赤澤大臣記者会見(令和7年10月3日)
令和7年10月3日、赤澤大臣が記者会見を行いました。
(令和7年10月3日(金) 17:47〜18:07 於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
本日は、「新しい資本主義実現会議での取組と課題」について議論を行いました。石破内閣は、「賃上げこそが成長戦略の要」であるとの考え方の下、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を目指してまいりました。その結果、我が国経済は、昨年度名目GDPが初めて600兆円を突破し、足元で設備投資は110兆円、対日直接投資残高は56.5兆円と、いずれも過去最高の水準となりました。
また、全体の賃上げ率は昨年度を上回る5.25%となりました。最低賃金は前年度比プラス66円、そしてプラス6.3%と過去最大の引上げが実現し、全国加重平均は1,121円、全ての都道府県で1,000円を上回る結果となりました。
このように、成長と分配の好循環が回り始めている今こそ、成長型経済への移行を確実なものとすることが必要でございます。「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025改訂版」(令和7年6月13日閣議決定)においては、物価高に負けない賃金を定着させ、実質賃金が年1%程度上昇していくことが当然となる経済社会、それが経済社会のノルムになるという言い方をいたしましたが、それを実現する、最低賃金についても2020年代に1,500円という目標を達成することを掲げております。
このため、中小企業・小規模事業者の皆様に対し、引き続き政策を総動員して全力で応援するなど、たゆまぬ努力を継続していかなければならないというふうに考えております。人手不足に直面する我が国では、諸外国のように失業率の上昇を心配することなく生産性の向上に最大限注力することが可能である、正にピンチはチャンスだという考え方をしておりまして、省力化・デジタル投資の支援に加え、リスキリングによる生産性向上など含む労働市場改革ですとか、あるいは働き方改革の総点検など、人への投資拡大や多様な人材の活躍に向けた環境整備を進めることによって、人手不足というピンチを生産性の向上というチャンスに変えていくことが重要であるというふうに考えております。
将来に向けて、賃金所得を安定的に増加させていく観点から、国内投資については2030年度に135兆円、2040年度に200兆円とするという目標や、対日直接投資残高について2030年に120兆円、2030年代前半のできるだけ早期に150兆円にするという目標も官民が連携し、必ず達成しなければならないというふうに考えております。このため、GX・DX、経済安全保障等の分野を中心とした投資立国の取組、対日直接投資の誘致、科学技術イノベーションの強化、スタートアップの育成など、成長力を中長期的に高める政策対応を更に強化していく必要があるというふうに考えております。
この1年間、これら多くの課題の真摯に向き合った結果、新しい資本主義の実現に向けた歩みや前進をいたしました。なお、総理が本日の締めくくり発言で触れられたとおり、社会全体でいわゆる「中間層」の割合が減少しているという国民の皆様の安心に関わる課題は残っているものと認識をしております。本日をもって石破内閣での新しい資本主義実現会議は一区切りということになりますが、次の内閣にも有識者の皆様から頂戴したご意見とあわせ、残された課題や政策対応の方向性を引き継いでいただきたいというふうに考えております。そして、成長型経済への移行を必ず成し遂げ、今日より明日はよくなると実感できる社会の実現につなげていっていただきたいというふうに考えております。
私からの説明は以上でございます。本日の会議の具体的な様子は、後ほど事務方から説明をお願いしたいと思います。
2.質疑応答
(問)新しい資本主義実現会議の有識者を、経済同友会代表幹事を辞された新浪剛史氏が務めていますが、今後の処遇について教えてください。
(答)会議の有識者については、これまで会議の開催規定に基づき、新しい資本主義の取組を加速・発展させていくためにふさわしい方々を指名してきております。政府としては、今後とも会議の有識者の指名について適時適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
(問)ということは、現時点では対応についてははっきりとしたものは決まっていないということになりますでしょうか。
(答)今後とも適時適切に対応してまいります。
(問)ありがとうございます。明日、自民党の総裁選が投開票となります。これまでの候補者の論戦を踏まえ、新たな総裁、新政権に求めたいことを改めてお聞かせください。
