総合福祉部会 第15回 平成23年6月23日 資料15 合同作業チーム(医療(その他の一般医療))議事要旨(5月) 1.日時:平成23年5月31日(火)13:30〜17:00 2.場所:厚生労働省低層棟2階講堂 3.出席者 堂本座長、佐藤副座長、末光副座長、川?ア委員、佐野委員、関口委員、野原委員、 橋本委員、広田委員 4.議事要旨 (1 医療に係る経済的負担の軽減について) ・自立支援医療に精神障害者の入院医療も入れる、という案には、お金がかかる、入院を促 進する、自立支援法は廃止すべき、という理由で反対。 ・難病でも、病状が安定していれば就労可能なので応能負担という考え方もあるが、就労が 困難な病状や重篤な場合、低所得者の場合は、当事者負担は無料とするべき。現状は一生 3割負担。保険が利用できない薬など高額負担にあえいでいる場合が少なくない。腎臓透 析、HIV、血友病患者は月額上限1万円という制度がある。これを拡大したい。応益負担 から応能負担に一律変えるだけでなく、応能負担の中でも難病の程度に応じて配慮が必要。 ・精神障害以外は入院・通院が対象となっている。病気自体が長期化する傾向がある点で似 ているのに、精神だけ通院のみが対象となっているのは、制度設計上不平等のような気が する。当初は、自立支援医療そのものが入院から通院に切り替えるための制度だった。更 生医療も、手術などの一時的なものが出発点だった。その後、他で救われなかったために、 透析など長期にわたる医療も入った。精神の入院を入れるか否かについては総合的に検討 すべき。 ・入院が必要な人も3割負担であることが問題。自立支援医療に精神の入院も入れるべき。 ・当事者・家族の負担の軽減、安易な入院の阻止、入院が長期化しても診療報酬の変化がな い現状を変える、という点から精神の入院も自立支援医療に入れるべき。非自発的入院は 全額国庫負担すべき。精神通院を自立支援医療に入れれば全体の2割が公費負担となり、 財政を圧迫し、その結果退院が促進される。診療報酬も入院の期間によってメリハリをつ けるべき。 ・精神入院については長期化する傾向。一方で、他の疾病との兼ね合いがある。 ・なぜ精神障害を他の病気と違う扱いをするのか。精神障害は特別な病気とするのか。国民 に説明がつかない。報告書は両論併記にすべき。 ・各障害や疾病で、実態が多様で複雑。多様性に対応できる制度の構築が必要。不公平感を 解消しないといけない。難病の数は約5千〜7千にも及ぶと言われている。そのうち56 疾患しか医療費公費負担の支援対象となっていない。障害特性に応じた対応をするために は実態調査が必要。支える医療は、医療と福祉が混在した療養でないと対応できない。こ の作業チームがどのように医療と福祉の混在したモデルを提言できるかは大きな課題。 ・現実問題として福祉と医療は別々なので、混在させるのは難しいと思う。福祉と医療の連 携ではどうか。 ・医療と福祉の連携、というのはこれまで何度も言われているが、実現していない。福祉・ 医療の連携を超えた仕組みを構築しなければいけない。 ・地域に医療と福祉の合同チームを作らない限り難しい。 ・障害者総合福祉法においては、相談支援事業として、ニーズに応じた支援、医療・福祉を 総合したようなサービス利用計画を作るべき。訪問看護を受けながらヘルパーを利用した り、自分でケアマネジメントできる人はいいが、総合的なケアマネジメントが必要な人に は相談支援事業でサービスとして提供されるようにしてはどうか。 ・両論併記することについて。障害者自立支援法で初めて精神障害者が規定され、障害者総 合福祉法で初めて難病が規定されることとなる。病院に来て障害者だけ得をしている、と いうのではなく、早く認められている、ということ。今の医療のあり方に疑問がある。治 れば何をしてもいいのか。人権という観点から治療のあり方を見直すべき。安易に拘束や 電気ショックが行われてはいけない。医療内容にまで踏み込んだ議論が必要。 ・委員からは、「総合的な相談支援が重要であるということ」と「それだけでなく医療と福 祉を総合した制度の構築が必要である」とのそれぞれの提案があった。 ・難病は相談支援においても、医療的知見を含めた相談が不可欠...それが可能な体制が必要。 入院と地域医療は分けて考える。