03/05/20 第12回社会保障審議会議事録 第12回社会保障審議会 しろまる日時 平成15年5月20日(火)10:00〜12:10 しろまる場所 厚生労働省 省議室(9階) しろまる出席者 貝塚啓明会長 <委員:五十音順、敬称略> 浅野史郎、阿藤 誠、糸氏英吉、岩田正美、翁 百合、奥田 碩、 鴨下重彦、岸本葉子、北村惣一郎、京極高宣、??木 剛、中村博彦、 長谷川眞理子、堀 勝洋、宮島 洋、山本文男、若杉敬明、渡辺俊介 <事務局> 水田邦雄 政策統括官(社会保障担当)、青柳親房 参事官(社会保障担当)、 高原正之 統計情報部企画課長、中村吉夫 雇用均等・児童家庭局総務課長、 岡田太造 社会・援護局保護課長、足利聖治 障害保健福祉部企画課長、 松田茂敬 老健局総務課長、間杉 純 保険局総務課長、 高橋直人 年金局総務課長、伊原和人 政策企画官、 岩崎康孝 医政局総務課課長補佐 しろまる議事内容 1.開会 (伊原政策企画官) 定刻になりましたので、ただいまから「第12回社会保障審議会」を開会させていただ きます。 本日は、青木委員、稲上委員、岩男委員、清家委員、永井委員、西尾委員、廣松委 員、星野委員からご欠席との通知をいただいております。 なお、鴨下委員からは遅れてご出席との連絡をいただいております。 出席いただきました委員が3分の1を超えておりますので、会議は成立しております ことをご報告申し上げます。 それでは、以降の進行は、貝塚会長にお願い致します。 (貝塚会長) 皆様、本日はお忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。 それでは、本日の議事につきましてお諮り致します。 本日は、まず医療保険制度に関する部会の設置についてご審議いただくとともに、前 回に引き続き「社会保障に関する制度横断的検討」として、「社会保障の負担の在り方 」について、順次審議したいと思います。 それでは、早速議事に移りたいと思います。 議題1の「部会の設置について」、事務局から資料の説明をお願いします。 (間杉総務課長) おはようございます。保険局の総務課長でございます。 資料1「医療保険部会(仮称)の設置について(案)」につきまして、お諮り申し上 げたいと存じます。 本年3月28日に閣議決定されました「医療保険制度に関する基本方針」につきまし て、前回の会議で資料を配付させていただき、簡単にご紹介させていただきました。 ここにございます医療保険制度の体系に関する改革、これは新しい高齢者医療制度の 創設と保険者の再編統合、この2つですが、この改革につきましては、平成20年度に向 けて実現を目指すこととし、法律改正を伴わずに実施可能なものについては順次実施、 法律改正を伴うものについては、この基本方針ができたあと、概ね2年後を目途に順次 制度改正に着手するということが閣議決定されているわけでございます。 「基本方針」までは大臣が直接関係団体の皆様方と意見交換をさせていただくという 形で進めてまいりましたが、この基本方針の中でもまだ詰まっていない点、これから詰 めていかなければならない点が多々ございます。従いまして、この医療保険制度の体系 に関する改革についてご議論、ご審議いただくために本審議会に専門の部会を設置して いただいてはどうかということでございます。 本審議会において部会設置のご了承が得られ次第、部会のメンバーにつきまして貝塚 会長とご相談させていただきまして、できるだけ早く部会を開催させていただきたいと 考えておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。以上でございます。 (貝塚会長) ただいまの説明について、ご意見、ご質問等がございましたら、どうぞ。 (糸氏委員) 閣議決定に基づいて部会を設置するというご提案ですが、今までの経過を振り返って みますと、前にも医療保険審議会がありまして、ここで医療保険システム、あるべき姿 等、いろいろ議論されたわけです。一方で社会保険中央医療協議会(中医協)の基本問 題小委員会というのがあり、そこでも同様の議論がなされました。ということで、医療 保険制度については医療保険審議会の議論と中医協の議論と、この2つがいつも出てお りまして、かなり混乱をきたしたという事実があります。そのためかどうか知りません が、結局、医療保険審議会(医保審)はなくなったという経過がございます。 こういう改革の時期でありますし、この問題について議論することに私はいささかも 反対するものではございませんが、中医協における基本問題小委員会が行う医療保険シ ステムの改革の話と今度の部会で行う話の役割分担をきっちりなさって、いたずらに混 乱をきたさないように慎重な対応を図られたいということをお願いしておきたいと思い ます。 中医協は昔からお金の話が主題なので、金の話は向こうで、理念とか制度の話は部会 でやるのか、そのへんはわかりませんが、今までの経緯を考えまして、お互いに同じこ とを繰り返してやっても仕方がございません。中医協のほうも支払い側と診療側と中立 委員と、この3者構成でやっておりますので、今度の部会はどういう構成になるか知り ませんが、そこのところを十分考えて、議論の重複をさけるために慎重に対応して設置 されたいということをお願いしておきます。以上です。 (貝塚会長) ただいまの点について保険局から何かご意見はありますでしょうか。 (間杉総務課長) ご指摘のように、当時、医保審で高齢者医療制度と診療報酬と2つのテーマが審議さ れまして、そのあと高齢者医療制度については医保審で議論を続けましたが、診療報酬 については中医協に議論の場を移して、具体的な改定をどうするかという話に移ってい ったという経緯であったかと思っております。 そういう意味で私どもも今回、この部会におきましては高齢者医療制度と保険者の再 編統合という2つのテーマを、診療報酬の体系の在り方につきましてはあくまでも中医 協でご議論いただくということで考えておりますが、今のご指摘の点も十分頭に入れま して、議論の重複がないように役割分担をきちっとして議論をしてまいりたいと思って おります。 (貝塚会長) ほかにご質問、ご意見はございませんでしょうか。 (高木委員) 医療保険の関係は負担サイドばかり先行して、改革をするほうがどんどん先送りされ てきた。1996年に1割から2割に負担増があり、その当時からいろんな約束事があった けど、ほとんど今日まで具体的な進捗をみていない。今度は平成20年というと2008年で すか。長いあいだ棚ざらしにしてきて、負担サイドばかり先行させてきた過去をどのよ うにお互いが認識して、今後の医療保険制度の課題を議論していくのか。平成20年度と いうことについても本当に皆さんのコンセンサスになっているのかなってないのか。 我々はこんな遅いタイミングでこういうことが進むなんていうことではないと思ってお りましたが、それが議論のスタートであるというのなら、1日も早く議論をスタートさ せてほしいという意味で、この提議には賛成です。 ただ一つ気に入りませんのは、今の糸氏さんと総務課長のやりとりで、確かに点数は なんぼだという議論は中医協でいろいろおやりなにるんでしょうが、診療報酬にかかわ る制度論みたいなもの、それは本当に中医協だけでいいのかという面があろうかと思い ますので、診療報酬問題は中医協の専科だという間杉さんのお答えはいかがなものかと 思って聞いておりました。 (北村委員) 2000年ごろに向かって新しい医療あるいは産業と結びつくライフサイエンスというこ とで、総合科学技術会議以下日本全体が、厚生労働省も含めて動いていますが、そうい った新しい医療に対する保険診療体系というものを本当に中医協だけでよいのであろう か。国家の問題として新しい医療体系を作るということから、保険点数の個々はもちろ んそうでありますけど、ドクターズフィーの在り方、専門医制度との関連の仕方、ある いは新しい高度先駆的と称せらる医療の取り扱いの在り方、こういったものの体系を考 える組織を、中医協に対して意見を申し上げることができるような組織をぜひとも欲し いというのが、こういう領域にかかわっております者の総意であると考えておりますの で、高木委員が申されたのと同じような方向性を私どもも持っているということを付け 加えさせていただきます。 (京極委員) 間杉総務課長が言われた重点課題として2つ、高齢者医療制度と保険者の再編という のはよくわかりますけど、少子化が非常に進んでまして、次世代育成ということになり ますと、母子保健とか産婦人科の問題とか子どもの病院とか、そういうことについてど う考えるのかということをきちっと考えていく必要があるのではないかと思いますの で、果たして2つの論点だけでいいのか。平成20年度というのは人口が相当減ってる時 期なので、それに向けて考えていく時に、一部不足しているのではないかということで ございます。 (渡辺委員) 私も部会の設置には賛成なんですが、3月28日の閣議決定、つまり「基本方針」とい うのは、昨年の健康保険法の附則の中に盛り込まれた平成14年度末までという話だった り、そのあと更にあれを読むと、2年をめどに具体化、3年をめどに具体化、5年をめ どに具体化、時期を明示しないけど検討するという4つの近い将来改革がある。あの中 には医療保険もあるし医療提供体制もあるし社会保険庁の見直しとか、支払基金の事務 の問題とかあるんだけど、あの2年をめどに、3年をめどに、5年をめどにというのは どうなっちゃったんですか。20年をめどにという再編と高齢者医療は。附則に盛り込ま れた「近い将来に約束した改革」は、この中で議論するんですか。以上です。 (間杉総務課長) いまご指摘がございましたように、再編統合の問題、高齢者医療制度の問題以外に、 附則の中にいくつかございます。医療提供体制につきましても、案ではありますが、省 としての考え方が中間的にとりまとめられました。社会保険庁の改革につきましても、 社会保険庁のほうにプロジェクトもできて、そことも連絡をとりながらやらせていただ いております。徴収事務の一元化とか、医療の情報提供とか、そもそも保険給付の範囲 をどう考えるかといった問題も残っておりますが、私の見るところ、あのスケジューリ ングに沿って走っているのではないか。その全体の受け皿としては、私どもの改革推進 検討本部が受け皿になって、だいたいタイムスケジュールどおり議論が進められている と考えております。 (貝塚会長) 昨年、ここで議論して、あとは行政レベルでいろいろやっていきますという話があり ましたが、やっていく最中にいろんな問題が発生したということと、広い範囲で皆様方 のご意見を伺って、今後の方向性について検討するのが望ましいのではないかというこ とで部会を設置する。