暮らしに息づく "まちなみ遺産" 伝建制度50年
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ラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子「日曜まなびより」」
今回のテーマは「暮らしに息づく“まちなみ遺産” 伝建制度50年」。
岐阜県の白川郷や京都の産寧坂など歴史的な集落や町並みをまるごと守る「伝建制度」。正式名称を「伝統的建造物群保存地区制度」というこの制度は、今年で創設50年。地元の市町村を中心に、昔ながらの町並みや風景などの外観維持だけでなく、建物の耐震補強なども行い、地域住民が伝統を守りながら快適に暮らし続けられるよう、地域全体での計画的な保存・活用を進めています。そんな“まちなみ遺産”とも言える各地域は、旅先としても魅力的。
番組では、全国の“まちなみ遺産”の中から、400年以上続く伝統工芸を身近に感じられる鋳物師町や、郷土料理や満天の星空を満喫できる山村集落など穴場スポットをご紹介。地域の文化を未来へつなげる「伝健制度」についても学んでいきます!
[画像:杉浦太陽さん、村上佳菜子さん、文化庁ゲストの3人が、「伝統的建造物群保存地区制度 創設50年」のポスターを紹介。]
- ゲスト
- 文化庁 文化財第二課
文化財調査官
村上 玲奈
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和7年(2025年)7月13日
- 再生時間
- 19分41秒
- 配信終了予定日
- 令和9年(2027年)3月31日
文字で読む
- 杉浦
- 佳菜子ちゃん、「岐阜県の白川郷」は知ってる?
- 村上
- もちろんです。東海三県ですから。すごく素敵ですよねー!
- 杉浦
- あの町並みは行ったら感動を覚えるもんねー。「岐阜県の白川郷」と言えばもう、世界遺産ですよ。1995年に富山県の五箇山と共に「白川郷・五箇山の合掌造り集落」としてユネスコの世界遺産に登録されております。この登録が実現したのは、今日のテーマである「伝建制度」も一役買っていると言えるんですね。
- 村上
- この「伝建制度」って初めて聞きました。
- 杉浦
- これね、正式名称はちょっと長いんですけど「伝統的建造物群保存地区制度」。略して「伝建制度」。簡単に説明すると、歴史的な建造物が多く残る地区をまるごと「集落・町並み」として守る制度。この制度が創設されたのが1975年で、白川郷は翌年の1976年に「白川村荻町」として「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されているということですね。
- 村上
- 1976年ということは、世界遺産に登録される19年も前のことなんですね。
- 杉浦
- そうそう。白川郷は伝建制度によりずっと守られていたから、今でも昔ながらの町並みを僕たちも見ることができると。かけがえのない集落として世界遺産にも登録されたと言っても言い過ぎじゃないよね。
- 村上
- そうですよねー。それで、その伝建制度が今年で50年なんですよね? すごいですね。白川郷以外にはどんな地区が選定されているんですか?
- 杉浦
- これがね、結構たくさんあるんですよ。例えば、武家町の秋田県にある仙北市・角館、茶屋町の石川県金沢市・東山ひがし、門前町の京都市・産寧坂、商家町の岡山県倉敷市・倉敷川畔など、全国43道府県106市町村129地区に及びます。
- 村上
- すごいですねー! ほんとにどの地区も素敵な所ですよね。観光地としても有名ですよね。
- 杉浦
- そうそう! だけど、この「伝建制度」についてはあまり知られていないということで、ここからは、今日の講師に教えていただきましょう! 文化庁文化財第二課の村上 玲奈さんです。
- 村上
- 村上さん、先ほど「伝建制度」は歴史的な建造物が多く残る地区をまるごと「集落・町並み」として守る制度と聞いたんですが、もう少し詳しく教えていただけますか。
- 文化庁 村上
- はい。「伝建制度」は、人々の暮らしや文化が今でも感じられる歴史的な集落や町並みを保存し活用していく制度です。ポイントは、伝統的な建物を単体で捉えるのではなく、同じような特徴を持った建物が集まっていることを評価し、その周囲の環境も含めて価値があるとして、大切にするところです。
- 杉浦
- 点ではなく面で守っていく制度ということですね。
- 文化庁 村上
- はい。この制度では、伝統的な建造物の集まりで価値の高い「伝統的建造物群」と、それを取り囲む環境を、一体的に面として守るために、市町村が「伝統的建造物群保存地区」というエリアを定めます。また、市町村はその地域の保存活用に向けた計画を策定し、保存・活用を進めていきます。国では、市町村の申出に基づき、市町村が定めた保存地区のうち日本にとって価値が特に高いものを「重要伝統的建造物群保存地区」に選定して、地元の取組を支援しているんです。
- 杉浦
- 制度の主体となるのが、市町村というのもポイントですね。
- 文化庁 村上
- そうなんです。戦後、日本では都市部に人口が集中し、道路などの整備が急速に進みましたが、それに伴って昔からあった建物が次々と姿を消し、昔ながらの風景が少なくなってしまいました。この状況に危機感を抱いた市民の方々が、「懐かしい」と感じる風景を大切にしながら、まちづくりを進めようと市民運動を興し、その声に応えて市町村が独自に条例を制定し、歴史的な集落や町並みを保護する取組が生まれたんです。
- 村上
- 伝建制度ができるきっかけは、市民のみなさんの声だったんですね。
- 文化庁 村上
- はい。また、伝建制度により守られるのは歴史的な集落や町並みだけではありません。人々の暮らしや、食文化、伝統的な建築技術、お祭りなど地域の文化、そうしたものも守ることにつながっています。
- 村上
- 「伝建制度」は地域のかけがえのない文化を未来につなげるために、とても役立っている制度なんですね。
- 杉浦
- 佳菜子ちゃん、ちょっとこの写真を見てみて。左側が、「重要伝統的建造物群保存地区」に選定された当時の町並みの写真。右側が現在の町並み。見比べてみてどう? この下郷町大内宿とか。
- 村上
- だいぶ変わりましたね。でも、ちゃんと守られながら整備されてる感じがします。
- 杉浦
- そう。当初より、茅葺きの屋根が増えてるんだよ。
- 村上
- 確かに! 前の写真は、茅葺屋根が表に出てない状態ですもんね。
- 杉浦
- そうそう。だから、いい感じに修理されてるんだよね。そしてこちら、高山市の三町。これも町の形は一緒なんだよね。
- 村上
- 一緒なんだけど、右側の古めかしい建物が新しく出来てますね。
- 杉浦
- 現在の方がきれい。保存しながら、きれいになってるんだよね。
- 村上
- 確かに! 村上さん、これはどうしてですか?
- 文化庁 村上
- 伝建制度は地区の保存と活用を目的としていますので、ただ昔の風景をそのまま残すわけではありません。例えば、伝統的建造物は定期的に修理し、外観を維持するだけでなく、安全に暮らし続けるために必要な耐震補強なども行います。石垣や樹木など、地区の特徴を示す物も必要があれば整備します。また「修理する景色」と書いて「修景」と言うんですが、伝統的建造物以外の既存の建造物や、地区内に新築される建造物の工事の際には、周りと調和するよう外観を整備しています。このように、人々が伝統を守りながらそこで快適に暮らし続けられるように、地元の市町村では計画的な修理や整備を行っているんです。
- 村上
- 「修景」って言うんですね。それで茅葺きの建物や、昔の町並みに調和する建物が増えているんですね。では、保存地区の活用についてはどうですか? どのように活用されてるんですか?
- 文化庁 村上
- それはいろいろなケースがありまして、例えば、伝統的建造物をレストラン、宿泊施設、シェアオフィスなどとして活用したり、こどもたちがかまどでご飯を炊いたり、畳の上で日常生活を過ごしたりなど昔の体験ができる場として、地区内の保育園や児童施設が活用している地区もあります。
- 杉浦
- 活用例はバラエティーに富んでいるんですよね。ということで、ここからは全国に129地区もある「まちなみ遺産」、「重要伝統的建造物群保存地区」の中から穴場スポットに注目してみましょう! 白川郷や京都の保存地区は多くのかたが知っていますけども、旅先としても魅力的な「まちなみ遺産」は他にもいっぱいあるんですね。
- 村上
- 夏休みの旅先にもオススメということですよね?
