APEC首脳会議出席等についての内外記者会見
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【高市総理冒頭発言】
皆様、こんにちは。韓国慶州(キョンジュ)市におけるAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議への出席を終えるに当たりまして、所感を申し上げます。本日で総理に就任してから12日目に当たりますが、先週からマレーシアでのASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議、また、トランプ米国大統領の訪日、そして今回のAPEC首脳会議と、非常に濃密かつ有意義な「外交ウィーク」を走り抜けてまいりました。今回の一連の外交日程では、「自由で開かれたインド太平洋」、FOIPを推進し、時代に合わせて進化させていくこと、そして日米同盟を更なる高みに引き上げること、また、率直な対話を通じて、地域の主要な各国との信頼・協力関係をしっかり構築していくこと、という、私が就任直後から掲げてきた方針を実践に移すことができました。
正に、「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」、そのための歩みを力強く、そして着実にスタートしております。また、トランプ大統領を始めとする今回お会いした多くの各国首脳の皆様からは、総理就任への祝意とともに大変温かく迎え入れていただき、今後の二国間関係の基礎となる個人的な信頼関係を構築できたと存じます。
そして、先ほど、APEC首脳会議への出席を終えました。APEC首脳会議では、「持続可能な未来の構築」というテーマと、「連結」「革新」「繁栄」という優先課題の下、関係国の首脳と闊達(かったつ)な議論を交わしました。日本が「強い経済」を作る上で、アジア太平洋地域の持続可能な成長と繁栄というのは不可欠でございます。今回の会議では、特に、ルールに基づく自由で公正な経済秩序やCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)の高い水準の維持強化の重要性、また、WTO(世界貿易機構)の先送りできない課題に早急に対処する必要性を強調したところでございます。
また、AI(人工知能)・デジタル、エネルギー、インフラ等への、そういった分野への、官民連携による戦略的な成長投資を通じて、地域の発展や社会課題の解決に貢献していく決意を表明いたしました。今回、APEC首脳で合意した「慶州宣言」には、日本が重視する多くの内容が明記されました。日本の考え方を多くの国が共有し、支持していただいた結果だと受け止めております。また、今回、日本が2031年のAPEC議長を務めることが決定されました。2031年に向けて、しっかりと準備を進めてまいります。
そして今回のAPEC訪問の機会に、中国の習近平国家主席、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領を始めとした各国首脳との会談も行いました。
習近平主席との間では、「戦略的互恵関係」の包括的な推進と、「建設的かつ安定的な関係」の構築という日中間の大きな方向性を確認しました。習主席とは諸懸案も議論をいたしました。私から強調しましたのは懸案や意見の相違が存在するからこそトップ同士が直接かつ率直に対話をするということでございます。今回の会談を、日中両国が様々な課題や、また、協力に取り組んでいくきっかけとしていきたいと考えております。
韓国の李在明大統領との首脳会談におきましては、現下の戦略環境における日韓関係、日韓米連携の重要性について一致いたしました。特に、日韓国交正常化以来これまで築かれてきた日韓関係の基礎に基づき、日韓関係を未来志向で安定的に発展させていくことを確認しました。そのために、「シャトル外交」の実施を含めて、今後とも両政府間で緊密に意思疎通を行っていくことで一致いたしました。
このほか、本日はカナダのマーク・カーニー首相とも会談をしました。特に、FOIP実現に向けた更なる連携を確認し、現下の様々な国際情勢について率直な意見交換を行いました。
さて、来年は、2016年に当時の安倍晋三総理がFOIPを提唱してからちょうど10年になります。一方で、我々が慣れ親しんだ自由で開かれた安定的な国際秩序というものは大きく揺らぎ、力強い外交・安全保障政策がかつてなく必要になっております。今回ASEAN訪問から始まり、トランプ大統領を日本にお迎えし、そして、この地、韓国でも大変重要な外交を展開できました。しかし、世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻すための取組は、まだ始まったばかりでございます。今や世界で最も偉大な同盟である日米同盟の強化、FOIP実現のための幅広いパートナーとの連携、地域の主要なカウンタパートとの信頼関係の強化、その一つ一つについて、今回の外交の成果を土台として、これからも全力で取り組んでいく覚悟でおります。私からは、冒頭以上でございます。