先ほど言いましたように具体的な論点は既にあるわけですが、そ れだけにこだわらずに議論するのがいいのではないかというのが私の個人的な意見で す。 それでは、ほかにないようでしたら、部会の設置については、ご了承いただきたいと 思いますが、よろしいでしょうか。 (異議なし) それでは、部会を設置したいと思います。 次に議題2「社会保障に関する制度横断的検討」に移りたいと思います。 事務局から資料の説明をお願いします。 (青柳参事官) お手元に資料2−1、資料2−2という横長の資料をご覧いただきながらご説明させ ていただきたいと存じます。 本日は、「制度横断的な検討」のうち、「社会保障の負担の在り方」についてご議論 いただきたいと存じます。 まず資料2−1の1ページですが、「負担見直しの視点と論点」という全体の鳥瞰図 をつけさせていただいております。負担の問題につきましても、前回ご議論いただきま した給付の在り方に関する議論と同様に、どのような視点に立って負担の見直しを行っ ていくかということを、これまでの制度改革の中で行ってきました様々な取り組みを振 り返る形で概観していただき、これを踏まえて、これまで有識者会議、社会保障改革大 綱において指摘されました事項ごとに、現時点におけるデータを確認しながら論点を整 理するという進め方で資料をまとめました。 負担見直しの視点と論点につきましては、社会構造の変化への対応、経済・財政との バランス、負担の公平性、この3つの視点を立てさせていただきました。 2ページは、第1の視点「社会構造の変化への対応」ですが、ここでは2つの大きな 視点を整理しております。 1つは、人口構造の変化や就業構造の変化に伴う制度の財政基盤の安定化等につい て、どのように対応するか。 2つ目は、地方分権の流れ等を踏まえ、国と地方の役割分担の観点から、どのように 対応していくか。 前者の問題は、一言で申し上げれば、制度を安定化させるために、どのように財政基 盤対策を講じてきたかということに尽きるわけでして、この点は、サラリーマンと自営 業者の制度に二元化をして我が国の医療・年金が皆年金・皆保険体制を構築してきた、 こういうことに大きくかかわった問題です。 しかし高度経済成長における就業構造の変化によって自営業者が大きく減少する一 方、サラリーマンが増大するという形になってきたため、こうした二元化した制度に不 安定な要素が加わってきた。これをどうするかという対応でした。 右側にありますように、医療における老人保健制度の創設、サラリーマンが退職した 場合、当分の間、サラリーマン制度のほうで財政の面倒をみる退職者医療制度、基礎年 金という形で自営業者、サラリーマンにかかわらず、そのOBを現役全体でみる仕組 み、こういった仕組みが随時整備されまして、この問題に対応してきました。 また、低所得者の保険料負担軽減に着目して、国民健康保険制度に都道府県の役割を 位置づける保険基盤安定制度、あるいは制度の分立による財政の不安定化への対応とし ての被用者年金の一元化、こういったことが進められてきました。 2点目の国と地方の役割分担をめぐる問題につきましては、1つは補助率の問題とい うことで、平成に入りましてただちに、従来の議論を踏まえて、国と地方の事務の見直 しに伴って補助率の整備をするという議論の整理が行われました。 その後、今日に至るまで継続して一般財源化、すなわち事務のうち、その事務が定着 した事務につきましては国が補助金等により財源を補填するのではなく、地方の自主財 源によりこの財源を賄っていくという一般財源化が漸次進められておりまして、ここに は母子保健関係の一般財源化の例を載せております。 ここには書いてありませんが、国と地方の仕事の分担につきましては、地方分権推進 法による法定受託事務と自治事務という2つの大きな分類のもとに事務が整理されてお ります。 3ページは、第2の視点「経済・財政とのバランス」についてですが、この中でも2 つの視点に整理しています。 1つは、経済基調が低成長へと変化する中で、経済活力を維持するなどの視点から、 どのように対応していくか。 2つ目は、経済の伸びを上回る公的給付の伸びにどのように対応していくか。 この点につきましては、保険料の負担上限をどう考えるかということで、厚生年金の 最終的な保険料を年収の2割程度に抑制するという平成12年改正の考え方、また、次期 年金制度の改正においては保険料固定方式という具体的な提案がなされています。 また、高齢者医療の後期高齢者への重点化ということで、対象年齢と公費負担割合の 引上げという試みもされております。 4ページは、第3の視点「負担の公平化」について整理しておりますが、この中にも 2つの大きな視点があります。 1つは、急激な少子高齢化が進行する中で、世代間の公平性を図る観点から、どのよ うに対応していくか。 2つ目は、所得や資産を有する者や低所得者の負担の在り方、給付を受ける者と受け ない者とのバランスなどの観点から、どのように対応していくか。 これまでの取り組みとしては、高齢者医療における患者負担の見直しということで、 定率1割負担を導入し、これを徹底してきたという流れがあります。 高額療養費制度において上位所得者というのを区分して、その負担を求めるようにし てきた経緯、その他の経緯が述べられています。これらについては後ほど論点の整理を する中で具体的なデータに基づいてご説明申し上げ、議論を深めていただくようにした いと考えております。 続きまして5ページですが、ここからは、各論点に基づいて、これまで主な指摘がさ れてきた点について、データを見ながらの検証という作業になります。 まず5ページは「経済・財政とのバランス、世代間の公平性の確保等の観点を踏まえ と今後の社会保証負担の在り方」という点です。 これまでの主な指摘として、若い世代において社会保障制度の持続可能性や将来の負 担増に対する懸念が強くなってきており、特に現役世代の負担が過重なものとならず、 経済・財政と均衡のとれたものとすることが必要という指摘が大綱の中でなされていま す。 この点につきましては資料2−2の1ページをご覧いただきたいと存じます。ここで は「社会保障の給付と負担の将来見通し」について数字を整理しております。これは昨 年5月、新人口推計に基づいて、平成12年10月に推計した社会保障の給付と負担の見通 しを改定したものです。その場合の前提は、3ページに経済前提、人口推計等の前提を すべて計算してありますので、ご参照いただきたいと存じます。 1ページでは、社会保障給付費は、対国民所得比で申しますと、2002年ベースで22 1/2 %であったものが、2025年には32 1/2と約10%ポイント増大します。これに伴って社会 保障の負担も10%ポイント程度増大しているという結論です。 1ページは基礎年金の国庫負担割合が1/3 の場合、2ページは1/2 の場合で計算して います。国庫負担の変化というのは、負担の内訳で保険料負担、公費負担それぞれの内 訳が変更されるということですが、その変化の大きさは1%ポイント程度の増減という 形になています。 これだけですと変化の大きさがわかりにくい点がありますので、資料2−2の4ペー ジに、昨年の暮れに公表されました「年金の方向性と論点」で示された保険料固定方 式、給付水準維持方式によってどのくらい違いが出てくるかという新しい情報を付加し ております。 保険料固定方式をとった場合は、更に1%ポイント程度の給付費、あるいは負担にお ける減少が見込まれるのではないかという結論であろうかと存じます。 いずれにしても2025年時点においては、社会保障の負担の見通しに対して改革を行っ た場合にも、そう急激な変化はなかなか生じにくいということを結論として申し上げざ るを得ないかなと存じております。 4ページの表において「14年5月推計」と「方向性と論点」との間でいくつか状況の 変化がありまして、注で述べております。そのうち一番大きなものが注2ですが、厚生 年金基金の代行返上に伴って基金の給付が全体として減ったことによって、給付水準が 維持された場合であっても給付費の減が生じているということを述べております。1/2 %ポイント程度の減かなと見込んでおります。 注3に書いておりますのは、14年5月段階までの推計方式における保険料の上げ方 と、去年12月の「方向性と論点」における保険料の上げのスケジュールが若干違ってい ることによって数字に違いが生じてきている。基礎年金国庫負担1/3 の場合で給付水準 維持方式であっても保険料負担が小さくなっているのは、昨年12月の「方向性と論点」 の段階ではこれから保険料が上がる過程にある部分、つまり将来保険料が上がる部分が 25年時点に反映されてないということから保険料負担が小さくなっているというふうに ご覧いただきたいと存じます。 資料2−2の5ページは「2025年度以降における給付の負担(イメージ)」という図 を示しています。 年金については現状維持方式と保険料固定方式で大きく違いが出てくるということは 年金部会等の資料で明らかになっています。社会保障負担に影響を与える要因として、 年金制度の場合は人口変動要因が大きな要素を占めますし、経済見通しの変化による影 響も大きいと考えられます。医療保険、介護保険につきましては、技術進歩、疾病構造 等の変化など別の要素によっても大きく影響が生じてくることから、長期の影響を見通 しがたいという条件があります。これらの要因を社会保障制度の中で工夫をしながら、 少しでも適正化することによって社会保障負担を軽減することができるということにな ります。 特に社会保障の場合は負担の裏側に給付がありますので、社会保障給付の中で人口要 因に影響を与えることができるような工夫、具体的には次世代育成支援、少子化対策が 講じられることによって、出生率の変化に対して影響を与えることがある程度可能では ないだろうか。合計特殊出生率の低下傾向に少しでもブレーキをかけることができれ ば、2025年以降、すなわち今後生まれてくる世代が漸次生産年齢人口に達するような時 代以降、よい影響を社会保障に及ぼすことが可能であろうと見ることもできます。 経済見通しの変化の中では、特に働き方の問題について、障害者、高齢者、女性など がより働きやすくなる仕組みを講じる。若年の失業者が大きな問題になっていますが、 これが働き方の見直しにより生産活動の結びつくような工夫を講じるころができれば経 済見通しにもよい影響を与えることができるだろう。 そういうことを見込んでいきますと、2025年段階における社会保障負担、給付に対し て大きくブレーキをかけることが、2025年以降の様々な要因に悪影響を与えることも心 配しなければならないのではないか。いずれにしても、給付とその裏側の負担をセット で考えていくことが必要ではないかということを5ページの絵から読み取っていただけ ればと考える次第でございます。 