VOL.208 OCTOBER 2025
KAWAII CULTURE FROM JAPAN
[私が伝えたい日本(日本人インフルエンサー)]躍動する筆跡、書道パフォーマンスの世界
第18回(2025年) 書道パフォーマンス甲子園 文部科学大臣賞
Photo: 四国中央市
書道家でありアーティストでもある青柳 美扇さん。今月号では、青柳さんに書道パフォーマンスの魅力について語ってもらった。
書道パフォーマンスは、音楽に合わせて大きな紙に力強く筆で文字を書き上げる総合芸術です。静かに作品を仕上げる従来の書道に対し、観客と感動を共有する「ライブ性」が大きな魅力です。
人前で揮毫1する文化は古くから存在しました。中国では7世紀頃の書家・張旭が酔いながら髪で文字を書いた逸話が伝わり、日本でも空海2が席上揮毫を行った記録が残されています。しかし、そのような文化が「書道パフォーマンス」として広く認知されるようになったのは近年のことです。2008年、愛媛県立三島高校の書道部が「紙のまちを盛り上げたい」という思いから地域イベントで披露したことをきっかけに、全国的に注目を集めました。
その後、愛媛県四国中央市を舞台に「書道パフォーマンス甲子園」が創設され、日本最大規模の公式大会として定着しました。この大会のルールは、縦4m×横6mの大紙に、制限時間6分で作品を完成させるというもの。毎年全国から100校以上がエントリーし、優勝校には文部科学大臣賞が授与されます。観客動員は5千人を超え、誰でも無料で観覧できるのも特色です。
Photo: 四国中央市
ステージに立つ高校生たちは、仲間と共にテーマとなる言葉を選び、作品に込める思いや構成を何度も練り上げます。書と演技を融合させた大作は、青春そのものの輝きを放ち、観客に大きな感動を与えます。書道を学んだことがない人でも、その迫力や躍動感に心を揺さぶられるのが醍醐味です。
近年では、国内各地で書道パフォーマンスの体験型ワークショップやデモンストレーションも行われ、訪日外国人にとっても人気の文化体験となっています。筆を手にし、墨の香りと共に線を走らせる行為は、言葉を超えて「書の力」を実感できる貴重な体験です。こうした機会を通して日本文化への関心が広がり、私自身も、世界10か国以上での活動を中心に、大使館や国際交流基金での文化交流、教育現場などで書道パフォーマンスの魅力を紹介する機会が増えています。
Photo: アトリエ美扇
Photo: アトリエ美扇
書道パフォーマンスは、一度きりの舞台で生まれる唯一無二の芸術です。その迫力と感動は、言葉を超えて心に刻まれます。日本を訪れた際に、是非その瞬間を体感してみてください。
青柳 美扇
書道家・アーティスト。4歳より書を学び始める。世界10か国以上で書道パフォーマンスを披露。2020年国立競技場で行われた「天皇杯JFA第99回全日本サッカー選手権大会」決勝では約5.8万人の観客を前にオープニングアクトを務めた。世界遺産「高野山」での揮毫1をはじめ、CAPCOM「モンスターハンターライズ」、手塚治虫原作TVアニメ「どろろ」、「東京2025世界陸上」、「国立競技場」貴賓室作品など、数多くの作品、題字などを手がける。メディアでは、TBS「情熱大陸」、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」などに出演。伝統と革新をモットーに「書の魅力」を世界中に発信し続けている。
検索:青柳 美扇
- 1. 筆で文字を書く、又は、絵を描くこと。多くの人の前で揮毫を行うことを「席上揮毫」とも言う。
- 2. 774年生、835年没。唐(当時の中国)で修行を積んだ後、9世紀初頭に日本仏教の宗派の一つである真言宗を開いた日本の僧侶。書や詩にも優れた才能を発揮し、弘法大師とも呼ばれている。
By AOYAGI Bisen
Photo: Atelier BISEN; Shikokuchuo City