VOL.208 OCTOBER 2025
KAWAII CULTURE FROM JAPAN
大人や訪日外国人にも人気のカプセルトイ
カプセルトイの販売機が並ぶ様子。
Photo: 日本カプセルトイ協会
カプセルに入った小さなおもちゃがランダムに出てくるカプセルトイは、子どもから大人まで幅広い世代に親しまれている。中身のおもちゃはその緻密な作りから、日本らしいkawaii商品としてお土産としても訪日外国人からの人気を集めている。カプセルトイの歴史とその魅力について、日本カプセルトイ協会の代表理事に話を聴いた。
カプセルトイとは、小型の専用販売機に硬貨を投入し、回転式レバーを回すと出てくるカプセル入りのおもちゃ、またはその専用販売機を指す。カプセルトイは、手のひらに収まる小ささ、手軽な値段、何が出てくるかわからないという偶然性とそのコレクション性、SNSを使ってシェアする楽しさという「大衆的なkawaii」が魅力だ。また、人気キャラクターや企業とのコラボ商品などカプセルトイならではのヒット企画が次々に登場し、日本のkawaii文化を牽引する存在となっている。
19世紀末のアメリカに登場したガムボールを販売する販売機を起源とするカプセルトイは、1965年に日本に導入され、その歴史は60年にも及ぶ。1970年代後半から80年代にかけてはアニメキャラクターの消しゴムなどのカプセルトイがブームとなり日本中に広がった。2010年代に入ると、食品や日用品といった精巧なミニチュアなど、様々なカプセルトイが作られるようになった。日本カプセルトイ協会代表理事の都築 祐介さんは、現在まで続くカプセルトイの発展についてこう話す。
「昔は一つ100円程度でしたが、徐々に平均価格が上がっていき、今は400円前後が主流で、更に1,000円を超える高価格帯のものも登場しています。子どもはもちろんですが、現在のメインターゲットは大人世代です。大人が夢中になるのは、子ども時代を思い出させる懐かしさに加え、精巧で集めたくなるクオリティ、SNS映えする手軽さといった魅力がカプセルトイに詰まっているからです。市場規模も年々拡大しており、その成長の要因の一つは、新型コロナウイルス感染拡大の時期に閉店を余儀なくされた店舗の空きスペースに数百台規模の販売機を設置するカプセルトイ専門店が増加したことでした」
また、コロナ禍以前の2016年頃から、カプセルトイが訪日外国人のお土産としてブームになっていたことも成長のきっかけだ。商業施設に並ぶ多数のカプセルトイ販売機は、訪日外国人が記念撮影するほど注目を集めており、現在では日本を象徴する風景の一つとなっている。
「カプセルトイは小さくて持ち帰るのも簡単。日本のミニチュアやアニメのキャラクターは海外でも人気なので、日本らしいお土産としても最適です。精巧に作られていることも、日本ならではのクオリティとして喜ばれていると思います」
カプセルトイの新作は、毎月約700種類以上に上るという。
「現在も根強い人気を誇るのはキャラクターのシリーズです。子どもから大人まで幅広い世代から人気を集めています」
Photo: 株式会社キタンクラブ ©️nagano / chiikawa committee
その時代の人気キャラクターがカプセルトイのモチーフとなるのは定番の流れだが、近年は商品ジャンルも多様化している。
「自社製品をカプセルトイにする企業も増えています。消費者がSNSに投稿することで拡散され、自然と会社の知名度を上げてもらえるというマーケティングツールにもなっています」と都築さんは語る。
Photo: 株式会社キタンクラブ ©NISSIN FOOD PRODUCTS CO., LTD.
日本ならではのカプセルトイは進化を続け、大人にとっても子ども時代を思い起こさせる存在であり、世代を超えて楽しまれている。日本各地で見られるカプセルトイは、訪日旅行者にとって日本文化を身近に感じられる存在であり、多彩なデザインのミニチュアやキャラクターグッズは、日本の“kawaii”お土産として親しまれている。
- 1. 日本のイラストレーターであるナガノによる「ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ」という漫画の通称。2020年よりX(当時Twitter)で投稿を開始し、書籍化やアニメ化もされている。
By TANAKA Nozomi
Photo: Japan Capsule Toy Association; KITAN CLUB Co., Ltd. (©nagano / chiikawa committee ©NISSIN FOOD PRODUCTS CO., LTD.); PIXTA