は、総合的な観点からも、引き続き部会等において見直しを進めていただくとともに、 持続可能な社会保障制度の確立に努力してまいりたいと考えております。 社会保障改革を進めるに当たりましては、引き続き、委員の皆様方にご意見をいただ きたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。 本日は、どうもありがとうございました。 (貝塚会長) それでは、本日の会合はこれにて終了いたします。皆様どうもありがとうございまし た。 −以上− 照会先 政策統括官付社会保障担当参事官室 政策第一係 代)03−5253−1111(内線7691) ダ)03−3595−2159

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