(1)高齢者が安心して暮らせる介護体制の構築
現在、我が国は世界最高水準の高齢化率となっている。高齢者の介護の問題は、家庭だけでなく地域でも深刻な問題となっている。要介護高齢者等の数は、今後も増加が予想され、さらに寝たきりの期間の長期化や要介護状態の重度化を併せ見ると、介護負担は極めて大きなものとなることが予測される。
このため、こうした介護の負担を要介護者の家族、とりわけ女性に集中することなく、社会全体で支える仕組みとして創設された介護保険制度を着実に実施していく必要がある。また、「今後5か年間の高齢者保健福祉施策の方向(ゴールドプラン21)」(平成11年12月)に基づき介護サービス基盤の質・量両面にわたる整備を進めるとともに、高齢者ができる限り寝たきりにならず、自立した生活を送ることができるよう支援し、高齢者が安心して暮らせる介護体制の構築を図る。
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ア 介護保険制度の着実な実施
イ 高齢者保健福祉施策の推進
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介護サービス基盤の整備
「ゴールドプラン21」に基づき、要介護高齢者の需要に応じた良質な介護サービス基盤の計画的な整備を進める。 特に、高齢者が介護を必要とする状態となっても、できる限り住み慣れた家庭や地域で生活が送れるよう、在宅サービスを重視し、在宅サービスにおける多様な事業主体の参入促進や、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、痴呆性高齢者グループホームなどの介護関連施設の計画的な整備などを推進する。
また、介護サービスの質の確保のため、人材研修を推進するとともに、寝かせきりの防止、リハビリテーションの充実など施設における処遇の改善を図る。
さらに、生活支援を必要とする高齢者が居住できるケアハウスや高齢者生活福祉センターの整備を推進する。
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介護予防・生活支援のための取組
介護予防・生活支援施策の充実を図るため、要介護状態となることを予防し、地域活動に積極的に参加する環境を作り出すという観点から、全国の市町村において介護予防教室の開催、生活習慣病予防のための運動指導等を行う生活習慣改善事業、高齢者の引きこもり予防のための生きがい活動支援通所事業などが地域の実情に応じて実施されるよう支援する。
また、可能な限り在宅での生活を支援する観点から、配食サービス、外出支援サービスなどの生活支援事業の実施を推進する。
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利用者保護と信頼できる介護サービスの育成
利用者が介護サービスを適正に選択し、利用できるような環境づくりを進めるため、介護サービスに関する情報整備や質の評価の普及、適正な契約指導などの利用者保護施策に取り組む。
また、介護サービスの質的な向上と効率化を目指す観点から、介護関連事業の健全な振興とともに、福祉用具の開発・普及を進める。
ウ 介護に係る人材の確保
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高齢者介護マンパワーの養成・確保対策の推進
高齢者介護サービスを担う社会福祉施設職員、看護職員、訪問介護員、介護支援専門員及び介護福祉士等の人材を養成・確保するため、養成施設の整備、資質向上のための研修体制の確保、職場環境の整備など総合的な人材確保施策を推進する。
また、介護ニーズの多様化・高度化に対応した、訪問介護員等の介護労働者育成に係る公共職業能力開発施設等における職業訓練を推進するとともに、福祉重点ハローワークを中核として介護マンパワーの就職を重点的に促進する。
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介護分野における良好な雇用機会の創出の促進
介護分野の良好な雇用機会の創出と労働力確保を図るため、雇用管理改善を支援する。
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厚生労働省
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(2)高齢期の所得保障
我が国の公的年金制度は、昭和36年の国民皆年金達成以後制度の充実が図られ、現在では高齢期の所得保障の主要な柱として国民生活に欠くことのできない極めて重要な役割を担っている。
我が国の平均寿命は世界最高水準に到達しており、高齢者が安心した生活を送ることができるよう、公的年金についても世代間の給付と負担の公平の観点等も踏まえつつ、将来にわたって確実な給付を行い、制度の維持安定に努める。また、企業年金、個人年金等については、老後生活の多様なニーズに応え、より豊かな老後生活を実現できるよう、公的年金との適切な組合せに配慮しつつ、一層の普及、育成が図られるよう自主的な努力を支援する。
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公的年金制度の安定的な運営
