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VOL.201 MARCH 2025
Traditional knowledge and skills of sake-making with koji mold in Japan 甘く芳醇な香りとまろやかなコクを生む鹿児島県の焼酎(しょうちゅう)造り

焼酎しょうちゅう造りの一場面。一次仕込み(本文参照)の様子。
Photo: 薩󠄀摩酒造

焼酎しょうちゅうは日本の蒸留酒の一つで、九州地方が主な産地である。鹿児島県で昔ながらの焼酎造りの製法を守り続ける薩摩さつま焼酎の蔵元に話を聴いた。

蒸留酒である焼酎しょうちゅうは、蒸留を行うことによって日本酒との明確な違いが生まれ、アルコール度数がより高い1ものになっている。沖縄県の伝統的な酒である泡盛あわもり(「素材の甘みや複雑な芳香を楽しめる沖縄県の泡盛あわもり」参照)も焼酎の一種であるが、泡盛は細長い形のタイ米のみを使用しているのに対し、焼酎が原料にサツマイモや大麦などを多く使用している点などで異なる。

焼酎造りに使われる麴菌こうじきん2は温暖な気候が適していることから、日本列島南西部に位置する九州地方に焼酎の産地が多い。九州の最南端に位置する鹿児島県の西半分は、かつて「薩摩国さつまのくに」と呼ばれており、サツマイモの産地としても知られている。そのサツマイモを原料として造られるのが「薩摩焼酎」だ。代表的な蔵元の一つである鹿児島県枕崎まくらざき市の薩󠄀摩酒造でマーケティングを担当するほんぼう 和久かずひささんに話を聴いた。

「薩摩焼酎とは、鹿児島県内で製造され、鹿児島県産のさつまいもと水を使用し、米麹または芋麹を使用して製造される焼酎のことを指します。2005年にはWTO(世界貿易機関)によって地理的表示(GI)3に認定され、地域ブランドとして国際的に保護されています」

薩摩焼酎造りでは、原料のサツマイモの鮮度が風味を左右するため、同社の蒸溜所はとれたての新鮮なサツマイモを使用できるようにサツマイモ畑に囲まれた場所にあるという。薩摩焼酎の伝統的な製造の流れは次のとおりだ。まず蒸した米に種麹を混ぜて麹造りをする(製麹せいぎく)。麹造りには約2日間かかる。できた麹に水と酵母を加え、「一次仕込み」を行い、約6日間発酵させる。できた1次もろみに蒸して砕いたサツマイモと水を加え、約2週間発酵させる「二次仕込み」を行う。こうして造られる「モロミ」(もろみ、「醪」等とも表記)を1回蒸留することで生まれるのが本格焼酎だ。蒸留を1度だけ行うことにより、原料がもつ香りや風味が活かされている。薩摩焼酎は、甘く芳醇な香りとまろやかでコクのある味わいが特徴だ。

「当社の蒸留所の一つ、花渡川けどがわ蒸溜所 明治蔵では、現在も杜氏とうじ4をはじめとする職人集団が昔ながらの手作業で焼酎を製造しております。自然換気により温度調整された麹造り専用の部屋・こうじむろで造られた麹を使い、かめ壷で仕込んでいます」と本坊さん。


蒸した米にたねこうじを均等に広げる作業。麹造りの工程の一つ。
Photo: 薩󠄀摩酒造

かめ壺が並ぶ仕込み場。
Photo: 薩󠄀摩酒造

鹿児島県では、焼酎は生活に深く根付いたお酒であると本坊さんは話す。

「鹿児島県には「だれやめ」と呼んでいる晩酌ばんしゃくの習慣があります。「だれ(疲れ)」を「やめる(取る)」という方言で、疲れを癒すためにお酒を飲むという習慣で、薩摩焼酎はその中心にあるお酒です。おすすめの飲みかたは「お湯割り」です。同じ蒸留酒のウイスキーはストレートや氷をいれたロックで飲むのが一般的ですが、焼酎はお湯で割ることによって、香りや甘みが引き立ちます。体を温める効果もあります。また、豚の角煮やさつまあげ5といった郷土料理、洋食や中華料理とも相性が良いため、食中酒としても親しまれています」


鹿児島県の郷土料理であるさつま揚げは甘味とコクのある薩摩焼酎に合うという。

「花渡川蒸溜所 明治蔵では海外からの見学者にも対応しており、英語と中国語のパンフレットをご用意しています。さらに、テロップ付きの製造動画を活用し、多言語での案内を行っています。見学された海外のかたからは「焼酎の伝統的な製造過程を間近で見られて感動した」などの声をいただいています。趣のある建物や職人たちが手作業で製造している様子が海外のかたには新鮮で、興味深いようです。試飲コーナーもあります。ぜひ、鹿児島へお越しいただき本場の焼酎造りやその味わいを体験していただきたいです」。


薩摩焼酎の伝統的な製造工程を見学できる鹿児島県枕崎市の花渡川蒸溜所 明治蔵。
Photo: 薩󠄀摩酒造
  • 1. 酒税法で日本酒はアルコール度数22度未満と定められており、本格焼酎(単式蒸留焼酎)は酒税法でアルコール度数45度以下のものと定められている。一般的な日本酒は15から16度程度のものが多いのに対し、本格焼酎は20度や25度のものが多く流通している。
  • 2. 「麹菌」とは、カビの一種である微生物を指し、一方、「麹」とは、蒸した米やサツマイモ、麦などの穀物に麹菌を繁殖させたものを指す。つまり、麹菌は微生物そのものであり、麹はその麹菌を利用して作られた発酵のための材料である。
  • 3. 特定の地域で生産された品質の高い食品や酒類を保護するため、WTO(世界貿易機関)が承認する制度。日本では「日本酒」などが登録されており、地域の伝統や特性を保証し、模倣品を防ぐ目的がある。
  • 4. 焼酎造りの総責任者。焼酎造りの職人集団を統括する者。
  • 5. 魚のすり身に調味料を加えて揚げた鹿児島の郷土料理で、外は香ばしく中はふんわりした食感が特徴。
By KUROSAWA Akane
Photo: Satsuma Shuzo Company; PIXTA
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