[フレーム]
このページの本文に移動
2024年12月5日

「臍帯血(さいたいけつ)」は、赤ちゃんからの贈り物。臍帯血移植とは?

[画像:生まれたての赤ちゃんの臍帯(へその緒)がハートを描いているイメージイラスト]

POINT

臍帯血さいたいけつ」とは、赤ちゃんとお母さんを結ぶ臍帯(へその緒)と胎盤に流れる赤ちゃんの血液であり、公的臍帯血バンクを通して白血病など血液の病気の患者さんの治療に役立てられています。臍帯血は、出産時にしか採取することができず、とても貴重です。この記事では、公的臍帯血バンクを通した、臍帯血の提供方法、提供した人の体験談などをご紹介します。

1臍帯血ってなに?

赤ちゃんとお母さんを結ぶへその緒を「臍帯」といい、臍帯と胎盤に流れる赤ちゃんの血液を「臍帯血」といいます。臍帯血には、赤血球、白血球、血小板などを造り出す造血幹細胞が豊富に含まれており、白血病などにより血液を正常に造れなくなった患者さんに移植することで、血液を造る力を回復させることが期待できます。
血液の病気の治療法である造血幹細胞移植には骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植の3つがあります。そのうち、臍帯血移植は赤ちゃんが生まれたときに臍帯血の採取を行い、公的臍帯血バンク(詳しくは第2章)で移植に使えるように調製をしてから凍結保存し、移植が必要な患者さんに届けられます。

[画像:赤ちゃんと、臍帯(へその緒)・胎盤の位置を示したイラスト]

臍帯血移植の特長

赤ちゃんとお母さんに負担がありません

臍帯血は、本来であれば出産時に捨ててしまう臍帯と胎盤から採取するため、赤ちゃんにもお母さんにも痛みや危険はなく、出産の経過にも影響はありません

患者さんの治療に迅速に対応できます

赤ちゃんが生まれたときに採取した臍帯血は公的臍帯血バンクで最長10年間保存され、患者さんとHLA型(注記)などが適合した場合はおおむね2週間、緊急時には数日で治療に使うことができます

(注記)HLA型・・・ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen)の略で、赤血球の血液型と同じように、白血球を始めとする全身の細胞にはHLAといわれる型があります。HLA型が合っていないと、移植をしても体の中で臍帯血がうまく働かないことがあります。

[画像:臍帯血移植の特長を表すイメージ図。「お母さん・赤ちゃんに負担がない」「患者さんの治療に迅速に対応できる」]

毎年1,000人以上の患者さんが臍帯血移植を受けています

令和5年(2023年)の非血縁者間造血幹細胞移植実績は2,459件で、そのうち1,367件が臍帯血移植でした。家族間でドナーが見つからない造血幹細胞移植が必要な患者さんの半数が臍帯血移植によって治療を受けているのです。

造血幹細胞移植実績の推移(非血縁者間)

[画像:骨髄移植等と臍帯血移植、それらの総計を示すグラフ。非血縁者間の臍帯血移植が始まった平成8年度は臍帯血移植1件に対して骨髄移植が363件だったが、年々臍帯血移植の件数は増加し、平成29年度には臍帯血移植が骨髄移植等を上回った。直近の令和5年度は臍帯血移植1,367件に対し骨髄移植等1,092件となっている。]

(注記)骨髄移植等とは、骨髄移植と末梢血幹細胞移植をいう。
(注記)末梢血幹細胞移植は平成22年(2010年)10月より導入されており、令和6年(2024年)3月末までに2,117例が実施されている。

資料:厚生労働省健康・生活衛生局難病対策課移植医療対策推進室提供データから政府広報室作成

コラム:臍帯血が命をつなぐ。患者さんと提供したお母さんの声

臍帯血移植を受けた患者さんご家族と、臍帯血を提供したお母さんの声をご紹介します。

患者さんの声「命をかけて守る」/田中さん

田中さんと息子さんのツーショット

妻のお腹に宿った命に「命をかけて守る」と誓った日から約5年。「鼻血が止まらない」。当たり前に続くはずの日常生活が、息子の病気の発覚で突如として終わりを迎えました。病気は、薬では治癒せず臍帯血移植をすることに。移植の日、こどもに付き添う妻から届いた「これから移植」というメッセージには、数十ミリリットルの臍帯血が入った注射容器の写真が添えられていました。これだけの量で、全身を巡る何リットルもの血を一生涯作り続けられるのか?生命への畏敬の念に打たれるとともに、スマホを握る手は震えていました。
移植から2年、運動会で仲間と太陽の下、走り踊り叫ぶ息子の姿を初めて目にし、臍帯血を提供してくださったお母さん、お子さんへの「ありがとう」という言葉を噛み締めました。
移植を待つ患児・患者さんのために、臍帯血バンクに理解を示し、協力していただけるかたが増えることを願っています。

提供を受けた臍帯血

田中さんが経験された臍帯血移植のお話は、 特定非営利活動法人 兵庫さい帯血バンクの「兵庫さい帯血バンクだより41号(2024年8月)」でも紹介されています。

提供したお母さんの声「新しい命が生まれることで救える命」

私は、出産した際に臍帯血を提供させていただきました。私自身、以前から臍帯血を寄付することに興味を持っており、日頃から新しい命が生まれることで救える命があるということはとてもすてきなことだと感じていましたので、提供することができて良かったです。
実際の臍帯血採取では採取のために注射や麻酔をするといったことがないため、赤ちゃんと私に負担は全くなく、出産することだけに集中できました。この臍帯血が移植を待つ患者さんのもとに届いて治療に役立ってくれたらと願っています。このような貴重な経験をこどもがいつか大きくなったときに、“あなたの臍帯血が誰かの命を救ったかもしれない、あなたはすてきな贈り物をしたのよ”と伝えたいです。

[画像:出産後、臍帯血を提供した赤ちゃんと母親に付き添う父親]

2臍帯血はどうやって提供するの?公的臍帯血バンクとは?