地域医療においては、医療・福祉の合同チームで出て行 かないと地域生活を支えられない。難病は必ずしも入院が必要ではない。難病の中でも負 担については主張が異なる。 ・重症心身障害は児・者の入院を一体にしており、これは守っていきたい。国民の目から見 てどうか、ということを考えると、家族が負担できる分については負担すべき。負担でき ない部分については負担を求めない。 ・更生医療は長期にわたって医療費を負担するから、育成医療は障害の予防的な治療だから、 公費で負担する、という合意は得られていると思う。生活を支え、長期にわたる負担から 解放するためには、血圧が高いから抗圧剤を飲む場合と同程度の負担の範囲である必要が ある。 ・お金のない人の医療費を公費で、というのは理解が得られるが、精神障害だから公費で、 というのは理解を得られないと思う。 ・自立支援医療は、低所得者も5千円までは払っている。国保は現在の世帯単位から、個人 単位にするべきではないか。 ・本質的に個人単位であるべき。障害者が二人いる世帯もあるはず。 ・世帯分離して、障害者本人の収入を認定するべき。 ・生活保護は実態優先なので世帯分離できないが、自立支援医療は世帯分離可能。 ・世帯分離するか否かは、どちらが得か、家庭の選択に任せるべき。 ・精神障害者は医療だけでもいい人もいる。福祉サービスは押しつけがち。あくまでも、本 人が望む、本人の自己決定に基づく福祉サービスでないといけない。 ・障害者総合福祉法は障害者自立支援法と同じく三障害一体。精神の入院だけ3割負担、と いうのは無理なのでは。 ・障害者総合福祉法では、難病も入るし、入院医療も1割負担とするということか。 ・障害の特性に応じて、という書き方はできないか。全ての障害・難病を一緒に扱うのは無 理がある。難治性疾患は所得に応じた7段階の負担となっている。特定疾患に該当しない 場合は、一生3割負担。患者本人の4割は無収入。一生涯治らない難病が1割とか3割負担 というのは矛盾。数千万円かかる手術が必要になることもあるが、これも1割負担と言わ れたら困る。精神・難病・固定的疾患のそれぞれの特性に応じた負担であるべき。 ・応益負担から応能負担になるということは、自己負担が3割のところ1割になる、という ことではないということだ。応能負担は「出せるだけ」。応能負担にするとスキームが変 わる。応能負担になると病院もいつまでも抱えこんでいられない。 ・障害特性に応じて負担を検討する、ということと、地域においては包括的なサービス体系 が必要、ということ。 (2 医療的ケアの在り方について) ・厚労省の介護職員によるたんの吸引の検討会で、「不特定多数の者」を対象とする場合の 研修スキームと、「特定の者」を対象とする場合の研修スキームに分けて試行事業を行い 終了した。「特定の者」を対象とする試行事業で、介護と医療との連携について、うまく できているところもあるが、難しいところもあった。医療職種が柔軟に対応する必要が ある。現在審議中の法案(社会福祉士・介護福祉士法一部改正案)が通れば、来年度に は介護職員等によるたんの吸引及び経管栄養が法的に可能になる。たんの吸引等を介護 職が行うことを容認することについて、地域差がある。人工呼吸器を装着していても、 ヘルパーを利用して外出ができるのが普通だが、ある市では看護師の同行を求められた。 ・制度が始まれば、近隣の医師も研修講師等で参加すると思うが、診療報酬ででるのか。 ・お願いはしているが、検討が進んでいない。医師が協力となると責任問題も出てくるし、 嫌がられるかもしれない。 ・いろいろなうまくいっている事例を提示することが大事。 ・制度化した後、数年間は、運用がうまくいっているかモニターが必要。 ・重症心身障害児も最近は施設入所から在宅志向に移ってきた。今後在宅の重症心身障害児 は増加するだろう。医療職から見たらヘルパーがたんの吸引等を行うことは不安がある かもしれないが、経験の中で、この人にならできるという「特定の者」の考え方はあり 得る。介護職員にたんの吸引を行わせることへの心配については、「不特定の者」につい てのものであろう。これらは分けて考えられるべき。 ・在宅の方が一時入院した際でも、不慣れな看護師より慣れたヘルパーの方が安心というこ ともある。ヘルパーの積極活用に異論はない。 ・そもそも「医療的ケア」の概念はどのように整理されているのか。リストを作成し、これ らについては介護職員もできるようにすべき等、整理する必要がある。重症心身障害児 の立場からなどリストを作ったらどうか。また、年齢や障害別、疾患別等関係なく「行 為」という切り口だけで概念を整理して良いのか。 ・概念が整理されていない。たんの吸引の検討会でも意見は出たが、あまり議論されなかっ た。先に総合福祉部会でこうあるべきという提言をした方が良い。今回検討されたのは、 たんの吸引と経管栄養のみ。それ以外の行為が即ダメにならないよう注意が必要。「生活 をささえる医療」が基本的な概念。人間らしく、当事者が望む地域で生活できるための、 医療的なケアの充実が必要。 ・障害者には入院の付き添いが必要な人が多い。合理的配慮の範囲だと思う。せめて居るこ とを拒否しないでほしい。 ・「医療的ケア」は、「医行為」と「医行為以外の行為」の中間の行為なので、中間的な概念 が必要。 ・医療的ケアは、医行為の中で家族がやっている行為。 ・医療は病院の中でやってきた。地域では福祉が行われている。地域での生活を支えるため の「医療と福祉が統合されたサービス」が必要。 ・定義+具体例の列挙で表すべきだが、具体例を示すとそれ以外の排除につながるという懸 念も理解。インシュリンの注射等、さまざまな行為があるので限定的にならないよう工 夫すべき。 ・「家族が行い得る、生きていくのに不可欠な、生理的な結果をもたらす第三者による行為」 との定義案で如何か。 ・独居者をも想定した定義とすべき。 (3 地域生活を容易にするための医療のあり方について) ・聴覚は医療との関わりはごく限られている。治療法が限られているので、医師の関わりは 基本的には診断を下すまで。医療からは除外されている。諸外国にはサポートケア、と いった医療がある。従来なかったものを今後、どう盛り込んでいくか。医療的ケアにリ ンクする部分は多いが、特段これといったものはない。 ・報告書に書くとすれば、「聴覚障害者が医療的ケアを受けながら地域で生活するための研 究を行う」か。 ・諸外国にあるようなヒアリングセンターが理想。医療と福祉を含んだ聴能のリハビリセ ンター。関係者は聴覚保障と呼んでいる。補聴器等の聴能を活性化させる訓練を行う場。 医療と福祉がドッキングした場所でできるのが理想的。 ・診療拒否について。難病は専門家が少ない。専門医にたどりつくまでに10年間、その 間に病気が進行してしまう事例もある。多くは確定診断がついて医師が処方して病状が 安定したあとは介護が主で医療と併存するという場合が多い。難病患者は、療養病床は 減らされているし、施設入所は看護師がいない、病状急変に対応できない、という理由 で入所拒否されるという事態は一般化している。地域に開業医は多くても難病について は詳しくない。地域で安心して生活できるためにはどうしたらいいか。グループホーム も難病患者を抱えるところはほとんどない。1つの体系をつくらないといけない。 ・知的障害者・身体障害者ともに年齢が上がると色々な病気を抱えるが、対応できる病院 は少ない。救急対応の充実が必要。 ・レスパイト用のベッドを確保してほしい。病院をレスパイト利用しようとしたら、個室 の差額ベッドの利用を求められる。個室だと呼吸器が外れた場合、気づくのが遅くなり、 命取りとなる。地域で暮らそうと思っても、診てくれる医師が少ない。胃ろうの交換も 昔は自宅でできて無料だったが、今は1、2日入院しなくてはならず、費用負担が大き い。最近、学会から治療停止のガイドラインが出てきている。許し難い状況である。 ・差額ベッドの利用は、障害との関係で求められるのか。 ・呼吸器がうるさいので同室の患者が夜眠れない、とか、付き添いがいると他の患者がうら やましがる、という理由。呼吸器が外れたのに気づかない、など家庭では起こらないこ とが病院では起きる。個室に行かせるならヘルパーの付き添いを認めてほしい。一人で 個室に閉じ込めるのは危険。差額の補填を公費でしてほしい。 ・保健所の機能は介護保険導入後10年来後退している。健康に障害を持つ者は保健所が最 後の生きるよりどころとなる場合が多い。抜本的な役割や機能強化が望まれる。相談支 援事業所ができても、コーディネートは行政もやるべき。保健所がどんどん現場に入っ ていって、問題解決してほしい。 ・災害との関係について。心のケアは、県の精神保健福祉センターもやっているが、現場を 仕切るのは保健師。 ・電気が止まって、予備のバッテリーは自主購入だが、それがないと30分で切れてしまう。 非常用のバッテリーの支給が必要。ガソリンがなくなってヘルパーが訪問できなかった。 呼吸器は手動のアンビューバックで維持させた。工場が被災して、経管栄養の資材の供 給が全国的に不足した。当初は保健所の機能がダウンして、患者会の名簿を頼りに対象 者を確認することしかできなかった。 ・報告書の中で、災害対策について提案できるならば、医療機関は自分の患者をバックアッ プすることを義務付けたい。災害対応をサービス利用計画の中に盛り込んでおくべき。 ・被災した患者は、自らの診療情報を請求すればいつもの診療内容が分かったはず。 ・難病は稀少であるから、稀少性の薬がなくなったり、うまく供給できない問題が多発した。 福祉避難所でも難病対応ができず結局在宅になったという多くの報告があった。 ・ほしいものを支給するべきで、マッチングが大事。 ・日頃からの服薬指導が重要。自分がどんな薬を飲んでいるのか、インフォームド・コンセ ントで医者から聞いておくべき。 ・診療拒否について、発達障害の立場から報告書にも書くべき。 ・発達障害者の医療は確立しておらず、医療が必要な発達障害者の行き場がなく、精神科 医療の現場で混乱している。若年での診断だと、統合失調症と誤診されることが多い。 治療が全く違ってくるので、行動上の問題や、うつ、無理に頑張らされる、といった二 次障害を招き、結果自己肯定感を持てなくなる。 ・「本人・家族・ピアサポートの重要性の認識」について、医者、本人、家族、行政で全部 抱え込んでいる。もっとピアの関係を大事にすべき。 ・24時間精神科救急の体制整備が必要。ワンストップサービスとして精神科救急は重要。 精神科病院での拘束は、欧米では時間で区切っているが、日本では週単位という状況。 インフォームド・コンセントは精神科医療においても重要。運ばれた病院で対処が異な ると困る。 ・救急がないので警察が来てしまう。いろいろ整っても救急は大事。精神障害者のための、 ではなく国民のための精神科医療。 ・家族が利用できるショートステイも制度化されていいのではないか。 ・難病とは何かという定義については今の段階で結論は得られない。専門家集団抜きにして この場で取り上げるのは難しい。未検討のものが多いので、「難病を福祉の中に入れる」 「難病対策要綱の発展的継承」「自立支援医療の低所得者無料化」「キャリーオーバー解 決」緊急を要する「難治性疾患の医療費の負担軽減」、「高額療養費の限度額大幅切り下 げ」などは今回の総合福祉法で明確化して、「難病の定義」「支える医療の在り方」 「医療と福祉の混在化した領域や体系構築」などは、難病問題の審議会を産み落 としてほしい。障害者総合福祉法の中で、障害者基本法の施行後3年経ったら見直す、 というのと同じスキームでいきたい。医療に関係する相談には、MSWの役割も入れて 欲しい。 ・障害者総合福祉法は今年8月が検討の目途だが、それまでに難病の定義を検討する審議会 は無理だろうが、障害者基本法3年内の見直しの中で読める、ということか。 ・すでに、難病検討会はあるが、医療が主。福祉については別途検討会を設ける必要があ る。これなら大丈夫、というものを出さないと、大混乱となる。難病対策委員会は「難 病施策の在り方について」、難病対策懇談会は「難病の個別疾病の認定について」行って いる。他にも研究事業として多くの研究者やコメディカルに、患者会などよる「支える 医療を現実的にやっている。国立保健医療科学院もこの分野の多くの知見を蓄積してい るはずだ。純粋的な医療よりも、最近は地域でどうやって患者を支えるか、という研究 が増えている。しかし、そこからの見解がほとんど今回の論議に反映されていない。 ・障害者基本法で発達障害者を入れるなら高次脳機能障害や難病も入れてほしい。障害者 に対する給付法である障害者総合福祉法に難病も始めから入っておいた方がいいのでは。 ・福祉に入れてもらうのは賛成。ただ、3年間で定義について、難病に詳しい人、当事者 を加えて検討させてほしい。 ・合併症の問題もある。総合病院に精神科を、というのは明記してほしい。 以上