(答)自民党総裁選について閣僚の立場としてコメントすることは差し控えますが、その上で申し上げれば、断固として最低賃金を暮らしていける水準まで引き上げると覚悟を決めて取り組んできた賃金向上でありますとか、あるいは日本国を、あるいは日本国民を未曽有の大災害から守り抜くための防災庁の設置でありますとか、恐れずに「関税より投資」と米国大統領に働きかけ、それを貫いて一定の合意、成果につながった日米関税交渉など、いずれも石破総理が会見で次の内閣に引き継いでもらいたいということを表明した、我が国の将来にとって大変意味のある、そういう取組があります。
誰が次の総理になられても、しっかりその流れを引き継いで、日本国、あるいは日本国民の将来を切り開いていっていただきたいというふうに思っております。
(問)有識者の新浪氏に関してお伺いします。今回も欠席されたということですが、何か新浪氏から今後の継続、あるいは今回の欠席の理由について説明があったかお願いいたします。
(答)新浪氏は、本日の会議は欠席をされましたが、その欠席の理由や今後の対応については、特に連絡を受けていないという報告を事務方から受けております。会議の有識者については、これまで会議の開催規定に基づいて、新しい資本主義の取組を加速・発展させていくためにふさわしい方々を指名してきたところでありまして、規定上、経済同友会の代表幹事という特定のポストに就任する方を指名するということにはなっておりません。
2023年5月に、経済同友会の代表幹事が櫻田氏から新浪氏に交代した際に、櫻田氏に代わり新浪氏を指名したという事実があるわけですけれども、それは、当時新浪氏が新しい資本主義の取組を加速・発展させていく上で適切な有識者であると判断したことによるものです。政府としては、今後とも、会議の有識者については適時適切に対応してまいります。
(問)先ほどの大臣のご発言にもありましたし、今日の総理の会議でのご挨拶にもありましたけれども、この政策については次の政権でも引き続きこの流れをという趣旨の発言がありましたけれども、会議体として、この新しい資本主義実現会議というものが次の新政権でも引き続き会議体として必要というふうに大臣はお考えでしょうか。
(答)本日をもって、石破内閣での新しい資本実現会議は一区切りとなります。この1年間、多くの政策課題に真摯に向き合った結果、成果を上げてきたということについては、先ほど申し上げました。このように、成長と分配の好循環が回り始めている今こそ成長型経済への移行を確実なものとすることがぜひとも必要であると考えております。
その上で、会議体自体の在り方については、次の内閣において適切に判断されるものと認識をしております。誰が総理になられても、最低賃金を含め「賃上げこそが成長戦略の要」であるという考え方や、成長と分配の好循環、そして成長型経済の実現を目指す一連の政策対応は、次の内閣でもしっかり引き継いで、それらを更に大きく発展させていっていただきたいというふうに考えております。
(問)今日の会議では、石破政権での政策の統括をされたと思うのですけれども、大臣のご所感と、道半ばと感じられている政策についてお伺いできますでしょうか。
(答)私は、新しい資本主義の実現に向けた一連の政策は、成長と分配の好循環、すなわち成長の果実をしっかり分配し、広く国民の所得を上げていくことによって次の成長につなげることを目指すものであるというふうに理解をしております。石破内閣は、「賃上げこそが成長戦略の要」であるという基本的な考え方の下で、こうした新しい資本主義の実現に向けた岸田内閣の取組を引き継ぎ、更に加速・発展させることによって成長型経済への移行を確実なものとすることを目指してまいりました。
様々な政策課題がある中で、私は人への投資の拡大、とりわけ最低賃金について、その近傍で働く全ての労働者が安心して暮らせる水準とすることに向け、全力で取り組んでまいりました。その結果、最低賃金については前年度比66円、プラス6.3%となり、全国加重平均1,121円、全ての都道府県で1,000円超となったものの、最低賃金近傍の労働者は全国に660万人存在し、EU指令の基準、賃金の中央値の60%、また平均値の50%という、最低賃金設定に当たって参照指標として加盟国に示されている、そういう基準に照らせば、我が国の直近の水準は中央値の47%、平均値の41%にとどまっているということもあります。
こうした実態に鑑みると、今後誰が総理になられても、また政府の体制いかんにかかわらず、最低賃金を2020年代に全国平均1,500円にするという目標の達成に向けて、たゆまぬ努力を継続していくことが必要であるというふうに考えています。なお、石破総理の締めくくりのご挨拶の中で、いわゆる中間層の割合が減少しているという課題を示されましたが、私としても同感でございます。