資料2−1の5ページに戻りまして、(参考2)(参考3)と書いてあるところです が、いま申し上げたことを資料2−2の6ページ以降で述べさせていただきます。 まず資料2−2の6ページは「被用者の社会保険料率の国際比較」ですが、ただいま 申し上げましたマクロの予測をサラリーマンの保険料率に置き換えてみたものです。 これまでの議論では、この図の中の2番目の「日本の2025年推計」がない図でご紹介 してきましたが、左から2番目の図が加わっています。2025年段階ではサラリーマンの 社会保険料率は、基礎年金国庫負担1/2 の場合36.4%となりまして、基礎年金国庫負担 1/3 の場合の38.8%で見ても、現在のフランス、ドイツよりは低い保険料率になるので はないかと見込まれます。 前々回、中村委員から、国民がどのように負担の問題をとらえているか紹介してほし いという宿題がありました。遅れておりましたが、7ページの「社会保障制度に関する 意識調査」という形でご紹介させていただきたいと存じます。 内閣府国民生活局が行っています国民生活選考度調査におきましても、私どもが平成 12年に行いました意識調査におきましても、西暦2000年あたりを境に一段と負担が高く なるのはやむを得ないとする意見が減少しておりまして、負担増を好ましくないと考え る方の割合が増加している傾向が見てとれるかと思います。 1990年代の初めのころはバブルの影響もあってか負担に関して国民が鷹揚であった部 分もあるのかもしれませんが、最近の景気の低迷と負担増を反映して、国民の負担に対 する意識が厳しくなっていることがこの調査から見てとれるのではないかと理解してお ります。 資料2−1の5ページの下をご覧いただきますと、持続可能なシステムを構築するた めには、より世代間に公平なものとしていく努力が必要という指摘が有識者会議でなさ れています。 これにつきましては、資料2−2の8ページに「世代別の保険料率の比較」という資 料を載せております。保険料は変化していて難しいところがありますので、10年刻み で、例えば1930年生まれの方が40歳時点において負担していた保険料率を年金、医療保 険等について合計してみました。 1970年度における各制度の保険料率を計算したものが左側にありますが、合計して 5.07%というのがサラリーマンの平均的な保険料率でした。 その10年後の1940年生まれの方が40歳になった時点、すなわち1980年度における制度 的保険料率は8.13%になっています。 その10年後の1950年生まれの方が40歳になった1990年度における保険料率は9.72、60 年生まれの方が40歳になった2000年度における保険料率は11.38 、1985年生まれの方が 40歳になる2025年度における保険料率は18.2%と見込まれています。 このように40歳時点で各世代を比較しても保険料率の負担が次第に高まってきている ことが読みとれますが、それがどのような生活水準の中で負担されてきたかということ を見てみたいということで、右側に家計支出に占める基礎的消費割合の推移の図を示し ています。これは食費をはじめとする生活必需的支出の大きさの推移ということです。 1970年度は1930年生まれの方が40歳になっていますが、この時点ではおよそ4割が生 活必需品への支出で、生活の中で自由に支出できるものは残りの6割だった。こういう ものとの比重で6.07%という保険料率が負担されていたということです。 10年後の1980年には生活必需的支出は3割程度に縮まり、7割が自由になる中で8% の負担をしていただいた。1990年には25%まで低下していますから、75%が自由になる 支出の中で9%の負担をしていただいた。2000年には生活必需支出が2割程度に下がり ますので、8割が自由になる支出の中で11%の保険料負担をしていただいた。こういう ことで負担をしていただいておりますので、家計支出の構造の違いによる負担というも のを十分念頭を置きながら公平論議をしていただく必要があろうと考えております。 続きまして資料2−1の6ページは「社会保障を賄うための利用者負担、保険料負担 と税負担の適切な組合わせ」ですが、負担をどのように組み合わせるかということで す。 資料2−2の9ページに「ライフサイクルにおける負担」を整理しております。この 資料は、第10回の審議会に提出した「ライフサイクルでみた社会保険及び保育・教育等 サービスの給付と負担」のうち、負担部分のみを取り出したものです。 負担につきましては、働き盛りの時に直接税を中心として大きな負担をしていただ き、高齢期には直接税の負担が軽減されている。医療保険、介護保険の保険料、介護や 医療の自己負担については高齢期も引き続き負担をしていただいてることに比べて、直 接税を含めた負担の総体については働き盛りの時と年をとった時では大きな違いが出 る。 この間、所得の大きさの違いがありますので、負担が働き盛りのところに集中すると いうのは日本の賃金構造なり年金と賃金との水準バランスという点から不可避であると いうことは言えるものの、その場合であっても高齢期に軽減される負担をみた場合、全 体のライフサイクルを通じて特定の時期に過重な負担なならないような負担の平準化と いう観点から負担の問題をみていくことが必要ではないかという問題提起をさせていた だければと存じます。 我が国の社会保障制度は社会保険を中心に公費がこれを補完する制度になっています ので、次の10ヘージでは「年金、医療、介護における公費負担」について整理をしてお ります。これまで様々な経緯の中でそれぞれの負担割合が定まっているということがあ りまして、確定的なルールは確立しておりませんが、近年、介護保険、老人医療等につ いて議論が整理されつつあるということを、この表の中からお酌み取りいただければと 思います。 次の11ページでは「諸外国における社会保障財源をめぐる近年の傾向」を示していま す。ドイツ、フランスは日本以上に社会保険料中心ということでして、公費の負担割合 が比較的少ない国であると理解されてきました。一方、ドイツ、フランスは高齢化につ いては既にかなりのレベルに達しており、社会保険料の負担水準についても20%程度に 引き上げれいる状況であると聞いております。 そういう高い保険料水準を実現しているドイツにおいては、近年、付加価値税の引上 げや環境税改革によって、年金財源等に国庫負担を投入するという動きが出てきていま す。 フランスにおいてはCSGという一般社会拠出金の創設によって同様に公費負担割合 を高めるという動きが出てきております。 アメリカにおいては年金課税の実施という別の形で財源の確保が図られているという ことを紹介させていただきたいと存じます。 いずれにしましても、これらの諸外国においては既に保険料財源が相当の水準になっ ているということを十分に配慮してこの情報を理解しなければならないと考えておりま す。 再び資料2−1の6ページに戻っていただきますが、将来世代の負担を過重なものと しないために、現在行われている年金保険料の引上げの凍結を早期に解除することが必 要であるという指摘が有識者会議や大綱でもなされております。 一方、公費負担の問題について私どもはどのように考えていったらいいかということ ですが、従来、有識者会議等においても財政全体との関係の中で検討する必要があると いう問題提起がなされております。 そこで資料2−2の12ページ、「国民負担率の推移」という形で、財政全体の中にお ける社会保障負担の姿を整理しております。 財政全体の中で社会保障の負担等を考える場合、国民負担率という概念が用いられて います。これは国税、一般会計税収、地方税など税収入のトータルと社会保障負担(保 険料負担)が国民所得に対してどのような大きさを占めるかということをパーセンテー ジで示したものです。 臨調行革の中で国民負担率論が昭和52年ごろから具体的に提起されております。その 経緯は13ページに簡単に紹介してありますので、ご参照いただければと存じます。数字 だけを追いかけますと、昭和57年ごろから平成の初めにかけてこの値は30%台を徐々に 上昇する傾向にありましたが、平成に入ってからは36〜37%程度で推移しております。 国民負担率は定義の関係から、国民所得が大きく伸びた時には税負担や社会保障負担 が変化しなくても、国民負担率そのものは下がるということで、年によって変動する傾 向があるわけですが、平成の間で申し上げれば、国民負担率が36〜37%程度で比較的安 定していたのに比べて、財政赤字が一貫して増大していったという傾向があります。 従って、近年、国民負担率に加えて潜在的負担率、すなわち国民負担率の負担に財政赤 字の国民所得に対する負担を加え合わせたものでみますと、潜在的国民負担率が一貫し て40%台を上昇して、やがて50%台に近づかんとしています。 潜在的国民負担率を抑制的に考えるべきではないかということで、14ページですが、 先だって経済財政諮問会議に民間議員の提出資料ということで、内閣府が事務局として 機械的に計算した「マクロ経済と年金改革等に関する国民負担率の試算」が提起されて います。 この試算によりますと、年金制度等について現状を維持した場合、潜在的国民負担率 が2025年には60%を超えるのではないか。年金は保険料固定方式で抑制した場合でも、 かろうじて60%を下回る程度であり、かなり高い潜在的国民負担率が予想される。 これに対して様々な改革が実施され、右の注2に説明がありますが、年金以外の社会 保障、医療、介護等について、高齢化による増加を半分程度に抑制した場合等々、改革 を行いますと、潜在的国民負担率が50%台の前半になるのではないか。このような試算 が示されています。 経済財政諮問会議でも、これからただちに数値目標など結論を導くものではないとい う註釈がありましたが、潜在的国民負担率を一つの目標として社会保障についての総体 的負担を軽減すべきではないかという議論の流れが生じてきていと理解しております。 厚生労働省は厚生省の時代から国民負担率の議論そのものについては、なんらかの財 政規律が必要であるということから、政府全体の方針として国民負担率を50%台以下に 抑制しようということで様々な社会保障改革を行ってきました。 今後、この問題をどのように考えるかということは先生方にもご議論いただきたいと ころですが、何よりも社会保障の場合には負担の裏付けとしての給付があることを考え なければならないだろう。社会保障に必要な負担は何かということを国民負担率なり潜 在的国民負担率全体の中にまぶしてしまって考えるのがよいのか、社会保障については 税がこれだけ、保険料がこれだけ必要、その分は保険料の引上げあるいは増税というこ とも含めて国民に提示し、それだけの負担をするなら給付を下げるべきだとか、これだ けの給付のためにはこれだけの負担はしょうがないとか、こういうことが明示的にわか るような形でお示しをして、選択をしていただくという形が議論としては必要ではない かと現時点では私どもは考えている次第です。 