リチウムイオン電池、誤った捨て方で火災に!
モバイルバッテリー、加熱式たばこ、ハンディファン、ワイヤレスイヤホン、スマートフォン、コードレス掃除機、パソコン、ゲーム機などのリチウムイオン電池を使用した製品の誤った捨て方で、ごみ処理施設や収集運搬車で火災が発生している様子。
POINT
私たちが使っている電化製品の多くは「リチウムイオン電池」が使用されています。リチウムイオン電池は軽量で寿命が長いことから、スマートフォンやモバイルバッテリーなどに活用され、今や生活に欠かせないものとなっています。しかし、使用後は正しく処分しないとごみ処理施設などでの火災の原因ともなります。近年、リチウムイオン電池を使用した製品の増加と比例するように、火災事故等の件数も急増し、大きな問題となっています。そんなリチウムイオン電池の処分方法や、誤った廃棄による影響などを解説します。
1リチウムイオン電池による火災が増加
リチウムイオン電池とは?
リチウムイオン電池は、充電することで繰り返し利用可能な電池の一つです。小型・軽量でエネルギー効率が高く、経済性にも優れていることから、スマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機、モバイルバッテリー、加熱式たばこ、コードレス掃除機、電気かみそりといった身の回りの様々な製品で使用されています。
[画像:鏡の前でひげを剃る男性とコードレス掃除機を使う女性のイラスト。]
ごみ処理時の火災事故が増加
リチウムイオン電池は、強い衝撃が加わることなどをきっかけに発火するおそれがあります。リチウムイオン電池が誤った分別区分でごみに出され、そのリチウムイオン電池がごみ収集車の中で圧縮されたり、ごみ処理施設の破砕機等で衝撃が加わったりすることで発火し、大規模な火災事故につながったケースもあります。近年、リチウムイオン電池が原因とみられるごみ処理時の火災事故等の発生件数は増加傾向にあり、リチウムイオン電池の混ざった一般ごみから出火し、消防隊等によって消火されたケースは、令和4年度(2022年度)が4,260件だったのに対し、令和5年度(2023年度)は8,543件と倍増しています。
また、ごみ処理施設によっては、リチウムイオン電池による火災で施設の設備が破損し、復旧に数億円を要したケースや、長期間ごみの回収が停止となったケースが発生しています。このような状況は、住民にとっても大きな負担となってしまいます。
資料:環境省「一般廃棄物処理実態調査(令和5年度実績)」から政府広報室作成
平成29年(2017年)6月に新潟市新田清掃センターで発生したリチウムイオン電池が原因と推測される火災(写真提供:新潟県新潟市)
火災の原因は「モバイルバッテリー」が最多
火災事故等を原因品目別にみると、モバイルバッテリーが最も多く、次いで加熱式たばこ、コードレス掃除機の順になっています。小型で安価なものや、表面がプラスチックのものが多い傾向にあり、それらにリチウムイオン電池が内蔵されているか分かりづらいものもあります。お使いの製品が充電することで繰り返し使用することができるもの、ワイヤレスでコンセントにつながなくても動く・光るようなものなどは、リチウムイオン電池が使用されている可能性があります。
[画像:リチウムイオン電池が原因とみられる火災の品目別発生件数。モバイルバッテリー170件、加熱式たばこ115件、コードレス掃除機72件、スマートフォン33件、電気かみそり32件、電動工具22件、ハンディファン17件、ロボット掃除機15件、電動式玩具13件、作業服用ファン11件、ワイヤレスイヤホン10件、その他73件。]資料:環境省「一般廃棄物処理実態調査(令和5年度実績)」から政府広報室作成
2リチウムイオン電池を処分するときは
安全に処分するために
リチウムイオン電池を使用した製品を処分するときは、発火リスクを減らすため製品が動かなくなるまで電力を使い切りましょう。スマートフォンやハンディファンなど電池が内蔵されている製品は、無理に電池を取り外すのは危険です。分解せず、そのまま処分してください。
処分する際は、お住まいの市区町村の捨て方のルールを必ず確認しましょう。製品から電池が取り外せる場合や取り外せない場合によって回収方法が異なることもあるので注意が必要です。市区町村によって、「危険ごみ・有害ごみ」、「電池」や「不燃ごみ」など分別区分は異なります。詳しい回収方法は、市区町村のホームページなどで確認することができます。
自治体が回収を行っていない場合でも、製造メーカーなどによる回収が行われています。
[画像:住んでいる自治体のリチウムイオン電池の捨て方をスマホで検索する女性のイラスト。]
製造メーカーなどによるボックス回収
製品から取り外した電池などを処分するときは、一般社団法人JBRCによるボックス回収を利用することができます。資源有効利用促進法により、リチウムイオン電池を始めとする小型充電式電池のメーカーや使用機器メーカーなどは、使用済み電池の自主回収・リサイクルが義務付けられています。これらのメーカーなどで構成される一般社団法人JBRCは、公共施設や家電量販店などに「小型充電式電池リサイクルBOX」を設置し、製品から取り外されたリチウムイオン電池やモバイルバッテリー本体を回収しています。
お近くの回収場所や回収対象の電池などは一般社団法人JBRCのウェブサイトから確認できます。破損・膨張したものや、JBRC会員メーカー以外の電池は回収対象外です。処分したい電池は回収対象か、施設のどこで回収しているかなど、持ち込む前に確認しておきましょう。
[画像:一般社団法人JBRCが設置する、小型充電式電池を回収する外装BOXとリサイクルBOX缶。]
小型充電式電池リサイクルBOX(写真提供:一般社団法人JBRC)
コラム1:リチウムイオン電池による火災防止強化キャンペーン
環境省では9月から12月までの4か月間、「リチウムイオン電池による火災防止強化キャンペーン」を実施します。夏が終わりハンディファンの廃棄が増えることや、年末の大掃除を前に、自治体や事業者等と連携したリチウムイオン電池の回収、各種イベント等の実施が予定されています。
詳しくは、環境省の特設サイトをご覧ください。
コラム2:不燃ごみで出せば捨てられると思っていませんか?
リチウムイオン電池が原因の火災事故等が発生した市区町村において、環境省が令和6年度(2024年度)に実施した調査によると、最も火災事故等が発生している分別区分は、「不燃ごみ」でした(全体の72%)。
一般的に不燃ごみは、回収したごみをそのまま埋め立てるのではなく、まず、ごみを細かく砕いて容積を減らし、次にごみの中にある資源物を回収した後に処理をします。不燃ごみにリチウムイオン電池などが紛れていると、細かく砕く段階で電池に加わった衝撃により発火し、そして電池の中の電解液に引火して火災につながることがあります。安易に不燃ごみとして処分せず、必ず自治体のルールを確認し、そのルールに沿って処分してください。
まとめ
誤った分別区分で捨てられた使用済みのリチウムイオン電池によって大規模な火災事故につながるケースもあります。ごみ処理施設で火災事故が起きると、施設の修理に多大な費用を要することはもちろん、ごみの収集・処分が滞り市民の生活に影響が出ることもあります。お住まいの自治体のルールを確認し、正しく処分しましょう。
(取材協力:環境省 文責:内閣府政府広報室)