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ERCA 独立行政法人 環境再生保全機構

コラム

新型コロナウイルス感染症とは

新型コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2というウイルスの感染症で、この感染症を正式な医学単語で表すとCOVID-19と言います。中国から発生したと考えられています。

コロナウイルスは、昔から感冒(風邪)の原因(10〜15%)として知られています。ウイルス学的には、以前から人体に感染する型が4種類知られていました。その後、2002年にSARS(重症急性呼吸器症候群)、2012年にはMERS(中東呼吸器症候群)という感染症が流行しましたが、いずれもコロナウイルスによる感染症です。

今回の新型コロナウイルスで人体に感染するコロナウイルスは7種類目となります。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、SARSウイルスに近い種類と考えられています。ウイルスは自分では増殖できません。細胞に付着し、細胞内に入り込んで増殖し、細胞の外に放出されます。

亀田京橋クリニック 副院長 亀田総合病院 呼吸器内科顧問 兼務 金子 教宏亀田京橋クリニック 副院長
亀田総合病院 呼吸器内科顧問 兼務 金子 教宏

このウイルスは人から人へ感染する感染症です。1人から2〜3.5人に感染するといわれています。これは、インフルエンザやSARSより低いと考えられています。

感染経路(様式)は飛沫感染(エアロゾル感染)と接触感染です。

接触感染は、手指にウイルスが付着し、それを口や鼻、目などの粘膜に接することで体内に入り込んでしまいます。逆に言うと手にウイルスがいるだけでは感染しません。市中感染の状況では、どこにウイルスがいるかわかりません。どこにでもいると考えて行動しなくてはいけません。しかし、部屋やトイレのドアノブ、エレベーターのボタンなど触らなくてはいけません。そこにウイルスがいることを想定し、自分の手指には常にウイルスがいると考えてください。手指を顔に持っていかなければ良いのですが、人間は1分間に何回も顔に手を持っていくといわれています。実は、このウイルスは、エンベロープという脂質(油)の膜で覆われています。このエンベロープがあるウイルスは、アルコールや石鹸に弱いのです。秒殺されます。手をアルコールや石鹸で洗えばウイルスは死んでしまいます。とにかく手を洗いましょう。私は1日100回以上、手を洗っています。(もちろん患者さんの診察前と後でも手指の消毒を行っています。)床や靴などの消毒はどうしますか?という質問が時にありますが、床や靴にウイルスがいたとしても皆さんは床を触った手でものを食べたり舐めたりしませんよね。手指を消毒していれば床や靴を消毒する必要はありません。また、買ってきたお菓子の袋を洗う人もいるようですが袋を舐めたりしなければ、食べる前に手指を消毒するので大丈夫でしょう。

飛沫感染とは、話したり、咳をしたり、くしゃみをしたりする時に飛沫が飛びます。この飛沫には大きな飛沫と小さな飛沫(マイクロ飛沫)があります。日本の場合、直径5μm以上のものを飛沫といいますが、これらは水分も多く含まれ重く、2m以内に落下し、机や食器などに付着することになります。顔のすぐ目の前で話していれば直接相手の顔に飛沫が飛びます。これを防ぐためにソーシャルディスタンスが大事だといわれているのです。しかし、新型コロナウイルスの場合、5μm以下の小さな飛沫も感染させるといわれています。通常のウイルスでは、この程度の飛沫はすぐに乾燥し、感染力が低下してしまいますが、新型コロナウイルスの場合は、水蒸気などでしばらくは感染力を落とさずに空気中を漂っていると考えられています。その時間は20分ほどといわれていますが、詳細は不明です。最近、新型コロナウイルスは空気感染するのではないかといわれていますが、これは、飛沫感染がある条件下で空気感染のような感染を起こすと考えています。すなわち、空気中に漂っているマイクロ飛沫が、密集し、換気が悪い場所で、大きな声で多くの人が話をしていたら空気感染を起こすような状況だと個人的には考えています。これがいわゆる「密閉・密集・密接の3密です。」です。この状況では18.7倍も他の人に感染させやすいといわれています。通常の空気感染(結核や麻疹など)は、乾燥した病原菌でも感染力が低下しないために、患者と同じ空間で呼吸をしているだけで感染する場合をいいます。もし、本当の意味で新型コロナウイルスが空気感染するのであれば、この程度では収まりません。恐らく、何十倍も患者数は増えることになるでしょう。新型コロナウイルス感染症は、患者が満員電車にいるだけで感染するわけではありません。(空気感染ではこの様な状況でも感染します。)

また、マスクをすることで飛沫の拡散を防ぐことができます。実験動画で見るとマイクロ飛沫もマスクで防ぐことができている様です。マスクは非常に重要なので、なるべくマスクをするようにしましょう。マスクを常に着けているべきかどうか議論になっているようですが、周囲に人がいない場合はマスクをする必要はないと思います。ただ息をしているだけではウイルスは拡散しません。もちろん、咳をする場合は、咳エチケットを守ってください。

亀田京橋クリニック 副院長 亀田総合病院 呼吸器内科顧問 兼務 金子 教宏亀田京橋クリニック 副院長
亀田総合病院 呼吸器内科顧問 兼務 金子 教宏

なぜ、新型コロナウイルス感染症は予防できないのでしょうか?