場合によっては増税をお願いしてなどということを申し上げてしまいましたが、社会 保障の中で税をどう考えるかということをきちんとしていただこうということで、15ペ ージ以下で、いくつかの論点の整理をさせていただいております。 まず15ページでは「社会保障制度・政策との関係からみた税制」ということで、いく つかの論点を整理しております。 社会保障にとって税は財源であるという意味で大きな役割をもっているわけですが、 同時に様々な形で社会保障の給付と負担を別の形で規定しているということがありま す。 具体的には、各種手当を支給する場合、所得制限という中で、課税最低限とか課税所 得いくらということを支給基準に用いているケースがあります。従って、所得税の増税 をする中で課税最低限の見直しという選択がとられた場合、各種手当についても支給が 制約されることが当然出てきます。それをどうするかという判断が必要になってきま す。 同じことが国民健康保険の所得割保険料の基準、介護保険料の賦課基準に用いられて いるという意味で、増税は増税にとどまらず、保険料の負担増を意味するという問題点 もあります。 また、最近は医療保険についても患者負担を決めるのに低所得であるかどうかという 課税の基準等が用いられるようになってきました。市町村民税の非課税基準世帯など は、これまでも様々な福祉サービスの利用者負担を決める場合の低所得者の範囲を決め る数字として用いられてきました。こういった利用者負担の増になるという作用もあり ます。 別の観点として、各種手当と税における各種控除の機能の重複ということで、昔らか 指摘がありますのが、児童手当の給付と扶養控除等の機能の重複をどう整理するかとい う問題もあります。 社会保障政策においては様々な税制上の優遇措置がとられています。一例をあげます と医療費控除という形で、医療保険の患者負担が増大した場合の患者負担分とか、保険 の対象にはならないが医療費として必要なものを負担軽減する場合に用いられていると いうことがあります。こういうものについても医療費控除の範囲をどうするか、水準を どうするかということによって患者の負担が決まってくるという効果もあります。 そういう形で様々な負担が増大して、控除という形で負担軽減になりますと、逆に所 得税のほうの賦課基準が小さくなって税額が縮まることになりますので、税の基準、保 険料の基準、患者の負担、これらが適切に組み合わせができないと、結局、モグラたた きをどこかに押しつけて、できるわけではないという関係が相互の関係としてあるとい うことです。 16ページは「課税のメリット・デメリット」を示しています。従来、税として財源さ え確保されれば社会保障の中でどの税がよい、どの税が悪いなどという議論はしてはな らないということで私どもも自制してきましたが、増税ということであれば、どういう 税をとった場合、社会保障にどういう影響があるかということを十分認識してご議論い ただく必要があるということで整理をしたものです。 所得課税は「垂直的公平」の確保に資するという点がありますが、逆にいえば、課税 ベースの把握に差が生ずるのではないか。勤労者に重い課税になることが予想されるた めに勤労意欲、就業意欲を阻害するのではないか。景気が変動した場合に税収の変動が 多いということが法人税ではいえるのではないかという指摘がされています。ただ、 国、地方の税収全体の中で所得課税が5割以上を占めているという意味で、大宗を占め る課税になっているという点は十分に認識しながら考えるべき問題ではないかと承知し ております。 消費課税については全体の税収入の中で30%程度の税収になっていますが、課税ベー スが広くて安定的な税収の確保が可能という反面、逆進性の問題があるということがよ くいわれております。また、経済力が同等の人々には同等の負担を求める「水平的公平 」に優れ、「世代間の公平」に資するといわれますが、子育て最中の子どもが多い勤労 世帯に対しては大きな負担を求めるのではないか。年金生活者に対しては物価スライド という仕組みをうまく工夫しないと、消費税の増税分がそのまま物価の上昇分に転嫁さ れた分は高齢者は負担を免れないのではないか。このような問題も専門家の間で議論さ れています。 資産課税については、社会保障の充実による老後扶養の社会化と相続による資産の私 的移転とのバランスを図る上で今後の検討課題であると認識しておりますが、捕捉の困 難さ等の面でまだまだ技術的に問題のあるものであると承知しております。 最近、税で具体的に出ている問題としてご紹介させていただきたいと思いますのは公 的年金等控除と消費税の問題です。 17ページに「公的年金等控除について」の資料がありますが、65歳未満の方に適用さ れている部分は、給与所得控除の場合と負担のバランスにおいてそう大きな違いはない ということがあります。65歳以上の方に適用されている公的年金等控除は、定額控除の 大きさの違い、最低保障額の違いを反映して、給与所得控除の場合に比べて大きな軽減 になっているという点があります。この点を将来どう考えていくかということが大きな 課題ということで、18ページには様々な審議会等における見直し議論を紹介しておりま すので、ご参照いただきたいと存じます。 19ページは「消費税と社会保障」の関係です。この点につきましては現在でも各年度 の予算総則において基礎年金、老人医療、介護に要する経費に消費税分があてられると いうことが規定されております。消費税については現在の与党の枠組が成立した時の合 意の一環として、そういうルールが確立しているわけです。 しかし現実の基礎年金、老人医療、介護の歳出の大きさが消費税の税収を大きく上回 っている状況にありますので、充当するといっても足らずまいが生じているというのが 現実の財政の仕組みとなっています。 財政全体の状況については20ページに税収の構成を紹介しておりますので、ご参照い ただければと存じます。 ただいま税の仕組みの話に踏み込んで、あたかも増税を示唆するかのような議論を紹 介させていただきましたが、この問題を考える時に社会保障においては低所得者の問 題、高齢者の資産の保有状況も慎重にみなければならないだろうということで、資料2 −1の7ページで「低所得者、高所得者の負担の在り方」を紹介しております。具体の データは資料2−2の21ページ以降に掲載しております。 まず21ページは「国民生活調査からみた低所得者の現状」です。 世帯主の年齢をご覧いただきますと、所得第I四分位、つまり低所得の方は半数近く が65歳以上でして、高齢者になりますとフローの所得は低所得ということになっている ということがご覧いただけようかと思います。 次に世帯構造という形で見てみますと、第I四分位は女単独世帯が34%、男単独世帯 が15%ということで、高齢者の単独世帯が相当部分を占めているのかなということが見 てとれます。それと同時に「1人親と未婚の子のみ」が9%という部分が全体平均に比 べて大きいパーセンテージだなということが見てとれますので、母子家庭と単独高齢者 世帯を丁寧に見なければならないのかなということがわかるわけです。 そこで22ページ、主たる所得の種類のところでは、そういうところも配慮して状況を みています。 第I四分位全体で見ますと、稼働所得38%に対して公的年金・恩給は49%となってい ますが、高齢者が多いということで所得も年金所得という実情が見えてきます。 高齢者世帯においては81%の方が年金等ですので、年金に依存した生活ということで す。 母子世帯のところで見ますと、81%が稼働所得ということで、母子世帯でも母親が頑 張っておられることが見てとれます。 右側の住居の種類では、全体平均でいえば持ち家が7割となっていますが、第I四分 位でも57%です。年金生活者は持ち家比率が高いということもあってか、そう持ち家が 少ないということでもない。ただし、民間賃貸が平均に比べて27%ということで多くな っています。ということは、高齢者の中でも母子世帯の中でも民間の賃貸住宅で暮らし ている方がかなり多いのではないかということが容易に想像できるかと存じます。 23ページは貯蓄額ですが、これは丁寧に見てみました。 第I四分位の中では貯蓄がないという方が2割を占めていまして、全体平均に比べて 大きくなっていますが、1000万以上の貯蓄がある方も11%あります。 第I四分位の中で男単独、女単独世帯で見ますと、貯金がない、低額の貯金しかない という方がけっこう多く、特に男の方に多い。女性の場合は、年金生活をしていて夫が 先に亡くなって、相続等があるということも反映してか、女単独の場合は13%の方が 1000万円以上の貯蓄があるということです。 高齢者世帯で見てみますと、300 万円未満の所得額の方だけをとってみても、貯蓄が ないという方は16%ということで、1000万円以上の貯蓄がある方が15%になっていま す。しかし母子世代の場合には貯蓄がないという方が25%、あっても100 万円未満の方 が25%ですから、「なし」と「100 万円未満」を合わせると50%の方はほとんど蓄えが ないというのが母子世帯の現状かと存じます。 第I四分位で住宅の種類ごとで見てみた場合にも、持ち家のある方で貯蓄がないとい う方は少なくて、1000万以上の貯蓄ありが16%。民間賃貸の場合は貯蓄なしが31%、 あっても100 万未満が29%ということで、貯蓄額が大変少ない。給与住宅・公団等の場 合にも貯蓄が比較的少ない方が大宗を占めているという傾向になっています。 このような傾向は低所得の中でも、その傾向がより顕著に出ると思われる生活保護世 帯の場合には更に顕著ではないかと思います。そこで24ページ、25ページは、生活保護 世帯の様々な特性のうち、保護を開始した理由と保護が外れた理由がなんであるかとい うことを調べたものです。 24ページは、まず保護を開始した理由ですが、年齢別にみた場合、どの年齢階層にお いても「傷病による」という割合が高くなっています。 しかし高齢者の場合は「働きによる収入の減少・喪失」ということで、その方々が十 分に年金を受けられる状況でなければ生活保護になるということではないかとみており ます。また、高齢者世帯の場合は「貯金等の減少・喪失」というウエイトが15.9と高く なっていますので、蓄えがなくなったところで生活保護になるという傾向を見てとるこ とができます。 25ページ、保護を廃止した理由をみますと、「傷病の治癒」ということもあります が、若い世代では「働きによる収入の増加」により保護を脱出したという方が多いの で、生活保護からの脱却のためには働き口をうまく見つけて、そこに結びつけることが 脱却の早道ということになります。