今こそ考えよう! 日本の気候変動2025
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ラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子「日曜まなびより」」
今回のテーマは「今こそ考えよう! 日本の気候変動2025」。
ここ数年、猛暑日や熱帯夜を伝えるニュースをよく耳にするなど、日本の夏が暑くなったと感じませんか? 「日本の気候変動2025」では、日本で実際に起きている気候変動について、気温、降水、台風、海面水温などの要素ごとに“観測結果”と“将来予測”を示しています。この報告書には、最新の科学的知見も盛り込まれており、これらの情報は、国や地方自治体などが今後の極端な気温の変化や大雨の頻度などを考慮し作成する、気候変動適応計画などにも活用されています。
番組では、過去の猛暑や豪雨の一部は“地球温暖化の影響がなければ起こり得なかった”とする研究結果や、報告書で示された気温と大雨の将来予測についてご紹介。私達の行動で変わる未来の気候について、考えてみましょう!
[画像:杉浦太陽さん、村上佳菜子さん、気象庁ゲストの3人が、「日本の気候変動2025」のポスターを紹介。]
- ゲスト
- 気象庁 大気海洋部
気象リスク対策課
気候変動対策推進室
苗田 陸生
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和7年(2025年)8月3日
- 再生時間
- 19分24秒
- 配信終了予定日
- 令和9年(2027年)3月31日
文字で読む
- 杉浦
- 佳菜子ちゃん、知ってますか? 天気予報などの気象業務が始まって、今年で150周年なんだって。気象庁の前身となる東京気象台が、現在の港区虎ノ門で気象業務を開始したのが1875年、明治8年でございます。この年から、政府の気象機関としての地震観測と1日3回の気象観測が始まったんだって。
- 村上
- じゃあ、虎ノ門が発祥の地なんですね。
- 杉浦
- そうなんだねー。で、全国の天気予報の発表が開始されるようになったのはですね、気象業務がスタートして、9年ほど経ってからだそうです。
- 村上
- 「全国の天気予報」って、今では当たり前のように聞いていますけど、初めはスゴイことだったんでしょうね。
- 杉浦
- スゴイことなのよ! 天気を予想する!? みたいな。
- 村上
- 当たり前に感じちゃだめですよね。
- 杉浦
- そうよ! ちなみに、最初の全国の天気予報は「全国一般 風ノ向キハ定リナシ 天気ハ変リ易シ 但シ雨天勝チ」っていうものだったんだって。
- 村上
- えっ。全然意味が分かんなかった(笑)
- 杉浦
- これを今の言い方にすると、「全国的に風向きは定まらず、天気は変わりやすいでしょう。ただし、雨になるところが多くなりそうです」っていう感じ。
- 村上
- 日本全国で同じ天気予報って、ちょっとびっくりですよね。今考えるとありえないじゃないですか。はずれてるなーって思っている人、結構いたんでしょうね。
- 杉浦
- だから「ただし、雨が降るかもよ?」みたいな(笑)
- 村上
- なるほどね(笑) そっか...。今のように全国各地の、しかも精度の高い天気予報が発表できるようになったのは、150年の積み重ねがあるからっていうことですよね。
- 杉浦
- 積み重ねですねー。気象庁は150年もの間、気象や地震、火山といった自然現象を観測・監視して、日々の天気予報や、大雨・地震・津波・火山などの警報を届けることで、みんなの生活や命を守り続けているんだよね。
- 村上
- 最近は地球温暖化の影響で、災害を引き起こすような大雨が多くなってきているし、実感もあるし。この先も多くなってくるって言われてますから、今後ますます気象庁の存在が重要になってきますよね。
- 杉浦
- 大事なんですよ! 実は気象庁の役割は、自然現象の観測データ収集や情報提供のほかに、もう一つ重要な役割があるんですけども、佳菜子ちゃん、何でしょうか?
- 村上
- えー...、何ですか!?
- 杉浦
- これは「未来を予測する」ことなんだって! これは、なかなかできることじゃないですけども、膨大な観測データを基にスーパーコンピュータを用いて、未来の大気や海洋の状態を予測して、日々の気象予報だけでなく、100年先の気候変動の情報を提供すること、これも気象庁に求められている役割なんだって。
- 村上
- 100年先!? そんな先まで!!