- 杉浦
- そうそう! まずは、佳菜子ちゃんのように伝統工芸好きなかたに特にオススメ。富山県の「高岡市金屋町」です。こちらの特徴は村上さんからご説明をお願いします。
- 文化庁 村上
- はい。「高岡市金屋町」は、当時、加賀藩の藩主である前田 利長公が、高岡城を建設する時に、城下町が栄えるように鋳物師(いもじ)を呼び寄せたことにより形成された町並みです。
- 杉浦
- 鋳物師っていうのは、銅や鉄、錫などの金属を溶かして型に流し込んで鍋や釜などの生活用品や、銅像、お寺の鐘などを造る職人さんのことね。高岡市はこの前田 利長公の政策により栄えたこともあり、今でも銅器をはじめとする鋳物の一大産地として知られてるんですよね。
- 文化庁 村上
- はい。そしてこの地区は、江戸時代末期から戦後にかけて建てられた町家が並び、特に格子戸が特徴的です。鋳物製造に関わる作業場や店舗などと共に味わい深い町並みになっています。
- 村上
- 今、写真を見てるんですけど、この「千本格子」、めちゃくちゃきれいですね。美しい...。なんかずっと眺めていたくなっちゃうような。石畳も素敵だし。
- 文化庁 村上
- この地区には400年以上続く高岡銅器を身近に感じてもらえる宿泊施設や鋳物資料館があったり、富山の魚を味わえる飲食店、ブルワリーなどもあったり、町並みと合わせて食や伝統工芸に触れることができます。また、職人体験ができる工房もあり、こどもから大人まで楽しめます。
- 杉浦
- 僕もネットでいろいろ調べてみたんだけど、錫などを使ったアクセサリー作りを体験できる所もあるみたいね。それから、石畳には銅で作られた小さなハート型や星型が散りばめられていて、それを見つけながら町並みを散策するっていうのもね、こどもたち喜びそう。
- 村上
- 今、写真見させていただいてるんですけど、めっちゃかわいいですね! これ、見つけながら歩いて、写真撮ったりするのもいいですね。
- 杉浦
- 隠れハート、隠れ星があるからね。では、もう一つ「まちなみ遺産」をご紹介しましょう。こちらはですね、秘境好きに特にオススメ。徳島県の「三好市東祖谷山村落合」。佳菜子ちゃん、まずこの地区の写真を見てみて?
- 村上
- わっ! めちゃくちゃきれいですね! すごーい。大自然って感じ。
- 杉浦
- これ...、「日本の○しろまる○しろまる」って言われてるんだけど。
- 村上
- え? 言っていい?(笑) マチュピチュ?
- 杉浦
- そう。世界遺産(ペルー)のマチュピチュ遺跡のように、山の中に築かれている山村集落なんだよね。
- 村上
- えー、素敵ー! 気持ち良さそう。
- 文化庁 村上
- 落合地区は山の急斜面上に沿って広がる集落で、江戸時代に建てられた民家などの伝統的建造物が石垣や里道など周辺環境と見事に調和し、美しい景観を形成しています。
- 村上
- こちらの地区でも宿泊することができるんですか?
- 文化庁 村上
- はい。保存地区内の空き家を古民家の宿泊施設として整備していまして、現在、一棟貸しの茅葺屋根の宿泊施設が8棟あり、2023年は2,300人ほどのかたが宿泊されました。こちらは、日常の喧騒から離れ、豊かな自然を感じ、自分と向き合う、そんな時間を楽しむことができます。街灯も最小限で、満天の星空も楽しめます。
- 村上
- いいですねー。それこそ、デジタルデトックスができそうですね。ちなみに、お食事はどうでしょうか?
- 文化庁 村上
- 各施設にはキッチンもあり、自分で料理することもできますが、晩御飯には郷土料理を地元のお母さんにお願いして作ってもらうこともできますし、地元のかたと郷土料理の調理体験もできます。
- 杉浦
- 最高じゃない!? 地元の味を味わえるんだよ。
- 村上
- 地元のお母さんに作ってもらえるんだ! いいですね。楽しみ方もいろいろあるんですね。
- 杉浦
- 文化庁のホームページでは、今日注目できなかった全国各地の「伝統的建造物群保存地区」、略して「伝建地区」も紹介しているので、まず、そちらをチェックして、夏休みの旅先候補に加えてみてほしいですね。
- 文化庁 村上
- はい。伝建制度は今年50周年を迎え、スタンプラリーをはじめ各地で様々なイベントを開催しています。是非、実際に現地を訪れて、歴史的集落や町並みを見て、地区の生活文化を肌で感じ、そして、未来に伝統的なまちなみを伝えていくことについて考えていただければと思います。
- 村上
- 今日の話を聞いて特に注目したのは、「夏休みの旅先を「伝建地区」から選んでみてね!」です。
- 杉浦
- 僕は、「「まちなみ遺産」伝建制度50年」。是非、知っていただきたい。129地区ありますからね。
ラジオCM
こどもの事故防止週間(CM)
7月14日から20日は「こどもの事故防止週間」です。
夏本番。海水浴や川遊びなど、水辺のレジャーが増える季節です。
こどもの水の事故を防ぐには、大人がこどもから目を離さず、
手の届く範囲で見守ることが大切です。
海の状況や川の流れは、日により、時間ごとに、また天候によっても変化します。
海水浴は、ライフセーバーのいる、遊泳エリア内で。
釣りや川遊びの際も、ライフジャケットを正しく着用させましょう。
こどもは声や音を出さず静かに溺れることもあるため、
わずかな時間でも、水の浅い場所でも油断せず、
大人が見守ることが重要です。
明日のくらしをわかりやすく
♪政府広報♪