60歳以上の高齢者の場合は働き口を見つけることは 難しいので、亡くなられるまで半分ぐらいの方が生活保護を脱却てきないということが 示されています。 26ページからは、生活保護を中心に所得に応じた保険料や利用者負担がどうなってい るかということで、生活保護と社会保障の関係を整理しています。 まず26ページは生活保護者に対する取扱いですが、年金については、生活保護を受け る場合には保険料の負担は免除する。給付は、免除期間に応じた部分が国庫負担3分の 1に応じて給付されるということになります。 医療の場合は国民健康保険から外れる形で医療扶助を受ける。被保険者にもしないし 給付も行わないということになっています。 介護の場合は、生活保護の方も被保険者にする。そのために必要な保険料は生活保護 の中から払い、給付を受けた場合の自己負担の部分は生活保護の中から給付をするとい う形で、介護保険の制度を前提に、負担できない部分を生活保護が補完するという関係 になっています。 27ページは利用者負担の取扱いについて医療、介護の場合を整理してありますが、ご 参照いただければと存じます。 28ページは「高齢者世帯の資産保有状況」を整理しています。 左の図は所得階層別の貯蓄状況ですが、フローの所得が200 万円ぐらいしかないよう な方でも2000万円を超える資産があって、15%近くの方が1000万円以上の貯蓄を持って います。フローの所得が大きい方は貯蓄も大きいんですが、フローの所得が少ない方で もけっこう貯蓄はお持ちだなということが見てとれると思います。 右は所得階層別の持ち家率のグラフですが、全世帯の持ち家率に比べて65歳以上の単 身・夫婦ともにフロー所得が少ない方であっても持ち家は6割以上の方がお持ちであ り、フローの所得が多くなれば持ち家率は8割、9割を超えてくるという状況が見てと れます。高齢者の場合はそれなりの貯蓄、持ち家ということを前提に物を考えてもよい のではないかということがここから見えてくるわけです。 29ページは、そういった高齢者の特性に着目してリバースモーゲージという形で取り 組んでいる例として武蔵野市の福祉公社について書いています。この仕組みは30ページ に紹介してありますので詳しい仕組みは割愛させていただきますが、このような仕掛け を利用しつつも、不動産価格の下落とか、長生き等によって担保切れになるというリス クが生じること、そういうリスクをうまく分散する仕組みが難しいこと等の理由から利 用件数がそれほど伸びないというのが悩みの種となっています。 31ページですが、低所得の方についても持ち家等を利用した同じような仕組みがとれ ないかということで、全国社会福祉協議会が音頭をとって、各都道府県の社会福祉協議 会が実施主体となって、長期生活支援基金ということで、居住用の不動産を担保にして 一定の生活資金が貸付けできるような仕組みが4月から実施に移されております。 以上、時間が超過いたしましたが、負担について私どもが用意いたしました資料につ いてご説明させていただきました。 (貝塚会長) ありがとうございました。社会保障をめぐる広い角度から、主として統計を使って、 将来の見通しも含めて調べていただきまして、ご苦労の多い資料であったかと思いま す。 ただいまの説明にもありましたように、本日は「社会保障の負担の在り方」につい て、ご議論いただきたいと思います。 それでは、ご意見、ご質問等がございましたら、お願いいたします。 (渡辺委員) 資料2−1のほうは総論的なことがよくまとまっていると思います。2ページの「社 会構造の変化への対応」、これも結構なんですが、その下のほうに「地方分権の流れ等 を踏まえ、国と地方の役割分担の観点から、どのように対応していくのか」とありま す。これは大変重要な視点だと思うんですが、これまで、ここにおける議論はあまり多 くなかったような気がするんですね。小泉内閣のほうでも三位一体議論が出てきてます し、その中でも社会保障に関して幼保一元化に伴う一般財源化といったことも具体的議 論が出ているということでありますので、当審議会としても何らかの考えをまとめる必 要があるのかなという気がします。 役割分担という観点から言いますと、北欧諸国を見ると、国が年金だけをやって医療 は県がやる。市町村が福祉をやる。その姿はベストかどうかは別として、そういった役 割分担が見事に行われているわけです。 冒頭の話にも関連しますが、閣議決定として医療保険の統合再編ということが打ち出 されて、国民健康保険も都道府県単位を軸とする、政管健保も国から都道府県単位を軸 とするという考え方が打ち出されていますので、医療保険が都道府県単位ということに なるのだったら、医療の在り方も、今は2次医療圏という考え方がありますが、地域、 都道府県といった考え方もあってもいいのではないか。3年前の介護保険も市町村が保 険者になったことを考えますと、我が国でも介護の部分の市町村の役割が非常に大きい わけですので、そういったことの議論、あるいは今後なんらかの意見書をまとめていく 上でこのへんの議論をもう少し詰める必要があるのではないか。以上です。 (浅野委員) そういう議論が出ると私も言わなくてはいけないんですが、今の2ページの「地方分 権の流れ等を踏まえ、国と地方の役割分担をどうしていくのか」。これはクエスチョン マークをつけてるんですけど、意味がよくわからないというのと、この点に関して言う と、一般財源化ということがあります。 知事の立場で考えると、一般財源化は基本的には賛成なんですね。一般財源化のアン チテーゼは何かというと補助金ですから、我々はひもつきの縦割りのガチガチに使い方 が限られている補助金は廃止せよ、役割が終わったものは廃止せよと言ってます。それ に対して一般財源化、これは結構なことだ、大歓迎ということなんですが、我々知事と してごく最近、ほぞをかんだことがあります。この分野ではないんですが、義務教育国 庫負担金の廃止です。いま義務教育の国庫負担金が3兆円あるんですね。基本的に教職 員の給与です。これを廃止して、国から地方へ財源移譲する。5.5 兆円という提示が あったんですが、所得税関係と消費税を1%分地方に回すことによって生み出す財源を 移譲して、義務教育国庫負担金3兆円を廃止という方向を言ってきました。 昨年12月末の予算編成の際に、これがいいとこ取りをされた。我々からいったら悪い とこ取りされたわけですが、3兆円はできないよ、2,300 億だけ廃止しましょうと。 2,300億というのは何かというと、教職員の共済掛金なんですね。共済掛金というのは 判断の余地がない。これは払わなくてはいけないわけです。教職員の給与ですと給与水 準をどうするかとか、配置をどうするかということの自由度も出てくるわけですが、共 済掛金の場合はそういうところがありません。2,300 億円を廃止して、交付税に移す。 その場合、8分の1削られました。 ということで、補助金、負担金廃止の1丁目1番地で我々は大敗北をしたんですね。 やらずぼったくりという下品な言葉を使った人がいました。私ですけど。我々の間では 一般財源化というマジックワードが眉につばをつけて言われるようになってきました。 それがまた出てきたわけです。例として、平成9年〜12年の乳幼児健康審査とあります けど、もう一つ例がありましたね。支援費制度が始まる時にコーディネーター費用とい うのを一般財源化する。これは不思議なことに、地方分権をしてくれと騒いでいた地方 が一般財源化反対という挙に出たわけです。これは中身を見ればわかるんですが、一般 財源化して全部に財源を均てんするのではなくて、たまたまやってるところだけ、それ でいくぶんやれるということです。 言いたいことは、一般財源化ということを言う時に、我々も眉につばをつけますけ ど、本当の意味での一般財源化をしないと、単なる補助金の削減、やらずぼったくりに なりかねないということを注意しなくてはいかんということです。そういうことを考え てしっかりとやった中では、渡辺委員がおっしゃったように、いろんな社会保障の仕組 みの中で役割分担ですね。特に福祉なんていうのは市町村でやるというのが介護保険で 始まりましたけど、重要な案件です。ただ一つだけ言うと、これは市町村合併の問題と かかわってくるわけで、山本委員もいらっしゃいますが、簡単に言うと役場の能力、行 政能力の関数でありまして、足腰が強い町村役場の力がないと、事業をやるというのは 行政サービを受ける側にとって本当にプラスなのかマイナスなのかということが見極め がつかないということも考えておくべきだと思います。 違う点をもう一つ。2−2のほうの14ページに「マクロ経済と年金改革等に関する国 民負担率の試算」というのがあります。IからVまでの類型があるんですが、これからの 社会保障の問題というのは、大きな政府を作るか小さな政府を作るかというのに近い話 です。そうしますと、最近ちょっと話題になっております政治、選挙におけるマニフェ ストの問題というのが想起されるわけです。政治を担っている与党なら与党がこの中か ら1つを選んで、我々が政権をとればこういうことでやりますということを提示して選 挙に臨む。野党は野党で、III類型ではなくてI類型でいくんだという形で、わかりやす く誠実に、その政策を実現するための、まさに給付と負担を明示し、それを実現してい くためのタイムスケジュールを伴ったものを出して選挙を戦う。選挙の論点はこれだけ じゃないんですが、出したことに意味があって、それも選挙のマニフェストの中に入っ ていれば、それを自信をもってやらせてもらうということにつながるんだと思います。 今のところはこういうマニフェストが社会保障に関して明確に出されていません。 従って、政権与党も政権をとった後においても自信をもって国民に表面上は苦い薬を飲 ませるようなことができないということになってるわけですが、これを見てもわかりま すように、これからは誰にとっても飲みやすい薬だけでは対処できないということが明 らかです。社会保障審議会の役割とは外れるとは思いますが、マニフェストの問題とい うか、これは政治の課題であるということを認識する必要があると思います。 社会保障審議会の役割は、こういった資料の正しさを検証するということがあると思 います。資料の出し方によっていろんな細工ができる部分もありますし、何よりも一般 国民が理解しうるという段階まで下ろしていかなくてはいけないわけですが、今日聞い てもよくわからない。説明者が悪いんじゃなくて聞くほうも悪いのかもしれませんが、 非常に難しいんですね。単純化してわかりやすくして、政治の課題として出していくと いう時代が我々は避けられないのではないか。これは感想でございます。 (岩田委員) 負担もいろいろなレベルがあるものですから大変複雑だなと思って伺ったんですが、 その中で特に垂直的公平と言いますか、低所得者をどうするかということについて大変 詳しい資料を出していただきましてありがとうございました。その時の税金の果たす役 割なんですが、どのくらい出すかということについては、例えば年金の3分の1か2分 の1かという議論があると思います。もう一つの議論としては、今日もちょっと触れら れているように、どういう出し方をするかということがあると思うんですね。特に社会 保険の中に税金を投入する時の投入の仕方ですね。基礎年金の給付部分の3分の1なり 2分の1なりを国庫がみるというやり方がいいのかどうかということが一つ出てくるだ ろうと思うんですね。額は同じでも効果的な税金の役割というのがあり得るかもしれな いという考え方です。 例えば年金を20年間納めたけど、最後の5年間は納められなくて給付権がないという 人がいるわけです。その場合、第3号被保険者のような形で、保険料を払ってなくて も、給付だけじゃなくて国庫負担の税金の3分の1の恩恵にあずかれる人もいるわけで す。ところが払わなかった人は自分の保険料のための失敗だけじゃなくて税金の部分も 返ってこないというか、そういう非常に大きな不公平が税金のところでできてくる。保 険制度ですから払わなければ出てこないよというのは当然なんですが、そこに国庫負担 が一律に入ってしまいますと、その税金はどうなのかという素朴な疑問が出てくるので はないかと私は思うんですね。 私の考え方は、やり方としては介護扶助のような考え方があると思います。扶助と保 険をセットにもってくるというやり方です。ただ、今の生活保護は、さっきご報告いた だいたように高齢層と単身世帯に収斂してしまいましたので、小さくなりすぎです。こ こに出ている資料の国民生活基礎調査の所得のとらえ方が、これは世帯所得でとってら っしゃると思うので、世帯構成と人数で所得調整をしてみないと本当の低所得の姿はわ からないわけです。ですから単身や母子のところに重く出るんですが、実際は子どもが いる核家族世帯だって低所得を上下していくということは実際にはかなりある。私の試 算ではそういうふうに出てくるわけです。 いろんな公平があり得るわけですが、現在の考え方では、ライフサイクル的な平準化 というのが中心になっていまして、そこにもう一つ、所得階層的な垂直的な公平やグル ープ間の水平的な公平の問題が出てきます。保険というのは払うということとセットで 給付が出てきますから合理的に受け入れられやすいんですが、税金というのは消費税も 含めて国民がみんな払うわけですから、そういう公平性というのをどういうふうに考え るかというのが、かなり重くなってくるのではないか。 社会保険の中に税金を入れ込むのは悪くはないと私は思ってるんです。社会保険のよ うなカバーの仕方でいくほうがいいと思ってるんですが、入れるべきところに入れて、 一律に入れないほうが公平度が保たれるのではないかという気がするんです。全体とし て保険料や自己負担をどうするか、国庫はどのくらいの役割をするかというだけじゃな くて、国庫が入る入り方についてももう少し議論されるといいかなということです。 (貝塚会長) 国庫負担の問題が提起されましたが、私は個人的には岩田委員の意見と同じなので、 国庫負担を増やしていくというのは、果たして...。それによって保険料の負担は上がら ないんですが、他方において税金の負担が上がるわけですから、負担総体としては変わ ってないんですね。負担の問題は非常に複雑で、租税自身の負担の在り方と保険料で負 担するというのは原理が違うわけです。保険料は均一の料率ですが、租税は垂直的な公 平というか、そのへんの組み合わせは複雑な問題があるんですが、全体としてどうなっ てるのかというのをきっちり把握して、社会保障はどうするかという話ではないかと思 います。 (高木委員) 数点申し上げたいと思います。まず国民負担率の議論の中に「潜在的な」という形容 詞がつく議論が昨今よく聞かれるんですが、社会保障関係費と潜在的な云々と言われる 財政赤字の相互の連累の関係をこういう形で議論をして本当にいいのかという思いがし てならないんです。今日ご説明いただいた資料も意図的なのか何げなくなのか知りませ んが、資料2−2の14ページなんていうのは潜在的な国民負担率というのを指標に物事 を考えていくかのように扱って作っておられる。お気持ちはわからんでもないんです が、社会保障を議論する時にこういった財政赤字論がどういう因果関係をもつのか。そ う関係ないとは言いませんが、こういうものに縛られて社会保障の議論をするというの は本筋が違うんじゃないかなという感じがします。その点が1点です。 国民負担率で50%以下という議論がいろんなところで過去にもあるんですが、現在も ヨーロッパ諸国は50%を超えてる国もけっこうあるわけです。50%を上限とするという ことについて合理的な理由があるのかないのか。負担を抑制することで結果的に給付も 抑制という流れのレトリックになっているのではないかなという思いもないでもありま せん。公的給付が削減されても、要るものであれば私的に担えということになるわけで して、こういう議論は国民にとって社会保障制度に対する信頼感なり将来に向けての安 心の構築という意味では逆さに作用するのではないか。そんな気もしますので、50%論 のそもそものところを十分に議論をしてみる必要があるのではないかと思います。 今日ご説明はなかったんですが、資料3として「前回までの主な議論」といペーパー が配られています。その中で社会保障に関する保険料の負担の関係で事業主負担と被保 険者負担の負担率の問題等についていろいろ議論がありますが、社会保障制度、社会保 険制度の存立は単に被保険者のためというだけでけでなく企業にも大きなメリットのあ る話でして、事業主負担の在り方論はぜひ一度、きちんとした格好で、こういう包括的 な議論をする時に整理をしておくべきではないかというのが3点目です。 4点目として、世代間の公平性の問題が資料2−2の12ページにも書かれています。 現役世代は高齢者への給付分も含めて負担をするわけですが、子育て支援など現役世代 への給付というのをバランス論の中で考えていかなくてはいかんのではないか。 これはお尋ねなんですが、年金の国庫負担2分の1というのは既定の事実ということ で、議論しなくていいのか。これは財政論がいろいろあるんでしょう。もし議論する必 要があるとしたら、どこでやるのか教えていただきたい。 最後に、本日この審議会終了後に本審議会委員の方数名と税調の方々がご議論される 場があるとお聞きしました。何をご議論されるのかよくわかりませんが、社会保障の問 題を財政対策に傾斜した形で議論するのはどうかなという面もあろうかと思いますの で、給付削減論のみに傾斜した議論にならないように、ご参加される委員の方々にはお 願い申し上げておきたいと思います。以上です。 (奥田委員) 先に失礼いたしますので申し上げますが、2つ申し上げたいと思います。1つは財源 ですが財源についても抜本的な見直しが必要である。世代間の不公平を是正して老後の 生活を国民全体で広く公正に支えるという観点から、とりわけ基礎年金と高齢者医療に ついては安定した財源となる消費税など、間接税の活用を検討すべきである。すぐ実行 はできないにしても、これはやるべきである。しかし、その大前提としては、片側で大 幅で抜本的な歳出の削減を行った上で、足りなければ税金の活用を行うべきではないか と思っております。 もう1つは、今日の話には出てきませんでしたが、国民年金の未納・未加入による空 洞化問題です。きちんと払っている人が、きちんと払ってない人の未納分を穴埋めする といった世代内の不公平が存在しているということもあり、これについて抜本的な対策 が必要だ。一番確実なのは基礎年金の間接税方式化であると思いますが、それがなかな かできないということであれば、保険料を納付してない人にはペナルティとして自動車 運転免許証やパスポートを出さないとか、そういったことも自分のために払ってるん じゃなくて、国民的な義務として年金を払ってるんだという意識革命を図るという意味 でも大事なことではないか。自分がもらえないんだから払わないという話じゃなくて、 これは国民の義務だと考えるべきだと思います。以上です。 (貝塚会長) 先ほど出ました潜在的な赤字というのは財務省のアイディアですよね。財政アクセス と申し上げれば、やや極端なんですよね。可能性としてはありますが。将来の負担にな るというのはそのとおりですが、全部将来の負担になっちゃうというのは極端な数字だ というふうに私は...。先ほどの事務当局の話に付け加えると、やや極端な数字になって るということは...。 上限はどうなったかというのは昔議論がありましたが、臨調の時に西欧諸国のように 非常に社会保障の水準が高いと同時に負担が高くて、そこが50%以上になってるという ことがありまして、その時の意識は、北欧などは社会保障の厚い国の負担が高いがゆえ に、そこは大変でしょう、そこまで行く前に止めましょうというのがもともとのアイ ディアです。 (中村委員) 資料2−2の1ページですが、介護保険の導入時に社会的入院を解消するということ で、年金、医療、介護の分野を5対4対1から5対3対2にシフトするというコンセン サスが生まれていたと思います。この資料の2025年を見てみますと、医療と福祉(介護 )差が大きくかけ離れておりますが、この推計は現状の制度に立ったものなのか。この データを見せていただいても医療と福祉、介護の制度精査の議論をする必要があるので はないかと思います。 (貝塚会長) ただいまのご質問は、将来推計で医療と介護の関係をどのように想定されてるかとい うことですよね。 (青柳参事官) 推定の前提は、先ほど申し上げたように資料2−2の3ページにあるとおりでありま して、医療についても足元の14年度予算の数字をベースに最近の1人当たり医療費の伸 びを前提に計算をするという形でやっておりますので、医療の取り分をここで決めてる とか、そういう意味では全くないわけです。私どもは政策的には、いま中村委員からお 話がありましたように、大きな流れとして5対4対1を5対3対2にする。実績として は2000年度の数字をご紹介した際に、それに近い数字になってきていることもご紹介済 みだったと思います。 この将来推計が政策的に厚生労働省がここへもっていこうとしている数字だというふ うに読んでいただくと誤解があるだろうと思います。私どもは介護保険を導入した時に もそういうことを考えて5対3対2という一つの方向性を出し、実際に介護保険の実現 によりましてそういうことを実現していったという流れがありますので、それに別の政 策判断を現時点で行っているということではない。あくまでもこの前提に基づいて機械 的に計算すればこうなるとご覧いただきたいと思います。