- 杉浦
- 近年、気候変動が世界中で進んでいるでしょ。だから、日本では2018年に「気候変動への対策は、しっかりした科学の知識に基づいてやろう」と法律で決まったの。それで、気象庁と文部科学省が、国や自治体、事業者、そして、国民のみんなが気候変動について考えるときに役立つように、自然科学の研究などから分かった情報をまとめた「日本の気候変動2020」っていう資料を作って公開したんだって。そして、その最新バージョン「日本の気候変動2025」が、今年5年ぶりに公表されたんだよね。
- 村上
- 最新バージョンということは、新しい情報も盛り込まれているってことですよね。
- 杉浦
- そういうことです! ここからは、今日の講師に伺っていきましょう! 気象庁気候変動対策推進室の苗田 陸生さんです。
- 村上
- 苗田さん、まずは「日本の気候変動2025」とはどういったものか、教えてください。
- 苗田
- はい。「日本の気候変動2025」は、日本における気候変動に関して取りまとめた報告書です。温室効果ガス、気温、降水、台風、海水温などの要素ごとに、過去から現在までの「観測結果」と「将来予測」を示しています。
- 杉浦
- 気象庁のホームページで公開されていますので、僕もちらっと見てみたんだけど、基本情報を網羅している「本編」は約80ページ、より詳しい「詳細編」は、なんと400ページ近くに及ぶ超大作なんですね。だから、今日はその中から「気温」と「大雨」に関する「観測結果」と「将来予測」をダイジェストで教えていただきましょう。
- 村上
- では、まず「気温」について、どんな観測結果が示されていますか?
- 苗田
- はい。日本の年平均気温は1898年から2024年の間に、100年当たり1.40°Cの割合で上昇しています。これは100年を超える観測結果から分かった、日本の気温が長期的に上昇していることを示す数値です。
- 杉浦
- 「1°C上昇」って聞いても、「たった1°Cなら大したことない」と思うかたがいるかもしれませんが、そうではないんですよね?
- 苗田
- はい。「1°C上昇」とは、過去から現在までの平均的な状態の変化ですから、日々の寒暖差などの変動全体で「1°C底上げされる」ということになります。このため、実際の日々の気温は1°C上昇にとどまらず、より高温の時期が出現することもありえるという数値です。
- 村上
- そうですよねー。近頃の日本の夏は1°C上昇なんてもんじゃないですよね。
- 杉浦
- もっと暑いよね! ずっと暑い。
- 苗田
- この、年平均気温が長期的に上昇しているという変化は、極端な気象現象の発生にも影響を与え、猛暑日や熱帯夜などを発生しやすくするんです。実際、近年は真夏日や猛暑日、熱帯夜の日数が増加してきています。
- 村上
- そういえば、数年前から「40°C超え」を伝えるニュースって、すごい増えましたよね。私がこどもの頃って、そんなニュース、なかったですよねー?
- 杉浦
- なかったね。「35°C越えましたー!」っていうことが、大ニュースだった。
- 村上
- そっかー。40°Cはなかったですよね。この報告書では私たちがなんとなく感じていたことを、きちんとした観測データを基に分析して、しっかりと裏付けてくれているんですよね。
- 苗田
- はい。また、今回の報告書の中では、熊谷で41.1°Cを記録した2018年7月の猛暑や、統計開始以降最も暑かった2023年夏の猛暑などの、近年の猛暑事例のいくつかは、「地球温暖化による気温の底上げがなければ起こり得なかった」という研究結果も新たに示しています。
- 杉浦
- これもう、人間が二酸化炭素などの温室効果ガスを排出して、地球の平均気温を上昇させていなければ、それらの猛暑は起こっていなかったという、裏付けがなされたということですよね...。
- 苗田
- 大雨についても同様で、近年の大雨事例のいくつかについて、地球温暖化の影響により、大雨の発生確率と強度が大きくなったという、研究結果を新たに示しています。西日本を中心に全国的に広い範囲で記録的な大雨となり、死者行方不明者が232名にも上った平成30年7月豪雨がその一つの例です。
- 村上
- この結果は重く受け止めなければいけませんね。
- 杉浦
- そうだね...。
- 村上
- 苗田さん、ここからは「日本の気候変動2025」で示している将来予測について教えてください。
- 苗田
- はい。この報告書では、地球温暖化の進み具合によって予測結果が変わってくるため、21世紀末までの将来予測を二つのシナリオで示しています。一つ目は「世界中の国が協力して温室効果ガスの排出を減らし、世界の平均気温の上昇を工業化以前と比べて、2°Cまでに抑えられた場合」です。
- 杉浦
- 工業化以前というのは、今のようにたくさんの工場ができて、二酸化炭素などの温室効果ガスを発生させていなかった頃、19世紀頃ですよね。
- 苗田
- はい。そして二つ目のシナリオは、「温室効果ガス削減の対策があまり進まず、世界の平均気温が工業化以前と比べて4°C以上上がってしまった場合」です。この二つのシナリオを比べることで、温室効果ガスの排出量をどれだけ減らせるかにより、将来の気候がどれほど変わるのか、はっきりと分かるようになっています。
- 村上
- それぞれのシナリオでは、大きな違いが出てるんですか?