21世紀の本格的な少子・高齢社会の到来を踏まえ、今後とも信頼できる年金制度の維持に向けて安定的な運営を行う。
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企業年金等の充実
既存の確定給付型の企業年金等に加え、新たな選択肢として、確定拠出年金の導入を図る。また、既存の企業年金についても、受給権保護等を図る観点から、統一的な枠組みの下に必要な制度整備を行う。
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自助努力による資産形成等の促進
ゆとりある老後生活に資するため、介護貯金、財形年金定額貯金などの各種金融・保険サービス等の充実を通じて生活の安定のための自助努力を支援する。
また、平成12年に導入された、財産管理・身上監護のためのシステムである成年後見制度を一層活用することを通じて、高齢期における資産の有効活用を図る。
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厚生労働省、総務省、法務省
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(3)高齢者の社会参画の促進
高齢者がその意欲や能力に応じて社会とのかかわりを持ち続け、他の世代とともに社会を支える重要な一員として、働き、楽しみ、地域社会に貢献するなど、さまざまな形で充実した生活を実現できるよう、高齢者の社会参画の機会の提供や環境の整備を図る。
特に高齢者が長年培った技能、経験等を活用し、意欲と能力のある高齢者が少なくとも65歳まで働き続けることができる社会を実現するための施策を推進する。
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定年の引き上げ、継続雇用制度導入等による65歳までの雇用の確保等
急速な高齢化や年金の支給開始年齢の引き上げに的確に対応するため、65歳までの雇用確保が行われてない事業主に対し、指導及び援助を行い65歳までの安定した雇用の確保を図る。
また、地域に密着した臨時的・短期的又はその他の軽易な業務にかかる就業機会を提供するシルバー人材センター事業を推進し、高齢者社会参加の促進を図る。
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学習機会の整備等
高齢者の学習要求にこたえ、高齢者に生きがいのある充実した生活を実現するため、高齢者を対象とした学習機会の提供を図る。特に、高齢者等の職業的な知識や技術の向上に資するため能力開発に関する学習機会についての情報の提供に努める。
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高齢者の社会参加活動の促進
高齢者の学習活動を通じた社会参加を促進するための方策についての調査研究等を推進する。また、世代間の理解を促進するための各種の交流事業等を推進することのほか、地域高齢者の自主的な組織である老人クラブの活動への支援を行う。
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高齢者のスポーツ、レクリエーション活動の支援
総合型地域スポーツクラブの全国展開等、高齢者のスポーツ・レクリエーション活動の支援を促進する。
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広報・啓発活動の推進
高齢者が、年齢にとらわれることなく、他の世代とともに社会を支える重要な一員として活躍できるよう、高齢者の積極的な社会参加を促進するための広報・啓発を行う。
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内閣府、文部科学省、厚生労働省、経済産業省
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(4)障害のある者への配慮の重視
「ノーマライゼーション」の理念に基づいて障害のある人もない人も共に生活し活動できる社会を構築し、障害者施策の目標である「完全参加と平等」の実現を目指す。その際、あらゆる場面で障害のある女性への配慮を重視する。
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全府省
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(5)高齢者等の自立を容易にする社会基盤の整備
社会のあらゆる分野で女性と男性が自らの能力を十分に発揮し、自己実現を図っていく観点から、社会基盤の整備に当たってこれまでともすれば障害のない成人男性を前提としがちであった施策の立案・実施等に関し、日常的に利用する女性や高齢者、障害者等のニーズが十分に反映されるよう努める。
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警察庁、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省
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