そのバランス議論等は、具体 的な政策をこれから考えていく際にいろいろ考慮しながらやっていくと理解していただ ければと思います。 (京極委員) 2点申し上げたい。1点は、たびたび出てきましたように社会保障における負担の公 平化という視点が非常に重要だということで、特に負担の水準について下げるべきだと いう議論もありますが、下げるにしても、まず公平化について税および保険料も含めて 徹底的な議論をする必要があるのではないか。その上で、先ほどの統計を見せていただ きますと、大変よくできたいろんな資料がありましたが、世代間という面でいうと高齢 者に有利な社会保障になっている。社会保障は高齢者のためにあると言い切ってしまっ ていいのかどうか。実際に働いてる中年層の負担が少し厳しいのではないか。このへん は全体の戦略として社会保障上考えていく必要があるのではないかというのが1点で す。 2点目は、私は地方分権化推進は大賛成ですが、ややもすると誤った定式化という か、地方分権化イコール一般財源化、中央集権化イコール補助金化というのがあって、 これは違うんじゃないか。介護保険の例を出しますと、国も25%出してるわけですが、 主導権は市町村にある。補助金の出し方の割合が100 %地方だ、100 %国だという考え 方じゃなくて、国も県も出しつつ市町村にやらせるとか、県が中心になって市町村も国 も出すとか、いろんなパターンがあるわけで、こういう定式化はやめる。浅野委員や岩 田委員からご発言がありましたけど、地方分権化と補助金なり助成金なり、出し方の割 合の議論を区別する必要があるのではないかということを申し上げたいと思います。 (岸本委員) 2点あります。1点は先ほど出た国民年金の未納・未加入の問題なんですが、新聞で 生活欄などの読者からの投稿を見ていると、未納・未加入あるいは不公平という問題を 解決するには、年金だって税でやれみたいな読者からの投書がよく載ります。税でやれ というのは徴収の方式を税方式でやれということなんだろうと投書を見ながら理解して るんですけど、それはどのくらい実現性があるのだろうかという疑問があります。国民 が税でやれという乱暴な言い方をする時に、財源としての税というのと徴収方式として の税というのとで混乱があるのではないかなという印象を持っています。 もう1点は、先般からも出ている少子化対策と社会保障との関係なんですけど、総論 として社会保障が継続的に働くためには子どもが増えなくてはいけないというのは理解 できます。ただ、社会保障というのは個人にとって、個人がどのライフスタイルを選ん だとしても公平に働くというのが制度への信頼感の基本となるような気がします。なの で、どこまで誘導的に働くように組み立てるかというところが考えどころだと思いま す。 私の意見では、年金の負担を減らすとか、負担の増減のほうで操作せずに、むしろ手 当てのほうでやっていくべきで、年金とか保険とか社会保障の中心になっている部分で は、どの年齢でどういうライフスタイルを選んでも公平にもらえる、公平に払う義務が ある、それが制度への信頼性の根幹であって、遠回りだけど、未納・未加入の問題を減 らして、安定的な財源の確保につながるのではないかと思っています。 (糸氏委員) 2つぐらい発言させていただきたいと思います。1つの問題は、これから社会保障制 度をどうするかという話ですが、医療の分野について申しますと、国民皆保険制度がス タートして40年以上になります。中央集権的という言葉が適切かどうかわかりません が、一元的な管理医療ということで今まで進められてきたということです。その間、医 療提供体制、医療技術も成熟化してきたということで、かつて国民皆保険を作った時の 時代とかなり社会・経済状態が様変わりしている。また、都市と地方ではハードの面も そうですし、医師、看護師等のソフトの面でもそうですし、非常にアンバランスが出て きた。これは医療だけじゃなしに介護の面でも言えるのではないかと思いますが、こう いうアンバランスをきたしながら、一方、なおかつ国による一元的な管理医療がずっと 進められている。 21世紀に入りまして、地域特性に着目して、舵取りを大きく変えなくてはいけのいの ではないか。医師法はともかくとして、医療法については大きな見直しをして舵取りを 変えていかないと、実態にそぐわない状態になってきている。現実に去年の診療報酬改 定でも問題になったんですが、これだけのレベルは当然だといっても、地方ではそうい う人もいないし、そういう施設もない。国民はアンバランスのままで医療が受けられな いという状態が起こってくる。今までの中央集権的な国による一元的な管理医療の大き な見直しをぜびやらなくてはいけない大事な点で、これから医療保険部会でも議論にな ると思います。都会であれ地方であれ国民が受けるべき最高の医療を誰でも十分に受け られるような体制をとっていくにはどうするかということを考えなくてはいけないと思 います。 現在の状態では、医師が足りない看護師が足りない、だからお前のところは診療報酬 は30%カットだということが安易に行われていますが、そういうことではいけない時代 になってくるのではないか。地方は地方で必死になって医師探しや看護師探しをやって も、いないものはいない。ましてや僻地はそういうことです。今まで半世紀近く続いて きた国民皆保険のメリットはあるんですが、このへんで大きなシステムの変更をこの審 議会でやってほしいということを痛切に感じております。 ドイツ等もそうですが、ドイツは地域ごとに医療法にかかわるようなこと、例えば、 この病院は看護師は何人、ドクターは何人ということも地方の特性に任せてる。現在で も地方に地方医療協議会というのがあるわけですから、そういうところに任せるような 方向に転換していくべきだろう。きめ細かな対応をしないと国民は不利益を被るという ことが第1点でございます。 第2点は、負担について一番問題になるのは低所得者対策だろうと思うんですね。低 所得者対策に対する認識がナショナルミニマム、つまり最低限を救えばいいじゃないか という考え方なのか、それとも、こういう成熟した社会情勢の中ではナショナルオム ティマムというか、標準的なもの以下に対して、これをなんとかボトムアップするの か。どちらをこの審議会では対象とするのか。国民の命の安全保障という観点から、低 所得者救済の国民的なコンセンサスをなんとかはっきりしてほしい。今までそこらがぼ やけていたと思いますので、今後、そこのところの議論を十分していただいて、最低の ものを救えばそれでいいのかということと、標準的なレベルまで引き上げていくのか、 救済対象をどの範囲にするのかということについての議論を十分やっていただきたい。 以上2点です。 (山本委員) 私は怠け者で1回も出席しておりませんから、今までの経緯は全くわかりませんが、 今日の資料だけでお願いをしておきたいと思います。資料2−2の11ページで外国の例 を示しておりますが、日本の場合と外国の場合はかなり中身が違うんですね。ドイツの 例を取り上げてみても、日本と合いません。こういうのを例に出して、ドイツがこうだ からどうだという資料にするのは適当でないような気がいたします。参考と書いてある から、こういうのを見て参考にして考えてほしいということだろうと思いますが、そう いう点を配慮していただければと思います。 資料2−1のところで、さっき浅野委員からお話がありましたが、合併問題が頂点に 達しております。これからどうなっていくか私も全くわかりませんが、あと2、3年も すると市町村の間では終了すると思います。ある程度のところまでは合併が成就すると 思います。残るところもあると思いますが。その点が1つです。 その次は、国と地方の財源の割当てというか、国がいくら持ち、地方がどのくらいや る、こういうこということが大議論の最中なんです。いま国と地方の間で最も中心的に 議論されているのは財源の問題です。三位一体とよく言われておりますが、三位一体の 議論なんていうのはどこでやってるのかわからないほど全く議論の対象にはなっており ません。社会保障制度というのは国民の生活に極めて大事なことですから、財源の問題 のところはできるだけ慎重に考えて表現していただくようにしてほしいと思います。 ここで出ますと、あそこで出してるじゃないかということになるわけです。例えば地 方分権改革推進会議で議論しているものが、あそこでああいう議論もあったとか。もう 一つは地方税財源の確立の検討委員会というものを作っておりまして、立ち上がったば かりなんですが、それも財源のことを議論するわけです。さっき申し上げたように国側 として三位一体の税財源の在り方なんていってるけど、今まで何も見通しはないわけで す。 ここには財源のことは何も書いてないけど、一般財源化という言葉を使いますと逆に とられる可能性が高いんですね。一般財源ならお前たち自分で負担しろと、こうなって くるんですね。今は状況が状況ですから、財源の問題についてはできるだけ慎重にあっ てほしい。我々のほうがよくするようなことはなんぼでも言っていただきたい。しかし 国側が得するようなことについて少しでも触れてもらうのには私は賛成できない。 その時期がくると思うので、その時に財源の問題を議論して、補助率をどうするか、 給付はどうするのかということになると思うんです。今日は負担の問題だけですから、 給付のところまで入り込まないと思いますが、いつかは必ずそういうところまで入り込 んでいかなければ社会保障全体の議論をすることはできないわけですから、周囲の状況 を見ながらこういう文言を選んでいただければ私どもにとりましては大変ありがたいと 思いますので、それだけはお願い申し上げておきたいと思います。以上です。 (貝塚会長) 時間が迫ってきましたが、これだけはどうしてもということがありましたら手短にお 願いいたします。 (堀委員) 2点あります。1点目は国民負担率の議論で、先ほど高木委員がおっしゃったことは 概ね私は賛成です。1点だけ付け加えると、国民負担率の上限を設定すると社会保障費 を減らすという議論に直結するような感じがします。社会保障にも効率化すべき点はあ ると思うのですが、ほかの歳出はどうなのか。社会保障費は極めて大きい支出項目で あって、効率化の対象となるのはやむを得ない面はあります。その他の支出項目につい てこの場で議論するのは難しいと思うのですが、そのへんを一つ言っておく必要がある のではないか。社会保障以外の歳出についても無駄はいっぱいあると思います。 2点目は、給付が重複しているとよく言われます。併給調整とかそういう仕組みはあ りますが、給付が遺産として残るという事態は避けるべきで、そこをどうするか。リバ ースモーゲージという議論も出ています。これは相続課税と結びつく問題かもしれませ ん。