ぜん息・COPD患者さんのための情報誌「すこやかライフ」で掲載してきた「ドクターの小話」。今年度は4回にわたってウェブコラムでお届けします。ぜん息等にまつわる知っておくとためになるお話を、国立病院機構三重病院臨床研究部の長尾みづほ先生にうかがいます。第1回は「ぜん息かな?と思ったら」と題して、ぜん息の疑問にお答えします。成人してから発症することも珍しくないぜん息ですが、どのような症状が出たらぜん息を疑うべきなのでしょうか。
皆さんは、どんなときに「これってぜん息かな?」と思うでしょうか。以下のような症状があったら、医師に相談してくださいね。
風邪を引いたかな、と思って様子を見ていたら咳がなかなか治らない、風邪でもないのに咳が続く、就寝前や朝方に咳が出る、といったことはありませんか?
大きく息を吸い込むとつい咳が出てしまう、起床時になんとなく胸苦しい気がする、吐く息の最後にゼー、といった音がすることも気に留めてみてください。特に、秋はぜん息の調子が悪くなりがちです。台風が来るときなど注意してください。
全速力で走った後などに咳が止まらなくなったり、ぜいぜい、ヒューヒューしたりすることはありませんか?
目立った咳ではなくても、例えばサッカーの試合で後半になると周りよりも明らかにバテてしまっていませんか。「体力がないんだ」と、自分も周囲も思い込んでいますが、実はぜん息が悪さをしているときがあります。冬は空気が冷たくて乾燥していますので、より症状が出やすくなります。
たばこ、線香、花火などの煙を吸い込んだとき、イヌ・ネコなどペットを飼っている家に行ったとき、いつもは使っていない布団で寝たとき、などに咳き込んだりぜいぜいしたりしていませんか。いつもと違う環境で急に体調が悪くなったときにも注意が必要です。
咳が続いていると、市販薬の咳止めを使用するかもしれません。ぜん息発作に対して咳止めは効果がないどころか、痰が出にくくなってかえって悪化することがあります。
なかなか咳止めが効かないと思ったら、粘らずに医療機関を受診してください。ぜん息発作のときは空気の通り道(気道)が狭くなっている状態ですから、それを広げてくれるお薬である気管支拡張剤が必要です。
また、日頃からの対策が何より大切です。今年は新型コロナウイルスだけではなく、マイコプラズマなど色々な感染症が流行しています。人混みに行くときには適宜マスクをするなど、感染予防もしてください。布団に掃除機をかけるなどといったダニ対策も重要です。
ぜん息と診断されたときには、調子が悪くなったときにどうしたらいいのか、事前に発作薬を処方してもらったほうがいいのか、など受診した医師に確認しましょう。
発作のときに運動すると悪化しやすいですが、体調がいいときには運動して身体を鍛えるのもいいとされています。
呼吸困難感があるとき、苦しくて眠れないとき、階段を上ろうとすると苦しくて立ち止まってしまうときなど、日常生活に支障をきたしている状態のときは速やかに受診が必要です。発作薬を処方されているときには、まず発作薬を使いましょう。
ぜん息は、就寝前や明け方など、医療機関が通常診療時間ではないときに悪化しやすい傾向にあります。夜中に少しつらかったけれども朝しばらくしたら回復した、という場合には、放っておかずに翌日には医師の診察を受けましょう。
次回のドクターの小話では「ぜん息と社会生活」をテーマにお話しします。
長尾みづほ先生
1997年岐阜大学医学部医学科卒業。同年岐阜大学医学部附属病院小児科研修医、2004年国立病院機構三重病院小児科。13年3月から国立病院機構三重病院臨床研究部長を務める。16年5月から三重大学大学院医学系研究科連携准教授を併任。日本小児科学会認定小児科指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医・代議員。