【質疑応答】
(記者)
総理、お疲れ様です。幹事のテレビ朝日千々岩です。今の御発言と多少かぶるかもしれませんけれども、初めてのAPEC出席となりまして、まずその手応えを伺いたいのと、それから今総理からもありましたけれども、ASEAN、トランプ大統領の来日、日韓、日中で、APECありました。この一週間の「外交ウィーク」をですね、どのように総括されるか、伺いたいと思います。そしてもう一つ、いろいろ外交の場面経験された中で、まだ12日と始まったばかりではありますけれども、「高市外交」というですね、いわゆる、我々はどういうふうにイメージすればよいのか、総理御自身でもイメージができ始めているものが、それからこれまでとは違うようなものもお感じになったかどうか、総理のイメージを教えてください。
(高市総理)
就任直後から始まりましたこの「外交ウィーク」の締めくくりとして、今般のAPEC首脳会議では、アジア太平洋地域のこの力強い経済発展と繁栄への日本のコミットメントを、力強く示すことができたと思っております。また、2031年の日本でのAPEC開催が決定されたことも、大きな成果だと考えております。それから地域における責任あるリーダーの皆様と、有意義な会談を実施する、また、言葉を交わす貴重な機会となりました。特に、冒頭申し上げましたとおり、中国、韓国という、重要な隣国とも率直な対話を行いました。今後、首脳外交を進めていく、まずは基礎固めとなったと思ってます。
この1週間を振り返りましたら、ASEAN関連首脳会議の機会には、FOIPの要であるASEAN諸国や同志国との連携強化を確認できました。また、直後のトランプ大統領の訪日では、日米同盟の新たな歴史を共に創りあげていくということを極めて明確に確認することができました。ですから、一連の外交日程を通して、同盟国、同志国、地域の隣国のリーダーたちと本当に率直に直接語り合って、個人的な関係を構築しました。日本外交の地平を切り拓(ひら)いていく歩み、というんでしょうかね、そういったものを着実に進めることができたと思っております。
私が目指すのは、世界の真ん中で咲き誇る日本外交でございます。ただそれを取り戻すための取組というのは、先ほど申し上げましたとおりまだ始まったばかりでございます。でも着実なスタートを切ることができたと思っております。ですからこれを土台として、日米同盟の強化、FOIP実現のための幅広いパートナーとの連携、また地域の主要なカウンターパートとの信頼関係の強化に全力で取り組んでまいります。これまでとの違い、というのは、よく分かりませんが、ただ、直接、人と人というのが会って、世間話も含めて会話を交わすことで距離がうんと縮まってきているな、そういう感想を持っております。
(記者)
ロイター通信のパク・ジュミンと申します。よろしくお願いします。よろしければ日本語で質問させていただければ。
(高市総理)
どうぞ、日本語でも英語でも大丈夫です。
(記者)
総理は、以前7月に、日米で合意した5500億ドルの対米投資が国益に照らして公平ではないと判断した場合には再交渉を求めると述べておられます。韓国と米国の間で合意された通商合意を見ますと、日本と同じ関税引下げ率を実現する一方、対米投資額は日本より少なく、年間上限も設けられており、利益配分の条件もより有利になっています。状況に共通項が多い韓国との比較において、日米関税合意は公平だとお考えでしょうか。不均衡な点があるとすればその修正を米国政府に提起されるお考えはありますでしょうか。以上です、ありがとうございます。
(高市総理)
ありがとうございます。米国と韓国の交渉ということですが、第三国間の合意の内容や評価についてコメントすることは差し控えなければならないと思っています。ただ私の認識では、これは韓国と米国が完全にコンプリートしたものが双方から公表された状態ではまだないと考えておりますので、正確な内容についてはまだ皆様も御存じじゃないと思います。各国が置かれている状況というのはそれぞれ異なりますので、一概に比較することは適切ではないと考えます。
日米間の合意でございますが、これは内閣総理大臣が変わったとしてもですね、政府間の約束というものは変えるべきではないと思っております。重要なことは今回の合意を日米相互の利益の促進、それから経済安全保障の確保に向けた協力の拡大、そしてまた我が国の経済成長の促進につなげていく、これが大事だと私は思っております。
