『ネット分断への処方箋』『ソーシャルメディア解体全書』刊行記念フェアリスト

フェア - 2022年06月27日
『ネット分断への処方箋――ネットの問題は解決できる』(田中辰雄著)と『ソーシャルメディア解体全書――フェイクニュース・ネット炎上・情報の偏り』 (山口真一著)の同時刊行を記念し、本書と合わせて読みたい関連書を著者のおふたりに選書していただきました。読書案内や書店店頭でのフェア開催にぜひご活用ください。



くろまる山口真一さんの選書&コメント

『ネット炎上の研究』(田中辰雄・山口真一著、勁草書房)
データ分析を専門とする著者らがネット炎上の実態を明らかにした本。豊富な炎上事例や、定量的な分析から炎上の真実に迫る。さらに、炎上対策として社会に何ができるかを論じる。

『炎上とクチコミの経済学』(山口真一著、朝日新聞出版)
ネット炎上で見える意見は、少数の偏った意見だった。これまで現場の先入観や経験則だけで判断されてきたウェブでの情報拡散について、科学調査に基づく知識とノウハウを教える。SNS上のリスク回避方法から積極的なマーケティングへの活用まで。

『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(山口真一著、光文社新書)
ネット炎上、自粛警察、誹謗中傷――世の中は「極端な意見」で溢れている。その背景には、SNSの持つ特性と、メディアの存在があった。極端な人の正体を豊富な事例と最新の分析結果から紐解くと同時に、社会としての対処方法と、個人が極端な人にならないための処方箋を提示する。

『フェイクニュースを科学する――拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ』(笹原和俊著、化学同人)
計算社会科学を専門とする著者が、フェイクニュースが拡散するメカニズムを科学的に明らかにした本。偽情報を信じる認知特性、その情報を拡散させる情報環境、情報過多と注意力の限界など、多角的な視点でフェイクニュースを紐解く。

『流言のメディア史』(佐藤卓己著、岩波新書)
20世紀以降の流言事例についてまとめた本。それぞれの状況やメディアの対応、社会的影響、人々の反応などを検証しながら、陥りやすいパターンなどを指摘している。ポスト真実のデジタル情報化時代だからこそ求められる、メディア史的思考とは何か。

『人は、なぜ他人を許せないのか?』(中野信子著、アスコム)
脳科学者である著者が、ネット炎上の背景を紐解く。ネットで見られる「他人を許せない人」は、正義感をもとに攻撃することで快楽を得て正義中毒になっている。社会全体で正義中毒の方向へ突き進むことの危険性と、正義中毒から個人を開放する方法について論じる本。

『フェイクニュースの生態系』(藤代裕之編著、青弓社)
フェイクニュースはどのように生まれ、広がるのか。デマが広がった様々な事例を分析し、ソーシャルメディア、ミドルメディア、マスメディアの相互作用によってフェイクニュースが生成・拡散するプロセスを明らかにすると同時に、このような情報汚染を断ち切る方法を提案する。

『SNS暴力――なぜ人は匿名の刃をふるうのか』(毎日新聞取材班著、毎日新聞出版)
徹底的な取材により、SNS暴力の実態を明らかにした本。ネット上の誹謗中傷の被害者の言葉、加害者の心理、対処方法などを具体的に知ることができる。さらに、誰でも加害者にも被害者にもなり得る時代、個人として何が出来るのか。社会として何を議論すべきなのか。

『操作される現実――VR・合成音声・ディープフェイクが生む虚構のプロパガンダ』(サミュエル・ウーリー著/小林啓倫訳、白揚社)
AIや政治、ソーシャルメディアを専門とする著者が、デジタル時代がもたらす新たな問題を分析する。実際の事例を用いながら、VR、合成音声、ディープフェイクによるオンライン上の虚偽、プロパガンダへの対処法を提示する。

『コロナ危機の社会学――感染したのはウイルスか、不安か』(西田亮介著、朝日新聞出版)
社会学を専門とする著者が、コロナ禍における人々の不安を分析する。感染拡大とともに不安が広がり、感染状況が落ち着くと不安が忘却される。そこには日本の抱える政治、法律、社会システム等の構造的問題にあると指摘する。

『フェイクニュースの見分け方』(烏賀陽弘道著、新潮新書)
ニュース、論評に大量に含まれるフェイクを見抜くためには何をするべきか。ジャーナリストとして活動する著書が実体験に基づいて、偽情報の特徴を指摘しながら、正しい情報の選別法を論じる本。

『情報戦争を生き抜く――武器としてのメディアリテラシー』(津田大介著、朝日新書)
ソーシャルメディアでの情報操作は、いまや世界で最も深刻な問題の一つであり、これまでになくメディアリテラシーが求められる時代になっている。豊富な事例を読み解き、情報戦争を生き抜く術を提示する本。

『メディアリテラシーを学ぶ――ポスト真実世界のディストピアを超えて』(坂本旬著、大月書店)
教育学を専門とする著者が、メディアリテラシー教育について論じる本。国連・ユネスコが進める最先端の理論と運動はじめ、ソーシャルメディアがグローバル化した時代に必要な基礎的知識と考え方を示す。

『ソーシャルメディア・スタディーズ』(松井広志・岡本健編著、北樹出版)
文化社会学・メディア論を専門とする著者が、社会学の視点からソーシャルメディアを分析した本。ゲーム・音楽・アートから、政治・経済・宗教まで多彩なトピックに照準し、1990年代以降のアーキテクチャ/文化/実践を読み解き課題と展望を示した。