(問)次の政権に引継ぎでということでは、ホームページやインスタグラムで非常に印象的に石破総理が次の政権に引き継いでもらいたいことということで3つあって、1に賃金、2に防災庁、3に関税ですね。この1、2、3で、やはり優先順位は、多分あると思うのですが、賃金なのだろうと。今日の未来でも、やはり2020年代に1,500円、全国最賃ですね。やはりこれが1丁目1番地というか、もちろんこの3つのウエートづけとは言いませんけれども、やはり賃金、この3つは全部石破総理の大きな功績というか、実績なのだと思います。そのうちでもやはりこの1番目は賃金と、そういうふうに理解していいのかどうか伺いたい。
(答)いつも大変答えづらいご質問をされますが、私はトランプ関税を担当するようになる前から、選挙のたびにシングルマザーの方とか若い方に手を握っていただいて、暮らしていけるようにしてくださいということを言われています。そのたびに、本当に恥ずかしい思いをすると。
我々が設定をしている最低賃金の水準、これは私が直接の権限があるわけではありませんし、いろいろな経営の通常の支払い能力とかいろいろなことを勘案しながら、中央最低賃金審議会で目安が示されてということでありますけれども、全てをひっくるめて政治家として本当に責任を感じる、とにかく懸命にフルタイム働いても最低賃金の水準が低いために暮らしていけない国民がいると、その国民が選挙のたびに私の手を握って訴えかけてこられるということについては、やはりあえて申し上げれば、私の中で優先順位をつけるとすれば、最も早く、最優先で解決をしなければならないものであるということは、今ご質問いただいて改めて考えればそういうことかなと自分では思います。
ただ、その上で、これはいざというときのことなので、30年以内に6割から9割というふうに確率が改められ、あるいは20%から50%とかいろいろありますが、これも実際そこをきちっとやっておかないと、国が巨大自然災害を契機に傾いてしまう、その後衰退の道を歩むみたいなこともあり得ますし、またトランプ関税についてもきちっと対応しないと、これはこれで日本経済に大変大きなダメージがあるという話ですので、どれも本当に重要な問題であり、なかなか優劣つけ難い中ではあります。
しかし、強いてどれを一番急ぐのだという問いかけであるとすれば、少なくともフルタイム全力で働けば、ちゃんとお子様にご飯を食べさせてあげられると、あるいは今月もちゃんと家賃が払えると、そういったレベルで国民の皆様が安心して暮らしていける、そういうものを実現するのは、私どもの仕事の中ではもう最優先ということではないかということは申し上げておきたいと思います。
(問)確かに、大臣の元旦の言葉にもこの賃金の話が出ていますよね、今年。やはり、確かにずっとこれを信念でやっておられたというのはよく分かります。
あと、もう一つ伺いたいのは、やはりこういう次の政権に伝えたいことというのは、内閣府の担当大臣である大臣が言うこと自体が私は異例も異例のことだと、あえて3つ目、これこそが正に総理の副官と大臣がおっしゃっている趣旨なのかなと。唯一無二の腹心というのでしょうか、そういうふうに答えていただけなかったので、やはり副官というもの、この政権はやはり石破さんと副官の赤澤さんの政権だったと思う面があるのですけれども、副官という言葉はどういう言葉なのか。唯一無二の腹心という意味なのか、そこをせっかくなので伺いたいのですが。
(答)またこれもなかなかお答えするのは難しくて、私も総理が退陣を表明されたその前後はもう大変忸怩たる思い、残念な思い、いろいろな思いが正直あってああいう言い方をしましたけれども、ふだん巡航速度で運行しているときに申し上げるのは、私は総理の左腕であると、右腕の方はまた別におられますし、ただ、しっかりお役に立てるように頑張っていきたいということなのですね。
なので、副官という言葉にそんなにこだわらずにご理解をいただければと思いますけれども、とにかく全力で石破政権を支えてきたことは間違いありませんし、総理ととにかく忸怩たる思いとか、思い残すこととか残念な点というのがある点は共有をしていると、それは本当に強く共有をしているということでございます。なかなかほかの方と比べたりとかということは難しいところがあるので、大体この答えでご理解を賜りたいというふうに思います。
(問)関税について伺います。米国連邦政府は、予算の執行を受けて一部閉鎖が続いており、昨日予定していたロリンズ農務長官の来日と小泉農水大臣との会談が中止されるなど、外交日程にも影響が出ています。こうした状況を踏まえて、今般の日米関税合意の実行に、例えば5,500億ドルの選定とか、既に影響が出ているのか、また今後影響が生じる懸念があるのかについて大臣の考えをお聞かせください。
(答)米国東部時間10月1日に米国の継続予算が失効し、政府機関の一部が閉鎖をされたということについては承知をしております。他国の内政に関わることでもあり、あり得べき影響を含め、我が国としてコメントすること、あるいは私がコメントすることは差し控えますが、関連の動向について引き続き高い関心をもって注視をしてまいります。
日米間の合意についても、これまでどおり米側との間で誠実かつ速やかな実施に努めてまいりたいというふうに考えております。
(以上)