これには、新型コロナウイルス感染症の臨床的な特徴を理解することが重要です。

新型コロナウイルスは、潜伏期が1〜12日といわれています(多くは4〜6日)。そのため、入国した場合は、14日間の隔離が必要とされています。一番の問題は、不顕性感染と感染力の時期の問題です。通常、新型コロナウイルス感染症は、感染してから4〜6日で発症します。問題なのはいつから感染力があるかです。新型コロナウイルス感染症は、発症する2日前から人にうつす可能性が指摘されています。すなわち、発症する前(症状が出る前)から危険があり、防ぎようがないのです。だから、すべての人が新型コロナウイルス感染者と考え、対応しなければいけないのです。その点、同じようなウイルスであるSARS感染症は、発症してから感染力が出てくるので、発症した時点で隔離すれば感染拡大を防止できたので制御が可能でした。

初期の症状は微熱・咽頭痛・咳などです。すなわち、風邪やインフルエンザと同じです。新型コロナウイルス感染症は、その症状が長く、だるさが強いのが特徴だといわれていますが、症状からは見分けがつきません。味覚や嗅覚障害は鑑別の助けになるかもしれません。

また、1週間ほどして急激に全身状態が悪化するケースがあります。数時間で悪化する場合もあります。これも注意が必要です。約80%の人は風邪症状で軽快していきますが、20%が重症化し、約5%が死亡するといわれています。重症化しやすい人は、65歳以上の高齢者、慢性呼吸器疾患(喫煙者)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満などです。また、最近は冠動脈疾患や脳血管障害などを発症することが問題になっています。特に、高齢者・糖尿病(肥満)・喫煙は、非常にリスクが高いことが分かってきました。最近、脳梗塞を発症し、入院したら新型コロナウイルス感染症だったということもあるようです。新型コロナウイルス感染症は、血管障害を引き起こす可能性があることが分かってきました。

一般的に新型コロナウイルス感染症は、発症後8日で感染力は低下するといわれています。そのため、現在は発症後10日で退院が可能となりました。(以前はPCR検査で2回陰性を確認する必要がありましたが、PCR検査で陽性でも感染力はないようです。)

新型コロナウイルス感染症の診断

新型コロナウイルス感染症の診断は、PCR検査でウイルスを証明することが通常行われます。PCR検査とは、ウイルスの特異的な遺伝子を増幅させ、検出する方法です。鼻腔から採取する方法は一番感度が高いといわれていますが、それでも70%前後といわれています。すなわち、10人の感染者を調べても7人しか陽性とならない。3人は陰性と言われてしまいます。

また、確率は低いですが偽陽性といってウイルスがいないのに陽性と判断されてしまいこともあります。簡易型抗原検査は、通常のPCR検査より短時間で結果が判明しますがPCR検査より感度は非常に低い(PCR検査との陽性一致率は66.7%なのでPCR検査の2/3しか陽性とならない。)といわれています。PCR検査の感度が70%ですので、簡易型抗原検査では感度は40〜50%ということになります。

抗体検査は、過去に新型コロナウイルス感染症にかかった事があるかどうかが分かるだけです。現時点での情報は全くありません。また、抗体の存在が感染防御するかどうか(中和抗体)は、まだはっきりしていません。可能性はあると思いますが、いつまで続くかも判明していません。すなわち、抗体検査で陰性であれば、「かかったことがないので注意しましょう。」、抗体検査が陽性であれば、「かかったことがありますが、予防できるかどうかはわかりませんので注意しましょう。」となります。抗体検査の結果にかかわらず注意しなければいけないということです。

市販の抗体検査は精度にバラツキがある事が分かっています。検査自体に意味がない事があるので、個人的にはお勧めしません。ただ、指先ではなく、採血で検査する抗体検査の中には、精度が高いものがあるので医師に確認しましょう。

簡易型抗原検査は、特殊な検査機器が必要ないのであればどのクリニックでもできるのではないか?

問題は検体採取方法です。鼻腔から採取する事が、一番感度が良いと話をしましたが鼻腔から採取する場合は、エアロゾルが発生する事があるといわれており、医療者も感染防御服(テレビでも見る宇宙服のようなもの。)を着て、万全な体制で検査しないといけません。インフルエンザの検査のように診察室で簡単にはできないのです。そうしないと診察室が感染源となってしまいます。

我々のクリニックは東京都内のビル内にあります。そこでは換気が不十分なので、症状のある人に対して鼻腔からの検体採取はできません。駐車場などにテントなどが設置できるようなスペースがないと難しいのです。

唾液による検査は、あまり報道していませんが色々な問題があります。もちろん精度の問題もあります。

このように、様々な情報が日々アップデートしているので我々医療従事者も混乱しているところがあります。さらに、テレビなどマスメディアでは、様々な人が正確ではない意見を述べていることもあります。最近では、あるうがい薬が重症化を防ぐという報道もありましたが、これは間違いです。

情報が日々更新されていく中で、どの情報が正しいのか、医師としっかり相談しながら情報の取捨選択をしていきましょう。

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