(記者)
朝日新聞の西村と申します。よろしくお願いいたします。私の方からは内政についてお伺いします。総理、あの帰国後すぐに臨まれる国会でですね、物価高対策など少数与党の中でどのように進められるのか、日本維新の会とは議員定数削減の法案を本国会で成立させると約束してますけれども、野党の反発もある中でどのように進められるのか、与党だけで法案提出などをお考えなのか。最後1点、内閣支持率、すごい高水準になっています。また、株価の方もですね、過去最高を更新しておりまして好反応が続いております。また、日本維新の会との新しい連立政権をですね、選挙を経ていない中で、ここで、衆院の解散に打って出てですね、新しい政権の在り方について国民の真意を問うお考えはございますでしょうか。以上です。
(高市総理)
まず物価高への対応ですけれども、10月21日の閣議でこの物価高対策を含む経済対策を、経済財政政策担当大臣を中心に、与党と十分連携して具体的な検討を行い、また、党派を超えた議論も踏まえて、取りまとめるように指示を出したところです。ですから、まずはこの方針に沿って、この経済対策を策定してまいりたいと思っております。
それから、議員定数の削減ですが、先般、自民党と日本維新の会との間で1割を目標に衆議院議員定数を削減するため、令和7年臨時国会において議員立法案を提出し、成立を目指すという合意を行いました。国会への定数への在り方というのは、これは、国会の方で各党、各会派で御議論いただくべき事柄ですから、内閣総理大臣の立場でこの具体的な議論の進め方についてコメントを行うのは大変難しいことでございます。その上で、自民党総裁としての立場から申し上げれば、日本維新の会との合意書におきまして政策の実現にはできるだけ幅広い賛同を得ることが重要であり、他党とも真摯な議論を重ねていくこととされておりますので、こうした合意書の内容を踏まえて、幅広く真摯な議論を展開していく、こういうことになろうかと思います。それから、株価の動向ですとか、また、一つ一つの世論調査の結果については、特にコメントをすることは差し控えます。仮に大きな期待を寄せていただいているとすれば、やはりこれは経済対策を始め、皆様にお約束した政策をですね、ちゃんと実行する、政策を前に進めていくということがまず重要だと思いますので、今はもう解散ということについて考えている暇はございません。以上です。
(記者)
慶北新聞のソン・エギョンでございます。皆さんこんにちは。総理は今回、今歴史的な慶州にいらっしゃいました。総理は奈良県奈良市の御出身というふうに伺っています。それから伝統的な価値を非常に重視される方というふうに伺っております。そういった中で日本の都市と深い関係を持っている古都・慶州でAPEC首脳会議を開催したことは非常に意味があることだと考えています。慶州市は、日本の奈良市と55年目、そして宇佐市とは33年目の姉妹都市関係にあります。しかし、両国で政治的な対立が起こる度に、交流は大きく減っております。さて、今回のAPEC首脳会議を契機に、両国の発展と国際協力の基盤を固める、強めるために日本政府の観点から各都市間の交流などを進める方策がおありでしょうか、特に、奈良市との関係におきましてもう少し進展のある計画などがあれば、お伺いできればと思います。
(高市総理)
御質問ありがとうございます。日韓の国民同士の交流というのは、両国関係の安定的な発展にとって重要でございます。近年は、地域とか世代を問わずにですね、様々な交流が行われておりまして、現在の日韓関係の良好な基調を支えていると思います。おっしゃっていただいたとおり、私の地元であります奈良市とここ慶州市との間でも、姉妹都市提携を契機にですね、スポーツ交流ですとか文化交流が行われてまいりました。ここ数年、ちょっと交流が減ったかなというのは、特に新型コロナウイルスの影響というのは大きかったんだろうと思ってます。
これからのことですけれども、最近は地方自治体同士での連携においては、人口減少への対応をどうするかとか、それぞれが直面する共通の課題に関する知見を共有するといった形で、互いに意義を見出す形で進められているので、これが一つのヒントになるのかなと思います。どこの国でも、いろんな地域に住んでいて、いろんな課題があって、地域ごとにやっぱり悩みや課題って違いますよね。それをお互いにどんなふうに解決してきたか、で、これからどういうふうな方法で解決するか、そういった発展的な議論ができるっていうのが、すごくすばらしい交流を深めることになるんじゃないかなと私は考えます。日本国政府としましては、さまざまな国民の皆様の間の交流を大切にしながら、日韓関係も未来志向で安定的に発展させていきたいと考えております。ありがとうございました。