- 苗田
- はい。例えば2°C上昇シナリオの場合、猛暑日は、20世紀末と比べ全国平均で年間3日ほど、4°C上昇シナリオの場合、18日ほど増えることが予測されます。また熱帯夜も同様で、2°C上昇シナリオの場合は、20世紀末と比べ全国平均で年間8日ほど、4°C上昇シナリオの場合は、38日ほど増えることが予測されます。
- 村上
- そんなに違うんですね。シナリオの違いで、猛暑日は6倍、熱帯夜だと4倍以上も増えちゃうってことですよね。
- 杉浦
- 大変なことですね。また、これもあくまで全国の平均日数だから、熱帯夜の場合だと38日をはるかに超えて増える所もあれば、さほど増えない所もある、ということですね。実際、1880年代の東京の熱帯夜の日数は、多くても年間6日ほどだったのね。でも、2023年の東京の熱帯夜、57日です。もうすでに38日を超えてると。増えてるね...。
- 苗田
- 特に東京などの大都市は、地球温暖化の効果にヒートアイランド現象が加わることで、全国平均を上回る割合で上昇しています。ヒートアイランド現象は、人工的な熱の排出や、アスファルト、コンクリートなどの増加、建物の高層化や高密度化により、都市の気温が周囲よりも高い状態になる現象です。
- 村上
- このまま、なんの対策も取らずに年平均気温が4°C上昇してしまったら、21世紀末には、確実に暮らしにくい世界が待っているって感じですよね...。では「大雨」についての将来予測はどうですか?
- 苗田
- はい。「大雨」についてはどちらのシナリオでも、全国平均では発生頻度が増加すると予測しています。例えば、1時間に50ミリメートル以上の降水量となる非常に激しい雨の年間発生回数は、2°C上昇シナリオの場合で20世紀末の約2倍、4°C上昇シナリオの場合で約3倍です。
- 杉浦
- 1時間に50ミリメートル以上の降水量の大雨は、「滝のように降る雨」「ゴーゴーと降り続く雨」。傘は全く役に立たない、すごい雨。
- 村上
- そうですよね。そんな雨が3倍に増えるなんて、想像だけでももう恐ろしいですよね。では、最近天気予報やニュースなどでたまに聞く、「50年に1回」とか「100年に1回」っていう大雨の回数も増えますよね?
- 苗田
- そうですね。工業化以前の気候での「100年に1回の大雨」は、世界の平均気温が工業化前と比べて、2°C上昇した時で100年におよそ3回、4°C上昇した時でおよそ5回に増えると予測しています。
- 杉浦
- 今でも大雨による災害が度々発生していますから、大雨の回数が増えたり、強度が増したりするのなら、それらを考慮したインフラ整備などを考える必要がありますよね。河川の堤防を高くするとか、雨水を流すための下水道の整備とかね。
- 苗田
- そうですね。はじめにお伝えしましたが、この「日本の気候変動2025」で示されている情報は、国や地方自治体、事業者など各分野の方々が、今後の極端な気温や大雨の発生頻度などを考慮した、気候変動適応計画などの取組を考える際に、役立てられることを期待して、公表しています。実際、前回の報告書は、各省庁や都道府県などに活用いただいているところです。最新の報告書についても、是非、より多くのかたにご活用いただければと思っています。
- 村上
- 私たちも、2°C上昇と4°C上昇で、どれだけ気候変動に違いが出るのか分かったので、防災意識を高めるだけでなく、自分の行動を見直すきっかけにしたいですよね。
- 杉浦
- そうだね。エコ活動をちゃんとしないと、とんでもない未来になっちゃうからね。
- 苗田
- はい。「日本の気候変動2025」では、今日話題に上がった「気温」や「大雨」だけでなく、日本近海の平均海面水温が上昇することや、沿岸の海面水位が上昇すること、台風の強度が強まることなど、様々な観測結果や将来予測などの情報を示しています。報告書の概要版は、一般のかたにも分かりやすいよう、コンパクトに情報をまとめておりますので、皆さんも是非一度、日本の気候変動の状況をご覧になってください。
- 村上
- 今日の話を聞いて私が特に注目したのは、「「日本の気候変動2025」を見て現実を知ろう」です。
- 杉浦
- 今日はダイジェストでしたから、読まないとだよね。僕は、「未来の地球を変えるのは僕ら自身!」と。一人ひとりの意識で変えられますから。
- 村上
- そうですね。変えていきましょう!
ラジオCM
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