社会保障のサイドでそのへんの仕組みを作っていく必要があるのではないか。財源 としては相続税にしろそういった仕組みにしろ微々たるものだと思うのですが、公平性 の観点から社会保障給付が貯蓄されて遺産とならないようにすることも重要だと思いま す。 (阿藤委員) 京極委員が触れられたので繰り返しになりますが、今回の資料を見ていて、前回の給 付側の資料と負担の側の資料で大きく違うのは、前回の資料では次世代育成支援という ところが大きな柱として立てられているわけです。ところが今回の資料にはどこにも出 てこない。児童、家庭についての日本の支援というのはいかに少ないか、項目に立てる ほどではないということを如実に表しているわけです。しかし社会保障全体の費用とい うことで言えば、諸外国の場合でも保険料で扱ってる部分もありますが、税で扱ってる 部分もあって、児童や家庭についての部分が当然あるわけです。 資料2−2の6ページにフランスの例がありまして、注の4番で「フランスの年金に は寡婦保険、家族給付を含む」という形で小さく扱われてるわけですが、ヨーロッパ諸 国では児童、家族についての部分は項目が立てられるほど大きい部分があるわけです。 社会保障の給付と負担の相対的なバランスを見る時には児童、家庭の部分も表に出し て、日本はいかに支援が少ないかということを示す意味でも出してほしかったなという ことでございます。 (岩田委員) 住宅のことなんですが、今日の資料で特に高齢者世帯の持ち家率が高くて貯蓄も多く て資産をたくさん持ってるというイメージが出ております。もう一つの見方としては、 年金給付というのはフローを中心として給付されてると思いますが、それがこの程度で 済んでいるのは、高齢者が持ち家率が高いからだという見方が当然あり得るので、私は そういう見方をしてるんですね。日本の高齢層がドッと生活保護にこないのは持ち家率 がかなり支えてるというふうに見ております。これは資産というよりは生活基盤という 意味なんですね。 仮にそれを解体していくという方向をとりますと、持ち家層が減っていく。そうする と年金以外に住宅手当のような別の社会保障というものが考えられなければならなくな る。保険と扶助以外にいろんな意味の手当てということが税を財源とした形で緩い所得 制限というものを設定しながら周りを囲むということがあり得ると思うんですね。どち らがいいかというのは議論の余地があると思うんですが、資産があるんだから、そこは 少し解体してもいいんだという方向をとるならば、将来的にそれをカバーするような社 会保障を考えなくてはならないという覚悟でやらなければならないのではないかと考え ています。 (若杉委員) 資料2−1の3ページの「経済・財政とのバランス」のところの左上の四角の中に 「経済基調が低成長へと変化する中で」とあって、そういう現状認識なんですが、低成 長へと変化するというふうに考えると、社会保障全体の問題を間違えてとらえるのでは ないかと思って、その点について意見を申し上げたいと思います。今の問題は、経済全 体の生産性が下がって、労働に対する所得も減っていますし、資本の生産性も下がって いるということで、要するに付加価値の生産性が低下しているということですね。 今までは、ある程度高い付加価値を前提として社会保障を考えてきた。社会保障とい うのは付加価値の再分配ですから、付加価値そのものが細ってくれば再分配の在り方も 変わってくるわけです。低成長であっても経済の活性化を進めて生産性を高めていけば 今までどおりの豊かな社会保障は可能なわけです。低成長で人口も少子高齢化で増えな いということですと本当に閉塞感になってしまうんですが、生産性が下がってるという ことが今の問題だということであれば、生産性を向上させるというもう一方の選択肢も あるわけで、そういう時の社会保障全体の構造と、本当に貧しい時の社会保障とは全然 違うわけですから、「低成長へと変化」という認識はおかしいわけで、経済の生産性が 下がってるという認識をすべきじゃないかと思うんですね。 そうすると選択肢としては2つあって、どうやって経済を活性化するかという問題 と、どうしても活性化しないとしたら、それに対してどうするか。現在は生産性が低く ても、将来、生産性が高まった時にコンシステントに移れるような体系を考えることが できると思うんですね。日本全体が「低成長へと変化」という認識の仕方ですが、それ が日本を誤らせているのではないかということで、意見を申し上げたかったということ です。 (翁委員) 年金と税との関係で2つ申し上げたいんですが、今の基礎年金を3分の1から2分の 1にするという姿のほかに、スウェーデン型の最低の所得保障の部分を国庫でみるとい う考え方が将来の年金制度における国庫負担の在り方としてあり得ると思いまして、こ れについても検討を進めるべきではないかと思います。これの最大のネックになってい るものは所得捕捉の在り方だと言われてますけど、北欧諸国で二元的所得課税とかそう いったものを導入する際に、特に自営業者の方の所得をどのように計算するかというい ろいろな試みもあります。これは厚生労働省と財政当局と両方の課題かと思いますが、 そういったあるべき論についても、それを実現する上のネックは何で、それをどのよう に解決する方策があるのかということを考えていく必要があるのではないかというのが 1点です。 もう1点は、今日はあまり触れられてなかったんですが、確定拠出型年金のような年 金に対する税の手当てというのも、今後、老後の生活を考える上での大きなポイントで はないかと思います。 (高木委員) 資料2−2の10ページに公費負担を整理していただいてる表があがあるんですが、医 療のところは国保組合はどうなっているのかということを教えてください。 (青柳参事官) 保険局が退席しておりまして対応できませんので、宿題ということで、次回までに資 料を用意しておきます。 さっきお尋ねがあった中で年金の話がいくつか出てきましたが、社会保障審議会は年 金部会がございますので、いただいたご意見をお伝えして、そちらでご議論いただけれ ばと思っております。 (貝塚会長) 今日は宮島委員が出ておられますが、今までの議論の中でご感想があれば手短にお願 いしたいと思います。 (宮島委員) 今日は皆さんのご意見を伺いに来たのですが、一つだけ。税制との関係をまとめられ たところで、財源としての税という話があって、もう一つ、いろいろな給付基準とのか かわりで議論されましたけど、さらにもう一つ、現金給付に関しては税というのは給付 の税込みと税抜きという関係を通じて実質的な調整をやるという非常に重要な役割を もっているということがあります。スウェーデンとかデンマークは年金給付が一見高く 見えますが、そのかわり税負担が極めて高く、実質的な、つまり、税抜きの給付水準は 国際的にみてもそんなに高い水準だとは思えません。一方、医療のほうは一部自己負担 という形で、実質的な公的給付率との関係で明確に区別されているわけです。税の問題 というのは単に税源とかほかの給付の基準になるとか、手当てとの代替関係があるとい う議論だけは不十分な議論です。 とりわけ年金の場合ですと財産権という問題が憲法上の問題として起こって、給付を 調整する場合には、それらとの法律的な調整が難しくなるわけです。課税の議論という のは公平という別の側面をもっておりまして、そういう意味では、税との関係というと ころで、もう少しそういう点の整理をきちんとしていただいたほうがいいのではないか と考えております。 (貝塚会長) 時間がまいりましたので、「社会保障の給付と負担の在り方」については、このくら いにしたいと思います。いろいろ活発にご議論いただきましてありがとうございまし た。 昨年12月から5回にわたり、給付と負担の在り方を中心とした制度横断的な議論をし てまいりましたが、主要な論点については、今回までで一通りご審議いただきました。 前回までの主な議論については、お手元の資料3「前回までの主な論点」にまとめて おります。 先般、事務局より、来年度予算概算要求等が行われる夏前に議論のとりまとめをした いとの意向が示されたこともあり、私としては、このあたりで、これまでの議論を踏ま えた報告をとりまとめたいと考えておりますが、いかがでしょうか。 (異議なし) それでは、そのようにさせていただきます。ありがとうございました。 次に、今後の進め方ですが、中心となって作業いただく起草委員を私から指名させて いただき、起草委員と私とで報告書案を作成し、これを基に次回の審議会においてご審 議いただくという形にさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 (異議なし) それでは、そういう形にさせていただきます。ありがとうございました。 起草委員につきましては、阿藤委員、京極委員、堀委員、渡辺委員にお願いいたしま す。起草委員の方々には、ご苦労をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたし ます。 それから、起草委員以外の方々で、報告書に盛り込むべき内容やご意見がある場合に は、報告書に反映させてまいりたいと存じますので、5月27日(火)までに書面にて、 事務局までご提出いさたきたいと思います。 また、起草委員会の報告書案についても、まとまり次第、皆様に送付させていただき ますので、ご確認いただき、ご意見のある方は、早めに事務局までご提出いただきたい と思います。 それでは、次回は、起草委員会で作成した報告書案と各委員から提出された意見書を 基に、報告書をまとめることで、審議したいと思いますので、皆様方のご協力をお願い します。 時間が過ぎましたが、事務局から何かありますか。 (伊原政策企画官) いま貝塚会長からご発言がありましたように、起草委員会にご意見を出したいという 方につきましては、別途事務局より様式をお送りいたしますので、27日までにお出しい ただければと思います。 本日、参考資料1、2、3を配っております。前回、高木委員、渡辺委員、翁委員か らご質問がありました内容につきまして、「社会保障の財源構成」、「デンマーク、 フィンランドの介護施設入居者等に対する給付の調整例」、「個人年金の概要」という ものを配付させていただいておりますので、お確かめください。 次回ですが、6月16日、月曜日の2時半から予定しております。よろしくお願いいた します。 (貝塚会長) それでは、本日の審議会はこれで閉会といたします。お忙しいところをありがとうご ざいました。 −以上− 照会先 政策統括官付社会保障担当参事官室 政策第一係 代)03−5253−1111(内線7691) ダ)03−3595−2159

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