『アンチソーシャルメディア――Facebookはいかにして「人をつなぐ」メディアから「分断する」メディアになったか』(シヴァ・ヴァイディアナサン著/松本裕訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
Facebookの功罪を、文化的・歴史的・哲学的に振り返りつつ、明らかにした本。善意のテクノロジーが、フェイクニュース、フィルターバブルといった問題を引き起こす。現代人はソーシャルメディアとどのように関わるべきか。

『ソーシャルメディア・プリズム――SNSはなぜヒトを過激にするのか?』(クリス・ベイル著/松井信彦訳、みすず書房)
計算社会科学を専門とする著者が、SNSにおける人々の動向を定量的に分析した本。ソーシャルメディアが、互いについて、そして自分についての理解をゆがめてしまうことを明らかにした。さらに、膨大なデータから政治的分極化への処方箋を導き提示する。

『21世紀の自由論――「優しいリアリズム」の時代へ』(佐々木俊尚著、NHK出版新書)
日本には「政治哲学」が存在せず、ヨーロッパの普遍主義は終わりを迎えている。ネットワーク化された現在の世界は未来への移行期にある。そのような状況下での共同体の姿を分析し、「非自由」で幸せな在り方を議論する本。

『2050年のメディア』(下山進著、文藝春秋)
読売、日経、ヤフーの三者を中心としたメディアの「プラットフォーム」を巡る争奪戦を、現場担当者たちに取材をして得た証言をもとに整理した本。ソーシャルメディアが台頭する様子を克明に描写する。

『すべての新聞は「偏って」いる――ホンネと数字のメディア論』(荻上チキ著、扶桑社)
すべての情報は断片的で、切り取られたものである。「バイアスのないメディアなど存在しない」という前提に立ち、メディアの特性を詳らかにすることで、社会で溢れる情報とつきあう具体的スキルを提示する。

『リーディング メディア法・情報法』(水谷瑛嗣郎編、法律文化社)
メディア制作者にかかわる「メディア法」と、プラットフォーム事業者にかかわる「情報法」について、法律の内容だけでなく、その歴史や高度情報化社会における意義・役割などを論じる。



くろまる田中辰雄さんの選書&コメント

『私は正しい――その正義感が怒りにつながる』(安藤俊介著、産業編集センター)
アンガ―マネジメント(怒りの制御)の立場から、正義について考察している。学問的ではないがネットで起こる炎上あるいは分断の背後には、「正義」があることをわかりよく記述している。

『正義とは何か――現代政治哲学の6つの視点』(神島裕子著、中公新書)
ネットでの論争では正義をかかげて人を責めるのが常であるが、そもそも正義とはそもそも何であろうか。政治哲学の長い伝統の中での正義がどう扱われてきたかを簡潔にまとめた良書。

『民主主義の死に方――二極化する政治が招く独裁への道』(スティーブン・レビツキー/ダニエル・ジブラット著/濱野大道訳、新潮社)
社会の分断が進むと、人はそれを強引にでもまとめてくれる強いリーダーを、そして独裁者を望み始める。民主主義は軍事力など暴力によって死ぬのではなく、選挙によって死ぬ。これを豊富な実例とともに示した啓蒙書。

『ネットは社会を分断しない』(田中辰雄・浜屋敏著、角川新書)
ネットの普及で人々の意見がより過激化し、分断がすすむのではないかという危惧に対し、そうではないということを実証的に示した本である。本書によればネットの利用開始前と開始後で人々の意見はむしろ穏健化している。これはネットによって自分と反対の意見に触れるようになったからである。一般に言われるていることの逆を示した問題の書である。

『保守主義とは何か――反フランス革命から現代日本まで』(宇野重規著、中公新書)
リベラルについては解説書が多いが、保守主義についての良い解説書は少ない。本書は一流の政治哲学研究者によって書かれた優れた入門的解説書である。著者自身は学術会議の任免拒否で話題になったことでわかるようにリベラルの立場であるが、本書は学問的に中立を保ち、誠実に保守を記述している。

『#リパブリックーーインターネットは民主主義になにをもたらすのか』(キャス・サンスティーン著/伊達尚美訳、勁草書房)
ネットでは自分に似た意見の人ばかりが集まる現象をサイバーカスケードと呼び、分断を進める危険性を指摘した本である。執筆時点が2000年と早く、最も早い時期に問題を指摘した点が注目される。

『ネット社会と民主主義――「分断」問題を調査データから検証する』(辻大介編、有斐閣)
ネットが分断を進めるかどうかについて社会学者が集まって寄せた論文集である。結論はさまざまであるが、多くの実証研究の結果が集約されており、現時点での学会の知見をまとめるうえで役に立つ。

『反古典の政治経済学 上・下』(村上泰亮著、中央公論新社)
第一章の「思想の解体する時」が極めてい平易かつ含蓄に富む形で、保守とリベラルの思想対立を整理して見せている。また第十二章「理解についての理解」は、理解というものについての深い考察を与える。

『文明の進化と情報化――IT革命の世界史的意味』(公文俊平著、NTT出版)
情報化について個別事象について、また短期的な分析の例は多いが、社会全体を長期歴史的にみた分析の例は多くない。本書は古くからそれを行ってきた著者の論考のまとめである。国家化・産業化・情報化の三段階論は情報化の行方についてさまざまの示唆を与えてくれる。

『「正しさ」の商人――情報災害を広める風評加害者は誰か』(林智祐著、徳間書店)
福島原発での風評被害を題材に、フェイクニュースを流す人々を糾弾する書である。ジャーナリストらしい取材力で事件をあつめており、あの時ネットで何が起きていたかの記録となっている。



(注記)掲載された書誌情報に誤りがございましたら、悪しからずご了承ください。また、出版社の事情により品切・絶版の可能性がある本も含まれています。

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