公的臍帯血バンクへの臍帯血提供の流れ

STEP01同意書の記入

産科施設のスタッフから、臍帯血バンクの説明を受けます。臍帯血を提供することを決めたら、同意書を記入します。

[画像:同意書を記入する人のイラスト]

STEP02出産・採取

臍帯血を採取できるのは、出産時のみです。出産後、赤ちゃんと臍帯が切り離された後で、臍帯と胎盤に残っている臍帯血を採取します。ただし、お母さんと赤ちゃんの健康状態や出産の状況により採取できない場合があります。

STEP03血液検査

お母さんの血液(約10 ml)を退院までに採血し、感染症などの検査を行います。

[画像:臍帯血の検査を行う検査員のイラスト]

STEP04調製保存

臍帯血とお母さんの血液ともに検査に合格した場合は、臍帯血を調製して液体窒素(-196°C)の中で保存します。

[画像:臍帯血の保存パックを持つ調製作業員のイラスト]

STEP05最終チェック(出産後4か月以降)

臍帯血バンクから、お母さんと赤ちゃんの健康状態を確認する調査票(注記) が届きます。

(注記)患者さんに臍帯血を届けるために必須の調査項目が含まれています。

STEP06臍帯血が患者さんのもとへ

最終チェックの結果、基準を満たした臍帯血は、移植病院から移植用の申込みが受けられるようになります。移植病院から申込みがあると、移植が必要な患者さんのもとへ臍帯血が届けられます。

[画像:臍帯血の移植を受ける様子]

公的臍帯血バンクと提携施設

臍帯血の採取は、どこの産科施設でもできるわけではなく、高度な技術と慎重な品質管理の必要があるため、公的臍帯血バンクと提携している産科施設でのみ提供を受け付けています。採取に係る費用はかかりません。公的臍帯血バンクは全国に6バンク(注記)、提携している産科施設は全国に114施設(令和6年(2024年)8月時点。日本赤十字「公的さい帯血バンクと提携している採取施設」)あります。

(注記)北海道さい帯血バンク、関東甲信越さい帯血バンク、中部さい帯血バンク、近畿さい帯血バンク、兵庫さい帯血バンク、九州さい帯血バンク

公的臍帯血バンクと民間臍帯血バンクの違い

臍帯血の調製・保存などを行う臍帯血バンクには、「公的臍帯血バンク」と「民間臍帯血バンク」の2種類があり、臍帯血を保存する目的が異なります。

公的臍帯血バンク

献血と同様に提供していただいた臍帯血を、移植を必要としている患者さんにお届けします。
国が定める基準に基づき、臍帯血の調製・保存をしており、厚生労働大臣の許可を得た公的臍帯血バンクと提携している産科施設でのみ採取を行っています。公的臍帯血バンクへの臍帯血提供に係る費用負担はありません。
なお、移植を受ける機会の公平さを保つため、提供した臍帯血は赤ちゃん自身や家族が将来、病気になったときに優先的に使用することはできません。

民間臍帯血バンク(プライベートバンク)

赤ちゃん自身や家族の病気の治療のために、現在はまだ医療技術としては確立されていない再生医療などに将来利用する場合に備えて、臍帯血を保存する事業者です。なお、民間臍帯血バンクでの臍帯血保存には費用負担があります。

公的臍帯血バンクと民間臍帯血バンクの「目的」や「費用」について十分にご理解いただき、提供をご検討ください。

まとめ

臍帯血移植は、重い血液の病気にかかった患者さんの命を救うことができる有効な手段であり、臍帯血の提供は出産時にのみ行えることから、赤ちゃんにとって生まれて初めてできるボランティアです。
「病気の人のために役に立ちたい」という皆さんのあたたかい思いが患者さんを救います。これからもかけがえのない命をつないでいけるように、お母さんやそのご家族、今後妊娠・出産を考えているかたは、是非、公的臍帯血バンクへの臍帯血の提供についてご検討ください。

(取材協力:厚生労働省 文責:内閣府政府広報室)

このコンテンツは役に立ちましたか?
このコンテンツは分かりやすかったですか?
このコンテンツで取り上げたテーマについて関心が深まりましたか?

ご意見・ご感想

送信中です

ランキング

関連サイト

外部のウェブサイトに移動しますが、よろしいですか。
よろしければ以下をクリックしてください。

Link
ご注意
  • リンク先のウェブサイトは、内閣府政府広報室のサイトではありません。
  • この告知で掲載しているウェブサイトのURLについては、2023年11月21日時点のものです。
  • ウェブサイトのURLについては廃止や変更されることがあります。最新のURLについては、ご自身でご確認ください。
Top

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /